「こうのとりのゆりかご」ＳＯＳ相談から見える課題

医療法人聖粒会 慈恵病院

相談役 田尻由貴子

科学的知識研究的態度

看護行動能力

社会人としての生活能力

患者さんへの思い

人間を愛する 人間を尊重する

人間愛

１８９８年（明治３１年） 一般患者のための施療院 設立

１９５２年（昭和２７年） 聖母琵琶崎慈恵病院 設立

１９７８年（昭和５３年） 医療法人聖粒会 慈恵病院 設立

慈恵病院 概況

診 療 科 目 産婦人科・小児科・外科・内科・麻酔科

病 床 数 一般病床９８床（産婦人科６０床・一般３８床）

入院基本料 一般入院基本料 １０対１

分 娩 件 数 １４２９件（平成２５年度）

こうのとりのゆりかご

ゆりかごの扉の横に

ナースステーションへつながるインターホンと、

慈恵病院、熊本市、熊本県の相談窓口を明記した看板を設置し

預ける前に相談されるよう

呼びかけている

設置に至るまでの時系列

Ｈ１８．１１月 「こうのとりのゆりかご」設置構想発表

Ｈ１８．１２月 設置許可申請書を熊本市に提出

Ｈ１９． ２月熊本市より「こうのとりのゆりかご」についての照会状により見解を求められる

Ｈ１９． ３月 当院より熊本市に対し、「見解書」を提出

Ｈ１９． ４月 熊本市より「設置許可証」が発行される

「こうのとりのゆりかご」工事開始

Ｈ１９． ５月 「こうのとりのゆりかご」運用開始

熊本市よりの「設置」に対しての留意事項

１．子どもの安全確保

２．相談機能強化

３．公的相談機関との連携

Ｈ26年5月22日 熊本市検証委員会公表平成19～H25年度（Ｈ19年5月10日～H26年3月31日）

合計 101件

こうのとりのゆりかご 利用件数

件 数

父母等の居住地

熊本県外92％

ゆりかごを利用した理由（複数回答）

ＳＯＳ電話相談窓口

『ＳＯＳ赤ちゃんとお母さんの相談窓口』

24時間体制で、相談員がさまざまな相談をお受けする

電話相談窓口

● 相談体制 ： 24時間365日、フリーダイヤル電話相談・来院相談

● 相 談 員 ： 助産師、看護師、保健師、社会福祉士等の有資格者

自分で育てる 特別養子縁組

家庭で育つことの大切さ

ＳＯＳ電話相談窓口 相談件数

新規相談件数

地 域 別

県外７３％

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

（不明282名除く）

手 段

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

時間帯

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

相談者別

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

情報源別

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

（不明593名除く）

年 齢 別

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

当事者情報

（不明809名除く）

婚姻の有無

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

当事者情報

（不明598名除く）

職 業 別

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

当事者情報

（不明1573名除く）

←中学生 64人

高校生 315人

大学生 376人

処理状況

慈恵病院

熊本市

熊本県

※H19～H24年度（H19.4.1～H25.3.31） ※慈恵病院のみ～H25年度

相談内容（大分類）

慈恵病院

熊本市

熊本県

※H19～H24年度（H19.4.1～H25.3.31） ※慈恵病院のみ～H25年度

思いがけない妊娠の内訳（慈恵病院）

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

全国から深刻な相談が寄せられています

深刻な相談1194件〔 23％ 〕

初回相談で 『ゆりかごに預けたい』 『養子に出したい』と言われた方＝

523名※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

いのちが救われた事例

※H19～H25年度（H19.4.1～H26.3.31）

妊娠・養育かっとう相談 ２２５２件 ４３％

● 相談総数 5212件 （H19～H25年度）

● 結果

自分で育てる 276件 12％

特別養子縁組 204件 9％

乳児院一時保護 37件 2％

計 517件 23％

（初回相談発言）

・預けたい 298件 13%

・育てられない 719件 32%

・養子に出したい 221件 10%

相談者背景の傾向 〔地域別〕

自分で育てる 養子縁組 乳児院

● 初回相談で「育てられない」と言われた方でも、顔の見える面談を重ねる

ことができる人ほど、「自分で育てたい」と気持ちの変化あり

相談者背景の傾向 〔婚姻状況〕

自分で育てる 養子縁組 乳児院

緊急対応が必要な相談内容

● 傾向としては、10代に「出産前」の相談が多く

20代以降は「出生後」の相談が多く見られた

●このような相談内容について、

公的機関に相談しているものは尐なかった

※「緊急対応」の定義

相談で終わるのではなく、

次のアクションが必要と思われるもの

事前相談 こそが

こうのとりのゆりかごの本来の目的

事例紹介

事例紹介

事例紹介

傾聴する

共感する

親身になる

寄り添う

責めない

相談を受ける時に大切にしていること

生母への支援

１．妊 娠 期

● 出産まで妊婦健診毎に面談

● 安産教室への参加（ソフロロジー法）

● エンゼルクラスへの参加（母親教室分娩の項目）

● 入院の準備（時期・物品）

２．分 娩 期

● 分娩時、相談員が立会う

３．産 褥 期

● 心のケア （傾聴・お御堂含む散策）

● 書類作成 （出生届・特別養子縁組承諾書）

● 退院指導 ① 産後の身体の変化

② 性教育（ＳＴＤ・家族計画）

● 退院時の配慮

● 退院後の電話相談

● 産後１ヶ月健診 （遠隔地も受診される）

● 自立支援

１．来 院 時● オリエンテーション（病院、病棟（分娩室・新生児室）案内）

２．分 娩 時● 分娩擬似体験

分娩時は分娩室前や空き分娩室で待機してもらい、

産声を聞いてもらう。出生直後の児のケアを見ていただく。

その後新生児室入室前に抱っこをしてもらう。

養親への支援

３．育児の実際 （児の入院中（5日間））

● 面会し抱っこ・母児同室指導

● 沐浴指導（個別・集団）見学・実施をする

● 育児指導（個別・集団）

● 調乳指導

● 育児ビデオ視聴

● 退院時の配慮

● その後も電話相談等によるフォロー

① 性意識の低化

② 性行為の低年齢化

③ 若年層の性感染症の増加

④ 若年層の人工妊娠中絶の増加

⑤ 自己責任の欠如

⑥ 児童虐待相談件数の急増

⑦ 青尐年犯罪の急増

⑧ 社会的育児支援の貧困

⑨ 家族のきずなの薄弱

こうのとりのゆりかご・相談業務を通して見える社会的課題

政 策 提 言

緊急対応するための法整備

相談システムの

全国化・ネットワーク化

相談システムの財政的支援