2):CTD の概要(サマリー)...CFU Colony forming unit(コロニー形成単位) CHG...

71
2.5 臨床に関する概括評価 オラネジン消毒液 1.5% オラネジン液 1.5%消毒用アプリケータ 10 mL オラネジン液 1.5%消毒用アプリケータ 25 mL 2 部(モジュール 2): CTD の概要(サマリー) 2.5 臨床に関する概括評価 株式会社大塚製薬工場

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2.5 臨床に関する概括評価

オラネジン消毒液 1.5%

オラネジン液 1.5%消毒用アプリケータ 10 mL

オラネジン液 1.5%消毒用アプリケータ 25 mL

第 2 部(モジュール 2):CTD の概要(サマリー)

2.5 臨床に関する概括評価

株式会社大塚製薬工場

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2.5 臨床に関する概括評価

2

目次

2.5 臨床に関する概括評価 ................................................................................................................ 5 2.5.1 製品開発の根拠 .................................................................................................................. 5

2.5.1.1 申請医薬品の薬理学的特性 ................................................................................... 5 2.5.1.2 目標適応症の臨床的/病態生理学的側面 ........................................................... 6 2.5.1.3 目標適応症に対して申請医薬品を開発することを支持する科学的背景 ....... 6 2.5.1.4 殺菌消毒剤の臨床評価 ........................................................................................... 7 2.5.1.5 外国における開発状況 ......................................................................................... 11 2.5.1.6 承認申請に用いた臨床データパッケージ ......................................................... 12 2.5.1.7 臨床開発計画の概略 ............................................................................................. 13 2.5.1.8 治験の倫理的実施 ................................................................................................. 23

2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 ........................................................................................ 24 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 ............................................................................................ 25

2.5.3.1 臨床薬理試験結果の概略 ..................................................................................... 27 2.5.3.2 臨床薬理試験結果のまとめ ................................................................................. 29

2.5.4 有効性の概括評価 ............................................................................................................ 31 2.5.4.1 試験デザインの適切性 ......................................................................................... 31 2.5.4.2 有効性の結果 ......................................................................................................... 37 2.5.4.3 有効性のまとめ ..................................................................................................... 46 2.5.4.4 有効性の結果に対する考察 ................................................................................. 47

2.5.5 安全性の概括評価 ............................................................................................................ 50 2.5.5.1 安全性の結果 ......................................................................................................... 52 2.5.5.2 安全性の結果に対する考察 ................................................................................. 60

2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論 ............................................................................. 65 2.5.6.1 ベネフィット ......................................................................................................... 65 2.5.6.2 リスク ..................................................................................................................... 67 2.5.6.3 ベネフィットとリスクに関する結論 ................................................................. 68 2.5.6.4 市販後の本剤の使用法に関する教育・普及 ..................................................... 68

2.5.7 参考文献 ............................................................................................................................ 69

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2.5 臨床に関する概括評価

3

略号及び用語の定義一覧

略号及び用語 略号及び用語の説明

ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ

ASA American Society of Anesthesiologists(米国麻酔医学会)

AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ

ASTM ASTM International(旧称:American Society for Testing and Materials)(米国材料試験協会)

AUC Area under the curve(血清中薬物濃度-時間曲線下面積)

BSLN ベースライン(塗布前)

CFU Colony forming unit(コロニー形成単位)

CHG 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液(販売名:ステリクロン W 液0.5)

CK クレアチンキナーゼ

Cmax Maximum drug concentration( 高血清中薬物濃度)

CNS Coagulase negative Staphylococci(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)

CRF Case report form(症例報告書)

CTCAE Common Terminology Criteria for Adverse Events(有害事象共通用語基準)

CYP チトクローム P450

DCBA 3,4-dichlorobenzoic acid(3,4-ジクロロ安息香酸)

FAS Full analysis set( 大の解析対象集団)

FDA 米国食品医薬品局

LDH 乳酸脱水素酵素

M1 検証的試験で持つとされる有効性

M2 非劣性マージン

MBC 小殺菌濃度

MRSA Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

NP-10 ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル

OAPI Otsuka America Pharmaceutical, Inc.

OPB-2045 オラネキシジン塩酸塩水和物(C17H27Cl2N5·HCl·1/2H2O)

OPB-2045G 液 オラネキシジングルコン酸塩(C17H27Cl2N5·C6H12O7)を含む液

OPB-2045 遊離塩基 オラネキシジン(C17H27Cl2N5)

OPBG1 1%OPB-2045G 液

OPBG1.5 1.5%OPB-2045G 液

OPBG2 2%OPB-2045G 液

POC Proof-of-Concept

POD Post operative day(術後病日)

POEPOPG ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール

PPS Per protocol set(治験実施計画書に適合した解析対象集団)

PT Preferred term(基本語)

PVI 10%ポビドンヨード液(販売名:イソジン液 10%)

QOL Quality of life

SAL 生理食塩液(販売名:大塚生食注)

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2.5 臨床に関する概括評価

4

SAS Safety analysis set(安全性解析対象集団)

SOC System organ class(器官別大分類)

SSI Surgical site infection(手術部位感染)

TFM Topical Antimicrobial Drug Products for Over-the-Counter Human Use; Tentative Final Monograph for Health-Care Antiseptic Drug Products, 21CFR Part 333(OTC 局所ヘルスケア消毒薬製品の暫定的 終モノグラフ)

T-P 総蛋白

TSA Tryptic soy agar(トリプケースソイ寒天培地)

VEC 基剤[第 III 相試験(131-302):1.5%OPB-2045G 液の添加剤の組成に基づき調製したもので、有効成分オラネキシジングルコン酸塩を含まない液剤]

VRE Vancomycin-resistant Enterococci(バンコマイシン耐性腸球菌)

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2.5 臨床に関する概括評価

5

2.5 臨床に関する概括評価

2.5.1 製品開発の根拠

2.5.1.1 申請医薬品の薬理学的特性

OPB-2045G 液(本剤)は、有効成分として 1-(3,4-Dichlorobenzyl)-5-octylbiguanide

mono-D-gluconate(以下、オラネキシジングルコン酸塩1と称す)を含む無色~微黄色澄

明の液剤である。

本剤の作用機序は十分には解明されていないが、細菌の膜に結合し、膜構造の障害・

膜バリアー能の破壊により、細胞質成分の不可逆的漏出を引き起こし、殺菌活性を示す

と考えられる。また、比較的高濃度では、タンパク変性作用により菌を凝集させ、死滅

させると考えられる。

(1) 有効成分

本剤の有効成分の化学名、構造式及び分子式を表 2.5.1-1 に示す。

表 2.5.1-1 有効成分の化学名、構造式及び分子式 化学名 1-(3,4-Dichlorobenzyl)-5-octylbiguanide mono-D-gluconate

構造式

分子式 C17H27Cl2N5·C6H12O7(分子量:568.49)

(2) 添加剤を含む製剤組成

本剤の容器形態は、プラスチックボトルに本剤を充てんしたボトル(ボトル製剤)

と、簡単な操作で迅速かつ衛生的な本剤の塗布が期待できるアプリケータ(アプリケ

ータ製剤)とした。アプリケータ製剤は、本剤を 薬液容器(直接

容器)、薬液容器を開通するスリーブ、把持するハンドル及び本剤を塗布するフォーム

からなる(図 2.7.1.1.1-1 を参照)。

本剤の容器形態及び組成の概要を表 2.5.1-2 に示す。

1 モノビグアナイド系薬物

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2.5 臨床に関する概括評価

6

表 2.5.1-2 本剤の容器形態及び組成 名称 容器形態 組成

本剤(1.5%) ボトル製剤

製容器入り 200 mL 容量 オラネキシジングルコン酸塩

(C17H27Cl2N5·C6H12O7)を 1.5 w/v%及び添加物としてポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール*を w/v%含む液

本剤(1.5%) アプリケータ製剤

本剤 10 mL 又は 25 mL を薬液容器(直接容器)、薬液容器

を開通するスリーブ、把持するハンドル及び本剤を塗布するフォームからなる

*本剤(1.5%)の添加量は、殺菌消毒剤等の医薬品添加物としての使用実績がある。

2.5.1.2 目標適応症の臨床的/病態生理学的側面

本剤は「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」の効能・効果取得を目指して開発した。

現在、臨床現場ではヨード製剤、クロルヘキシジングルコン酸塩製剤が広く用いられて

いる 1,2)。

ヨード製剤は、術野消毒で繁用される濃度では黄色ブドウ球菌や腸球菌属を殺滅する

には数分を要するため、塗布後に十分な時間をとる必要があること 3)、殺菌消毒効果の

持続が短いこと 4)、ヨードアレルギーを有する者には使用できないなどの問題がある 5,6)。

また、腸球菌属に抵抗性を示す菌が報告されている 7)。

クロルヘキシジングルコン酸塩製剤は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を

はじめとするグラム陽性菌や、緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌等のグラム陰性菌に対

する殺菌消毒効果が十分でないことが報告されている 8-12)。

手術部位感染の原因菌としては、主に腸球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA を含む)、緑

膿菌などが報告されている 13,14)。更に、国内においてバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)

感染が報告されるようになり 14)、病院感染起因菌であるこれらの抵抗性菌に対して、適

切な感染予防対策が求められている。

手術部位感染は、術後在院日数の延長並びに術後医療費の増加を招く。2007 年 7 月か

ら 2010 年 12 月の間に胃手術を実施した症例を対象にした調査では、表層切開創の手術

部位感染が発生した場合、入院期間が約 7 日延長し、術後医療費が約 21 万円増加する

と推定されている 15)。

一方で、生体に使用できる安全な殺菌消毒剤の種類は限られており、50 年以上、本分

野に新規の有効成分を含有する殺菌消毒剤が導入されておらず、生体消毒薬の選択肢は

少ないのが現状である。

2.5.1.3 目標適応症に対して申請医薬品を開発することを支持する科学的背景

手術前の皮膚消毒の目的は、皮膚の表面に存在する一過性微生物(transient

microorganisms)と病原微生物(pathogenic microorganisms)を除去し、皮膚常在細菌叢

(細菌数)を低値に減らすことである 16)。

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2.5 臨床に関する概括評価

7

本剤の作用機序は十分には解明されていないが、細菌の膜に結合し、膜構造の障害・

膜バリアー能の破壊により、細胞質成分の不可逆的漏出を引き起こし、殺菌活性を示す

と考えられる。また、比較的高濃度では、タンパク変性作用により菌を凝集させ、死滅

させると考えられる。薬効薬理試験の結果、各種のグラム陽性及び陰性の一般細菌のみ

ならず、MRSA、VRE、緑膿菌、更にはセラチア菌、セパシア菌など消毒剤抵抗性を示

すといわれる細菌に対しても強い殺菌効果を示すことを確認した。したがって、本剤は、

臨床現場においても、手術部位感染の起因菌を含む従来の殺菌消毒剤に抵抗性を示す菌

に対しても殺菌効果が期待できると考えた。

手術部位の創感染に関して医療従事者(医師 名及び看護師 名)を対象とした

アンケート調査 17)を実施した結果、術後感染予防は患者の Quality of life(QOL)の低

下や医療費の増大などに繋がることから重要な課題であること、また、既存の生体消毒

薬に抵抗性を示す細菌に対する対策が必要であることが示唆された。

以上より、生体消毒薬は術後感染防止対策に重要な役割を担っているため、既存の生

体消毒薬の課題を解決できる可能性がある消毒薬は、感染防止対策における標準予防策

の観点から、術後感染予防対策の一助となることが示唆され、臨床現場に必要であると

考えられた。

そのため、手術部位(手術野)の皮膚の消毒の効能・効果取得を目指して、本邦にお

ける臨床開発に着手した。本邦には、アルコールを含有しない主な同種・同効薬として

表 2.5.1-3 に示す製品が市販されている。

2.5.1.4 殺菌消毒剤の臨床評価

米国では「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」を効能とする殺菌消毒剤の評価方法と

して、米国食品医薬品局(FDA)の Topical Antimicrobial Drug Products for Over-the-Counter

Human Use; Tentative Final Monograph for Health-Care Antiseptic Drug Products, 21 CFR Part

333(OTC 局所ヘルスケア消毒薬製品の暫定的 終モノグラフ):TFM18)が用いられてい

る。

一方、本邦では、2013 年 11 月に日本環境感染学会の消毒剤評価委員会から、手術部

位に用いる生体消毒薬の評価方法の標準化を目的として、「生体消毒薬の有効性評価指

針:手術野消毒 201319)」が公表された。手術部位に適用される消毒薬の標準試験法は、

TFM や TFM に必要な方法を示した ASTM international[旧称:American Society for Testing

and Materials(米国材料試験協会)](ASTM)の「手術前、カテーテル処置前又は注射前

皮膚製剤の評価のための標準試験法(Standard Test Method for Evaluation of Preoperative,

Precatheterization, or Preinjection Skin Preparations)」20)を参考に、本邦での手術野消毒薬の

使用状況を考慮して作成されている。

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2.5 臨床に関する概括評価

8

表 2.5.1-3 同種・同効薬の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の一覧(1/3) 一般的名称 ポビドンヨード クロルヘキシジングルコン酸塩

販売名(製造販売元) イソジン液 10%(Meiji Seika ファルマ株式会社) ステリクロン W 液 0.5(健栄製薬株式会社)

承認年月日 2008 年 3 月 27 日 1992 年 11 月 20 日

再審査年月日 再評価年月日

該当しない。 1982 年 8 月 10 日

該当しない。 該当しない。

規制区分 - 普通薬

化学構造式

剤型・含量 液剤 1 mL 中に有効成分ポビドンヨードを 100 mg(有効ヨウ素として 10 mg)含有する。

液剤 100 mL 中に有効成分クロルヘキシジングルコン酸塩を 0.5 g 含有する(0.5w/v%)。

禁忌 本剤又はヨウ素に対し過敏症の既往歴のある患者 (1)クロルヘキシジン製剤に対し過敏症の既往歴のある患者 (2)脳、脊髄、耳(内耳、中耳、外耳) [聴神経及び中枢神経に対して直接使用した場合は、難聴、神経障害を来すこ とがある。]

(3)膣、膀胱、口腔等の粘膜面 [クロルヘキシジン製剤の上記部位への使用により、ショック症状(初期症状: 悪心・不快感・冷汗・眩暈・胸内苦悶・呼吸困難・発赤等)の発現が報告され ている。]

効能・効果 手術部位(手術野)の皮膚の消毒、手術部位(手術野)の粘膜の消毒、皮膚・粘

膜の創傷部位の消毒、熱傷皮膚面の消毒、感染皮膚面の消毒 手指・皮膚の消毒、手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療機器の消毒 皮膚の創傷部位の消毒、手術室・病室・家具・器具・物品などの消毒 結膜囊の洗浄・消毒 産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒

用法・用量 (1) 手術部位(手術野)の皮膚の消毒、手術部位(手術野)の粘膜の消毒 本剤を塗布する。

(2) 皮膚・粘膜の創傷部位の消毒、熱傷皮膚面の消毒、感染皮膚面の消毒 本剤を患部に塗布する。

手指・皮膚の消毒、手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療機器の消毒 クロルヘキシジングルコン酸塩として 0.1~0.5%水溶液を用いる。 皮膚の創傷部位の消毒、手術室・病室・家具・器具・物品などの消毒 クロルヘキシジングルコン酸塩として 0.05%水溶液を用いる。 結膜囊の洗浄・消毒 クロルヘキシジングルコン酸塩として 0.05%以下の水溶液を用いる。 産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒 クロルヘキシジングルコン酸塩として 0.02%水溶液を用いる。

使用上の注意 (1) 慎重投与(次の患者には慎重に使用すること) 1) 甲状腺機能に異常のある患者[血中ヨウ素の調節ができず甲状腺ホルモン関

連物質に影響を与えるおそれがある。] 2) 重症の熱傷患者[ヨウ素の吸収により、血中ヨウ素値が上昇することがある。]

1. 慎重投与(次の患者には慎重に使用すること) (1) 薬物過敏症の既往歴のある患者 (2) 喘息等のアレルギー疾患の既往歴、家族歴のある患者

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2.5 臨床に関する概括評価

9

表 2.5.1-3 同種・同効薬の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の一覧(2/3) 一般的名称 ポビドンヨード クロルヘキシジングルコン酸塩

使用上の注意(続き) (2) 副作用

総症例 2377 例中副作用発現は 4 例 0.17%であり、その内容は瘙痒感 2 例、灼熱

感 1 例、発疹 1 例であった。(再評価結果) 1) 重大な副作用

ショック、アナフィラキシー様症状(呼吸困難、不快感、浮腫、潮紅、蕁麻

疹等)(0.1%未満)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が

認められた場合には、直ちに使用を中止し、適切な処置を行うこと。 2) その他の副作用

過敏症:発疹等(0.1%未満) 注)症状があらわれた場合には、使用を中止すること。 皮膚:接触皮膚炎、瘙痒感、灼熱感、皮膚潰瘍、皮膚変色(0.1%未満) 甲状腺:血中甲状腺ホルモン値(T3、T4値等)の上昇あるいは低下などの甲

状腺機能異常(0.1%未満) (3) 妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊娠中及び授乳中の婦人には、長期にわたる広範囲の使用を避けること。 (4) 臨床検査結果に及ぼす影響

酸化反応を利用した潜血試験において、本剤が検体に混入すると偽陽性を示す

ことがある。 (5) 適用上の注意

1) 使用部位 経口投与しないこと。

2) 使用時 ① 大量かつ長時間の接触によって接触皮膚炎、皮膚変色があらわれることがあ

るので、溶液の状態で長時間皮膚と接触させないこと。(本剤が手術時に体

の下にたまった状態や、ガーゼ・シーツ等にしみ込み湿った状態で、長時間

皮膚と接触しないよう消毒後は拭き取るか乾燥させるなど注意すること。)

② 眼に入らないように注意すること。入った場合には、水でよく洗い流すこと。 ③ 深い創傷に使用する場合の希釈液としては生理食塩液か注射用水を用い、水

道水や精製水を用いないこと。 ④ 石けん類は本剤の殺菌作用を弱めるので、石けん分を洗い落としてから使用

すること。

2. 重要な基本的注意 (1) ショック等の反応を予測するため、使用に際してはクロルヘキシジン製剤に

対する過敏症の既往歴、薬物過敏体質の有無について十分な問診を行うこと。 (2) 本剤は濃度に注意して使用すること。 (3) 結膜囊等特に敏感な組織に使用しなければならない場合には、濃度に注意し、

使用後滅菌精製水で水洗すること。 (4) 本剤を希釈して使用する場合は、調製後滅菌処理すること。

3. 副作用 本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。

(1) 重大な副作用 ショック:ショック(頻度不明)があらわれることがあるので観察を十分に

行い、悪心・不快感・冷汗・眩暈・胸内苦悶・呼吸困難・発赤等があらわれ

た場合は、直ちに使用を中止し、適切な処置を行うこと。 (2) その他の副作用

過敏症:発疹・発赤・蕁麻疹等(頻度不明) 注)このような症状があらわれた場合には、直ちに使用を中止し、再使用し

ないこと。 4. 適用上の注意

(1) 投与経路: 外用にのみ使用すること。

(2) 使用時: 1) 原液が眼に入らないように注意すること。

眼に入った場合には水でよく洗い流すこと。 2) 注射器、カテーテル等の神経あるいは粘膜面に接触する可能性のある器具を

本剤で消毒した場合は、滅菌精製水でよく洗い流した後使用すること。 3) 本剤の付着したカテーテルを透析に用いると、透析液の成分により難溶性の

塩を生成することがあるので、本剤で消毒したカテーテルは、滅菌精製水で

よく洗い流した後使用すること。 4) 血清、膿汁等の有機性物質は殺菌作用を減弱させるので、濃度、消毒時間等

に十分注意すること。

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2.5 臨床に関する概括評価

10

表 2.5.1-3 同種・同効薬の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の一覧(3/3) 一般的名称 ポビドンヨード クロルヘキシジングルコン酸塩

使用上の注意(続き) ⑤ 電気的な絶縁性をもっているので、電気メスを使用する場合には、本剤が対

極板と皮膚の間に入らないよう注意すること。

(6) その他の注意

1) 本剤を新生児に使用し、一過性の甲状腺機能低下を起こしたとの報告がある。 2) ポビドンヨード製剤を腟内に使用し、血中総ヨウ素値及び血中無機ヨウ素値

が一過性に上昇したとの報告がある。 3) 本剤を妊婦の腟内に長期間使用し、新生児に一過性の甲状腺機能低下があら

われたとの報告がある。 4) ポビドンヨード製剤を腟内に使用し、乳汁中の総ヨウ素値が一過性に上昇し

たとの報告がある。

5) 石けん類は本剤の殺菌作用を減弱させるので、予備洗浄に用いた石けん分を

十分に洗い落してから使用すること。 (3) 調製方法:

綿球・ガーゼ等は、本剤を吸着するので、これらを希釈溶液に浸漬して用い

る場合には、有効濃度以下とならないように注意すること。 (4) 器具等材質:

器具類の消毒に使用する本剤の希釈水溶液には、必要に応じ防錆剤として亜 硝酸ナトリウムを 1 g/L 添加する。

5. その他の注意 クロルヘキシジングルコン酸塩製剤の投与により、ショック症状を起こした患

者のうち、数例について、血清中にクロルヘキシジンに特異的な IgE 抗体が検

出されたとの報告がある。

参照した添付文書の作

成年月日 2011 年 4 月改訂(第 2 版) 2007 年 6 月改訂(第 2 版)

その他の主な製品販売

名(製造販売元) イオダイン M 消毒液 10%(健栄製薬株式会社) ステリクロン W 液 0.1

(健栄製薬株式会社) 0.1%グルコジン W 水、0.5%グルコジンW水 (以上すべてヤクハン製薬株式会社) 0.1%ヘキザック水 W、0.5%ヘキザック水W (以上すべて吉田製薬株式会社) 0.1W/V%マスキン水、0.5W/V%マスキン水 (以上すべて日興製薬株式会社)

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2.5 臨床に関する概括評価

11

2.5.1.5 外国における開発状況

米国において、Otsuka America Pharmaceutical, Inc.(OAPI)が本剤を開発してきた。

米国で実施された本剤の非臨床試験、更に米国で実施中であった Proof-of-Concept

(POC)試験[168-06-220-11(資料番号:5.3.5.4-1)]2で発現した肝機能検査値の異常(ALT、

AST の上昇)及び CK の上昇(いずれも因果関係不明)から、本剤の肝毒性及び骨髄毒

性の可能性が懸念され、 年 月 日付けで Full Clinical Hold となった(治験は中断

している)。

その後、OAPI は、追加の非臨床試験(毒性試験)及び本剤(0.278%)で第 I 相単回

投与試験[ -225-11(資料番号:5.3.5.4-2)]を実施し、その結果を FDA に提出し

た。FDA は、被験者へのリスクを評価するためには情報が不足しているとして、更に安

全性を確認するために単回投与・用量漸増試験を要請したが、OAPI は、米国において、

経営方針の変更から他の領域の薬剤の開発・販売を 優先することになり、本剤の開発

を一旦ペンディングしている。

なお、POC 試験( -220-11)は、適切かつ十分にコントロールされておらず3、

被験者へのリスクを評価するための情報が不足し、試験として無効であると FDA から

指摘され、試験は不成立と判断した。第 I相単回投与試験( -225-11)4は、本剤(0.278%)

を用いた試験であるが、本邦でも、本剤(0.278%)を用いた第 I 相試験(131-102)を実

施し、評価している。また、米国臨床試験データを日本の製造販売承認申請に利用する

ための民族的要因5を検討していない。そのため、米国で実施した 2 本の臨床試験成績は

評価資料とせず、参考資料とした(2.7.6.7 に個々の試験結果の概略を記載)。

2 Full Clinical Hold 時点で登録された被験者 214 名の安全性に関するデータを解析した結果、治験薬塗布

前の血液生化学的検査において、登録された被験者の 70 名に異常値が認められ、そのうち CK 上昇が

36 名に認められた。治験薬塗布後、治験責任医師により有害事象として認められた CK 上昇は、被験薬

が塗布された 197 名中 3 名であり、これら CK 上昇はアミノトランスフェラーゼ(AST、ALT)の上昇

を伴っていた。 3 同一被験者において、被験部位ごとに塗布された治験薬の種類が異なる。また、被験者は試験日の細菌

採取後に退所後、行動の制限規定がなく、3 日後に来所して事後検査を実施した。 4 治験薬との因果関係が認められた有害事象は発現していない。 5 医薬品第 I 相試験開始前相談(平成 年 月 日薬機審長発第 号)において、民族的要因の検

討事項として、皮膚表面に生息あるいは存在する細菌(常在菌あるいは一過性菌)及び菌種の民族的な

違い、皮膚感受性(皮膚刺激性及び光毒性)の民族的な違い、経皮吸収性の民族的な違い、汎用されて

いる殺菌消毒剤及びその用法・用量に関する地域間での違いが挙げられた。

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2.5 臨床に関する概括評価

12

2.5.1.6 承認申請に用いた臨床データパッケージ

承認申請に用いた臨床データパッケージを表 2.5.1-4 に示した。なお、いずれの臨床

試験も本剤のボトル製剤を使用して実施した。

表 2.5.1-4 承認申請に用いた臨床データパッケージ

試験名及び資料番号 実施国 試験デザイン 対象 投与 期間

資料の

取扱い

健康成人を対象とした OPB-2045G 液

の単回投与試験[第 I 相試験(131-102)] 資料番号:5.3.3.1-1

日本非盲検、非対照、用量漸増

試験 健康成人 男子

単回 塗布

評価

資料

健康成人を対象とした OPB-2045G 液

の薬物動態と安全性を検討する試験

[第 I 相試験(131-104)] 資料番号:5.3.3.1-2

日本

二重盲検、無作為化、プラ

セボ対照、並行群間比較試

健康成人 男性

単回 塗布

評価

資料

健康成人を対象とした OPB-2045G 液

の用量反応探索試験[第 II 相試験

(131-201)] 資料番号:5.3.5.1-1

日本

多施設共同、非盲検、無作

為化、プラセボ対照、並行

群間比較試験 健康成人

単回 塗布

評価

資料

健康成人を対象とした OPB-2045G 液

の安全性と有効性を検討する試験[第

I/II 相試験(131-202)] 資料番号:5.3.5.1-2

日本

多施設共同、非盲検、無作

為化、プラセボ対照、用量

漸増、並行群間比較試験健康成人 男子

単回 塗布

評価

資料非盲検、無作為化試験

多施設共同、非盲検、無作

為化、プラセボ対照、並行

群間比較試験 健康成人

腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者

を対象とした OPB-2045G 液の安全性

と薬物動態を確認する試験[第 III 相試

験(131-301)] 資料番号:5.3.5.1-4

日本

多施設共同、非盲検、無作

為化、実薬対照、並行群間

比較試験

腹腔鏡下での

消化器手術 施行予定患者

単回 塗布

評価

資料

健康成人を対象とした OPB-2045G 液

の有効性を検証する試験[第 III 相試験

(131-302)] 資料番号:5.3.5.1-3

日本

多施設共同、評価者盲検

(単盲検)、無作為化、プ

ラセボ対照及び実薬対照、

並行群間比較試験

健康成人 単回 塗布

評価

資料

A Proof-of-Concept, Phase II, Observer-Blinded, Placebo and Active Controlled, Randomized, Clinical Study to Determine the Concentration, Application Times, Efficacy, and Safety of OPB-2045 Gluconate Formulation as a Topical Antiseptic for Pre-operative and Pre-injection Skin Preparation( -220-11) 資料番号:5.3.5.4-1

米国

評価者盲検(単盲検)、無

作為化、プラセボ対照及び

実薬対照、並行群間比較試

健康成人 単回 塗布

参考

資料

A Single-Dose, Phase 1, Double-Blind, Placebo Controlled, Randomized, Parallel Group, Clinical Study of the Safety of 0.278% OPB-2045 Gluconate Formulation( -225-11) 資料番号:5.3.5.4-2

米国

二重盲検、無作為化、プラ

セボ対照、並行群間比較試

験 健康成人

単回 塗布

参考

資料

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2.5 臨床に関する概括評価

13

2.5.1.7 臨床開発計画の概略

本剤は、効能・効果として、「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」の取得(外皮用殺

菌消毒剤)を目指して、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(医薬品機構)の助言

を踏まえて、臨床開発を進めてきた。

本剤は、大塚製薬株式会社が創薬した OPB-2045(オラネキシジン塩酸塩水和物)6を

申請者が改良した製剤である。 において、 に

を の とし、更に としてポリオキシエチレ

ン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(POEPOPG)を添加7することにより、

の で な液剤とした。

臨床試験開始前に、医薬品安全性相談(平成 年 月 日薬機審長発第 号)

において、 の 、 の 、非臨床試験の項目について以下の助言

を得た。

-

6 は に ことから、 として

( )を添加した製剤であったが、 の である が

を有することが明らかとなり、平成 年 月に を した。 7 グルコノ-δ-ラクトン及び POEPOPG は医薬品添加物として使用実績があり、本剤における添加量は承認

前例の範囲内 8 医薬品品質相談(平成 年 月 日薬機審長発第 号)において、

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2.5 臨床に関する概括評価

14

臨床第 I 相試験開始前に、医薬品第 I 相試験開始前相談(平成 年 月 日薬機審長

発第 号)を実施した。当該相談では、海外データ(OAPI で実施する臨床試験

結果)の製造販売承認申請への利用を視野に入れていること、クローズドパッチテスト

の実施の可否等を踏まえて相談を行い、

との助言を得て、健康成人を対象とした OPB-2045G 液の単回投

与試験[第 I 相試験(131-102)]を実施した。

(1) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の単回投与試験[第 I 相試験(131-102)](資

料番号:5.3.3.1-1)

健康成人男子を対象にして、非盲検下で本剤(0.278、0.695 又は 1.39%)を腹部又

は鼠径部(各濃度、各部位、8 名)の 130 cm2 区画に 3.0 mL 単回開放塗布し、安全性

を確認しながらステップアップ9するとともに薬物動態を検討した。

安全性は、自覚症状・他覚所見、バイタルサイン、安静時 12 誘導心電図、臨床検査

及び皮膚所見を評価項目とし、治験薬塗布 72 時間後まで評価した。薬物動態は、治験

薬塗布 48 時間後まで血中及び尿中薬物濃度(いずれも、未変化体及び代謝物)を測定

して、評価した。

その結果、血清中及び尿中の OPB-2045 遊離塩基及び 7 種の代謝物の濃度は定量下

限未満であり、本剤(1.39%)(グルコン酸オラネキシジンとして 41.70 mg 相当)まで

忍容性があるものと判断した。

その後、米国では「2.5.1.5 米国における開発状況」に記載したように 年 月

日付けで Full Clinical Hold となった。

非臨床試験[ラット 4 週間反復皮下投与毒性試験(資料番号:4.2.3.2-1)、ラット 26

週間反復皮下投与毒性試験(資料番号:4.2.3.2-3)、イヌ 4 週間反復皮下投与毒性試験(資

料番号:4.2.3.2-5)、イヌ 13 週間反復皮下投与毒性試験(資料番号:4.2.3.2-6)及びイヌ

52 週間反復皮下投与毒性試験(資料番号:4.2.3.2-7)では、本剤投与による CK の増加

は認められなかった。ただし、第 I 相試験(131-102)では CK を測定していなかったた

め、第 II 相試験(131-201)以降は臨床検査項目に CK を追加することとした。

(2) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の用量反応探索試験[第 II 相試験(131-201)]

(資料番号:5.3.5.1-1)

健康成人を対象とし、本剤(0.278、0.695 及び 1.39%)の有効性及び用量反応関係

を検討するとともに、安全性及び忍容性を確認した(多施設共同、非盲検、無作為化、

プラセボ対照、並行群間比較試験)。プラセボ対照薬には生理食塩液を用い、治験薬は

腹部又は鼠径部に単回塗布(塗布 6 時間後の観察・検査後に除去)した。なお、実薬

として 10%ポビドンヨード液及び 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液を設定した。

9 step1:本剤(0.278%)、step2:本剤(0.695%)、step3:本剤(1.39%)

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2.5 臨床に関する概括評価

15

有効性の主要評価項目は以下とし、用量反応関係も検討した。

<主要評価項目>

- 各測定時点における被験薬群及び対照薬群の細菌数

- 各測定時点でのベースラインからの被験薬群及び対照薬群の細菌数変化量

- 各測定時点での対照薬群と被験薬の各用量群の細菌数変化量の差

- 被験薬の細菌数変化量に関する用量反応

安全性は、自覚症状・他覚所見、バイタルサイン、臨床検査及び皮膚所見を評価項

目とし、塗布翌日まで評価し、被験薬の忍容性も検討した。

第 II 相試験(131-201)を実施した結果、当該試験で用いた試験方法は、既存製品で

ある 10%ポビドンヨード液(販売名:イソジン液 10%)及び 0.5%クロルヘキシジング

ルコン酸塩液(販売名:ステリクロン W 液 0.5)の成績から、ベースライン細菌数が多

い鼠径部では本剤の十分な減菌効果が確認できた。しかし、腹部では、ベースラインの

細菌数が少なく、鼠径部ほど本剤の十分な減菌効果が確認できなかった。十分な減菌効

果が確認できなかった原因として、試験方法や本剤の濃度が考えられた。

そこで、表 2.5.1-5 に示すように試験方法を変更し、本剤の濃度を 1.5 及び 2%に上げ

て、安全性・有効性を探索検討するための第 I/II 相試験(131-202)を立案した。試験開

始前には、医薬品後期第 II 相試験開始前相談(平成 年 月 日薬機審長発第

号)を実施し、以下の助言を得て試験を実施した。なお、本剤の濃度を 2%に上げた場

合、1 日に使用される原薬の量が 2 g を超える可能性があることから、本剤の不純物10で

ある A* の混在量は、安全性の確認が必要な限度値に達すると考えられた。そのため、

不純物A* の遺伝毒性について検討(資料番号:4.2.3.7.5-1、-2、-3)したが、不純物A* は生体内

において遺伝毒性を有さないと考えられた(2.4.5 を参照)。また、不純物A* の量を増加させ

た本剤(2%)の強制劣化品をラットに単回皮下投与し、その毒性について 不純物A* 量のご

くわずかな本剤(2%)の と比較検討(資料番号:4.2.3.7.5-4)した結果、不純物A*

の量は認められた変化に影響を及ぼさないと考えられた。

10 製剤の不純物の取扱いについては、「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」

(平成 18 年 7 月 3 日薬食審査発第 0703004 号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)に定められて

おり、1 日に投与される原薬の量が 2 g を超える製剤の場合、混在量が 0.15%を超える分解生成物につ

いては、安全性の確認が必要とされている。

inouehirok
テキストボックス
*新薬承認情報提供時に置き換えた
kazuito
ノート注釈
kazuito : MigrationPending
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2.5 臨床に関する概括評価

16

表 2.5.1-5 臨床第 I/II 相試験における試験方法の変更点 項目 変更前 変更後

第 II 相試験(131-201) 第 I/II 相試験(131-202)

スクラブ回数 1 回 2 回

不活化剤の 添加時期

サンプリング後に回収した細菌サンプルに不活化剤を混和

不活化剤を含んだサンプリング液を使用

塗抹までの時間 以内 1 以内

(抗微生物薬安全

性評価基準 21))

11

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2.5 臨床に関する概括評価

17

(3) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の安全性と有効性を検討する試験[第 I/II 相試

験(131-202)](資料番号:5.3.5.1-2)

健康成人を対象とし、本剤(1、1.5 及び 2%)の安全性と有効性を検討した。本試

験は、本剤の安全性及び薬物動態を検討する試験 1(多施設共同、非盲検、無作為化、

プラセボ対照、用量漸増、並行群間比較試験)と正常な皮膚の皮膚常在細菌数を指標

として、細菌数減少量、用量反応及び安全性を検討する試験 2(多施設共同、非盲検、

無作為化、プラセボ対照、並行群間比較試験)で構成した。また、試験 2 を実施する

にあたり、皮膚の細菌数測定に用いるサンプリング液中の不活化剤の不活化効果を ex

vivo 試験(非盲検、無作為化試験)で確認することとした。試験 1 は、本剤(1%)を

使用するステップ 1、本剤(1.5%)を使用するステップ 2、本剤(2%)を使用するス

テップ 3 で構成し、安全性を確認しながらステップアップすることとした。

試験 1 の対照薬は、本剤の塗布による皮膚への影響と安全性を検討する目的で、被

験者への影響が も少ないと考えられる生理食塩液を、治験薬の基剤の安全性を検討

する目的で基剤(2%)を設定した。試験 2 では、既存の殺菌消毒剤である 10%ポビド

ンヨード液、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液の殺菌消毒効果も確認することか

ら、これらの製剤に対しても不活化剤が妥当であることを ex vivo 試験で確認した。試

験 2 では、プラセボ対照薬には生理食塩液を用い、実薬対照として 10%ポビドンヨー

ド液及び 0.5%クロルヘキシジン液を設定した。

治験薬は、試験 1 及び試験 2 では腹部及び鼠径部に単回塗布(それぞれ、塗布 72

時間後の観察・検査実施後及び塗布 6 時間後の細菌採取後に除去)、ex vivo 試験では

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2.5 臨床に関する概括評価

18

腹部に単回塗布(塗布 15 分後のサンプル採取後に除去)した。

いずれの試験においても、安全性は、臨床検査、バイタルサイン、自覚症状・他覚

所見及び皮膚所見を評価項目とし、治験薬除去後翌日まで評価した(試験 1 のみ安静

時 12 誘導心電図も評価)。

試験 1 において、薬物動態は、治験薬塗布 48 時間後まで血中薬物濃度(いずれも、

未変化体及び代謝物)を測定して評価した。

試験 2 における有効性の主要評価項目は以下とし、用量反応関係も検討した。

<主要評価項目>

細菌数減少量(被験薬群及び対照薬群の塗布 10 分後、塗布 6 時間後のベースライン

からの細菌数減少量)

第 I/II 相試験(131-202)を実施した結果、試験 1 において、本剤(1 又は 1.5%)を塗

布した各群 9 名中 1 名に OPB-2045 遊離塩基が検出された。

医薬品第 II 相試験終了後相談(オーファン以外)(平成 年 月 日薬機審長発

号)では、

ことは理解された。しかし、

との助言を得た

ため、健康成人を対象にして、OPB-2045G 液の薬物動態と安全性を検討する試験[第 I

相試験(131-104)]を立案し、試験を実施した。なお、

受け入れられた。

その他、第 I 相試験(131-104)は、医薬品第 II 相試験終了後相談(オーファン以外)

(平成 年 月 日薬機審長発 号)で得た以下の助言を踏まえて実施した。

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2.5 臨床に関する概括評価

19

(4) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の薬物動態と安全性を検討する試験[第 I 相試

験(131-104)](資料番号:5.3.3.1-2)

健康成人男性を対象とし、本剤(1.5%)の薬物動態及び安全性を検討した(二重盲

検、無作為化、プラセボ対照、並行群間比較試験)。プラセボ対照薬には基剤を用い、

治験薬は腹部及び鼠径部に単回塗布(塗布 72 時間後の観察・検査終了後に除去)した。

安全性は、臨床検査、バイタルサイン、自覚症状・他覚所見、安静時 12 誘導心電図

及び皮膚所見を評価項目とし、治験薬塗布 96 時間後まで評価した。薬物動態は、治験

薬塗布 96 時間後まで血中薬物濃度(未変化体及び代謝物)を測定して、評価した。

第 III 相試験(131-301)は、医薬品第 II 相試験終了後相談(オーファン以外)(平成

年 月 日薬機審長発 号)12で得た以下の助言を踏まえて実施した。

12

との助言を得た。

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2.5 臨床に関する概括評価

20

(5) 腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象とした OPB-2045G 液の安全性と薬物

動態を確認する試験[第 III 相試験(131-301)](資料番号:5.3.5.1-4)

腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象とし、本剤(1.5%)を手術部位(手術

野)の皮膚に塗布し、安全性及び薬物動態を確認した(多施設共同、非盲検、無作為

化、実薬対照、並行群間比較試験)。対照薬には 10%ポビドンヨード液を用い、治験

薬は手術部位に単回塗布した。

安全性は、自覚症状・他覚所見、皮膚所見、バイタルサイン及び臨床検査を評価項

目とし、7 post operative day(POD)まで評価した。薬物動態は、治験薬塗布 168 時間

後まで血中薬物濃度(未変化体及び代謝物)を測定して、評価した。また、手術後か

ら 30POD までの surgical site infection(SSI)の有無を確認した。

第 I/II 相試験(131-202)において、被験薬群[本剤(1、1.5 及び 2%)]の細菌数減少

量の用量反応性を 大対比法により検討した結果(生理食塩液を本剤ゼロ濃度とする)、

腹部及び鼠径部の塗布 10 分後及び塗布 6 時間後ともに被験薬群間では差がない L-end

型に も近かった。このことに加え、安全性の結果13も踏まえて、健康成人を対象とし

た OPB-2045G 液の有効性を検証する試験[第 III 相試験(131-302)]では本剤の濃度と

して 1.5%を選択した。試験開始前には、医薬品追加相談(オーファン以外)(平成

年 月 日薬機審長発 号)を実施し、得られた以下の助言を踏まえて試験を

実施した。

13 本剤(2%)で中等度の皮膚炎が 50 名中 1 名に発現(転帰は回復)し、使用時には注意を要すると考え

られた。

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2.5 臨床に関する概括評価

21

(6) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の有効性を検証する試験[第 III 相試験

(131-302)](資料番号:5.3.5.1-3)

健康成人を対象とし、本剤(1.5%)の有効性(プラセボ対照薬に対する優越性及び

実対照薬に対する非劣性)を検討した[多施設共同、評価者盲検(単盲検)、無作為化、

プラセボ対照及び実薬対照、並行群間比較試験]。本剤(1.5%)の有効成分であるオ

ラネキシジングルコン酸塩の殺菌消毒効果を検証するため、プラセボ対照薬には基剤

を設定した。治験薬は腹部及び鼠径部に単回塗布(塗布 6 時間後の観察・検査終了後

に除去)した。また、既存薬剤の殺菌消毒効果に対する本剤の非劣性を検証するため、

実対照薬として 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液を設定した。

有効性の主要及び副次評価項目は以下とした。

<主要評価項目>

- 腹部の治験薬塗布 10 分後の細菌数

- 鼠経部の治験薬塗布 10 分後の細菌数

14 第 I/II 相試験(131-202)の結果から、腹部における塗布 10 分後の細菌数の平均値を本剤では 0.30 log10

CFU/cm2、クロルヘキシジングルコン酸塩液では 0.30 log10 CFU/cm2、それらの共通の標準偏差を 0.70 log10 CFU/cm2、非劣性マージンを 0.344 と設定した。これらの条件に基づき、混合効果モデルでの治験

薬の 小 2 乗平均の群間差の解析に基づいて、クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤の非劣性

を検証[有意水準 0.025(片側検定)、検出力 0.8]するために必要となる被験者数を算出すると 1 群あ

たり 66 名となる(2.5.4.1(7)を参照)。 15 第 I/II 相試験(131-202)の結果から、鼠径部における塗布 10 分後の細菌数の平均値を本剤では 2.85 log10

CFU/cm2、クロルヘキシジングルコン酸塩液では 2.80 log10 CFU/cm2、それらの共通の標準偏差を 1.60 log10 CFU/cm2、非劣性マージンを 0.482 と設定した。これらの条件に基づき、混合効果モデルでの治験

薬の 小 2 乗平均の群間差の解析に基づいて、クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤の非劣性

を検証[有意水準 0.025(片側検定)、検出力 0.8]するために必要となる被験者数を算出すると 1 群あ

たり 217 名となる(鼠径部で必要となる被験者数では腹部の検出力はほぼ 100%となる)(2.5.4.1(7)を参

照)。 16 3.及び 4.の解析についても、1.及び 2.と同様、被験者を変量効果、群、被験箇所及び被験区画を固定効

果とした混合効果モデルでの治験薬の 小 2 乗平均の群間差を検定する。非臨床試験において基剤と生

理食塩液には殺菌作用がないことを確認しており、基剤の見かけ上の効果は生理食塩液の見かけ上の効

果と同程度と考えるものの、これらの効果の差が、本剤の見かけ上の効果と生理食塩液の見かけ上の効

果の差の 50%程度であると仮定して基剤の目標被験者数を算出する。なお、3.及び 4.の検出力がほぼ

100%となり、試験全体としての検出力が 80%を保つように設定する。

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2.5 臨床に関する概括評価

22

<副次評価項目>

1) 細菌数

- 腹部の治験薬塗布 10 分後

- 鼠経部の治験薬塗布 10 分後

- 腹部の治験薬塗布 6 時間後

- 鼠経部の治験薬塗布 6 時間後

2) 細菌数減少量

- 腹部の治験薬塗布 10 分後

- 鼠経部の治験薬塗布 10 分後

- 腹部の治験薬塗布 6 時間後

- 鼠経部の治験薬塗布 6 時間後

第 I 相試験(131-104)、第 III 相試験(131-301)及び第 III 相試験(131-302)を実施し

た結果、表 2.5.1-4 に示した承認申請に用いた臨床データパッケージで製造販売承認申

請が可能と判断したため、医薬品申請前相談(オーファン以外)(平成 年 月 日薬

機審長発第 号)を実施し、申請データパッケージの充足性、統合データパッケ

ージの妥当性について確認した。その結果、

は受け入れ可能との見解を得た。また、

は受け入

れ可能、

は受け入れ可能との見解を得た。

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2.5 臨床に関する概括評価

23

2.5.1.8 治験の倫理的実施

治験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則、治験実施計画書、薬事法第 14 条第 3

項及び第 80 条の 2 に規定する基準並びに医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令

等の関連法令を遵守して実施した。

治験責任医師及び治験分担医師は、被験者の選定にあたって、人権保護の観点から、

並びに、選択基準及び除外基準に基づいて、被験者の健康状態、症状、年齢、性別、同

意能力、他の治験への参加の有無等を考慮のうえ、治験への参加を求めることの適否に

ついて慎重に検討した。

被験者の登録及び症例報告書における被験者の特定は被験者番号で行うとともに、治

験の実施に係る原資料及び被験者の同意文書等の直接閲覧は、被験者の氏名、疾患等の

個人情報保護に十分配慮した。治験成績の公表についても同様に配慮することにしてい

る。なお、治験実施期間をとおして、倫理的な問題、故意や重大な過失による医療事故

に関する治験実施医療機関からの報告はなかった。

また、治験実施中から終了までの間に発生した重篤な有害事象、その他審査の対象と

なる文書が追加・更新・改訂された場合には、治験責任医師又は治験依頼者が実施医療

機関の長を経由して報告し、いずれも治験の継続が承認された。

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2.5 臨床に関する概括評価

24

2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価

本剤は、「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」の効能・効果取得を目指した外皮用新

規殺菌消毒剤であるため、in vitro 溶出試験、バイオアベイラビリティ試験、生物学的同

等性は実施していない。

第 I 相試験(131-102)及び第 II 相試験(131-201)では、 にて製剤化したも

のを用いたが、第 I/II 相試験(131-202)、第 I 相試験(131-104)及び第 III 相試験(131-301

及び 131-302)では、 に したものを用いた。 の により不

純物の混在量が増加したが、その混在量が、「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純

物に関するガイドライン」(平成 18 年 7 月 3 日薬食審査発第 0703004 号厚生労働省医薬

食品局審査管理課長通知)に規定される安全性確認の閾値(0.15%)17を超えているもの

はなかった。

17 本剤の場合、1 日に使用される有効成分(オラネキシジングルコン酸塩)の量が 2 g を超える可能性が

あったため、不純物の安全性確認の閾値として 0.15%を採用した。

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2.5 臨床に関する概括評価

25

2.5.3 臨床薬理に関する概括評価

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の単回投与試験[第 I 相試験(131-102)]、健康

成人を対象とした OPB-2045G 液の安全性と有効性を検討する試験[第 I/II 相試験

(131-202)]の試験 1、健康成人を対象とした OPB-2045G 液の薬物動態と安全性を検討

する試験[第 I 相試験(131-104)]、腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象とした

OPB-2045G 液の安全性と薬物動態を確認する試験[第 III 相試験(131-301)]の 4 つの

臨床試験で血清中薬物濃度を測定[第 I 相試験(131-102)のみ尿中薬物濃度も測定]し、

評価した。薬物濃度としては、OPB-2045 遊離塩基(未変化体)及び 7 代謝物(DM-210、

DM-211、DM-212、DM-213、DM-223、DM-224 及び DCBA)を測定した(代謝物の構

造式は図 2.5.3-1 を参照)。

なお、それぞれの臨床試験で、対象、塗布方法(塗布量)、測定時期が異なるため、

試験ごとに結果を記載する。各試験における治験薬塗布方法、血清中薬物濃度の測定時

期は、表 2.5.3-1 に示した。また、OPB-2045 遊離塩基及び 7 代謝物の定量下限値は表

2.5.3-2 に示した。

表 2.5.3-1 試験別の治験薬塗布方法と血清中薬物濃度の測定時期

試験名 治験薬塗布方法 血清中薬物濃度

の測定時期

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の

単回投与試験[第 I 相試験(131-102)]

(資料番号:5.3.3.1-1)

腹部又は鼠径部(130 cm2)

にマイクロピペットを用い

て繰り返し滴下(合計 3 mL)

塗布前、塗布 3、6、24、36、

48 時間後(尿中薬物濃度は

-12~0 時間、0~3 時間、3

~6 時間、6~24 時間、24

~36 時間、36~48 時間)

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の

安全性と有効性を検討する試験[第 I/II

相試験(131-202)]の試験 1(資料番号:

5.3.5.1-2)

各被験部位[腹部左右(260

cm2)]及び鼠径部左右(60

cm2)]に対して消毒剤塗布

用スポンジ 2 本を用いて 2

分間ずつ塗布

塗布前、塗布 1、3、6、24、

36、48 時間後

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の

薬物動態と安全性を検討する試験[第 I

相試験(131-104)](資料番号:5.3.3.1-2)

同上 塗布前、塗布 0.5、1、2、3、

6、24、72、96 時間後

腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者

を対象とした OPB-2045G 液の安全性と

薬物動態を確認する試験[第 III 相試験

(131-301)](資料番号:5.3.5.1-4)

綿球、スポンジ等に十分浸

み込ませて手術部位の皮膚

に塗布

塗布前、塗布 0.5、1、2、3、

24、72、168 時間後

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2.5 臨床に関する概括評価

26

表 2.5.3-2 OPB-2045 遊離塩基及び 7 代謝物の定量下限値

項目 未変化体 代謝物

OPB-2045 DM-210 DM-211 DM-212 DM-213 DM-223 DM-224 DCBA

血清

(ng/mL) 0.050 0.050 0.050 0.050 0.050 0.050 0.100 0.500

尿中

(ng/mL) 0.050 0.500 0.500 0.500 0.500 0.500 0.500 0.500

ヒト血清を用いたたん白結合試験(資料番号:4.2.2.3-2)を実施した結果、たん白結

合率は OPB-2045 0.1~10 µg/mL の範囲でヒト血清に対して約 99.0%であり、高いたん白

結合率を示すものの、その結合の特異性は低く、可逆的であった。

推定代謝経路(資料番号:4.2.2.2-5、4.2.2.4-1、-2、 -3)を図 2.5.3-1 に示す。

[図 2.6.4.5-1 を引用]

図 2.5.3-1 ラット、イヌ及びヒトにおける推定代謝経路

肝ミクロソーム薬物代謝酵素系への影響を検討(資料番号:4.2.2.6-1、-2)した結果、

OPB-2045 は CYP2B6、CYP2D6 及び CYP3A4 に対して弱い阻害作用を示したが、臨床

においてはそれぞれの分子種で代謝される薬物との直接的な薬物相互作用を起こす可

能性は低いと推察された。

DM-215

DM-218

DM-217

DM-230

3,4-Dicihlorobenzoic acid(DCBA)

OPB-2045遊離塩基DM-234

DM-220 DM-223

DM-211

DM-219

DM-221

DM-213

DM-212

DM-210

DM-224[R:rat, D:dog, H:human]

[R, D]

[H]

[H]

[R, D, H]

[R, H]

[R, H]

[H]

[H]

[H]

[H]

[D]

[D]

[D]

[D]

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2.5 臨床に関する概括評価

27

2.5.3.1 臨床薬理試験結果の概略

第 I 相試験(131-102)では、健康成人男性を対象にして、各被験者の治験薬塗布量を

3 mL に統一して薬物濃度測定を実施した。その結果、血清中及び尿中の OPB-2045 遊離

塩基及び 7 代謝物の濃度は、すべての濃度、測定時点で定量下限未満であったため、第

I/II 相試験(131-202)の試験 1 では、臨床使用を考慮して、塗布範囲を拡大、塗布方法

を変更し、血清中薬物濃度を測定した。

第 I/II 相試験(131-202)の試験 1 では、健康成人男性を対象にして、腹部左右(260 cm2)

及び鼠径部左右(60 cm2)の合計 4 箇所(計 320 cm2)に 1 箇所あたり 2 分間かけて、本

剤(1、1.5 又は 2%、各濃度 9 名)を塗布した。その結果、本剤(1%)群の 1 名におい

て塗布 1 時間後に OPB-2045 遊離塩基濃度が 0.276 ng/mL、本剤(1.5%)群の 1 名におい

て塗布 1 時間後に OPB-2045 遊離塩基濃度が 0.136 ng/mL 認められたが、本剤(2%)群

ではすべて定量下限未満であった。OPB-2045 遊離塩基の血清中薬物濃度が認められた 1

名[本剤(1%)群]では、有害事象は認められなかった。他の 1 名[本剤(1.5%)群]

では、総蛋白減少、血中乳酸脱水素酵素減少18の有害事象が認められたが、いずれも臨

床的に問題となるものではなかった。7 つの代謝物は本剤(1、1.5 及び 2%)群のいずれ

の測定時点でも定量下限未満であった。なお、治験薬の総塗布量19は、本剤(1%)群で

27~96 mL、本剤(1.5%)群で 24~55 mL、本剤(2%)群では 29~65 mL であった。

第 I/II 相試験(131-202)の試験 1 において、本剤が正常皮膚から経皮吸収される可能

性が示唆されたため、経皮吸収の有無及び経皮吸収された場合の血清中薬物濃度データ

を再度詳細に検討することが重要であり、臨床検査値の変動をはじめとする安全性と本

剤との因果関係について説明する上で有益な情報が得られると判断した。そのため、臨

床適用濃度として選択した本剤(1.5%)を用いて、健康成人を対象とした OPB-2045G

液の薬物動態と安全性を検討する試験[第 I 相試験(131-104)]を実施した。

第 I 相試験(131-104)では、健康成人男性を対象にして、第 I/II 相試験(131-202)の

試験 1 と同様に腹部左右(260 cm2)及び鼠径部左右(60 cm2)の合計 4 箇所(計 320 cm2)

に 1 箇所あたり 2 分間かけて、本剤(1.5%)を塗布した。その結果、血清中の OPB-2045

遊離塩基及び 7 代謝物の濃度は、すべての測定時点で定量下限未満であった。なお、治

験薬の総塗布量 19は、被験薬群 30.0~52.0 mL、対照薬群 30.0~50.0 mL であった。

第 III 相試験(131-301)では、腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象にして、

本剤(1.5%)を手術部位(手術野)の皮膚に塗布し、被験薬群で血清中薬物濃度を塗布

前、塗布 0.5、1、2、3、24、72、168 時間後に測定した20。その結果、血清中 OPB-2045

遊離塩基は 52 名中 25 名に認められた[ 高血清中薬物濃度(Cmax)は 1.536 ng/mL]。

塗布 0.5 時間後から一部の被験者に認められたが、塗布 168 時間後にはすべての被験者

18 有害事象名は日本語版 MedDRA/J ver をもとに読み替えた。総蛋白減少、血中乳酸脱水素酵素減少

とも重症度は軽度、重篤度は非重篤、治験薬との因果関係はなし 19 治験薬の総塗布量は治験薬を入れた容器の塗布前後の重量差から算出 20 1.5%OPB-2045G 液を手術部位(手術野)の皮膚に塗布し、乾燥させた後、手術施行のために皮膚を切

開し、その切開部から手術操作を行った。

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2.5 臨床に関する概括評価

28

で認められなかった。一方、7 代謝物のうち DM-210、DM-211、DM-212 又は DM-213

が認められた21が、DM-223、DM-224 及び DCBA は認められなかった。一部の被験者で

は塗布 168 時間後にも血清中濃度が認められた[OPB-2045 遊離塩基(未変化体)及び 7

代謝物の記述統計量は表 2.7.6.6-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13 を参照]。治験薬の総

使用量22は、25~200 mL であった。OPB-2045 遊離塩基、DM-210、DM-211、DM-212 及

び DM-213 について、Cmax、Area under the curve(AUC)0-t123、AUC0-t2

24と治験薬使用量

及び有害事象発現件数、年齢、塗布終了から手術開始までの時間、手術時間及び出血量

に関連はなく、Cmax、AUC0-t1、AUC0-t2と術式分類(切開創の長さ)の関連は考えにくか

った(2.7.2.2.2.4、2.7.6.6.5.2 及び 2.7.6.6.5.3 を参照)(資料番号:5.3.5.1-4)。そのため、

本剤が血中に移行した要因としては、被験者が手術施行のために治験薬塗布部位(胸部

から鼠径部)の皮膚を切開していること、切開部から手術操作を行っていることなどが

考えられた。

ただし、第 III 相試験(131-301)において、治験薬塗布前、52 名中 4 名の血清検体に

DM-212 が認められた。また、治験薬塗布前の血清検体の DM-212 測定結果を個別に解

析すると、測定濃度は定量下限未満であっても DM-212 の溶出時間付近にピークが検出

されている検体も認められた。この要因としては、本測定法のバリデーションはヒト血

清を用いて実施したが、131-301 試験では様々な併用薬剤を使用している被験者、様々

な合併疾患を有する被験者が治験に参加されているため、DM-212 の選択性に関して問

題が生じたものと考えた。そのため、DM-212 に関して新たな測定条件を検討した。パ

ーシャルバリデーション(選択性、検量線の直線性、同時再現性、日差再現性、マトリ

ックスの影響及びキャリーオーバーの影響)を実施し、判断基準を満たす測定法を確立

した(資料番号:5.3.1.4-21)。この測定法を用いて 131-301 試験で DM-212 が認められた

血清試料の再測定を実施した。再測定の結果、塗布前に DM-212 が認められていた検体

はすべて定量下限未満(<0.050 ng/mL)となった(DM-212 の再測定結果に基づく記述統

計量は表 2.7.6.6-14 を参照)。また、他の時点においても定量下限付近であった検体が、

定量下限未満になったものがあった。ただし、塗布後 1 時間以降の平均値が大きく変わ

るものではなかった。

21 DM-210 は 52 名中 36 名、DM-211 は 52 名中 16 名、DM-212 は 52 名中 37 名(再測定結果)、DM-213は 52 名中 10 名に認められた。

22 手術部位(手術野)の皮膚への塗布に使用した量(綿球等の塗布資材を使用して塗布を実施しており、

塗布資材中に残存している量、消毒部位から垂れ落ちた量も含まれており、総使用量の全量が皮膚に塗

布できたという意味ではない) 23 t1:血清中薬物濃度が認められた 後の実施時点(規定の実施時点) 24 t2:t1 の次の規定の実施時点(t1 が治験薬塗布 168 時間後の場合は、168 時間後とする)

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2.5 臨床に関する概括評価

29

2.5.3.2 臨床薬理試験結果のまとめ

健康成人を対象に、本剤(0.278、0.695 又は 1.39%)を塗布した第 I 相試験(131-102)

では、血清中及び尿中薬物濃度(未変化体及び 7 代謝物)は認められなかった。本剤の

濃度を 2%まで上げて(1、1.5 又は 2%を塗布)、健康成人を対象に実施した第 I/II 相試験

(131-202)の試験 1 では、本剤(1 又は 1.5%)を塗布した被験者に OPB-2045 遊離塩基

の血清中濃度が認められ、本剤が正常皮膚から経皮吸収される可能性が示唆された。そ

のため、検証的試験で用いる本剤の濃度として選択した 1.5%を用いて、再度、健康成人

を対象に第 I 相試験(131-104)を血清中薬物濃度の測定を実施した。その結果、OPB-2045

遊離塩基(未変化体)及び 7 代謝物は認められなかった。

一方、本剤は効能・効果として「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」の取得を目指し

て開発しており、実臨床における代表的な対象として、腹腔鏡下での消化器手術施行予

定患者を選択し、本剤(1.5%)を塗布後、手術施行にあたり皮膚に切開を加えた状況下

で、血清中薬物濃度を測定した[第 III 相試験(131-301)]。その結果、本剤(1.5%)を

塗布した 52 名中 25 名で OPB-2045 遊離塩基(未変化体)が認められたが、塗布 168 時

間後にはすべての被験者で認められなかった。また、7 代謝物のうち DM-210、DM-211、

DM-212 及び DM-213 が認められ、一部の被験者では塗布 168 時間後も血清中濃度が認

められた。

患者を対象にした試験(131-301)が健康成人を対象にした試験(131-102、131-104、

131-202 の試験 1)と主に異なる点は、被験者が、患者であること、全身麻酔下で被験薬

の塗布を受けていること、手術施行のために治験薬塗布部位(胸部から鼠径部25)の皮

膚を切開していること、切開部から手術操作を行っていることなどが挙げられる。これ

らの要因のいずれかにより本剤が血中に移行し、OPB-2045 遊離塩基及び代謝物が認め

られたものと考えた。ただし、OPB-2045 遊離塩基、代謝物(DM-210、DM-211、DM-212

及び DM-213)について、Cmax、AUC0-t126、AUC0-t2

27と治験薬使用量、有害事象発現件数、

年齢、塗布終了から手術開始までの時間、手術時間及び出血量に関連はなく、Cmax、

AUC0-t1、AUC0-t2と術式分類(切開創の長さ)の関連は考えにくかった。腹腔鏡下手術

と開腹手術では臓器に対する侵襲及び消毒薬の塗布範囲はほぼ同じであるが、切開創の

長さが異なる。そこで、臨床と同様な腹腔鏡下手術が可能で、外科医の手術操作の練習

用として用いられており 22)、かつ、皮膚構造がヒトに類似している 23)ミニブタを用いて、

術式、切開創の長さの違いが本剤の血中移行に影響を与えるか否かを検討した(資料番

号:4.2.2.7-1)。その結果、腹腔鏡下手術と開腹手術で血清中濃度推移に差がなかったこ

とから、本剤の血中移行は術式、切開創の長さによって影響されないことが示唆された。

ミニブタは、皮膚構造がヒトに類似していることから、本試験で示唆された本剤の血中

移行が術式、切開創の長さの違いに関わらず同様であったことはヒトに外挿できると判

25 本臨床試験では臍部も消毒を実施している。 26 t1:血清中薬物濃度が認められた 後の実施時点(規定の実施時点) 27 t2:t1 の次の規定の実施時点(t1 が治験薬塗布 168 時間後の場合は、168 時間後とする)

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2.5 臨床に関する概括評価

30

断した。

以上、健康成人を対象にした 3 つの臨床試験(131-102、131-104 及び 131-202 の試験

1)の結果から、正常皮膚からの経皮吸収性は低いと考えた。一方、本剤を塗布する代

表的な対象患者(本剤塗布後に皮膚を切開する手術患者)では、本剤は血中に移行する

ものと判断した。本剤が血中に移行する要因としては、ミニブタの試験結果も考慮し、

開腹手術等の切開創の長さではなく、手術操作に関連する要因が大きいと考えた。

なお、ビーグル犬を用いた非臨床試験(資料番号:4.2.1.3-3)では、OPB-2045 を静脈

内投与して心血管系への影響を確認した結果、0.3 mg/kg(OPB-2045G に換算した場合

0.408 mg/kg)以下の投与量では心血管系に影響は認められなかった。イヌの循環血液量

を 85 mL/kg24)とすると、0.3 mg/kg 投与直後の OPB-2045 遊離塩基の 高血液中濃度は

3.53 μg/mL と推察され、それ以下の濃度では心血管系に影響を及ぼさないと考えている。

第 III 相試験(131-301)で得られた Cmax 1.536 ng/mL は、その推定濃度よりも十分低値

であることから、本剤が心血管系に与える影響はほとんどないと考えた。

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2.5 臨床に関する概括評価

31

2.5.4 有効性の概括評価

有効性を評価した試験の試験デザイン及び対照薬を表 2.5.4-1 に示した。

表 2.5.4-1 有効性を評価した試験の試験デザイン及び対照薬 試験名 試験デザイン 対照薬

健康成人を対象とした

OPB-2045G 液の用量反応探索

試験[第 II 相試験(131-201)]

多施設共同、非盲検、無

作為化、プラセボ対照、

並行群間比較試験

【プラセボ対照薬】

・生理食塩液

【実薬】

・10%ポビドンヨード液

・0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液

健康成人を対象とした

OPB-2045G 液の安全性と有効

性を検討する試験[第 I/II 相試

験(131-202)]の試験 2

多施設共同、非盲検、無

作為化、プラセボ対照、

並行群間比較試験

【プラセボ対照薬】

・生理食塩液

【実薬】

・10%ポビドンヨード液

・0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液

健康成人を対象とした

OPB-2045G 液の有効性を検証

する試験[第 III 相試験

(131-302)]

多施設共同、評価者盲検

(単盲検)、無作為化、プ

ラセボ対照及び実薬対

照、並行群間比較試験

【プラセボ対照薬】

・基剤

【実対照薬】

・0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液

2.5.4.1 試験デザインの適切性

(1) 無作為化、盲検化の方法及び盲検性の維持

無作為化については、いずれの試験においても、薬剤群間の均衡を保つためブロッ

ク割付けを行った。

盲検性については、第 II 相試験(131-201)及び第 I/II 相試験(131-202)の試験 2

では、治験薬の性状や色調の違いから、治験薬の盲検性を保つことができないため非

盲検デザインとした。ただし、第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 では、有効性及び安

全性評価への影響を 小限にする方策として、安全性の評価医師、細菌サンプル採取

者、細菌サンプル取扱者及び細菌検査測定受託施設には各被験者の治験薬情報を秘匿

する手段を講じた。第 III 相試験(131-302)は、治験薬管理者及び治験薬塗布者には

盲検性が維持できない可能性があることから、評価者盲検(単盲検)デザインとした。

ただし、評価者盲検(単盲検)であってもバイアスを 小にするために、以下の手段

を講じた。

- 治験薬を症例単位で包装し、症例箱の外観は識別不能とした。

- 識別不能性を保証した症例箱に薬剤番号を付与し、開鍵までは治験薬の識別ができ

ないよう設定した。

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2.5 臨床に関する概括評価

32

- アンブラインドモニターを設置して、治験依頼者と独立した体制で治験薬の交付等

の業務を行った。

- 治験薬塗布時には被験者にアイマスク等を装着させ、どの治験薬が塗布されたか分

からないようにした。

- 治験薬管理者及び治験薬塗布者には各被験者の治験薬情報を秘匿する手段を講じた。

(2) 被験者選択

いずれの試験も健康成人を対象とし、被験者の選択にあたり、性別は不問とした。

ただし、本剤の有効性を適切に評価するために、被験部位が正常な皮膚状態にある者

を選択し、皮膚アレルギーの既往歴のある者、花粉症の者28、クロルヘキシジン含有

製剤に対してショック又は過敏症の既往歴のある者、妊婦、授乳中又は尿 HCG 検査

で妊娠の可能性が否定できなかった女性被験者、避妊に同意できない者等は対象から

除外した。

(3) 有効性評価項目

本剤は、手術部位(手術野)の皮膚の消毒の効能・効果取得を目指して、本邦での

臨床開発を進めてきた。手術前の皮膚消毒の目的は、皮膚の表面に存在する一過性微

生物(transient microorganisms)と病原微生物(pathogenic microorganisms)を除去し、

皮膚常在細菌叢を低値に減らすことである 16)。

米国では TFM18)に基づき、健康成人の皮膚常在菌の細菌数変化量を指標として、消

毒薬の有効性を評価29している。本邦には、新規殺菌消毒剤の評価に用いるガイドラ

インがないことから、TFM や TFM に必要な方法を示した ASTM の「手術前、カテー

テル処置前又は注射前皮膚製剤の評価のための標準試験法(Standard Test Method for

Evaluation of Preoperative, Precatheterization, or Preinjection Skin Preparations)」20)を参考

に、健康成人の皮膚常在菌の細菌数変化量を有効性評価の指標として第 II 相試験

(131-201)及び第 I/II相試験(131-202)の試験 2を実施した。なお、第 I/II相試験(131-202)

の試験開始前には、医薬品後期第 II 相試験開始前相談(平成 年 月 日薬機審長

発第 号)にて、試験方法(スクラブ回数、不活化剤の添加時期、塗抹までの

時間)の変更に関する助言を得て試験を実施した。また、第 III 相試験(131-302)の

試験開始前には、医薬品追加相談(オーファン以外)(平成 年 月 日薬機審長

28 症状のある者、薬剤を服用している者、試験期間中に薬剤を服用する可能性がある者 29 米国では「手術部位(手術野)の皮膚消毒」を効能とする殺菌消毒剤の評価方法として、米国食品医薬

品局(FDA)の TFM が用いられている。TFM では、「手術部位(手術野)の皮膚消毒」に関する OTC局所ヘルスケア消毒薬製品の有効性評価基準において、被験者に 2 週間以上全身性又は局所性の抗菌剤

などの使用制限と、非抗菌性の衛生ケア用品を使用し、順応させた後、試験薬を適用し、その 10 分以

内に皮膚常在細菌数が、ベースライン細菌数(塗布前)より腹部では 2.0 log10 CFU/cm2、鼠径部では 3.0 log10 CFU/cm2減少すること、また、少なくとも消毒後 6 時間までベースライン細菌数未満であることを

要求している。

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2.5 臨床に関する概括評価

33

発第 号)にて、有効性評価項目30に関する助言を得て試験を実施した。

以上、3 つの臨床試験で試験方法及び有効性評価項目が異なることから、有効性の

結果は試験別に記載することとした。3 つの臨床試験の試験方法及び有効性評価項目

については表 2.5.4-2 に示した。

表 2.5.4-2 有効性を評価した試験の試験方法及び有効性評価項目

項目 第 II 相試験 (131-201)

第 I/II 相試験 (131-202)の試験 2

第 III 相試験 (131-302)

スクラブ回数 1 回 2 回

不活化剤の 添加時期

サンプリング後に回収した細菌サンプルに不活化剤を混和

不活化剤を含んだサンプリング液を使用

塗抹までの時間 以内 1 以内

細菌数の計測 目視 目視又はコロニーカウンター

有効性評価項目 治験薬塗布 10 分後、6時間後のベースラインからの細菌数減少量

治験薬塗布 10 分後、6時間後のベースラインからの細菌数減少量

治験薬塗布 10 分後、6時間後の細菌数

(4) 対照薬の選択

「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」の効能・効果を有する既承認薬は、0.1~0.5%

クロルヘキシジングルコン酸塩液、10%ポビドンヨード液、0.5%クロルヘキシジング

ルコン酸塩アルコール液、10%ポビドンヨードアルコール液等である。

第 II 相試験(131-201)及び第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 では、殺菌消毒効果

を有さず、被験者への影響が も少ないと考えられる生理食塩液(有効性のゼロ用量)

をプラセボ対照薬として設定した。また、TFM では、新規殺菌消毒剤の有効性評価試

験を行う際に、FDA で既に承認されている製剤の殺菌効果を陽性対照薬として同時に

評価し、試験の妥当性を確認することが求められている。しかし、FDA で承認され

TFM で用いられる陽性対照薬は、本邦で手術部位(手術野)の皮膚の消毒薬として承

認されていない。そのため、本邦で手術部位(手術野)の皮膚の消毒薬として用いら

れている既存薬 2 剤(10%ポビドンヨード液及び 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩

液)を、試験方法による殺菌消毒効果を確認する目的で設定した。

第 III 相試験(131-302)では、既存製剤に対する本剤の非劣性を検証する目的で 0.5%

クロルヘキシジングルコン酸塩液を 類似薬31と考え実対照薬に設定した。また、オ

30 第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 の成績から、細菌サンプル採取区画によって採取される細菌数が異

なることが示唆された。また、細菌数減少量算出時のベースライン(細菌サンプル採取区画)はランダ

ムに選択され、細菌数減少量算出時において細菌区画による影響が懸念されることから、第 III 相試験

(131-302)では、有効性評価を細菌検査ポイントにおける細菌数により行うことに変更した。 31 OPB-2045G はモノビグアナイド系薬物であり、クロルヘキシジングルコン酸塩(ビグアナイド系殺菌

消毒剤)と化学構造上の類似性がある。本剤の殺菌スペクトルは、Spaulding による分類に準拠した分

類 26,27)では、クロルヘキシジングルコン酸塩と同じ低水準消毒薬に分類される。

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2.5 臨床に関する概括評価

34

ラネキシジングルコン酸塩自体の効果を明らかにするため、基剤をプラセボ対照薬に

設定した。

(5) 有効性評価に用いた細菌数のバリデーション

第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 及び第 III 相試験(131-302)において、細菌数の

測定は、細菌サンプルを採取後 以内に Tryptic soy agar(TSA)+培地(不活化剤

添加トリプティックソイ寒天培地)32に塗抹33後 35°C で 2 日間培養し、治験薬情報を

秘匿のうえ、細菌数を目視又はコロニーカウンターを用いて中央測定機関(三菱化学

メディエンス株式会社)で測定した。なお、細菌数の測定にあたり、中央測定機関に

おいて検体処理法の検討(資料番号:5.3.1.4-17)を行い、細菌数の採用基準を決定し

た34。

(6) 用法・用量

本剤は、手術部位(手術野)の皮膚の消毒に使用することを目的として開発した外

皮用殺菌消毒剤である。手術医療の実践ガイドライン 25)では、手術野の消毒薬の塗布

方法として、消毒薬を含ませた綿球を、皮膚切開部を中心にして、同心円状に又は渦

巻状に、中心部から外側に向けて順次塗布していくこと、一旦外側を消毒した綿球で

それよりも中心部を塗布しないこと、3 回程度塗布することが望ましいこと、ドレー

ン刺入部や皮膚切開の延長も考慮して、なるべく広範囲に消毒することが推奨されて

いる。実臨床では、手術部位(手術野)の皮膚消毒範囲及び塗布量は、手術内容、手

術部位により異なるため、塗布範囲及び塗布量を規定することは現実的ではないと判

断した。

臨床試験では、健康成人を対象にして、ヒト皮膚常在細菌に対する消毒効果を乾燥

部位の代表部位として腹部、湿潤部位の代表部位として鼠径部を選択して評価した。

塗布時間は、手術医療の実践ガイドラインには時間の規定がないため、消毒剤を十分

皮膚に接触させることが重要と考え、既承認薬の用法・用量を参考(表 2.5.1-3)に、

各被験部位を 2 分間という時間を規定して塗布した。

32 150 mm シャーレ及び 90 mm シャーレを使用 33 150 mm シャーレへの塗抹は spread 法、90 mm シャーレへの塗抹(原液及び 50 倍希釈菌液)は spiral法を用いた。

34 以下の 1.~6.の優先順で採用値を決定した。1. の場合、そ

の生菌数を採用、2. の場合、その生菌数を採用、

3. の場合、その生菌数を採用。ただし、

の場合、1 とした。4. の場合、その

生菌数を採用、5. の場合、その生菌数を採用、6.の場合、その生菌数を採用。ただし、

の場合、1 とした。

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2.5 臨床に関する概括評価

35

(7) 非劣性試験を用いた場合の分析感度と非劣性限界値の選択妥当性の根拠

第 III 相試験(131-302)では、ICH-E10(臨床試験における対照群の選択とそれに関

連する諸問題)を参考に、被験薬がプラセボ対照薬に対して優越性を示すことを明ら

かにしたうえで、被験薬の実対照薬に対する非劣性を示すことが、試験の適切な実施

の証明と有効性の検証につながると考えた。したがって、実対照薬に加え、プラセボ

対照薬を用いる三群比較試験35を実施することが妥当であると判断した。

上坂の報告 28)及び FDA Draft Guidance(2010)29)を参考にして、第 I/II相試験(131-202)

の試験 2 の結果を利用し、実対照薬(0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液)とプラ

セボ対照薬(生理食塩液)との治験薬塗布 10 分後の細菌数平均値の差の 95%信頼区

間下限値を実対照薬(0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液)が検証的試験で持つと

想定される有効性(M1)とした。また、少なくとも M1 の 2/3 の有効性を本剤が保持

すれば 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する非劣性を示すことができると

考え、M2=(1-2/3)×(M1)の計算式で腹部、鼠径部個々に非劣性マージン(M2)を

設定した。 、医薬品追加相談(オーファン以外)(平

成 年 月 日薬機審長発 号)にて確認した。

(8) 統計学的手法

第 II 相試験(131-201)、第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 及び第 III 相試験(131-302)

では、有効性の主たる解析対象集団を Full analysis set(FAS)とし、併せて Per protocol

set(PPS)でも解析を実施し、結果の頑健性を確認した。

第 II 相試験(131-201)では、以下の解析を行い、ベースラインからの細菌数変化量

の差及び被験薬の用量反応関係を検討した。

1) ベースラインからの細菌数変化量の差

治験薬群ごと、測定時点ごと(塗布 10 分後及び 6 時間後)にベースラインからの

細菌数変化量を求め、paired t-test(α=0.025、片側)を用いて変化量の平均値が 0 以

上であることを検討するとともに、細菌数変化量の平均値の 100(1−α)%信頼区間

を求める。また、対照薬群との平均値の差の点推定値と 100(1−α)%信頼区間を求

める。

2) 用量反応関係

被験薬の各用量群と各測定時点における細菌数変化量との用量反応関係について、

Shirley-Williams 検定(α=0.025、片側)を用いて検討する。

第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 では、以下の解析を行い、細菌数減少量及び用量

反応関係を検討した。

35 4 つの仮説を検証(腹部におけるクロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤の非劣性、鼠径部にお

けるクロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤の非劣性、腹部における基剤に対する本剤の優越性、

鼠径部における基剤に対する本剤の優越性)

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2.5 臨床に関する概括評価

36

1) 細菌数減少量

被験薬群と対照薬群との細菌数減少量の平均値の差の点推定値と 95%信頼区間を

求め、2 標本 t 検定(α=0.025、片側)により細菌数減少量の平均値に関して群間で

有意な差があるかどうかを評価する。また、被験薬の各用量群及び対照群について、

各測定時点における細菌数減少量の記述統計量、平均値の点推定値と 95%信頼区間

を求める。

2) 用量反応関係

被験薬の各用量群と各測定時点における細菌数減少量との用量反応関係について、

大対比法を用いて評価する。

第 III 相試験(131-302)では、医薬品追加相談(オーファン以外)(平成 年 月

日薬機審長発 号)の助言を踏まえて、被験者を変量効果、被験箇所及び被

験区画を固定効果とした混合効果モデルを用いて、以下の解析を行い、群の 小二乗

平均で治験薬塗布 10 分後の細菌数(有効性の主要評価項目)を評価した。

1) 腹部における非劣性検証

非劣性マージン M2=0.344 のもとで、μCHG − μOPB − tα, I × σI > −M2の計算式36に

基づいて、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤(1.5%)の非劣性を

検証する。

2) 鼠径部における非劣性検証

非劣性マージン M2=0.482 のもとで、μCHG − μOPB − t , I × σI > −M2 の計算式 36

に基づいて、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤(1.5%)の非劣性

を検証する。

3) 腹部及び鼠径部における優越性検証 μVEC μOPBS > t , Sの計算式 36に基づいて、本剤(1.5%)の細菌数の 小二乗平均が

基剤より有意に小さいことを検証する。

36 μOPB:本剤(1.5%)の 小二乗平均、μCHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液の 小二乗平均、μVEC:基剤の 小二乗平均、σI:μCHG − μOPBの標準誤差、σS:μVEC − μOPBの標準誤差、dfI:μCHG − μOPBの自

由度、dfS:μVEC − μOPBの自由度、α:有意水準(片側、α = 0.025)、t , :自由度 df の t 分布の上側α点

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2.5 臨床に関する概括評価

37

2.5.4.2 有効性の結果

第 II 相試験(131-201)、第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 及び第 III 相試験(131-302)

の 3 つの臨床試験で試験方法及び有効性評価項目(表 2.5.4-2)が異なることから、有効

性の結果は試験別に記載することとした。

(1) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の用量反応探索試験[第 II 相試験(131-201)]

(資料番号:5.3.5.1-1)

健康成人を対象に、被験薬として本剤(0.278、0.695 又は 1.39%)、対照薬として生

理食塩液、実薬として 10%ポビドンヨード液又は 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩

液を腹部又は鼠径部に単回塗布し、有効性として治験薬塗布 10 分後、6 時間後のベー

スラインからの細菌数変化量を評価した。

解析対象は 160 名(腹部 76 名、鼠径部 84 名)で、腹部に治験薬を塗布した被験者

の内訳は、本剤(0.278%)群 14 名、本剤(0.695%)群 12 名、本剤(1.39%)群 13 名、

生理食塩液群 13 名、10%ポビドンヨード液群 12 名、0.5%クロルヘキシジングルコン

酸塩液群 12 名、鼠径部に治験薬を塗布した被験者の内訳は、本剤(0.278%)群 13 名、

本剤(0.695%)群 14 名、本剤(1.39%)群 15 名、生理食塩液群 13 名、10%ポビドン

ヨード液群 14 名、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群 15 名であった。

被験薬群では、腹部において、本剤(0.278%)群及び本剤(0.695%)群の塗布 6 時

間後以外で、細菌数はベースラインから有意に減少していることが示された。鼠径部

においては、いずれの被験薬群、いずれの測定時点でも、細菌数はベースラインから

有意に減少していることが示された。一方、対照薬群では、腹部、鼠径部とも、いず

れの測定時点でも、細菌数のベースラインからの有意な減少は示されなかった[表

2.7.3.2.1-7(腹部)、表 2.7.3.2.1-8(鼠径部)を参照]。

当該試験で用いた試験方法は、ベースライン細菌数が多い鼠径部では本剤の十分な減

菌効果が確認できたが、腹部は、ベースラインの細菌数が少なく、鼠径部ほど本剤の十

分な減菌効果が確認できなかった。十分な減菌効果が確認できなかった原因として、試

験方法や本剤の濃度が考えられた。そこで、試験方法を変更(表 2.5.4-2)し、本剤の濃

度を 1.5 及び 2%に上げて、第 I/II 相試験(131-202 試験)を立案し、試験を実施した。

試験開始前には、医薬品後期第 II 相試験開始前相談(平成 年 月 日薬機審長発第

号)を実施した。

(2) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の安全性と有効性を検討する試験[第 I/II 相試

験(131-202)](資料番号:5.3.5.1-2)の試験 2

健康成人を対象に、被験薬として本剤(1、1.5 又は 2%)、対照薬として生理食塩液、

実薬として 10%ポビドンヨード液又は 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液を腹部

及び鼠径部に単回塗布し、有効性として治験薬塗布 10 分後、6 時間後のベースライン

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2.5 臨床に関する概括評価

38

からの細菌数変化量を評価した。

解析対象例は 216 名で、被験者の内訳は、本剤(1%)群、本剤(1.5%)群、本剤(2%)

群、生理食塩液群、10%ポビドンヨード液群及び 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩

液群いずれも各 36 名であった。

被験薬群及び対照薬群(生理食塩液群)の各測定時点におけるベースラインからの

細菌数減少量の記述統計量、平均値の 95%信頼区間及び解析結果を表 2.5.4-3(腹部)、

表 2.5.4-4(鼠径部)に示す。また、実薬群の各測定時点におけるベースラインからの

細菌数減少量の記述統計量、平均値の 95%信頼区間及び解析結果を表 2.5.4-5(腹部)、

表 2.5.4-6(鼠径部)に示す。いずれの治験薬群も、腹部、鼠径部とも、塗布 10 分後

及び塗布 6 時間後の測定時点でベースラインからの細菌数減少量は有意に 0 より大き

かった(P<0.05)。

TFM の有効性評価基準37の観点から、塗布 10 分後は、腹部では対照薬群を除いて、

いずれの治験薬群も基準を満たした。一方、鼠径部では、基準を満たしたのは 10%ポ

ビドンヨード液群のみで、被験薬群及び既承認の 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩

液群は基準を満たさなかった。また、塗布 6 時間後は、腹部、鼠径部ともにいずれの

治験薬群も基準を満たした。

37 TFM では、「手術部位(手術野)の皮膚消毒」に関する OTC 局所ヘルスケア消毒薬製品の有効性評価

基準において、被験者に 2 週間以上全身性又は局所性の抗菌剤などの使用制限と、非抗菌性の衛生ケア

用品を使用し、順応させた後、試験薬を適用し、その 10 分以内に皮膚常在細菌数が、ベースライン細

菌数(塗布前)より腹部では 2.0 log10 CFU/cm2、鼠径部では 3.0 log10 CFU/cm2減少すること、また、少

なくとも消毒後 6 時間までベースライン細菌数未満であることを要求している。

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2.5 臨床に関する概括評価

39

表 2.5.4-3 被験薬群及び対照薬群の各測定時点におけるベースラインからの細菌数減少量(Full Analysis Set:FAS)腹部

95%CI:95%信頼区間、細菌数減少量の単位:LogCFU OPBG1:本剤(1%)群、OPBG1.5:本剤(1.5%)群、OPBG2:本剤(2%)群、SAL:生理食塩液群 [治験総括報告書 表 11.4-6(資料番号 5.3.5.1-2)]

治験薬群 10分 6時間OPBG1 記述統計量 箇所数 72 72

平均値 2.260 1.114 標準偏差 0.965 0.875

大値 3.790 3.210 上側四分位点 2.945 1.660 中央値 2.505 1.070 下側四分位点 1.845 0.485

小値 -0.940 -0.940 平均値の95%CI 上側限界 2.487 1.319

下側限界 2.033 0.908 t検定 自由度 71.000 71.000

t値 19.877 10.796 P値 0.00000 0.00000

OPBG1.5 記述統計量 箇所数 72 72 平均値 2.391 0.672 標準偏差 0.862 1.160

大値 3.650 3.660 上側四分位点 3.010 1.435 中央値 2.470 0.585 下側四分位点 1.950 0.080

小値 -0.880 -2.860 平均値の95%CI 上側限界 2.594 0.944

下側限界 2.188 0.399 t検定 自由度 71.000 71.000

t値 23.527 4.916 P値 0.00000 0.00000

OPBG2 記述統計量 箇所数 72 72 平均値 2.398 0.743 標準偏差 0.834 0.829

大値 3.690 2.680 上側四分位点 2.990 1.385 中央値 2.520 0.755 下側四分位点 2.210 0.095

小値 -0.120 -0.970 平均値の95%CI 上側限界 2.594 0.938

下側限界 2.202 0.548 t検定 自由度 71.000 71.000

t値 24.409 7.602 P値 0.00000 0.00000

SAL 記述統計量 箇所数 72 72 平均値 1.239 0.598 標準偏差 0.657 0.828

大値 2.710 2.330 上側四分位点 1.605 1.145 中央値 1.275 0.570 下側四分位点 0.845 0.225

小値 -0.550 -2.290 平均値の95%CI 上側限界 1.394 0.793

下側限界 1.085 0.404 t検定 自由度 71.000 71.000

t値 16.014 6.134 P値 0.00000 0.00000

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2.5 臨床に関する概括評価

40

表 2.5.4-4 被験薬群及び対照薬群の各測定時点におけるベースラインからの細菌数減少量(FAS)鼠径部

95%CI:95%信頼区間、細菌数減少量の単位:LogCFU OPBG1:本剤(1%)群、OPBG1.5:本剤(1.5%)群、OPBG2:本剤(2%)群、SAL:生理食塩液群 [治験総括報告書 表 11.4-7(資料番号 5.3.5.1-2)]

治験薬群 10分 6時間OPBG1 記述統計量 箇所数 72 72

平均値 2.308 1.878 標準偏差 1.919 1.385

大値 6.140 4.180 上側四分位点 3.385 2.915 中央値 2.255 2.065 下側四分位点 1.075 1.230

小値 -1.620 -1.320 平均値の95%CI 上側限界 2.758 2.203

下側限界 1.857 1.552 t検定 自由度 71.000 71.000

t値 10.205 11.505 P値 0.00000 0.00000

OPBG1.5 記述統計量 箇所数 71 71 平均値 2.557 1.735 標準偏差 1.799 1.333

大値 6.210 4.280 上側四分位点 3.550 2.580 中央値 2.340 1.840 下側四分位点 1.570 0.960

小値 -2.160 -1.940 平均値の95%CI 上側限界 2.983 2.050

下側限界 2.131 1.419 t検定 自由度 70.000 70.000

t値 11.977 10.968 P値 0.00000 0.00000

OPBG2 記述統計量 箇所数 71 72 平均値 2.284 1.890 標準偏差 1.942 1.315

大値 6.540 5.450 上側四分位点 3.610 2.800 中央値 2.250 2.095 下側四分位点 0.820 1.085

小値 -1.570 -1.190 平均値の95%CI 上側限界 2.743 2.199

下側限界 1.824 1.581 t検定 自由度 70.000 71.000

t値 9.911 12.194 P値 0.00000 0.00000

SAL 記述統計量 箇所数 71 71 平均値 0.876 1.094 標準偏差 1.247 1.242

大値 3.190 3.190 上側四分位点 1.770 2.160 中央値 0.940 1.140 下側四分位点 0.090 0.410

小値 -2.240 -3.200 平均値の95%CI 上側限界 1.171 1.388

下側限界 0.581 0.800 t検定 自由度 70.000 70.000

t値 5.918 7.425 P値 0.00000 0.00000

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2.5 臨床に関する概括評価

41

表 2.5.4-5 実薬群の各測定時点におけるベースラインからの細菌数減少量(FAS)腹部

95%CI:95%信頼区間、細菌数減少量の単位:LogCFU PVI:10%ポビドンヨード液群、CHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群 [治験総括報告書 表 11.4-14(資料番号 5.3.5.1-2)]

表 2.5.4-6 実薬群の各測定時点におけるベースラインからの細菌数減少量(FAS)鼠径部

95%CI:95%信頼区間、細菌数減少量の単位:LogCFU PVI:10%ポビドンヨード液群、CHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群 [治験総括報告書 表 11.4-15(資料番号 5.3.5.1-2)]

治験薬群 10分 6時間PVI 記述統計量 箇所数 72 72

平均値 2.462 1.050 標準偏差 0.814 1.304

大値 4.290 3.730 上側四分位点 3.010 1.935 中央値 2.460 1.060 下側四分位点 2.080 0.220

小値 -0.510 -3.330 平均値の95%CI 上側限界 2.653 1.356

下側限界 2.270 0.743 t検定 自由度 71.000 71.000

t値 25.653 6.831 P値 0.00000 0.00000

CHG 記述統計量 箇所数 71 71 平均値 2.359 0.814 標準偏差 0.607 0.943

大値 3.680 3.020 上側四分位点 2.670 1.470 中央値 2.420 0.780 下側四分位点 2.010 0.160

小値 0.520 -1.090 平均値の95%CI 上側限界 2.502 1.037

下側限界 2.215 0.591 t検定 自由度 70.000 70.000

t値 32.718 7.272 P値 0.00000 0.00000

治験薬群 10分 6時間PVI 記述統計量 箇所数 69 71

平均値 3.196 1.918 標準偏差 1.953 1.534

大値 6.740 5.290 上側四分位点 4.750 3.040 中央値 3.300 2.480 下側四分位点 1.870 0.680

小値 -1.430 -1.490 平均値の95%CI 上側限界 3.666 2.281

下側限界 2.727 1.555 t検定 自由度 68.000 70.000

t値 13.594 10.537 P値 0.00000 0.00000

CHG 記述統計量 箇所数 72 72 平均値 2.680 2.019 標準偏差 1.635 1.138

大値 6.230 4.260 上側四分位点 3.990 2.830 中央値 2.560 2.000 下側四分位点 1.560 1.280

小値 -1.390 -1.230 平均値の95%CI 上側限界 3.064 2.287

下側限界 2.296 1.752 t検定 自由度 71.000 71.000

t値 13.913 15.056 P値 0.00000 0.00000

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2.5 臨床に関する概括評価

42

細菌数減少量の平均値は、腹部では、塗布 10 分後にすべての被験薬群で生理食塩液

群と有意な差があり(P<0.05)、塗布 6 時間後に本剤(1%)群で生理食塩液群と有意

な差があった(P<0.05)。また、鼠径部では、塗布 10 分後及び 6 時間後においてすべ

ての被験薬群で生理食塩液群と有意な差があった(P<0.05)[被験薬の各用量群と対照

薬群の各測定時点における細菌数減少量の差の点推定値、95%信頼区間及び解析結果

は表 2.7.3.2.2-3(腹部)、表 2.7.3.2.2-4(鼠径部)を参照]。

実薬群と生理食塩液群との細菌数減少量の平均値の差の点推定値は、10%ポビドン

ヨード液群の腹部では、塗布 10 分後及び 6 時間後ともに 0 より大きく、それらの 95%

信頼区間に 0 を含まなかった。0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群の腹部では、

塗布 10 分後及び 6 時間後ともに 0 より大きかったが、それらの 95%信頼区間に塗布

10 分後は 0 を含まず、塗布 6 時間後は 0 を含む結果であった。また、鼠径部では、塗

布 10 分後及び 6 時間後とも、いずれの実薬群でも 0 より大きく、それらの 95%信頼

区間に 0 を含まなかった[実薬群と対照薬群の各測定時点における細菌数減少量の差

の点推定値、95%信頼区間は表 2.7.3.2.2-7(腹部)、表 2.7.3.2.2-8(鼠径部)を参照]。

大対比法により用量反応性を検討した結果、被験薬群には明らかな正の用量反応

性は認められなかったが、すべての被験薬群で塗布 10 分後に殺菌効果が期待できると

考えられた。塗布 6 時間後は本剤(1%)群を除き、生理食塩液群と差が認められなか

ったが、実薬の 0.5%クロルヘキシジン液群も同様であり、効果は同程度であると考え

られた。

その他の解析として、細菌採取区画の細菌数への影響について検討した。腹部では

細菌採取区画の影響が十分に小さく、ベースラインの細菌数は採取区画ごとに大きく

は異ならなかった(表 2.5.4-7)。しかし、鼠径部では、採取区画 No.8 の細菌数が他の

採取区画より少なかった(表 2.5.4-8)ことから、鼠径部では、採取区画が細菌数に影

響を及ぼすことが示唆された。

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2.5 臨床に関する概括評価

43

表 2.5.4-7 ベースラインにおける採取区画ごとの細菌数(FAS)腹部

細菌数の単位:LogCFU BSLN:ベースライン(塗布前) OPBG1:本剤(1%)群、OPBG1.5:本剤(1.5%)群、OPBG2:本剤(2%)群 SAL:生理食塩液群、PVI:10%ポビドンヨード液群、CHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群 [治験総括報告書 表 14.2-1 を改変(資料番号 5.3.5.1-2)]

表 2.5.4-8 ベースラインにおける採取区画ごとの細菌数(FAS)鼠径部

細菌数の単位:LogCFU BSLN:ベースライン(塗布前) OPBG1:本剤(1%)群、OPBG1.5:本剤(1.5%)群、OPBG2:本剤(2%)群 SAL:生理食塩液群、PVI:10%ポビドンヨード液群、CHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群 [治験総括報告書 表 14.2-2 を改変(資料番号 5.3.5.1-2)]

時期 区画 記述統計量 治験薬群OPBG1 OPBG1.5 OPBG2 SAL PVI CHG

BSLN L2、R2 箇所数 24 24 24 24 24 23 平均値 2.795 2.725 2.721 2.713 2.784 2.699標準偏差 0.412 0.580 0.362 0.511 0.558 0.469

L3、R3 箇所数 24 24 24 24 24 24 平均値 2.980 2.641 3.006 2.981 2.853 2.883標準偏差 0.417 0.513 0.521 0.338 0.632 0.414

L4、R4 箇所数 24 24 24 24 24 24 平均値 2.865 2.562 2.652 2.709 2.505 2.541標準偏差 0.747 0.571 0.671 0.604 0.559 0.469

全体 箇所数 72 72 72 72 72 71 平均値 2.880 2.643 2.793 2.801 2.714 2.708標準偏差 0.546 0.551 0.548 0.506 0.595 0.467

時期 区画 記述統計量 治験薬群OPBG1 OPBG1.5 OPBG2 SAL PVI CHG

BSLN L6、R6 箇所数 24 24 24 24 23 24 平均値 5.943 5.788 5.933 5.991 5.761 5.906標準偏差 0.661 0.866 0.530 0.479 1.145 0.585

L7、R7 箇所数 24 23 24 23 24 24 平均値 5.819 5.539 5.790 5.738 5.727 5.828標準偏差 0.740 0.891 0.597 0.681 0.811 0.562

L8、R8 箇所数 24 24 24 24 24 24 平均値 4.321 4.351 4.189 4.763 4.041 4.707標準偏差 1.108 1.326 1.174 1.038 1.327 1.013

全体 箇所数 72 71 72 71 71 72 平均値 5.361 5.221 5.304 5.494 5.168 5.480標準偏差 1.126 1.215 1.134 0.929 1.366 0.922

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2.5 臨床に関する概括評価

44

以上の第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 の有効性の結果及び安全性の結果38を踏まえ、

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の有効性を検証する試験[第 III 相試験(131-302)]

では本剤の濃度として 1.5%を選択した。試験開始前には、医薬品追加相談(オーファン

以外)(平成 年 月 日薬機審長発第 号)にて、有効性評価項目39に関す

る助言を得て試験を実施した。

(3) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の有効性を検証する試験[第 III 相試験

(131-302)](資料番号:5.3.5.1-3)

健康成人を対象に、腹部及び鼠径部に治験薬を単回塗布し、塗布 10 分後の細菌数を

主たる有効変数として、プラセボ対照薬(基剤)に対する本剤(1.5%)の優越性及び

実対照薬(0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液)に対する本剤(1.5%)の非劣性を

検証した。

解析対象は 592 名で、被験者の内訳は、本剤(1.5%)群 237 名、プラセボ対照薬(基

剤)群 119 名、実対照薬(0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液)群 236 名であった。

1) 腹部における 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤(1.5%)の非劣

性の検証(FAS40)

治験薬塗布 10 分後における 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群と本剤

(1.5%)群の 小二乗平均の群間差の点推定値は、0.235 log10CFU/cm2 であり、97.5%

信頼区間の下限値は、0.118 log10CFU/cm2 であった。得られた 97.5%信頼区間の下限

値 0.118 log10CFU/cm2 が-0.344 log10CFU/cm2(腹部の非劣性マージン M2:0.344)よ

り大きかったことから、腹部において 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液に対す

る非劣性が検証できた。

2) 鼠径部における 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する本剤(1.5%)の非

劣性の検証(FAS)

治験薬塗布 10 分後における 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液群と本剤

(1.5%)群の 小二乗平均の群間差の点推定値は、0.016 log10CFU/cm2 であり、97.5%

信頼区間の下限値は、-0.159 log10CFU/cm2 であった。得られた 97.5%信頼区間の下

38 本剤(2%)で中等度の皮膚炎が 50 名中 1 名に発現(転帰は回復)し、使用時には注意を要すると考え

られた。 39 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の安全性と有効性を検討する試験(第 I/II 相試験[131-202])の

試験 2 の成績から、細菌サンプル採取区画によって採取される細菌数が異なることが示唆された。また、

細菌数減少量算出時のベースライン(細菌サンプル採取区画)はランダムに選択され、細菌数減少量算

出時において細菌区画による影響が懸念されることから、有効性評価を細菌検査ポイントにおける細菌

数により行うことに変更した。 40 大の解析対象集団は、1.割り付けられた薬剤番号の治験薬の塗布を受けていること、2.腹部又は鼠径

部で、治験薬塗布 10 分後のデータが1つ以上あること、3.同意取得の不遵守など重大な GCP 違反がな

いこと、4.盲検性を維持できなかった被験者で、盲検性を失った時期が特定できることの基準をすべて

満たす被験者で構成

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2.5 臨床に関する概括評価

45

限値-0.159 log10CFU/cm2が-0.482 log10CFU/cm2(鼠径部の非劣性マージンM2:0.482)

より大きかったことから、鼠径部において 0.5%クロルヘキシジングルコン酸液に対

する非劣性が検証できた。

3) 腹部における基剤の有効性に対する本剤(1.5%)の優越性の検証(FAS)

治験薬塗布 10 分後における基剤群と本剤(1.5%)群の 小二乗平均の群間差の

点推定値は 1.243 log10CFU/cm2であり、97.5%信頼区間の下限値は 1.100 log10CFU/cm2

であった。t 検定の結果、p=0.000(p<0.001)あったことから、腹部において基剤に

対する優越性が検証できた。

4) 鼠径部における基剤の有効性に対する本剤(1.5%)の優越性の検証(FAS)

治験薬塗布 10 分後における基剤群と本剤(1.5%)群の 小二乗平均の群間差の

点推定値は 1.706 log10CFU/cm2であり、97.5%信頼区間の下限値は 1.505 log10CFU/cm2

であった。t 検定の結果、p=0.000(p<0.001)あったことから、鼠径部において基剤

に対する優越性が検証できた。

計画した 4 つの仮説がすべて検証できたことから、本剤(1.5%)の有効性が確認で

きた。また、per protocol set(PPS)41を解析対象とし、FAS と同様に混合効果モデルに

基づいて主要評価の解析を実施した結果、FAS と同様に有効性が確認できたことから、

有効性評価結果の頑健性が示された。

第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 及び第 III 相試験(131-302)の本剤(1.5%)の結

果について、腹部の塗布 10 分後の細菌数(平均値±標準偏差)はそれぞれ 0.252±0.623

log10CFU/cm2、0.285±0.728 log10CFU/cm2、鼠径部の塗布 10 分後はそれぞれ 2.689±1.752

log10CFU/cm2、2.811±1.450 log10CFU/cm2 であり、いずれも試験間で同様の結果であっ

た。

米国において、TFM42による殺菌消毒剤の有効性評価は、可能な限り高いベースラ

イン細菌数を有する被験者で評価することが望ましいとの観点から、ベースライン細

菌数の基準を設定し、基準に満たない症例を解析対象から除外していることが報告さ

れている 30,31)。この点を考慮して、FAS の被験者の被験箇所のうち、ベースライン細

菌数が腹部で 2.5 log10CFU/cm2 以上、鼠径部で 4.5 log10CFU/cm2 以上をそれぞれ満たす

41 FAS のうち、1.腹部及び鼠径部で、すべての被験箇所のベースライン細菌数、治験薬塗布 10 分後、治

験薬塗布 6 時間後の細菌数データがすべてあること、2.重大な治験実施計画書からの逸脱がないことの

基準を満たす被験者で構成 42 米国では「手術部位(手術野)の皮膚消毒」を効能とする殺菌消毒剤の評価方法として、FDA の TFMが用いられている。TFM では、「手術部位(手術野)の皮膚消毒」に関する OTC 局所ヘルスケア消毒

薬製品の有効性評価基準において、被験者に 2 週間以上全身性又は局所性の抗菌剤などの使用制限と、

非抗菌性の衛生ケア用品を使用し、順応させた後、試験薬を適用し、その 10 分以内に皮膚常在細菌数

が、ベースライン細菌数(塗布前)より腹部では 2.0 log10 CFU/cm2、鼠径部では 3.0 log10 CFU/cm2減少

すること、また、少なくとも消毒後 6 時間までベースライン細菌数未満であることを要求している。

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2.5 臨床に関する概括評価

46

被験箇所をサブグループとして、解析を行った。その結果、本剤(1.5%)の塗布 10

分後の細菌数減少量(平均値±標準偏差)は、腹部 2.730±0.844 log10CFU/cm2、鼠径部

3.064±1.580 log10CFU/cm2、クロルヘキシジングルコン酸塩液群の塗布 10 分後の細菌

数減少量(平均値±標準偏差)は、腹部 2.433±0.931 log10CFU/cm2、鼠径部 3.036±1.461

log10CFU/cm2であった。本剤(1.5%)の塗布 6 時間後の細菌数減少量(平均値±標準

偏差)は、腹部 0.851±0.875 log10CFU/cm2、鼠径部 2.450±0.942 log10CFU/cm2、クロル

ヘキシジングルコン酸塩液群の塗布 6 時間後の細菌数減少量(平均値±標準偏差)は、

腹部 0.884±0.897 log10CFU/cm2、鼠径部 2.451±0.939 log10CFU/cm2 であった。

2.5.4.3 有効性のまとめ

第 II 相試験(131-201)では、本邦には、新規殺菌消毒剤の評価に用いるガイドライ

ンがないことから、TFM18)や TFM に必要な方法を示した ASTM の「手術前、カテーテ

ル処置前又は注射前皮膚製剤の評価のための標準試験法(Standard Test Method for

Evaluation of Preoperative, Precatheterization, or Preinjection Skin Preparations)」20)を参考に、

健康成人の皮膚常在菌の細菌数変化量を有効性評価の指標として試験を実施した。その

結果、ベースライン細菌数が多い鼠径部では本剤の十分な減菌効果が確認できたが、腹

部は、ベースラインの細菌数が少なく、鼠径部ほど本剤の十分な減菌効果が確認できな

かった。十分な減菌効果が確認できなかった原因として、試験方法や本剤の濃度が考え

られた。

そこで、試験方法を変更(表 2.5.4-2 を参照)し、本剤の濃度を 1.5 及び 2%に上げて、

第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 を実施した。なお、試験開始前には、医薬品後期第 II

相試験開始前相談(平成 年 月 日薬機審長発第 号)を実施した。試験を

実施した結果、被験薬群には明らかな正の用量反応性は認められなかったが、すべての

被験薬群で塗布 10分後に殺菌効果が期待できると考えられた。塗布 6時間後は本剤(1%)

群を除き、生理食塩液群と差が認められなかったが、実薬の 0.5%クロルヘキシジン液群

も同様であり、効果は同程度であると考えられた。

この結果を踏まえて、医薬品追加相談(オーファン以外)(平成 年 月 日薬機

審長発第 号)で助言を得て、第 III 相試験(131-302)を実施した。その結果、

本剤(1.5%)は、塗布 10 分後の細菌数を主たる有効変数とした場合、腹部及び鼠径部

において、0.5%クロルヘキシジングルコン酸液に対する非劣性が検証できた。プラセボ

対照薬(基剤)に対しては、優越性が検証できたため、本剤(1.5%)は手術部位(手術

野)の皮膚の消毒に対して有効な製剤であることが確認できた。

なお、第 III 相試験(131-302)で得られた細菌数について、ベースライン細菌数の高

い被験箇所をサブグループ43として検討した結果、本剤(1.5%)の塗布 10 分後の細菌数

減少量の平均値は、腹部では2 log10 CFU/cm2を超え、鼠径部では3 log10 CFU/cm2を超え、

43 ベースライン細菌数が腹部で 2.5 log10CFU/ cm2以上、鼠径部で 4.5 log10CFU/ cm2 以上をそれぞれ満た

す被験箇所

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2.5 臨床に関する概括評価

47

かつ、塗布 6 時間後の細菌数が腹部及び鼠径部ともベースライン細菌数を超えていなか

ったことより、米国 TFM の有効性の判定基準を満たしていた。更に、ベースラインか

ら塗布 10 分後の細菌数減少量の平均値は、腹部(乾燥部位)及び鼠径部(湿潤部位)

ともに、2 log10 CFU/cm2 を超え、かつ、塗布 6 時間後の細菌数がベースライン細菌数を

超えていなかった[治験総括報告書 表 11.4-7(腹部)、表 11.4-9(鼠径部)(資料番号:

5.3.5.1-3)]ことより、試験終了後に日本環境感染学会から公表された「生体消毒薬の有

効性評価指針:手術野消毒 201319)」の有効性の判定基準44を満たしていた。

2.5.4.4 有効性の結果に対する考察

殺菌消毒効果について、臨床試験では、腹部と鼠径部における皮膚常在細菌数を指標

とした場合、有効であると判断した。本剤が目指す効能・効果は、「手術部位(手術野)

の皮膚の消毒」であり、この健康成人の腹部及び鼠径部で得られた結果が他の部位に一

般化可能かどうかについて以下に考察する。

まず、皮膚の常在細菌について、文献による調査結果を下記に示す。

(1) 皮膚に常在している微生物は、かなり限られた細菌からなる菌叢を構成しており、

大きく分類するとグラム陽性球菌(Staphylococcus 属、Micrococcus 属)、グラム陽性

桿菌(Corynebacterium 属、Propionibacterium 属、Brevibavcterium 属)、グラム陰性桿

菌(Acinetobacter 属)及び酵母などである 32,33)。

(2) 皮膚から も頻繁に分離される Staphylococcus 属は Coagulase negative Staphylococci

(CNS)と S. aureus に大別されるが、皮膚常在細菌叢を構成する Staphylococcus 属

のほとんどが CNS である。CNS の中でも、S. epidermidis は、ヒト皮膚のほとんど

の部位から分離されている 33,34)。S. epidermidis 以外では S. capitis、S. cohnii、S.

haemolyticus、S. hominis、S. saprophyticus、S. simulans、S. warneri、S. xylosus が CNS

に存在し 35,36)、S. hominis は S. epidermidis についで分離される頻度が多く 37)、その

他の菌種も全身に分布している 35)。

(3) Micrococcus 属は Staphylococcus 属に比べて菌数は少ないものの、ヒト皮膚から分離

され 38)、M. luteus、M. varians、M. lylae、M. nishinomiyaensis、M. kristinae、M. roseus、

M. sedentarius、M. agilis の存在が報告されている 35,38)。

(4) Corynebacterium 属では、C. xerosis、C. striatum、C. haemolyticum、C. murium、C. hofmanii、

C. minutissimum、C. jeikeium、C. urealyticum 等の存在が報告されている 32,33,39)。

(5) Propionibacterium 属でヒト皮膚から分離されている種は、P. acnes、P. granulosum、

P. avidum の 3 種であり、P. acnes は腹部と鼠径部から、残りの 2 種は鼠径部から分

離されている 32,33,40,41)。

(6) Brevibacterium 属では B. epidermidis、B. otitidis、B. mcbrellneri、B. casei、B .linens の

44 試験薬塗布 10 分後の細菌数が、腹部及び鼠径部でベースライン細菌数(塗布前)から 2.0 log10 CFU/cm2

減少すること、また、塗布 6 時間後の細菌数がベースライン細菌数を超えないこと。

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2.5 臨床に関する概括評価

48

存在が報告されている 32,33,41)。

(7) Acinetobacter 属では A. calcoaceticus、A. baumannii、A. johnsonii、A. junii、A. lwoffii、

A. anitratus、A. radioresistens の存在が報告されており、前腕、前額、趾間 42,43)、鼠

径部 44)から分離されている。

以上の文献情報から、部位が異なっていても、主な皮膚常在細菌はグラム陽性球菌

(Staphylococcus 属、Micrococcus 属)、グラム陽性桿菌(Corynebacterium 属、

Propionibacterium 属、Brevibacterium 属)、グラム陰性桿菌(Acinetobacter 属)の 6 つの

属であると考えられる。この主な皮膚常在細菌の種類が患者で異なるという報告は見当

たらない。

一方、皮膚の表面に存在する一過性微生物及び病原微生物に関しては、非臨床試験に

おいて以下のことを確認している(2.4.2 及び 2.4.5 を参照)。

(1) In vitro 殺菌力として、マイクロプレートを用いた希釈法により 小殺菌濃度(MBC)

を求め、本剤の殺菌スペクトラムを評価(資料番号:4.2.1.1-6、-7、-8、-9)した。

その結果、グラム陽性及びグラム陰性の種々の標準菌株(100 菌株)45に対して、本

剤は、クロルヘキシジングルコン酸塩液及びポビドンヨード液と同等若しくはそれ

以上の殺菌スペクトラムを示した。特に、グラム陽性菌に対して強い殺菌力と速効

性を有した。

(2) MRSA、Enterococcus faecalis、Staphylococcus aureus(Methicillin 感受性)、CNS、

Escherichia coli、Corynebacterium species、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella

pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Serratia marcescens の臨床分離菌株(220 菌株)

46に対しても MBC を求めて、本剤の殺菌スペクトラムを評価(資料番号:4.2.1.1-12、

-13、-14)した。その結果、本剤は、クロルヘキシジングルコン酸塩液及びポビド

ンヨード液と同等若しくはそれ以上の殺菌スペクトラムを示した。特に、E. faecalis

に対しては、クロルヘキシジングルコン酸塩液やポビドンヨード液よりも有効であ

ると考えられた。

(3) In vivo 殺菌力として、細菌汚染マウス皮膚を作成し、本剤塗布による平均殺菌率を

求めて評価(資料番号:4.2.1.1-17、-18、-19、-20、-21、-22、-23、-24、-25)した。

その結果、本剤は一般細菌(S. aureus、S. epidermidis、A. baumannii、Corynebacterium

diphtheriae)、クロルヘキシジングルコン酸塩に抵抗性を示す細菌(MRSA、VRE、

P. aeruginosa、S. marcescens、Burkholderia cepacia)の計 9 菌種に対して、クロルヘ

45 MRSA、VRE を含むグラム陽性球菌(55 菌株)、グラム陽性桿菌(9 菌株)、Burkholderia cepacia 以外

のグラム陰性菌(34 菌株)、B. cepacia(2 菌株) 46 MRSA(30 菌株)、Enterococcus faecalis(30 菌株)、Staphylococcus aureus(Methicillin 感受性)(20 菌

株)、CNS(20 菌株)、Escherichia coli(20 菌株)、Corynebacterium species(20 菌株)、Pseudomonas aeruginosa(20 菌株)、Klebsiella pneumoniae(20 菌株)、Acinetobacter baumannii(20 菌株)、Serratia marcescens(20 菌株)

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2.5 臨床に関する概括評価

49

キシジングルコン酸塩液及びポビドンヨード液と同等若しくはそれ以上の殺菌力を

示した。特に、VRE に対しては、クロルヘキシジングルコン酸塩液やポビドンヨー

ド液よりも有効であると考えられた。

(4) 本剤の作用機序は十分に解明されていないものの、非臨床試験(資料番号:4.2.1.1-1、

-2、-3、-4、-5)の結果から、本剤は細菌の膜に結合、膜バリアー能の破壊や膜構造

の障害を引き起こし、細胞質成分の不可逆的漏出により殺菌活性を示すものと考え

られた。また、比較的高濃度では、タンパク変性作用により菌を凝集させ、死滅さ

せると考えられた。なお、OPB-2045G はクロルヘキシジングルコン酸塩と化学構造

上の類似性があるが、作用機序が若干異なり、特異な殺菌作用を発揮する可能性が

示唆された。

以上、非臨床試験結果及び健康成人における腹部及び鼠径部で確認できた有効性(殺

菌消毒効果)は、対象となる手術患者にも外挿可能であると考えられ、有効性について

は現在の臨床データパッケージで充足していると判断した。

なお、患者(腹腔鏡下での消化器手術施行予定の患者)を対象とした第 III 相試験

(131-301)で SSI の発現率を調査した結果、本剤(1.5%)群は 3.8%(表層切開創 1.9%)、

10%ポビドンヨード液群は 13.2%(表層切開創 5.7%)であり、調査症例数が少ない[本

剤(1.5%)52 名、10%ポビドンヨード液 53 名]ものの、本剤での発現率が高いという

結果ではなかった。

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2.5 臨床に関する概括評価

50

2.5.5 安全性の概括評価

本剤を塗布した臨床試験の一覧を表 2.5.5-1 に示す。

表 2.5.5-1 本剤を塗布した臨床試験の一覧

試験の種類 実施国 対象 被験薬塗布症例数 (OPB-2045G 液)

第 I 相試験(131-102) 日本 健康成人男子 0.278、0.695、1.39% 各 16 名

第 II 相試験(131-201) 日本 健康成人 0.278%:27 名 0.695%:26 名 1.39%:28 名

第 I/II 相試験(131-202) 日本

健康成人男子

【試験 1】 1、1.5、2%各 9 名 【ex vivo 試験】 2%:5 名

健康成人 【試験 2】 1、1.5、2%各 36 名

第 I 相試験(131-104) 日本 健康成人男性 1.5%:39 名

第 III 相試験(131-302) 日本 健康成人 1.5%:237 名

第 III 相試験(131-301) 日本 腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者

1.5%:52 名

第 II 相試験( -220-11) 米国 健康成人 0.278~1.39%:197 名

第 I 相試験( -225-11) 米国 健康成人 0.278%:45 名

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2.5 臨床に関する概括評価

51

本剤の臨床試験は、国内と米国で合計 8 試験を実施した。

ただし、米国で実施した POC 試験( -220-11)及び第 I 相試験( -225-11)

の結果は、「2.5.1.5 外国における開発状況」に記載した理由47により、参考資料とした。

国内で実施した臨床試験の内訳は、健康成人を対象とした試験が 5 試験、患者を対象

とした試験が 1 試験であるが、対象患者(被験者背景)が異なるため、健康成人を対象

にした試験と患者を対象にした試験は併合せず、安全性をまとめることとした。更に、

健康成人を対象にした 5 試験のうち、第 I 相試験(131-102)は他の試験と有害事象の取

上げ基準が異なるため、健康成人を対象にした試験の中でも併合せず個別に試験結果を

記載することとした(有害事象の取上げ基準は表 2.7.4.1.1.2-1 を参照)。

以上のことより、第 I 相試験(131-102)は個別の試験結果、第 II 相試験(131-201)、

第 I/II 相試験(131-202)、第 I 相試験(131-104)及び第 III 相試験(131-302)は併合し

た試験結果、第 III 相試験(131-301)は個別の試験結果を以下に記載し、それぞれの結

果を考察のうえ、本剤の安全性の概括評価を行うこととした。

47 POC 試験( -220-11):FDA より適切かつ十分にコントロールされておらず、被験者へのリスクを

評価するための情報が不足していると指摘されていることから試験は不成立と判断した。第 I 相試験

( -225-11):本剤の濃度として 0.278%を用いた試験であるが、本邦でも、本剤(0.278%)を用い

た第 I 相試験(131-102)を実施し、評価している。また、米国臨床試験データを日本の製造販売承認申

請に利用するための民族的要因を検討していない。

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2.5 臨床に関する概括評価

52

2.5.5.1 安全性の結果

(1) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の単回投与試験[第 I 相試験(131-102)](資

料番号:5.3.3.1-1)

健康成人を対象にして、非盲検下で本剤(0.278、0.695 又は 1.39%)を腹部又は鼠

径部(各濃度、各部位、8 名 合計 48 名)の 130 cm2 区画に 3.0 mL 単回開放塗布し、

安全性を評価した。

安全性は、自覚症状・他覚所見、バイタルサイン、安静時 12 誘導心電図、臨床検査

及び皮膚所見を評価項目とし、治験薬塗布 72 時間後まで評価した。

その結果、安全性に関して、治験薬を塗布した被験者 48 名中 47 名に 131 件の有害

事象(うち臨床検査値の異常変動は 111 件)48が発現したが、結膜充血49の 1 名(中止

例)1 件を除いて、すべて軽度で、かつ、処置が不要で回復性を認めた。因果関係が

否定されなかった有害事象(副作用)を表 2.5.5-2 に示した。

表 2.5.5-2 因果関係が否定されなかった有害事象(副作用) 血液学的検査 赤血球数増加(2%)、赤血球数減少(2%)、白血球数増加(2%)、

白血球数減少(2%)、好酸球百分率増加(10%)、好中球百分率減少(2%)、ヘマトクリット減少(6%)、ヘモグロビン減少(4%)

血液生化学的検査 血中アルブミン減少(6%)、血中ビリルビン増加(2%)、 血中カルシウム減少(2%)、血中クロール増加(2%)、 血中コレステロール増加(2%)、血中乳酸脱水素酵素減少(38%)、血中カリウム増加(15%)、血中トリグリセリド増加(4%)、 総蛋白減少(46%)

尿検査 尿中血陽性(2%)

バイタルサイン 体温低下(35%)

その他 適用部位紅斑(13%)、適用部位そう痒感(2%) [OPB-2045G 副作用の統合報告書( 年 月 日) 表 A]

以上、臨床検査値の異常変動に関する副作用が認められたが、いずれも臨床的に

問題となるものはなかった50。治験薬を塗布した被験部位に接触蕁麻疹反応は認め

られず、即時性の皮膚反応は認められなかった。なお、被験部位に紅斑が 7 名の被

験者に 7 件認められたが、本剤の濃度との明らかな相関は認められなかった。

48 臨床検査値に関する有害事象は、治験責任医師又は治験分担医師が治験薬塗布前値と比較し、治験薬塗

布開始後に「基準値内→基準値逸脱」、「基準値逸脱→基準値逸脱(悪化方向)」、「基準値逸脱→(基準

値内)→基準値逸脱」の変動を認めたものを異常変動ありとして有害事象に取り扱った。 49 重症度は中等度 50 米国 POC 試験で問題となった CK は未測定

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2.5 臨床に関する概括評価

53

(2) 健康成人 4 試験の併合解析

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の用量反応探索試験[第 II 相試験(131-201)]、

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の安全性と有効性を検討する試験[第 I/II 相試験

(131-202)]、健康成人を対象とした OPB-2045G 液の薬物動態と安全性を検討する試

験[第 I 相試験(131-104)]及び健康成人を対象とした OPB-2045G 液の有効性を検証

する試験[第 III 相試験(131-302)]の併合結果を以下に示す。

健康成人を対象にして、本剤(0.278~2%)を腹部又は(及び)鼠径部に単回開放

塗布し、安全性を評価した。

自覚症状・他覚所見、バイタルサイン、臨床検査及び皮膚所見を安全性の評価項目

(一部の試験では安静時 12 誘導心電図を実施)とした。

有害事象の発現例数、発現率及び件数を表 2.5.5-3、副作用の発現例数、発現率及び

件数を表 2.5.5-4 に示した(濃度別の副作用の発現例数、発現率及び件数は表

2.7.4.2.1.1-7 を参照)。なお、有害事象名は、MedDRA/J ver16.1 をもとに読み替えた。

比較的発現率が高い有害事象(発現率 2%以上)は、血中乳酸脱水素酵素減少、総

蛋白減少、血中クレアチンホスホキナーゼ減少であった。これらの有害事象は、生理

的範囲内の変動との理由で治験薬との因果関係はないと治験責任医師に判断された。

また、実対照薬及びプラセボ対照薬でも同様に発現しており、発現率は本剤で高いも

のではなかった。

本剤との因果関係が否定されなかった有害事象としては、適用部位皮膚炎が 0.2%

(1/497 例)、適用部位紅斑が 0.8%(4/497 例)、皮膚炎が 0.2%(1/497 例)及び下痢が

0.2%(1/497 例)に認められた。このうち、皮膚炎は、治験薬塗布部位及び治験薬塗

布部位以外に発現しており、本剤(2%)が皮膚から吸収される過程で感作が成立し、

吸収過程にある本剤がアレルゲンとなりアレルギー症状が発現した可能性があると考

えられた。ただし、皮膚炎の発現した被験者への本剤の使用は初めてであり、かつ、

退所後の治験薬塗布 6 日目後に発現した事象であったため、治験特有の条件(シャワ

ー・入浴禁止、除毛、テープ貼付)の影響もあると考えられた。下痢は、偶発的な事

象と治験責任医師が評価しており、本剤との関連性は低く、本剤の臨床使用にあたり

特に注意喚起する事象ではないと判断した。なお、実対照薬及びプラセボ対照薬でも

同様に発現しており、発現率は本剤で高いものではなかった。

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2.5 臨床に関する概括評価

54

表 2.5.5-3 有害事象の発現例数、発現率及び件数(1/2)

CHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液、PVI:10%ポビドンヨード液、VEC:基剤、SAL:生理食塩液、SOC:system organ class、PT:preferred term [併合解析報告書 表 D-03(資料番号 5.3.5.3-2)]

SOC PT 被験薬 実対照薬 プラセボOPB-2045G(497) CHG(305) PVI(67) VEC(158) SAL(80)

件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 %全体 179 131 26.4 81 67 22.0 31 20 29.9 44 36 22.8 55 37 46.3

0 0 0.0 2 2 0.7 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0毛包炎 0 0 0.0 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0鼻咽頭炎 0 0 0.0 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3頭痛 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3

1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0第一度房室ブロック

1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

4 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3鼻出血 4 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0気道の炎症 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3

2 2 0.4 2 2 0.7 1 1 1.5 1 1 0.6 0 0 0.0下痢 2 2 0.4 2 2 0.7 0 0 0.0 1 1 0.6 0 0 0.0硬便 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.5 0 0 0.0 0 0 0.0

2 2 0.4 2 2 0.7 0 0 0.0 1 1 0.6 2 2 2.5皮膚炎 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0接触性皮膚炎 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3紅斑 0 0 0.0 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0そう痒症 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 0.6 0 0 0.0発疹 0 0 0.0 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3

7 7 1.4 2 2 0.7 0 0 0.0 1 1 0.6 0 0 0.0適用部位皮膚炎 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0適用部位紅斑 6 6 1.2 2 2 0.7 0 0 0.0 1 1 0.6 0 0 0.0

一般・全身障害および投与部位の状態

感染症および寄生虫症

神経系障害

心臓障害

呼吸器、胸郭および縦隔障害

胃腸障害

皮膚および皮下組織障害

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2.5 臨床に関する概括評価

55

表 2.5.5-3 有害事象の発現例数、発現率及び件数(2/2)

CHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液、PVI:10%ポビドンヨード液、VEC:基剤、SAL:生理食塩液、SOC:system organ class、PT:preferred term [併合解析報告書 表 D-03(資料番号 5.3.5.3-2)]

SOC PT 被験薬 実対照薬 プラセボOPB-2045G(497) CHG(305) PVI(67) VEC(158) SAL(80)

件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 %162 123 24.7 72 59 19.3 30 19 28.4 41 33 20.9 51 35 43.8

アラニンアミノトランスフェラーゼ減少

0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3

アラニンアミノトランスフェラーゼ増加

2 2 0.4 1 1 0.3 0 0 0.0 1 1 0.6 0 0 0.0

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ減少

1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加

1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

血中クレアチンホスホキナーゼ増加

1 1 0.2 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

血中クレアチニン増加

0 0 0.0 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

血中乳酸脱水素酵素減少

37 37 7.4 13 13 4.3 9 9 13.4 6 6 3.8 18 18 22.5

血中乳酸脱水素酵素増加

0 0 0.0 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

体温上昇 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3白血球百分率数異常

1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

尿中ブドウ糖陽性

0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.5 0 0 0.0 0 0 0.0

心拍数増加 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0リンパ球数減少 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3好中球数増加 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3総蛋白減少 86 86 17.3 39 39 12.8 10 10 14.9 26 26 16.5 12 12 15.0総蛋白増加 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0白血球数増加 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.3血中クレアチンホスホキナーゼ減少

30 30 6.0 16 16 5.2 10 10 14.9 8 8 5.1 16 16 20.0

1 1 0.2 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0神経損傷 1 1 0.2 1 1 0.3 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

臨床検査

傷害、中毒および処置合併症

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2.5 臨床に関する概括評価

56

表 2.5.5-4 副作用の発現例数、発現率及び件数

CHG:0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液、PVI:10%ポビドンヨード液、VEC:基剤、SAL:生理食塩液、SOC:system organ class、PT:preferred term [併合解析報告書 表 D-11(資料番号 5.3.5.3-2)]

SOC PT 被験薬 実対照薬 プラセボOPB-2045G(497) CHG(305) PVI(67) VEC(158) SAL(80)件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 % 件数 人数 %

全体 7 7 1.4 2 2 0.7 1 1 1.5 1 1 0.6 0 0 0.01 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

下痢 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.01 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0

皮膚炎 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.05 5 1.0 2 2 0.7 0 0 0.0 1 1 0.6 0 0 0.0

適用部位皮膚炎 1 1 0.2 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0 0 0 0.0適用部位紅斑 4 4 0.8 2 2 0.7 0 0 0.0 1 1 0.6 0 0 0.0

0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.5 0 0 0.0 0 0 0.0尿中ブドウ糖陽性

0 0 0.0 0 0 0.0 1 1 1.5 0 0 0.0 0 0 0.0

胃腸障害

皮膚および皮下組織障害一般・全身障害および投与部位の状態臨床検査

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2.5 臨床に関する概括評価

57

(3) 腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象とした OPB-2045G 液の安全性と薬物

動態を確認する試験[第 III 相試験(131-301)](資料番号:5.3.5.1-4)

腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象とし、本剤(1.5%)を手術部位(手術

野)の皮膚に塗布し、安全性を評価した。対照薬としては 10%ポビドンヨード液を使

用した。

自覚症状・他覚所見、バイタルサイン、臨床検査及び皮膚所見を安全性の評価項目

とした。

その結果、有害事象の発現率及び発現件数は、本剤(1.5%)群で 69.2%(36/52 例)

82 件、10%ポビドンヨード液群で 70.4%(38/54 例)71 件であった。有害事象の内訳

は表 2.5.5-5 に示した。

副作用の発現率及び発現件数は、本剤(1.5%)群で 5.8%(3/52 例)3 件、内訳は「適

用部位皮膚炎」(1 例 1 件、重症度は中等度)、「適用部位紅斑」(1 例 1 件、重症度は中

等度)、「適用部位そう痒感」(1 例 1 件、重症度は中等度)、10%ポビドンヨード液群

で 7.4%(4/54 例)4 件、内訳は「適用部位紅斑」(4 例 4 件、重症度は中等度 2 件、軽

度 2 件)であった。いずれも皮膚に関する事象であり、転帰はすべて回復を確認した。

評価期間内(7 又は 8POD の観察・検査終了まで)に発現した重篤な有害事象は、

本剤(1.5%)群で 2 例 2 件51、10%ポビドンヨード液群で 5 例 5 件52であった。いずれ

の事象も手術により発現した事象であり、治験薬との因果関係は「関連なし」と判定

された(重篤と判定された理由はいずれも入院期間の延長)。また、評価期間以降

30POD までを治験期間として SSIを含む重篤な有害事象に関する安全性情報を収集し

た。その結果、上述の重篤な有害事象以外に 5 件[本剤(1.5%)群 2 例 2 件、10%ポ

ビドンヨード液群 3 例 3 件]53の重篤な有害事象を確認した。いずれの事象も手術に

より発現した事象であり、治験薬との因果関係は「関連なし」と判定された(重篤と

判定された理由はいずれも入院期間の延長)。その他には危惧すべき安全性に関する事

象は認められなかった。

本剤の安全性については、治験薬塗布部位の皮膚所見、有害事象、バイタルサイン、

臨床検査について医学専門家に確認54し、医学的見地から比較検討した。その結果、

両群間で治験薬塗布による特記すべき差異はなく、対照薬群と比較し被験薬群におい

て安全性が懸念される特異的な事象は認めなかった。被験薬群において発現した副作

用は、発現率が対照薬群と比較して高いものでなく、処置により回復性が認められた。

以上、本剤(1.5%)は、塗布により皮膚に対する副作用が発現するものの回復性が

あり、かつ、全身症状には影響は与えないことから、臨床使用は可能と判断した。

51 本剤(1.5%)群において、評価期間内(7 又は 8POD の観察・検査終了まで)に発現した重篤な有害事

象の内訳は、腹膜炎及び術後創感染が各 1 件であった。 52 10%ポビドンヨード液群において、評価期間内(7 又は 8POD の観察・検査終了まで)に発現した重篤

な有害事象の内訳は、縫合不全が 3 件、炎症反応及びイレウスが各 1 件であった。 53 本剤(1.5%)群の内訳は、イレウス及び胃拡張が各 1 件であった。10%ポビドンヨード液群の内訳は、

術創感染、腹水貯留及び腸閉塞が各 1 件であった。 54 群に関する情報をマスキングの上、症例ごとに医学専門家の医学的なレビューを受けた。

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2.5 臨床に関する概括評価

58

表 2.5.5-5 有害事象の内訳(1/2)

SOC:system organ class、PT:preferred term、OPBG1.5:本剤(1.5%)、PVI:10%ポビドンヨード液 [治験総括報告書 表 12.4-2(資料番号 5.3.5.1-4)]

SOC PT OPBG1.5(52) PVI(54)件数 人数 % 件数 人数 %

全体 - 82 36 69.2 71 38 70.4 - 5 5 9.6 2 2 3.7

化膿性胆管炎 0 0 0.0 1 1 1.9鼻咽頭炎 1 1 1.9 0 0 0.0腹膜炎 1 1 1.9 0 0 0.0肺炎 1 1 1.9 0 0 0.0術後創感染 1 1 1.9 1 1 1.9尿道炎 1 1 1.9 0 0 0.0 - 1 1 1.9 0 0 0.0

貧血 1 1 1.9 0 0 0.0 - 5 3 5.8 2 2 3.7

耐糖能障害 2 1 1.9 0 0 0.0高血糖 0 0 0.0 1 1 1.9低クロール血症 1 1 1.9 0 0 0.0低血糖症 0 0 0.0 1 1 1.9低ナトリウム血症 2 2 3.8 0 0 0.0 - 4 4 7.7 1 1 1.9

譫妄 2 2 3.8 0 0 0.0不眠症 2 2 3.8 1 1 1.9 - 1 1 1.9 1 1 1.9

体位性めまい 0 0 0.0 1 1 1.9頭痛 1 1 1.9 0 0 0.0 - 0 0 0.0 1 1 1.9

回転性めまい 0 0 0.0 1 1 1.9 - 0 0 0.0 1 1 1.9

リンパ瘻 0 0 0.0 1 1 1.9 - 2 2 3.8 2 2 3.7

無気肺 0 0 0.0 1 1 1.9肺うっ血 0 0 0.0 1 1 1.9声帯の炎症 1 1 1.9 0 0 0.0鼻粘膜障害 1 1 1.9 0 0 0.0 - 8 8 15.4 10 8 14.8

腹部膨満 0 0 0.0 1 1 1.9便秘 2 2 3.8 0 0 0.0下痢 1 1 1.9 1 1 1.9イレウス 1 1 1.9 2 2 3.7メレナ 0 0 0.0 1 1 1.9悪心 2 2 3.8 3 3 5.6嘔吐 2 2 3.8 1 1 1.9腹腔内出血 0 0 0.0 1 1 1.9 - 0 0 0.0 2 2 3.7胆嚢炎 0 0 0.0 1 1 1.9肝機能異常 0 0 0.0 1 1 1.9

精神障害

感染症および寄生虫症

血液およびリンパ系障害代謝および栄養障害

肝胆道系障害

神経系障害

耳および迷路障害

血管障害

呼吸器、胸郭および縦隔障害

胃腸障害

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2.5 臨床に関する概括評価

59

表 2.5.5-5 有害事象の内訳(2/2)

SOC:system organ class、PT:preferred term、OPBG1.5:本剤(1.5%)、PVI:10%ポビドンヨード液 [治験総括報告書 表 12.4-2(資料番号 5.3.5.1-4)]

SOC PT OPBG1.5(52) PVI(54)件数 人数 % 件数 人数 %

全体 - 82 36 69.2 71 38 70.4 - 8 7 13.5 7 6 11.1

水疱 1 1 1.9 3 2 3.7接触性皮膚炎 1 1 1.9 0 0 0.0湿疹 1 1 1.9 0 0 0.0紅斑 3 3 5.8 2 2 3.7そう痒症 1 1 1.9 1 1 1.9皮膚変色 0 0 0.0 1 1 1.9皮下気腫 1 1 1.9 0 0 0.0 - 3 3 5.8 3 3 5.6背部痛 1 1 1.9 1 1 1.9側腹部痛 1 1 1.9 0 0 0.0筋骨格痛 1 1 1.9 2 2 3.7 - 28 18 34.6 24 17 31.5

適用部位皮膚炎 1 1 1.9 0 0 0.0適用部位紅斑 16 14 26.9 12 11 20.4適用部位そう痒感 1 1 1.9 0 0 0.0適用部位発疹 1 1 1.9 0 0 0.0胸痛 1 1 1.9 0 0 0.0疼痛 3 2 3.8 2 2 3.7発熱 1 1 1.9 1 1 1.9適用部位小水疱 1 1 1.9 0 0 0.0炎症 0 0 0.0 1 1 1.9適用部位熱傷 0 0 0.0 1 1 1.9適用部位びらん 1 1 1.9 0 0 0.0適用部位痂皮 1 1 1.9 0 0 0.0適用部位血腫 1 1 1.9 7 7 13.0 - 12 9 17.3 11 10 18.5

アラニンアミノトランスフェラーゼ増加

1 1 1.9 0 0 0.0

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加

1 1 1.9 0 0 0.0

血中クレアチンホスホキナーゼ増加

2 2 3.8 4 4 7.4

血圧低下 5 5 9.6 5 5 9.3血圧上昇 2 2 3.8 2 2 3.7肝酵素上昇 1 1 1.9 0 0 0.0 - 5 5 9.6 4 4 7.4

創し開 0 0 0.0 1 1 1.9縫合断裂 0 0 0.0 3 3 5.6創部分泌 1 1 1.9 0 0 0.0創合併症 3 3 5.8 0 0 0.0処置による出血 1 1 1.9 0 0 0.0

皮膚および皮下組織障害

筋骨格系および結合組織障害

一般・全身障害および投与部位の状態

臨床検査

傷害、中毒および処置合併症

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2.5 臨床に関する概括評価

60

2.5.5.2 安全性の結果に対する考察

本剤は外用剤であるため、塗布部位(局所)における影響、吸収された際の全身的な

影響に分けて以下に記載した。

(1) 局所における影響

健康成人を対象にした 5 試験では、いずれも正常皮膚に本剤を単回塗布し、塗布部

位の安全性を評価した。

第 I 相試験(131-102)の塗布部位における副作用の発現率及び発現件数は、適用部

位紅斑が 13%(6/48 例)6 件、適用部位そう痒感が 2%(1/48 例)1 件であった。重症

度はいずれも軽度で、かつ、処置が不要で回復性が認められた。

第 II 相試験(131-201)、第 I/II 相試験(131-202)、第 I 相試験(131-104)及び第 III

相試験(131-302)を併合した試験結果では、塗布部位における副作用の発現率及び発

現件数は、適用部位紅斑が 0.8%(4/497 例)4 件、適用部位皮膚炎が 0.2%(1/497 例)

1 件であった。重症度はいずれも軽度で、かつ、処置が不要で回復性が認められた。

一方、患者を対象にした試験[第 III 相試験(131-301)]では、手術前の正常な皮膚

に本剤を単回塗布し、十分乾燥させ、その後手術のため皮膚の切開が行われた上で、

塗布部位の安全性を評価した。その結果、塗布部位における本剤の副作用の発現率及

び発現件数は、5.8%(3/52 例)3 件で、内訳は「適用部位皮膚炎」(1 例 1 件、重症度

は中等度)、「適用部位紅斑」(1 例 1 件、重症度は中等度)、「適用部位そう痒感」(1

例 1 件、重症度は中等度)であった。塗布部位における 10%ポビドンヨード液(対照

薬)の副作用の発現率及び発現件数は、7.4%(4/54 例)4 件で、内訳は「適用部位紅

斑」(4 例 4 件、重症度は中等度 2 件、軽度 2 件)であった。副作用の発現率は 10%ポ

ビドンヨード液群と比較して高いものでなく、かつ、処置により回復性が認められた

ことより、本剤の臨床使用は可能であると判断した。

上述した健康成人の正常皮膚で発現した塗布部位への影響と患者(腹腔鏡下手術)

の正常皮膚で発現した塗布部位への影響を比較した結果、患者の正常皮膚では、塗布

部位への切開、手術後の切開部位をドレッシング材等で被覆した影響を受けているも

のの、第 III 相試験(131-301)の結果で本剤の局所への影響は臨床使用上許容できる

範囲であると判断した。

(2) 血中移行による全身的な影響

本剤の血中移行による全身的な影響については、血清中薬物濃度と有害事象(臨床

検査値への影響)の観点から記載する。

1) 健康成人

健康成人を対象にした試験のうち、第 I 相試験(131-102)、第 I/II 相試験(131-202)

の試験 1、第 I 相試験(131-104)及び腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象

とした第 III 相試験(131-301)において、血清中薬物濃度[第 I 相試験(131-102)

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2.5 臨床に関する概括評価

61

のみ尿中薬物濃度も測定]を測定した。

第 I 相試験(131-102 及び 131-104)では OPB-2045 遊離塩基の血清中濃度は認め

られなかった。しかし、第 I/II 相試験(131-202)の試験 1 では、2%の OPB-2045G

液を塗布した被験者には OPB-2045 遊離塩基の血清中濃度は認められなかったが、1

及び 1.5%の OPB-2045G 液を塗布した被験者各 1 名には OPB-2045 遊離塩基の血清

中濃度が認められたため、OPB-2045G 液が正常皮膚から経皮吸収される可能性が示

唆された。7 代謝物は、健康成人を対象にした 3 つの臨床試験(131-102、131-202

の試験 1、131-104)のいずれにおいても認められなかった。以上、健康成人を対象

にした 3 つの臨床試験の結果を総合的に判断し、正常皮膚からは OPB-2045G 液が経

皮吸収される可能性があるもののごく微量であり、定量下限(0.050 ng/mL)を超え

ることは少ないと考えた。

本剤を健康成人に単回塗布した際の臨床検査値(バイタルサインを含む)への影

響に関して、第 I 相試験(131-102)では、因果関係が否定されなかった有害事象(副

作用)として、赤血球数増加(2%)、赤血球数減少(2%)、白血球数増加(2%)、白

血球数減少(2%)、好酸球百分率増加(10%)、好中球百分率減少(2%)、ヘマトク

リット減少(6%)、ヘモグロビン減少(4%)、血中アルブミン減少(6%)、血中ビリ

ルビン増加(2%)、血中カルシウム減少(2%)、血中クロール増加(2%)、血中コレ

ステロール増加(2%)、血中乳酸脱水素酵素減少(38%)、血中カリウム増加(15%)、

血中トリグリセリド増加(4%)、総蛋白減少(46%)、尿中血陽性(2%)、体温低下

(35%)が認められた。OPB-2045 遊離塩基及び 7 代謝物が認められなかったにもか

かわらず、副作用に取り上げられた理由として、臨床検査値は、治験責任医師又は

治験分担医師が、治験薬塗布前値と比較し、治験薬塗布開始後に「基準値内→基準

値逸脱」、「基準値逸脱→基準値逸脱(悪化方向)」、「基準値逸脱→(基準値内)→基

準値逸脱」の変動を認めた場合、また、上記以外の変動であっても、治験責任医師

又は治験分担医師が異常変動と判断した場合を異常変動ありと定義し、有害事象と

して取り扱った(治験薬塗布前値が欠損の場合は、塗布後値が基準値逸脱の場合を

異常変動ありと定義)ことが挙げられる。つまり、臨床的に問題と考えられない臨

床検査値の変動も機械的に有害事象に取り上げられ、規定した因果関係の判定基準

から時間的な関連を否定しづらく、治験薬との因果関係が「関連なし」と判定でき

なかった可能性があると考えている。また、対照薬を設定していなかったことで試

験方法による影響(被験者の管理、採血時刻及び治験薬との関連性の基準等)を判

断できなかった。

第 II 相試験(131-201)以降に実施した第 I/II 相試験(131-202)の試験 1 及び第 I

相試験(131-104)では、被験者の管理、採血時刻の工夫、有害事象の取り上げ方法

の変更、因果関係の判定基準の変更を行った結果、第 I/II 相試験(131-202)の試験

1 及び第 I 相試験(131-104)では、臨床検査値(バイタルサインを含む)に関して、

因果関係が否定されなかった有害事象(副作用)は認められなかった。なお、米国

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2.5 臨床に関する概括評価

62

で実施した臨床試験( -220-11)及び国内で実施第 I 相試験(131-102)の結果

で、PMDA から懸念事項として指摘された臨床検査の 5 項目の変動(ALT 上昇、AST

上昇、LDH 上昇、CK 上昇、T-P 低下)に関しては、有害事象が認められたものの

因果関係は否定され、実対照薬及びプラセボ対照薬と比較して著しく発現率が高い

ものではないことから、本剤の影響による可能性はないと考えた。ただし、皮膚炎

が 0.2%(1/497 例)で 1 件発現した。この皮膚炎は、治験薬塗布部位及び塗布部位

以外に発現しており、吸収過程にある本剤がアレルゲンとなりアレルギー症状が発

現した可能性も考えられるが、皮膚炎の発現した被験者への本剤の使用は初めてで

あり、かつ、退所後の治験薬塗布 6 日目後に発現した事象であったことから、他の

要因の影響もあると考えた。なお、第 I/II 相試験(131-202)の試験 1 では、OPB-2045

遊離塩基が 27 名中 2 名の被験者(Cmaxは 0.276 ng/mL、0.136 ng/mL)に認められた

が、うち 1 名では有害事象は認められなかった。他の 1 名では、総蛋白減少、血中

乳酸脱水素酵素減少の有害事象が認められたが、いずれも臨床的に問題となるもの

ではなかった。

以上のことより、正常皮膚からは本剤が経皮吸収される可能性があるものの、定

量下限(0.050 ng/mL)を超えることは少なく、その状況では臨床検査値に対する影

響はほとんどないと判断した。また、皮膚炎が発現する可能性があるが、臨床使用

上許容できる範囲であると判断した。

その他、第 I/II 相試験(131-202)の試験 2 及び第 III 相試験(131-302)では、血

清中薬物濃度を測定していないが、皮膚所見以外の副作用が発現した。内訳は下痢

が 0.2%(1/497 例)1 件であった。下痢は、偶発的な事象と治験責任医師が評価し

ており、本剤との関連性は低く、本剤の臨床使用にあたり特に注意喚起する事象で

はないと判断した。なお、実対照薬及びプラセボ対照薬でも同様に発現しており、

発現率は本剤群で高いものではなかった。

2) 患者(腹腔鏡下手術施行患者)

本剤の申請予定の効能・効果が「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」であるため、

実臨床で本剤の塗布対象となる手術前の患者に対して、本剤を塗布した際の安全性

を確認した。対象患者としては、医薬品第 II 相試験終了後相談(オーファン以外)

(平成 年 月 日薬機審長発 号)で得た助言を踏まえて、健康成人を

対象とした臨床試験で本剤を塗布した実績がある部位(腹部及び鼠径部)を含み、

手術対象として も一般的であると考えられる消化器手術(胃切除術、結腸切除術

又は直腸切除術)施行予定の患者を選択した。なお、開腹手術施行予定患者での実

施も検討したが、本剤の安全性を評価するうえで、外科的侵襲が比較的小さく、特

に臨床検査値の推移に対する影響を適切に評価できる術式を選択するべきであると

の助言を参考に、腹腔鏡下手術患者のみを対象とした。

すなわち、腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象とし、OPB-2045G 液又は

10%ポビドンヨード液を手術部位(手術野)の皮膚に塗布し、治験薬塗布部位の皮

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2.5 臨床に関する概括評価

63

膚所見、自覚症状・他覚所見、バイタルサイン、臨床検査について医学的に比較検

討することで本剤(1.5%)の安全性を薬物動態とともに確認した[第 III 相試験

(131-301)]。その結果、血清中 OPB-2045 遊離塩基は 52 名中 25 名に認められた。

塗布 0.5 時間後から一部の被験者に認められたが、塗布 168 時間後にはすべての被

験者で認められなかった。OPB-2045 遊離塩基の Cmaxの 大は 1.536 ng/mL、その tmax

は 2 時間であった。一方、7 代謝物のうち DM-210、DM-211、DM-212 又は DM-213

が認められ55、一部の被験者では塗布 168 時間後にも血清中濃度が認められた。

因果関係が否定されなかった有害事象(副作用)は(1)に示した塗布部位(局所)

に関する事象のみで、臨床検査値(バイタルサインを含む)に関する事象は両群と

もに認められなかった。なお、米国で実施した臨床試験( -220-11)及び国内

で実施第 I 相試験(131-102)の結果において、PMDA から懸念事項として指摘され

た臨床検査の 5 項目の変動(ALT 上昇、AST 上昇、LDH 上昇、CK 上昇、T-P 低下)

に関する有害事象については、いずれも手術の影響により発現した事象であるとし

て、因果関係は否定された。また、実対照薬と比較して著しく発現率が高いもので

はないことから、本剤の影響による可能性はないと考えた。

OPB-2045 遊離塩基、代謝物(DM-210、DM-211、DM-212 及び DM-213)につい

て、Cmax、AUC0-t1、AUC0-t2と治験薬使用量、有害事象発現件数、年齢、塗布終了か

ら手術開始までの時間、手術時間及び出血量に関連はなく、Cmax、AUC0-t1、AUC0-t2

と術式分類(切開創の長さ)の関連は考えにくかった。また、薬物動態と個々の有

害事象の検討から、薬物動態と有害事象に関連は見出せなかった。更に、本剤の安

全性については、有害事象、バイタルサイン、臨床検査について、医学専門家によ

る医学的見地から比較検討した結果、両群間で治験薬塗布による特記すべき差異は

なく、対照薬群と比較し被験薬群において安全性が懸念される特異的な事象は認め

なかった。被験薬群において発現した副作用は、発現率が対照薬群と比較して高い

ものでなく、処置により回復性が認められた。

以上のことより、第 III 相試験(131-301)では血清中に OPB-2045 遊離塩基及び

代謝物が認められたが、バイタルサイン、臨床検査値の推移から、全身状態には影

響を及ぼしておらず、安全性に問題がないものと判断した。また、本臨床試験では、

術前状態や外科的侵襲が幅広い被験者[米国麻酔学会(ASA)分類 Class 1~3、手

術時間 87~451 分、出血量 0~450 g]が組み入れられた状況下で安全性を確認でき

たと考えている。

なお、腹腔鏡下手術以外の術式では安全性を確認していないため、非臨床試験の

結果を踏まえてそれ以外の手術での安全性を検討した。2.5.3.2 に記載したとおり、

ミニブタの試験結果から、血清中濃度は術式、創の長さにより影響されないことが

55 DM-210 は 52 名中 36 名、DM-211 は 52 名中 16 名、DM-212 は 52 名中 37 名(再測定結果)、DM-213は 52 名中 10 名に認められた。

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2.5 臨床に関する概括評価

64

示唆された。ミニブタは皮膚構造がヒトに類似しているため、その試験結果はヒト

に外挿できると判断した。

以上より、第 III 相試験(131-301)の腹腔鏡手術における血清中薬物濃度の結果

は、開腹手術等の切開創の長さが異なる手術手技においても大きな違いはないと考

え、腹腔鏡下手術と開腹手術で臓器に対する侵襲がほぼ同じであることも考慮して、

腹腔鏡下手術以外の術式において、本剤が安全性に影響を及ぼす可能性は低いと判

断した。

なお、医薬品申請前相談(オーファン以外)(平成 年 月 日薬機審長発第

号)における助言を踏まえて、本剤が腹部又は胸部の臓器・組織に直接接

触する可能性を考慮して、in vitro 細胞毒性試験を実施した(資料番号:4.2.1.2-1、

-2、-3、-4、-5)。胸部及び腹部(心臓、肺、肝臓、腎臓、筋肉、膵臓、腸、胃)56の

ヒト臓器由来細胞を用い、クロルヘキシジングルコン酸塩液を対照物質として IC50

値(50%の細胞生存率を示す濃度)を指標に比較検討した結果、いずれの細胞にお

いても本剤とクロルヘキシジングルコン酸塩液で細胞毒性に大きな差はないと考え

られた。そのため、本剤が臓器・組織に直接接触した際の安全性及びリスクは、ク

ロルヘキシジングルコン酸塩液と大きな差はないと考えられた。クロルヘキシジン

グルコン酸塩液製剤は術式を問わず手術部位の皮膚の消毒に用いられていることか

ら、本剤も臨床試験で安全性が確認されている腹腔鏡手術施行患者だけでなく、他

の手術施行予定患者にも適用可能であると判断した。また、第 III 相試験(131-301)

では代謝物(DM-210 及び DM-212)の暴露割合が大きかったため、その毒性につい

て非臨床試験(復帰突然変異試験)で検討したが、毒性は認められなかった(資料

番号:4.2.3.7.6-1、-2)。

ただし、腹腔鏡下手術を含む他の術式で使用した際の安全性については、市販後

の使用成績調査で確認していく予定である(詳細は 1.11 RMP を参照)。

以上、局所における影響、吸収された際の全身的な影響の観点から、本剤の安全性

を考察した。第 I 相試験(131-102)で副作用と判定された事象は、被験者の管理、採

血時刻、有害事象の取り上げ方法及び因果関係の判定基準に問題があるため、1.8 添

付文書案の副作用の項に取り上げて注意喚起する必要はないと判断した。また、併合

解析を実施した結果、下痢は、偶発的な事象で、本剤との関連性が低いため、同様に

1.8 添付文書案の副作用の項に取り上げて注意喚起する必要はないと判断した。それ

以外の局所への影響及び皮膚炎は臨床使用上許容できる範囲であると判断した。

56 心臓:HCM 細胞、肺:IMR-90 細胞及び A549 細胞、肝臓:HepG2 細胞、腎臓:HEK293 細胞、筋肉:

RMS-YM 細胞、膵臓:PANC-1 細胞、腸:Caco-2 細胞及び HT-29 細胞、胃:MKN45 細胞を使用

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2.5 臨床に関する概括評価

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2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

本剤は「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」の効能・効果取得を目指して開発を行っ

た。現在、臨床現場ではヨード製剤、クロルヘキシジングルコン酸塩製剤が広く用いら

れている 1,2)が、50 年以上、本分野に新規の有効成分を含有する殺菌消毒剤が導入され

ておらず、生体消毒薬の選択肢は少ないのが現状である。更に、既存の生体消毒薬に抵

抗性を示す細菌が報告されており、抵抗性菌に対する適切な感染予防対策が求められて

いる。

非臨床試験では、in vitro 殺菌力として標準菌株及び臨床分離株に対する MBC より、

殺菌スペクトラムを評価した。in vivo 殺菌力は細菌汚染マウスを作製して評価した。臨

床試験では、健康成人を対象にして、皮膚常在菌の細菌数を指標に有効性を確認した(ク

ロルヘキシジングルコン酸塩製剤を対照)。また、臨床現場での既承認薬の実態を把握

するため、医療従事者(医師及び看護師)を対象にアンケート調査を実施した。

以下に、本剤の非臨床試験及び臨床試験並びに臨床現場での既承認薬の使用実態(ア

ンケート調査)をもとにベネフィットとリスクをまとめた。

2.5.6.1 ベネフィット

(1) 現在使用されている消毒剤に抵抗性を示す細菌(殺菌消毒効果が十分得られない細

菌)に対して、強い殺菌効果を有する(非臨床試験結果)。

In vitro 殺菌力として、マイクロプレートを用いた希釈法により MBC を求め、本剤

の殺菌スペクトラムを評価した。その結果、グラム陽性及びグラム陰性の種々の標準

菌株(100 菌株)57に対して、本剤は、クロルヘキシジングルコン酸塩液及びポビドン

ヨード液と同等若しくはそれ以上の殺菌スペクトラムを示した。特に、グラム陽性菌

に対して強い殺菌力と速効性を有した。

また、MRSA、Enterococcus faecalis、Staphylococcus aureus(Methicillin 感受性)、CNS、

Escherichia coli、Corynebacterium species、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、

Acinetobacter baumannii、Serratia marcescens の臨床分離菌株(220 菌株)58に対しても

MBC を求めて、本剤の殺菌スペクトラムを評価した。その結果、本剤は、クロルヘキ

シジングルコン酸塩液及びポビドンヨード液と同等若しくはそれ以上の殺菌スペクト

ラムを示した。特に、E. faecalis に対しては、クロルヘキシジングルコン酸塩液やポビ

ドンヨード液よりも有効であると考えられた。

更に、in vivo 殺菌力として、細菌汚染マウス皮膚を作成し、本剤塗布による平均殺

菌率を求めて評価した。その結果、本剤は一般細菌(S. aureus、S. epidermidis、A.

57 MRSA、VRE を含むグラム陽性球菌(55 菌株)、グラム陽性桿菌(9 菌株)、Burkholderia cepacia 以外

のグラム陰性菌(34 菌株)、B. cepacia(2 菌株) 58 MRSA(30 菌株)、Enterococcus faecalis(30 菌株)、Staphylococcus aureus(Methicillin 感受性)(20 菌

株)、CNS(20 菌株)、Escherichia coli(20 菌株)、Corynebacterium species(20 菌株)、Pseudomonas aeruginosa(20 菌株)、Klebsiella pneumoniae(20 菌株)、Acinetobacter baumannii(20 菌株)、Serratia marcescens(20 菌株)

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2.5 臨床に関する概括評価

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baumannii、Corynebacterium diphtheriae)、クロルヘキシジングルコン酸塩に抵抗性を

示す細菌(MRSA、VRE、P. aeruginosa、S. marcescens、Burkholderia cepacia)の計 9

菌種に対して、クロルヘキシジングルコン酸塩液及びポビドンヨード液と同等若しく

はそれ以上の殺菌力を示した。特に、VRE に対しては、クロルヘキシジングルコン酸

塩液やポビドンヨード液よりも有効であると考えられた。

(2) 健康成人を対象とした OPB-2045G 液の有効性を検証する試験[第 III 相試験

(131-302)]において、既存薬に対する非劣性及び基剤に対する優越性を同時に検

証できている薬剤である。

現在、「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」に対して、臨床現場では、ヨード製剤、

クロルヘキシジングルコン酸塩製剤が広く用いられている。

本剤(1.5%)は、健康成人を対象とした OPB-2045G 液の有効性を検証する試験[第

III 相試験(131-302)]を実施した結果、塗布 10 分後の細菌数を主たる有効変数とし、

腹部及び鼠径部において、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液に対する非劣性が検

証できた。同時に、プラセボ対照薬(基剤)に対しては、優越性が検証できた。

腹部及び鼠径部における塗布 10 分後の細菌数は、本剤(1.5%)と 0.5%クロルヘキ

シジングルコン酸塩液で同様に基剤より低値かつベースライン細菌数より低値にする

ことができた。そのため、本剤(1.5%)は、皮膚の表面に存在する一過性微生物(transient

microorganisms)と病原微生物(pathogenic microorganisms)を除去し、皮膚常在細菌叢

を低値に減らすという手術前の皮膚消毒の目的を達成し、有効な製剤であると判断し

た。

(3) 米国及び本邦における生体消毒薬の有効性判定基準に照らしても、有効な製剤であ

ることが支持される。

健康成人を対象とした OPB-2045G 液の有効性を検証する試験[第 III 相試験

(131-302)]で得られた細菌数について、ベースライン細菌数の高い被験箇所59をサブ

グループとして検討した結果、本剤(1.5%)の塗布 10 分後の細菌数減少量の平均値

は、腹部では 2.0 log10 CFU/cm2 を超え、鼠径部では 3.0 log10 CFU/cm2 を超え、かつ、

塗布 6 時間後の細菌数が腹部及び鼠径部ともベースライン細菌数を超えていなかった。

この結果は、米国 TFM の有効性の判定基準60を満たしていた。

更に、ベースラインから塗布 10 分後の細菌数減少量の平均値は、腹部(乾燥部位)

及び鼠径部(湿潤部位)ともに 2.0 log10 CFU/cm2を超え、かつ、塗布 6 時間後の細菌

59 ベースライン細菌数が腹部で 2.5 log10CFU/ cm2以上、鼠径部で 4.5 log10CFU/ cm2 以上をそれぞれ満た

す被験箇所(TFM による殺菌消毒剤の有効性評価は、可能な限り高いベースライン細菌数を有する被

験者で評価することが望ましいとの観点から、ベースライン細菌数の基準を設定し、基準に満たない症

例を解析対象から除外している 30,31)) 60 試験薬を適用し、その 10 分以内に皮膚常在細菌数が、ベースライン細菌数(塗布前)より腹部では 2.0

log10 CFU/cm2、鼠径部では 3.0 log10 CFU/cm2減少すること、また、少なくとも消毒後 6 時間までベース

ライン細菌数未満であることを要求している。

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2.5 臨床に関する概括評価

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数がベースライン細菌数を超えていなかった。この結果は、試験終了後に日本環境感

染学会から公表された「生体消毒薬の有効性評価指針:手術野消毒 2013」の有効性の

判定基準61を満たしていた。

以上、米国及び本邦の生体消毒薬の有効性の判定基準を満たした点からも、本剤は

「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」として有効な製剤であることが支持された。

(4) 既存の生体消毒薬(ヨード製剤やクロルヘキシジングルコン酸塩製剤)の課題を解

決できる可能性がある新規の生体消毒剤である。

医療従事者(医師及び看護師)を対象としたアンケート調査結果 17)では、術後感染

は患者の QOL の低下や医療費の増大などに繋がることから、その対策が重要な課題

であること、また、既存の生体消毒薬に抵抗性を示す細菌に対する対策は必要である

ことが示唆された。

生体消毒薬は術後感染防止対策に重要な役割を担っているため、既存の生体消毒薬

の課題を解決できる可能性がある消毒薬は、感染防止対策における標準予防策の観点

から、術後感染予防対策の一助となることが示唆され、臨床現場に必要であると考え

られた。

2.5.6.2 リスク

(1) 皮膚の刺激症状(適用部位紅斑、適用部位そう痒感等)や皮膚炎が発現する可能性

がある。

第 I 相試験(131-102)では、副作用として適用部位紅斑が 13%(6/48 例)6 件、適

用部位そう痒感が 2%(1/48 例)に 1 件認められた。

健康成人を対象にした第 I 相試験(131-104)、第 II 相試験(131-201)、第 I/II 相試験

(131-202)及び第 III 相試験(131-302)の 4 試験を併合した結果では、副作用として

適用部位紅斑が 0.8%(4/497 例)4 件、適用部位皮膚炎が 0.2%(1/497 例)に 1 件認め

られた。また、皮膚炎が 0.2%(1/497 例)に 1 件認められた。

腹腔鏡下での消化器手術施行予定患者を対象にした第 III 相試験(131-301)では、

副作用が 5.8%(3/52 例)に 3 件認められた。内訳は「適用部位皮膚炎」(1 例 1 件、

重症度は中等度)、「適用部位紅斑」(1 例 1 件、重症度は中等度)、「適用部位そう痒感」

(1 例 1 件、重症度は中等度)であった。

(2) 本剤はクロルヘキシジングルコン酸塩と化学構造上の類似性があるため、クロルヘ

キシジングルコン酸塩液で報告されているアナフィラキシー症状が発現する可能性

は否定できない。

本剤の有効成分は、クロルヘキシジングルコン酸塩と構造が類似している。したが

61 試験薬塗布 10 分後の細菌数が、腹部及び鼠径部でベースライン細菌数(塗布前)から 2.0 log10 CFU/cm2

減少すること、また、塗布 6 時間後の細菌数がベースライン細菌数を超えないこと。

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2.5 臨床に関する概括評価

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って、クロルヘキシジン製剤に対して過敏症の既往歴のある患者に本剤を使用した場

合に、クロルヘキシジングルコン酸塩で報告されているアナフィラキシー症状が発現

する可能性は否定できないと判断した。

2.5.6.3 ベネフィットとリスクに関する結論

本剤は、既存の生体消毒剤(ヨード製剤やクロルヘキシジングルコン酸塩製剤)と同

様のリスクを有するものの、これらの生体消毒剤より優れた特徴及び有用性を有してい

ることから、本剤はリスクよりベネフィットが上回ると考えた。

以上より、本剤を本邦の術後感染予防対策の一助となりうる新規生体消毒剤として新

たに臨床現場へ提供することは意義があると判断した。

2.5.6.4 市販後の本剤の使用法に関する教育・普及

「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」の適用に対して、臨床現場では 10%ポビドンヨ

ード液、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩ア

ルコール液が汎用されている 1,2)。10%ポビドンヨード液、0.5%クロルヘキシジングルコ

ン酸塩液は、「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」以外に「粘膜の消毒」、「創傷部位の

消毒」等の効能・効果を有しているため、本剤が「手術部位(手術野)の皮膚の消毒」

以外の用途で使用されないよう注意が必要である。

ただし、「創傷部位の消毒」に関して、創傷治癒に必要な因子に対して有害であるた

め、創面には消毒剤を使用すべきではないとされている 45-47)。また、日本手術医学会か

ら公表されている「手術医療の実践ガイドライン」25)では、「術後の創処置について、手

術で縫合閉鎖した創部は術後 24~48 時間は滅菌材料で被覆して保護する。それ以降の

被覆は必要ない。また、基本的に創部を消毒する必要はない。」とされている。そのた

め、本剤は原則創傷部位に使用すべきではないと考えている。

以上のことを踏まえて、既承認薬の添付文書等の記載方法を考慮し、「損傷皮膚には

使用しないこと」を添付文書に記載のうえ、添付文書に関連した情報を医療従事者に対

して提供し、市販後の本剤の適正使用のための教育・普及につなげていく予定である。

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2.5 臨床に関する概括評価

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