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世界水素インフラプロジェクト 世界水素インフラプロジェクト 世界水素インフラプロジェクト 世界水素インフラプロジェクト総覧 総覧 総覧 総覧 第1章 シナリオ シナリオ シナリオ シナリオ分析 分析 分析 分析・市場ポテンシャル ・市場ポテンシャル ・市場ポテンシャル ・市場ポテンシャル 13 Copyright © 2013 Nikkei BP, Inc. All rights reserved 1-1-3 欧州 欧州 欧州 欧州 ・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む ・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む ・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む ・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む 水素システムのインフラを促す 3 つの要素(燃料電池車の普及、再エネ導入に伴う水素ストレ ージ、前分離 CCS による水素製造)のうち、欧州ではすでに風力と太陽光の大量導入に伴う水素 ストレージのニーズが顕在化している。特に風力発電の導入が進んだドイツとデンマークでは、 すでに風力の余剰電力による基幹送電線への悪影響を軽減する必要に迫られている。 ドイツでは、風力発電の余剰電力で、水を電気分解して水素を製造し、天然ガス(メタン)や バイオガスに混ぜて利用するプロジェクトが始まっている。デンマークのロラン島では、風力発 電の余剰電力で水素を製造して配管で住宅に送り、燃料電池コージェネレーション(熱電併給) システムを稼働させる実証プロジェクトが動き出している。ロラン島では、将来的には地域熱供 給施設に水の電気分解装置を併設して、水素製造時の排熱も地域熱供給の温水生産に活用する構 想が進んでいる。 地域熱供給の普及したドイツや北欧では、水素製造施設を併設した地域熱供給施設が地域のエ ネルギーセンターとなり、風力と太陽光の余剰電力を使って水素を製造して周辺家庭の燃料電池 コージェネに提供したり、生産した水素を地域熱供給施設のボイラーやコージェネの燃料に混ぜ たりする動きが出てきそうだ。並行して導入の始まる燃料電池車(FCV)用の水素ステーションを、 こうした地域熱供給・水素製造施設に併設するパターンも考えられる。 長期的には、欧州内に豊富に賦存する石炭を脱炭素政策と両立しつつ活用するため、前分離方 式 CCS によって、水素を取り出して火力発電に使う可能性もある。そうなると安定的に水素が製 造されるため、家庭用や水素ステーションに供給するシナリオも考えられる。 ・欧州 ・欧州 ・欧州 ・欧州での水素システムの普及シナリオ の水素システムの普及シナリオ の水素システムの普及シナリオ の水素システムの普及シナリオ こうした視点から、次ページのシナリオ・チャート図のように、欧州のうち、ドイツや北欧を 例にとって、普及シナリオを考察した。 【現在】 【現在】 【現在】 【現在】北米とエネルギーシステム構成は同様だが、地域熱供給のシステムがすでにある程度普 及していることが特徴である。また、風力と太陽光の大量導入に伴う水素ストレージや水素を天 然ガスに混ぜる実証プロジェクトがスタートしている。 【2020 2020 2020 2020~30 30 30 30年】風力、太陽光発電の出力変動を緩和するための水素ストレージが本格的に始まり、 製鉄業や石油コンビナートなどから出てくる副生水素も活用しつつ、FCV 向けの水素ステーショ ンの設置が本格化する。 【2030 2030 2030 2030~2050 2050 2050 2050 年】 年】 年】 年】ロッテルダムなどエネルギーの多消費産業を抱える地域で CCS 火力が始まる可 能性がある。新設火力などでは、前分離 CCS を採用する場合も、こうした前分離 CCS 付の石炭火 力などが、水素を安定的に供給し始める。 欧州では、再エネ電力で製造した水素をメタンに合成して、天然ガス・インフラに混ぜて活用 する「パワー・ツー・ガス」の動きもある。このために自動車においてもメタンが、過渡期に CNG (圧縮天然ガス)に使われる道もあるものの、FCV の普及が進めば、水素のまま FCV 燃料にする 方向が主流になる。

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世界水素インフラプロジェクト世界水素インフラプロジェクト世界水素インフラプロジェクト世界水素インフラプロジェクト総覧総覧総覧総覧

第第第第1111章章章章 シナリオシナリオシナリオシナリオ分析分析分析分析・市場ポテンシャル・市場ポテンシャル・市場ポテンシャル・市場ポテンシャル

13 Copyright © 2013 Nikkei BP, Inc. All rights reserved

1111----1111----3333 欧州欧州欧州欧州

・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む・風力と太陽光と大量導入で水素ストレージの導入進む

水素システムのインフラを促す 3 つの要素(燃料電池車の普及、再エネ導入に伴う水素ストレ

ージ、前分離 CCS による水素製造)のうち、欧州ではすでに風力と太陽光の大量導入に伴う水素

ストレージのニーズが顕在化している。特に風力発電の導入が進んだドイツとデンマークでは、

すでに風力の余剰電力による基幹送電線への悪影響を軽減する必要に迫られている。

ドイツでは、風力発電の余剰電力で、水を電気分解して水素を製造し、天然ガス(メタン)や

バイオガスに混ぜて利用するプロジェクトが始まっている。デンマークのロラン島では、風力発

電の余剰電力で水素を製造して配管で住宅に送り、燃料電池コージェネレーション(熱電併給)

システムを稼働させる実証プロジェクトが動き出している。ロラン島では、将来的には地域熱供

給施設に水の電気分解装置を併設して、水素製造時の排熱も地域熱供給の温水生産に活用する構

想が進んでいる。

地域熱供給の普及したドイツや北欧では、水素製造施設を併設した地域熱供給施設が地域のエ

ネルギーセンターとなり、風力と太陽光の余剰電力を使って水素を製造して周辺家庭の燃料電池

コージェネに提供したり、生産した水素を地域熱供給施設のボイラーやコージェネの燃料に混ぜ

たりする動きが出てきそうだ。並行して導入の始まる燃料電池車(FCV)用の水素ステーションを、

こうした地域熱供給・水素製造施設に併設するパターンも考えられる。

長期的には、欧州内に豊富に賦存する石炭を脱炭素政策と両立しつつ活用するため、前分離方

式 CCS によって、水素を取り出して火力発電に使う可能性もある。そうなると安定的に水素が製

造されるため、家庭用や水素ステーションに供給するシナリオも考えられる。

・欧州・欧州・欧州・欧州ででででの水素システムの普及シナリオの水素システムの普及シナリオの水素システムの普及シナリオの水素システムの普及シナリオ

こうした視点から、次ページのシナリオ・チャート図のように、欧州のうち、ドイツや北欧を

例にとって、普及シナリオを考察した。

【現在】【現在】【現在】【現在】北米とエネルギーシステム構成は同様だが、地域熱供給のシステムがすでにある程度普

及していることが特徴である。また、風力と太陽光の大量導入に伴う水素ストレージや水素を天

然ガスに混ぜる実証プロジェクトがスタートしている。

【【【【2020202020202020~~~~30303030年年年年】】】】風力、太陽光発電の出力変動を緩和するための水素ストレージが本格的に始まり、

製鉄業や石油コンビナートなどから出てくる副生水素も活用しつつ、FCV 向けの水素ステーショ

ンの設置が本格化する。

【【【【2030203020302030~~~~2050205020502050 年】年】年】年】ロッテルダムなどエネルギーの多消費産業を抱える地域で CCS 火力が始まる可

能性がある。新設火力などでは、前分離 CCS を採用する場合も、こうした前分離 CCS 付の石炭火

力などが、水素を安定的に供給し始める。

欧州では、再エネ電力で製造した水素をメタンに合成して、天然ガス・インフラに混ぜて活用

する「パワー・ツー・ガス」の動きもある。このために自動車においてもメタンが、過渡期に CNG

(圧縮天然ガス)に使われる道もあるものの、FCV の普及が進めば、水素のまま FCV 燃料にする

方向が主流になる。

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第第第第1111章章章章 シナリオシナリオシナリオシナリオ分析分析分析分析・市場ポテンシャル・市場ポテンシャル・市場ポテンシャル・市場ポテンシャル

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注:各システムのスペースは、実際の構成比や将来予想を示したものではない

(作成:日経 BP クリーンテック研究所)

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注:各システムのスペースは、実際の構成比や将来予想を示したものではない

(作成:日経 BP クリーンテック研究所)