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15 3廃棄物・リサイクルに関連する法制度の現状及び政策動向 3.1 廃棄物の関連を所管する省庁 (1) 国の行政組織 国の公的機関及び行政組織の構成は以下のリストのとおりである。廃棄物・リサイ クルに関係する機関をアンダーラインで示す。 独立公的機関(Independent Public Agenciesz The Royal Institute z Office of the Auditor-General of Thailand z Bank of Thailand z Bangkok Metropolitan Administration (B.M.A.) City Hall z Office of the Administrative Court z The Supreme Court 国の行政機関 z Office of the Prime Minister ¾ 国家経済社会発展委員会(Office of the National Economic and Social Development Board¾ National Intelligence Agency、他省略 z Ministry of Defense z 財務省(Ministry of Financez Ministry of Foreign Affairs z Ministry of Tourism and Sports z Ministry of Social Development and Human Security z Ministry of Agriculture and Cooperatives z 運輸省(Ministry of Transport and Communicationsz 天然資源環境省(Ministry of Natural Resource and Environment¾ Department of Mineral Resources ¾ 公害規制局(Pollution Control Department¾ Department of Water Resources ¾ Department of Groundwater Resources ¾ Department of Environmental Quality Promotion ¾ National Park, Wildlife and Plant Conservation Department ¾ 天然資源・環境政策計画局( Office of Natural Resources and Environmental Policy and Planning

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3. 廃棄物・リサイクルに関連する法制度の現状及び政策動向

3.1 廃棄物の関連を所管する省庁

(1) 国の行政組織

国の公的機関及び行政組織の構成は以下のリストのとおりである。廃棄物・リサイ

クルに関係する機関をアンダーラインで示す。

独立公的機関(Independent Public Agencies) The Royal Institute Office of the Auditor-General of Thailand Bank of Thailand Bangkok Metropolitan Administration (B.M.A.) City Hall Office of the Administrative Court The Supreme Court

国の行政機関 Office of the Prime Minister

国家経済社会発展委員会(Office of the National Economic and Social Development Board)

National Intelligence Agency、他省略 Ministry of Defense

財務省(Ministry of Finance) Ministry of Foreign Affairs Ministry of Tourism and Sports Ministry of Social Development and Human Security Ministry of Agriculture and Cooperatives

運輸省(Ministry of Transport and Communications) 天然資源環境省(Ministry of Natural Resource and Environment)

Department of Mineral Resources

公害規制局(Pollution Control Department) Department of Water Resources Department of Groundwater Resources Department of Environmental Quality Promotion National Park, Wildlife and Plant Conservation Department

天 然 資 源 ・ 環 境 政 策 計 画 局 ( Office of Natural Resources and Environmental Policy and Planning)

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Ministry of Information and Communication Technology

エネルギー省(Ministry of Energy) Department of Mineral Fuels Department of Energy Business

代替エネルギー開発・効率化局(Department of Alternative Energy Development and Efficiency)

エネルギー政策・計画局(Energy Policy and Planning Office) 商務省(Ministry of Commerce ) 内務省(Ministry of Interior)

県自治局(Department of Provincial Administration) The Community Development Department Department of Lands Department of Disaster Prevention and Mitigation Department of Public Works and Town and Country Planning

地方行政局(Department of Local Administration) Ministry of Justice Ministry of Labour Ministry of Culture

科学技術省(Ministry of Science and Technology) 教育省(Ministry of Education ) 保健省(Ministry of Public Health) 工業省(Ministry of Industry)

工業標準局(Thai Industrial Standards Institute) 工場局(Department of Industrial Works) Department of Industrial Promotion The Office of Industrial Economics Department of Primary Industries and Mines Office of the Cane and Sugar Board Office of Industrial Economics Office of Small and Medium Enterprises Promotion Office of the Board of Investment

廃棄物については、上記に示すように国の多くの機関が関係している。例えば首相

府の下の国家経済社会開発委員会オフィスでは、国の持続社会を作っていくための国

の方針を定めるところであり、循環型社会をつくるための委員会を立ち上げている。 都市廃棄物は、法律を所管しているのは保健省であるが、地方自治の廃棄物処理施

設の施設建設に関する予算化では、内務省の特に地方行政局(Department of Provincial Administration)が所管している。一方、廃棄物処理施設の環境側面、IEA、全体的な

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廃棄物管理政策については天然資源環境省が所管している。また、リサイクル業者の

登録などは、工業省工場局(Department of Industrial Works)が所管しており、複雑に

関連している。 近年、廃棄物のエネルギー利用に関しては、エネルギー省の代替エネルギー開発・

効率化局(Department of Alternative Energy Development and Efficiency)が担い、また、

エネルギーファンドを利用してモデル的な施設整備については、エネルギー政策・計

画局も関わっている。 産業廃棄物に関わる中央行政機関は、部門は以下のとおりである。

• 天然資源環境省公害管理局(Pollution Control Department ) バーゼル条約など廃棄物全般の管理している。有害物質法の所管であるが、

実際には工業省工場局(DIW)が策定した有害物質法の基準に基づいて有

害産業廃棄物の管理を行っている。産業廃棄物管理の管理についてはDIW の法令が優先される。ただし現在基準のない有害廃棄物の許認可権・監督

権はPCDにある。 • 工業省工場局(Department of Industrial Works: DIW)

全般的に工場の操業に関する許認可権を有している。工場から排出される

廃棄物の排出許可や有害産業廃棄物・非有害産業廃棄物の基準の作成、ま

た中古家電輸入に関する許認可等の権限もある。工業局の地方組織である、

地方事務所が、廃棄物の処理やリサイクル工場の監督する機能を担ってい

る。 • 工業団地公社(IEAT)

工業省が運営する第3セクター(公社)。工業団地内での排(廃)水や有害

廃棄物管理等の規制、及び産業廃棄物処理サービス。 • 運輸省

有害廃棄物の運搬許可の登録や許可の権限を有する。また車両や運搬容

器の基準も定めている。

(2) 地方自治体

タイの地方自治は、複雑である。市町村レベルの都市自治体や特別市などは、メイ

ヤーを公選で選出しているが、県レベルの県行政組織は、国の出先機関である。タイ

の地方自治制度を以下に整理しておく1。 タイの行政は、「中央政府の行政」、「中央政府の地方における行政」、「地方自治体の

行政」の 3 つに分けられる。その内の後の二つは、いずれも内務省(Ministry of Interior)の管轄下にある。

つまり、地方の行政は、内務省を頂点として、中央政府の地方における行政(Provincial

1 「CLAIR REPORT 行政事務からみたタイの地方自治」(財)自治体国際化協会 2000 年 4 月

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Administration)と地方自治体の行政(Local Administration)から成り立っている。 中央政府の地方における行政とは、地方行政とはいうものの中央行政の一環とされ

る。その組織は、県(チャンワット、Province;Changwat)、郡(アンパー、District;Amphur)、行政区(タムボン、Subdistrict;Tambon)、村(ムーバン、Village;Mu-Ban)で構成される。

地方自治体の行政は、県自治体(Provincial Administration Organization;PAO)、自治市

町(Municipality)、衛生区(Sanitary District)、タムボン自治体(Tambon Administration Organization; TAO)と、特別な自治体であるバンコク都 (Bangkok Metropolitan Administration;BMA)とパッタヤー市(City of Pattaya)に分類されている。

中央政府の地方における行政(Provincial Administration) 中央政府の地方における行政組織として、県、郡、行政区、村が挙げられる。タイ

国内にはバンコク都を除く 75 の県があり、その下の郡は 749 郡ある。郡の下にある行

政区は 66,973 あるとされる。 県が 上位にあるが、県知事は、内閣の承認の下に内務大臣により任命され内務省

から派遣され、県内における中央政府の業務(地方開発、雇用促進、徴税、治安維持等)を行うとともに、その区域内の地方自治体の指導・監督も行っている。

郡は県の下に位置する機関で、全国に 749 郡がある。郡長(District Chief Officer)は、

内務省地方行政局から派遣される。実質は、県と郡は中央政府の地方における出先機

関と言われている。 郡の監督下にあるのが行政区である。行政区長(Subdistrict Headman)は、住民から選

ばれることになっている。民法、刑法に関連する業務と徴税が行われている。 この行政区を構成している 小の地方行政単位が村で、全国で 66,973 を数えるとさ

れる。村長(Village Headman)も公選とされる。

地方自治体の行政(Local Administration) タイの地方自治体には、県自治体、自治市町、衛生区、タムボン自治体、特別な地

方自治体(バンコク都、パッタヤー市)に分類される。 県自治体は、75 のすべての県に設けられており、県内の自治市町や衛生区などの地

方自治体の区域外を対象としている。行政機構は、立法機関としての議会(Council)と県長(Chief Executive)を長とする執行機関からなる。県長は内務省により任命された県

知事が兼ねている。中央政府の地方における行政と地方自治体の行政の両方の役割を

担っているところに特徴がある。 タイにおいて、日本の市町村に比較的近いのが、自治市町(テーサバーン;Tesabarn)

であり、その設立にあたり、テーサバーン・ナコーン(City Municipality;Tesabarn Nakorn)、テーサバーン・ムアン(Town Municipality;Tesabarn Muang)、テーサバーン・タムボン

(Subdistrict Municipality;Tesabarn Tambon)の 3 つの形態に分けられる。タイでは市(ミ

ュニシパリティ)と呼んでいる。 この自治市町は全国に 149 団体ある。自治市町の構造は、県自治体と同様に立法機

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関と執行機関からなり、執行機関の長である市長(Mayor)は、議会の議員の中から選ば

れる。通常、選挙により多数を占めた政党が執行機関を作るため、その代表者が市長

となる。 自治市町が都市部に設立されているのに対して、衛生区(スカーピバーン;Sukapiban)

の多くは農村部に設立され、全国に 981 の衛生区2がある。 タムボン自治体は、1994 年のタムボン自治体法により、過去 3 年連続して補助金を

除く収入が 15 万バーツを超える行政区が格上げされて、タムボン自治体として法人格

が与えられたものである。 このほか、特別な地方自治体としてバンコク都とパッタヤー市がある。バンコク都

は、タイの首都であることからバンコク都行政組織法 (Bangkok Metropolitan Administration Act 1985)により、特別な地方自治体として位置づけられている。

図 3.1 タイの地方行政システム 出典:CLAIR REPORT 行政事務からみたタイの地方自治」(財)自治体国際化協会 2000 年 4 月

2 ただし、衛生区は 1999 年に廃止されたとの情報もある。

中 央 政 府 (内務省)

国による地方行政 (Provincial Administratration)

地方自治体による地方行政 (Local Administratration)

県(Provincie)

郡(Disitrict)

行政区(Subdisitrict)

村(Village)

県自治体(PAO)

自治市町

(Municipality)

衛生区(Sanitary District)

タンポン自治体

(TAO)

バンコク(BMA)

パタヤ市(City of Pattya)

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上記のようにタイの地方自治体にはさまざまなタイプがあるが、公共施設の整備、

教育、衛生、インフラ整備などの基本的業務はどのタイプにおいてもほぼ変わらない。

しかし、都市化の程度や財政制度の違いによる。各自治体によってその能力に差に応

じて業務負担も変わると言われている。

表 3.1 タイの地方自治体の特徴

組織構成 議決機関 執行機関

市町村(日本) 大統領制(首長主

義) 議員は住民の直接選挙

で選任 長は住民の直接選挙で

選任

県自治体(PAO) 政府の地方と行政

の二重構造 議員は住民の直接選挙 長は県知事(国の出先の

長)が兼任

自治町村 議員内閣制(議会

主義) 議員は住民の直接選挙 長は銀の互選で選出

衛生区 委員会制 委員会が議決機関と執行機関を任務。委員は兼職

委員と公選委員からなる。

タンポン自治体 政府の地方と行政

の二重構造 兼職銀(区長、尊重)と公

選議員 行政区長が長となる。

バンコク都 大統領制(首長主

義) 議員は住民の直接選挙 長は住民の直接選挙で

選任

パタヤ特別市 シティー・マネー

ジャー制 選出議員と任命議員か

らなる。

出典:CLAIR REPORT 行政事務からみたタイの地方自治」(財)自治体国際化協会 2000 年 4 月

議会(Municipal Council) 自治市町は、議決機関としての議会 (Municipal Council)と執行機関 (Municipal

Executive Board)から構成される。議員は、任期は 5 年間である。 議会には、議員の中から選ばれる議長と副議長が置かれる。議長と副議長は、議員

の過半数の承認に基づき、県知事によって任命され、議長は議会の秩序を保持し、規

則に基づき議会を運営し、議会を代表する。 議会には、定例会は毎年度 2 回以上 4 回以内開催され、会期は 15 日以内である。議

会は、大きく分けて 3 つの権限があり、条例の制定、予算の承認、行政に対する監督

である。 執行機関(Municipal Executive Board)

執行機関の長は市長(Mayor)で、地方公共団体を代表し、職務を遂行する。議会議員

の選挙後 90 日以内に議会が召集され、議員の互選により市長が選ばれる。 自治市町における行政事務は、市の職員である助役(Municipal Clerk)のもとで行われ

ている。助役は実務の実質上の責任者で、市長の監督下ですべての責任を負っている。 組織

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助役の下に置かれている組織については、自治市町の組織に関する内務省規則

(Ministry of Interior Regulation on Municipal Organization B.E.2535)に定められており、以

下はその室・局・課の名称である。

助役 調査企画課 財務課 公共事業局(課) 環境衛生課 医療サービス課 教育課 社会福祉課 水道課 衛生事業課 区

なお、タイでは、日本のように県レベルでの自治事務としての環境や産業廃棄物に

関する法の執行権限を持った県組織が無いところに特徴がある。

3.2 タイ国の廃棄物処理関連法の状況

(1) 概要

タイ国では廃棄物管理に係る統括的な法が未だ制定されていないこともあり、廃棄

物の管理は幾つかの法規則に分散されている。 廃棄物管理に関連する法・制度としては以下が挙げられる。1992 年にその制定が集

中しており、この年が日本において公害関連法が一気に整備された 1970 年に該当する。 1 公衆衛生法(Public Health Act B.E.2535) 2 第8次国家社会経済開発計画 [The National Social and Economic Plan

No.10](2007-2011) 3 国家環境質保全・向上法(The Enhancement and Conservation of National

Environmental Act B.E.2535,1992年) 4 都市清潔秩序保全法 (Cleanliness and Orderliness of the Country Act 1992) 5 地方分権計画及び手順法、1999年(Act prescribing Plan and Process for

Decentralization B.E. 2542) 6 自治市法、1953 年(Municipal Act B.E.2496) 7 県自治体法、1997 年(Provincial Administration Organization Act, B.E.

2540) 8 有害物質法(1992)

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9 工場法 1992 年

(2) 廃棄物の定義

公衆衛生法に廃棄物の定義が与えられており、定義されている廃棄物は下記の通り

である。 • 紙くず • 繊維・布くず • 塵芥(食品くず) • 廃品 • プラスチック袋 • 食品容器 • 灰 • 動物の糞 • 動物の死骸

その他道路、市場、動物飼育場またはその他の場所から掃除し集めた物を含む」(第

4条)3であり,したがって産業廃棄物はこの対象ではない。 同法で規定される「廃棄物」の処理は、同法 18 条で地方自治体の責務と規定されて

いる。 国家環境質向上保全法でも廃棄物の定義があり、同法によると「廃棄物とは,汚染

源より放棄された、またはもたらされた固体、液体、また塵芥、汚物、排水、汚染空

気、汚染物質またはその他の危険物、並びにそれらの残さ、沈殿物及び残留物をいう」

とされている。 上記に対し工場法に基づく新たな廃棄物処分に関する工業省通達(2005)の第 3 条用

語の定義において、「廃棄物とは、不用物、又は、生産活動から発生する、原料からの

廃棄物、生産工程で発生する廃棄物、質的に劣化した製品を含む全てのタイ国プの廃

棄物、及び有害成分を含み又はその性質をもつ排水をいう」とされている。また有害

廃棄物については、「有害成分を含み、有害物質で汚染されている、又は、この公示付

録 2 に規定されている有害な性質をもつもの」とされている。同法は、工場法の対象

となる工場からの廃棄物を対象としていることから、前者の規定は産業廃棄物の全般

的な定義と解釈される。工場内の食堂、住宅、事務所からの非有害廃棄物、また、公

衆衛生法で扱われる廃棄物は対象外とされている。

本定義では、工場内で発生する有用副産物を第三者に販売する場合には、不用物、

廃棄物なのかについて必ずしも明確な境界が与えられていないが、同公示付則1で、

3 Solid waste" means waste paper, waste cloth, waste food, waste commodity, plastic bag, food container, soot, animal dung or carcass, including other thing swept away from roads, market places, animal farms, or other places;

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廃棄物コードを定め、業種、プロセス、廃棄物の種類を規定しており、廃棄物に関す

る客観的な定義になっていると解釈することが可能である。

廃棄物コードは,6 桁であり、 初の 2 桁は工業タイ国プ、中間 2 桁は廃棄物の発

生や廃棄物タイ国プを表す特定のプロセス、 後の 2 桁は特定性質の廃棄物種類を示

している。 初の 2 桁は、19 分類あり、分類の 後は廃棄物処理施設である。また,

第 16 分類の「他のリストに分類できない廃棄物」に廃自動車関係(1601)、電気・電

子機器からの廃棄物(1602)も含まれている。さらに建設廃棄物も含まれている。

4 桁コードが付されている廃棄物は 108 種類ある。6 桁のコードが付されている廃棄

物は、808 種類である。これらの廃棄物のうち同公示付則 2 に定義される有害廃棄物

の基準に該当するものについては有害廃棄物として指定され、230 種類ある。

また、有害廃棄物に該当するどうかの判定が必要な廃棄物は 178 種類ある。この廃

棄物リストは、産業廃棄物全般を規定し、その中で有害廃棄物を含む形で示されてい

る。

(3) 関連法制度の概要

A) 公衆衛生法(Public Health Act B.E.2535) 廃棄物に関してもっとも基礎的な法であり、いわゆる一般廃棄物や感染性廃棄物の管

理を対象としている。家庭から排出される有害物質を含む廃棄物もこの法の範囲に基

本的には括られる。工場法は,法の対象となる工場の生産活動を管理する法であるが、

その生産活動から排出される廃棄物の管理も対象としている。 タイ国の一般廃棄物(タイ国では、Municipal Solid Waste)に係る根拠法は、公衆衛

生法(Public Health Act B.E.2535、)である。1992年(仏暦2535年)にそれまでの公衆

衛生法及び人糞肥料管理法を統合改正し制定された。本法において、廃棄 物の

定義、処理責任主体などについて以下の様に記載されている。

第4条 “汚物”とは、大小便をいい、不潔なまたは悪臭を放つその他の物を含む。“廃棄物”とは、

紙くず、布くず、残飯、廃品、ビニール袋、食品容器、灰、動物 の糞、動物の

死骸をいい、その他道路、市場、動物飼育場またはその他の場所から掃除し集めた物

を含む。4 “地方公共団体”とは、自治市(テッサバーン)、衛生区(スカピーバン5)、県自治体

4日本語訳は“公衆衛生と都市環境に関する法令、1994 年 10 月、バンコク日本人商工会議所”によ

る。 5 衛生区(スカピーバン)は 1999 年廃止された。

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(オボゾー)バンコク都、パッタヤー特別市または法律が地方公共団体と規定する地

方自治体をいう。 “地方主任官”とは下記の者をいう。

ア) 自治市では市長 イ) 衛生区では区委員長 ウ) 県自治体では県知事 エ) バンコク都ではバンコク都知事 オ) パッタヤー特別市ではパッタヤー特別市助役 カ) 法律が地方公共団体と規定するその他の地方自治体管轄区ではその

地方自治体の首長

第 3 章汚泥及び固形廃棄物処理には、以下の様に記載されている。 第 18 条;地方自治体内の汚泥及び固形廃棄物処理は当該地方自治体がその処の権限、

及び義務を有する 第 19 条;地方自治体職員からライセンス無しに、何人もビジネスとして又はサービ

料金を徴収し、汚泥及び固形廃棄物の収集、輸送、処理を行ってはならない。 第 20 条;汚泥及び固形廃棄物の収集、輸送、処理における清潔と秩序を保全するた

めに、地方自治体は関連する地方条例を制定する権限を有する。 しかし 1997 年憲法以降の地方分権化の動きにより、新たな地方自治体(タンボン自

治体)が法人格を有し、衛生区は廃止になり、県知事が県自治体の首長を兼任できなく

なるなど、都市ごみ管理体制も大きく変わっているが、公衆衛生法の改訂が追いつい

ていないのが現状である。

B) 第8次国家社会経済開発計画 [The National Social and Economic Plan No.10]

(2007-2011) 第 10 次国家社会経済開発計画では、都市廃棄物は、1 日一人当たり 1 キログラム以

内に押さえること、また、コミュニティと産業からのすべての有害廃棄物のうち、少

なくとも 80 パーセントは適切処分を確保することを目標としている。

C) 国家環境質保全・向上法(The Enhancement and Conservation of National Environmental Act B.E.2535,1992年)

1975 年にタイ国の環境政策の枠組みを定めた法として制定され、その後,1992 年に

大幅に改正された。この改正された「国家環境質向上保全法」が、タイ国における環

境管理の基本法となっている。 国家環境委員会の設立 公害対策委員会の設立 組織規定や環境基金の設立 環境基準の制定

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環境影響評価等に関する規定 この基本法により廃棄物,危険物(有害物)の定義や、排出者の処理責任、行政に

よる監視・監督の枠組みが与えられタイ国における環境管理の基本法となっている。

この基本法により廃棄物,危険物(有害物)の定義や、排出者の処理責任、行政によ

る監視・監督の枠組みが与えられている。 国家環境質保全・向上法に基づき、環境質管理計画が策定された後、県知事は県レ

ベルの環境質管理計画及びアクションプランを策定し、国家環境審議会(National Environmental Board)に提出する義務を有している。県アクションプランは以下の項目

を含まなければならない(第38条)。 ① 特定汚染源からの公害管理計画 ② 関連する国又は地方自治体に所属する中央下水処理プラント、中央廃棄物処

分施設の建設、設置、改善、修理、メンテナンス、運転に不可欠な用地、材

料、器具、装置の調達計画 ③ 中央下水処理プラント、中央廃棄物処分施設のO/Mのための税、ユーザーFee

の徴収計画 ④ 特定水質汚濁汚染源への査察、モニタリング、管理計画 ⑤ 公害防止、自然保護、天然資源保全に関する法規違反に対する法規エンフォ

ースメント計画 県の環境質管理アクションプランでは、中央下水処理プラント、中央廃棄物処分施

設の建設、器具、装置の調達予算割り当て、基金からの資金調達の見積もりを行う。 中央政府にこれらの予算、資金を要求する場合は、図面、事業計画、機器、設備の

仕様、見積もり金額、O/M の方法などを付帯する必要がある。中央政府では、環境政

策・計画局(旧 OEPP,現在は、天然資源環境政策・計画局、ONEP)が、県の環境質

管理アクションプランに基づく、プロジェクト提案の受付、評価の事務局である。(第

39 条)

D) 都市清潔秩序保全法 (Cleanliness and Orderliness of the Country Act 1992) 自治体の地域内の清潔の維持の責任が規定されている。

E) 地方分権計画及び手順法、1999 年(Act prescribing Plan and Process for Decentralization B.E. 2542)

自治市、パッタヤ市、タンボン自治体は地域社会に利益をもたらすために、以下の

公共サービスを組織化する権限を持つ(第 2 章、第 16 条) ① 地方自治体自身の開発計画を決定する ② 公共ユーティリティやその他公共事業 ③ 下水、固形廃棄物、汚水処理システム ④ 公衆衛生、医療サービス

県自治体は、第 16 条に基づき、地域社会に利益をもたらすために以下のサービス を

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組織化する権限と義務を有する。 ① 県開発計画を策定するために、地方自治体自身の開発計画を決定し、

関係機関を調整する ② 地域開発のために、地方自治体を支援する ③ 地方自治に関して、中央政府機関と調整、協力を行う ④ 下水処理、固形廃棄物処分 ⑤ 環境管理、公害防止

法律の条文で解りにくいが、県自治体と自治体の都市ごみ管理に関する業務、権限

の分担の例は、仏暦 2440 年県自治体法に示されている。

F) 自治市法、1953 年(Municipal Act B.E.2496) 自治市法(1953 年)では、自治市は、市条例を制定することができ、都市ごみ管理

に関しても、様々な自治市で条例が作られている。

G) 県自治体法、1997 年(Provincial Administration Organization Act, B.E. 2540) 第 4 章 県自治体の権限、義務で以下の項目が規定されている。 都市ごみ管理については、収集、輸送、処分の第 1 的な責任は、自治市、タンボン

自治体などが有しているが、特に処分に関してこれら自治市、タンボン自治体が処分

場の取得が難しい場合などは、県自治体が事業主体となり、衛生埋め立て処分場や総

合廃棄物センターなどの建設を行う場合がある。

H) 有害物質法 1992 年 有害物質の管理の方法、基準、及び管理システムについては、「有害物質法 1992」

が規定している。有害物質の製造・販売流通・使用に関する法であり、有害廃棄物の

管理を対象とはしていないが、リサイクル原料などの輸入や利用などに関係している。

I) 工場法 1992 年 工場法の Section8 に、工業大臣は「生産活動により発生し環境に影響を与える廃棄

物、汚染物その他の物の排出を監督する基準及び方法の規定」に関する省令を公布し、

監督する権限があることが規定されている。 工場の活動にともなう廃棄物については、「工場法 1992」で管理している。また、

産業系有害廃棄物6は、工場法及び有害物質法に管理されている。廃棄された製品中の

有害物質については、都市の廃棄物として排出されるかぎりは公衆衛生法の範囲に入

り、リサイクル活動が工場法の対象とする工場活動の範疇に入る場合には工場法の適

用対象となる。

6 有害廃棄物は産業系以外の家庭から排出される有害廃棄物や感染性廃棄物がある。以下、有害

廃棄物という場合、工場法に基づく有害産業廃棄物のことを指すものとする

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産業系有害廃棄物は、工場法の産業省令、工業省及び工場局7(DIW)の公示(布告)

に基づいて管理されているが、1997 年の有害廃棄物の処理に関する公示が 2005 年に

全面的に改定されている。また,有害廃棄物管理に関連する公示も 2000 年以降充実し

てきている。 以下、主要な関連法規を下記の表のとおりである8。

表 3.2 産業廃棄物関連法規則

工場法 B.E. 2535 (1992) 工場生産活動を管理する上での根拠法

工場法省令9 B.E. 2535 (1992) 第 13 条に工場の廃棄物管理の責務を規定

工場法省令 No,15 B.E. 2544(2001) 廃棄物処理業に関連する工場分類 105,106 の

規定

廃棄物及び不用物の処分に関する工業省

通達 No.6 B.E.2540(1997) (2006年 4月末に

失効)

有害産業廃棄物の処理に関する規定

廃棄物及び不用物の処分に関する工業省

通達 No.1 B.E.2541(1998) (2006年 4月末に

失効)

非有害産業廃棄物の処理に関する規定

有害廃棄物の焼却の排ガス基準に関する

工業省通達 B.E. 2545 (2002) 有害産業廃棄物の焼却炉の排ガス基準値

105,106 に関する工業省通達 B.E. 2545 105 及び 106 対象工場の認可基準

廃棄物処分に関する工業省通達 B.E.2548 (2005)〔2004 年 5 月から施行〕

廃棄物の分類,有害廃棄物の規定,処理処分に

関する基準

マニフェストに関する工業省通達 B.E. 2547(2004) (有害物質法に基づく)

有害廃棄物マニフェストについての規定(有害

廃棄物の規定や処理方法分類の記述あり)

なお、工場法では、廃棄物処理業、リサイクル業関連の行の登録義務(工場の設置

許可)も規定されている。

3.3 廃棄物及び3R に係る政策動向

国の政策は、それぞれの国の機関で立案している。以下、内閣府、天然資源環境省(PCD)、

工業省工場局(DIW)、工業団地公社(IEAT)、エネルギー省代替エネルギー開発・効率化

局(DAE)について触れる。

7 Department of Industrial Works をここでは工場局と訳す. 8 工場法,有害物質法関連の法,省令,省通達,局通達の数多くの英訳が,JETRO タイ国事務所の

HP で入手可能である. 9 省令は,Ministerial Regulation,工業省通達は,Notification of Ministry of Industry,工場局通達は,Notification of Department of Industrial works

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(1) 内閣府経済発展委員会

経済発展委員会は、国家開発計画を所管している。その下部の計画として国家環境質

向上政策・計画 [Enhancement and Conservation of National Environmental Quality Policy and Plan, B.E.2540-2559)を1996年1月に制定しているが、それでは1997~2016間の一般廃棄

物管理目標を下記のように設定している。 一般廃棄物の排出量を 1.0kg 以下とする。 バンコック、全国の都市の一般廃棄物のリサイクル率を 15%以上とする。 全ての市の一般廃棄物を管理し、市内の未処理廃棄物を 10%以下にする。 各県ベースで一般廃棄物の衛生管理のマスタープランを作成する。

また有害廃棄物等に関しては、目標を次のように設定している。 環境及び人の健康への影響を無くし、産業や社会から発生する有害廃棄

物による汚染を軽減するための管理を行う。 産業や社会から排出される有害廃棄物の収集及び処分を 95%、90%以上

とする。 全ての病院で感染性廃棄物の適切管理システムを設け、その目標達成の

ための指針を定める。

持続型経済発展委員会を 2009 年に設立し、タイ全体を持続可能な社会にしていくた

め循環型経済への移行が必要と考えており、その実現に向た政策についての検討を開

始している。なお、現状、どのレベルの検討が進んでいるのか未だ公表されていない。

(2) 天然資源環境省(PCD)

1) 廃棄物管理政策

PCD は、総合的な廃棄物政策、リサイクル政策を担当している。そのベースになって

いるのが、1998 年の「都市ごみ管理施設に関する技術的な基準及びガイドライン」

(”Regulation and Guideline of Municipal Solid Waste Management ”)である。このガイドラ

インが制定されてから、現在まで変更されていない。。 内容は、以下の構成になっている。

パート1 都市ごみ管理のガイドラインと施策 (1) 都市ごみ管理の問題点 (1) 緩和施策 パート2 都市ごみ管理施設の規則とガイドライン (1) イントロダクション (2) 定義 (3) 固形廃棄物施設のサイトセレクション (4) 中継基地 (5) 再資源化施設

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(6) 焼却施設 (7) コンポスト施設 (8) 埋め立て施設 添付 関連の環境質基準類 関連図(埋め立て処分場の遮水工構造、観測井戸構造、ランドフィルガス回収

管などの概念図)

タイの廃棄物政策の公式的な表明は、このガイドラインのパート1「都市ごみ管理の

ガイドラインと施策」に示されている。 先ず、一般廃棄物管理の現状の問題点について以下のようにの述べている。 地域社会から発生するいわゆる都市ごみは年々増加しており、1997年には、発生量は

全国で約13.5百万トン/年、35千トン/日、年増加率3.5%であったことが報告されている。

一方、都市ゴミの収集は十分ではなく、収集率は70-80%である。収集されていない廃棄

物、及び不適切な処分(オープンダンピングの意味と思われる。)は人々に健康被害、

環境汚染をもたらすとして、以下のを問題点として列挙している。 a 都市ゴミ管理予算は常に乏しく、サービス費用の徴収は非効率である。 b 隣接した地域社会間で共通に利用できる処分場の積極的な建設計画は無い。 c 発生源での分別に始まり、収集、輸送、処分、モニタリングを含む階層的な都

市ゴミ管理の具体的な規則、ガイドラインが無い。 d 効率的な都市ゴミ輸送、処分に関し熟練した人材が不足している。 e 地域社会のリサイクルプログラムは、まだ乏しい。 f 既存の法規類は、MSW管理を効率的な方向に適切に促進する様にはなっていな

い。 g サービス費用の支払い、ごみの散乱防止、発生源での分別だけでなく新しい処

分場建設プロジェクトなどへの住民の協力・参加は断然少ない。

問題解決に係わる施策については、管理、投資、法、支援の四つの視点から示されて

いる。 (a) 管理的見地

a 市民、公的機関を含み不適切なMSW管理を行っている者に対し、PPP原則の適

用 b 国家環境質管理計画に沿った地方MSW管理計画の策定 c 都市ごみ収集、輸送、処分に関して実施ガイドラインとしての、適切なMSW

管理規則の策定 d 都市ゴミ発生量の減量のため、包装容器の製造者に回収を義務付けるための包

装容器の種類の指定 e 都市ゴミ発生源及び関連したMSW管理上の問題点を継続的に監視、評価する。

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f 長期的な都市ゴミ管理計画のために、各県は見込みのある処分場用地を用意す

る。都市ゴミ処分場用に取っておく用地を地方都市計画の中に盛り込む。 g 利用可能かつ比較、アップデート可能なMSW情報システムを開発する。 h 環境インパクトを軽減化するため、地方自治体及び民間オペレーター業者に

MSW管理を規制、統括する担当省庁を決める。

(b) 投資的見地 a 各地域社会の都市ゴミ収集計画ガイドラインとして、各350世帯に150Lの収集

ビン、各5,000世帯に10m3の収集トラックの調達が必要である。 b 衛生埋め立て処分場建設を奨励し、各サイトに適した廃棄物のハンドリング設

備を使用する。MSW管理への政府の参加;自治体が運営する設備へ100%又は

一部補助金を付与する。 c 既存の非衛生処分(オープンダンピングの意味と思われる。)のリハビリ、改

善を行う。 d 隣接する地域社会に共通の処分場を利用するためごみ処分センターを建設し、

総合MSW管理手法を適用する。 e 適切かつ効率的なごみ収集、処分にマッチした分別戦略に基づき、家庭、オフ

ィス、公的機関、工場などでのごみ分別、再資源化プログラムを奨励する。 f MSW管理、リサイクルビジネスだけでなく、廃棄物リサイクル情報センター

の建設への民間投資を促進する。 g MSW管理への民間投資家やごみ問題の解決に努力しているNGOに対し、資金、

インセンティブ、技術援助の提供 例えば、経済的なインセンティブ、本当の環境コストによる日用品価格の調

整、有害物質を含む商品への関税のアップなど

都市廃棄物については、上記の政策に基づいた運営を各自治体に求めているが、3

R 全体については、特に法制度面での基底はない。 このため、PCD では、3R 政策を推進するためのドラフトを準備中であり、また Eウエストの取組については DIW 及び PCD において現在検討中である。

2) 3R 政策

一方、PCD は、廃棄物3R 戦略を作成している。それによると、2013 年までに都市

ごみの発生を 1~5%削減し、地域レベルにおける分別回収を 30%とする3R の目標を

設定している。その達成のために下記のような目標を掲げている。 3R の実施 国レベルの 3R 会議の開催 3R 規則の立案・施工 有害廃棄物管理(E ウエストのインベントリー調査、及び家庭ごみ中の有

害廃棄物の分別に関するプロモーション)

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地域社会レベルでの分別回収の推進 政府レベルのグリーン購入

また DIW における 3R の政策は、 エコ工業団地ゾーンの開発と推進 ウエスト to エネルギーの推進(再生可能エネルギー局)

A) タイ国の取組む 3R プログラム a) 現在の課題

✓経済成長及び人口増加により廃棄物量は急激に増加しつつある。 ⇒廃棄物の削減と適正処理が必要である。 ✓埋立処分場からメタンガスが発生している。 ⇒グローバルウォーミング原因の一因でもある。 ✓リサイクリング可能な廃棄物が都市ごみに混入し、排出量が増加している。 ⇒都市ごみ中のリサイクリング回収を推進することが必要である。 ✓都市ごみ中に多くのプラスティック類が含まれている。 ⇒都市ごみは潜在的にエネルギー豊富な資源である。

b) 現在の処分方法 ✓処理方法 ⇒ 埋立処分 ✓有価物 ⇒ 回収した廃棄物から抽出後、資源として回収する。 ✓物理的な廃棄物処理 ⇒ 焼却する。

B) タイ国の取組む資源循環型社会の構築 a) 有機系廃棄物の処理は

⇒家庭や地域社会でのコンポスト化をする ⇒物理的 Bio 処理法の導入(コンポスト化、メタン化)

b) 梱包材を含んだ有価物を含む廃棄物はコミュニティレベルでリサイクルの実

施する。 c) 焼却可能な廃棄物はエネルギーの回収するため RDF に変換する。 d) セミ・エアロビック衛生埋立処分場を開発して残った都市ごみを処理する。 e) 医療系廃棄物はリサイクルして燃料化を計る。

C) 廃棄された製品・商品(梱包材は除く)の可能性ある処理法 ⇒E ウエストとは、廃棄された家電、電子部品、OA(事務)機器類である。 ⇒使い捨ての電池、寿命後の自動車類、廃棄された蛍光灯、廃棄タイ国ヤ、廃棄

された家庭用消火器等も含む。

D) 処理の条件設定 ⇒これらの廃棄物のリサイクリングには「持ち帰り(Taking buck system)」の構

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築が必要である。 ⇒しかしながら現在のタイ国ではまだ制度化されていない。

E) 企業の社会的責任「CSR(corporate social responsibility)」制度の導入が不可欠 ⇒製造会社は製造した自己製品のライフサイクル管理を行う CSR を導入し、ボ

ランティアベースでそれらの製品を持ち帰る必要がある。 a) まだ価値を有する E ウエストや自動車は中古品として市場に販売することが

できる。 b) 使い捨て電池、廃棄された蛍光灯、廃棄タイ国ヤ等は末端利用者が少ないため

リサイクルが難しい。 ⇒リサイクルの可能性 ✓生産会社によって工場の蛍光灯のリサイクルをする必要がある。

✓生産会社や販売会社の組合によって使い捨て電池や E ウエストの回収を

行う必要がある。 ✓廃棄タイ国ヤのリサイクルは製造会社により実施する必要がある。 J) 廃棄物の減量及び利用強化法案

PCD(公害汚染管理局)では、2009 年 4 月に廃棄物の3R を推進するため

の基本法の検討プロジェクトのレポートを作成した。そのレポートにおいて

提案されている「廃棄物削減及び利用の拡充に関する法律(ドラフト)」の内

容は、以下のとおりである。

1.削減、再利用、リサイクル、即ち3R の構築 2.廃棄物削減のための基準、施行要領、等々 3.天然資源の削減 ドラフト内容: 第 1 項:廃棄物削減と再利用の拡充 第 2 項:政府広報 第 3 項:廃棄物削減と再利用の拡充のための特別法 第 4 項:この規則の目的 第 5 項:担当大臣 第 6 項:コミティー 第 7 項:コミティーメンバー資格 第 8 項:任期 第 9 項:辞任 第 10 項:メンバーの死亡 第 11 項:開催 第 12 項:ワーキンググループ 第 13 項:作業

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第 14 項:政府機関(PCD) 第 15 項:資源循環社会構築の権限と責任 第 16 項:NGO 第 17 項:関係機関の参加 第 18 項:資源削減における効率の基準 第 19 項:排出者負担 第 20 項:活動に支援、推進 第 21 項:環境管理の経済指標 第 22 項:王室布告 第 23 項:継続的な生産、消費、資源循環社会の推進、資源の効率的な利用、ラ

イフサイクルにおける推進者、等々の責任 第 24 項:製品と公衆衛生への影響 第 25 項:第 23 項の補足 第 26 項:第 25 項に示した排出者に関する事項 第 27 項:コミュニケーション 第 28 項:環境ラベル 第 29 項:第 23、27 項の補足 第 30 項:プロモション 第 31 項:廃棄物の管理に関するプロモーション 第 32 項:第 31 項の補足 第 33 項:廃棄物処理 第 34 項:基準及び環境維持 第 35 項:第 34 項の補足 第 36 項:違反 第 37 項:保管、運搬 第 38 項:適用外事項 第 39 項:材料製品の輸入 第 40 項:展示会等での適用外の事項 第 41 項:輸入の必然性 第 42 項:コミティー参加者 第 43 項:資源利用の効率化のためのインセンティブ 第 44 項:第 43 項の促進 第 45 項:違反者 第 46 項:廃棄物処理施設の所有者、運転者の違反 第 47 項:第 40 項の違反者、5 年以下の懲役刑 第 48 項:第 41 項の違反者、200,000 バーツ以下の罰金 第 49 項:その他の違反者に対する罰則 第 50 項:公布

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第 51 項:この法律の施行開始

(3) 工業省工場局(DIW)

1) 産業廃棄物に係る DIW の役割

DIW は、産業廃棄物の発生から 終地点までを管理するための責任を有している。

この管理を行政、廃棄物処理業者、発生源、公衆の協力(3P cooperation (Public, People and Private))を得て実施することとしている。このため、以下のような内容を含む10。

① 産業廃棄物管理のサポート都促進 クリナーテクノロジーの利用、汚染予防の利用、3Rs (Reduce, Reuse and Recycle)の適用、廃棄物交換、廃棄物有効利用.

② 産業廃棄物における法順守 排出責任原則の適用、状況の対応した適切の法の改正、事務手続きの効率化、

電子登録等の導入、工場等への法に関する知識の普及、トレーニングの提供 ③ 産業廃棄物管理に係る協力ネットワークの設立

関係者間への産業廃棄物管理に係る知識の提供、協力関係の形成、コミュニテ

ィの強化のためのプロジェクトの実施、コミュニティによる廃棄物の不法投棄

に関する監視への協力要請 DIW の重要な機能の一つとして工場法の有害廃棄物管理規則に基づき、工場外で

処理する場合の許可があるのが、その 近の結果を示すと以下のとおりである。

表 3.3 許可された工場外で処理されている廃棄物量(報告ベース)

年 非有害廃棄物 (Million Tons)

有害廃棄物 (Million Tons)

2007 16.07 2.23

2008 16.24 2.72

2009 19.57 2.28

出典:DIW 提供資料 2) リサイクル促進・埋立廃棄物の減量の実施

次のような3R に関する調査を実施している。 2008 年度

埋立廃棄物の利用に関する調査を実施することにより、埋立廃棄物の減量促進プロ

ジェクトの実施 2009 年度

廃棄物利用のプロジェクトの実施;サブプロジェクト1:5 つの種類の廃棄物を工

場内で再利用するプロジェクトの推進

10 本項は DIW 提供資料による。

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3) 産業廃棄物管理のプロセス

DIW としては、廃棄物管理をリデュース、リユース、リサイクルの順に優先し、その

上で、処理・処分することを基本の政策としている。

Reduce

Reuse

Recycle

Treatment

Safe Disposal

図 3.2 産業廃棄物管理政策の優先性

出典:DIW 提供資料

工場に対して、先ず3R の実施を優先することを求め、その上で工場内処理の優先

を求めているが、それが困難な場合に、工場外への排出を認める。つぎのような廃棄

物の管理方策のプログラムとしている。

図 3.3 産業廃棄物管理の基本プログラム

出典:DIW 提供資料

3R: Pollution Prevention

End of Pipe Treatment

Industrial Waste

(Sorting)

(Blending)

Recycling/Recovery Thermal Treatment 海 Treatment )Landfill

Co-incineration Incineration

Cement Kiln Boilers and Industrial Furnaces (BIF)

‐ Chemical

‐ Physical

‐ Biological

‐ Hazardous

‐ Non-Hazard

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(4) 工業団地公社(IEAT)

IEAT では、傘下のインダストリアル・エステートのエコ工業団地化に取組んでおり、

Nortern Region I.E(ランプーン)、Bangoo I.E バンプー、イースタンシボード(ラヨン)

の三つ工業団地で事業を進めている。 なお、Bangoo 工業団地では、民間の製造者が、蛍光灯のリサイクル、紙パックのリ

サイクルを進めている。

(5) エネルギー省エネルギー政策・計画局(EPPO)

エネルギー需給のモニタリング、国のエネルギー政策の立案、実施、評価を担当す

る Energy Policy and Planning Office(EPPO)は、新エネルギー政策を担当している。

組織構造は以下のとおりである。 エネルギー分野の重点課題として、以下の項目が挙げられている。 ① 国内資源である天然ガスの利用促進 ② 代替エネルギーの研究開発・利用促進 ③ 産業の競争力強化に資する様なエネルギー産業構造改革

国家エネルギーセキュリティ及び競争力を強化する観点から、タイのエネルギー

戦略は、エネルギー利用の効率化、限りある化石燃料を代替するため、国内再生可能

エネルギーの開発の加速化、効率的なエネルギー管理を重点している。 • エネルギー効率化戦略 • 再生可能エネルギー開発戦略 • エネルギーセキュリティ強化戦略 • 地域エネルギーセンター化戦略 特に廃棄物熱利用の関連する、再生可能エネルギー開発戦略についてまとめると

以下のとおりである。 タイ国内においては、化石燃料は量が限定されており、かなりのエネルギー(エネ

ルギー自給率は約 50%強)を輸入している。再生可能エネルギーの利用促進は、エネ

ルギー供給の重荷を軽くするだけでなく、外貨の流出及び環境負荷の低減に役立つ。

また、二酸化炭素、温室効果ガスの排出を少なくすることにも効果があり、再生可能

エネルギーの開発は地域社会へ少なからぬ経済的な貢献がある。

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Director General

Deputy DirectorGeneral

AdministrationSystem Development

Unit

Energy Policy &Planning Bureau

Office of the Secretary Energy System AnalysisBureau

GeneralAdministration

Section

AdministrativeCoordination

Group

PersonnelGroup

Finance Group

Strategic EnergyPolicy &PlanningDivision

Energy InformationSystem Development

Division

Monitoring &Evaluation

Division

PetroleumDivison

Power Division

Energy Conservation andRenewable Energy

Division

図 3.4 EPPO の機構図

出典:EPPO ホームページより 2002 年の商業一次エネルギーへの再生可能エネルギー利用率は、0.5%、265ktoe で

あるが、2011 年には、それぞれ 8%、6,540ktoe に向上させるとしている。 RPS(Renewable Portfolio Standard)制度を法規化し、新変電プラントの場合、出力

の 4%は再生可能エネルギーからまかなう計画になっている。 税の控除、特権、省エネ促進基金(ENCON Fund)からの補助金など、再生可

能エネルギー電力の購入へのインセンティブ施策を考案することになってい

る。 太陽光、小規模水力、バイオマス(農業廃棄物、都市ごみ)などポテンシャ

ルの高い再生可能エネルギーに関する R/D をサポートする。 再生可能エネルギー発電所の建設に際し、地域住民との協力、住民参加を図

る。

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3.5 タイ国政府が展開している 3R 政策の具体例

以下にPCDのプレゼンテーション資料で示されている3Rの取り組みについて紹介し

ておく。 1) 国家レベルの政策

国内を統合した廃棄物管理 実施可能な廃棄物に関する法整備 寿命後の製品の引き取り制度(take-back program) 3R に関するキャパシティビルディング

図 3.5 国家レベルの廃棄物管理システムの概念図

出典:PCD プレゼン資料

図 3.6 引き取り制度の実施例(2005 年鉛蓄電池の約 85%が回収された)

出典:PCD プレゼン資料

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図 3.7 キャパシティビルディングの実施例

出典:PCD プレゼン資料 2) 地方レベルの政策

循環型社会の構築のイニシャティブ 地域社会の 3R の参加

図 3.8 200 以上の地域社会が参加、ある地域では 30~50%を超える削減を達成

出典:PCD プレゼン資料

3) 産業界、NGO の参加 廃棄部の交換プログラム タイ国全体でのグリーン購入プログラム

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図 3.9 2005 年現在、450 社を超える企業がこのプログラムに参加

出典:PCD プレゼン資料

図 3.10 タイ国におけるグリーン購入のネットワーク図

出典:PCD プレゼン資料

4) 国際機関との協調 グリーン購入における技術支援プログラム 蛍光灯パートナーシップ・プログラム