23 T2prep pulse 併用 TRANCE のDRIVE...

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23 T2prep pulse 併用 TRANCE の DRIVE による有用性 倉敷中央病院放射線センター 中河 賢一 【背景】下肢動脈の非造影 MRA 検査で,心周期 2 時相によるサブトラクション法 (従来法) が困 難な場合や,撮像時間の短縮を余儀なくされる際, T2 値の差を利用して動脈優位な拡張期画像が得 られる T2prep pulse併用TRANCEを使用している. T2prep pulse 併用 TRANCE は,信号強度の差を利 用し,Workstation を用いることで動静脈分離が 可能であるため,収縮期画像を用いる必要がない. また,現行でリリースされている装置では, T2prep pulse と DRIVE の併用が可能であり,さら なる撮像時間の短縮も期待される. 【目的】T2prep pulse 併用 TRANCE に DRIVE を用 いた場合の画質の変化と,TR の違いが画質に与え る影響について検討を行ったので報告する. 【方法】PHILIPS 社製 Achieva 1.5T(R2.6)を使 用し,検討項目として,(1)自作ファントム (T2 値の異なる静脈血) に対する DRIVE の有無と各 TR (800~3000ms)での SNR, CNR.(2)同意を得られた 健常ボランティアに対し,同じ撮像時間で,TR (1~3beat) と加算回数を可変させた場合の,動静 脈,筋肉の SNR, CNRについて検討を行った.【結 果】(1)TR が増加するに従い SNR と CNR は上昇し たが,SNR は TR2000ms 付近から増加率が低下し, CNR は TR2000ms 付近から減少した(Fig. 1,2). (2) 静脈,筋肉の TR による SNR の変化はあまり見ら れなかったが,動脈の SNR は 2beat が最大となっ た.また,CNR 2beat で最大となった(Fig. 3). 【考察】今回使用したファントムの T1 値は約 1100ms であり,T1 緩和の理論式である 1-e -TR/T1 に代入すると,TR2000ms 付近で信号強度の増加率 が低下する.したがって,SNRの増加率の低下と, CNR の減少の要因だと考えた.また健常ボランテ ィアによる検討では上記の要因に加え,心拍のば らつきにより,長い R-R 間隔ほどデータ収集タイ ミングのズレが顕著となり,動脈の信号低下の要 因となったと考えられる.【結語】T2prep pulse 併用 TRANCE に DRIVE を付加し,最適な TR に設定 することで,撮像時間と画質の両者において効率 の良い検査が可能となった. Fig. 1 自作ファントムによる TR SNR の関係 Fig. 2 自作ファントムによる TR CNR の関係 Fig. 3 ボランティアによる TR SNRCNR の関係 中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表 84

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23 T2prep pulse併用 TRANCEの DRIVEによる有用性

倉敷中央病院放射線センター

中河 賢一

【背景】下肢動脈の非造影 MRA検査で,心周期 2

時相によるサブトラクション法 (従来法) が困

難な場合や,撮像時間の短縮を余儀なくされる際,

T2値の差を利用して動脈優位な拡張期画像が得

られる T2prep pulse併用 TRANCEを使用している.

T2prep pulse併用 TRANCEは,信号強度の差を利

用し,Workstationを用いることで動静脈分離が

可能であるため,収縮期画像を用いる必要がない.

また,現行でリリースされている装置では,

T2prep pulseと DRIVEの併用が可能であり,さら

なる撮像時間の短縮も期待される.

【目的】T2prep pulse併用 TRANCEに DRIVEを用

いた場合の画質の変化と,TR の違いが画質に与え

る影響について検討を行ったので報告する.

【方法】PHILIPS社製 Achieva 1.5T(R2.6)を使

用し,検討項目として,(1)自作ファントム (T2

値の異なる静脈血) に対するDRIVEの有無と各TR

(800~3000ms)での SNR, CNR.(2)同意を得られた

健常ボランティアに対し,同じ撮像時間で,TR

(1~3beat) と加算回数を可変させた場合の,動静

脈,筋肉の SNR, CNRについて検討を行った.【結

果】(1)TRが増加するに従い SNRと CNRは上昇し

たが,SNRは TR2000ms付近から増加率が低下し,

CNRは TR2000ms付近から減少した(Fig. 1,2).(2)

静脈,筋肉の TRによる SNRの変化はあまり見ら

れなかったが,動脈の SNRは 2beatが最大となっ

た.また,CNRも 2beatで最大となった(Fig. 3).

【考察】今回使用したファントムの T1値は約

1100msであり,T1緩和の理論式である 1-e-TR/T1

に代入すると,TR2000ms付近で信号強度の増加率

が低下する.したがって,SNRの増加率の低下と,

CNRの減少の要因だと考えた.また健常ボランテ

ィアによる検討では上記の要因に加え,心拍のば

らつきにより,長い R-R間隔ほどデータ収集タイ

ミングのズレが顕著となり,動脈の信号低下の要

因となったと考えられる.【結語】T2prep pulse

併用 TRANCEに DRIVEを付加し,最適な TRに設定

することで,撮像時間と画質の両者において効率

の良い検査が可能となった.

Fig. 1 自作ファントムによる TR と SNR の関係

Fig. 2 自作ファントムによる TR と CNR の関係

Fig. 3 ボランティアによる TR と SNR,CNR の関係

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024 T2 prep pulseを併用した3D-TSEによる一回撮影での鎖骨下動脈描出の試み

倉敷中央病院 放射線センター

佐藤 大輔

【目的】

第 37 回日本放射線技術学会秋季学術大会

において、われわれは、TRANCEを用いた心

周期 2 時相の差分による鎖骨下動脈の描出

について報告した。しかしながら、撮影時

間の延長や、体動によるミスレジストレー

ションによって十分に動脈を描出できない

経験をした。そこで今回、動脈と静脈の T2

値の違いに着目し、3D-TSE に T2 prep pulse

を併用することで、一回撮影での鎖骨下動

脈描出を試みたので報告する。

【使用機器】

Phillips Achieva 1.5T (R2.6),Q- Head coil SENSE

Cardiac coil,Zio station(work station)

【方法】

(1)本研究において十分に説明し、同意を得

られた健常ボランティアに対して、

refocusing pulsesを 2回と 4回、prep TE

を 20~140ms、20ms ごとに変化させて撮影

を行い、動脈と静脈の信号をもとに最適な

refocusing pulses と prep TE の検討を行

った。

(2)脂肪抑制は磁場の不均一を考慮して、

STIRを用いた。TR500~3000ms、100msごと

に脂肪の信号が Null となる TI delay を求

めた。ファントムは、38℃に保温したオリ

ーブオイルと蒸留水を用いた。

(3)臨床の検査で撮影を行った。

【結果】

(1) refocusing pulses4回、prep TEを 100ms

にすることで、動脈有意なコントラストが

得られた。

(2) TRが増加するにつれ、TI delayも増加

した。そして、TRが 1700ms以降、Null point

が一定となった。TR800ms のとき TI delay

が 50ms となり機器の最短 TI delay と同じ

となったため TR800ms以下は Null pointの

計測ができなかった。

(3)撮影した画像は、静脈の信号が低下して

動静脈のコントラストが向上した。この為、

WS上で静脈を消去可能であった。また、脂

肪の信号も低下した。パラレル MIP で観察

すると動脈優位に血管の走行を確認するこ

とができた、

【結語】

一回撮影での T2prepを併用した 3D-TSEは、

ミスレジストレーションを考慮することな

く、短時間での撮影が可能であり、長時間

静止困難な方の撮影に有効であった。

Fig.1The pararell MIP of 8mm in slice thickness.

Fig.2 MIP image using workstation

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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【 結 果 ① 同期の種類】

16.47868

16.47868

MIP画像

同期無し 同期有り 脈 波

【 結 果 ② 脂肪抑制方法】

MIP画像

Fat Sat STIR (TI =160ms) W E ( 1-2-1 )

2 1 . 4 52 3 . 8 52 . 4 9A / F

1 3 . 1 41 6 . 4 81 0 . 9 0A / VCNR

2 5 . 1 91 6 . 4 22 3 . 8 5A / F

1 7 . 6 11 8 . 8 21 6 . 4 8A / VCNR

【 結 果 ③ Presaturation pulse厚の効果】

MIP画像

MIP画像

【 結 果 ④ F A】

3 0 6 0 9 0

1 0 1 0 0 2 0 0

1 8 . 2 02 3 . 8 52 7 . 3 6A / F

1 3 . 4 11 6 . 4 81 3 . 2 0A / VCNR

2 3 . 8 51 9 . 3 71 2 . 4 6A / F

1 6 . 4 81 3 . 7 78 . 0 0A / VCNR

25 当院での非造影下肢 MRA の現状

高知赤十字病院 第1放射線課 川﨑 幸治

【目 的】

当院では、2011年9月にMRI装置が更新とな

った。それに伴い、非造影下肢 MRA において、

心電同期2D BASG(Balanced SARGE)を使用

している。今回、このシ-ケンスの至適撮像条件

を把握するため、各撮像パラメ-タを変更し、下

肢動脈の描出について検討したので報告する。

【使用装置】

MRI装置:ECHERON Vega(日立社製)

画像解析ソフト:Image J

【基本撮像条件】

TR/TE:4.4/2.2、FA:90°、脂肪抑制法:Fa

tSAT、Matrix:224×276、NSA:1、FOV:40

0mm、R-FOV:70%、Slice:50枚、Slice厚:

5mm、BW:110kHz、Coil:TRBody、Scanplane:

AXI 、 Echo Allocation : Centric 、 Scan time :

2min30sec

【方 法】

健常ボランティア10名の大腿部を、下記のパラ

メ-タを変更し、撮像した。

①同期タイプ(心電図の有無,脈波)

②脂肪抑制方法(FatSAT,STIR,WE)

③Presaturation pulse厚の効果(10,100,

200mm)

④FA(30°,60°,90°)

【検討項目】

元画像から動脈・静脈・筋肉・脂肪の各信号強

度、空気の標準偏差を Image J で計測し、下記の

式より比較検討した。

①CNR (A / V or F) = S I A - S I V or F /S D

air

②相対比 = 各 S I A , CNR(A/VorF)/基本撮像

条件の S I A , CNR(A/VorF)

S I A:動脈の信号強度,S I V:静脈の信号度,

S I F:脂肪の信号強度,S D air:空気の標準偏

差,CNR(A/V):動脈と静脈の CNR,

CNR(A/F):動脈と脂肪の CNR

【結果・考察】

①同期タイプにおいて、心電図に同期させるこ

とで、より高信号に描出できた。

②脂肪抑制方法では、STIRでは脂肪が抑制

されず、WEでは、アーチファクトが増大した。

安定した方法はFatSatである。

③Presaturation pulseの効果では、厚さが

薄いと静脈の信号が抑制されず、厚いと動

脈の信号が抑制されるため、適正な厚さの設

定が必要。

④FAでは、角度が大きいほど信号強度も大き

くなり、 90 °で最大となった。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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26 Time-SLIPにおける腰動脈の描出

浜脇整形外科病院 放射線科

加藤 美栄

【目的】椎体の栄養動脈の基部である腰動脈は、椎体骨折時になんらかの損傷を受けると考え

た。腰動脈を腰椎 MR ルーチン撮影に加えて撮影することを考慮し、侵襲の少ない非造影 MRA

での描出を試み、撮像条件を検討した。

【方法】Time-SLIP併用の TrueSSFP法の In-FLOW効果を利用し、①Time-SLIP厚の大きさ ②

使用コイル スパインコイル,Body コイル ③セグメント数 ④BBTI 値 について検討した。

撮像パラメータは、TR5.8 TE2.9 FA90 度 撮像領域 32×35 マトリックス 256×256

SPEEDER PE2.0 脂肪抑制パルス ON 撮像断面 AXI。撮像範囲は健常椎体と病変椎体の腰動脈

を比較するため病変椎体を挟んで上下3椎体とした。承諾を得られたボランティアで撮影を行

った。

【結果】Time-SLIP厚の大きさは 撮像範囲よりも広く(今回は2倍)かけたほうが静脈信号の

抑制ができた。スパインコイルと Body コイルでは、Body コイルのほうが血管の基部から先端

までの信号の描出が良い。ただし腰椎ルーチン撮影に追加するため以下はスパインコイルでの

検討である。

セグメント数の比較では、セグメント2のほうが血管の描出はよいが、撮影時間が長くなるの

で、患者の状態によってはセグメント1を選択する。

最適な BBTI値は、ボランティアでは 1200~1400であった。以下の図に BBTI値の変化による

血管の描出を示す。TI値 600では血管が基部から椎体の中間までしか描出しておらず、1200

では血管の基部から末端まで描出された。1800では背景信号、静脈信号が回復してきている。

今回臨床で撮影した圧迫骨折の患者は 60代から 80代であった。個人差もあるが、高齢者は血

流速度が遅いので、BBTI値がボランティアの結果より必要だと考えられ、臨床での最適な値は

1600~1800 であった。58 名の圧迫骨折の患者のうち、病変椎体の両側腰動脈が描出されてい

るのが 41名、片側のみ描出が 1名、両側描出していない 2名、描出不良が 14名であった。

BBTI 600 BBTI 1200 BBTI 1800

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27 FBI 法を用いた非造影骨盤 MR Venography における呼吸同期法の

有用性の検証

光生病院 診療支援部 1, 光生病院 診療支援部 放射線課 2 小野 敦 1, 高田 悟 2, 岡田かおり 2, 小橋泰之 2, 吉崎紀雄 2, 橋口雄助 2, 加藤大貴 2, 久保田雄斗 2

【目的】 下肢静脈血流が呼吸性変動を有することは広

く知られているにもかかわらず、その流速変化

を定量した文献は見当たらない。今回、骨盤静

脈の流速変動を定量し、FBI 法を用いた非造影

骨盤 MR Venography (MRV) に対する呼吸同

期法の有用性について検証した。 【方法】 使用 MRI 装置は、東芝社製 1.5T EXCELART Vantage Atlas で Atlas SPEEDER コイルを用

いた。使用超音波装置はフィリップスエレクト

ロニクス社製 iU22 でコンベックス型探触子

(5~2MHz) を用いた。本研究に同意を得た健

常ボランティア 10 名を対象に超音波ドプラ法

にて IVC、両側外腸骨静脈(EIV)の呼吸性流速

変動を計測した。次に、呼吸同期無しの FBI法、呼気および吸気同期 FBI 法の 3 種類の骨

盤 MRV1)を撮像し、得られた各骨盤静脈(IVC, 総腸骨静脈 :CIV, EIV, 総大腿静脈 :CFV) のSNR,CNR 計測ならびに視覚的評価を行い比

較した。統計学的解析はウィルコクソンの符号

順位検定を用い、P < .05 を有意差ありとした。 【結果】 呼気、吸気時の最高血流速度の平均値(cm/s)は、IVC 9.1±3.1、20.5±4.8、rt. EIV 7.4±2.3、16.4±6.1、lt. EIV 6.8±3.3、16.4±7.3 で全静脈

に有意差が認められた。各骨盤静脈の SNR、

CNR、視覚的評価のスコアの平均値は、吸気

同期 FBI 法、FBI 法、呼気同期 FBI 法の順に高

くなったが、吸気同期 FBI 法と FBI 法の比較

では、EIV と CFV の SNR および視覚的評価、

CIV と CFV の CNR が僅差であり、有意差は

認められなかった。吸気同期 FBI 法の視覚的評

価のスコアでは、全 70 静脈中 17 静脈に診断

が困難となる 2 以下が判定され、全ての骨盤静

脈に認められた(表1)。健常ボランティアのFBI MRV(図 1)は、吸気同期による静脈描出能が顕

著に向上した例(A)、描出能に変化がない例(B)、描出能が僅かに向上した例(C)に分類された。

【考察】 骨盤静脈の吸気最高血流速度の平均値は、呼気

に比較して 2 分の 1 以下にまで減少すること

が判明した。吸気同期した FBI MRV では、骨

盤静脈の流速減少により flow dephasing 効果

が抑制され、描出能が向上すると考えられる。

しかしながら、FBI 法は、元来 ECG 同期を用

いるため、吸気同期法と併用した場合、それぞ

れの同期の重複が多い症例では、吸気同期によ

る効果は相殺され、静脈描出能の向上は限定的

になると推察された。 【結語】 吸気同期 FBI MRV は骨盤静脈の描出能を向上

させるが、その効果は限られているため、さら

に強固な静脈描出能を有する手法の必要性が

示唆された。 表 1 視覚的評価のスコア表の比較

図 1 健常ボランティア 3 名(A、B、C)におけ

る FBI MRV の比較

呼吸同期なし 吸気同期 呼気同期

静脈

部位 5 4 3 2 1 5 4 3 2 1 5 4 3 2 1

IVC 2 2 1 3 2 2 4 2 2 0 0 4 1 4 1CIV 7 3 1 9 0 7 4 2 7 0 5 4 2 9 0EIV 12 4 1 3 0 13 3 1 3 0 12 2 3 3 0CFV 6 5 4 4 1 7 6 2 4 1 3 3 6 7 1

呼吸同期なし 吸気同期 呼気同期

B

C

A

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28 頸椎 MRIにおける CSF flowアーチファクト低減の検討 ~呼吸が CSF flowに与える影響について~

川崎医科大学附属病院 中央放射線部

阿部俊憲 吉田耕冶 村上公一 守屋和典

松本博樹 岸祐助 佐伯悠介 柳元真一

【目的】近年、脳脊髄液の流れ(CSF flow)は、呼

吸との因果関係が報告されている。1)

今回、頸椎 T2 強調矢状断撮像について Time

Spatial Labeling Inversion Pulse(Time SLIP)法

を用いてアーチファクトの原因検索を行い、呼吸同

期法を用いることによって、CSF flow アーチファ

クトの低減が可能かどうか検討を行った。

【方法】 MRI装置は、EXCELART Vantage MRT-2003

1.5T(東芝)を用いた。本研究に同意の得られた健常

ボランティア22名(平均年齢27.3歳)に対して以

下の項目について検討を行った。

1)CSF flow アーチファクトの視覚評価

自由呼吸に対し、呼吸同期(吸気同期・呼気同期)

によるT2強調矢状断像のCSF flowアーチファクト

の有無を診療放射線技師 8 名にて連続的なスコア

により視覚評価を行った。有意差検定にはt検定を

用い、p<0.05を有意差有りとした。

2)CSF flowと呼吸との関係

呼吸による CSF flowの変化を観察するために、

自由呼吸・吸気停止・呼気停止時にて、タグパルス

内に CSF flow が流れ込む回数を測定し、比較を行

った (Fig.1)。

1.頚髄前方および後方クモ膜下腔への流入回数

2.頭側方向および尾側方向への流入回数

3.頭側・尾側の両方向への流入回数

撮像条件はpulse sequence:FASE ,TR/TE :4000/507(msec)

BBTI:2200ms,Scan Time:4sec×31

【結果】 1) CSF flowアーチファクトの視覚評価は、

自由呼吸に対して、吸気同期は有意に低いスコアを

示し、呼気同期では、ほぼ同等のスコアを示した。

つまり、呼吸同期を用いても自由呼吸と同等か、そ

れ以下の視覚評価しか得られなかった(Fig.2)。

2)CSF flowと呼吸との関係は、1.頸髄前方のクモ

膜下腔は、後方のクモ膜下腔と比較して、タグパル

ス内へ流入回数が多く認められた (Fig.3)。2.自由

呼吸・吸気停止時には頭側方向に比べ尾側方向に流

入する回数が多く、呼気停止時においては、頭側、

尾側方向とも同程度の流入回数であった(Fig.4)。

3.タグパルス内に流入する合計回数は、吸気停止時

に多い傾向にあった (Fig.5)。

【結語】今回の検討から、CSF流入回数とアーチフ

ァクトには、ある程度の関連が見られた。しかし、

自由呼吸に対して呼吸同期を用いることでは、頸椎

T2強調矢状断像のCSF flowアーチファクトの低減

に至らなかった。今後、呼吸同期のdelay timeや、

撮像パラメータの検討、脈波同期との比較など、CSF

flow が画像に及ぼす影響について更なる検討が必

要である。

【参考文献】1)Yamada S, et al: Visualization

of cerebrospinal fluid Movement with spine

labeling at MR imaging. preliminary itions.

Radiology 249:644-652,2008

Fig.1 タグパルス(黄枠内)に流入する CSF flow

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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29 可変リフォーカスパルスを用いた3D-FSE 法(CUBE)における

flow-void の検討

広島大学病院 診療支援部 高次医用画像部門

・髙橋 佑治 穐山 雄次 岩角 至子 横町 和志

山岡 秀寿 三好 泰輔 久米 伸治 石風呂 実

[目的]

可変リフォーカスパルス 3D-FSE 法(以下

CUBE)による、Isotropic-image が開発され、四肢、

骨盤部、頭部など臨床に期待されている。CUBE

は、2D-高速 SE 法(以下 FSE)に比べ血管内信号

が抑制された画像が得られた。

本研究の目的は、CUBE と FSE において流体

の信号抑制の程度を比較し、CUBE の撮像パラメ

ータが flow-void に与える影響を検討することであ

る。

[方法]

装置は Signa EXCITE HDxt 3.0T(GE) ,

Head-coil を使用した。流速ファントムは自動

注入器ソニックショット(根本杏林堂)にチュ

ーブを接続し作成した。ファントムは寒天中に

設置しチューブ内の信号強度を測定した。検討

項目、及び撮像条件は以下のとおりである。。

① 流体の方向と周波数方向、及び位相方向と

平行にしたとき、CUBE と FSE にて、流

速による信号強度の変化の検討。

<撮像条件>

TR:4000[msec], eff-TE:100[msec],

ETL;CUBE:80, FSE:18, BW:62.5[kHz],

流速:0~200[mm/sec]

② 流体の方向と周波数方向とを平行にし、

CUBE の撮像条件が flow-void に与える影

響の検討。

<撮像条件>

TR:1000~10000[msec],

eff-TE:10~150[msec],ETL:20~250

NEX:0.5,BW:62.5[kHz],流速:13[mm/sec]

[結果]

① 流速方向と周波数方向が平行な時、FSE は

流速が 90[mm/sec]を超えたとき、CUBE は

15[mm/sec]を超えたとき flow-void となった。

流速方向と位相方向が平行な時、FSE、

CUBE 共に流速が 200[mm/sec]程となったと

き flow-void となった。

② TR,及び ETL を変化させたとき、信号強度の

変化は若干見られたが、flow-void に影響を

与えるほどの変化は見られなかった。TE の変

化では、60[msec]以下は信号強度の低下が

みられた。

[考察]

CUBE は再収束フリップ角を使用している。

フリップ角の減少により、流体のスピンの再収束す

る割合が低下し、flow-void 効果が大きくなると考

えられる。

TE が 10~60[msec]のときの信号強度の低下は、

位相分散の効果によるものである。

[結論]

CUBE は、FSE に比べ、比較的遅い流れに対し

flow-void となった。 これにより、静脈血流等の流

れが遅い血流の描出に有用であると示唆された。

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30 傾斜磁場コイルの誘導結合による受信信号への影響

1.岡山大学医学部保健学科 放射線技術科学専攻 2.医療法人紀典会北川病院

3.岡山大学保健学研究科 放射線技術科学分野

4.岡山大学病院医療技術部放射線部門

久保翔太郎 1 下宮幸子 1 藤本真哉 1 前田貴彦 1

服部謙吾 3 播本隆 2 大野誠一郎 4 加藤博和 3

目的・背景

小型 MRI装置の作製において,受信信号への

ノイズが多く画像再構成が不可能であった。こ

の原因として,傾斜磁場用コイルが受信信号に

影響を及ぼすことを見出した。ここでは傾斜磁

場コイルの誘導結合による受信信号への影響

について報告する。

方法

傾斜磁場コイルの巻数を 7回とし,それぞれ

1 対ずつ Gx,Gy 用傾斜磁場コイルが直交する

よう配置した。1対の傾斜磁場コイルは N極お

よび,S極の磁極に取り付けた。Gx,Gy用傾斜

磁場コイルが密着した場合の受信信号と,コイ

ル間に比透磁率が 1のアクリル板(3 mm)を挿入

した場合の受信信号を比較した。

結果

コイルが密着している場合と,離れている場

合の受信信号を図 1に示す。図 1の受信信号は

どちらも位相エンコード用傾斜磁場が印加さ

れていない m=0部分を示してはいる。コイルが

密着している場合とコイルが離れている場合

を比較すると,Gy 用傾斜磁場を印加しなかっ

た場合,エコー中心左側に偽信号が混入してい

るが,コイルが離れている場合は偽信号が消失

している。コイルが密着または,離れていると

きに関係なく Gy 用傾斜磁場を印加した場合,

それを印加しない場合に比較して偽信号が大

きくなっている。

図 1 受信信号の比較

エコー信号のピークの左右において信号が

ベースラインを横切る時間の比較をした。コイ

ルが密着している場合エコー中心左側が

0.32 msec,右側が 0.27 msec となり,左右差

が出た。一方コイルが離れている場合,左右両

方とも 0.35 msecと同じ間隔となった。

エコー信号におけるベースラインについて

比較した。コイルが密着している場合ベースラ

インは変動し,コイルが離れている場合では変

動しなかった。

まとめ

傾斜磁場コイル間の間隔を空けることで,偽

信号の低減とともに受信信号のベース部分の

平坦化ができた。また,受信信号中心部が左右

対称になった。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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31 32chと 12ch Body Array Coilでの被写体サイズからのコイル選択の検討

広島市立 広島市民病院 放射線科

西江亨文 北島未来 本城圭祐 清水聖子 寺尾敏昭 沖田泉

目的

当院には、32ch と 12ch の Body Array Coil

が導入されている。当院では、高い SNR を

持つ 32ch コイルを腹部、骨盤部撮影によく

使用しているが、被写体サイズが大きくな

ると、奥行き方向の SNR や均一性が 12ch コ

イルよりも悪くなるのではないかと考え、

それぞれのコイルの SNR と均一性について

比較検討を行った。

方法

MR 装置はシーメンス社製 Avanto 1.5T、コ

イルは、32ch 及び 12ch の Body Array Coil

を使用した。内空の直径が 10cm、20cm、30cm

の円筒形プラ

スチックボト

ルに塩化マン

ガン水溶液を

封入したファ

ントムをパラ

レルイメージ

ング(PI)なし

及びありで撮

影する。SNR

の測定には差分マップ法を用い、Fig.1の

ようにファントム面積の 80%の円形 ROI で

囲んだ Large ROI 及びファントム中心に 7

×7ピクセル

の小さな円形

ROI で囲んだ

Small ROI を

設定し、それ

ぞれの平均

SNR を求める。

均一性の測定

には区分法を

用い、Fig.2 のように大きな ROI(W)及びそ

の内側に、5 点の小さな ROI(C、O、U、R、

L)を設定し、それらの平均ピクセル値から

各領域の均一性を求め比較する。また、以

下の式から総合均一性 U(total)を算出し、

比較を行う。

結果

(SNR の比較)Large ROI の比較では、ファ

ントム径が 20cm までは PI の有無に関わら

ず 32ch コイルの方が SNR が高かったが、フ

ァントム径 30cm では、PI 無しで若干 32ch

コイルの方が高く、PI ありでは 12ch、32ch

ともほぼ同じ SNR であった。Small ROI の

比較では、PI なしでは 20cm 径、PI ありで

は 10cm 径までは 32ch コイルの方が SNR が

高かったが、それ以上のファントム径では、

12ch コイルと同等の SNR であった。

(均一性の比較)局所均一性は、PI の有無

に関わらず、コイルから離れる C、R、L 領

域では、どのファントム径においても 32ch

コイルの方が悪かった。また、総合均一性

の比較においても、PI の有無に関わらずど

のファントム径も 32ch コイルの方が均一

性が悪かった。

考察

被写体サイズが大きくなると、32ch コイル

は全体として SNR が悪くなり、被写体サイ

ズが 30cm になると、12ch コイルとほぼ同

じ SNR になることが確認できた。均一性を

考慮した場合、被写体厚が 30cm 以上では

32ch コイルよりも 12ch コイルを使う利点

が高いのではないかと考えた。

Large ROI Small ROILarge ROI Small ROI

Fig.1 SNR測定 ROI

O

C

U

R L

WO

C

U

R L

W

Fig.2 均一性測定 ROI

U(total)= (U(C) +U(O) +U(U) +U(R) +U(L) )/52 2 2 2 2U(total)= (U(C) +U(O) +U(U) +U(R) +U(L) )/52 2 2 2 2

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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32 肩関節検査における Flex-M、Flex-S coil を使用した dual coil 法の有用性

倉敷中央病院 放射線センター 伊藤 修

【背景】当院の肩関節検査は SENSE Flex

Medium coil(以下 M coil)を対向させて行って

いる(以下 single coil法)。dual coil法は M

coilに加え、SENSE Flex Small coil(以下 S

coil)を肩峰から三角筋に沿って半分重ねた状

態で同時に使用することで画質向上が期待さ

れる。【目的】肩関節検査において single coil

法と dual coil法を比較し、dual coil法の有

用性について検討した。【使用機器、ソフト】

PHILIPS社製 Intera 1.5T、SENSE Flex Small

coil、SENSE Flex Medium coil、ボトルファン

トム(直径 13cm 高さ 30cm 硫酸銅水溶液

3000ml)、解析ソフト Image J、PI-SNR 差分マ

ップ法 ver1.1【検討方法】成人男性の肩を模

したボトルファントムと使用 coilを静磁場中

心にセットして single coil法と dual coil

法を用い、spin echo(FOV:180mm、TR/TE:

500/15ms、Matrix/recon:256/256、TSE factor

3、NSA 1、RFOV:100%、Scan%:100%、

thickness:5mm、WFS/BW:0.772pix/281.5Hz、)

で感度補正有り無し、それぞれ 2回撮像を行っ

た。dual coil法において coilの装着がより

簡便である方法(M+S1)も追加で検討を行った。

(Fig1)軸位断は差分マップ法による SNR評価

と AAPMによる全均一性、局所磁場均一性の評

価を行った。矢状断、冠状断は SNRの評価と全

均一性の評価を行った。その結果を踏まえ、目

的、臨床的な意義を十分に説明し同意を得た健

常ボランティアにて撮像した。

【結果・考察】SNRの評価 single coil法、

dual coil法どれもファントム中心と coilか

ら離れたポイントで SNRは低下した。肩関節検

査を模した coilのセッティングと、phased

array coilで使用される感度補正により画像

内の均一性が保持され、それと引き換えにノイ

ズが不均一になったためだと考えられる。coil

近くのファントム表面で M、M+S、M+S1の順に

SNRが上昇した。(fig2)M+Sと M+S1の SNR差

の原因は、M+Sの S coilを Z軸に対して並列

に使用したため S coil同士が干渉したと考え

られる。矢状断ではファントム表面から中心へ

約 5cm顕著に SNRの差が生じた。Mと M+S1で

は最大で約 2倍の差が生じた。S coilの効果

が顕著に現れたためである。今回、この断面に

おける撮像条件の改善(スライス厚 4mm⇒3mm)

を行った。全均一性の評価 AAPMにおいて

FOV20cm以下では、全均一度は 80%以上とされ

ている。今回使用した FOV は 18cmで、軸位断

は約 93%であった。矢状断、冠状断では約 91%

で基準を上回る結果となり良好な均一性であ

ると考えられる。coilの違いによる差も僅か

であった。肩関節は off centerで、肺や腋下

など磁化率の影響も受けやすく、均一性の低下

が予想される。局所磁場均一性の評価 ファン

トム中心は平均信号値より高く、周りは低い結

果となった。phased array coilではファント

ム中心部と辺縁部とで信号強度が異なり、感度

補正によってファントム中心の低信号部が持

ち上げられたと考えられる。

【ボランティア撮像】検討結果を踏まえ M+S1

を使用した。S coilは、軸位断で肩甲上腕関

節に対して平行にして、斜位冠状断で肩峰から

三角筋にかけて 1個装着した。M coilは、軸

位断で S coilの両端に装着した。斜位冠状断

で肩峰・棘上筋腱・三角筋など腱板周囲の SNR

が向上した。(Fig3)

【結語】dual coil法は single coil法に比べ

複雑なセッティングになる。coilの装着を工

夫することで腱板周囲の信号が顕著に増加し

描出能が向上した。よって肩関節検査における

有用性が示唆された。

Fig1:coil のセッティング方法(左から M、M+S、M+S1)

Fig2:矢状断の color SNR map(左から M、M+S、M+S1)

Fig3:MultiVaneT2 脂肪抑制画像

single coil 法(M) dual coil 法(M+S1)

SENSE Flex Small coil

SENSE Flex Medium coil

SNR

300

200

100

0

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33 両手リウマチ MRIにおける一考察

○大野誠一郎 今井 広(2 赤木憲明 稲村圭司

岡山大学病院 医療技術部 放射線部門

2)シーメンス・ジャパン株式会社

【目的】

近年、数種類のリウマチ治療薬の発売により

骨破壊前での診断が重要になっている。

リウマチの早期診断のために、両手を同時に

撮像する要望も増えている。

当院に 3-T MRI 装置が導入されたことを機会

に、短時間で再現性の良い撮像法を試みた。

【方法】

MR 装 置 は MAGNETOM Verio 3-T

(SIEMENS),Spine Matrix コイルを使用し

た。ファントムとして食用油,硫酸ニッケル水

溶液(3.75g NiSO4×6H2O+ 5g NaCl per

1,000g)を使用し、解析には Image J を用い

た。

1. 実験1

Spine Matrix コイルの高さ向の感度を調

べる。高さ 20 cm の硫酸ニッケル水溶液

のボトルをコイルの上に置き T1-TSE 法で

撮像する。

2. 実験2

Spine Matrix コイルの脂肪抑制領域を調

べる。高さ 18 cm の食用油のボトルをコ

イルの上に置き T2-STIR 法と vibe-WE 法

で撮像する。

3. 臨床評価

リウマチの疑いで依頼された患者(男性 7

名,女性 13 名:23-73 歳,58.4±14.5)両手

17 名,両足 3 名を対象とした。左右の手

(足)の SNRを測定する。手の甲にあたる

部分に直径 60 mm の ROI をとる。

ROI 内の平均信号強度を標準偏差で除し

た値を SNR とする。

【結果】

実験1の結果を図1に示す。手を撮像するの

であれば、80%程度の感度はあることが確認で

きた。

図1. Spine Matrix コイルの高さ方向の感度

実験2の結果、手の撮像における T2-STIR 法

の脂肪抑制の精度と vibe-WE 法の感度域を確

認できた。臨床評価において、左右の手の SNR

は、どのシークエンスでも有意差がなかった。

(a) (b)

図2. 患者撮像時の体位

【考察】

患者の撮像時の体位を図2に示す。Spine

Matrix コイルと誘電パッド(約 3.6 kg)を用

いることで、静磁場中心での両手の固定を行い

やすくなり 3-T MRI の信号の強さを生かすこ

とができる。さらに、安定した信号強度と脂肪

抑制効果を得ることができる。70 cm のボア内

径があることで、両肩を約 90 度に曲げても安

定固定可能である(図2(a))。ダイナミックを

含めた一連のリウマチ検査を約 15 分で終える

ことができる。

70 cm

cm

誘電パット

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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34 3T MRI における表面コイルと信号強度分布の関係

1岡山大学医学部保健学科放射線技術科学専攻, 2岡山大学大学院保健学研究科,

3北川病院, 4岡山大学病院医療技術部放射線部門

下宮幸子 1 , 久保翔太郎 1 , 藤本真哉 1 , 前田貴彦 1 , 服部謙吾 2 ,

播本隆 3 , 大野誠一郎 4 , 加藤博和 2

目的

3T MRI における表面コイルを用いた撮

像について, 表面コイルを被写体の片側

または両側に配置した場合のコイル直径と

被写体厚に対する信号強度分布について検

討した。

方法

スピンエコー法とグラディエントエコー

法により, ファントム厚, 表面コイルの大

きさ・個数を変化させ, 人体組織等価ファ

ントムの冠状断像を撮像する。それぞれの

画像において表面コイルの中心軸上の信号

強度を測定する。画像は ImageJ にて処理

を行う。

結果

ファントムの片面のみに表面コイルを配

置した場合, コイルから離れるに従い信号

は減衰した。ファントムの両側に表面コイ

ルを配置した場合, コイルから離れるに従

い信号は減衰した。 しかし, ファントム厚

がコイル径の 55%以下になると信号強度分

布はほぼ平坦となった。 コイル中心軸上の

信号強度は, コイル径 11cm のとき最も減

衰が少なかった。しかし, コイルに接した

部分では, コイル径 4cm, 11cm, 7cm の順

に信号が大きくなった。

考察

表面コイルをファントムの片面に置いた

場合と両側に置いた場合の信号強度分布を

比較することにより, 2 つのコイルを用い

たときに予想される感度の相乗効果はみら

れないことがわかった。また, 両側コイル

における信号強度分布と片側コイルによる

信号強度分布を被写体の中心で折り返し加

算したときの信号強度分布を比較すると,

両側コイルにおける信号の方が低くなった。

結論

信号強度が最大値の 70%以上になる範囲

を診断有効深さと定義すると, ファントム

片面にコイル配置した場合, ファントム厚

に関わらずコイル径 4cm では 0.5cm, コイ

ル径 7cm では 0.7cm, コイル径 11cm では

2.5cm となった。

ファントム両側にコイルを配置した場合,

有効深さはファントム厚がコイル直径の

55%以上ではコイル径 4cmでは 0.4cm, コイ

ル径 7cm では 0.9cm, コイル径 11cm では

3.1cm となった。しかしファントム厚がコ

イル直径の 55%以下になるとすべての深さ

が有効深さとなった。

参考文献

C. Collins, W. Liu, W. Schreiber, Q. Yang,

and M. Smith: Central brightening due to

constructive interference with, without,

and despite dielectric resonance, J.

Magn. Reson. Imaging, 21,192-196, 2005.

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35 1.5T MRI 装置における Body コイルの SNR の基礎的検討

広島市立広島市民病院 放射線科 本城圭祐 西江亨文 板原広史 寺尾敏昭 沖田泉

【目的】 当院に 1.5T MRI 装置とともに 32ch Body Array coil(以下 32ch コイル)が導入され

たので、12ch Body Array coil(以下 12chコイル)との SNR の比較検討を行った。 【検討項目】 ① Transverse 面で Matrix 数を変化させ

た場合の SNR ② Transverse 面で加算回数を変化させ

た場合の SNR ③ 3 軸方向(Transverse、Coronal 、Sagittal )の SNR 【使用機器・解析ソフト】 ・MAGNETOM Avanto SQ 1.5T VB17

(SIEMENS 社製) ・Coil(モード:CP) 12ch Body Array coil 32ch Body Array coil ・MRI ファントム 90-401 型 (日興ファインズ社製) ・解析ソフト Image J 【方法】 ファントム をコイル中心に配置し、撮像位

置まで移動した後、20 分静置して、連続 2回撮影を行う。得られた画像から差分法を

用いて、コイル中心、コイル近傍の 2 点、

コイル中心の両端、の計 5 点の SNR の測定

を行った。 【撮影条件】 Spine Echo 法、TR=2200msec、TE=

11msec、スライス厚=5mm、撮像視野=

256mm×256mm、スライス厚=5mm。

Matrix を 192×192、256×256、320×320、448×448、512×512 と変化させた。また、

加算回数についても 1、2、3 と変化させた。 【結果】

Table 1 に 12ch コイルに対する 32ch コイ

ルの SNR の比率について示した。 Transverse 面で Matrix 数を変化させた場

合、どの領域においても 32ch コイルの方が

12ch コイルよりも同等以上の SNR が得ら

れた。 Transverse 面で加算回数を変化させた場

合、どの領域においても 32ch コイルの方が

12ch コイルよりも同等以上の SNR が得ら

れた。 3 軸方向での SNR についても、どの領域に

おいても 32ch コイルの方が 12ch コイルよ

りも同等以上の SNR が得られた。 どの検討項目においても測定点ごとに差が

見られたが、コイル近辺では、SNR が高く、

離れるにしたがって低くなっていった。 Table 1. 各条件における SNR の比率

matrix 加算回数 3 軸方向

中心 1.0~1.3 1.0~1.2 1.0~1.4

近傍 2.1~3.2 1.3~2.4 1.7~2.0

両端 1.1~1.5 1.1~1.6 1.1~1.6

【考察】 ・1.5T MRI 装置において、32ch コイルは、

matrix 数、加算回数、撮像方向を変えても、

12ch コイルよりも同等以上の SNRが得ら

れることが確認できた。 ・今回の実験データをもとに、均一性やコ

イル間距離なども考慮しながら、12ch コイ

ルとの使い分けを考えていきたい。

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36 3T-MRI装置による頚髄テンソルの画質改善

1)岡山大学病院 医療技術部 放射線部門

2)岡山大学病院 整形外科

3)岡山大学病院 神経内科

森光 祐介 1,大野 誠一郎 1,中原 龍一 2

佐藤 恒太 3,出口 健太郎 3,稲村 圭司 1

【目的】

近年,脊椎の分野で頸椎症の診断への応用と

して拡散テンソル MRI の有用性が報告されるよう

になってきた。 しかし,従来の 1.5T-MRI 装置で

は,臨床的に可能な時間で良好な画像を得ること

が困難であった。 そこで,今回3T-MRI装置導入

に伴い,臨床で利用可能で良好な画質の頚髄テ

ンソル撮像条件を検討したので報告する。

【対象および方法】

対象は本研究の主旨を十分に説明し同意を得

られた健常ボランティア 5 名を対象とした。主な撮

像条件を示す(表 1)。軸数と b値の組み合わせを

12軸(b100,b200,b300,b400,b500,b800,b1000),

20軸(b500)として頸椎(C5)の中心を撮影し(図 1)

視覚評価,SNR の測定を行った。視覚評価は医

師 5名により FA画像を順位付けした。1位(8点)

~8 位(1 点)とし医師 5 名の平均点で評価した。

SNRの測定は FA画像と ADC画像に対して脊髄

の輪郭に沿って ROIを設定して SNRを算出した。

表 1 撮像条件

Sequence

Fat suppr.

FOV

TE/TR

NSA

EPI

SPAIR

100

105/6000

1

Slice厚

space

Matrix

Pat mode

3

0

96×96

GRAPPA(2)

a b

図 1 12軸b1000でのFA画像(a),ADC画像(b)

【結果および考察】

視覚評価については 12軸では b500 以上でよ

く,20 軸 b500 においてもよい評価であった。また,

軸数で比較すると12軸より20軸で評価はよくなっ

た。SNR については FA 画像では 12 軸 b500 で

4.02,20 軸 b500 で 4.07 と最も高かったが,いず

れの b 値においても有意差はみられなかった。

ADC 画像ではb500 以上でよく,12 軸 b1000 で

5.80 と最も高かった。軸数で比較すると 12軸と 20

軸では有意差はなかった。また b 値が大きいほど

SNR は向上しており,要因として b 値が小さい場

合水分子の灌流が ADC 値に影響することが考え

られた(図 2)。撮影時間は 12 軸では 7 分,20 軸

では 11分掛かり体動の影響を考えると 20軸は現

実的でないと考え 12軸を採用した。

図 2 ADC画像の SNR測定結果

【結語】

本検討で行った視覚評価と SNR の結果を考慮

すると 12 軸(b500,b1000)が妥当と考えた。 検査

時間は頚髄ルーチン撮影を含め,30min に抑える

ことができた。

今後,テンソル MRI を用いて種々の脊髄疾患

の診断が期待される。

12 軸

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37 拡散強調画像(DWI)におけるシリコンアーチファクト低減に関する検討

川崎医療短期大学放射線技術科 靍あかね 横野 優 好原あゆこ

川崎医科大学附属病院中央放射線部 吉田耕治 村上公一 阿部俊憲 柳元真一

[背景と目的] 現在, 小児の MRI 検査では体動によるアーチファクトを防ぐために, 鎮静剤の投与が頻繁に行われている. 2011 年の日本小児科学会医療安全委員会では MRI 検査時の麻酔による鎮静が呼吸停止などを引き起こす危険性が高いことを指摘している. そこで小児 MRI 検査を鎮静なく行うために, 安全性および固定能力が高く, 加工も容易なシリコンを素材とした固定具を作成した. しかし, シリコンの性質から拡散強調画像(DWI)において,

化学シフトアーチファクトが発生する. 今回,

頭部 MRI 検査においてこのアーチファクト低減を目的として検討を行った.

[使用機器と方法] MRI 装置は Signa Horizon

Lx 1.5T(GE), 受信コイルは QD Head Coil を用いた. 対象は生理食塩水とサラダ油を封入した自作ファントムをシリコン(信越化学工業製)にて固定したものを用い, DWI の脂肪抑制法には, 選択的脂肪抑制法(CHESS 法)および水選択励起法を用いた. チューニング時に, 生理食塩水からの共鳴周波数(Hz)のずれ幅を手動で変化(シフト)させることによって, アーチファクトの変化を評価した. また, 健常ボランティア女性 3 名(平均年齢 20 歳)の頭部をシリコンで固定し同様の方法にてアーチファクトが低減されるか確認した. 検討項目は, 自作ファントムから両法における生理食塩水と, サラダ油の信号強度の比(S(w)FR)と生理食塩水と化学シフトアーチファクトの信号強度の比(S(w)AR)を求めた. 健常ボランティアの脳においては, 両法における脳白質の信号雑音比(S(b)NR)及び脳白質の信号強度と化学シフトアーチファクトの信号強度の比(S(b)AR)を求め比較した.

[結果 ] 自作ファントムによる検討から ,

S(w)FR が最大値かつ S(w)AR も最大値となるのは, CHESS 法および水選択励起法ともに中心周波数からのシフト量が-40Hz であった(Fig. 1a,b). 健常ボランティア脳より, CHESS

法はシフト量が大きくなっても S(b)NR の低下はわずかであったが, 水選択励起法では-40Hz までの低下はわずかで, それ以降で顕著に低下した(Fig. 2). S(b)AR は水選択励起法においてはシフト量が-40Hz, CHESS 法では-50Hzで最も良好であった. S(b)ARの最大値は水選択励起法が CHESS 法と比較し約 3.6

倍高値を示したことから, 健常ボランティアの脳においてシリコンの化学シフトアーチファクトが最も低減され, SNR も保たれるのは,

水選択励起法を用いて中心周波数を-40Hzシフトさせたところであった(Fig. 3).

[考察] CHESS 法において中心周波数を-40Hz シフトさせた時, アーチファクトが最も少ない画像が得られた理由としては, CHESS

法による脂肪抑制パルスの帯域幅が約 140Hz

程度と考えると, -40Hz シフトしたところで,

サラダ油とシリコンの信号を同時に飽和させたと考えられる. 水選択励起法において中心周波数を-40Hz シフトさせた時, アーチファクトが最も少ない画像が得られた理由は, 本法では 90 度パルスが分割して照射されることから, 周波数がシフトすることによって水選択励起で用いられるBinominal pulseが, 水とサラダ油を Out of Phase にしようとした際のタイミングのずれに繋がっていると考えられる. そのため-40Hz 程度シフトさせた時にシリコンとサラダ油の横磁化成分が最も少なくなったと推測される.

[まとめ] シリコン固定具を用いた小児の頭部MRI 検査において, 水選択励起法を用いて中心周波数を-40Hzシフトさせる手法を用いれば, SNR を大きく損なうことなく拡散強調画像における化学シフトアーチファクトが低減可能であり, 麻酔を使用せず安全に小児頭部MRI 検査が施行可能である.

(a)ファントム実験(CHESS 法) (b)ファントム実験(水選択励起法)

Fig.1 水(w)と油(F)およびアーチファクト(A)の信号強度比

Fig.2 脳白質の信号強度(b)と空中雑音の標準偏差(N)の比 Fig.3 脳白質の信号強度(b)とアーチファクト信号強度(A)の比

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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038 b値の異なる拡散強調画像から算出される ADC値の変動とその対策

島根大学医学部放射線医学講座,†島根大学医学部附属病院放射線部

内田幸司,北垣 一,尾崎史郎†,原真司†,小松明夫†

【目的】

拡散強調画像(diffusion weighted image: DWI)

から算出される“見かけの拡散係数(apparent

diffusion coefficient: ADC)” 値は b値によって値

が異なる可能性がある.

DWI の b 値を変更しても ADC 値の精度と正確

度を維持するための以下の加算回数(number of

excitation: NEX)算出式

pre

D

prepostpost NEXbbNEX 2))(exp(

を導き出し,その検証を MR 装置とファントムを

用いて行ったので報告する.

【方法】

検討項目

1. b値と SNR(差分法)関係

2. b値とNEX変更前後におけるSNR (差分法)

の比較

3. b 値と NEX 変更前後における ADC-map の

比較(joint histogram)

使用機材

Signa HDx 3T (GEHC), T/R standard head coil

(GEHC), MRI ファントム 90-401 型(日興ファイン

ズ株式会社)

撮像条件

SS-SE-EPI, TR/TE=6000msec/95.6msec,

RBW=250kHz, FOV=240mm, NEX=1,8,

matrix=128, slice thickness/no=5mm/1, MPG

dir.=3,b=0~3000sec/mm2 (500step),

【結果】

1. SNRは b値の上昇に伴い指数関数的に低下

し,その低下の程度は ADC 値に正比例した

(fig. 1).

fig. 1 b値と SNR(差分法)関係

2. 本法を用いると b 値変更後の SNR は変化し

なかった.

3. 本法を用いると b値変更後の ADC値のばら

つきは小さくなり,その相関性も向上した(fig.

2).

fig. 2 b 値と NEX 変更前後における

ADC-mapの比較(joint histogram)

【考察】

DWIの信頼性は b 値と組織の ADC 値によって

異なるため,b値を変更する際は NEXも適切に変

更する必要がある.

【結語】

DWIの信号強度式および SNRとNEXの理論式

から NEX算出式を導き出した。

導き出されたNEXを使用することでb値を変更し

ても ADC値の精度と正確度が維持されることを検

証できた。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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39 乳腺腫瘍における Long TE拡散強調画像の有用性

国立病院機構 米子医療センター 放射線科 1) 胸部血管外科 2)

永井 能規 1) 本山 英介 1) 佐野 正展 1) 野引 和久 1) 須賀 貴仁 1)

妹尾 賢 1) 友保 光弘 1) 森 有紀 1) 杉浦 公彦 1) 鈴木 喜雅 2)

【背景】

MRI は乳癌の質的診断および広がり診断を行

う検査である。腫瘍性病変の良悪性の鑑別、

staging には PET の有用性が報告されている

が、装置が設置されている施設は限られている。

これに代わるものとして、MRI の拡散強調画

像(以下 DWI)の有用性が報告されている。

しかし、乳癌での最適な撮像条件は、まだ充分

確立されていないため検討の余地がある。

【目的】

乳腺腫瘍の良悪性の鑑別、当院での最適な撮像

条件を確定するために、Short TE (82ms)と

Long TE (200ms)を撮影し、TE の違いよる描

出能を比較し、検討した。

【対象】

2011 年 7 月から 2011 年 10 月までに乳腺の

MRI が施行され、当院胸部血管外科で手術が

施行された 24 例 。全員女性で 26 歳~86 歳

(平均 53.9 歳)であった。内訳は良性腫瘍 6

例、悪性腫瘍 15 例、その他 3 例 。

【方法】

乳腺 MRI 拡散強調画像で TE を Short

TE(82msec)、long TE(200msec)の 2 通りで撮

影し、乳腺腫瘍の信号強度を ADC 値で測定し

た。ADC 値測定方法として b0sec/mm2 と

b1000sec/mm2より ADC マップを作成し読み

取りを行った。

【使用機器】

・MRI 装置:Intera Achieva 1.5T(Philips 社

製) ・使用 coil:4ch body coil

【撮影条件】

脂 肪 抑 制 法 : 周 波 数 選 択 的 脂 肪 抑 制 法

b-factor(sec/mm2)0,1000 FOV(mm) 310mm

slice thickness(mm) 4mm gap(mm) 1mm

TR(msec) 9105 orientation Axial

Short TE (82ms) Matrix 112×256 nex 3

Long TE (200ms) Matrix 80×256 nex 9

【結果・考察】

拡散強調画像にて、悪性腫瘍の ADC 値は正常

組織あるいは良性腫瘍に比べ低値を示すと報

告され、今回、統計的に良悪性の鑑別の参考値

としてある程度有効であったと考えられた。

LTE-DWI は TE の 延 長 に よ り T2

shine-through が強調されるため腫瘍のみを

客観的に評価できると考えられた。また、TE

の延長の影響で、STE-DWI と対比して SN が

低下し、明瞭な信号を示さず評価が難しい症例

も存在した。TE を延長することで、正常乳腺

の信号強度が低下し、乳腺腫瘍とのコントラス

トの差は向上するため dense breast や乳腺症

患者での腫瘍検出に有効であると考えられた。

また、造影剤を使用できない患者さんに対して

も LTE-DWI は診断に有用な付加情報を得ら

れる可能性が秘めていると考えられた。

【結論】

拡散強調画像で Short TE (82ms)と Long TE

(200ms)の撮影を行い、腫瘍の信号を比較した。

乳腺腫瘍のADC値を測定することで良悪性の

鑑別診断に有用であると考えられた。

00.20.40.60.81

1.21.41.61.82

2.22.42.6

STE(ADC値) LTE(ADC値) STE(ADC値) LTE(ADC値)

良性腫瘍 悪性腫瘍

×10-3mm-2/sec

乳腺腫瘍とADC値の関係

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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40 子宮体癌拡散強調像の ADC 値に影響を与える要因について(第 2 報)

1) 岡山大学医学部 保健学科、2)岡山大学大学院 保健学研究科、

3) 岡山画像診断センター、4)岡山大福クリニック

竹井智洋 1)、上者郁夫 2)、三上朋子 2)、山口卓也2)、三村誠一 2)、 加地充昌 3)、松下利 3)、有岡匡 3)、宮木康成 4)

【目的】MRI を用いた拡散強調像は水分子の

拡散運動に基づく組織の特徴を示すために最

近では中枢神経系診断以外にも広く行われ、悪

性腫瘍の描出にも有用なことが知られている。

今回、我々は子宮体癌の中でも最も頻度の高い

類内膜癌の MRI 拡散強調像における病変部の

見かけ上の拡散係数(ADC 値)について、組

織学的分化度、筋層浸潤度との関連を調べ、

ADC 値に影響を及ぼす要因について検討する

とともに、ADC 値を測定する際に設定する関

心領域(ROI)の設定方法による違いについて

検討した。

【対象および方法】対象は手術にて子宮体癌が

確認された 103例(28歳~87歳、平均 58歳)。

MRI 装置はシーメンス社製 MAGNETOM

Avanto1.5T で拡散強調像の b値は 0、50、1000

sec/mm2の 3 種類を用い ADC map を作成し ADC

値を測定した。

検討項目は組織学的分化度別および筋層浸

潤度別 ADC 値、 腫瘍内で最も ADC 値の低い部

位に設定した細小 ROI と腫瘍全体に設定した

平均 ROI による ADC 値の比較で、統計学的検討

は Mann-Whitney 検定、Wilcoxon の符号付き順

和検定、one way ANOVA 検定を用いた。

【結果】組織学的分化度別では細小 ROI は平均

ROI に比べて有意に低値を示したが、組織学的

分化度間では有意差はなかった。筋層浸潤度別

でも細小ROIは平均ROIに比べて有意に低値で、

細小 ROI、平均 ROI ともに浅層浸潤群と深層浸

潤群は非浸潤群に対して有意に低値を示した。

また、組織学的分化度と筋層浸潤度について多

重比較を行った結果、細小 ROI、平均 ROI とも

に ADC 値は筋層浸潤度とのみ有意な関連が認

められた。

【考察】子宮体癌の ADC 値に関しては G3 が

G1 に比べて有意に低いという報告があるが、

症例数が少なく、過去に子宮体癌の ADC 値に

関する詳細な報告がないため、昨年の本学会で

多数例を用いて子宮体癌のADC値に影響を及

ぼす要因について検討し報告した。今回は症例

数を増やすとともに組織型を手術で確認され

た類内膜癌のみに限定し、ROI の設定方法も

大小 2 種類にして検討した。その結果、ADC値は組織学的分化度とは有意な関連がなく、筋

層浸潤度と深い関連があることが判明した。 これは腫瘍が子宮内膜から子宮筋層に浸潤す

ると、まずはじめに子宮体部筋層の内側にある

ADC 値の低い junctional zone に浸潤するた

め腫瘍のADC値が低下することが考えられる

が、筋層浸潤のない a 群でも ADC 値の低い症

例があることから、筋層浸潤以外にも ADC 値

低下の要因があると推測される。細小 ROI に比

べて平均ROIではADC値が有意に高くなったが、

ADC 値の分布に関する検討では、組織学的分化

度、筋層浸潤度ともに ROI の大きさによる有意

差はなかった。しかし、症例によっては腫瘍内

部が不均一なことがあるため、ROI 設定方法を

統一して検討する必要があると考えられる。

【結語】拡散強調像の ADC 値は ROI の設定方

法により値は変化するが、組織学的分化度とは

有意な関連がなく、筋層浸潤度と深い関連があ

ることが判明した。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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41 MRI画像の歪みの検討

津山中央病院 放射線技術部

呉山幸利

【目的】Ⅰ.渦電流の影響とⅡ.磁場の不均一の影響

について ①①フファァンントトムムのの位位置置②②フファァンントトムムのの大大ききささ

③③GGrraaddiieenntt mmooddeeを変化させ評価し、さらに、フィル

タ補正効果について検討した。

【方法】Ⅰ.渦電流の影響:磁場中心の5番を使用し、

3種類のファントムを撮像した。

なお、実験に先立ちファントムの均一性試験を行った。

1)大きさの違いによる歪み評価では、

補正フィルタ「あり」「なし」にて評価を行った。

2)Gradient Modeの違いによる歪み評価では、 磁

場均一性の高い Small ファントムを使用し、fast、

normal、whisperにて評価を行った。

Ⅱ.磁場の不均一による影響:中心部からの位置が離れ

ると歪を生じるという去年の実験結果を踏まえ1番、3

番、7番、9番を使用し、大きさの違いによる歪みの評

価を行った。(図1)

1)1番、3番、7番、9番の平均を5番と比較し歪み

の違いを求めた。

2)補正フィルタ「あり」「なし」にて評価を行った。

図1.位置固定アクリル台と位置づけ

※実際に被写体の撮影と仮定し、位置アクリル台を体

幹部に見立てて円形ファントムを移動させコロナルで

撮影。

【結果及び考察】】MR 画像の歪みを渦電流の影響と磁

場の不均一の影響の両者から評価し、フィルタの補正

効果について検討した。

磁場中心部では、 Big ファントムのみフィルタ補正

「あり」「なし」で若干の変化を認めた。

⇒これは、big ファントムは均一性が担保されていな

いため、磁場の不均一の影響若しくは、渦電流の影響

により歪みが発生したものと考えられた。

各Gradient Modeによるフィルタ補正「あり」「なし」

では変化は認めなかった。

⇒Gradient Modeの変化は画像歪みに起因しないもの

と考えられた。

辺縁部では、big>middle>small の順に磁場中心画

像との差が大きくなった。 ⇒これは、磁場の不均一の影響により歪みが発生した

ものと考えられた。 small・middle・bigの全てにおいてフィルタ補正「あ

り」「なし」での変化は認めなかった。 ⇒静磁場の不均一は信号強度の不均一となり画像その

ものが崩れるためフィルタ補正には限界があるものと

考えられた。 【まとめ】今回行った検討において、渦電流の影響の

みによる歪み画像を得ることは出来なかった。 フィルタ補正は、磁場の均一性が良いところに対して

は効果が得られるが不均一な箇所では、 その効果は得られにくい。 よって、磁場中心部での撮像が望ましい。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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42 3T MRIでの Double Echo Steady State を用いた脊椎神経根撮像の基

礎的検討 山口大学医学部附属病院 放射線部

山根正聡 中村敬子 近沢苑 久冨庄平 藤本昂也 山内秀一

【背景・目的】

Double Echo Steady State (DESS) は, T1

強調 (FISP) 画像に HeavyT2 強調 (PSIF)

画像を合成した信号を収集する 3D - GRE 法

である.従来は関節系の撮像に用いられており,

他部位に適用された報告は少ない.

本研究では, 神経・筋肉・脊髄と同等の T1・

T2 値を模擬した試料を作成し, 脊椎神経根描

出を目的とした至適撮像パラメータの基礎的

検討を行った.

【実験方法】

使用装置は SIEMENS 社製 Skyra 3T , フ

ァントムは日興ファインズ株式会社製 MRI

ファントム 90 – 401 型を用い, ファントム

内に神経・筋肉・脊髄を模擬した自作試料を封

入した. TR を 9 〜 15 ms に変化させた場合

と, FAを 5 〜 90度に変化させた場合の画像

を取得し,得られた画像から, SNR・Contrast・

CNRを算出した.SNRは差分法, CNRは組織

間測定法を用いた. Contrast・CNR は, 神経

と筋肉・脊髄を比較した.

【結果】

TR を変化させた場合は, 各試料の SNR・

Contrast・CNR に変化はなかった.

FA を変化させると, Fig. 1 に示すように,

SNR は筋肉を模擬した試料において, 10~20

度で高くなり以降はやや低下した.神経を模擬

した試料は 25 度, 脊髄を模擬した試料は 30

度以上で一定値を示した. CNR は, Fig. 2 に示

すように筋肉を模擬した試料では 30 度, 脊髄

を模擬した試料では 35 度以上で一定の値を示

した. FA を大きくすると Contrast は上昇し,

筋肉・脊髄を模擬した試料は 35 度以上で一定

値を示した.

Fig. 1 筋肉・神経・脊髄を模擬した試料の SNR

Fig. 2 神経を模擬した試料に対する筋肉・脊

髄を模擬した試料の CNR

【考察】

TR を変化させても SNR・Contrast・CNR

に変化はなかったことより, TR は撮像時間が

最短となる 9 ms が至適と考える.

FA は筋肉を模擬した試料で SNR が低下す

る傾向を示したが , 神経と脊髄の SNR ・

Contrast・CNR は 35 度以上で一定値を示すこ

とから, FA は 35 度以上が至適と考える.

【結語】

自作ファントムを用いた物理評価より, 脊

椎神経根撮像の至適撮像条件は, TR は 9 ms,

FA は 35 度以が至適であると言える.

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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43 FSE-FLAIR法の180°IRパルス励起法の違いがスライス形状やTIに与える影響

川崎医科大学附属病院 中央放射線部

守屋 和典 村上 公一 吉田 耕治 阿部 俊憲 松本 博樹 岸 祐助 佐伯 悠介 柳元 真一

【目的】 当院では肝臓 MRI検査において,息止め併用 Fast Spin Echo-Fluid Attenuated Inversion Recovery(FSE-FLAIR)法を撮像しているが,マルチスライス撮像時に撮像中心から離れるほど水抑制ムラが生じている. そこで,今回我々は FSE-FLAIR法の 180°IRパルス励起法の違い(Fig.1)に着目し,撮像中心からの距離によって水抑制に与える影響を検討した.

【方法】 東芝メディカルシステムズ社製 MRI装置 EXCELART Vantage MRT-2003/S5 1.5Tで設定可能な Sequential,Interleave,Coverage interleaveの計 3種類の 180°IR パルス励起法の違いについて,Fig.1の7枚目のスライスを center slice,1枚目のスライスを offset sliceとし,①撮像中心からの距離による null pointの違い,②撮像中心からの距離によるFWHMの違い,③Magnetization transfer ratio(MTR)の違いの 3項目について検討した.受信コイルは Atlas SPEEDER Body coil(腹側)および Atlas SPEEDER Supine coil(背側)を使用した.基本の撮像条件は,TE:90msec,TR:4000msec,TI:1000msec,ETL:23,FOV:256mm×256mm,Matrix:256×256,Slice thickness:6mm,slice gap:1.5mm,Band width:326Hz/pixelとしたが,①の検討では TIを1100~1600msecまで50msecずつ変化させて,自作ファントムの信号強度を測定し,null pointを算出した. 今回使用した自作ファントムは,ポリプロピレン製の容器に生理食塩水を満たしたシリンジを挿入し,PVAゲルを封入したものである.また②の検討では,日興ファインズ社製 MRIファントム 90-401型を用い,ウェッジ法で FWHMを算出した.③の検討では肝実質とのう胞の MTRを比較することを目的とし,MRIファントムのコントラストセクショ

ンの含水率 75,77,79%の PVAゲルと生理食塩水の信号強度値を測定し,以下の式(1)を用いて MTRを算出した.また,生理食塩水測定時のみ IRパルスを用いない FSE法で撮像した. 【結果および考察】 Sequential法は, 180°IRパルス励起幅が狭いため, IRパルスは隣のスライスに干渉せず, center と offsetのスライスで null pointに差が生じなかった.ただし,今回の実験では生理食塩水のみのファントムで null pointの検討を行っており, cross talk や Magnetization Transfer Contrast (MTC)効果の影響が大きい結果となった Sequential法では,実際には centerとoffset のスライスで null pointは一致しないと推測される. Interleave法では cross talkの影響は最も少なかったが,180°IRパルス励起幅が広いため隣のスライスに干渉し,単位時間あたりにIRパルスが多く印加される center slice のほうが,offset sliceに比べ null point が短縮し,その値に差が生じた. Coverage interleave法では隣り合うスライスの撮像間隔を大きく開けることが可能であり,cross talkや MTC効果の影響が抑制され,null point に差は生じなかった.

【結語】 スライス励起法に Coverage interleave 法を選択することで,cross talkやMTC効果の影響を低減可能であり,FSE-FLAIR法における水抑制ムラを防止することが可能である.

MTR=100×(Ms-Mm)/Ms(%)…(1) Ms:single sliceの信号強度 Mm:multi sliceの信号強度

Table1 各種 180°IR パルス励起法における center および

offset sliceのnull pointとFWHM

Fig.2 各種 180°IR パルス励起法における MTR

の違い

Fig.1 各種 180°IR パルス励起法におけるスライス

励起順の違い

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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44 頚部伸展位と後屈位での嚥下に伴う体動の変化

高知大学医学部附属病院放射線部

安並洋晃 森田一郎 山形 憲生

【目的】頭頸部の MRI検査において、嚥下(唾

を飲み込む)の伴う体動がモーションアーチフ

ァクトにつながることがあるため、体位による

体動の変化を検討した。

【方法】仰臥位で頚部を伸展した体位と、脊椎

が円背した患者を模し、頚部が後屈した体位で

の嚥下に伴う体動の変化を観察した。

1 TRICKS(20F/4Sec)による、矢状断の連続撮

影。

2 T2WI撮影中に、一度嚥下を行い矢状断、横

断像の撮影。

3 各体位での、嚥下間隔の時間測定と撮影時

間との比較。

4 後屈位での FLAIRの撮影。

【使用機器】

MRI装置 Signa HDx 3.0T(GEヘルスケアジ

ャパン)

使用コイル HD Neurovascular Array Coil

【結果】

1 矢状断の連続撮影では、伸展位では舌、咽

頭周辺のみ体動が認められたのに対し、後

屈位では頭頂部でも体動が認められた。

2 T2WIの矢状断では、後屈位でのアーチファ

クトが増加し、横断像でも後屈位で、若干

のアーチファクトが認められた。

3 嚥下間隔は、後屈位で短くなり T2WIでは、

四名中一名が、FLAIRでは四名全員が撮時

間中に、唾を飲む結果となった。

4 後屈位での FLAIR(interleave)の撮影で

は撮影の前半(50秒)で一度、嚥下したの

で奇数のイメージで、アーチファクトが現

れ下方のレベルほどアーチファクトは、強

く現れた。

【考察】

脊椎が円背した患者では、仰臥位の体位をとっ

た時、頚部が後屈することが多いので、モーシ

ョンアーチファクトの発生を防ぐために、頚部

が伸展するポジショニングの工夫が必要であ

り、患者がより快適に検査を終えることにも繋

ると考えられる。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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45 股関節軟骨 T2map の関節内視鏡所見との対比による評価

広島大学病院 診療支援部 高次医用画像部門

○穐山 雄次 岩角 至子 山岡 秀寿 高橋 佑治 横町 和志 三好 泰輔

久米 伸治 石風呂 実

目的

MR 検査は関節軟骨を非侵襲的に評価でき

る唯一の画像診断法である。T2mapping

は軟骨のコラーゲン繊維が破綻して浮腫を

来たした場合、早期に損傷部位を評価する

ことが可能と考えられている。本研究の目

的は、変形性股関節症の関節軟骨部の

T2map と関節内視鏡所見とを対比し、

T2mapによる軟骨の T2値の分布は、実際

の軟骨損傷の程度をどこまで評価している

のか検討することである

使用装置

Signa EXCITE HDxt 3.0T (GE社製)、

8 channel Cardiac phased array coil、

T2map作成ソフトは Baum(大阪大学)を

使用した。

検討方法

1.ボランティアの正常股関節軟骨の T2 値

を測定する。2. 変形性股関節患者の術前検

査において軟骨部分の T2mapping を行い、

寛骨臼側、大腿骨頭側のそれぞれの関節軟

骨の T2値を求める。3.術中の関節内視鏡画

像を参照し、実際の軟骨変性を視覚的に評

価し、損傷程度を Grade 分類する。4.

T2mapping と関節内視鏡画像所見を比較

する。

結果

正常軟骨の T2 値は、36.9msec(中央値)

で浅層は深層と比較して長くなった。

CoronalはSagittalよりT2値が長いのは、

静磁場に対して 54.°の角度にあたる軟骨組

織では、マジックアングル効果の影響によ

り、僅かに高い値を示しているためと考え

られる。寛骨臼と大腿骨頭の軟骨を

6segment に分けて T2 値を求めた。また、

関節内視鏡画像上で軟骨が滑らか

(Grade1)、凸凹(Grade2)、菲薄化

(Grade3)、毛羽立ち様(Grade4)に分類

した。軟骨の T2値と軟骨の損傷程度の関係

は、損傷(Grade)が大きくなるほど、T2

値が長くなることが示された。

考察

現在の T2mappingは、2次元画像であるた

め評価する領域の範囲が限られる欠点があ

り、必ずしも同等の部分を比較評価してい

るとはいい難い。今後 3次元mappingに期

待したい。

結論

股関節軟骨 T2mapping は、関節内視鏡所

見と同等に軟骨の損傷の程度を客観的に高

い精度で評価することが可能である。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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