平成27年度家畜尰田鍜尿処理剜⥵尨研究会資料 | 畜屵⍳﹘㐰欰...

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畜産現場における悪臭問題と対策技術 (一財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所 道宗 直昭 畜産経営に起因する苦情発生割合において悪臭関連は約 6 割を占めており、臭気対策は 畜産環境問題の1つとして解決しなければならない喫緊の課題となっている。畜産におけ る臭気対策の難しさは、臭気の発生源が面として広く、臭気を捕集しにくいこと、複合臭 であるため性質の異なる臭気物質に対応できる技術が求められること、発生源によっては 小風量であっても高濃度臭気であったり、低濃度でも大風量であったり、濃度と風量が発 生源により大きく異なることなどが挙げられる。また、「におい」は人の嗅覚によって判 断され、私たちが感じる臭いの強さは、気濃度の対数に比例する(Weber Fechner の法 則)、言い換えれば臭気低減対策からみると臭気濃度を 9 割減らしてはじめて半分に減っ たと感じる程度であり、実際に「臭わなくなった」と感じるにはほとんど臭気を除去しな いと無くなったと感じない点である。さらに臭気対策にかかる費用は、畜産物の生産には 寄与せず、逆に費用がかかれば経営負担となってしまうため臭気対策は後手に回ってしま うことが多い。畜産経営にとって避けることの出来ない臭気問題にどのように取り組んで いけばよいか考えてみたい。 畜産施設で発生する臭気のうち、悪臭防止法では主にアンモニア、トリメチルアミン、 硫黄化合物(4 物質)、低級脂肪酸(4 物質)が特定悪臭物質として規制対象となっている。 トリメチルアミン、硫黄化合物、低級脂肪酸は空気中にわずかに含まれていても私たちの 嗅覚では「くさい」と感じてしまう物質である。 畜産施設における臭気の発生源は、「畜舎周辺」と「堆肥化や乾燥処理施設などのふん 尿処理施設」とに分けられる。畜舎内で発生する臭気は、換気として濃度は低いが大風量 の空気すなわち低濃度・大風量型の臭気として外へ排気される。臭気の質は嫌気状態で発 生する硫黄化合物や低級脂肪酸を中心とした臭気が多い。この種の臭気は、現在の私たち の日常生活環境ではほとんど感じることがないため、わずかな臭気でも異臭と感じやすい 臭いである。一方、堆肥化施設などのふん尿処理施設から発生する臭気は、臭気濃度は高 いが、比較的少風量の臭気を対象としている。堆肥化が適正に行われている施設では、ア ンモニアが主となる臭気が発生し、堆肥化方法や施設、畜種、ふん尿の性状により発生す る濃度は大きく異なる。その濃度は数十~数千 ppm の高濃度で発生することがあり、高 濃度のため臭気対策が必要となるような施設では何らかの脱臭装置を導入している。家畜 ふんの堆肥化は好気性微生物による有機物分解であるが、堆肥化時に堆肥材料への通気不 足などによって脱臭材料が嫌気状態になると、硫黄化合物や低級脂肪酸を含む臭気が発生 するために苦情となる場合もあり、適正な管理が求められる。 67

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畜産現場における悪臭問題と対策技術

(一財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所

道宗 直昭

はじめに

畜産経営に起因する苦情発生割合において悪臭関連は約 6割を占めており、臭気対策は

畜産環境問題の1つとして解決しなければならない喫緊の課題となっている。畜産におけ

る臭気対策の難しさは、臭気の発生源が面として広く、臭気を捕集しにくいこと、複合臭

であるため性質の異なる臭気物質に対応できる技術が求められること、発生源によっては

小風量であっても高濃度臭気であったり、低濃度でも大風量であったり、濃度と風量が発

生源により大きく異なることなどが挙げられる。また、「におい」は人の嗅覚によって判

断され、私たちが感じる臭いの強さは、気濃度の対数に比例する(Weber - Fechner の法

則)、言い換えれば臭気低減対策からみると臭気濃度を 9 割減らしてはじめて半分に減っ

たと感じる程度であり、実際に「臭わなくなった」と感じるにはほとんど臭気を除去しな

いと無くなったと感じない点である。さらに臭気対策にかかる費用は、畜産物の生産には

寄与せず、逆に費用がかかれば経営負担となってしまうため臭気対策は後手に回ってしま

うことが多い。畜産経営にとって避けることの出来ない臭気問題にどのように取り組んで

いけばよいか考えてみたい。

畜産における臭気の特徴

畜産施設で発生する臭気のうち、悪臭防止法では主にアンモニア、トリメチルアミン、

硫黄化合物(4 物質)、低級脂肪酸(4 物質)が特定悪臭物質として規制対象となっている。

トリメチルアミン、硫黄化合物、低級脂肪酸は空気中にわずかに含まれていても私たちの

嗅覚では「くさい」と感じてしまう物質である。

畜産施設における臭気の発生源は、「畜舎周辺」と「堆肥化や乾燥処理施設などのふん

尿処理施設」とに分けられる。畜舎内で発生する臭気は、換気として濃度は低いが大風量

の空気すなわち低濃度・大風量型の臭気として外へ排気される。臭気の質は嫌気状態で発

生する硫黄化合物や低級脂肪酸を中心とした臭気が多い。この種の臭気は、現在の私たち

の日常生活環境ではほとんど感じることがないため、わずかな臭気でも異臭と感じやすい

臭いである。一方、堆肥化施設などのふん尿処理施設から発生する臭気は、臭気濃度は高

いが、比較的少風量の臭気を対象としている。堆肥化が適正に行われている施設では、ア

ンモニアが主となる臭気が発生し、堆肥化方法や施設、畜種、ふん尿の性状により発生す

る濃度は大きく異なる。その濃度は数十~数千 ppm の高濃度で発生することがあり、高

濃度のため臭気対策が必要となるような施設では何らかの脱臭装置を導入している。家畜

ふんの堆肥化は好気性微生物による有機物分解であるが、堆肥化時に堆肥材料への通気不

足などによって脱臭材料が嫌気状態になると、硫黄化合物や低級脂肪酸を含む臭気が発生

するために苦情となる場合もあり、適正な管理が求められる。

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臭気対策技術

悪臭防止法が施行されてから、我が国ではふん尿処理施設から発生する臭気を主に、脱

臭技術が開発されてきた。微生物を利用した生物脱臭法による脱臭装置は、苦情対策とし

て有効な技術であるが、施設費がかかることから共同利用型の堆肥センターや苦情対応の

必要なところで導入されている。今後は機能を満たしつつさらに施設費の安価な脱臭技術

の開発が求められる。一方、畜舎換気の臭気は、畜産農家を取り巻く環境の変化から近年

苦情の対象となりつつあり、畜舎換気のような低濃度、大風量型の臭気対策が必要となっ

ている。欧米では、豚舎や鶏舎はウィンドレスが多く、近年、臭気対策が必要となって来

つつある中で技術開発が進み導入されてきており、我が国にもその技術が一部入りつつあ

る。しかし、開放型畜舎の多い我が国では欧米の技術をそのまま使うことができないため、

開放型畜舎に適した脱臭技術の開発が急務となっている。

臭気対策の基本は、臭気の発生源を特定し、臭気が発生しないようあるいは外へ漏れな

いよう対策を講じることである。畜舎の場合では、畜舎の清掃を励行し、畜舎内にふん尿

を残さないよう除ふんを行い、畜舎床面の通風・換気の励行、敷料による湿潤状態の解消

と臭気成分の吸着等を心がけるとともに、家畜を健康に飼育することである。また、畜舎

内の粉じんに付着した臭気物質が換気とともに畜舎外へ排出されるので粉じんの発生抑制

も気を付けたい。臭気の抑制対策として、いろいろな機能もった資材を飼料に添加したり、

畜舎に散布したりして臭気の発生抑制を試みているが、再現性がはっきりしないこともあ

り今後、臭気発生の抑制効果の高い安定した資材の開発が望まれる。

最近の臭気対策事例では、ウィンドレス豚舎において換気口側に畜舎に併設あるいは壁

一体型にしてハニカム構造のフィルター(バイオフィルター)を設置し、上部より少量の

循環水をかけながら湿潤状態にし、豚舎内の粉じんと臭気を含んだ換気空気をこのフィル

ターに通して脱臭している例がある。フィルターの通気抵抗は小さく、畜舎用の換気扇が

使用できるため、新たな送風機の設置の必要はなく、アンモニアだけでなく低級脂肪酸も

脱臭できる。養豚、養鶏農家の家畜ふんの堆肥化に多く使われている密閉縦型堆肥化装置

の排気は排気口からまとまって出るため捕集はし易いが、高濃度のアンモニアガスを主体

として臭気が排出される。この臭気を粒状化したロックウールに有機物資材を加えて脱臭

資材とした脱臭層に送り約 1/10 まで低減できる脱臭装置が開発された。不快臭が少なく

なり、敷地境界から離して設置し、拡散効果も活かすことによって苦情を低減している。

畜舎のウィンドレス化が進む中で、依然として開放型畜舎の多い我が国の畜産に適した

臭気対策に取り組むことが急務であり、畜産環境技術研究所では、畜舎内のダスト低減、

バイオフィルター、臭気対策に効果のある(微生物)資材の探索、臭気の拡散効果を狙っ

た遮へい壁の設置等の技術開発を行いつつ、わが国の気象条件や飼養管理方法等に適した

日本型の悪臭防止最適管理手法(BMP)の策定に向けた技術開発事業に取り組んでいる。

この事業では、技術開発とともに効果のある脱臭技術事例があれば紹介し、臭気対策に苦

慮している畜産農家の一助になればと考えている。

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(一財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所研究統括監 道宗直昭

畜産現場における悪臭問題と対策技術

悪臭防止法 第一条

法律の目的

この法律は、工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出を規制することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。

(→苦情処理対策が目的、規制基準ありき

臭気対策の必要性(環境に係わる法律)

ではない)

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畜産の臭気対策の課題

畜産農家の大規模化、専業化→畜産農家の減少、山間部へ移動

農村部の混住化→住宅が近接、生活になじみのない臭い、

〇臭気は人の嗅覚(官能)による、苦情は感情論になりやすい。

→対応が遅れると思わぬところへ発展、侮りは禁物

〇畜産の臭気は複合臭(臭気の性質が異なる)である。拡散しにくい。

→対策が難しい

環境の変化

臭気対策の難しさ(1)

生活水準の向上、

臭気対策の難しさ(2)

○嗅覚による量的評価:臭気強度、臭気濃度

Weber-Fechnerの法則I=k log C+a

I:臭気強度、C:物質濃度、 k、a:定数

→9割減少させて感覚的に半分に減少したと感じる

〇臭気防止対策はコストがかかる。

→生産性に結びつかない、投資が出来ない、やればやるほど出費がかさむ

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脱臭装置の導入→脱臭効果と持続性、低コストが不可欠

しかし、

○やらねば経営できなくなることがある。

○遅れると取り返しがつかなくなる。

〇精神的負担も大きい。

○早期に手を打つ。安全対策と同じ。(転ばぬ先の杖)

臭気対策技術に求められること

畜産に由来する物質 10種類

(発生源によって臭気物質が異なる)

・アンモニア

・イオウ化合物 4種類

・トリメチルアミン

・低級脂肪酸 4種類

悪臭物質

悪臭防止法で規制 22物質

悪臭の測定法

○機器測定法

○嗅覚測定法 臭気指数による規制(平成7年9月~)複合臭への対応(三点比較式臭袋法による)

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臭気強度と臭気指数の関係

[臭気指数=log(臭気濃度)×10]

臭気強度 内 容 [臭気指数の範囲]

0 無臭

1 やっと感知できるにおい(検知閾値)

2 何のにおいかがわかる弱いにおい(認識閾値)

2.5 [10 ~ 15]

3 らくに感知できるにおい [12 ~ 18]

3.5 [14 ~ 21]

4 強いにおい

5 強烈なにおい

臭 気 排 出 強 度(OER)

臭気排出強度(OER)

=排気量(m3/分)×臭気濃度(倍)

[例えば]排気量(m3/分)=4,000 (m3/分)臭気濃度(希釈倍数)=200

OER= 4,000×200 =8.0E+05

[留意点]OERが10の5~6乗を越えると苦情になりやすい。

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畜産における臭気の発生源

→ まずは臭気対策が必要

畜舎:低濃度・大風量 ふん尿処理施設:高濃度・小風量

臭気発生源における臭気の特徴・考え方

発生源から臭気を発生させないようにする

・畜舎等の清掃・飼養管理

・家畜の健康管理

・新鮮ふん尿の早期分離と搬出

・敷料による水分や臭気成分の吸着

・畜舎の通風・換気の励行

臭気発生防止策の基本

畜舎における臭気発生の防止と抑止策

臭気の発生源の特定

お金をかけずに臭気対策をしたいが・・・・・

(低濃度・大風量)

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○敷料の利用

〇清掃が悪いと臭う

○家畜の健康管理○ふん尿は早期に搬出 ○畜舎の清掃管理○通気換気の励行

○臭気は拡散しにくい○数㎞先まで団塊状で移動

豚舎内は粉じんが多い

脱臭装置を通過したあとの換気扇の汚れ

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管理がよければ臭気は少ない(桜本養豚場)

敷料に裁断したワラを使用

敷料に裁断した古紙を使用

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水張り豚舎

豚が汚れていない

豚舎の臭気が少ない

水張り豚舎(2)

排水マス

排水溝

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樹木(ヒバとツバキ)による除塵と景観

循環槽1 循環槽2

清 水

廃水処理施設へオーバーフロー

循環水 循環水

臭気(アンモニア等)

粉じん

Filter 1

粉じん

アンモニア

Filter2

その他の臭い

残った

アンモニア

換気扇

提供:

豚 舎 内

ハニカム構造体

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ハニカム構造

ウィンドレス豚舎換気の脱臭

ウィンドレス豚舎の脱臭(ロッセ農場)

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畜舎換気の臭気対策の問題点と今後の対策

○開放畜舎(日本型畜舎)の臭気対策への取り組み

○低コストな臭気対策技術が必要、されど持続性は不可欠

○周辺環境状況の把握と臭気対策

○畜舎周辺の地形、気象条件の把握と適切な対応(より広く)

○産学官の一体的な取り組みが必要(畜産の危機)

堆肥化施設等の臭気対策

○堆肥化装置でも臭いの少ない施設がある。

○堆肥化の原理を知ろう。

○堆肥化の過程で臭気の発生が違う。

(高濃度・少風量)

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たい肥化とは、好気性の微生物で易分解性の有機物を分解し安定化を図ることである

たい肥化とは

たい肥材料に如何にして空気(酸素)をうまく供給することができるか→副資材の活用 水分調整ではない

たい肥化を促進させるには

たい肥化の条件は(1)十分な栄養源→新鮮なふん(2) 適当な水分 →乾きすぎない(55~72%)(3) 十分な酸素 →通気の確保

通気量 50~100L/min/m3

(4) 適当な温度 →0℃を下回らない

通気用送風機

所要馬力=

静圧(mmH2O)×送風量(m3/秒)

75×静圧効率(0.4~0.6)

換気扇(軸流ファン)ではなく遠心ファンを使う

(曲部を少なく、管を太くし管路内風速を上げない)

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通気型堆肥舎内部

切返し作業

通気中

発酵槽を密閉化し、内部を換気して脱臭装置へ送る(西脇市)

換気口は吸気口の反対側、

換気量は換気容積の8~10倍/時 + 通気量

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・水洗法

・燃焼法

・吸着法

・薬液処理法

・生物脱臭法

土壌脱臭法、ロックウール脱臭法など

・空気希釈法

・マスキング法:畜産では少ない

・オゾン脱臭法

各種の脱臭技術

チップ使用の水洗法

桜本養豚場

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木質チップを使った脱臭装置

ほとんど脱臭されていない

(出典:畜産草地研究所研究成果情報)

吸引通気方式の堆肥化と薬液脱臭装置

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土壌脱臭装置の土壌槽断面500

450

50

黒ボク土

主風道(ヒューム管φ500)

砕石

栗石

寒冷紗

支風道(暗きょ用多孔管 φ100)

自然流下式牛舎の貯留槽脱臭

土壌脱臭装置

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通気型堆肥舎とロックウール脱臭装置

通気型堆肥舎

発酵材料

換気室

無臭空気

ロックウール脱臭装置

ホイールローダ

換気用送風機

通気用送風機

ロックウール脱臭材料

緊プロ型ロックウール脱臭装置 (畜産草地研究所(つくば))

臭気が漏れないようにカーテンで密閉

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留萌生ゴミ堆肥化処理装置のロックウール脱臭装置

留萌市美サイクル館堆肥化装置のRW脱臭装置の臭気測定

測定日 平成14年3月19日 平成15年3月20日

測定位置 脱臭槽入口 脱臭槽出口 脱臭槽入口 脱臭槽出口

アンモニア 97 5.4 190 1.5

メチルメルカプタン 0.071 0.0010 0.035 0.0002

硫化水素 0.0016 0.0008 0.031 0.0004

硫化メチル 0.034 0.0091 0.037 0.0002

二硫化メチル 0.032 0.0023 0.025 0.0001

トリメチルアミン 2.2 0.027 3.9 0.0001

プロピオン酸 0.28 0.0059 0.0034 <0.0001

ノルマル酪酸 0.25 0.0005 0.011 <0.0001

ノルマル吉草酸 0.0048 <0.0001 <0.0005 <0.0001

イソ吉草酸 0.29 0.0007 0.017 <0.0001

臭気濃度 31000 310 98000 74

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(密閉縦型堆肥化装置の臭気(アンモニア)を1/10程度の脱臭、苦情低減となる)

ファイバーボール(生物脱臭法)を使った脱臭装置

BMP(最適管理手法)活用畜産悪臭苦情軽減技術開発普及事業

(JRA畜産振興事業)

ねらい

わが国独自の気象条件等を踏まえた日本型の悪臭防止のBMP(最適管理手法)を策定・普及し、悪臭問題の解決を図り、我が国の畜産振興に資する。

畜舎等の臭気の発生抑制及び効果的捕捉技術開発事業

1)畜舎内のダスト低減技術開発2)バイオフィルター技術開発

3)畜舎及び堆肥化施設臭気の発生抑制に効果的な微生物資材の効果判定4)畜舎周辺の臭気拡散防止技術の開発

日本型悪臭防止最適管理手法(BMP)の策定・普及事業

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ご静聴ありがとうございました。

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本資料より転載・複製する場合は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の許

可を得てください。 畜産草地研究所 平 27-3 資料 平成 27 年度家畜ふん尿処理利用研究会資料

編集・発行 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 企画管理部業務推進室 Tel.029-838-8290、 Fax.029-838-8606 〒305-0901 茨城県つくば市池の台2 発行日 平成 27 年 11 月 5 日 印刷所 松枝印刷株式会社