テレワークの最新動向と総務省の政策展開 ~「テレ …5 テレワーク関係4省 内閣官房長官指示により、テレワークに関する府省連携を強化するため、
2章 テレワークとは? - MLIT(SOHOワーカー、マイクロビジネス等を含む)...
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2テレワークとは?
2 章 テレワークとは?
★ここでは、テレワークという働き方について、具体的にいくつかの分類を示して説明しています。★テレワークといっても、その形態は非常に多様です。自分の企業にあったテレワークを導入するためにも、多様な働き方を知っていただくことが重要です。
(1) テレワークという働き方とは
最初に、テレワークとはどういう働き方なのかについて、少し詳しく説明をしておきます。テレワークは一言で言えば、
ICT を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方
と定義されます。あらかじめ定められた勤務場所(一般的にはオフィス)で、例えば 9時から 17時まで定められた時間を勤務するという、固定された「勤務場所」と「勤務時間」に基づくこれまでの働き方に対して、テレワークは ICTを活用することによって、働く場所と時間を働く人が柔軟に選べるようにした働き方です。もちろん、テレワークという働き方は、従来のオフィス中心の働き方を否定するものではなく、柔軟な働き方を選択肢のひとつとして加えることによって、働き方の質を高めるということです。テレワークは、テレ(Tele)とワーク(Work)という言葉を組み合わせてできた言葉
です。テレは、「遠い」あるいは「遠距離の」という意味を持ち、「働く」という意味のワークと組み合わせることによって、「(会社から)離れた(場所で)働く」という意味になります。もともとテレワークは、アメリカで 1970年代にエネルギー危機とマイカー通勤による交通混雑や大気汚染の緩和を目的として、ロスアンゼルス周辺で始められたと言われています。また、ヨーロッパではテレワークよりも広い概念として、eワークという言葉が使われることが多くなってきています。次の項ではいくつかあるテレワークの形態について説明します。
(2) テレワークの形態分類と特徴
テレワークの実施形態は、テレワークを実施する対象者・場所、導入の意図、頻度により次のように分類することができます。
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■対象者の就業形態の違いによる分類最初にテレワーカーが、企業等に雇用されているのか、自営業者のように雇用されずに自ら事業を営んでいる人なのかによって分けられます。冒頭にも書いたように、このガイドブックは、企業等に雇用されている従業員のテレワークについて述べたものであり、対象は以下のうち「雇用型テレワーカー」に限定しています。
図表 2-1 就業形態によるテレワーカーの区分
①雇用型テレワーカー・外勤型テレワーカー →モバイル勤務・内勤型テレワーカー
→在宅勤務・通勤困難型テレワーカー
②自営型テレワーカー
(SOHOワーカー、マイクロビジネス等を含む) -③内職副業型テレワーカー(在宅ワーカー)(資料)「テレワーク白書 2008」、平成 20年 12月、社団法人日本テレワーク協会に一部加筆
雇用型テレワーカーは、さらに「外勤型テレワーカー」、「内勤型テレワーカー」、「通勤困難型テレワーカー」に分けることができます。本ガイドブックでは、「外勤型テレワーカー」を“モバイル勤務”として扱い、また「内勤型テレワーカー」と「通勤困難型テレワーカー」を“在宅勤務”として扱います。
(外勤型テレワーカー 【モバイル勤務】)外勤型テレワーカーとは、営業マンやサービスマンなど、あらかじめ定められた勤務場所(オフィス等)以外の場所を中心に ICTを活用して仕事をするテレワーカーです。ほとんどの営業マンはオフィスにとどまって仕事をするよりも、顧客先などを訪問することが仕事の中心ですが、単に外回りをしているだけではテレワーカーとは呼びません。外勤中にノート型パソコンや PDAなどの携帯情報端末を利用して、オフィスとの連絡や情報のやりとりをしつつ仕事をする形態が外勤型テレワークです。書類の作成やメールの受発信などを、自宅や 立ち寄り型のオフィス、駅や空港、列車の中、顧客先のオフィスといった多様な場所で行う働き方で、一般にモバイル勤務と呼ばれます。実施形態としては、週に 1~ 2回程度の頻度で営業会議や必要に応じて自分のオフィ
スに行く他は、自宅から直行直帰するワークスタイルが一般的です。モバイル勤務は、移動時間の短縮により、顧客との面談時間や訪問回数を増やし、顧客満足度の向上を図り、営業効率を上げることができます。さらには、オフィスに行く頻度が週に 1~ 2回程度なので、個人デスクの フリーアドレス化によるオフィスコスト削減を図ることも可能となります。
本ガイドブックで主に扱う内容
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(内勤型テレワーカー 【在宅勤務】)内勤型テレワーカーとは、企画・人事・総務など、これまであらかじめ決められた勤務場所(オフィス等)を中心として仕事をする人達のテレワークです。仕事の内容に合わせ、勤務先のオフィスのデスクに限らず、自宅において、その仕事を遂行する上で適切な場所と時間を自由に使った柔軟な働き方です。
ICTの進展にともなって、従来の固定的なオフィスを離れて遂行できる仕事の割合が増えており、最適な場所と時間を選んで仕事を行うことは、仕事を効率よく、効果的に進めることができるだけではなく、新しいアイディアを生み出すなど、思考的な業務にも向いています。例えば、自宅で行なうことが可能な業務であれば、電話などで集中を中断されることが少ないので、「業務の効率化」が図れ、また通勤がないために「通勤時間の短縮」や「通勤疲労の軽減」にもつながります。
(通勤困難型テレワーカー 【在宅勤務】)通勤が困難な身体的障害のある人や、育児・介護などを抱えている人が、在宅勤務を中心として仕事をする形態のテレワークです。通勤困難型テレワーカーには、身体に障害などを持ち恒常的に通勤が困難なケースと、骨折等の怪我あるいは妊娠・育児・介護などの理由で一時的に通勤が困難になるケースがあります。通勤の困難さの度合により、必要に応じてオフィスに出向くケースもありますが、常時在宅勤務となるケースが多いようです。働くことによって社会参加をしたいと願っている身体障害者の雇用を可能にし、育児・介護などで通勤が困難な人達の継続就業を可能にし、優秀な人材がこうした理由から退社していくことを防ぐという意味で、企業にとっても有効な手段です。さらに、少子高齢化時代における労働力不足への対応策ともなります。
(自営型テレワーカーなど)自営型テレワーカーとは、ICTを活用して場所と時間を自由に使った働き方をしている個人事業者や個人に近い小規模事業者のことです。SOHOワーカーやマイクロビジネスと呼ばれることもあります。また内職副業型テレワーカーは、ICTを活用し、主に自宅でアルバイト的な仕事を行っている人達で、育児や介護で家を離れられない女性や、リタイヤしたシニアが多く、一般的には在宅ワーカーと呼ばれています。
■導入の意図の違いによる分類企業がテレワークを導入する意図をここでは大きく 2つに分けて考えます。BPRモデルと CSRモデルです。
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(BPRモデルのテレワーク導入)BPRとは、「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」のことで、仕事のやり方の再構築という意味ですが、本書で用いる「BPRモデル」によるテレワーク導入とは、企業にとっての本来の活動目的である業績アップや生産性向上などを意図してテレワークを導入することを指します。そのような企業経営上の目的でテレワークを導入すると、多くの場合、ワークフローを見直したり、あるいは目標の設定と管理をいま以上に意識するようになるなど、仕事のやり方が変わってきます。企業全体としての業務革新に結びつくので、こうした目的・意図でのテレワークの導入を「BPRモデル」という言葉で表しています。これは下記の「CSRモデル」のテレワーク導入とは異なり、短期的に経営面の効果が
現れる点が特長です。
(CSRモデルのテレワーク導入)CSRとは、「コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ」のことで、企業の社会的責任という意味です。どのような企業も、何らかの形で社会に貢献していますが、より積極的に社会貢献を考えていく姿勢が、この言葉に込められています。テレワークとの関連でいえば、環境問題への配慮、大都市における防災性の向上といっ
た点で、テレワークの導入が社会に対して好影響を与えます。また育児や介護負担を抱える従業員がいた場合などには、テレワークの導入がその従業員にとって大きな助けになります。CSRモデルによるテレワーク導入では、このように社会全体や従業員個人に主たる焦点があたっています。従業員のワーク・ライフ・バランスを向上させるなど、福利厚生的な意味合いの強いテレワークの導入が「CSRモデル」とも言えます。在宅勤務者が増えれば少子高齢化対策としても有効との見方もあります。もちろん、在宅勤務の導入によって従業員の集中力がアップするなど、企業にとっての利点も数多くあります。働き方の選択肢が増え従業員の満足度が高まれば、それが優秀な人材の確保や企業イメージの向上につながり、長期的には業績改善にもつながるわけです。
上記 2つの導入意図は、もちろん両立も可能です。3章では「テレワークの効果・効用」という切口で、テレワーク導入の意図とテレワークの導入形態について詳述しています。
■実施頻度による分類実施頻度によるテレワークには、常時テレワークと随時テレワークがあります。
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(常時テレワーク)ほとんどの就業日にテレワークを実施する形態を常時テレワークと言います。テレワークを行う頻度・時間が、あらかじめ決められた勤務場所(オフィス等)での勤務頻度・時間に比べて多いようであれば、常時テレワークと言って良いでしょう。オフィスにほとんど出勤せずに、モバイル勤務やほとんどの就業日を自宅で仕事をす
る在宅勤務などは、この常時テレワークに分類されます。通勤が困難なために行うテレワークも、例外的にオフィスに出勤することはあっても、通常は自宅を中心に仕事を行うので常時テレワークと呼ぶことができます。常時テレワークは完全テレワークあるいはフルタイムテレワークと言われることもあ
ります。
(随時テレワーク)テレワークを行う頻度・時間が、週 1~ 2回とか、月に数回、あるいは午前中だけ、午後だけといったように、あらかじめ決められた勤務場所(オフィス等)での勤務頻度・時間に比べて少ない場合、随時テレワークと言います。在宅勤務を行っている多くのケースが、週に 1~ 2回程度実施している随時テレワークです。しかし、テレワークが可能な仕事は、ICTの進歩・普及とリテラシーの向上によって広がるため、現在は随時テレワークを行っている人でも、今後はテレワークの頻度が高まり、常時テレワークに移行することも考えられます。随時テレワークは、部分テレワーク、パートタイムテレワークと呼ばれることもあります。
このように、テレワークには様々な働き方があることがおわかりいただけたかと思います。それぞれの企業(あるいは企業内の部門)がおかれている環境や状況に応じて、最も適した形態のテレワークを導入することが望ましいでしょう。また、複数の形態のテレワーク(例えば在宅勤務とモバイル勤務など)を組み合わせて導入している企業の事例も見られます。以下、このガイドブックでは、主として在宅勤務、モバイル勤務について述べていきます。
詳しい内容に入る前に、テレワークによる働き方の例をご紹介します。
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2.テレワークとは?
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モバイル勤務 外勤型テレワーカー の例
【Aさん、男性、製造業の営業部門】営業マンの Aさんの担当は、県内の問屋や卸売業者。時には小売店を直接訪ね
ることもある。現在、Aさんが営業所に出勤することは非常にまれで、月に 2~3回程度である。日課としては、あらかじめたてた計画をもとに、自宅から取引先に直接向かう。昔はいったん営業所に出てから取引先に出かけ、夕方になるとまたオフィスに戻って・・・というのが日課であったので、それに比べると、今は非常に効率よく取引先を回ることができるようになった。もちろん毎日の営業報告は欠かさない。報告は空き時間を見つけて、外出先で作成することもあれば、夕方自宅に戻ってから作成することもある。作った報告はネットワーク経由で、本社のマネージャーに送られると同時に、データベースに蓄積され、他の営業マンも見ることができる。旅費などの立替金の精算なども全てオンラインでできるようになっている。取引先でも、在庫の確認や納期の確認などがその場でできるようになり、顧客
からの評価も高まってきているが、最近では競合メーカーもこうした働き方を導入する動きが見られ、近い将来は今以上に効率的な顧客サービスを提供していかなければならないと感じており、その点についても既にマネージャーに報告を提出している。
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在宅勤務 内勤型テレワーカー(BPRモデルのテレワーク導入) の例
【Bさん、男性、中堅企業の総務・企画部門】Bさんの会社で新たに導入が決まった在宅勤務制度は、業務改善や生産性の向
上を目的として導入されたものだ。「テレワークで BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を!」がスローガンになっている。顧客や取引先と日常的なコンタクトをしなければならない部門を除いて、マネージャーの了解が得られれば、基本的にはいつでも在宅勤務が可能となった。
Bさんは、集中してやらなければならない仕事をまとめて週の半ばに自宅で行うことにしている。通勤がないために、朝の早い時間から仕事を始め、集中して仕事をすると、夕方の早い時間には予定した仕事を片付けることができる。余裕ができた時間は趣味や家族との時間にあて、残業はしないことにしている。
Bさんとしては、テレワークを始めてからの方がマネージャーや他のスタッフとの連絡頻度は高まり、報告や打ち合わせの内容も濃くなっているのを実感できている。現在では、ほとんどのコミュニケーションはオンライン上で済むようになっており、課のスタッフがそれぞれどのような事をやっているのかもオンライン上でわかる。週 1回の顔を合わせたミーティングの中身も事前にオンライン上で分かっているので、効率良く行うことができ、むしろブレーンストーミング的なアイディア出しの時間が多くなった。個人としての生産性や課としての成果も上がっている。今まではだらだらと成果が上がらない事もあったが、今は 1日、1週間、1ヶ月の目標が明確なので、自分の現在の状況がしっかりと自覚できている。一人ひとりから出てくる計画(目標)を会社全体の意図や方針ともすりあわせて調整するマネージャー(中間管理職)は大変だなとも思うが、最近ではその業務にも慣れたようで、適切な助言や方向性を与えてくれる。在宅勤務をするようになってから、仕事の段取りや計画を常に考えるようになったことで、自分が成長できているという実感がある。会社の方針としてのBPRが、テレワークの導入によって進んでいることに、一従業員としても喜びを感じている。
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在宅勤務 内勤型テレワーカー(CSRモデルのテレワーク導入) の例
【Cさん、女性、IT関連企業の事業部門】IT関係企業の事業推進本部に所属する Cさんは、小学生の息子と娘をもつ 4人
家族。会社が導入した在宅勤務制度によって週に 1回以上は在宅で業務をこなす。前日までに上司に許可をとり、在宅の日には自宅のシンクライアント・パソコン(ハードディスクにデータが保存できないパソコン)を使う。会社からのノートや書類の持ち出しは禁止されており、最近ではもらった紙の情報を PDF化してサーバーに保存することが習慣化した。自分でもセキュリティには気を使い、家でも離席する時はパソコンをシャットダウンする。在宅勤務を始めて良かった点は、地域や PTAでの役割を果たせるようになった
こと。テレワークの日には、通勤に使っていた時間に町内学区のパトロールをする。またゆっくりと家族に夕食を作ってあげられる余裕ができたのもうれしい。最近料理に興味を持ち始めた娘に料理を教えたり、会話の時間もとれる。後輩の女性たちも出産、育児の期間に、在宅勤務制度を有効に活用していて、大変恵まれた時代になったなと感じている。その制度がある事を知って入社したいという女性も増えてきている。優秀な女性たちが自社に集まってきてくれる事をとても誇りにも思っている。
在宅勤務 通勤困難型テレワーカー(CSRモデルのテレワーク導入) の例
【Dさん、男性、団体職員(総務部門)】事故による脊椎損傷で車椅子の生活となった Dさんは、ハローワークの紹介で
団体職員となり、総務や経理の業務を行っているが、在宅勤務制度を取り入れていた職場だったので働き出す事を決めた。現在、職場に出社するのは原則として月に 1回程度で、あとは在宅での勤務である。常時テレワークだ。朝の 9時から午後 5時までの勤務だが、仕事始めと昼食休憩、仕事終了時には上司宛にメールで連絡を入れる。急な仕事がある時は、本社から電話をもらうこともあるが、普段は決まった仕事を自宅のパソコンを操作して遂行している。テレワークで業務を行っている事で、しっかりと仕事ができており、その事で組織の役に立てているという実感が得られていることが何よりの収穫である。