29年度賃金引上げの傾向(公表資料に基づく分析)...

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平成29年度賃金引上げの傾向(公表資料に基づく分析) 賃金引上げ率 雇用人員判断 D.I.と従業員規模ごとの賃上げ率 「働き方改革」に係る取組例 ○平成25年度以降企業の人手不足が続き、中小企業におい て特に不足感が強い。 ○平成29年には、政府から継続した賃金引上げと合わせて 下請取引の改善が要請されている中、中小企業の賃金引 上げは大企業に近い水準となり、非正規従業員において は大企業を上回る賃金引上げがみられる。 ○平成29年の賃金引上げでは、ベースアップの水準は昨年 度をやや下回る傾向がみられる一方で、子育て世代への 支援や非正規労働者への待遇改善など「働き方改革」の取 組と連動した賃金引上げも見られる。 1.88 1.67 1.67 1.71 1.72 1.71 2.07 2.20 2.00 2.05 1.75 1.75 2.12 2.24 2.03 2.06 1.72 1.46 1.47 1.53 1.52 1.53 1.76 1.88 1.81 1.99 1.35 1.15 2.01 1.78 2.1 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 2.00 2.20 2.40 連合発表賃上げ率 (全体) 連合発表賃上げ率 (従業員300人以上) 連合発表賃上げ率 (従業員300人未満) 連合発表賃上げ率 (非正規従業員) 雇用人員判断D.I. (大企業全体) 雇用人員判断D.I. (中堅企業) 雇用人員判断D.I. (小企業) (%) (%) 連合発表賃上げ率は、連合の各年発表「春季生活闘争 最終回答集計結果につ いて」(プレスリリース)に基づく。ただし、平成29年は3月31日発表の「2017春季 生活闘争第3回回答集計結果について」に基づく。 雇用人員判断D.I.は、日本銀行「短観(全国企業短期経済観測調査)」に基づく。 平成29331日までの公表資料による 働き方改革に向けた取組 業種等 具体的な取組 自動車メーカー 1100円の子育て世代への家族手当の前倒し実施 電機連合 労使が「働き方改革の実現の為に相互協力する」とした協同 宣言を発表 食料品メーカー 1日の所定内労働時間を20分短縮し、7時間15分に 社員全員の月額の基本給を一律で1万円引き上げ パート従業員も時給を平均40~60円引き上げ 外食サービス 女性社員には、不妊治療のための休暇取得 保険業 内勤社員5000名が対象。内勤社員へのベアは明治安田とし ては初 通信業 正社員にだけ支給していた月3500円の食事補助を使途を決 めない手当として4月から契約社員約4万5千人にも支給 陸運業 非正規の期間雇用社員の夏季一時金は最大5000円を特別 加算として上積み 正社員への登用数を前年計画から500人程度積み増しして 3145人とする 「産経ニュース 2017/3/13」http://www.sankei.com/economy/news/170313/ecn1703130001-n1.html 「電機連合ホームページ」https://www.jeiu.or.jp/kurashi/topic/2017/03000527.html 「SankeiBiz 2017/3/1」http://www.sankeibiz.jp/econome/news/170301/ecd1703010500001-n1.htm 「時事ドットコムニュース」http://www.jiji.com/jc/article?k=2017031301038&g=eco 「時事ドットコム 2017/3/9」http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030900947&g=eco 「朝日新聞デジタル 2017/3/15」http://www.asahi.com/articles/ASK3G5R5QK3GULFA02K.html 「労働制作研究・研修機構」http://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20160323b.html 1

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平成29年度賃金引上げの傾向(公表資料に基づく分析)

賃金引上げ率

雇用人員判断D.I.と従業員規模ごとの賃上げ率

「働き方改革」に係る取組例

○平成25年度以降企業の人手不足が続き、中小企業において特に不足感が強い。

○平成29年には、政府から継続した賃金引上げと合わせて

下請取引の改善が要請されている中、中小企業の賃金引上げは大企業に近い水準となり、非正規従業員においては大企業を上回る賃金引上げがみられる。

○平成29年の賃金引上げでは、ベースアップの水準は昨年

度をやや下回る傾向がみられる一方で、子育て世代への支援や非正規労働者への待遇改善など「働き方改革」の取組と連動した賃金引上げも見られる。

1.88

1.67

1.67

1.71

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1.71

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1.75

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2.24

2.032.06

1.72

1.46 1.471.53

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1.20

1.40

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2.00

2.20

2.40

連合発表賃上げ率

(全体)

連合発表賃上げ率

(従業員300人以上)

連合発表賃上げ率

(従業員300人未満)

連合発表賃上げ率

(非正規従業員)

雇用人員判断D.I.

(大企業全体)

雇用人員判断D.I.

(中堅企業)

雇用人員判断D.I.

(小企業)

(%)(%)

連合発表賃上げ率は、連合の各年発表「春季生活闘争最終回答集計結果について」(プレスリリース)に基づく。ただし、平成29年は3月31日発表の「2017春季生活闘争第3回回答集計結果について」に基づく。雇用人員判断D.I.は、日本銀行「短観(全国企業短期経済観測調査)」に基づく。

平成29年3月31日までの公表資料による働き方改革に向けた取組

業種等 具体的な取組

自動車メーカー 1100円の子育て世代への家族手当の前倒し実施

電機連合労使が「働き方改革の実現の為に相互協力する」とした協同宣言を発表

食料品メーカー1日の所定内労働時間を20分短縮し、7時間15分に社員全員の月額の基本給を一律で1万円引き上げパート従業員も時給を平均40~60円引き上げ

外食サービス 女性社員には、不妊治療のための休暇取得

保険業内勤社員5000名が対象。内勤社員へのベアは明治安田としては初

通信業正社員にだけ支給していた月3500円の食事補助を使途を決めない手当として4月から契約社員約4万5千人にも支給

陸運業

非正規の期間雇用社員の夏季一時金は最大5000円を特別加算として上積み正社員への登用数を前年計画から500人程度積み増しして3145人とする

「産経ニュース 2017/3/13」http://www.sankei.com/economy/news/170313/ecn1703130001-n1.html「電機連合ホームページ」https://www.jeiu.or.jp/kurashi/topic/2017/03000527.html「SankeiBiz 2017/3/1」http://www.sankeibiz.jp/econome/news/170301/ecd1703010500001-n1.htm「時事ドットコムニュース」http://www.jiji.com/jc/article?k=2017031301038&g=eco「時事ドットコム 2017/3/9」http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030900947&g=eco「朝日新聞デジタル 2017/3/15」http://www.asahi.com/articles/ASK3G5R5QK3GULFA02K.html「労働制作研究・研修機構」http://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20160323b.html

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40.3%

(64社)

35.2%

(56社)

15.7%

(25社)

8.8%

(14社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年を上回る

年収ベースの

賃金引上げになる

見込みか

上回る見込み 前年と同程度 下回る見込み その他

平成29年「企業の賃上げ動向等に関するフォローアップ調査」結果(経済産業省実施)

大手企業調査

○賃上げを実施した企業の割合は回答企業のうち今年度86.0%となり、平成28年度に引き続き、平成29年度も多くの企業が賃金の引上げを実施する傾向が継続している。

○賃金を引き上げた企業のうち、平成29年度にベースアップを実施している企業は51.1%となり、半数以上の企業がベースアップを実施。

○「年収ベース」の賃金について、 7割以上の企業が今年度は平成28年を上回る又は同程度と回答した。

※東証一部上場企業2,001社に調査票を送り、171社(回収率9%)から回答を得た。

賃上げ実施企業における賃金の引上げ方法

回答企業に占める賃上げ企業の割合 「年収ベース」での引上げ

働き方の多様化につながる具体的取組

平成29年3月30日時点

87.1% (149社)

86.0% (135社)

12.9% (22社)

14.0% (22社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度

引上げ実績

平成29年度

引上げ予定

引上げる/引上げた 引上げない/引上げていない

(n=171)

82.6%

(123社)

49.0%

(73社)

38.9%

(58社)

6.0%

(9社)

79.3%

(107社)

51.1%

(69社)

23.0%

(31社)

11.9%

(16社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

定期昇給・

賃金構造維持分

ベア(ベースアップ)分

賞与・一時金分

その他(諸手当等)

平成28年度 平成29年度(予定を含む)(n=149) (n=135)

(n=159)

67.9%

(93社)

53.3%

(73社)

27.0%

(12社)

17.5%

(24社)

8.8%

(37社)

17.5%

(24社)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

時短勤務制度等の導入

テレワーク、在宅勤務制度等

の導入

新たな休暇制度・

勤務体制の導入

託児所等の保育施設

の設置

サテライトオフィス等

の設置

その他

(n=137)

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平成 28年度産業経済研究委託事業

(平成 29年春闘結果等に関する調査)

報告書

平成 29年 3月

株式会社パイプドビッツ

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目次

1. はじめに .......................................................... 1

(1) 背景 .........................................................................................................................................1

(2) 調査の概要 ..............................................................................................................................1

2. 経済動向及び労働政策による賃金動向等への影響の分析 ................ 2

(1) 経営環境と労働環境の変遷 ...................................................................................................2

(2) 平成 29年の賃金引上げの傾向 ............................................................................................4

(3) 賃金引上げと各種指標の変遷 ...............................................................................................7

(4) 賃金交渉における、平均賃金方式と個別賃金方式の推移 ................................................12

(5) 働き方改革等への取組状況.................................................................................................14

3. 東証一部上場企業の平成 29年春闘結果等に関する調査の実施等 ........ 18

(1) 調査の目的 ............................................................................................................................18

(2) 調査概要 ...............................................................................................................................18

(3) 調査項目と調査票の策定 .....................................................................................................18

(4) 調査結果(平成 29年 3月 30日現在) ................................................................................19

(5) 調査票 ...................................................................................................................................32

4. 中小企業等の平成 29年春闘結果等に関する調査方法の検討 ............ 52

(1) 調査の目的 ............................................................................................................................52

(2) 調査概要 ...............................................................................................................................52

(3) 調査項目と調査票 .................................................................................................................52

(4) 調査票案 ...............................................................................................................................53

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1. はじめに

(1) 背景

官民一体でデフレマインドの払拭に全力を挙げ、アベノミクスを一層加速させるために、本年においても賃

上げを実現することが重要である。賃上げについて、大企業においては、3年連続で 2%を超える賃上げを

実現するなど、一定の成果を上げているが、中小企業との格差が課題となっている。4巡目の賃上げについ

ては、とりわけ、中小企業が賃上げを実現できるような環境づくりが重要である。

本年の賃上げについては、昨年 11月に開催された働き方実現会議において、安倍総理から産業界に、

「①少なくとも今年(平成 28年)並み水準の賃上げ」、「②期待物価上昇率も勘案した賃上げ」、「③下請等

中小企業の取引条件の改善」を要請したところ、一般社団法人日本経済団体連合会(以下、「経団連」とい

う。)榊原会長からも前向きな返答があった。

なお、最低賃金については、安倍政権下において、最低賃金の水準を平成 27年の水準 798円から毎年

3%を引き上げ、1,000円とする閣議決定を行っている。

また、昨年 1月に経団連が公表した、春闘への経営側の基本姿勢等を示した「経営労働政策特別委員

会報告」では、賃上げについて前向きな姿勢が示されており、賃上げの動きは着実に進んでいるといえる。

経済の好循環をより力強く回していくためには、4巡目もしっかりとした賃上げを実施することが重要であ

る。平成 29年の春闘においても、平成 26年以降の春闘同様に、速やかに各企業の賃金の改善等につい

て把握する必要があり、その情報をもって、民間企業に適切に賃金の引上げ等の改善を促す等、経済の好

循環の実現に貢献することを目的に調査を実施した。

(2) 調査の概要

平成 29年の春闘結果について、各企業の賃上げの状況を的確に把握するため、①~③の事業を実施し

た。

① 東証一部上場企業の平成29年春闘結果等に関する調査の実施等

「平成28年企業の賃上げ動向等に関するフォローアップ調査」(平成27年度産業経済研究委託事業(平

成28年春闘結果等に関する調査)及び平成28年度産業経済研究委託事業(平成28年企業の賃上げ状況

等に関する調査)を参照)等を参考に調査を実施した。平成28年度中に結果が明らかになり回収されたデー

タ・調査票について集計を行った。

② 中小企業等の平成29年春闘結果等に関する調査方法の検討

「中小企業の雇用状況に関する調査」(平成28年度産業経済研究委託事業(平成28年企業の賃上げ状

況等に関する調査)を参照)等を参考に、調査票及び実施方法の案を作成した。

③ 調査結果の分析

調査の結果等を踏まえ、行政機関等が実施している既存の調査や、28年度調査事業の近年の賃金動向

に関する報告等を参考に分析を実施した。

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2. 経済動向及び労働政策による賃金動向等への影響の分析

本業務で実施している、東証一部上場企業の平成 29年春闘結果等に関する調査の集計結果や、政府

機関、経済団体、労働団体等による各種調査結果を踏まえ、経済及び企業経営の動向を分析するとともに、

「働き方改革」等の政策が賃金引上げ等の労働者の待遇改善にもたらす影響の分析を試みた。

(1) 経営環境と労働環境の変遷

平成 17年度から平成 29年度に至る最近 10数年の、大企業を中心とした、経営環境と労働環境の変遷

について、概況を表 2-1に整理した。

整理の対象としたものは以下の通りである。

①経営労働政策委員会報告のトピック

経団連による経営労働政策委員会報告について、賃金、賃金以外の労働政策、労働法制等に関する政

府への要望事項に分けて、主要なポイントを記載している。

②経済情勢

財務総合政策研究所による法人企業統計調査の結果に基づき、企業収益の概況について売上高、経常

利益、設備投資、在庫投資の増減状況を挙げている。

③賃金引上げ率

本表では、連合の調査による平均賃金方式での賃上げ率の推移を掲載している。

また、参考として、国内経済の主要トピックを掲載している。

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表 2-1 経営環境と労働環境の変遷

注: 企業収益は、財務総合政策研究所「法人企業統計調査」の結果に基づく。

賃上げ率は、連合の各年発表「春季生活闘争 最終回答集計結果について」(プレスリリース)に基づく。ただし、平成 29年は 3月 31日発表の「2017春季生活闘争第 3回回答集計結果について」に基づく。

平成17年(2005年) 平成18年(2006年) 平成19年(2007年) 平成20年(2008年) 平成21年(2009年) 平成22年(2010年) 平成23年(2011年) 平成24年(2012年) 平成25年(2013年) 平成26年(2014年) 平成27年(2015年) 平成28年(2016年) 平成29年(2017年)

・個人情報保護法全面施行・ペイオフ全面解禁・郵政民営化法案成立

・東京三菱銀行とUFJ銀行が合併・ライブドアに強制捜査が入り東証機能麻痺に・日銀量的緩和・ゼロ金利解除・財務相:景気拡大が4年10ヶ月に及び「いざなぎ景気を超えた」と発表

・日銀0.5%に利上げ・トヨタ営業利益2兆円突破・百貨店経営統合進む:大丸-松坂屋、三越-伊勢丹・郵政民営化スタート

・円高で1ドル100円を突破・リーマンブラザーズ経営破たん→世界金融危機に・松下電器、パナソニックに社名変更し三洋電機子会社化・日銀利下げ0.1%に・東証大納会終値8860円で年初比42%減

・日経平均終値、バブル崩壊後最安値更新・クライスラー経常破綻、GM破産法適用・トヨタ、71年ぶり営業赤字・衆議院選挙で民主党が勝利し政権交代へ・厚労省、日本の貧困率を初めて発表(15.7%は先進国中最大)

・日航、会社更生法適用申請・トヨタ、230万台リコール・EUが財政危機のギリシャ支援で合意・日本進行銀行が破綻、初のペイオフ発動

・東日本大震災起こる・米国債初の格下げ・オリンパス、1000億円以上の損失隠し発覚・TPP参加意向表明

・日本の貿易収支赤字に・消費税法改正案成立・日航、東証一部再上場・衆議院選挙で自公勝利、政権交代へ

・政府日銀、物価上昇率2%を目標に・TPP交渉参加表明・参院選で与党勝利によりねじれ解消・デトロイト市が財政破綻・2020年五輪開催地が東京に

・消費税8%に・日銀追加金融緩和決定・消費税10%引き上げの先送り決定

・スカイマーク、経営破たん・マイナンバー通知開始・日本郵政グループ、東証一部上場

・日銀、マイナス金利政策導入決定・シャープ、ホンハイ傘下に・三菱自動車、日産傘下に・ファミリーマートとユニーが合併・日本 TPP協定文署名・熊本地震発生・イギリスEU離脱表明

・アメリカ合衆国大統領にトランプ氏が就任

・国際的にトップレベルにある賃金水準のこれ以上の引き上げは困難

・横並びでのベースアップは企業の競争力を損ねる・国際的トップレベルの賃金水準をこれ以上引き上げできない企業が大多数と思われる

・激化する国際競争の中では競争力強化が最重要課題であり、賃金水準を一律に引き上げる余地はない・企業の好業績により得られた短期的な成果は賞与・一時金に反映することが基本

・市場横断的なベースアップは、既に過去のものとなっており、もはやあり得ない・賃上げは困難と判断する企業数も少なくないと予測

・市場横断的なベースアップはもはやあり得ないことに加え、個別企業内における一律的なベースアップについても想定しにくい・企業の減益傾向が一層強まる中、ベースアップは困難な企業も多いと見込

・賃金よりも雇用を重視した交渉・協議・賞与・一時金について、前年同様に厳しい企業が多くなると想定・厳しい経営状況を踏まえれば、ベース・アップは困難な企業が多いものと見込まれる

・中堅・中小企業では、雇用を最優先した交渉を継続せざるを得ず、ベース・アップはもとより、手当の増額などの賃金改善を行う企業は少ないものとみられる・定期昇給の維持を巡る賃金交渉を行う企業が大半を占めると見込まれる

・厳しい経営環境や収益の状況からベースアップは論外。定期昇給の延期・凍結も含め、厳しい交渉を行わざるを得ない可能性も

・企業の存続と従業員の雇用の維持・安定を最優先する議論が中心・ベースアップを実施する余地はなく、賃金カーブの維持や定期昇給が主要な論点

・「賃上げ」はベースアップのみならず、「年収ベースでみた報酬の引き上げ」ととらえるべき ・業績が好調な企業は、拡大した収益を設備投資だけでなく、雇用の拡大、賃金の引き上げに振り向けていくことを検討。

・収益 が拡大している企業は、賃金の引き上げを前向きに検討することが強く期待される。・賃金自体が多様であるため、ベースアップは賃金を引き上げる場合の選択肢の一つ

・前年を上回る「年収ベースの賃金引上げ」に向けた前向きで踏み込んだ検討を呼びかけ・定期昇給の実施はもとより、全体ベースアップに限られず、若年層や子育て世代への重点配分(重点的ベースアップ)、など様々な方策を例示

・16年に引き続き「年収ベースの賃金引上げ」の前向きな検討を求める・賃金引上げの選択肢として、制度昇給、ベースアップ、賞与・一時金、諸手当、働き方・休み方改革、将来不安払拭や消費喚起対応 を挙げる

・持てる経営資源を有望分野へ積極的に振り向ける「攻めのリストラ」・多様な人材を活かした経営

・環境の変化に柔軟に対応し得る組織・人材戦略が求められる・企業行動を常時点検し、企業倫理を確立することは、経営トップの責務

・技術革新や経営革新などの絶えざるイノベーションが必須・「ワーク・ライフ・バランス」の推進

・若年者等の就労促進、女性や高齢者の就労機会拡大・時間内の効率的な働き方や、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の推進(ワーク・ライフ・バランス)

・転換制度を含めさまざまな形で長期雇用への門戸を開く・ワーク・ライフ・バランスの推進

・「日本型ワークシェアリング」ともいうべき雇用確保・生産性の向上を前提とし仕事や働き方の見直しを図る

・グローバルに事業を展開していくうえでは、多様な人材の受容が重要・若い人材のために多様な採用機会の拡大を継続

・人材、ポスト・ジョブの見える化、人材育成の体系化を基本とした世界共通の人事ルールの構築が重要

・中核人材について、適切な教育や経験を積ませる仕組みづくり ・多様な人材が活躍できるよう、ワーク・ライフ・バランスや、女性・高齢従業員の活躍推進、障害者の雇用促進など

・生産性の向上やイノベーションの創出に向けては、企業の人材戦略が極めて重要。・女性や高齢者の活躍推進、若年者雇用、仕事と介護の両立、障害者雇用、グローバル人材の確保・育成

・女性や高齢者、グローバル人材など、多様な人材の活躍の推進・健康経営の推進や長時間労働の抑制、仕事と育児・介護等との両立

・人口減少を働き方・休み方改革の推進による生産性向上や、多様な人材の活躍促進などに取り組む絶好のチャンスと前向きにとらえるべき

・賃金制度のあり方・見直し・賃金以外の労働条件の改善・働き方・休み方改革・生産性向上・下請対策への取組

・裁量労働制の見直しやホワイトカラー・エグゼンプション制の導入

・ホワイトカラーエグゼンプション制度の導入

・自律的な働き方のための労働時間制度の創設や労働力需給制度、雇用保険制度の見直しなど、労働分野における規制改革が不可欠

・労働時間規制の弾力的運用、自主的・自律的な時間管理を可能とする制度の検討、子育て世代への支援措置の充実・最低賃金の底上げは、企業のコスト構造や雇用維持の観点の考慮を求める

・道州制による分権型国家の実現と広域経済圏の形成・雇用のセーフティネットの拡充・中所得者層の所得税減税や内需拡大に向けた投資促進に資する減税措置

・切れ目のない景気刺激策、新成長戦略の具体化と実行・公労使三者で構成される審議会の結論を最大限重視するプロセスを堅持

・政府には、新成長戦略の早期かつ着実な実施を求める

・円高の是正や法人実効税率の引き下げ、エネルギー・環境政策の転換、強化の方向にある労働規制の見直しを求める

・競争力強化のために、(1)円高の是正(2)経済連携の推進(3)法人の税負担の軽減(4)一層の社会保障制度改革(5)エネルギー・環境政策の転換(6)労働規制の見直し

・「東日本大震災からの本格的な復興」「地方経済・中小企業対策」「電力価格の抑制・安定供給の確保」「社会保障制度改革の推進」「法人税負担の軽減」「雇用・労働市場の改革」の6課題

・経済の好循環実現に向けて「規制改革の推進」や「法人実効税率の引き下げ」など6項目

・「将来不安の払拭に欠かせない持続的な社会保障制度の確立に向けた改革や、働き方に中立な税制の構築・見直し」への取組を政府に求める

・労働時間制度改革の推進・社会保障制度改革の推進

製造業 増収 増収 増収 減収 減収 増収 減収 減収 増収 増収 減収 減収非製造業 増収 増収 減収 減収 減収 減収 減収 増収 増収 増収 減収 増収製造業 増益 増益 増益 減益 減益 増益 減益 増益 増益 増益 減益 増益

非製造業 増益 増益 減益 減益 減益 増益 増益 増益 増益 増益 増益 増益製造業 増加 増加 増加 減少 減少 増加 減少 減少 増加 増加 増加 増加

非製造業 減少 増加 減少 減少 増加 減少 増加 増加 増加 増加 増加 増加製造業 増加 減少 増加 増加 減少 増加 増加 減少 増加 増加 減少 増加

非製造業 増加 増加 減少 減少 減少 減少 増加 減少 減少 減少 減少 減少

賃上げ率 (%) 1.68 1.79 1.86 1.88 1.67 1.67 1.71 1.72 1.71 2.07 2.20 2.00 (注)2.05

主な出来事

経営労働政策委員

会報告のトピック

企業収益(前年度(28年度のみ前年度同期)と比較)

売上高

経常利益

設備投資

在庫投資

賃金交渉へのスタンス

その他経営の重点など

政府への要望

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4

(2) 平成 29 年の賃金引上げの傾向

本年の賃上げについては、平成 28年 11月に開催された働き方実現会議において、安倍総理から産業

界に、「①少なくとも今年(平成 28年)並み水準の賃上げ」、「②期待物価上昇率も勘案した賃上げ」、「③下

請等中小企業の取引条件の改善」を要請したところ、経団連榊原会長からも前向きな返答があったものであ

る。

平成 29年 3月 31日に、連合より、平成 29年賃金引上げに関する回答状況の集計結果(中間集計)が

公表された。この集計結果や各種の報道等に基づき、平成 29年の賃金引上げに係る傾向について概括す

る。

①賃上げ率

上記のような政府からの要請も踏まえ、これまでに回答が集約されている範囲では、平成 29年度の賃金

引上げは昨年の数値をやや下回るもののほぼ同水準を確保している。

また、中小企業の一部のカテゴリー(100~299人)においては、昨年を上回る賃上げ率となっている。(表

2-2)。

表 2-2 賃金引上げの状況(連合による集計結果)

出典:連合「2017春季生活闘争 第 3回回答集計結果について」平成 29年 3月 31日

企業の中には、「働き方改革実現会議」の討議を受けて、ベースアップ率は昨年を下回るものの、子育て

世代への手当を厚くすることで月例賃金の賃上げ率は昨年度並みとする、残業時間が減っても年収が減ら

ない賃上げの計画、所定労働時間の短縮など、従来のベースアップや賃金構造によらない、賃金引上げに

取り組む企業もみられる(出典:日本経済新聞社「春季交渉、賃上げ・働き方両立探る 経営者アンケート、

ベア「縮小」6割」平成 29年 3月 16日 他)。

②各種取組

(a) 非正規労働者の労働条件改善の取組(表 2-3)

賃金引上げ以外の取組の中で、非正規労働者の処遇改善では、正社員への転換ルールの導入や、育

児・介護休暇制度を雇用形態に関わらず利用できるようにする取組への回答の増加が目立つ。

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5

表 2-3 各種取組の妥結状況(非正規労働者)(連合まとめ: 3 月 31 日現在)

出典:連合「2017春季生活闘争 第 3回回答集計結果について」平成 29年 3月 31日

(b) 職場における男女平等の実現に向けた取組(表 2-4)

男女平等の実現の観点では、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いについての検証と是正に取り組む

とする回答が、昨年と比較して倍増している。

表 2-4 各種取組の妥結状況(男女平等の実現)(連合まとめ: 3 月 31 日現在)

出典:連合「2017春季生活闘争 第 3回回答集計結果について」平成 29年 3月 31日

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6

(c) ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けた取組(表 2-5)

ワーク・ライフ・バランスの実現の観点では、各種項目について昨年に引き続き多くの企業が取組を進める

ことを回答している。なかでも、労働安全委員会の設置など労働安全衛生法令に基づく職場の点検、改善の

取組を行う企業が大幅に増えている。また、育児・介護に関する両立支援制度の点検・改善の取組は、昨年

よりはやや減っているものの、引き続き多くの企業が取り組むと回答している。

表 2-5 各種取組の妥結状況(ワーク・ライブ・バランス)(連合まとめ: 3 月 31 日現在)

出典:連合「2017春季生活闘争 第 3回回答集計結果について」平成 29年 3月 31日

(d) ワークルールの取組(表 2-6)

ワークルールの取組では、高齢者雇用安定法に係る取組を進めるとの回答が目立つ。また、派遣労働者

の受入時及び期間制限到来時における交渉・協議の協約化、ルール化の取組を行うとする企業が、昨年と

比べて倍以上に増えている。

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7

表 2-6 各種取組の妥結状況(ワークルール)(連合まとめ: 3 月 31 日現在)

出典:連合「2017春季生活闘争 第 3回回答集計結果について」平成 29年 3月 31日

③まとめ

これまでの回答状況からは、平成 29年の賃金引上げにおいて、昨年度と同水準の賃金引上げがなされ

ているのと合わせて、働き方改革の推進に係るような社内の制度改革や処遇改善がなされている傾向がみら

れる。賃金引上げにおいても、ベースアップの水準は昨年度をやや下回る傾向がみられる一方で、子育て

世代への支援を賃金面だけでなく労働環境整備等でも推進する取組がみられたり、中小企業においては大

企業を上回る賃金引上げがみられる。

(3) 賃金引上げと各種指標の変遷

①企業の収益及び消費者物価の賃金への影響(図 2-1)

図 2-1では、企業の経常利益及び消費者物価指数と、名目賃金、実質賃金の対前年増減率、厚生労働

省発表の賃上げ率とを比較した。

デフレ傾向により、平成 21年以降、消費者物価の上昇に伴い実質賃金の上昇率が名目賃金を上回って

いたが、平成 25年以降はインフレ傾向に転じていたため、逆に実質賃金が名目賃金を下回る傾向となって

いた。

長期にわたり 2%を下回る傾向にあった賃金引上げ率は、平成 25年以降上昇に転じている。この要因と

しては、平成 22年以降の企業の経常利益の増加が続いている中で、景気向上に伴う人手不足が主要な要

因として考えられる。政府の税制上の優遇策も含めた取組や、経済界に対する賃金引上げを求める積極的

な働きかけに対して経済界が前向きに応じたことも影響している。しかしながら、上記のように消費者物価が

プラスに転じていることによって、実質賃金はマイナスが続いていた。

平成 28年は、インフレ傾向が弱まる中で賃金引上げを継続したことにより、平成 23年以来の実質賃金の

プラスとなった。

名目賃金及び実質賃金の増減は、大きな傾向としては、経常利益増加率にやや遅れて変動する傾向に

あることがうかがえる。

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8

図 2-1 企業収益及び消費者物価と賃金の経緯(全産業)

出典: 消費者物価指数は、総務省「消費者物価指数」に基づく。

名目賃金及び実質賃金は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」に基づく。

経常利益増加率は、財務総合政策研究所「法人企業統計調査」に基づく。

②企業規模別ごとの賃金引上げ率の推移(図 2-2)

図 2-2では、連合が発表している企業規模別の賃金引上げ率と、企業規模別の雇用判断 D.I.(Diffusion

Index)を合わせて示した。

中小企業(従業員 300人未満の企業)での引上げ率は、全般に規模の大きな企業と比較して低い傾向に

あったが、平成 29年の速報値では、正規従業員並みの引上げ率になっていることが分かる。背景には、雇

用人員判断 D.Iが示すように、人手不足が中小企業においてとりわけ顕著であることに加えて、平成 28年

度から 29年度に向けて、経団連でも、政府からの要請を受けて、下請取引の改善を打ち出していることなど

が影響しているものと推測される。

また、非正規従業員の賃金引上げ率については、平成 26年までは正規従業員と比較して低く抑えられる

傾向にあったが、平成 29年の速報値では、むしろ大企業よりも賃金引上げ率が高い傾向にある。こちらも同

様に、人手不足が背景にあるものと推察される。

1.87 1.991.83 1.82 1.83 1.78 1.80

2.19 2.38 2.14

-1.0

-0.3

-3.9

0.5

-0.2

-0.9

-0.4

0.4

0.1

0.5

-40.0

-30.0

-20.0

-10.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

消費者物価指数の前年比(持家の帰属家賃を除く総

合)

厚生労働省発表賃上げ率(%)

名目賃金 対前年増減率(%)

実質賃金 対前年増減率(%)

経常利益増加率(全産業)(右軸)(%)

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9

図 2-2 企業規模別賃金引上げ率と雇用判断 D.I の推移

出典: 連合発表賃上げ率は、連合の各年発表「春季生活闘争 最終回答集計結果について」(プレスリリー

ス)に基づく。ただし、平成 29年の賃上げ率は 3月 31日発表の「2017春季生活闘争第 3回回答集

計結果について」に基づく。

雇用人員判断 D.I.は、日本銀行「短観(全国企業短期経済観測調査)」に基づく。

③製造業における経常利益、労働生産性、賃金引上げの推移(図 2-3)

次に、図 2-3では製造業における労働生産性、経常利益、賃金引き上げの経緯を整理した。

製造業では、平成 23年から平成 25年にかけて、経常利益の増加率が上昇している。これに少し遅れ

て、平成 24年頃から、まずは中堅企業及び小企業が、またつづいて大企業が、人員不足を感じていること

が雇用人員判断 D.I.の値からうかがえる。

平成 25年より、政府から産業界への賃金引上げの働きかけを行っているが、製造業における賃金引上げ

の背景として、経常利益が高い水準で推移していたこと、人手不足の状況下で人員を確保するために賃金

の引上げが必要とされていたことがあると理解できる。

1.88

1.67

1.67

1.71

1.72

1.71

2.07

2.20

2.002.05

1.75

1.75

2.12

2.24

2.03

2.06

1.72

1.46 1.471.53

1.521.53

1.76

1.88 1.81

1.99

1.35

1.15

2.01

1.78

2.1

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

1.00

1.20

1.40

1.60

1.80

2.00

2.20

2.40

連合発表賃上げ率(全体)

連合発表賃上げ率(従業員300人以上)

連合発表賃上げ率(従業員300人未満)

連合発表賃上げ率(非正規従業員)

雇用人員判断D.I.(大企業全体)

雇用人員判断D.I.(中堅企業)

雇用人員判断D.I.(小企業)

(%)

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10

図 2-3 製造業における労働生産性、経常利益、賃金引上げの経緯

出典: 消費者物価指数は、総務省「消費者物価指数」に基づく。

名目賃金及び実質賃金は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」に基づく。

経常利益増加率は、財務総合政策研究所「法人企業統計調査」に基づく。

雇用人員判断 D.I.は、日本銀行「短観(全国企業短期経済観測調査)」に基づく。

④調査ごとの賃金引上げ率の推移(図 2-4及び表 2-7)

賃金引上げに関する調査は、厚生労働省、連合や経団連の調査が例年提供されているほか、一般財団

法人労務行政研究所でも、例年 2月に、上場企業の役員、労働組合幹部、学識経験者を対象としたアンケ

ートを実施し、賃金引上げの見通しを発表している。

図 2-4及び表 2-7において、この発表に基づく引上げ率を比較する。

平成 22年から 25年にかけては、経団連発表の東証一部上場企業の賃上げ率が最も高い傾向にある。

一方、平成 26年以降の調査では、厚生労働省発表の引上げ率と経団連発表の引上げ率とが比較的近い

数値になっている。

1.82 1.832.19 2.37 2.13

1.59 1.6

1.841.98

1.84

1.35 1.15

2.01 1.78

-80

-60

-40

-20

0

20

40

60

80

100

-2.00

-1.50

-1.00

-0.50

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50(%)

製造業賃上げ率(全規模)

製造業賃上げ率(従業員300人未満)

非正規従業員賃上げ率(全業種)

労働生産性指数前年比(製造工業)右

軸(%)

経常利益増加率(製造業)右軸(%)

雇用人員判断D.I.(大企業製造業)右軸

雇用人員判断D.I.(中堅企業)右軸

雇用人員判断D.I.(小企業)右軸

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図 2-4 調査別賃金引上げ率(結果及び見通し)の年別比較(グラフ)

表 2-7 調査別賃金引上げ率(結果及び見通し)の年別比較(数値)

平成

20年

平成

21年

平成

22年

平成

23年

平成

24年

平成

25年

平成

26年

平成

27年

平成

28年

平成

29年

厚生労働省発表賃上げ

率 1.99 1.83 1.82 1.83 1.78 1.80 2.19 2.38 2.14

経団連発表賃上げ率 2.10 1.80 1.90 2.00 2.00 1.90 2.20 2.40 2.20

連合発表賃上げ率 1.88 1.67 1.67 1.71 1.72 1.71 2.07 2.20 2.00 2.05

(注)

労務行政研究所

賃上げ見通し 1.6 1.64 1.72 1.66 1.64 2.07 2.18 2.12 2.00

出典: 厚生労働省発表賃上げ率は、厚生労働省の各年発表「主要企業春季賃上げ要求妥結状況」に基づく。

経団連発表賃上げ率は、一般財団法人経済団体連合会の各年発表「春季労使交渉・大企業、中小企

業業種別妥結結果」に基づく。

連合発表賃上げ率は、連合の各年発表「春季生活闘争 最終回答集計結果について」(プレスリリース)

に基づく。ただし、平成 29年は 3月 31日発表の「2017春季生活闘争第 3回回答集計結果について」

に基づく。

労務行政研究所賃上げ見通しは、一般財団法人労務行政研究所が毎年発表している「賃上げの見通

し」に基づく。

1.99

1.83 1.82 1.831.78 1.80

2.19

2.38

2.14

2.10

1.80

1.90

2.00 2.00

1.90

2.20

2.40

2.20

1.88

1.671.67

1.711.72 1.71

2.07

2.20

2.00

1.6 1.64

1.72

1.66

1.64

2.07

2.182.12

2.00

1.50

1.60

1.70

1.80

1.90

2.00

2.10

2.20

2.30

2.40

2.50厚生労働省発表賃上げ率

経団連発表賃上げ率

連合発表賃上げ率

労務行政研究所 賃上げ見通し

(%)

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12

(4) 賃金交渉における、平均賃金方式と個別賃金方式の推移

賃金引上げの交渉においては、平均賃金方式と個別賃金方式がある。本節では、それぞれの交渉方式の違

いを概説したうえで、企業による交渉方式採用の経緯について整理する。

①平均賃金方式と個別賃金方式の違い

日本における、労使間での賃金決定の検討方法には、大きく分けて、平均賃金方式と個別賃金方式の 2

種類がある。「平均賃金」とは、1人ひとりの賃金の合計額を人員で除した賃金水準を指す。一方、「個別賃

金」とは、「高卒 35歳、勤続 17年、生産職」というように、労働(力)の銘柄を特定したときの賃金水準をいう。

平均賃金方式では、企業全体の労務コスト、人件費の総額を管理する観点から、従業員一人当たりの平

均賃金を算出し、その増減によって賃金引上げ率を決定する。企業の経営状況と賃金の連動を検証するの

にはこの方式が理解しやすく、また、社会全体の傾向が理解しやすい。

個別賃金方式では、企業ごとに特定の条件の労働者の賃金を前年と比較し、どの程度の賃金上昇がなさ

れるかを決定し、それらの条件を適用していく方式である。人員の構成に差がある同業の企業間での賃金の

絶対額を比較するには、個別賃金方式での比較が有効といえる。

②労働組合における交渉経緯

企業ごとの労働組合における平均賃金方式、個別賃金方式での交渉数の経緯について、下表(表 2-8)に

示す。

表 2-8 製造業における労働生産性、経常利益、賃金引上げの経緯

回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合全体 233 55 ‐ - ‐ - ‐ - 29 5 17.2% 19 65.5% 5 17.2%

製造業 146 26 - - - - - - 16 2 12.5% 11 68.8% 3 18.8%全体 231 118 - - - - - - 65 20 30.8% 30 46.2% 15 23.1%

製造業 147 86 - - - - - - 51 16 31.4% 24 47.1% 11 21.6%全体 236 148 - - - - - - 83 16 19.3% 46 55.4% 21 25.3%

製造業 154 105 - - - - - - 61 10 16.4% 34 55.7% 17 27.9%全体 223 145 - - - - - - 87 21 24.1% 42 48.3% 24 27.6%

製造業 145 104 - - - - - - 64 15 23.4% 30 46.9% 19 29.7%全体 216 131 - - - - - - 33 6 18.2% 21 63.6% 8 24.2%

製造業 135 85 - - - - - - 24 4 16.7% 16 66.7% 4 16.7%全体 224 150 36 24.0% 84 56.0% 31 20.7% 17 - - - - - -

製造業 142 97 28 28.9% 55 56.7% 19 19.6% 9 - - - - - -全体 210 140 32 22.9% 80 57.1% 35 25.0% 13 - - - - - -

製造業 134 97 24 24.7% 55 56.7% 24 24.7% 11 - - - - - -全体 214 150 29 19.3% 90 60.0% 30 20.0% 11 - - - - - -

製造業 136 103 23 22.3% 64 62.1% 16 15.5% 9 - - - - - -全体 215 137 24 17.5% 86 62.8% 29 21.2% 12 - - - - - -

製造業 136 93 19 20.4% 60 64.5% 18 19.4% 8 - - - - - -全体 220 181 31 17.1% 123 68.0% 26 14.4% 91 - - - - - -

製造業 140 123 21 17.1% 88 71.5% 12 9.8% 72 - - - - - -全体 219 184 36 19.6% 120 65.2% 28 15.2% 106 - - - - - -

製造業 133 117 24 20.5% 83 70.9% 13 11.1% 75 - - - - - -

平成22年

平成26年

平成27年

要求方式

個別方式 平均方式 その他方式 個別方式

平成23年

平成24年

平成25年

妥結方式

要求回答数

全体回答数

ベア妥結数

その他方式

平成20年

平成21年

平成18年

平成19年

平均方式

平成17年

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13

出典: 中央労働委員会 各年「賃金事情調査結果の概要」より

注:設問は複数回答可能かつ任意回答であるため、各方式の回答数及び割合の合計は全体の回答数及び 100%

にならない場合がある

それぞれの労働組合では、賃金の総額を反映する平均賃金方式での交渉が多数となっている。企業にお

いて、従業員に賃金として支払われる配分を検証する観点では、平均賃金方式での交渉によって給与の総

額を検証し、合わせて従業員一人当たりの賃金の推移を相互に理解することが有効である。

③ 平均賃金と個別賃金における賃上げ規模の推移

平均賃金方式では、従業員に支払われる賃金の総額を反映するため、従業員の構成が変化する長期的

に見ると、平均賃金の推移と、一定の条件の従業員の賃金(個別賃金)の変化の推移は同様にはならない。

日本労働組合総連合会の「連合・賃金レポート 2016」では、1985年から 2015年の 30年間にかけての平

均賃金と個別賃金の推移を掲載している(図 2-5)。同書によれば、「昨今の日本の状況は、高学歴化や高

年齢化など高コスト要因が働いているため、一人当たりの賃金原資を増大させても個別賃金が上昇しないと

いう厳しい状況にある」(P.3)とあり、企業としての賃金配分を増やしても、従業員の賃金が増大していない傾

向がみられる。

日本では、今後も平均賃金方式を中心に賃金引上げの検討・交渉が行われていくことが推測されるが、長

期的な視点では、初任給や年齢、勤続、役職を設定したモデル社員の賃金といった指標にも留意する必要

があると考えられる。

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14

図 2-5 個別賃金、平均賃金、平均年齢の推移

出典: 日本労働組合総連合会「連合・賃金レポート 2016」

(5) 働き方改革等への取組状況

政府が中心になって取り組んでいる「働き方改革」の概要を整理し、それらに係る民間企業の代表的な取

組を紹介したうえで、本調査結果から見られた大企業における取組状況を整理する。

①働き方改革における検討項目

平成 29年 3月 29日に、政府の「働き方改革実現会議」は、「働き方改革実行計画」」を決定した。(表

2-9)

この実行計画は、下表の項目によって構成されており、「同一労働同一賃金」や「長時間労働の是正」「テ

レワークや副業・兼業等の推進」「転職・再就職支援」といった、従来の雇用慣行、労働慣行を大きく変えよう

とするものであり、その成果として「女性・若者」「病気の治療」「子育て、介護」「障害者」「高齢者」「外国人

材」といった、幅広い人材の活躍の場を広げていこうとしている。

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15

表 2-9 働き方改革実行計画項目一覧

②賃金引上げ以外の処遇改善について

「働き方改革実現会議」で紹介された、企業により実施されている「働き方改革」の主旨に沿った取組を以

下(表 2-10)に紹介する。

1.働く人の視点に立った働き方改革の意義

( 1)経済社会の現状

( 2)今後の取組の基本的考え方

( 3)本プランの実行

2 .同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

( 1)同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備

( 2)法改正の施行に当たって

3 .賃金引上げと労働生産性向上

( 1)企業への賃上げの働きかけや取引条件の改善

( 2)生産性向上支援など賃上げしやすい環境の整備

4 .罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正

5 .柔軟な働き方がしやすい環境整備

( 1)雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援

( 2)非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援

( 3)副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定

6 .女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備

( 1)女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援などの充実

( 2)多様な女性活躍の推進

( 3)就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備

7 .病気の治療と仕事の両立

( 1)会社の意識改革と受入れ体制の整備

( 2)トライアングル型支援などの推進

( 3)労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化

8 .子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労

( 1)子育て・介護と仕事の両立支援策の充実・活用促進

( 2)障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進

9 .雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援

( 1)転職者の受入れ企業支援や転職者採用の拡大のための指針策定

( 2)転職・再就職の拡大に向けた職業能力・職場情報の見える化

10.誰にでもチャンスのある教育環境の整備

11.高齢者の就業促進

12.外国人材の受入れ

13.10 年先の未来を見据えたロードマップ

働き方改革実行計画

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表 2-10 企業・団体の取組一覧

テーマ

業種等 取組内容 実行計画

関連テーマ

柔軟な働き方

情報・通信 人事制度改革を行う中で兼業・副業制度を導入。時間や

場所にとらわれない働き方を提供することで、兼業・副業を行

いやすい環境を整備。

5.(3)

卸売・小売 事業(授乳服・授乳用インナーの製作・販売)に直接的に

関わりのある乳幼児を持つ女性を積極的に採用。子連れワ

ークスタイル(社内保育所ではなく、子供とともに出勤しそば

において業務を行う)などを導入。営業面においては、顧客

と同じ立場の従業員が接客することで好影響が出ている。

6.(2)

8.(1)

IT関連サービス 働く能力がありながら、子育て等の理由により外で働くの

が難しい女性の能力を活用し、在宅ワーカーとしてホームペ

ージ製作や情報処理サービス等の IT関連サービスを委託。

5.(1)

長時間労働の是正

食料品メーカー

「時間と場所の自在な働き方」を推進。スーパーフレック

ス・時間単位有給休暇・在宅勤務等の新制度を導入し、本社

20時退館(強制消灯)、週に 1回 18時退館を実施。2020

年度に所定労働時間 1日 7時間実現を目指す。

4.

5.(1)

商社 夜型の残業体質を改めるため「朝方勤務制度」を導入。20

時以降の残業は原則禁止とし、残務は翌朝に。早朝勤務に

は割増賃金を支給するとともに、健康管理の観点から軽食を

支給。

4.

女性が活躍しやすい環境整備

電気機器メーカ

女性従業員で構成されるワーキンググループ「Teamあじ

さい」を組織。女性活躍推進のための課題を明確化し、具体

的施策を提言。「Teamあじさい」からの声を活かし、在宅勤

務制度の導入、キャリア支援研修の実施といった様々な施策

や取組を展開。

5.(1)

6.(1)

6.(2)

サービス業 女性の生き方の選択肢を増やす「Dear WOMAN」制度を

導入。女性ゆえに迫られる人生の決断を支えるため、「妊娠・

出産・女性のからだに関する勉強会」、「パートナー探し支

援」、「卵子凍結補助」等を制度化。

6.(1)

8.(1)

建設業 結婚・出産後の女性社員の活躍には、パートナーの理解

と家事・育児等への参加が不可欠であるため、社員とそのパ

ートナーを対象とした「仕事と生活の両立支援セミナー」を開

催。女性活躍推進の風土醸成に寄与している。

6.(2)

8.(1)

金融業 地方銀行の働きかけにより発足した団体で、全国 64行が

参加する。結婚・配偶者の転勤・家族の介護等による転居で

やむなく退職する女性職員を転居先の地銀へ紹介し合える

プラットフォームとして「地銀人材バンク」をスタート。

6.(2)

9.(1)

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テーマ

業種等 取組内容 実行計画

関連テーマ

病気治療と仕事の両立

保険業 傷病時に取得できる制度等について、「傷病ガイド」として

明文化。また、休職から復職までのフロー図を作成し、あわ

せて活用。失効する有給休暇を積み立て、従業員自身の病

気治療や親族の介護等で休業する場合に取得を可能にす

る「ストック休暇制度」を導入。

7.(1)

空運業 「職場復帰プログラム」を定め、休業開始時から復帰後の

フォローアップまで段階的な復帰支援を行っている。また、

私傷病及び親族の看護で 3日以上休業が必要となる場合

に取得可能となる休暇を積立できる「特定目的積立休暇制

度」を導入。

7.(1)

8.(1)

出典: 「働き方改革実現会議」各委員資料に基づく

③本調査の結果に見られる取組状況

東証一部上場企業の平成 29年春闘結果等に関する調査への回答に見られる、「働き方改革」に係る取

組について整理する。詳細な集計結果については、表 2-11に示している 3章のそれぞれの図表を参照さ

れたい。

表 2-11 働き方改革に係る取組の傾向(東証一部上場企業の平成 29年春闘結果に基づく)

分野 調査結果に見られる傾向 参照先

1 実質賃金の引上

げにつながる取組

何らかの取組を行う企業は全企業の 9割近くに上る。

有給休暇取得の奨励が最も多く、全企業の 80%以上が取り

組むと回答している。他に福利厚生の充実、勤務時間短縮

による時間当たり単価の増加に取り組む企業の回答がみられ

る。

図 3-13, 3-14

2

労働者の働き方の

多様化につながる

取組

何らかの取組を行う企業は、全企業の 8割を超える。

時差勤務制度等の導入に取り組む企業が実施する企業の 3

分の 2に上っている。また、テレワーク、在宅勤務制度等の

導入に取り組む企業も 50%を超えている。

図 3-15, 3-16

3 常用労働者のキャ

リアアップ支援

何らかの取組を行う企業は、全企業の 8割に上る。

社内研修の拡充を行っている企業が全企業の 70%に上って

いる。

図 3-17, 3-18

4

常用労働者以外

のキャリアアップ支

キャリアアップ支援を行っている企業は全体の約 6割、そのう

ち 75%が正規雇用への転換を行っている。

図 3-19, 20

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3. 東証一部上場企業の平成 29 年春闘結果等に関する調査の実施等

(1) 調査の目的

本調査は、平成 29年春闘結果等を踏まえた、大手企業の賃上げ、ベースアップの状況を個社別に把握

するため、本年 3月に 2017年 3月 15日時点での東京証券取引所一部上場企業 2,001社に調査票を送

付して実施した。

(2) 調査概要

① 調査対象

東証一部上場企業 2,001社

② 調査方法

東証一部上場の各企業における、平成 29年春闘の結果を踏まえた賃金の改善等の取組状況について

調査するための調査票を作成するとともに、別途本調査用の回答用Webプラットフォームに反映した。

調査対象企業の各社には、依頼状及び回答の手引きを郵送して回答を依頼した。

③ 調査実施時期

2017年 3月 15日〜2017年 3月 30日(一次集計)

(3) 調査項目と調査票の策定

① 調査項目の策定

平成 27年、平成 28年の春闘結果等に関する調査を参考にしつつ、平成 28年度に開催された「働き方

改革実現会議」や平成 29年 1月に経団連が公表した「経営労働政策特別委員会報告」等も踏まえ、調査

項目、回答方法等を策定した。

② 調査票の作成

企業にとって回答しやすい調査票となるよう、以下のような工夫を行った。

【紙面】

➢ 複数の設問の間で、矛盾した回答を防止するため、回答内容の相互の確認や、回答後の次の回答項

目の指示等を詳細に記載した回答の手引きを作成した。

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(4) 調査結果(平成 29 年 3 月 30 日現在)

3月 30日までに回答の登録のあった 171社の、主要な設問への回答について集計したものを、以下に

示す。

業種別の集計結果としては、多い順番に、電気機器(22社)、輸送用機器(18社)、機械(13社)等となって

いる。(業種別回答企業数の詳細については、参考 1参照。)

以下、平成 29年 3月の調査報告書を掲載しながら、本年度調査の調査項目への対応を記載する。

(ア) 賃金の引上げ状況について

常用労働者の 1人平均賃金の引上げ状況について、「引き上げる/引き上げた」とする企業の割合

は、平成 28年度は 87.1%、平成 29年度は 86.0%であった。平成 28年度に引き続き、平成 29年度

も多くの企業が賃金の引上げを実施する傾向が継続している(図 3-1)。

図 3-1 常用労働者の 1 人平均賃金の引上げ状況

(n=171(28年度)、157(29年度))

87.1% (149社)

86.0% (135社)

12.9% (22社)

14.0% (22社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度引上げ実績

平成29年度引上げ予定

引上げる/引上げた 引上げない/引上げていない

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(イ) 賃金の引上げ方法について

賃金を引き上げた企業のうち、平成 29年度にベースアップを実施している企業は 51.1%と平成 28

年度の 49.0%を上回った(図 3-2)。

図 3-2 賃金を引き上げた企業における賃金の引上げ方法

(平成 28年度) (n=149) (平成 29年度)(予定を含む)(n=135)

2年連続で賃金を引き上げた企業のうち、2年連続でベースアップを実施した企業は 47.3%と 5割

近くなっている(図 3-3)。

図 3-3 2 年連続でベースアップを実施した企業の割合

(n=131)

82.6%

(123社)

49.0%

(73社)

38.9%

(58社)

6.0%

(9社)

0.0%

(0社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

定期昇給・

賃金構造維持分

ベア(ベースアップ)分

賞与・一時金分

諸手当

その他

79.3%

(107社)

51.1%

(69社)

23.0%

(31社)

11.9%

(16社)

0.0%

(0社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1

2

3

4

5

47.3%

(62社)

0% 10% 20% 30% 40% 50%

2年連続でベースアップを

実施

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(ウ) 平均賃金の引上げ額・率について

(a) 定期昇給・賃金構造維持分引上げ額・率

定期昇給・賃金構造維持分の引上げを実施した企業のうち、定期昇給・賃金構造維持分の引上げ

額・率のそれぞれの割合は、以下のとおりである。月額 4,000円以上の引上げを実施している企業が 8

割前後であり、引上げ率では 1.5%以上の企業が 7割以上である(図 3-4、図 3-5)。

図 3-4 定期昇給・賃金構造維持分の引上げを実施した企業の引上げ額

図 3-5 定期昇給・賃金構造維持分の引上げを実施した企業の引上げ率

(注) 年度毎に回答企業数が異なることに加え、同年度内でも各項目にそれぞれ無回答の企業があるため、

母集団数が異なっている

7.7%

(8社)

7.2%

(6社)

31.7%

(33社)

27.7%

(23社)

39.4%

(41社)

48.2%

(40社)

19.2%

(20社)

15.7%

(13社)

1.9%

(2社)

1.2%

(1社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度

平成29年度

(予定を含む)

(n=1

04)

(n=8

3)

8,000円以上 6,000~8,000円未満 4,000~6,000円未満 2,000~4,000円未満 0~2,000円未満

(平均引上げ額 5,492円)

(平均引上げ額 5,440円)

5.7%

(6社)

9.4%

(8社)

30.5%

(32社)

22.4%

(19社)

38.1%

(40社)

41.2%

(35社)

20.0%

(21社)

22.4%

(19社)

5.7%

(6社)

4.7%

(4社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度

平成29年度

(予定を含む)

(n=1

05)

(n=8

5)

2.5%以上 2.0~2.5%未満 1.5~2.0%未満 1.0~1.5%未満 1.0%未満

(平均引上げ率 1.80%)

(平均引上げ率 1.80%)

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(b) 過去のベースアップ実施状況について

平成 29年度にベースアップを実施した企業のうち、9割以上の企業(56社)が平成 28年度に引き

続いてベースアップを実施している(図 3-6)。

図 3-6 平成 29 年度にベースアップを実施した企業の過去の実施状況

(n=61)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

平成29年度に

ベースアップ実施予定

1年ぶり以内 2年ぶり 3年ぶり 4年ぶり 5年ぶり 6年ぶり 7年ぶり

8~9年ぶり 10年~11年ぶり 12年~14年ぶり 15年~19年ぶり 20年ぶり以上 創業以来初めて

1年ぶり 2年ぶり 創業以来初

56社 5社 0社

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(c) 年収ベースでの賃金引上げ

常用労働者 1人あたりの平成 29年度の平均年収について、「平成 28年を上回る年収ベースの賃

金引上げ」となる見込みの企業は 40.3%(64社)、「平成 28年と同程度」と回答した企業は 35.2%(56

社)であり、7割以上の企業が年収ベースの賃金について平成 28年を上回る又は同程度と回答して

いる(図 3-7)。

図 3-7 年収ベースでの賃金引上げ

(n=159)

(エ) その他賃金引上げを巡る状況について

(a) 賃金体系や給与原資の配分を見直す際に重視した要素について

賃金体系や給与原資の配分を見直す際に「仕事(職務)や役割」及び「業績や貢献度」を重視した

割合が 34.1%と、「勤続年数の長さ・年齢(年功)」の 6.5%より高くなった(図 3-8)。「その他」としては、

初任給の改定や若年層への重点配分、家族手当の充実、健康増進奨励金の新設等が挙がっている。

図 3-8 賃金体系や給与原資の配分を見直す際に重視した要素(複数回答可)

(n=123)

40.3%

(64社)

35.2%

(56社)

15.7%

(25社)

8.8%

(14社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年を上回る

年収ベースの

賃金引上げになる

見込みか

上回る見込み 前年と同程度 下回る見込み その他

34.1%

(42社)

25.2%

(31社)

9.8%

(12社)

6.5%

(8社)

13.0%

(16社)

37.4%

(46社)

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%

仕事(職務)や役割を重視した

賃金体系・給与原資の配分の

見直しを行った

業績や貢献度を重視した

賃金体系・給与原資の

配分の見直しを行った

家庭環境やライフステージ(子育

て、介護等)を重視した賃金体系

・給与原資の配分の見直しを行った

勤続年数の長さ・年齢(年功)の

高さを重視した賃金体系・給与

原資の配分の見直しを行った

その他の見直しを行った

賃金体系・給与原資の

配分の見直しを行っていない

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(b) 初任給の引上げについて

平成 29年度で賃金の引上げを実施した企業のうち、大卒相当者の初任給の引上げを実施している

(予定を含む)企業は、50.0%(60社)、高卒担当者については 51.7%(62社)となった(図 3-9)。

図 3-9 初任給の引上げの実施有無

(n=120)

50.0% (60社)

51.7% (62社)

50.0% (60社)

48.3% (58社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

大卒相当者

高卒相当者

平成29年度に初任給の引上げを

実施した/する予定

平成29年度に初任給の引上げを

実施しなかった/する予定はない

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(c) 常用労働者数と賃金引上げ対象者の割合

賃上げを実施した企業のうち、賃金引上げの対象者が常用労働者の「7割以上」と回答した企業が

平成 28年度は 92.9%、平成 29年度は 88.6%と 9割前後となっており、広範な従業員に対して賃上

げが実施されたことが見てとれる(図 3-10)。

図 3-10 賃上げを実施した企業における賃上げ対象者の割合

<参考: 図 3-11 回答企業の常用労働者数>

(注) 各項目にそれぞれ無回答の企業があるため、母集団数が異なっている。

37.2%

(42社)

38.2%

(42社)

22.1%

(25社)

21.8%

(24社)

19.5%

(22社)

19.1%

(21社)

12.4%

(14社)

10.0%

(11社)

8.8%

(10社)

10.9%

(12社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度

平成29年度

(n=11

3)(n

=11

0)

10割 9~10割未満 8~9割未満 7~8割未満 7割未満

25.8%

(31社)

23.9%

(28社)

14.2%

(17社)

15.4%

(18社)

36.7%

(44社)

35.9%

(42社)

11.7%

(14社)

13.7%

(16社)

11.7%

(14社)

11.1%

(13社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度

平成29年度

(n=12

0)(n

=11

7)

5,000人以上 3,000~5,000人未満 1,000~3,000人未満 500~1,000人未満 500人未満

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(d) 実質的賃金引上げにつながる取組の実施

実質的な賃金引上げにつながる取組を実施している企業は、89.4%に上った。具体的な実施内容と

しては、有給休暇取得の奨励が最も多く、実施企業中 89.7%であった。その他としては「36協定の改

定」「WLB休暇(有給 3日間)の導入」「託児支援制度」等が挙がっている。(図 3-12、図 3-13)。

図 3-12 実質賃金引上げにつながる取組

(n=142)

図 3-13 実質賃金引上げにつながる具体的取組(複数選択可)

(n=145)

89.4%

(127社)

10.6%

(15社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

実質賃金引上げに

つながる取組

行った/行う予定(検討中も含む) 特に行っていない/行う予定はない

89.7%

(19社)

29.7%

(22社)

15.2%

(130社)

13.1%

(43社)

9.7%

(14社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

有給休暇取得の奨励

福利厚生の充実

(保険商品、財産形成支援など)

勤務時間短縮による

時間あたり単価の増加

時間外・休日手当の

割増率の増加

その他

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(e) 働き方の多様化につながる取組の実施

働き方の多様化につながる取組を実施している企業は、83.0%に上った。具体的な実施内容として

は、時短勤務制度の導入が最も多く、実施企業中 78.7%であった。その他としては「フレックスタイム制

度」「時差出勤制度の導入」等が挙がっている。(図 3-14、図 3-15)。

図 3-14 働き方の多様化につながる取組

(n=141)

図 3-15 働き方の多様化につながる具体的取組(複数選択可)

(n=137)

83.0%

(117社)

17.0%

(24社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

働き方多様化に

つながる取組

行った/行う予定(検討中も含む) 特に行っていない/行う予定はない

67.9%

(93社)

53.3%

(73社)

27.0%

(12社)

17.5%

(24社)

8.8%

(37社)

17.5%

(24社)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

時短勤務制度等の導入

テレワーク、在宅勤務制度等の導入

新たな休暇制度・勤務体制の導入

託児所等の保育施設の設置

サテライトオフィス等の設置

その他

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(f) 常用労働者のキャリアアップ支援

常用労働者のキャリアアップ支援の取組を改善・拡充を実施している企業は、全体の 80.1%に上っ

た。具体的な取組としては、「社内研修の拡充」が多いが、「外部研修の補助」の導入または改善・拡充

も 5割を上回っている。なお、その他としては「e ラーニングの公開」「考課者の研修」などが挙がってい

る。(図 3-16、図 3-17)。

図 3-16 常用労働者のキャリアアップ支援の改善・拡充

(n=151)

図 3-17 常用労働者へのキャリアアップ支援の改善・拡充の具体的内容(複数選択可)

(n=125)

80.1%

(121社)

19.9%

(30社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

常用労働者の

キャリアアップ

支援の改善・拡充

実施した/実施する予定 実施していない/実施する予定はない

84.8%

(67社)

53.6%

(106社)

8.8%

(11社)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

社内研修の拡充(英語研修、

管理職研修等)を行った

外部研修の補助(外部研修費用補助、

資格取得・技能検定の受講料補助など)の

導入または改善・拡充を行った

その他

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(g) 常用労働者以外の労働者に対するキャリアアップ支援の実施状況

常用労働者以外の労働者のキャリアアップ支援を実施(または実施予定)と回答した企業の割合は、

59.9%であった。また、具体的な内容については、「正規雇用への転換を行った」と回答した企業の割

合が 75.0%であった(図 3-18、図 3-19)。

図 3-18 常用労働者以外のキャリアアップ支援実施状況

(n=147)

図 3-19 常用労働者以外のキャリアアップ支援の具体的内容(複数回答可)

(n=92)

59.9%

(88社)

40.1%

(59社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

常用労働者以外の

キャリアアップ

支援の拡充

すでに実施している/実施する予定 実施していない/実施する予定はない

75.0%

(24社)

26.1%

(22社)

23.9%

(69社)

4.3%

(4社)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

正規雇用への転換を行った

外部研修の補助(外部研修

費用補助、資格取得・技能検定の

受講料補助など)を行った

社内研修の拡充(英語研修、

ITスキル研修等)を行った

その他

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(h) 人員計画について

「人員を増やした/増やす予定」と回答した企業の割合は、平成 28年度が 55.4%、平成 29年度が

55.2%であった。また、平成 29年度において人員を増やす場合の具体的な内容としては、「常用労働

者を新卒採用で増やす」が 91.9%、「常用労働者を中途採用で増やす」が 64.0%、「常用労働者以外

の労働者を増やす」が 22.6%であった。(図 3-20、図 3-21)。

図 3-20 人員計画について

(n=148(28年度)、143(29年度))

図 3-21 人員を増やした/増やす予定の具体的内容(複数回答可)

55.4%

(82社)

55.2%

(79社)

34.5%

(51社)

35.0%

(50社)

10.1%

(15社)

9.8%

(14社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度

平成29年度

人員(常用労働者、常用労働者以外の

労働者の合計)を増やした/増やす予定

変わらない 人員(常用労働者、常用労働者以外の

労働者の合計)を減らした/減らす予定

87.9% (80社)

91.9% (62社)

68.1% (79社)

64.0% (55社)

29.7% (27社)

26.7% (23社)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成28年度

平成29年度

(n=91

)(n

=86

)

常用労働者を新卒採用で

増やした/増やす予定

常用労働者を中途採用で

増やした/増やす予定

常用労働者以外の労働者

を増やした/増やす予定

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(備考)

➢ 本調査は、東京証券取引所一部上場企業を対象に実施し、会社単独としての回答を依頼。ただし、ホール

ディングス企業等の場合は、できるだけ連結対象となる中核事業会社単体、もしくはホールディングス会社

と中核事業会社の連結等、中核事業会社を含めて回答を依頼。

➢ 連結企業のうち回答の対象とする範囲(中核事業会社単体、ホールディングス会社と中核事業会社の連

結、ホールディングス会社と中核事業会社をそれぞれ単体、複数の中核事業会社がありそれぞれについ

て単体またはホールディングス会社と連結で回答等)は回答企業に任せたが、複数社についてそれぞれ

回答する場合には、複数の回答をいただいた。その結果、連結企業として 1社の場合に複数の回答をされ

ているケースがある。

(用語について)

○ 常用労働者:

雇用期間を定めず雇用されている労働者をいう。日雇労働者や季節労働者等雇用期間に定めのある労働

者、雇用期間に定めがあって契約期間を更新している労働者は除く。(理事、取締役等の役員は除き、管理職

は含む。)

○ 1人平均賃金の引上げ:

定期昇給・賃金構造維持、ベースアップ、賞与・一時金、その他(諸手当、福利厚生等)の改定により、常用

労働者の 1人当たりの平均の賃金が改定前に比べて上がった・上がる場合をいう(時間外・休日手当や深夜手

当等の割増手当、慶弔手当等の特別手当は含まれない)。

○ 定期昇給・賃金構造維持分:

あらかじめ労働協約、就業規則等で定められた制度に従って行われる昇給のことで、一定の時期に毎年増額

することをいう。年齢、勤続年数による自動昇給等のほかに、能力、業績評価に基づく昇給があり、毎年時期を

定めて査定を行っている場合も含まれる。

○ ベースアップ分:

賃金表(学歴、年齢、勤続年数、職務、職能等により賃金がどのように定まっているかを表にしたもの)の改定

により賃金水準を引き上げることをいう。

○ 賞与・一時金分:

上記の定期昇給・賃金構造維持分、ベースアップ分によって増加する分(賞与・一時金の算定に使用する基

本給が増加したことにより、それに連動して増加する分)を除く賞与・一時金の昨年度からの増額をいう。

○ 諸手当分:

能率手当、生産手当、役付手当、特殊勤務手当、技能手当、技術手当、家族手当、扶養手当、通勤手当、

住宅手当、その他の手当等をいう。なお、慶弔手当等の特別手当は、ここでいう「諸手当」には含まれない。

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<参考 1>

(ア) 業種別の回答状況について

業種別回答企業数は下記の通り。

業種 回答企業数

(子会社等含む) 業種

回答企業数

(子会社等含む)

水産・農林業 0 精密機器 3

鉱業 3 その他製品 5

建設業 6 電気・ガス業 3

食料品 5 陸運業 9

繊維製品 4 海運業 2

パルプ・紙 3 空運業 0

化学 5 倉庫・運輸関連業 0

医薬品 6 情報・通信業 2

石油・石炭製品 0 卸売業 7

ゴム製品 0 小売業 9

ガラス・土石製品 5 銀行業 9

鉄鋼 6 証券、商品先物取引業 4

非鉄金属 4 保険業 1

金属製品 4 その他金融業 4

機械 13 不動産業 4

電気機器 22 サービス業 5

輸送用機器 18 合計 171

※本集計結果における企業数

(5) 調査票

調査に使用した調査票のレイアウトについて次ページ以降に示す。

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4. 中小企業等の平成 29 年春闘結果等に関する調査方法の検討

(1) 調査の目的

大企業だけでなく、中小企業等における賃上げの状況を的確に把握することを目的に調査を行う。

(2) 調査概要

① 調査対象

中小企業基本法により定義される中小企業を下記の 2つの基準により 6グループに分類し、各グループ

約 5,000社ずつを抽出して、約 3万社を調査対象とする。

(1) 製造業 / 非製造業

(2) 常用雇用者数 20名以下 / 21名以上 100名以下 / 101名以上

② 調査方法

各企業に紙面の調査票を送付し、同封の返信用封筒で返送してもらう方法で実施する。

③ 調査実施時期

中小企業における労使交渉の進展状況を踏まえて調査時期を決定するが、例年の状況から、平成 29年

6月頃から平成 29年 7月頃が想定される。

④ 調査実施方法

調査対象の中小企業には、依頼文と調査票を送付し、郵送にて回答を受領し、受領した回答の集計・分

析を行う。

(3) 調査項目と調査票

① 調査項目の策定

主要な調査項目は、「平成 28年中小企業の雇用状況に関する調査」を参考に、調査項目、回答方法を

検討した。

現在検討している質問項目は以下の通りである。質問項目は今後変わりうるものであり、経済産業省及び

中小企業庁において、調査実施時期に向けた検討が継続される。

常用労働者の一人当たり平均賃金の引上げ(定期昇給、ベースアップ、賞与・一時金等を含む)の

予定・実績についての質問

賃金の引上げの主な理由についての質問

平成 29年度の常用労働者の平均賃金の引上げ方法(予定を含む)についての質問

平均賃金の引上げ(予定を含む)を行った際に、配分比率を高めた年齢層についての質問

平成 28年度の常用労働者の平均賃金の引上げ方法(予定を含む)についての質問 等

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加えて、以下の点を考慮し、経済産業省及び中小企業庁での検討結果を踏まえて、確定する予定であ

る。

(a) 企業の基礎情報(所在地、業種、資本金、従業員数、法人税の納付有無等)

(b) 賃上げの状況やその理由(月例給与、ベースアップ(概念の有無についてなども問う形に)、賞与・一

時金等)

(c) 調査項目の全体的な総量を減らし、用語の定義や説明に関して、より平易で分かりやすい方法にて

記載する

② 調査票の作成

中小企業向けの調査では、紙面での回答を前提として調査票を作成する。

昨年、一昨年の実績を踏まえ、回答率の向上及び回答ミスの防止を目的として、回答しやすい調査票とな

るよう文面やレイアウトの編集を行う。

28年度調査を踏襲しつつ、全体的な設問の総量を抑え、より回答し易い表現を用いる。加えて、最低賃

金の引上げ等に関する設問の追加を検討する。

(4) 調査票案

本調査において検討した、中小企業等の平成 28年春闘結果等に関する調査票案の一部を次ページ以

降に示す。

本調査時点では、調査票案は検討中の段階であり、(2)調査概要に示した調査実施時期に向けて、経済

産業省及び中小企業庁において、調査実施時期に向けた検討が継続される。

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平成28年 中小企業の雇用状況に関する調査回答票

このたび、経済産業省・中小企業庁は、中小企業における雇用状況の把握を目的とした調査行うこととしました。皆様方からいただくご回答が、今後の政府の施策にとって極めて有用なものとなります。何卒ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

平成28年●月経済産業省中小企業庁

〜ご記入に当たって〜◯いただいたご回答は統計的に処理した上で公表します。

個別のご回答内容が、経済産業省及び中小企業庁並びに業務委託先の株式会社●●●●以外に知られることはございません。

◯お忙しいところ誠に恐縮でございますが、回答票は同封の返信用封筒(切手不要)に封入の上 ●月●日(●) までに郵送にて提出をお願いします。◯ご不明な点がございましたら、下記の連絡先までお問い合わせください。

<問い合わせ先>業務委託先:株式会社●●●●電話:●●-●●●●-●●●● 担当:●●、●●※お問い合わせ受付時間:月〜金曜日(祝祭日を除く)10:00〜12:00、13:00〜18:00

【本調査の中で用いる用語について】

常用労働者:雇用期間を定めず雇用されている労働者をいいます。日雇労働者や季節労働者等雇用期間に定めある労働者や、雇用期間に定めがあって契約期間を更新している労働者は除きます。(理事、取締役等の役員は除き、管理監督者は含みます。)

1人当たり平均賃金の引上げ:本アンケート調査では、定期昇給(賃金構造維持)、ベースアップ、賞与・一時金、その他(諸手当、福利厚生等)の改定により、常用労働者の1人当たりの平均の賃金が改定前に比ベて

上がった・上がる場合をいいます。(時間外・休日手当や深夜手当等の割増手当、慶弔手当等の特別手当は含まれません。)

定期昇給(賃金構造維持)分:あらかじめ労働協約、就業規則等で定められた制度に従って行われる昇給のことで、一定の時期に毎年増額するものをいいます。年齢、勤続年数による自動昇給等のほかに、能力、業績評価に基づく昇給があり、毎年時期を定めて査定を行っている場合も含まれます。

ベア(ベースアップ)分:賃金表(学歴、年齢、勤続年数、職務、職能等により賃金がどのように定まっているかを表にしたもの)の改定により賃金水準を引き上げるものをいいます。

賞与・一時金分:上記の定期昇給(賃金構造維持)分やベア分によって増加する分を除いた、賞与・一時金の昨年度からの増額をいいます。(賞与・一時金の算定に使用する基本給が増加したことにより、それに連動して増加する分を除いた、昨年度からの増額)

諸手当分:能率手当、生産手当、役付手当、特殊勤務手当、技能手当、技術手当、家族手当、扶養手当、通勤手当、その他の手当等をいいます。なお、時間外・休日手当や深夜手当等の割増手当や慶弔手当等の特別手当は、ここでいう「諸手当」には含まれません。

所定内給与:あらかじめ労働協約、就業規則等で定められた支給条件、算定方法によって支給される給与から、

超過労働給与(時間外手当、早朝出勤手当、休日出勤手当、深夜手当等)を除いたものをいいます。(基本給・職務手当、通勤手当、住宅手当、家族手当などが含まれます。)

検討中