平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書...

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平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27 10 13 事務局長 殿 財務部財務課統括G 事務職員 安池 祐輝 渡航期間 平成 27 9 12 日(土) 平成 27 9 17 日(木) 6 日間 研修タイプ及び番号、訪問国(例 A-モンゴル) A-1 モンゴル 参加者氏名等(本人含む) 属(部・課、係・担当等) 安池 祐輝 財務部財務課統括G 事務職員 小笠原 有美 教育推進部基盤運営課会計統括係 事務職員 佐々 亜由美 教育推進部学生交流課国際教育支援係 事務職員 加藤 正康 工学部・工学研究科経理課経理係 事務職員 佐藤 由布子 農学部・生命農学研究科用度係 事務職員 水間 彩乃 愛知県立大学学生支援課 主事 研修テーマ モンゴルにおける高等教育研究機関に求められる役割・立場とその運営状況について、 産学連携及び国際協力をテーマに調査する。 訪問機関等 訪問機関等名:名古屋大学モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパス学院(モンゴル) 対応者及び 担当者氏名 GANGABAATAR Dashbalbar 名古屋大学モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパス 学院(モンゴル) 事務所長・拠点長 (特任准教授) 矢代 真弓 アジアサテライトキャンパス学院(モンゴル) 事務補佐員 Tuvshinjargal OYUNTSETSEG 名古屋大学モンゴル事務所 現地スタッフ Erdenesan TODROL アジアサテライトキャンパス学院(モンゴル) 現地スタッフ 訪問機関等名:モンゴル日本人材開発センター 対応者及び 担当者氏名 Kh. Garmaabazar モンゴル日本人材開発センター 統括主任

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平成27年度事務職員の海外研修報告書

平成 27 年 10 月 13 日

事務局長 殿

所 属 財務部財務課統括G

職 名 事務職員

氏 名 安池 祐輝

① 渡航期間

平成 27 年 9 月 12 日(土) ~ 平成 27 年 9 月 17 日(木) 6 日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 A-1 モンゴル)

A-1 モンゴル

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

安池 祐輝 財務部財務課統括G 事務職員

小笠原 有美 教育推進部基盤運営課会計統括係 事務職員

佐々 亜由美 教育推進部学生交流課国際教育支援係 事務職員

加藤 正康 工学部・工学研究科経理課経理係 事務職員

佐藤 由布子 農学部・生命農学研究科用度係 事務職員

水間 彩乃 愛知県立大学学生支援課 主事

④ 研修テーマ

モンゴルにおける高等教育研究機関に求められる役割・立場とその運営状況について、

産学連携及び国際協力をテーマに調査する。

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:名古屋大学モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパス学院(モンゴル)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

GANGABAATAR

Dashbalbar

名古屋大学モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパス

学院(モンゴル)

事務所長・拠点長

(特任准教授)

矢代 真弓 アジアサテライトキャンパス学院(モンゴル) 事務補佐員

Tuvshinjargal

OYUNTSETSEG 名古屋大学モンゴル事務所 現地スタッフ

Erdenesan

TODROL アジアサテライトキャンパス学院(モンゴル) 現地スタッフ

訪問機関等名:モンゴル日本人材開発センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Kh. Garmaabazar モンゴル日本人材開発センター 統括主任

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訪問機関等名:JICA モンゴル事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

田中 智章 JICA モンゴル事務所 教育セクター 職員

訪問機関等名:名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル国立大学内)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

山本 哲史 名古屋大学日本法教育研究センター 特任講師

訪問機関等名:名古屋大学フィールドリサーチセンター(モンゴル科学技術大学内)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

長谷川 精 名古屋大学フィールドリサーチセンター センター長代理

(特任准教授)

苗村 康輔 名古屋大学フィールドリサーチセンター 特任助教

訪問機関等名:モンゴル科学技術大学国際部

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

UUGANBAYAR

Tumurkhuu モンゴル科学技術大学国際部 Director

訪問機関等名:モンゴル科学生命大学国際課

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

DAVAAJAV Taisaa モンゴル科学生命大学 Vice-President

ERDENETSETSEG

Bat-Erdene モンゴル科学生命大学国際課 職員

DAMIRAN

Tseveennamjil モンゴル科学生命大学経理課 会計士

訪問機関等名:モンゴル国立大学国際課

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Mendbayar モンゴル国立大学国際課 課長

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

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◎モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパス

(※事務所はモンゴル事務所とアジアサテライトキャンパスの2つの拠点を兼ねている)

(ガンガバータル拠点長のお話)

アジアサテライトキャンパスでは日本語を話す必要はなく、英語で博士課程をしている。日本ではジョイ

ントディグリーという制度はこれまでもあったが、サテライトキャンパスという形式は初めてのものとな

る。名古屋大学はアジアサテライトキャンパスをキーにアジアでの教育研究機関のつながりに大きな使命

をもっている。20世紀以降,多くの学生が日本,中国,ヨーロッパへ留学し博士課程を修了している。

留学生は帰国すると給与関連の事情から国の機関ではなく民間の会社で働くことが多い。また、母国の教

育研究環境が乏しいために帰国後は教育研究に励むことができないことも多い。このような状況において、

名古屋大学のアジアサテライトキャンパスはそういった状況にあった者たちに役立つ拠点となるだろう。

アジアサテライトキャンパス学院のモンゴル学生は現在1名おり、仕事や農業の片手間に1週間に1度(月

曜)の頻度で研究のために学院に来ている。名古屋大学の教授が年に1度数日間に渡りモンゴルに滞在し

学生に講義してくれる。同様に学生が年に1度名古屋大学へ集中講義を受けに行く。その他、テレビ会議

システムを使って教授等が個別に研究の相談に応じている。

現在は名古屋大学の法学部を基に日本法教育研究センターと関連して法学関係の課程を設置している。今

後はより幅広い課程において日本とモンゴルの交換留学制度を整備していくことを願っている。

(運営について)

モンゴル事務所には予算措置はあまりなく、アジアサテライトキャンパス学院の予算で事務所の賃料等を

払っている。モンゴル事務所は現地の法人格を取得しており、モンゴルでの会計報告が必要なので日本の

会計習慣との違いの面で苦労している。税理士を雇うのも難しくガンガバートル先生の教え子の娘さんに

協力していただいている。そもそも、モンゴルの法整備が遅れているために法律上のグレーゾーンが多く

ある。日本とモンゴルのそれぞれにあわせた環境や体制を整える必要があり大変苦労している。

役所関係で窓口担当者により言っていることが異なり、矢代さんは労働ビザを取得するのが大変だったと

のこと。商習慣においても、大きな企業は税金関係が厳しく登録された社印を扱っているが個人レベルで

は緩い状況であり、スーパーで買い物をしてもレシートはもらえても領収書をもらうことが困難という。

(レジでは奥の事務所に行けと言われ、事務所では印を押せる責任者がいないので後日来いと言われる)

鉄道がないので移動手段にはタクシーを使うが個人タクシーがほとんどでタクシー会社もまともに領収書

を出してくれるところはない。名古屋大学ではサインをもらう領収書ひな形を認めることになったが、モ

ンゴルの法律では認められないので双方の会計報告に支障をきたしている。モンゴルの法整備において大

学事務所の開設は想定されていなかったため、役所に聞いてもよくわからない状況が続いていたので会計

報告も不要と判断しようとしていたところ、担当者が変わり必要ということになった。モンゴル事務所の

人員配置は恵まれており(5人)あまり困っていないが、1番大きな課題は会計的な部分となる。例えば、

日本から先生が出張される際にホテルの手配等を対応するが、前金のホテル手配料を事務所のお金で支払

うことはできないといった会計的な面で苦労している。また、先に述べた商習慣の違いから、名古屋大学

のアジアサテライトキャンパス本部とのやりとりでは相互にできないことをぶつけている状況であり、日

本の会計に詳しい人が現地派遣されるとよいと考えている。また、名古屋大学の規程改正により4月から

長期出張ではなく赴任という形で現地派遣できるようになったが、現地雇用はまでできていないため、現

地スタッフにはモンゴルの法律でグレーゾーンの謝金支払いを続けている。モンゴルでは契約なしに労働

に対する報酬を支払ってはいけないと法律で定められている。

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(教育について)

日本の法律を参考にモンゴルの法律を整備することもあり、日本だけでなく他国の法律を基に指導してい

る。法律を教える上で言語をまたぐと意訳が混入するだけでなく、法律の背景や経緯を理解することが難

しくなる。日本語で日本法を教えることは、言語を理解する難しさがあるが法律を深く学ぶことができる。

(留学について)

モンゴルは人口比率に対し日本語を話せる人が多く(人口300万人程度)、最近は韓国やアメリカへの興

味を持つ人も増えているが日本への関心は継続的に高い。オユさんとトドロルさんは日本留学を経験して

おり、モンゴルから日本に行くことのハードルは夏の暑さ(湿度)と人の多さと回答があった。モンゴル

人からはよく「日本は幽霊が多いか」と聞かれることが多く、地震より幽霊の関心が高い。震災があった

時に多くのモンゴル人留学生は帰国したが、その後また日本へ戻る学生も多くいた。

名古屋大学からモンゴルへの留学生は3年前まで0人だったが PhD 登竜門の短期留学プログラムで10

数人を10日間程迎えている。名古屋大学附属高校の生徒も8月-9月の間に研修を毎年している。研修内

容としては各自で課題を立てて学んでいる。モンゴルの石油石炭事情やそれに起因する大気汚染、土壌汚

染について研修することが多い。モンゴル人は相撲への関心が高く、NHK の放送やその他モンゴル語での

生放送もあるため、名古屋場所から「名古屋」を知っている人が多い。日本人は時間を守り勤勉な人が多

い印象を持っている人が多いという。モンゴル事務所では留学フェア等の紹介はしているが、選抜や斡旋

といった業務はやっていない(法人税を納めていないので営利活動はしていない)。アジアサテライトキャ

ンパス学院においては今年5名の応募があり、1次試験を2名通過したが合格者は0人だった。アジアサ

テライトキャンパス学院は政府の幹部候補レベルや博士前期課程を修了している方を条件付けているため

応募者の門も狭く入学採用が難しい。

◎モンゴル・日本人材開発センター(MOJC)

モンゴルは1990年代から市場経済化に向けた環境整備が課題であり、それに向けた人材育成及びモン

ゴルと日本の相互理解促進の拠点として、モンゴル・日本人材開発センターが2002年に JICA とモン

ゴル教育省、モンゴル国立大学の協力により開設された。

日本政府は開設にあたり、無償資金協力によりセンターの活動に必要な施設を総工費4.43億円にて建設

した。現在は日本の手を離れモンゴル側で運営できるように徐々に体制を移行している。センターはビジ

ネス人材の育成、日本語教育、相互理解の促進をメインテーマにさまざまなコースや講座を開設しており、

経営者や事務系職員、留学希望者、日本語教師志望者だけでなく一般の方も多く利用している。特に、モ

ンゴル初となる開架式の図書室は人気があり日本の月刊誌や新聞等だけでなくアニメやドラマ等の AV 資

料も充実している。

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◎JICA モンゴル事務所

初等、中等、高等教育の枠だけでなくソフト(教育内容)とハード(教育施設)の両方で支援活動を行っ

ている。

教育施設整備計画(1999- )

近年の市場経済化に伴いウランバートル市の人口が65万人から130万人に急増した。ゲル地区に多く

の者が住むため、児童の通学が大変な状況にある。学校は1クラス50人程度で3部制の授業を行ってい

るため夜の部の生徒は帰りが遅くなり危ない。

※学校によってはスクールバスを用意していることもあるが多くの子供が徒歩通学または親の車に送り迎

えしてもらっている状況にある

教育施設整備計画は現在第4フェーズを行っており、これまでに107億円で55校668教室を開設し

ている。これにより約4万人の子供(ウランバートルに住む子供の40%程度)が学習できる環境が整備

された。学校は更衣室が完備されており、通学した生徒は上着と靴を脱いで教室へ向かう。校舎は日本基

準で階段等が作られゴム製のへりや手すりがあり安全に留意されている。ゴム床の体育館は各校において

好評である。施設環境を整備することで3部制の学校から2部制に徐々に移行しつつあり、2部制の学校

が増えている。

指導法改善事業(2006-2013)

初等教育を中心に教育内容を支援し、教師の育成をはかっている。これまでは暗記中心の教育であり、教

師が教科書の内容を黒板に書いていき、その内容を子供たちがひたすら覚える形だった。子供たちが主体

的に考える教育を目指して先生中心から子供を中心として指導方法を見直し、指導書等のガイドラインを

整備した。日本の授業研究を取り入れ、他校の教師が授業を見学し、教師の相互な授業評価によって指導

内容をより高い質へと高めている。理科の実験等においても子供が興味を引くような形式を心掛けている。

東京学芸大学の先生たちの協力を得て活動している。現在は第3フェーズの準備中であり、協力機関を募

っている。

教材開発支援事業(2012-2017)

モンゴルの小学校教師の質の向上を狙って ICT を使っての教材開発を行っている。東京工業大学の協力を

得て活動している。

工学系高等教育支援事業(2014-2023)

工業、科学系の市場ニーズに対応するため高度な工学系人材を育成する支援を行っている。これまでの高

等教育事情では理系より文系の人気が高く、建設等の都市開発も進んでいるため、高度な理系(特に工学

系)の人材育成を目指している。指標としてモンゴルに1000人のエンジニアを育てることを掲げてい

る。無償資金協力ではなく、モンゴル政府が日本政府に借金をして徐々に返済する形で協力事業を行って

いる。モンゴル科学技術大学で2年間学び、日本の受入大学で2年間学ぶ留学が基本の体制となっている。

モンゴル科学技術大学の機械学科、建設学科、土木学科等のカリキュラムについても日本の大学から助言

等を行っている。最近ではモンゴルに3つの高等専門学校をつくり専門的に工学系の勉強をする学生が増

えている。高専においても科学技術大学と同様に1年間日本語を勉強してその後日本に留学する。モンゴ

ルの大学と日本の大学において、共同研究事業を立ち上げ企業等から予算を獲得して相互に協力して研究

している。

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モンゴルの教育に携わる行政官の育成(2001- )

モンゴルの39歳未満の行政官を日本の省庁や大学へ迎え入れ、日本の行政事業を

勉強している。受入大学として、九州大学、慶応大学、国際大学、明治大学(名古屋大学はこれまで受入

をしていない)。無償資金協力としてこれまで33億円で204人の行政官を迎え入れている。選出基準と

して、日本のモンゴル開発方針に合意している行政官(特に工業系、環境系、都市開発系)に限定してい

る。

青年海外協力隊(1992- )

モンゴルへこれまでに530人のボランティアを動員している。530人の内、252人は教育関連のボ

ランティアに従事した。

モンゴルの教育セクター基本情報

ウランバートル市内の小中学校数 115校(公立のみ、内45校は日本協力)

市内の学校に通う生徒数 約18万6千人(年間2万人が新規入学)

市内の教員数 9521人(公立・私立含む)

3部制の学校に通う生徒数 約4500-5000人

現在の教育科学省の政策 「子供一人ひとりの発達を支援する教育」

① 教員発展プログラム

② 図書プログラム

③ タレントプログラム

初等教育施設の増設 2016年までに80校

JICA の外国事務所の体制として、日本人のスタッフと現地のスタッフ(ナショナルスタッフ)がペアを組

んで活動している。ナショナルスタッフは現地雇用している。モンゴル事務所は開設から20年程度経っ

ており、当時から働いているナショナルスタッフもいる。

◎名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル)モンゴル国立大学内

日本語と日本の法律、モンゴルとの比較について研究している。名古屋大学への留学がひとつの目標とな

っているため、上級生になるにつれ学生数が減っており、留学の選抜を兼ねている。中村真咲先生が名古

屋大学国際開発研究科からモンゴル国立大学法学部へ留学したことをきっかけにセンターの設立に至って

いる。参考として、中村先生の寄稿からモンゴルの民主化をはじめとする近現代の歩みを紹介いただいた。

民主化のお話で紹介されたゾディグさん(モンゴル国立大学院生時代に民主化デモを行い、その後政党を

建てて入閣、その後1998年に暗殺された)の像がスフバートル広場の南(郵便局近く)に建っている。

モンゴルは日本の教育システムを取り入れることに協力的であり、日本の技術革新に寄与した高専を設立

している。現在のモンゴル文部科学大臣が日本の高専に留学していた経験があることから高専整備が促進

されているが、モンゴルの法整備が整っていない状況でウランバートル市内に3つの高専を作るなど強行

的な面がある。これに限らずモンゴル全体において見切り発車的な試行傾向があるという。

新モンゴル高校(進学校)も日本への留学をテーマにしており、日本への関心は高い。

モンゴル国立大学法学部の水準としては、日本の法曹界(司法試験)に合格できた人はまだいないが、モ

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ンゴル国立大学法学部を卒業することでモンゴルの資格を得て国内で弁護士等になることはできる。モン

ゴルはウランバートルに人口が集中しており、貧富の格差も都市部出身と草原出身とで広がる傾向がある。

留学に関連して、日本社会が外国人労働者を迎え入れる体制が整っていないことを挙げられた。楽天の社

内公用語を英語とする等の変化はあるがまだ遅々としている状況である。国としてG30を進めているが、

そういった社会の底上げができない限り留学生がそのまま日本社会へ入っていくことは難しいと思われ

る。

モンゴルの奨学金制度も充実化してきている。新モンゴル高校は留学後に帰国しないと返還を求める奨学

金制度を取り入れている。これは国外への頭脳流出を防ぐ狙いがある。

◎名古屋大学フィールドリサーチセンター(FRC)モンゴル科学技術大学内

名古屋大学環境学研究科の協力でモンゴルの大気汚染を研究している。モンゴル科学技術大学の先生や学

生と協力して研究している。PhD 登竜門やリーディングプログラムで短期実習や集中講義で名大の学生を

受入している。FRC の活動をモンゴルの科学技術大学やその他モンゴル人で運営できるようにと展望を描

いている。授業はやっていないので学生指導というよりも教員養成の面が大きい。

◎モンゴル科学技術大学国際部

名古屋大学と協定を結んでおり、FRC も所掌している。今までは教育を中心に大学運営していたが、今後

は研究を推進するために国際化を心掛けている。企業との共同研究や特許取得を活発化している。海外の

企業や大学との事業を担当しており、例として韓国の企業との連携として東南アジアの各大学と契約を結

んで他国の大学の授業をオンラインで受ける事業を行っている。モンゴル科学技術大学の工学部と日本の

JAXA と連携して無人航空機の研究を進めている。モンゴルの郵便等の運搬交通事業に貢献しようという

狙いがある。モンゴルのエコ食品(栄養価の高い食品等)を作って外国産業に取り込もうとしている動き

もある。韓国の大学とエネルギー再生の研究にも力を入れている。モンゴルの見切り発車的であった都市

計画を研究事業により計画を積み上げようとしている。中国の企業と連携して、石炭や鉱山の発掘産業の

技術研究を行いモンゴルの資源調達に役立てている。コンクリートをセメントではなく火力発電の廃棄物

で作る研究を行っている。アメリカの大学と連携してスマホのアプリを共同制作する事業を2016年か

ら開始する予定。

産学連携事業及び国際協力事業の大枠として、研究活動をとりまとめた成果につなげて企業を起ち上げる

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流れとしている。海外の企業や大学との連携はお互いにメリットのある活動であるべきと考え、今後名古

屋大学とも相互に研究推進や事業活動を行えることを期待している。樹皮に養生するキノコのようなもの

に抗がん作用があるとして研究して商品化しようとしている。モンゴルの草原で放牧している家畜は自分

で栄養価の高いエサを探して食べているため、その肉の栄養価が高く健康によいということを証明しよう

と研究している。この証明が実を結べば日本やその他外国への輸出産業につながると考えている。

教育面でも海外27カ国の大学と連携して多様な人材育成につなげている。モンゴルのエンジニアのほと

んどが科学技術大学出身であり、同窓会等のネットワークも充実しているので名古屋大学でモンゴルと協

力して研究活動をしたい教員がいたら是非国際部へ連絡してほしい。日本の学生は留学に消極的な面があ

るがモンゴルの学生はどうか伺ったところ、モンゴルは大学生よりも大学院生が留学することがほとんど

であるという。ドイツや日本の修士課程に留学することが多い。モンゴルの学部で3年、ドイツで2年学

び修士課程を修了する形式や1年間モンゴルで学び、日本で1年学び修士課程を修了する形式がある。後

者は特に社会人の人材育成の面で重宝されている。キャリアアップとして考えており、帰国することを誓

約させる会社がほとんどであるという。また、モンゴルの学部で2年、日本の学部で2年という形式もあ

る。国のインフラ整備も大学が参画して推進していくことが求められており、工学系や土木系の人材育成

に力を入れている。授業料は国によって定められているので大学を豊かにするためには産学連携が大切だ

と考えている。モンゴルの市場はまだ小さいので海外の企業を中心として契約を結び、研究成果を売った

り出資されて研究を行ったりしている。

優秀な人材を獲得するために英語や日本語の語学力を大切にしており、大学で最初に語学や海外の基礎知

識を学ぶようにしている。留学生の授業料を安くするといった留学生の受入に注力するだけでなく、国内

の優秀な人材の流失を防ぐために奨学金制度等も充実させている。モンゴルの物価が上がってきたために

外国で働くことのメリットが薄れてきている。そのために留学でキャリアアップした上で帰国し仕事に復

帰する人が多くなっている。

◎モンゴル科学生命大学国際課

1942年開校のモンゴルでは唯一の農業大学。モンゴルの国立大学は6つある。世界的に農業はライフ

サイエンスと表現されるようになっているため農業大学から科学生命大学に名称が変更された。約1万人

の学生と約1千人の研究者がいる。モンゴル唯一の農業大学として、国内では農業省と密接に活動してい

る。6つの国際事業を推進している。

モンゴルの市場は小さいので卒業生の6割くらいが国内の農業関係に就職している。学生の7割くらいが

郊外出身だが、ほとんどの卒業生はウランバートル市内で就職している。地方の開発が進んでいないため

農業関係ではない仕事に就く卒業生も多い。学生の留学先としては中国や日本が多い。ヨーロッパへの関

心は高いが遠いためあまり実現していないという。

大学職員の国際化としては、就職条件に大学の卒業証書以外にも選抜試験で語学試験も課している。TOEIC

等の取得状況も採用に考慮している。大学の異文化交流として山形大学や中国の大学と夏期講習を共同実

施したり、多国籍なスポーツイベントを行ったりしている。イギリス、カナダ、ロシアの大学と協定を結

びジョイントディグリーを行っている。モンゴルで2年間語学等を学び海外の大学で2年学ぶことで2校

の学位を取得できる。

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大学職員の会計職員はモンゴルの会計士の資格をもっている人を採用する方針。現在は約14人の会計職

員がおり、6人は会計士の資格をもっている。その他の人員も資格取得のための研修を行っている。人事

異動において他業種にまたがる異動はない。モンゴルでは税金関係の取扱いが変更されることが多々ある

ため官報の情報収集に留意している。モンゴルの国家戦略として優秀な人材を増やすことを掲げているた

め、国からの予算は年々増えている状況にある。国の学術財団があり、現在は約70個の事業を行ってい

る。(公募内容が科学に特化しており、科学生命大学が多くの事業を獲得している)共同研究は外部資金の

契約よりも共同ラボの設立等が主たるものとなっている。

◎モンゴル国立大学国際課

モンゴル国立大学はモンゴル初の国立大学として、名古屋大学とも協定校として長い間交流している。松

尾前総長や城所先生がモンゴル国立大学の顧問となっている。その他海外の140校と協定を結んでおり、

多種多様な成長を目指している。国の学術財団の事業の20%を獲得している。

韓国、ベトナム、中国からの留学生が増えている。外国人教員は30名程おり、モンゴルの大学で1番多

い。研究インターンシップも多く実施しており、海外の研究者を夏の間に迎え入れている。モンゴル国立

大学の言語学の先生が多く海外セミナーを実施している。モンゴル国立大学では生物学分野で秀でており、

生物学の研究者の受入も多く行っている。他国の大学とのジョイントディグリーを取り入れようと検討し

ているが、語学学習の環境整備等の課題が残っており、準備段階とのこと。立命館大学や韓国、ロシアの

大学からオファーされている。学生における国際交流も短期間のインターンシップや共同研究実習等が主

たるもの。夏のインターンシップ等に日本の参加希望は多くあるが、夏休みの期間にずれがあるため、実

施時期の摺合せで苦労することがある。

これまで16の学部をもっていたが、専攻学群ごとに5つの学部にまとめて、研究機関として研究者の受

入をしやすくする狙いがあった(自然学や社会学等々)。モンゴルの教育省からの支援も厚く、学部再編に

係る予算等の措置があった。

モンゴル科学技術大学との協力関係も深く、研究やその他事業において連携している。

⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

海外事務所の運営において、現地の商習慣をはじめ税制や法人会計の事情は十分に調査する必要がある

と考える。現状を伺ったところ日本と現地との板ばさみ的状況が既に業務繁忙を招いており、今後の現

地雇用制度に向けても不安を抱かれていた。賃金を例に挙げても賃金相場を現地にあわせることは現地

の労働条件及び業務出来高にあわせることを示唆しており、優秀な人材を確保するには日本水準の賃金

を支払うべきだといった意見交換を行うことができた。これらは担当課として今後の業務に活きる経験

であった。大学のルールや方針を提示する部署の職員こそ、机上の弁論だけでなくこのような機会を得

て実際に大学を理解する必要があると考える。

本学の研究支援・産学連携担当の業務は多くのものが「お金」がついてまわるものであり、担当職員に

は外部資金獲得のための業務意識が根強いように思われる。今回、モンゴルの各大学における産学連携

業務の活動内容や今後の展望を伺えたことで、社会に貢献・還元するための研究協力や産学連携につい

ての熱望を強く感じた。これは国の経済成長を受けて、自ら豊かになろうとする傾向からその印象を強

めているものと考えられるが、そもそもの根幹として高等教育研究に携わる大学の使命として重んじる

べきものだと再認識した。

海外事務所の制度設計や今後の展望については過去の海外研修報告でも多く触れられているため、今回

は名古屋大学の業務分掌の面において述べたい。モンゴルの大学では国際課で産学連携や研究協力の業

務もまとめて担当しているがこれは主に先進国の機関及び企業とのやりとりが多いためであるといえ

る。本学においてもこのような時代のニーズにあわせて教育推進部をはじめとして改組により業務分掌

が変わっていくことが予想されるが、名古屋大学の「知」を管理する部署と名古屋大学を発信する部署

の業務連携は今後の国立大学改革の中でも名古屋大学が社会から実績と信用を得続けるために必要な

ことだと考える。

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⑨ 感想

注)研修者ごとに作成し、教育推進部事業推進課あて提出願います。

海外研修に参加したことにより名古屋大学の海外拠点の活動を知るだけでなく、海外の大学がどのよう

に日本の大学と異なるのかを理解することができた。異なる点といっても、産学連携や国際協力に関す

る業務の一端を紹介いただいたに過ぎないが、勤続4年目となる私は「大学の仕事」を固定的に捉え始

めていたところであり、自身の視野が更に広がったことは非常に有意義な経験であった。大学で何をし

たいか、大学にどのように貢献したいか、それを以て大学がどうなることを望むか、このようなビジョ

ンを確立する一助として、このような海外研修は若手職員に多く経験して欲しいと願う。

この度、貴重な機会を与えてくださった竹下事務局長、教育推進部のみなさま、現地訪問先のマネジメ

ントをしてくださったモンゴル事務所のみなさまに感謝いたします。ありがとうございました。

Page 11: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

平成27年度事務職員の海外研修報告書

平成 27 年 10 月 18 日 事務局長 殿

所 属 教育推進部基盤運営課会計統括係 職 名 事務職員 氏 名 小笠原 有美

① 渡航期間

平成 27 年 9 月 12 日(土) ~ 平成 27 年 9 月 17 日(木) 6 日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 A-1 モンゴル)

A-1 モンゴル

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

安池 祐輝 財務部財務課統括グループ 事務職員

小笠原 有美 教育推進部基盤運営課会計統括係 事務職員

佐々 亜由美 教育推進部学生交流課国際教育支援係 事務職員

加藤 正康 工学部・工学研究科経理課経理係 事務職員

佐藤 由布子 農学部・生命農学研究科用度係 事務職員

水間 彩乃 愛知県立大学学生支援課 主事

④ 研修テーマ:1.モンゴルでの会計に係るルールや業務内容 2.モンゴルの「国際」と名がつく部署の

業務内容

⑤ 訪問機関等

訪問日:9 月 14 日(月)

訪問機関 対応者

所属・役職 氏名

モンゴル事務所/名古屋大学アジアサ

テライトキャンパス学院モンゴルサテ

ライトキャンパス

特任准教授(拠点長・事務所長) GANGABAATAR

Dashbalbar

モンゴルサテライトキャンパ

ス・事務補佐員 矢代 真弓

モンゴル事務所・ローカルスタ

ッフ

Tuvshinjargal

OYUNTSETSEG

モンゴルサテライトキャンパ

ス・ローカルスタッフ Erdenesan TODROL

モンゴル日本人材開発センター 統括主任 Kh. Garmaabazar

JICA モンゴル事務所 教育セクター・職員 田中 智章

訪問日:9 月 15 日(火)

訪問機関 対応者

所属・役職 氏名

名古屋大学日本法教育研究センター

(モンゴル)(在モンゴル国立大学法学

部)

特任講師 山本 哲史

名古屋大学フィールドリサーチセンタ

ー(在モンゴル科学技術大学)

特任准教授 長谷川 精

特任助教 苗村 康輔

モンゴル科学技術大学 International Relations

Director

UUGANBAYAR

Tumurkhuu

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訪問日:9 月 16 日(水)

訪問機関 対応者

所属・役職 氏名

モンゴル科学生命大学

Vice-President DAVAAJAV Taisaa

International Affairs Office

Staff

ERDENETSETSEEG

Bat-Erdene

会計部門・会計士 DAMIRAN Tseveennamjil

モンゴル国立大学 国際課長 Mendbayar

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

1.モンゴル事務所/名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテライトキャンパス

●アジアサテライトキャンパスについて

アジアサテライトキャンパスでは日本語を話す必要はなく、英語で博士課程取得指導をしている。日

本ではジョイントディグリーという制度はこれまでもあったが、サテライトキャンパスというハイブリ

ッドプログラム形式は初めてのものである。

アジアサテライトキャンパス学院の学生は、仕事の合間に1週間に1、2 度の頻度で研究のために学

院に来て、テレビ会議システム等を利用し研究指導を受けている。名古屋大学の教員がモンゴルへ渡っ

たり、反対に学生が名古屋大学へ渡り直接指導を受けたりすることもある。

アジアサテライトキャンパス学院のモンゴル学生は現在1名在籍している。アジアサテライトキャン

パス学院においては今年5名の応募があり、1次試験を2名通過したが合格者は0人だった。アジアサ

テライトキャンパス学院は政府の幹部候補レベルや博士前期課程を修了している方を条件付けているた

め応募者の門も狭く入学採用が難しい。

●モンゴル事務所について

モンゴル事務所の人員配置は 5 人と恵まれておりあまり困っていないが、1番大きな課題は会計的な

部分となる。例えば、日本から先生が出張される際にホテルの手配等を対応するが、前金のホテル手配

料を事務所のお金で支払うことはできないといった会計的な面で苦労している。また、先に述べた商習

慣の違いから、名古屋大学のアジアサテライトキャンパス本部とのやりとりでは相互にできないことを

ぶつけている状況であり、日本の会計に詳しい人が現地派遣されるとよいと考えている。また、名古屋

大学の規程改正により4月から長期出張ではなく赴任という形で現地派遣できるようになったが、現地

雇用はまでできていないため、現地スタッフにはモンゴルの法律でグレーゾーンの謝金支払いを続けて

いる。モンゴルでは契約なしに労働に対する報酬を支払ってはいけないと法律で定められている。

●会計業務について

モンゴル事務所には予算措置はあまりなく、アジアサテライトキャンパス学院の予算で事務所の賃料

等を払っている。モンゴル事務所は現地の法人格を取得しており、モンゴルでの会計報告が必要なので

日本の会計習慣との違いの面で苦労している。税理士を雇うのも難しくガンガバートル先生の教え子の

娘さんに協力していただいている。そもそも、モンゴルの法整備が遅れているために法律上のグレーゾ

ーンが多くある。日本とモンゴルのそれぞれにあわせた環境や体制を整える必要があり苦労している。

また、役所関係で窓口担当者により求められる書類が異なったり、法律の施行が 2 週間前に公表され

たりする。領収書を要求してももらうことが困難な場合もある。鉄道がないので移動手段にはタクシー

を使うが個人タクシーがほとんどでタクシー会社もまともに領収書を出してくれるところはない。

名古屋大学ではサインをもらう領収書ひな形を認めることになったが、モンゴルの法律では認められ

ないので双方の会計報告に支障をきたしている。モンゴルの法整備において大学事務所の開設は想定さ

れていなかったため、役所に聞いてもよくわからない状況が続いていたので会計報告も不要と判断しよ

うとしていたところ、担当者が変わり必要ということになった。

2.モンゴル日本人材開発センター

モンゴルは1990年代から市場経済化に向けた環境整備が課題であり、それに向けた人材育成及び

モンゴルと日本の相互理解促進の拠点として、モンゴル・日本人材開発センターが2002年に JICA

とモンゴル教育省、モンゴル国立大学の協力により開設された。

日本政府は開設にあたり、無償資金協力によりセンターの活動に必要な施設を総工費4.43億円にて

建設した。現在は日本の手を離れモンゴル側で運営できるように徐々に体制を移行している。

センターはビジネス人材の育成、日本語教育、相互理解の促進をメインテーマにさまざまなコースや

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講座を開設しており、中小企業経営者や事務系職員、留学希望者、日本語教師志望者だけでなく一般の

方も多く利用している。課題としては、日本への留学後の就職難を解決することなどがある。

3.JICA モンゴル事務所

初等、中等、高等教育の枠だけでなく指導法改善事業や教育施設整備計画など、ソフト面、ハード面

の両方で支援活動を行っている。

JICA の外国事務所の体制として、日本人のスタッフと現地のスタッフ(ナショナルスタッフ)がペア

を組んで活動している。ナショナルスタッフは現地雇用している。モンゴル事務所は開設から20年程

度経っており、当時から働いているナショナルスタッフもいる。

4.名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル)モンゴル国立大学内

日本語と日本の法律、モンゴルとの比較について研究している。名古屋大学への留学がひとつの目標

となっているため、上級生になるにつれ学生数が減っており、留学の選抜を兼ねている。(定員は 20 名)

留学に関連して、日本社会が外国人労働者を迎え入れる体制が整っておらず、法律家として日本に残る

ことが難しい、刑法については受入れ教員がいないなどの課題がある。

モンゴルの学生が日本の法曹界(司法試験)に合格できた人はまだいないが、モンゴル国立大学法学

部を卒業することでモンゴルの資格を得て国内で弁護士等になることはできる。

モンゴルは日本の教育システムを導入する事に積極的である。例えば現在のモンゴル文部科学大臣が

日本の高等専門学校に留学していた経験があることから高等専門学校設立整備が促進されているが、モ

ンゴルの法整備が整っていない状況で設立したため学位がない。これに限らずモンゴル人は見切り発車

の気質がある。

5.名古屋大学フィールドリサーチセンター(在モンゴル科学技術大学)

日本からモンゴル科学技術大学へ研究機器を持ち込み、モンゴルの大気汚染を研究している。リーデ

ィングプログラム(PhD 登竜門)で日本人・モンゴル人学生共同で大気汚染の研究を行っている。FRC の

活動をモンゴルの科学技術大学やその他モンゴル人で運営できるようにと展望を描いている。

6.モンゴル科学技術大学国際部

名古屋大学と学術交流協定を結んでおり、フィールドリサーチセンターも所掌しているため名古屋大

学とは良好な関係にある。今までは教育を中心に大学運営していたが、今後は企業と協力して研究を進

めていきたいと考えている。海外27カ国の大学と連携して多様な人材育成につなげている。モンゴル

のエンジニアのほとんどが科学技術大学出身であり、同窓会等のネットワークも充実している。

7.モンゴル科学生命大学国際課

1942年開校のモンゴルでは唯一の農業大学。世界的に農業はライフサイエンスと表現されるよう

になっているため農業大学から科学生命大学に名称が変更された。約1万人の学生と約1千人の研究者

がいる。モンゴル唯一の農業大学として、国内では農業省と密接に活動している。6つの国際事業を推

進している。

学生の7割くらいが郊外出身だが、ほとんどの卒業生はウランバートル市内で就職している。アメリカ・

ヨーロッパへの関心は高いが協定校であることを優先し、中国・韓国・日本へ留学する学生が多い。

卒業生の6割くらいが国内の農業関係に就職するが、地方の開発が進んでいないため農業関係ではない

仕事に就く卒業生も多い。

大学職員の国際化としては、就職条件に大学の卒業証書以外にも選抜試験で語学試験も課している。

TOEIC 等の取得状況も採用に考慮している。大学職員の会計職員はモンゴルの会計士の資格をもってい

る人を採用する方針。現在は約14人の会計職員がおり、6人は会計士の資格をもっている。その他の

人員も資格取得のための研修を行っている。人事異動において他業種にまたがる異動はない。

モンゴルでは税金関係の取扱いが変更されることが多々あるため官報の情報収集に留意している。大学

の予算は 95%が学費、5%が政府からの交付金である。モンゴルの国家戦略として優秀な人材を増やす

ことを掲げているため、国からの予算は年々増えている状況にある。国の学術財団があり、現在は約7

0個の事業を行っている。(公募内容が科学に特化しており、科学生命大学が多くの事業を獲得している)

共同研究は外部資金の契約よりも共同ラボの設立等が主たるものとなっている。

8.モンゴル国立大学国際課

モンゴル国立大学がモンゴル初の国立大学で、名古屋大学とも協定校として交流しています。その中

で国際課は様々な物事を調整する「コーディネーター」の役割が主であり、インターンシップや共同研

究実習など学生間の交流が盛んである。例えば一年を通して暖かい香港の大学からは寒いときはマイナ

ス 20 度以下になるモンゴルで冬期講習を実施したいという話を受けている。

また、他国の大学とのダブルディグリーについても導入を検討していますが、語学学習の環境整備等の

課題が残っており、準備段階とのことだった。

さらに近年は教育だけだはなく研究機関としても力をいれているそうで、モンゴル教育省からの予算

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等の支援も受けています。またモンゴル科学技術大学との研究協力も増えてきている。

⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

⑨ 感想

注)研修者ごとに作成し、教育推進部事業推進課あて提出願います。

1 モンゴルでの会計に係るルールや業務内容について

今回、8 つの機関を訪問しモンゴルの大学予算や会計部門の大学職員の能力、モンゴルでの雇用制度など、

モンゴルの会計に係る様々な話を伺うことができた。

2 モンゴルの「国際」と名がつく部署の業務内容について

今回 3 つの大学の国際部門を訪問しインタビューしたところ、教育から研究へ重点を移し始めているとの話

が聞かれた。名古屋大学では国際部と学務部が組織再編によって教育推進部というひとつの部署ができたた

め、国際部が研究分野に積極的に関わっているというのは意外であり、国際的業務の幅の広さを実感した。

●研修内容について

本研修では各訪問先で 30 分から 1 時間程度インタビューをするという方法で調査を行い、インタビュー

の際は海外事務所スタッフの方に通訳をしていただきました。不自由なく対応者の話を理解する事ができま

したが、通訳の時間を考えるとインタビューできた時間は半分程度だったかと思います。対応者の方もお忙

しいかと思いますが、1 機関の研修時間に数時間程度いただき、インタビューだけではなく、施設見学、業

務の体験などをさせていただけたらよかったなと思いました。

●海外事務所と名古屋大学(日本)とのやりとりについて

海外事務所スタッフから、海外事務所でできることの範囲が明確ではなく、日本にいる職員には理解しづ

らいモンゴルの慣習の中で名古屋大学の規程に従い、事務所を運営することに苦労をしているとの話を伺い

ました。また、日本の職員による海外事務所へ出張や、メールやテレビ会議のやりとりでは事務所運営が難

しい部分があるため、日本の名大職員が海外事務所に常駐することが望ましいのではないかという提案を受

けました。海外事務所に名古屋大学職員が常駐するのが最適な方法であるかは断言できませんが、海外拠点

の運営については改善を考えていかなければならない課題ではないかと感じました。

本研修参加者は全員係員という若手揃いであり、調査訪問先でご対応いただいた方との職歴の差を感じま

したが、お忙しい中で私達の質問に対し一つ一つ丁寧にお答えいただき感動しました。また、モンゴル事務

所の皆様には空港送迎、ホテルのチェックイン、現地での食事・買い物、インタビューの際の通訳など様々

な面でサポートいただき深く感謝しております。

私は教育推進部としての参加者として推薦を受け本研修に参加をすることになりました。元々今年の 5 月

に学内募集があった時からこの研修に興味があり、特にこれまでに訪れたことないモンゴルに行ってみたい

と思っていました。しかし、私は昨年度にサテライトキャンパス開校式・入学式挙行時の人員補充としてカ

ンボジアへ出張させていただいたため、名古屋大学の国際戦略等に関心のある事務職員で海外出張に行く機

会がこれまでなかった方が優先されるのだろうと考え、今年は参加を見送りました。

今回は幸運にも自分の希望が通り研修に参加できましたが、モンゴルの方々のハングリー精神に触れ、遠

慮をして消極的な行動をとってしまったことを反省しました。特にそう感じたのはモンゴル滞在中に送迎で

お世話になった運転手のアンゲルさんからモンゴル情勢について話を聞いた時です。アンゲルさんの話によ

ると、モンゴルでは 1990 年代初頭に社会主義の抑圧から解放され、経済発展に意欲的になっているそうで、

アンゲルさん自身は現在、現地ツアー会社を個人経営しさらに家族で印刷業を行っています。

これまで私は業務改善できることはないか考えたり、英語の勉強を継続的に行ったりすることを目標とし

てきました。今後は自分の業務・自己研鑽以外にも視野を広げ、大学職員として大学や社会の発展にどう貢

献できるかを常に意識し、積極的に挑戦していきたいと思います。

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平成27年度事務職員の海外研修報告書

平成27年10月13日 事務局長 殿

所 属 教育推進部学生交流課 国際教育支援係 職 名 事務職員 氏 名 佐々 亜由美

① 渡航期間

平成27年 9月12日(土) ~ 平成27年 9月17日(木) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 A-1 モンゴル)

A-1 モンゴル

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

安池 祐輝 財務部財務課統括グループ 事務職員

小笠原 有美 教育推進部基盤運営課会計統括係 事務職員

佐々 亜由美 教育推進部学生交流課国際教育支援係 事務職員

加藤 正康 工学部・工学研究科経理課経理係 事務職員

佐藤 由布子 農学部・生命農学研究科用度係 事務職員

水間 彩乃 愛知県立大学学生支援課 主事

④ 研修テーマ

モンゴルから日本へ留学を希望する学生のニーズに関する調査

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:名古屋大学モンゴル事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

GANGABAATAR

Dashbalbar

名古屋大学モンゴル事務所・名古屋大学アジアサテライトキャ

ンパス学院モンゴルサテライトキャンパス

特任准教授

(拠点長・事務所長)

矢代 真弓 名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテラ

イトキャンパス 事務補佐員

Tuvshinjargal

OYUNTSETSEG モンゴル事務所 ローカルスタッフ

Erdenesan

TODROL

名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテラ

イトキャンパス ローカルスタッフ

訪問機関等名:モンゴル日本人材開発センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Kh.

Garmaabazar モンゴル日本人材開発センター 統括主任

Page 16: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

訪問機関等名:JICA モンゴル事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

田中 智章 教育セクター 職員

訪問機関等名:名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル)(在モンゴル国立大学法学部)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

山本 哲史 名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル) 特任講師

訪問機関等名:名古屋大学フィールドリサーチセンター(在モンゴル科学技術大学)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

長谷川 精 名古屋大学フィールドリサーチセンター 特任准教授

苗村 康輔 名古屋大学フィールドリサーチセンター 特任助教

訪問機関等名:モンゴル科学技術大学国際部

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

UUGANBAYAR

Tumurkhuu International Relations Director

訪問機関等名:モンゴル科学生命大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

DAVAAJAV

Taisaa モンゴル科学生命大学 Vice-President

ERDENETSETSEEG

Bat-Erdene International Affairs Office Staff

DAMIRAN

Tseveennamjil 会計部門 会計士

訪問機関等名:モンゴル国立大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Mendbayar 国際課 課長

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⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

■名古屋大学モンゴル事務所

事務所はモンゴル事務所とアジアサテライトキャンパス

の2つの拠点を兼ねている。

このうち、アジアサテライトキャンパスの機能について、

所長のガンガーバータル先生から以下の説明があった。

◯アジアサテライトキャンパスについて

・名古屋大学はアジア地域において、様々な学位取得プロ

グラムを提供し、各国の副大臣、大臣秘書官、局長クラス

の政府機関等の幹部候補者育成に貢献してきたことで、ア

ジアの教育研究機関のつながりに大きな使命感を持って

いる。

◯モンゴルサテライトキャンパスが応える、モンゴルでの学びのニーズ

・政府幹部等の要職に就いておられる方のような、職場を長期離脱することが難しい方々に対して、モンゴルで

学ぶことが出来る、博士取得プログラムを提供する。

・サテライトキャンパスでは、博士課程を英語で履修することが可能。

・名古屋大学の教授が年に1度、数日間に渡りモンゴルに滞在し、学生に講義をしている。同様に学生が年に1

度、名古屋大学へ集中講義を受けに行く。その他、テレビ会議システムを通じて名古屋大学の教授等が個別に研

究の相談に応じている。

・モンゴルからは多くの学生が日本,中国,ヨーロッパへ留学し博士課程を修了しているが、帰国後は給与関連

の事情から民間の会社で働くことが多いのが現状である。また、モンゴルの教育研究環境が乏しいため、教育研

究に励むことが困難である。このような状況において、名古屋大学のアジアサテライトキャンパスは留学経験者

の教育研究において役立つ拠点となっている。

◯現状と課題

・アジアサテライトキャンパス学院においては今年5名の応募があり、1次試験を2名通過したが合格者は0人

だった。アジアサテライトキャンパス学院は政府の幹部候補レベルや博士前期課程を修了している方を条件付け

ているため、応募者の門も狭く入学が難しい状況である。

・名古屋大学からモンゴルへの留学生は3年前まで0人だったが PhD 登竜門の短期留学プログラムで10数人

を10日間程迎えている。

◯今後の展開について

・現在は名古屋大学の法学部を中心に、日本法教育研究センターと関連して法学関係の課程を設置している。今

後はより幅広い課程において日本とモンゴルの交換留学制度を整備し、充実させていくことを望んでいる。

◯モンゴル人の日本への関心

・モンゴルは人口比率に対し日本語を話せる人が多い。日本への留学者数は人口比で世界一。また相撲等がテレ

ビ放送される等、日本への関心は高い。

・日本留学を経験した事務所スタッフのオユさん、トドロルさんから、モンゴルから日本へ留学する上での課題

は「暑さ(湿度)と人の多さ」である旨回答があった。また何故か「日本には幽霊がいるのか?」といった質問

を受けることが多いとのこと。

■モンゴル・日本人材開発センター(MOJC)

日本語の書籍が置かれている図書館や、PC ブース、講義室を見学させていただいた。豊富な資料を活用し、古

い時代劇の上映や、お月見等の日本文化を取り入れたイベントが開催されていたのが印象的であった。またモン

ゴルで初となる開架式の図書館は、日本の新聞や本、日本語学習者向けの教科書、またワンピースといった日本

の漫画も置かれていた。現場は沢山の人でにぎわっており、モンゴルの日本語学習拠点としてはもちろんのこと、

地域の学びのスペースとして根ざしている印象を受けた。

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◯センター設置の経緯

・モンゴルは1990年代から市場経済体制への移行を進めており、日本もモンゴルの環境整備を支援するため、

日本政府無償資金協力(ODA)を実施。センターはこれにより建設された。

・本センターは、人材育成及びモンゴルと日本の相互理解促進の拠点として、2002年に JICA とモンゴル教

育省、モンゴル国立大学の協力により開設したものである。

◯センターが目指すもの

・当初は日本主導で、センター運営がされていたが、現在は日本の手を離れモンゴル側で運営できるように徐々

に体制を移行している最中である。

・モンゴルの国づくり、人づくりに資するために、相互に情報を交換しあう拠点となることを目指している。

1)学習支援の拠点

「ビジネスコース」「日本語コース」といった学びの場の提供。

2)相互交流の拠点

情報交換のために「フォーラム」を開催、「情報基地」としての役割を果たす。

3)ネットワークの拠点

日本に留学あるいは研修したモンゴル人と、モンゴルにいる日本人派遣専門家の積極的な参加を促し、も日本人

とモンゴル人の交流、関係を深める事業を実施。

■JICA モンゴル事務所

◯ソフト面(教育内容)とハード面(教育施設)の両方からの支援活動

<ハード面>

・モンゴル・ウランバートル市は近年、地方からの人口流入により、三

部制の導入や、廊下・ロビーの教室への転用を余儀なくされ、中には初

等教育の為の学校施設がない場合がある等、教育施設が不足傾向ある。

加えて建物の老朽化が進んでおり、建て替えが急務となっていた。

・そこで JICA では教育施設整備計画を立ち上げ、現在まで55校66

8教室を開設し、結果、4万人の子どもたちが学習出来る環境を整備す

ることが出来た。

・教育施設環境を整えたことにより、3部制から2部制に少しずつ移行

しており、2部制の学校の増加に寄与した。

<ソフト面>

・指導法改善事業の推進。従来の暗記中心から、子どもたちが主体的に学び、考える教育へのシフト。教材開発

支援についても、東京工業大学の協力を得て行っている。

・豊かな鉱物資源に支えられての、経済成長目覚ましいモンゴルにおいて、エンジニア等工業系の人材が不足し

ている状況を解消するため、3つの高等専門学校を設立する等といった工学系高等教育支援事業の推進を進めて

いる。

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■名古屋大学・モンゴル日本法教育研究センター

○名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル)について

・モンゴルは日本の法整備支援重点国の一つに位置付けられている為、本学法学研究科も、法学を専門とするモ

ンゴル人留学生を数多く育てている他、教員間の交流・共同研究も積極的に行ってきた。

・日本法教育研究センターは、モンゴル国立大学法学部との長年にわたる協力関係に基づき、2006 年 9 月に

同校内に設立。

・主には日本語と日本法の教育を行い、優秀者を名古屋大学への留学生として送り出すほか、法学教育研究分野

におけるモンゴルと日本の架け橋としての役割を果たす。

○主な実績

・日本語教育の盛んなモンゴルでも特に高い教育成果を収めており、これまで日本大使館やモンゴルの大学主催

の日本語スピーチコンテストで好成績を納めてきた。

・名古屋大学を卒業したモンゴル人留学生のネットワークの拠点としても機能。

・日本の法曹界(司法試験)に合格できた人はまだいないが、モンゴル国立大学法学部を卒業することでモンゴ

ルの資格を得て国内で弁護士等になることが可能。

○日本への留学について

・日本社会が外国人労働者を迎え入れる体制が整っていないことを挙げられた。

・グローバル企業が公用語を英語とする等、日本国内全体で少しずつの変化は見られるが、日本人の他文化を受

け入れるといった社会の意識改革ができない限り、海外留学生がそのまま日本社会へ入っていくことは難しいと

の意見があった

■モンゴル科学技術大学国際部

○外国企業との産学官連携

・今までは「教育」を主体にしてきたが、「研究」へシフトし、外国の民間企業との共同研究等を積極的に支援

している。

(例)

*韓国企業と連携し、東南アジアの各大学と契約を結び、他国大学の講義をオンライン受講できる事業の開始。

*日本の JAXA と連携し、無人航空機の研究を進める。

*中国企業と連携し、石炭・鉱山等の発掘に関する技術研究を行う。

←共同研究をより活性化される為には、大学の国際化が急務であり、国際部の担う役割の重要性が高まっている。

・外国企業・大学と、モンゴル科学技術大学との連携は、双方に利益をもたらす活動であるべきと考えており、

今後名古屋大学とも相互に研究推進や事業活動を行えることを期待している。

○留学状況について

・海外27カ国の大学と連携しており、多様な人材育成につなげている。

・モンゴルでは学部課程の学生よりも、修士・博士課程の院生が留学することがほとんどであるとのこと。

・モンゴルで 3 年、ドイツで 2 年学び、修士号を取得するコースや、モンゴルで 1 年、日本で 1 年学び、修士

号を取得できるコースがある為、ドイツや日本の修士課程に留学することが多い。

・後者は特に社会人のキャリアアップとして重宝されており、社会人学生がこのコースを利用して留学する場合、

必ずモンゴルへ帰国することを条件にする企業がほとんどであるとのこと。

Page 20: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

・優秀な人材を獲得するため、英語等の語学力を重要視し、語学授業や海外知識を学べるような講義を充実させ

るようにしている。

・留学生の授業料を安くするといった留学生の受入に注力するだけでなく、国内の優秀な人材の流失を防ぐため

に奨学金制度等も充実させている。

・以前は留学先で就職し、モンゴルへ戻ってこない学生も多くいたが、モンゴルの物価が上がってきたために外

国で働くことのメリットが薄れてきている。そのために留学でキャリアアップした上で帰国し仕事に復帰する人

が多くなっている。

■モンゴル科学生命大学国際課

○モンゴル科学生命大学について

・モンゴルで唯一の農業大学であり、モンゴル農業省と密接に関係している。

・「農業」という言葉が世界的に「ライフサイエンス」と表現されるようになっているため、農業大学から科学

生命大学に名称変更された。

○留学状況について

・学生の留学先としては中国や日本が多い。ヨーロッパへの関心も高いが、地理的に遠いこと、費用も高額とな

るため、あまり実現していない現状。

・イギリス、カナダ、ロシアの大学と協定を結び、モンゴルで 2 年、海外で 2 年学び、それぞれの大学の学位

を取得する、ジョイントディグリーを行っている。

・大学の異文化交流プログラムとして、日本の山形大学、中国の大学と共同で夏期講習を行ったりしている。

■モンゴル国立大学国際課

○モンゴル国立大学について

・モンゴル初の国立大学として、名古屋大学とも協定校として長い間交流しており、浜口前総長や城所先生がモ

ンゴル国立大学の顧問となっている。

・今まで 16 の学部があったが、研究者を受け入れやすくする為、専攻学群ごとに 5 つに再編成を行った。

・外国人教員は 30 名程度在籍しており、モンゴル内の大学で一番多い人数となっている。

○留学状況について

・海外の140校と協定を結んでおり、韓国、ベトナム、中国からの留学生が増えている。

・海外大学とのジョイントディグリーを取り入れるべく検討しており、日本の立命館大学や、韓国、ロシアの大

学からオファーがあるが、語学等課題もあり、準備をすすめている状況。

・短期プログラムとしては、インターンシップや研究実習等があるが、モンゴルと日本との夏休み期間にズレが

あり、学生にとって参加しにくい状況である。

<調査を行って>

「日本留学へのニーズ」に焦点を当てて調査を行った結果、経済発展目覚ましいモンゴルにおいて、インフラ整

備に技術につながる理系分野のニーズが強いことを感じた。

日本留学へのハードルとして、以下問題点について、サポートが必要だと感じた。

・語学力の問題…日本語、英語のサポートの強化

・修学期間の問題…社会人学生等、多様な人材の受け入れる体制

・就職のサポート…企業との関わり、企業と学生とのマッチング

Page 21: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

⑨ 感想

注)研修者ごとに作成し、教育推進部事業推進課あて提出願います。

◯直接モンゴル事務所の方とお会いする機会をいただけたこと

担当業務の一環でモンゴル日本留学フェアに関わる機会があり、研修に参加する少し前から、本学モンゴル事務

所の皆さんとメールのやりとりをさせていただいていた。

今回研修に参加して、直接お会いすることができる機会をいただけたことはとても光栄で、その後の業務のやり

とりもスムーズにいくことができたと感じている。

◯語学習得のその先のイメージが出来たこと

グローバル化の推進を掲げる本学にとって、職員の語学力の強化は必要不可欠である。この点において、本学は

充実した語学研修制度を有し、学内講座など職員個人個人が自分にあった学習ツールを利用する事が出来る体制

が整っていることから、語学学習という点でとても恵まれた環境にあるといえる。本学の将来を決定づけるグロ

ーバル化の成否は、これらの制度を利用する私たち職員の意識にかかっている。語学習得は、多文化を受け入れ

る大学職員としてのスタート地点であるということを、今回の研修参加により強く感じた。

◯海外事務所との関わり

今回、海外研修として本学のモンゴル事務所を訪問し、現地の状況について職員と直接の意見交換を行うことで、

日本で仕事をしている中では実感することができない「文化の違い」「商習慣の違い」を学び得たことは視野の

広がりという点でとても有益であった。今後も継続的に海外事務所と関わる機会があるとよいと思われる。

◯所属部署・担当業務の垣根を越える

国際部から教育推進部へと組織変更等、特定の部署だけではなく、職員一丸となってグローバルな仕事に携われ

る機会が増えたように感じるが、一方で担当業務の範囲を超えて広い視野を持つことは困難な状況である。今回、

部局や担当業務も様々な方と一緒に研修を受ける事ができ、訪問先から同じ説明を受ける中で、他の受講者から

様々な意見や視点が出てきて、より学びが深くなったと実感している。そこで、所属部局や担当業務の垣根を超

えて、海外業務に携わる機会があるとよいと思われる。

◯百聞は一見にしかず

研修へ参加する前、業務でモンゴル留学フェアの準備に携わることとなり、今回の研修で訪れることになるモ

ンゴル日本人材開発センターについて、ホームページや書類、メールのやり取り等で情報を得たつもりになっ

ていた。

しかし実際にセンターを訪問し、日本語や日本のビジネスについて熱心に学んでいるモンゴルの方々や、モン

ゴルと日本の架け橋としてセンターで働くスタッフから「意欲」「熱意」を直接感じ取ることができ、国際業

務に取り組む姿勢、意欲を触発された。

日本の大学に留学を希望するモンゴルの方々に対して、本学の一人の職員として何が出来るだろう、と考える

きっかけを与えてくれた今回の研修は、私のキャリアの中で重要なポイントとなったと感じている。

最後に、海外研修という貴重な機会を与えていただいた事務局長をはじめ、研修のアレンジをしていただいた

教育推進部事業推進課の皆様、快く送り出していただいた学生交流課の皆様、お忙しいにも関わらず私たちの

訪問を受け入れていただいた、モンゴルの各訪問先教育機関の皆様方、そして一緒に研修に参加した皆様に、

心より感謝を申し上げる。

Page 22: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

平成27年度事務職員の海外研修報告書

平成27年10月 5日 事務局長 殿

所 属 工学部経理課経理係 職 名 係員 氏 名 加藤 正康

① 渡航期間

平成 27 年 9 月 12 日(土) ~ 平成 27 年 9 月 17 日(木) 6 日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 A-1 モンゴル)

A-1 モンゴル

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

安池 祐輝 財務部財務課統括グループ 事務職員

小笠原 有美 教育推進部基盤運営課会計統括係 事務職員

佐々 亜由美 教育推進部学生交流課国際教育支援係 事務職員

加藤 正康 工学部・工学研究科経理課経理係 事務職員

佐藤 由布子 農学部・生命農学研究科用度係 事務職員

水間 彩乃 愛知県立大学学生支援課 主事

④ 研修テーマ

モンゴルにおける大学運営と本邦組織の現地事務所展開について

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:名古屋大学モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテライトキャン

パス

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Gangabaatar

Dashbalbar 氏

名古屋大学モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパ

ス学院モンゴルサテライトキャンパス 代表・特任准教授

矢代 真弓 氏 アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテライトキ

ャンパス 職員

Tuvshinjiargal

Oyuntsetseg

名古屋大学モンゴル事務所 職員

Erdenesan

Todrol 氏

アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテライトキャ

ンパス 職員

訪問機関等名: モンゴル日本人材開発センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Kh.

Garmaabazar

モンゴル日本人材開発センター 統括主任

Page 23: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

訪問機関等名: JICA モンゴル事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

田中 智章 氏 JICA 教育セクター 職員

訪問機関等名:名古屋大学日本法教育研究センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

山本 哲史 氏 名古屋大学日本法教育研究センター 法教育担当 特任講師

訪問機関等名:名古屋大学フィールドリサーチセンター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

苗村 康輔 氏 名古屋大学フィールドリサーチセンター 特任助教

長谷川 精 氏 名古屋大学フィールドリサーチセンター 特任准教授

訪問機関等名:モンゴル科学技術大学(MUST)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Uuganbayar

Tumurkhuu 氏 モンゴル科学技術大学 国際部

Director of

International

Relations

訪問機関等名:モンゴル科学生命大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Davaajav

Taisaa 氏 モンゴル科学生命大学 Vice-President

Erdenetsetseeg

Bat-Erdene モンゴル科学生命大学 国際交流課 職員

Damiran

Tseveennamjil モンゴル科学生命大学 会計部門 会計士

訪問機関等名:モンゴル国立大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Mendbayar

氏 モンゴル国立大学 国際課 課長

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

Page 24: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

○現地大学について

今回の研修では、現地大学としてモンゴル科学技術大学、モンゴル科学生命大学、モンゴル国立大学を

訪問した。

・モンゴル科学技術大学は、名古屋大学と協定を結んでおりフィールドリサーチセンターも管掌している。

近年、大学の目標が教育から研究へ変化しつつあり、企業との連携を進めている。モンゴル国内はまだ

市場も小さいため海外の企業との共同研究・事業を進めている。モンゴル特産の健康食品や豊富な地下資

源に関係したものなどモンゴルの強みを活かした事業もあり大変興味深かった。またモンゴルではインフ

ラ等の国内問題の解決に国立大学が大きな役割を果たしており、政府のプロジェクトの多数にも大学が参

加している。

教育面では海外27カ国の大学と連携して多様な人材育成につなげている。モンゴルのエンジニアのほ

とんどが科学技術大学出身であり、同窓会等のネットワークも充実している。モンゴルの学部で3年、ド

イツで2年学び修士課程を修了する形式や1年間モンゴルで学び、日本で1年学び修士課程を修了する形

式があり、専門的な知識を身に着けてから海外に留学できるので効率が良いように感じた。このプログラ

ムは、社会人が参加することが多いとのことであり、キャリアアップに積極的なモンゴル人の一面が垣間

見ることが出来た。

・モンゴル科学生命大学は、モンゴルで唯一の農業系大学であり 1,000 人の研究者と 10,000 人の学生

を擁する巨大教育機関である。農業省や農業系企業との連携が強く、卒業生が多数活躍している。一方、6

~7 割が地方からの入学者であるが地方では職が無いため、一部の人は地方に戻り知識を生かしているが

首都ウランバートルで農業とは関係のない職に就く人も多い。日本の大学が抱える地方への就職の減少問

題と共通している部分であるように思う。

会計系職は専門化されており、職務変わることはほとんどない。(会計士資格が要件となっている。)会

計系の研修体系がしっかりしており、毎年専門的な研修(税・会計・財政等)が行われる。この点は大変

羨ましく感じた。

税制や条文はよく変更があり情報収集を重要視しているとのことであった。これはモンゴルの大学全て

が行っていることだと考えられる。

・モンゴル国立大学はモンゴル初の国立大学として、名古屋大学とも協定校として長期にわたり交流して

おり、松尾前総長や城所先生がモンゴル国立大学の顧問となっている。国の学術財団の事業の20%を獲

得している。

海外の140校と協定を結んでおり、多種多様な成長を目指している。韓国、ベトナム、中国からの留

学生が増えている。外国人教員は30名程おり、モンゴルの大学で1番多く、研究インターンシップも多

く実施しており、海外の研究者を夏の間に迎え入れている。

○本邦機関の現地事務所の活動について

・JICA モンゴル事務所 (教育セクター)

教育セクターでは初等、中等、高等教育の枠だけでなくソフト(教育内容)とハード(教育施設)の両方

で支援活動を行っている。

モンゴルの問題としては、ウランバートルのゲル地区の拡大に学校建設が追い付かず、遠くから通う子

どもが多いことや、国土が広く世界で一番人口密度が低い国なので(2 人/k ㎡)地方まで事業を広めること

が大変であることがあげられた。特に遊牧民は移動しており今どこにいるかもわからない状況とのことで

ある。これはモンゴルならではの問題で非常に興味深かった。少しでも周知するために遊牧民が集まる会

議の場で告知することや SNS を利用している。このように問題はあるが、モンゴルはまじめで親日的な人

が多いので、中東やアフリカなどより事業がやりやすい国とのことであった。

人員は日本人スタッフと現地スタッフに分かれ、両者でペアを組み仕事をしている。日本人スタッフは

JICA 本部との連絡を主な職務とし、現地スタッフはモンゴルの各機関との調整を主な職務としている。こ

のような業務の分担は、海外事務所の体制として非常に効率の良いものであると感じた。

○名古屋大学モンゴル事務所

アジアサテライトキャンパス学院モンゴルキャンパスも兼ねている。

運営面では様々な困難に直面している。モンゴル事務所は現地の法人格を取得しており、3 か月おきに

モンゴルでの会計報告が必要で制度の複雑なので苦労している。予算の問題からプロの税理士を雇うのが

困難であるとのこと。(個人的な紹介で探したそうである)そもそも、モンゴルの法整備が遅れているために

法律上のグレーゾーンが多くあり担当者によって対応や説明が異なっていることも多く日本の制度との連

携が困難である。であるので、案件を 1 件ごとに本学担当部署と行政機関に確認しながら処理しているそ

うである。本学にモンゴルの事情について理解することが出来る人材を置くか、現地において個々の事案

Page 25: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

にある程度以上の判断を下せる職員を派遣する必要があるように感じた。

○モンゴル・日本人材開発センター(MOJC)

モンゴルは1990年代から市場経済化に向けた環境整備が課題であり、それに向けた人材育成及びモ

ンゴルと日本の相互理解促進の拠点として、モンゴル・日本人材開発センターが2002年に JICA とモ

ンゴル教育省、モンゴル国立大学の協力により開設された。

日本政府は開設にあたり、無償資金協力によりセンターの活動に必要な施設を総工費4.43億円にて建

設した。現在は日本の手を離れモンゴル側で運営できるように徐々に体制を移行している。センターはビ

ジネス人材の育成、日本語教育、相互理解の促進をメインテーマにさまざまなコースや講座を開設してお

り、経営者や事務系職員、留学希望者、日本語教師志望者だけでなく一般の方も多く利用している。特に、

モンゴル初となる開架式の図書室は人気があり日本の月刊誌や新聞等だけでなくアニメやドラマ等の AV

資料も充実している。日本映画の上映会などイベントも多く開催しており、モンゴルにおいて日本文化発

信の大きな役割を果たしている。

○名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル)モンゴル国立大学内

日本語と日本の法律、モンゴルとの比較について研究しており、名古屋大学への留学がひとつの目標と

なっているため、留学への選別のため上級生になるにつれ学生数が減っている。中村真咲先生が名古屋大

学国際開発研究科からモンゴル国立大学法学部へ留学したことをきっかけにセンターの設立に至った。

モンゴルは日本の教育システムを取り入れることに積極的である。現在のモンゴル文部科学大臣が日本

の高専に留学していた経験があることから高専整備が促進されているが、モンゴルの法整備が整っていな

い状況でウランバートル市内に3つの高専を作るなど強行的な面がある。これに限らずモンゴル全体にお

いて見切り発車的な試行傾向があるという。

新モンゴル高校も日本への留学をテーマにしており、日本への関心は高い。

モンゴル国立大学法学部はまだ日本の司法試験の合格者を排出できていないが、モンゴル国立大学法学

部を卒業することでモンゴルの資格を得て国内で弁護士等になることはできる。

○名古屋大学フィールドリサーチセンター(FRC)モンゴル科学技術大学内

名古屋大学環境学研究科の協力のもと、モンゴル科学技術大学の先生や学生と協力してモンゴルの大気

汚染を研究している。PhD 登竜門やリーディングプログラムで短期実習や集中講義で名大の学生を受入し

ている。

教員養成の面が大きく、将来的には FRC の活動をモンゴルの科学技術大学やその他モンゴル人で運営で

きるようにと展望を描いている。

○モンゴル全般について

全人口のおよそ半数が首都のウランバートルに居住しており、首都と地方の差は大きい。

ウランバートルの公共交通機関は未発達で、バス、トロリーバスが走っているが、私が見た限りほとん

どすべての車両が超満員で運行していた。

道路状況もまだ整備が必要で常に渋滞が多発していた。JICA の支援で作られた跨線橋があったが、この橋

により市内の渋滞がかなり軽減されたという。しかしながら、タクシーに声をかけられても、急いでいる

から乗らないです。といったというようなジョークもあるほど渋滞はひどくまだまだ支援の余地があるよ

うに思った。郊外となると道路が舗装されていないところが多く、でこぼこだらけの道も多くあった。

治安は、良いように感じた。研修中危険を感じることは無く、暗い夜道だけ注意すればよいとのことで

あった。

近年経済成長が著しく、モンゴルの人たちは勉強・仕事に精を出し自分たちの生活をよくして行こうと

いう向上心が強いと感じた。(大学の進学率は日本より高い)国も教育に力を入れており、大学への予算は

毎年増えている。インフレが進んでいるからか物価は日本より安いが思ったほどではなかった。

民主化まではソ連の影響が強く伝統的なモンゴル文字が禁止されキリル文字を使用していたが、モンゴ

ル文字が学校で教えられようになり少しずつ使用できる人が増えている。

宗教はチベット仏教が大多数であるが、ウランバートル市内にはロシア正教会の教会もいくつかあった。

市内であまり宗教的なことに接する機会はなく、宗教色は強くないように感じた。

Page 26: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

⑨ 感想

注)研修者ごとに作成し、教育推進部事業推進課あて提出願います。

今回の研修の最大の成果は、日本の機関がモンゴルで事業を行う上での問題を知ることができたことである。

特に本学のモンゴル事務所の調査では、名大規程と現地法規・商慣習とが合致せず運営に苦労しているとのことであった。これは他の国にも大いにありうる問題で今後本学として海外展開を行うにあたり充分検討を要するものである。 また、現地の大学の担当者にお話を伺い、会計的な面や国際交流の面での現状と目標を聴取することができ、大変有意義であった。 文化体験や市内自由行動、食事等の際にモンゴルの文化についても学習することが出来た。 文化や風習について事前に予習していたが、知らないことも多く驚きの連続であった。異文化に接することで比較対象としての自分の国の文化が意識された。この異文化と接した経験は今後、海外に行く機会にも役に立つと思う。

・本学のモンゴル事務所では、本学の規定と現地の法規制が適合せず雇用など各種手続きが 非常に煩雑となり、場合によっては手続き不可能となる場合があるとのことであった。今後各国に現地法人として事務所・サテライトキャンパスの展開を推進するに当たり、以下の2点のいずれかを検討する必要があると思われる。①本学の規定を国際的な基準に適合できるよう改定する。②海外事務所については現地法規定・商慣習に適合するように別規程を策定する。 ・会計系職員についてモンゴルの大学では制度の変更に対応するため専門化されており非常に高い専門的能力を有している。今後の大学運営や国際化に対応するため本学でもある程度の専門化が必要であると実感した。特に海外事務所のある国の税制・法・会計について詳しい人材を育成もしくは雇用する必要性は今後現地での各種事業を進めるにあたって必須となってくるように思われる。 ・同様に、制度変更・国際化に対応するため年次を問わない定期的な会計制度に係る研修が必要であると考える。

モンゴルはまだまだ法や制度・インフラが未整備な面があるが自力であるいは他国からの支援で改善してあり今後が非常に楽しみな国であると感じた。

国民の学習意欲と向上心が非常に高く、国も大学への教育予算を増額しているモンゴルは苦しい経営を強いられている日本の国立大学職員からみて非常に羨ましく感じた。 自分ではなかなか行く機会のない国であり、研修参加前の知識といえば草原とゲルくらいしかイメージの無かったモンゴルだが、エネルギーと可能性に満ちた素晴らしい国であると感じることが出来た。

このような機会を与えてくださった事務局長以下、関係各員に心より御礼申し上げます。

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1

平成27年度事務職員の海外研修報告書

平成27年10月 9日 事務局長 殿

所 属 農学部・生命農学研究科 用度係

職 名 係員 氏 名 佐藤由布子

① 渡航期間

平成27年 9月12日(土) ~ 平成27年 9月17日(木) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 A-1 モンゴル)

A-1 モンゴル

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

加藤 正康 工学部・大学院工学研究科経理課 事務職員

安池 祐輝 財務部財務課統括 G 事務職員

佐々 亜由美 教育推進部学生交流課国際教育支援係 事務職員

佐藤 由布子 農学部・生命農学研究科用度係 事務職員

小笠原 有美 教育推進部基盤運営課会計統括係 事務職員

水間 彩乃 愛知県立大学学生支援課 主事

④ 研修テーマ

海外事務所及びサテライトキャンパス運営について

モンゴルにおける大学組織と国際化に関する取り組みについて

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:モンゴル事務所/アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテライトキャンパス

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

GANGABAATA

R Dashbalbar

モンゴル事務所/名古屋大学アジアサテライトキャンパス

学院モンゴルサテライトキャンパス

特任准教授(拠点

長・事務所長)

矢代 真弓 名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテ

ライトキャンパス 事務補佐員

Tuvshinjargal

OYUNTSETSEG モンゴル事務所 ローカルスタッフ

Erdenesan

TODROL

名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院モンゴルサテ

ライトキャンパス ローカルスタッフ

訪問機関等名:モンゴル日本人材開発センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Kh.

Garmaabazar モンゴル日本人材開発センター 統括主任

Page 28: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

2

訪問機関等名:JICA モンゴル事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

田中 智章 教育セクター 職員

訪問機関等名:名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル)(在モンゴル国立大学法学部)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

山本 哲史 名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル) 特任講師

訪問機関等名:名古屋大学フィールドリサーチセンター(在モンゴル科学技術大学)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

長谷川 精 名古屋大学フィールドリサーチセンター 特任准教授

苗村 康輔 名古屋大学フィールドリサーチセンター 特任助教

訪問機関等名:モンゴル科学技術大学国際部

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

UUGANBAYAR

Tumurkhuu International Relations Director

訪問機関等名:モンゴル科学生命大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

DAVAAJAV Taisaa

Vice-President

ERDENETSETSEEG

Bat-Erdene International Affairs Office Staff

DAMIRAN

Tseveennamjil 会計部門 会計士

訪問機関等名:モンゴル国立大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Mendbayar 国際課 課長

Page 29: 平成27年度事務職員の海外研修報告書平成27年度事務職員の海外研修報告書 平成 27年10月13日 事務局長 殿 所 属 財務部財務課統括G 職 名

3

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

文化研修 文化研修ではモンゴルの歴史や現状等を伺いながら、チンギスハン像の見学やテレルジ国立公園での乗馬

体験、チベット仏教のアリヤバル寺院への訪問などを行った。

モンゴル事務所・アジアサテライトキャンパス 事務所はモンゴル事務所とアジアサテライトキャンパスの2つの拠点を兼ねている。 アジアサテライトキャンパスでは日本語を話す必要はなく、英語で博士課程を終了することができる。こ

れまで日本ではジョイントディグリーという制度はあったが、サテライトキャンパスという形式は初めての

ものであり、名古屋大学はアジアサテライトキャンパスをキーにアジアでの教育研究機関のつながりに大き

な使命をもってのぞんでいる。20世紀以降、モンゴルから多くの学生が日本、中国、ヨーロッパへ留学し

博士課程を修了している。留学生は帰国すると給与関連の事情から国の機関ではなく民間の会社で働くこと

が多い。また、母国の教育研究環境が乏しいために帰国後は教育研究に励むことができないことも多い。ア

ジアサテライトキャンパスという制度はこのような状況を打開する一つの選択肢となっている。 アジアサテライトキャンパス学院のモンゴル学生は現在1名おり、仕事や農業の間に1週間に1度(毎月

曜)の頻度で研究のために学院に来ている。名古屋大学の教授が年に1度数日間に渡りモンゴルに滞在し、

学生に講義をし、同様に学生が年に1度名古屋大学へ集中講義を受けに行く。その他、テレビ会議システム

を使って教授等が個別に研究の相談に応じている。現在は名古屋大学の法学部を基に日本法教育研究センタ

ーと関連して法学関係の課程を設置している。今後はより幅広い課程において日本とモンゴルの交換留学制

度を整備していくことを願っている。 <サテライトキャンパスについて> Q.農学部でもカンボジアにアジアサテライトキャンパ

スを設立したところだが、会計面や資産管理面で困った

ことがあれば教えてほしい。 A. モンゴルキャンパスでは、農学部のように牧場等が

あるわけではないため、調達物品も少なく、その点にお

いては苦労していない。モンゴル事務所には予算措置は

あまりなく、アジアサテライトキャンパス学院の予算で

事務所の賃料等を払っている。モンゴル事務所は現地の

法人格を取得しており、モンゴルでの会計報告が必要で

あり、名古屋大学への会計報告とは異なるものであるた

め、2 種類の会計報告を作成する必要があり、苦慮して

いる。加えて、モンゴルの会計報告と日本の会計報告では多くの違いがあり、モンゴルと日本の会計報告の

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4

両方を熟知している税理士はみつけることができず、ガンガバートル先生の教え子の娘さんに協力してもら

い進めているのが現状である。また、モンゴルの法整備が遅れているために法律上のグレーゾーンが多くあ

るため、法律改正も頻繁にあり、この点についても対応に苦慮している。例えば、モンゴルでは領収書をだ

してもらえないような場合も多く、現在は名古屋大学の様式にサインをもらう形で領収書として認め会計報

告等を行っているが、モンゴルでの会計報告では認められない、といった問題や、大学事務所の法人格取得

について、当初会計報告は不要と判断していたが、担当者が代わり必要ということになってしまった。 モンゴル事務所の人員配置は恵まれており(5人)その点においてはあまり困っていないが、1番大きな

課題は会計的な部分となる。例えば、日本から先生が出張される際にホテルの手配等を対応するが、前金の

ホテル手配料を事務所のお金で支払うことはできないといった面で苦労している。また、先に述べた商習慣

の違いから、名古屋大学のアジアサテライトキャンパス本部とのやりとりでは相互にできないことをぶつけ

ている状況であり、日本の会計に詳しい人が現地派遣されるとよいと考えている。また、名古屋大学の規程

改正により4月から長期出張ではなく赴任という形で現地派遣できるようになったが、現地雇用については

まだ対応できていないため、現地スタッフにはモンゴルの法律でグレーゾーンである謝金支払いを続けてい

る。 ※モンゴルでは契約なしに労働に対する報酬を支払ってはいけないと法律で定められている。 <日本への留学について> Q.モンゴルの留学生の関心やモンゴルから日本へ留学する上でのハードルは何か教えてほしい。 A.モンゴルは人口比率に対し日本語を話せる人が多く(人口300万人程度)、最近は韓国やアメリカへの興

味を持つ人も増えているが日本への関心は継続的に高い。オユさんとトドロルさんは日本留学を経験してお

り、モンゴルから日本に行くことのハードルは夏の暑さ(湿度)と人の多さと回答があった。モンゴル人か

らはよく「日本は幽霊が多いか」と聞かれることが多く、地震より幽霊の関心が高い。震災があった時に多

くのモンゴル人留学生は帰国したが、その後また日本へ戻る学生も多くいた。 Q.名古屋大学のモンゴル留学事情及び受入状況を教えてほしい。また、モンゴル事務所での留学に関する活

動を教えてほしい。 A.名古屋大学からモンゴルへの留学生は3年前まで0人だったが PhD 登竜門の短期留学プログラムで10

数人を10日間程迎えている。名古屋大学附属高校の生徒も8月-9月の間に毎年研修を行っている。研修内

容としては各自で課題を立てて学んでおり、テーマとしてモンゴルの石油石炭事情やそれに起因する大気汚

染、土壌汚染など多岐にわたる。モンゴル人は相撲への関心が高く、NHK やその他モンゴル語での生放送

もあるため、名古屋場所から「名古屋」を知っている人が多い。日本人は時間を守り勤勉な人が多い印象を

持っている人が多い。 モンゴル事務所では留学フェア等の紹介はしているが、選抜や斡旋といった業務はやっていない(法人税

を納めていないので営利活動はできない)。アジアサテライトキャンパス学院においては今年5名の応募があ

り、1次試験には2名通過したが、最終合格者は0人だった。アジアサテライトキャンパス学院は政府の幹

部候補レベルや博士前期課程の終了を条件付けているため応募者の門も狭く入学採用が難しい。

モンゴル・日本人材開発センター(MOJC) モンゴルは1990年代から市場経済化に向けた環境整備が課題であり、それに向けた人材育成及びモン

ゴルと日本の相互理解促進の拠点として、2002年に JICA とモンゴル教育省、モンゴル国立大学の協力

を得てモンゴル・日本人材開発センターが開設された。 日本政府は開設にあたり、無償資金協力によりセンターの活動に必要な施設を総工費4.43億円にて建設し

た。現在は日本の手を離れモンゴル側で運営できるように徐々に体制を移行している。センターはビジネス

人材の育成、日本語教育、相互理解の促進をメインテーマにさまざまなコースや講座を開設しており、経営

者や事務系職員、留学希望者、日本語教師志望者だけでなく一般の方も多く利用している。特に、モンゴル

初となる開架式の図書室は人気があり日本の月刊誌や新聞等だけでなくアニメやドラマ等の AV 資料も充実

している。

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【JICA モンゴル事務所】 初等、中等、高等教育の枠だけでなくソフト(教育内容)とハード(教育施設)の両方で支援活動を行って

いる。 教育施設整備計画(1999- ) 近年の市場経済化に伴いウランバートル市の人口が65万人から130万人に急増した。ゲル地区に多くの

者が住むため、児童の通学が大変な状況にある。学校は1クラス50人程度で3部制の授業を行っているた

め夜の部の生徒は帰りが遅くなり危ない。※学校によってはスクールバスを用意していることもあるが、多

くの子供が徒歩通学または親の車に送り迎えしてもらっている状況にある。 教育施設整備計画は現在第4フェーズを行っており、これまでに107億円で55校668教室を開設して

いる。これにより約4万人の子供(ウランバートルに住む子供の40%程度)が学習できる環境が整備され

た。学校は更衣室が完備されており、通学した生徒は上着と靴を脱いで教室へ向かう。校舎は日本基準で階

段等が作られゴム製のへりや手すりがあり安全に留意されている。ゴム床の体育館は各校において好評であ

る。施設環境を整備することで3部制の学校から2部制に徐々に移行しつつあり、2部制の学校が増えてい

る。 指導法改善事業(2006-2013) 初等教育を中心に教育内容を支援し、教師の育成をはか

っている。これまでは暗記中心の教育であり、教師が教

科書の内容を黒板に書いていき、その内容を子供たちが

ひたすら覚える形だった。子供たちが主体的に考える教

育を目指して先生中心から子供を中心として指導方法を

見直し、指導書等のガイドラインを整備した。日本の授

業研究を取り入れ、他校の教師が授業を見学し、教師の

相互な授業評価によって指導内容をより高い質へと高め

ている。理科の実験等においても子供が興味を引くよう

な形式を心掛けている。東京学芸大学の先生たちの協力

を得て活動している。現在は第3フェーズの準備中であ

り、協力機関を募っている。 教材開発支援事業(2012-2017) モンゴルの小学校教師の質の向上を狙って ICT を使っての教材開発を行っている。東京工業大学の協力を得

て活動している。 工学系高等教育支援事業(2014-2023) 工業、科学系の市場ニーズに対応するため高度な工学系人材を育成する支援を行っている。これまでの高等

教育事情では理系より文系の人気が高く、建設等の都市開発も進んでいるため、高度な理系(特に工学系)

の人材育成を目指している。指標としてモンゴルに1000人のエンジニアを育てることを掲げている。無

償資金協力ではなく、モンゴル政府が日本政府に借金をして徐々に返済する形で協力事業を行っている。モ

ンゴル科学技術大学で2年間学び、日本の受入大学で2年間学ぶ留学が基本の体制となっている。モンゴル

科学技術大学の機械学科、建設学科、土木学科等のカリキュラムについても日本の大学から助言等を行って

いる。最近ではモンゴルに3つの高等専門学校をつくり専門的に工学系の勉強をする学生が増えている。高

専においても科学技術大学と同様に1年間日本語を勉強してその後日本に留学する。モンゴルの大学と日本

の大学において、共同研究事業を立ち上げ企業等から予算を獲得して相互に協力して研究している。 モンゴルの教育に携わる行政官の育成(2001- ) モンゴルの39歳未満の行政官を日本の省庁や大学へ迎え入れ、日本の行政事業を勉強できるようにしてい

る。受入大学として、九州大学、慶応大学、国際大学、明治大学(名古屋大学はこれまで受入をしていない)

があげられる。無償資金協力としてこれまで33億円で204人の行政官を迎え入れている。選出基準とし

ては、日本のモンゴル開発方針に合意している行政官(特に工業系、環境系、都市開発系)に限定している。

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青年海外協力隊(1992- ) モンゴルへこれまでに530人のボランティアを動員している。530人の内、252人は教育関連のボラ

ンティアに従事した。 モンゴルの教育セクター基本情報 ウランバートル市内の小中学校数 115校(公立のみ、内45校は日本協力) 市内の学校に通う生徒数 約18万6千人(年間2万人が新規入学) 市内の教員数 9521人(公立・私立含む) 3部制の学校に通う生徒数 約4500-5000人 現在の教育科学省の政策 「子供一人ひとりの発達を支援する教育」 ①教員発展プログラム ②図書プログラム ③タレントプログラム 初等教育施設の増設 2016年までに80校 JICA の外国事務所の体制として、日本人のスタッフと現地のスタッフ(ナショナルスタッフ)がペアを組

んで活動している。ナショナルスタッフは現地雇用している。モンゴル事務所は開設から20年程度経って

おり、当時から働いているナショナルスタッフもいる。

名古屋大学日本法教育研究センター(モンゴル)モンゴル国立大学内

日本語と日本の法律、モンゴルとの比較について研究している。名古屋大学への留学がひとつの目標とな

っているため、留学の選抜を兼ねており、上級生になるにつれ学生数が減っている。中村真咲先生が名古屋

大学国際開発研究科からモンゴル国立大学法学部へ留学したことがきっかけとなり、センターの設立に至っ

ている。参考として、中村先生の寄稿からモンゴルの民主化をはじめとする近現代の歩みを紹介いただいた。

民主化のお話で紹介されたゾディグさん(モンゴル国立大学院生時代に民主化デモを行い、その後政党を建

てて入閣、その後1998年に暗殺された)の像がスフバートル広場の南(郵便局近く)に建っている。 モンゴルは日本の教育システムを取り入れることに協力的であり、日本の技術革新に寄与した高専を設立し

ている。現在のモンゴル文部科学大臣が日本の高専に留学していた経験があることから高専整備が促進され

ているが、モンゴルの法整備が整っていない状況でウランバートル市内に3つの高専を作るなど強行的な面

がある。これに限らずモンゴル全体において見切り発車的な試行傾向があるという。新モンゴル高校(進学

校)も日本への留学をテーマにしており、日本への関心は高い。 モンゴル国立大学法学部の水準としては、日本の司法試験に合格できた人はまだいないが、モンゴル国立

大学法学部を卒業することでモンゴルの資格を得てモンゴルで弁護士等になることはできる。モンゴルはウ

ランバートルに人口が集中しており、貧富の格差も都市部出身と草原出身とで広がる傾向がある。 留学に関連して、日本社会が外国人労働者を迎え

入れる体制が整っていないことを挙げられた。楽

天の社内公用語を英語とする等の変化はあるがま

だ遅々としている状況である。国としてG30を

進めているが、そういった社会の底上げができな

い限り留学生がそのまま日本社会へ入っていくこ

とは難しいと思われる。また名古屋大学の中でも

受け入れることができる教員のいる専攻等に限定

されてしまう点についても検討する必要があるの

ではないか、という意見もあった。奨学金につい

ては恵まれており、人数としてはわずかだがアル

バイトをしなくても生活できる新モンゴル高校は

留学後に帰国しないと返還を求める奨学金制度を

取り入れている。これは国外への頭脳流出を防ぐ

狙いがある。

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名古屋大学フィールドリサーチセンター(FRC)モンゴル科学技術大学内

名古屋大学環境学研究科の協力でモンゴルの大気汚染を研究してい

る。モンゴル科学技術大学の先生や学生と協力して研究している。

PhD 登竜門やリーディングプログラムで短期実習や集中講義で名大

の学生を受け入れている。FRC の活動をモンゴルの科学技術大学や

その他モンゴル人で運営できるようにと展望を描いている。授業はや

っていないので学生指導というよりも教員養成の面が大きい。

モンゴル科学技術大学国際部

名古屋大学と協定を結んでおり、FRC も所掌している。今までは教育を中心に大学運営していたが、今後

は研究を推進するために国際化を心掛けている。企業との共同研究や特許取得を活発化している。海外の企

業や大学との事業を担当しており、例として韓国企業との連携として東南アジアの各大学と契約を結んで他

国の大学の授業をオンラインで受ける事業を行っている。その他にも日本 JAXA と連携して無人航空機の研

究を進めていたり、2016年からはアメリカの大学と連携してスマホのアプリを共同制作する事業を予定

している。授業料は国によって定められているので大学を豊かにするためには産学連携が大切だと考えてい

る。 教育面でも海外27カ国の大学と連携して多様な人材育成につなげている。モンゴルのエンジニアのほと

んどが科学技術大学出身であり、同窓会等のネットワークも充実しているので名古屋大学でモンゴルと協力

して研究活動をしたい教員がいたら是非国際部へ連絡してほしい、とのこと。 日本では留学を希望する学生が減ってきている

というが、モンゴルでは留学を希望する学生は多

い。ただし、留学をするのは学部生ではなく大学院

生が多い。モンゴルの学部で3年、海外で2年の修

士課程を修了する形式や修士課程のうち1年をモ

ンゴルで、もう1年を日本で学ぶ形式などがある。

後者は特に社会人の人材育成の面で重宝されてい

る。社会人の場合、会社としてもキャリアアップと

して考えており、帰国することを誓約させる会社が

ほとんどであるという。国内の優秀な人材の流失を

防ぐために奨学金制度等も充実させている。モンゴ

ルの物価が上がってきたために外国で働くことの

メリットが薄れてきているため、留学でキャリアア

ップした上で帰国し仕事に復帰する人が多くなっ

ている。 留学生獲得のためには、やはり言語(日本語)がネックになるため、英語での授業がポイントになるので

はないか、また 4 年間海外というのは学生にとっても負担が大きいため、上記であげたような2年+2年の

ようなプログラムや、ジョイントディグリー等のプログラムを拡充させることが重要になるのではないか、

とのことであった。

モンゴル科学生命大学国際課

モンゴルの国立大学は6つあるが、そのなかで唯一の農業大学である。世界的に農業はライフサイエンス

と表現されるようになっているため農業大学から名称が変更された。約1万人の学生と約1千人の研究者が

在席している。国内ではモンゴル唯一の農業大学として、農業省と密接に関係して活動している。 モンゴルの市場は小さいので卒業生の6割くらいが国内の農業関係に就職している。学生の7割くらいが

郊外出身だが、現状としてほとんどの卒業生はウランバートル市内で就職している。地方の開発が進んでい

ないため農業関係ではない仕事に就く卒業生も多い。学生のヨーロッパへの関心は高いが、遠く離れている

ことも有り、実際の留学先としては中国や日本が多い。

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大学職員の国際化としては、就職条件に大学の卒業証書以外

にも選抜試験で語学試験を課していたり、TOEIC 等の取得状況

を採用に考慮するなどしている。大学間異文化交流として山形

大学や中国の大学と夏期講習を共同実施したり、多国籍なスポ

ーツイベントを行ったりしている。イギリス、カナダ、ロシア

の大学と協定を結びジョイントディグリーを行っている。モン

ゴルで2年間語学等を学び海外の大学で2年学ぶことで2校の

学位を取得できる。 大学の会計職員はモンゴルの会計士資格をもっている人を採

用する方針であり、現在は14人の会計職員のうち、6人が会

計士の資格をもっている。その他の人員も資格取得のための研

修を行っている。人事異動において他業種にまたがる異動はな

い。モンゴルでは税金関係の取扱いが変更されることが多々あ

るため官報の情報収集に留意している。モンゴルの国家戦略と

して優秀な人材を増やすことを掲げているため、国からの予算

は年々増えている状況にある。また国の学術財団があり、現在は約70の事業を行っており、公募内容が科

学に特化していることも多々あることから科学生命大学が多くの事業を獲得している。共同研究は外部資金

の契約よりも共同ラボの設立等が主たるものとなっている。

モンゴル国立大学国際課

モンゴル国立大学はモンゴル初の国立大学であり、名古屋大学とも協定校として長い間交流している。濵

口前総長や城所先生がモンゴル国立大学の顧問となっている。その他海外の140校と協定を結んでおり、

多種多様な成長を目指している。国の学術財団の事業の20%を獲得している。 韓国、ベトナム、中国からの留学生が増えている。外国人教員は30名程おり、モンゴルの大学で1番多い。

研究インターンシップも多く実施しており、海外の研究者を夏の間に迎え入れている。モンゴル国立大学の

言語学の先生が海外セミナーを実施している。モンゴル国立大学では生物学分野で秀でており、生物学の研

究者の受入も多く行っている。他国の大学とのジョイントディグリーを取り入れようと検討しているが、語

学学習の環境整備等の課題が残っており、準備段階とのこと。立命館大学や韓国、ロシアの大学からオファ

ーされている。学生における国際交流も短期間のインターンシップや共同研究実習等が主たるもの。夏のイ

ンターンシップ等に日本の参加希望は多くあるが、夏休みの期間にずれがあるため、実施時期の摺合せで苦

労することがある。 これまで16の学部をもっていたが、専攻学群ごとに5つの学部にまとめて、研究機関として研究者の受入

をしやすくする狙いがあった(自然学や社会学等々)。モンゴルの教育省からの支援も厚く、学部再編に係る

予算等の措置があった。モンゴル科学技術大学との協力関係も深く、研究やその他事業において連携してい

る。

⑦ 研修により得られた成果

今回の研修によりサテライトキャンパスの状況と課題について知ることができました。農学部でもモンゴル

と同じく昨年カンボジアにサテライトキャンパスを設立しています。カンボジアキャンパスでは、法人格は取

得しているものの会計報告の必要はありませんが、やはりモンゴルの状況と同じく、現地雇用の制度が整って

おらず、謝金で対応しているという点や領収書を出してくれない業者等もあり苦慮しているという報告があり

ます。現地雇用については現在、事業推進課で対応してくださっていますが、日本では当たり前のように対応

可能なことであっても、海外ではそうではない、ということを身をもって実感することができる良い機会とな

りました。今後の対応においても上記の事項を頭に入れたうえで、できる限り柔軟に対応したいと思います。

加えて、自分の英語力について実感する良い機会になりました。今回はモンゴル語ということで英語での準

備をしていませんでしたが、実際にお会いすると英語を話せる方もお見えになり、その場ですぐに英語に切り

替えられるくらいの英語力があれば・・・と思う場面が何回かありました。旅行で使う程度の英語には問題な

いと思っていましたが、やはり仕事上で使うにはまだまだ能力不足であると実感し、帰国後の英語学習のモチ

ベーションになっています。

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⑧ 本学への提言

◎職員のサテライトキャンパス/海外事務所派遣

今回は6日間の研修でしたが、3ヵ月、6ヵ月、1年といったような期間で職員をサテライトキャンパスに派

遣する制度はどうでしょうか。異文化の中に身を置き、国際業務に関わることで職員の経験としても、またサ

テライトキャンパス/海外事務所との橋渡しとしても、本学として得るものが多いのではないかと考えます。

◎サテライトキャンパス/海外事務所での特別ルールの作成

現在はサテライトキャンパス・海外事務所でも名古屋大学規程を適用した形でさまざまなことを進めています

が、日本での規程をそのまま当てはめて行うことが難しい事例が多々あります。簡単にできることではないこ

とは十分承知していますが、今後の海外展開も考慮し、国別の事情を踏まえた特別ルールの作成などを検討す

る必要があると考えます。

⑨ 感想

旅行でもそうですが、自分には縁がないと思っていた土地や国も、一度足を踏み入れる機会があると、その

後はニュースなどで名前を聞くと気になってしまうということがあると思います。今回もまさにその通りで、

モンゴルという国について、今回の研修で行くことが決まるまで全く何も知らず、遠く離れたところにあるゲ

ルと草原の国、というイメージだけを持っていました。しかし、実際に研修を終えてからは、モンゴルという

単語を目にするとなにがあったのか気になり、カンボジアキャンパスの対応をしているとモンゴルキャンパス

ではどうだろうか、と考えが及びます。短期間の海外研修の意義はこういったところにあるのではないかと感

じており、サテライトキャンパスを展開している今、職員が本学の国際化を身をもって体感することができる

機会として今後もなんらかの形で続いていくことを願っています。

今回の研修では、比較的時間に余裕のあるスケジュールを組んで頂いており、参加者同士で交流を深めること

もでき、体調が悪くなる者もおらず全員無事に帰国できました。

反省として、事前に参加者で打合せをできなかった点をあげたいと思います。事前に質問内容の摺り合わせや

情報共有をしておけばより良い研修になったのではないかと思います。また、モンゴル語であること、通訳を

してくださる方がいる、とのことで質問を英語にするなどの準備をしていませんでしたが、対応してくださる

方が英語を話せる場合も多々有り、語学力向上のためにも事前に準備しておけば良かったと反省しました。

最後になりますが、このような機会を与えてくださったことに感謝しております。訪問先との調整や訪問時の

通訳、ドライバーや食事の手配などすべてにおいてお世話になりましたモンゴル事務所・サテライトキャンパ

スの方々、研修の実施にあたり多々支援いただきました事業推進課の方々、出張中対応頂いた農学部の方々、

今回の研修に関係するすべての方に感謝申し上げます。