平成20年度資源循環推進調査 (3Rシステム化可能性調査事...

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平成20年度資源循環推進調査 (3Rシステム化可能性調査事業) 廃潤滑油と廃食用油によるバイオ再生重油の製造及び 家庭廃食用油の回収システムに関する調査報告書 平成21年3月 株式会社新日石総研

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  • 平成20年度資源循環推進調査

    (3Rシステム化可能性調査事業)

    廃潤滑油と廃食用油によるバイオ再生重油の製造及び

    家庭廃食用油の回収システムに関する調査報告書

    平成21年3月

    株式会社新日石総研

  • はじめに

    廃食用油のうち業務用のものは飼料等に再資源化されているが、家庭廃食用油はそのほと

    んどが一般ごみとともに焼却処分されている。 この家庭廃食用油を高濃度バイオディーゼル燃料(BDF)として有効利用する試みは、

    一部の地方自治体等で取り組まれてきたが、ディーゼル車に対するトラブルが数多く指摘さ

    れており、技術的な課題が多いため、本年 2 月 9 日に国土交通省からガイドラインが出され、指導が強化されることになった。 また、揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律(平成 21 年 2 月 25 日施行)により、高濃度BDFの製造や使用に制限が加えられることとなった。 これを受けて、一部の自治体等では廃食用油のBDF化を見直す動きがある。 また、一方ではごみ有料化を実施、若しくは予定している自治体もあり、家庭廃食用油の

    高濃度BDF以外の適切な再資源化が求められている。 本調査研究は、このような状況下で行われたもので、家庭廃食用油を廃潤滑油と混合し、

    良質の工業炉用燃料である「バイオ再生重油」として再資源化を図るものである。 本事業は、札幌市の家庭廃食用油を社会福祉法人が回収作業を行い、北広島市の再生重油

    製造工場でバイオ再生重油を製造し、訓子府にある石灰焼成炉において燃焼実験が行われた。 その結果、家庭廃食用油は、問題なく工業炉用燃料である「バイオ再生重油」として商業規

    模で再資源化することが可能であることがわかった。 廃食用油の再資源化のために本報告書が参考になれば幸甚である。 本調査研究を行うにあたり、回収拠点を提供していただいた石油販売店(北海道エネルギ

    ー株式会社、栗林石油株式会社、株式会社トキワ、北日本石油株式会社、北海道カーオイル

    株式会社、株式会社キタセキ、株式会社アイックス、前側石油株式会社の各社)、スーパー(ホ

    クレン)及びご協力いただいた札幌市民の方々に厚く御礼申し上げます。 また、ご指導いただいた検討委員会の吉田委員長をはじめ委員各位並びに関係各位に深く

    感謝申し上げます。

    平成21年3月 株式会社新日石総研

  • 目 次

    1.調査の背景及び目的 1.1 調査の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 調査の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2.調査研究の体制及び実施状況 2.1 委員会の設置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

    2.2 委員会開催状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2.3 札幌市への事前説明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2.4 北海道保健福祉部福祉局障害者保健福祉課への説明 ・・・・・・・・・ 4 2.5 石油販売店(給油所)への協力要請 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.6 エコプロダクツ展への出展 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 3. バイオ再生重油の原料について 3.1 廃潤滑油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 3.1.1 廃潤滑油の全国バランス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

    3.1.2 再生重油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 3.1.3 廃潤滑油の性状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3.2 廃食用油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 3.2.1 廃食用油の全国バランス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

    3.2.2 廃食用油の油種及び組成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 3.2.3 廃食用油の性状分析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

    3.3 バイオ再生重油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 4.バイオ再生重油の製造に伴う技術的な問題点の実験室レベルでの検討 4.1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 4.2 廃食用油に含まれる粘着性物質等の分離及び除去技術の検討 ・・・・・ 18 4.2.1 ろ過フィルターの材質に関する検討 ・・・・・・・・・・・・・ 18

    4.2.2 廃食用油のろ過速度と温度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 4.2.3 粘着性物質の分離の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 4.3 酸化劣化による粘着性物質の生成の可能性に関する検討 ・・・・・・・ 22

    4.4 バイオ再生重油の大型遠心分離機による精製実験 ・・・・・・・・・・ 28 4.4.1 原料及び実験装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 4.4.2 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 4.4.3 実験結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

    4.5 まとめと課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 5.経済的な家庭廃食用油の回収システムの検討 5.1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 5.2 札幌市における回収拠点の確立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 5.2.1 自治体への協力依頼 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 5.2.2 回収拠点の確立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

    5.3 家庭廃食用油の回収方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 5.3.1 朔風による回収作業について ・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 5.3.2 回収ボックスとのぼりの設置 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

    5.4 朔風における荷役及びろ過作業の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・ 37

  • 5.4.1 荷役作業の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 5.4.2 ろ過作業の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

    5.5 回収作業の実績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 5.5.1 全体の回収作業実績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 5.5.2 拠点別回収実績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

    5.6 家庭廃食用油の回収経費と収入 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 5.7 経済的な回収システム構築について ・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 5.8 地方の取組み例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 5.9 まとめと課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

    6.再生重油製造工場におけるバイオ再生重油の製造に伴う問題点・製造コストの検討 6.1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 6.2 家庭廃食用油の前処理及び受入れ作業 ・・・・・・・・・・・・・・・ 47 6.3 バイオ再生重油の製造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 6.3.1 全体の製造工程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 6.3.2 バイオ再生重油の製造時の作業手順 ・・・・・・・・・・・・・ 49 6.3.3 原料と製品及び製造工程におけるバイオ再生重油の性状変化 ・・・ 49

    6.4 バイオ再生重油の製造コストの算出 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 6.4.1 通常時(再生重油製造)の製造コスト ・・・・・・・・・・・・ 53 6.4.2 バイオ再生重油製造コスト ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

    6.5 バイオ再生重油の製造のための追加設備と生産コスト ・・・・・・・・ 54 6.6 まとめと課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55

    7.バイオ再生重油中の廃食用油含有量の定量分析方法について 7.1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 7.2 バイオ再生重油に含まれる廃食用油含有量の定量分析法 ・・・・・・・ 56 7.3 まとめと課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

    8.バイオ再生重油の燃焼実験 8.1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 8.2 訓子府石灰工業の焼成炉について ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 8.3 バイオ再生重油の燃焼実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 8.4 バイオ再生重油のCO2削減効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

    9.廃食用油バイオディーゼル燃料との比較について 9.1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 9.2 高濃度バイオディーゼル燃料(BDF)について ・・・・・・・・・・ 66 9.3 揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律について ・ 68 9.4 自治体の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 9.5 バイオ再生重油と高濃度BDFとの比較 ・・・・・・・・・・・・・・ 69

    10.まとめと今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 添付資料 高濃度バイオディーゼル燃料等の使用による車両不具合等防止のためのガイドライ

    ン(指導要領)2009_02_09_ver1.0 国土交通省自動車交通局

  • 1.調査の背景及び目的 1.1 調査の背景

    廃食用油のうち業務用のものは飼料等に再資源化されているが、家庭廃食用油はそのほとん

    どが一般ごみとともに焼却処分されている。 この家庭廃食用油をバイオディーゼル燃料(BDF)として有効利用する試みは、京都市等

    の地方自治体で取り組まれているが、ディーゼル車に対するトラブルが数多く指摘されており、

    技術的な課題が多い1、2)。 また、技術的な問題のほかにも、製造コスト及び家庭廃食用油の回収量及びコスト等経済的

    な面でも困難な課題を抱えている。 この廃食用油を工業炉用燃料として再資源化する検討は、平成 16 年度の経済産業省の調査

    研究3)で行われ、廃潤滑油と混合することにより、比較的良質な工業炉用燃料として使用でき

    ることがわかったが、廃食用油の混合比率が多くなると廃食用油に含まれている粘着性物質が

    原因で廃潤滑油に含まれる灰分がバーナフィルターを閉塞させる恐れがあることも指摘されて

    おり、検討すべき課題が残っている。 また、家庭廃食用油の回収は、ロットが小さいため経済性が悪いことが指摘されており、経

    済効率を考慮した新たな回収システムの検討が必要とされている。

    1.2 調査の目的 廃食用油は、カロリーが比較的高く不純物が少ないものの流動点が高いため固化する場合が

    あり、単独では燃料として使用することが難しい。 一方、廃潤滑油には添加剤に由来する灰分等の不純物が含まれているが、流動点が低い。 そこで、この廃棄物である両者を混合することにより、安価で良質な工業炉用燃料(バイオ

    再生重油)の製造の可能性を検討すると共に、家庭廃食用油の効率的な回収システムの構築に

    ついて検討した。 廃食用油のうち、家庭から排出されるものが年間約 10 万トン程度4)あるが、回収システム

    が確立されていない等のためほとんどが、焼却処分されている。 一方、廃潤滑油は、既に回収システムが確立されており、主に再生重油(工業炉用燃料)と

    してリサイクルされている。 植物由来の廃食用油をこの再生重油と混合し、工業炉用燃料としてリサイクルすることによ

    り、地球温暖化の原因である二酸化炭素発生量の削減が期待できる。 本調査研究においては、次の5項目について検討した。

    (1)バイオ再生重油の製造に伴う技術的な問題点の実験室レベルでの検討 廃潤滑油と廃食用油を混合した、いわゆるバイオ再生重油の製造及び使用に伴う技術的な

    問題点について、実験室レベルで検討した。 廃食用油には、食用油(大豆油、菜種油、パーム油等)に由来する様々な種類があり、ま

    た、使用経歴も異なるため、品質性状も様々である。 廃食用油は、廃潤滑油と比較して酸化劣化しやすく、使用先の工業炉の燃料供給系統にお

    いて高分子状の劣化物が生成する可能性があり、酸化劣化傾向の把握が必要である。 (2)経済的な家庭廃食用油の回収システムの検討 廃食用油のうち、食品製造業や外食産業等業務用のものは、産業廃棄物として取り扱われ、

    産業廃棄物業者が回収し、飼料や化学原料等にリサイクルされている。 これに対して、家庭から排出される廃食用油は、量が少量であることや回収場所が分散し

    1

  • ている等のため回収コストが嵩み、そのほとんどが一般ごみと共に焼却処理されている。 家庭廃食用油の量は、全国で年間 10 万トン程度と推定されている。

    地域の消費者、給油所、スーパー、非営利団体等の協力を得て、社会福祉法人による経済

    性のある回収システムについて検討した。 (3)再生重油製造工場におけるバイオ再生重油の製造に伴う問題点・製造コストの検討 バイオ再生重油の製造の実証化実験を行うには、実際の再生重油製造工場で廃食用油を混

    合する実験を行うことが必要である。 回収された家庭廃食用油は、冬季は固化しているので、前処理としての溶解作業が必要で

    あり、効率的な前処理の検討が不可欠である。 (4)バイオ再生重油中の廃食用油含有量の定量分析方法の検討 現在、バイオ再生重油に含まれている廃食用油の含有量を確認する標準的な分析方法がな

    い。バイオ再生重油の普及を促進するには、安価で精度の高い標準的な分析法が必要である。 そこで、性状が比較的再生重油に近い「切削油剤 JIS K2241」の追補1に規定されてい

    る「赤外分光光度計による脂肪油分試験方法」が適用可能かどうかを検討した。 (5)バイオ再生重油の燃焼性に関する検討 バイオ再生重油の普及を図るには、実際の商業施設での燃焼実験が必要である。再生重油

    は、主にアルミ工業の溶融炉や石灰工業の焼成炉等直火使用工業炉で使用されている。 そこで、石灰焼成炉において再生重油からバイオ再生重油(5%廃食用油混合)への切替

    えに伴う運転上の問題点、排ガス性状及びCO2削減効果を把握するための燃焼実験を行った。 2.調査研究の体制及び実施状況

    2.1 委員会の設置 学識経験者、燃料・燃焼の専門家、消費者及び福祉行政の代表から構成される委員会を札

    幌で設置した。委員名簿を表 2-1 に示した。 表 2-1 バイオ再生重油検討委員会 委員名簿 敬称略

    氏 名 所 属 委員長 吉田 文和 北海道大学公共政策大学院経済学研究科 教授 中野 孝浩 北海道保健福祉部福祉局障害者保健福祉課 課長 塩谷 日出子 社団法人 札幌消費者協会 山田 太郎 全国オイルリサイクル協同組合 専務理事 畦(うね)田 文博 訓子府石灰工業株式会社 代表取締役 事務局 岡本 康男 株式会社新日石総研 環境・製品技術調査部 部長

    オブザーバー:柴田 進 社会福祉法人 朔風 長谷川 徹 環境開発工業株式会社 会長

    2.2 委員会開催状況 (1)第1回委員会 ・日時:平成 20 年 10 月 27 日 14:00~16:00 ・場所:札幌エルプラザ研修室4 ・議事内容:委員紹介の後、委員長として吉田文和氏を選出した。本調査研究の概要、本委

    2

  • 員会の設置目的等を説明した。委員からは、回収作業の採算性、回収量の目標及び廃食用

    油のBDF化との違いについて質問があった。札幌市では、廃食用油のBDF化を推奨し

    ているが、リサイクルのルートは複数あったほうが良いとの意見があった。 (2)第2回委員会 ・日時:平成 20 年 12 月 8 日 14:00~16:00 ・場所:札幌エルプラザ 中研修室C ・議事内容:朔風の柴田氏から、回収状況の説明があった。また、バイオ再生重油中の廃食

    用油含有量の分析法が必要であるとの指摘があった。さらに、BDF化との違いをアピー

    ルすべきとの意見があった。 (3)第3回委員会 ・日時:平成 21 年 3 月 5 日 10:00~12:00 ・場所:札幌エルプラザ 特別会議室 ・議事内容:市民からは、廃食用油の行き先が良くわからない。窓口は多いほどいい。ごみ

    有料化を 7 月に控えているので、今回の成果を市民に広く知らせてほしいとの要望があった。訓子府町の取り組み紹介があり、町の役場が市民に要請し、社会福祉NPOが回収し

    て、地元の訓子府の石灰工場で使用するので、わかりやすいとの指摘があった。また、社

    会福祉の委員からは、今回の取り組みは月収が 1~1.5 万円程度の障がい者に、生きがいを与えることもできるし、収入源にもなるので、大いに広げてもらいたいとの要望があった。 最後に、吉田委員長から、経済、環境、福祉の融合がこれからの社会的課題であるが、今

    回のプロジェクトは、まさにそれにふさわしい取組みである。報告書にはその観点から解

    析してもらいたいとの意見があった。

    2.3 札幌市への事前説明 (1)札幌市環境局環境事業部ごみ減量推進課 ・日時:平成 20 年 10 月 16 日(木)13:30~14:30

    ・応対者:資源化推進係長 村崎英樹氏、泊口直人氏 ・目的:札幌市の家庭廃食用油を回収することに関して、理解と支援を得るため訪問した。 ・結果:札幌市は、廃食用油のBDF化を推奨しており、市民が混乱する恐れがあるので、

    委員として参画することも札幌市のホームページで取り上げて支援することも差し控えた

    いということであった。しかし、社会福祉法人が回収作業を行うということなので、今回

    の実証化実験でいい成果が得られれば検討したいので、途中経過も含めて報告をいただき

    たいということであった。 (2)札幌市保健福祉局保健福祉部障がい福祉課

    ・日時:平成 20 年 10 月 16 日(木)15:00~15:30 ・応対者:就労・相談支援担当係長 成澤元宏氏 ・目的:札幌市の家庭廃食用油を回収することに関して、社会福祉法人が回収作業を行うの

    で、理解と支援を得るため訪問した。 ・結果:札幌市は、家庭廃食用油のリサイクルとしてBDF化を推奨しているので、今回の

    プロジェクトについて委員等への参画は難しい。ただし、今回のプロジェクトは、障がい

    者の就労増加につながるので大いに関心はある、ということであった。

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  • 2.4 北海道保健福祉部福祉局障害者保健福祉課への説明 ・日時:平成 21 年 1 月 26 日(月)10:00~10:45 ・応対者:中野孝浩課長、佐藤博之主任、菊地崇主幹

    ・内容:中野課長には、委員として参画していただいているので、本プロジェクトの状況に

    ついて説明した。 最適な回収システム構築については、今回対象になっている札幌市のほか、道内の地方の

    場合の検討も必要である。北海道の大都市型、地方都市型、農村型それぞれ状況が異なる。

    是非今回のプロジェクトを成功させて、福祉の自立支援を充実させてもらいたい。それに

    は、それぞれの市町村の協力が不可欠である。障がい者のために、公が支援できるシステ

    ムの構築が必要と考えている、とのコメントをいただいた。

    2.5 石油販売店(給油所)への協力要請 (1)北海道石油業協同組合連合会・北海道石油商業組合及び札幌地方石油業協同組合 ・応対者:北海道石油業協同組合連合会・北海道石油商業組合 専務理事 桜井照安 氏

    札幌地方石油業協同組合 専務理事 上島正光 氏 ・内容:北海道における石油販売会社の組織である北海道石油業協同組合連合会・北海道石

    油商業組合及び札幌地方石油業協同組合を訪問し、趣旨説明を行い、協力要請を行ったと

    ころ、各販売会社と個別に交渉してもらいたいということであった。 (2)石油販売店

    ・訪問先:新日本石油系列の北海道エネルギー、栗林石油及びトキワ、コスモ石油系列の北

    日本石油、北海道カーオイル及びキタセキ、出光系列のアイックス、JOMO系列の前側

    石油等 ・内容:大手の販売会社を中心に訪問し、家庭廃食用油の回収拠点の提供について協力要請

    を行った。 その結果、賛同を得たのは、新日本石油系列の北海道エネルギー、栗林石油及びトキワ、

    コスモ石油系列の北日本石油、北海道カーオイル及びキタセキ、出光系列のアイックス、

    JOMO系列の前側石油で、拠点として提供を受けたのは、社会福祉法人の回収用トラッ

    クが出入りし易く、住宅地に近い札幌市内 56 箇所の給油所である。 販売店からの要請で、外部から目に付きやすい宣伝用の「のぼり」と控え室には「説明パ

    ネル」を用意した。石油販売店を訪問する前は、回収拠点として提供してもらえるかどう

    か不安であったが、各社とも社会貢献ということで対応は好意的・積極的であった。

    2.6 エコプロダクツ展への出展 エコプロダクツ 2008(12 月 11 日~13 日)の経済産業省の「3Rシステム化可能性調査

    事業」のブースに、本プロジェクトである「廃潤滑油と廃食用油によるバイオ再生重油の製

    造及び家庭廃食用油の回収システムに関する調査」が展示されることになったため、展示用

    の廃潤滑油、廃食用油及びその 50/50混合品のサンプル及び説明用パネル原稿を作成した。 3. バイオ再生重油の原料について

    3.1. 廃潤滑油 3.1.1 廃潤滑油の全国バランス

    平成 18 年度に社団法人潤滑油協会が行った調査結果によると、我が国の使用済み潤滑油の

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  • 年間発生量は、約 104 万 kL と推定されている。

    そのうち約 88 万 kL/年が回収され、簡単な精製処理(ごみ・水分の除去、引火点調整程度)

    後、約 54 万 kL が再生重油として主に工業用炉用燃料として再利用されている。

    潤滑油として再生されているものは一部の工業用潤滑油とコンクリート離型剤のみで、量

    的にもごく僅かである。再生重油としての規格(TS K 0010)に達しないものは焼却処分され

    ており、その量は約 23 万 kL である。図 3-1 に廃潤滑油の全国バランスを示した。

    図 3-1 廃潤滑油の全国バランス5)

    3.1.2 再生重油

    上で述べたように、回収された廃潤滑油のほとんどは工業炉用の燃料である再生重油とし

    て年間 54 万 kL がリサイクルされている。 再生重油の品質は、標準仕様書 TS K 0010 で規定されており、それを表 3-2 に示した。

    表 3-2 再生重油の品質6)

    項 目 1種※ 2種※※

    引火点 ℃ 70 以上 70 以上

    動粘度 50℃ mm2/s 50 以下 50 以下

    流動点 ℃ -10℃以下 -10℃以下

    灰分 質量 % 1.0 以下 1.0 以下

    硫黄分 質量 % 1.0 以下 1.0 以下

    塩素分 質量 ppm 1000 以下 2000 以下

    水分 質量 % 1.0 以下 1.0 以下

    総発熱量 J/g 41,800 以上 41,800 以上

    ※ 1 種 排ガス処理設備が設置されていない炉

    ※※ 2 種 排ガス処理設備が設置されている炉

    ここでの排ガス処理設備とは,消石灰と活性炭の吹き込み設備やバグフィルター式集塵設

    備等のダイオキシン類低減のための設備及びその機能を有する設備をいう。

    5

  • 表 3-2 で示したように、再生重油は、灰分含有量が比較的多いが流動点が低いという特徴を有している。これは、再生重油の主な原料である使用済みエンジン油に含まれている添加

    剤や潤滑油としての特性に由来するものである。 この性状のため、使用用途としては、工業用のボイラの他、アルミ溶融炉や石灰焼成炉の

    ような直火使用用途が多い。

    3.1.3 廃潤滑油の性状 豊橋市内のガソリンスタンド 5 箇所から廃潤滑油(油種は主として自動車用エンジン油)

    を入手した。その性状を表 3-3 に示した。灰分がやや多いが流動点が低く、代表的な廃エンジン油の性状を示している。

    また、赤外吸収スペクトル(図 3-2)の結果、鉱油以外にエンジン油の添加剤に基づくカルボニル(1730cm-1、1700cm-1)、ポリメタクリレート、コハク酸イミド類と推定される吸収が認められた。

    表 3-3 廃潤滑油の性状 項目 廃潤滑油 密度 15℃ g/cm3 0.861 動粘度 mm2/s 40℃ 100℃

    25.63 5.721

    水分 Vol% 0.05 未満 硫黄分 % 0.36 灰分 % 0.45 引火点(PM) ℃ 135 残留炭素分 % 0.98 流動点 ℃ -32.5 ペンタン不溶分(A)% 0.14

    エステルの吸収

    ポリメタクリレートと推

    定される カルボン酸 -OH 基

    図 3-2 廃潤滑油の赤外吸収スペクトル

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  • 3.2 廃食用油 3.2.1 廃食用油の全国バランス

    国内の食用油の年間使用量は、年間約 237 万トンで、そのうち外食産業や食品工業に約 198万トンが使用され、一般家庭用としては約 39 万トンが使用されている。

    廃食用油に関しては、外食産業や食品工業等業務用のものは産業廃棄物として取り扱われ、

    産業廃棄物処理業者が回収し、鶏の飼料、工業用脂肪酸等に再資源化されている。 一方、家庭からの廃食用油の発生量は、年間 10 万トン程度と推定されており、主に新聞

    紙に吸収させたり凝固剤で固めた状態で排出され、一般廃棄物として自治体により一般ごみ

    と共に回収されて焼却処理されているが、今後、自治体のごみの有料化が進展するに伴い、

    住民からも適切な再資源化を要望する声が大きくなることが考えられる。 廃食用油の全国バランスを図 3-3 に示した。

    図 3-3 廃食用油のバランス4)

    家庭からの廃食用油を回収する検討は、今までも自治体等を中心に行われてきたが、発生

    元が分散し少量のため回収にコストがかかることや消費者が回収に出しにくい等の理由でリ

    サイクルシステムの構築が困難であるとされてきた。

    3.2.2 廃食用油の油種及び組成 食用油脂には大きく分けて植物油脂と動物油脂がある。植物油脂には、大豆油、菜種油、

    7

  • ひまわり油、パーム油、とうもろこし油等がある。また、動物油脂には水産油脂と畜産動物

    油脂がある。 油脂は、3 価のアルコールであるグリセリン1分子に脂肪酸 3 分子がエステル結合したト

    リグリセリドを主成分とするもので、以下のような構造の化合物である。

    CH2-OOC-R1

    CH-OOC-R2

    CH2-OOC-R3

    加水分解すると、種類によって、各種高級脂肪酸が得られる。これら高級脂肪酸は、炭素

    数が 18 のものが多く、6~24 の範囲で分布している。飽和高級脂肪酸および不飽和脂肪酸(二重結合数 1~3)は、外観が異なり、前者が固形、後者が液体である。油脂の物理化学的性質は結合する脂肪酸の種類に大きく影響される。

    オレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸は酸化されやすいものの融点が低いものが多

    く、常温では液体で存在する場合が多い。 一方、パルミチン酸やステアリン酸などの飽和脂肪酸は、酸化されにくいものの、融点が

    高いものが多いため、飽和脂肪酸を多く含む牛脂、パーム油などは常温で固体として存在す

    るものが多い。 家庭廃食用油はこれらの混合物と考えられることや使用経歴もそれぞれ異なるので、性状

    は一定ではない。 3.2.3 廃食用油の性状分析結果

    今回の実証化実験の廃食用油としては、家庭から排出されるものを主な検討対象とするが、

    個人の食堂からのものも混ざって回収される可能性もあるため、検討範囲を広げて性状を調

    べた。 また、家庭廃食用油は油種や使用経歴がはっきりしていないものが多いので、今回の性状

    分析や遠心分離機による精製実験には、食用油の種類がはっきりしている個人食堂のものと

    コンビニから入手したものを使用した。 比較のために、札幌市内で「朔風」が回収した家庭廃食用油についても性状分析を行った。 (1)入手した廃食用油

    ①O食堂(蒲郡市) ・食用油の種類;エクセレント DF-30(食用大豆油、食用パームオレイン、シリコーン)

    ・製造者:日清オイリオグループ(株)、発売元:三菱商事(株) ・外観:淡褐色透明油で缶底部に少量の沈積物あり

    ・石油エーテル脱油後の沈殿物:0.14%(揚げ滓と思われる) ・使用経歴:魚、野菜等のてんぷら類の揚げ物が多い。

    ②S 食堂(豊川市)

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  • ・外観:淡褐色透明油で缶底部に少量の沈積物あり ・石油エーテル脱油後の沈殿物:0.03%(揚げ滓と思われる) ・使用経歴:定食屋で魚、野菜、肉類等総ての揚げ物

    ③コンビニ(S・豊橋伊古部店)(豊橋市) ・外観:褐色透明油で缶底部に黄白色沈積物(5Vol%)あり ・石油エーテル脱油後の沈殿物:0.18%(動物性油脂類)※ ※47℃で溶け出し 64℃で完全に溶融し均一な油脂に戻る。また、沈積物が 0.5Vol%析

    出している廃食用油をゆっくりかき混ぜながら昇温すると 60℃付近で均一な液体(油脂)に戻る。唐揚げ等の肉類の揚げ物が多い(析出物は動物系油脂類で揚げ物の肉類

    から溶出したものか、最初から添加していたラード類によるものかは不明)。 ・使用油:食用パームオレイン(菜種油、ひまわり油、シリコン油) ・使用管理(更油の目安):加熱で 600h、油の酸価チェッカーで黄色になった時点で更油、

    揚げ物は最初にポテト、野菜類を揚げて油が汚れてからチキン、肉類を揚げる。 ④社会福祉法人 朔風の回収油(札幌市の家庭廃食用油)

    ・外観:褐色透明(15℃)で、ポリ容器(2L)底部に微量の沈殿物(褐色パン粉状物)が認められる。動物性油脂と思われる沈殿物はない。

    (2) 分析結果 ①外観 今回入手した 4 種類の廃食用油の外観を写真 3-1 に示した。色相が褐色のものがあるが、

    使用経歴の違いによるものと思われる。商業施設から入手した廃食用油は、底部に沈積物が

    見られる。

    O食堂 S食堂 コンビニ 朔風

    写真 3-1 廃食用油の外観

    ② 一般性状分析 入手した 4 種類の廃食用油について、室温(20℃)で透明な上澄み油の部分を分析した。

    その結果を、表 3-4 に示した。

    9

  • 表 3-4 廃食用油の性状 項目 O食堂 S食堂 コンビニ 家庭(朔風) 外観 色相:ASTM)

    淡褐色透明

    (2.5) 褐色透明

    (3.5) 淡褐色透明

    (2.5) 褐 色 透 明

    (2.5) 密度 15℃ g/cm3 0.922 0.921 0.922 0.920 動粘度 mm2/s 40℃ 100℃

    38.74 8.622

    41.04 8.859

    43.21 9.135

    35.62 8.188

    水分 Vol% 0.05 未満 0.05 未満 0.05 未満 0.05 未満 灰分 % 0.00 0.00 0.00 0.00 硫黄分 % 0.00 0.00 0.00 0.00 残留炭素分 % 0.43 0.36 0.44 0.39 反応 中性 中性 中性 中性 酸価 mgKOH/g 0.06 2.78 1.61 0.31 流動点 ℃ 2.5 2.5 -5.0 -12.5 ペンタン不溶分 % 0.05 0.05 0.08 0.01

    表 3-4 に示したように、4 種類ともほぼ同様の性状を示しているが、朔風から入手した家庭廃食用油の流動点が低いのに対して、食堂系とコンビニのものは流動点が高い。

    この理由は、混入している動物性油脂の存在によるものと思われる。灰分や硫黄分等の不

    純物は検出されなかった。

    ③缶底部沈積物 18L 缶底部の沈積物を回収し、石油エーテルで簡単に脱油した後重量を計測し、赤外吸収

    スペクトルで成分を推定した。外観を、写真 3-2 に示した。

    O食堂沈殿物 S食堂沈 殿 コンビニ沈殿物

    写真 3-2 廃食用油の沈殿物の外観

    ④廃食用油及び沈積物の赤外吸収スペクトル 各サンプルの上層部の赤外吸収スペクトルを図 3-4 に示す。図 3-4 に示したように、各サ

    10

  • ンプル共に 1740~1750cm-1付近に油脂特有のエステルのスペクトルを示している。 (O食堂) (S食堂)

    エスルの吸収 エステルの吸収

    (コンビニ) (朔風) 図1 小樽食堂の廃食用油上層部の赤外吸収スペクトル 図 3-4 上層部の赤外吸収スペクトル

    エステルの吸収エステルの吸収

    図 3-5 に沈積物の赤外吸収スペクトルを示したが、コンビニの沈積物は他のサンプルと比

    較して特異なスペクトルを示しているが、これは、写真 3-2 の外観及びこの赤外吸収スペクトルから判断して動物性油脂であると考えられる。

    (O食堂) (S食堂)

    11

  • (コンビニ) (朔風)

    エステルの吸収

    図 3-5 沈積物の赤外吸収スペクトル 以上、沈殿物の赤外吸収スペクトルの結果をまとめると、表 3-5 のようになる。

    表 3-5 底部沈殿物の量と赤外吸収スペクトル 沈積物 試料

    % 灰分% 赤外吸収スペクトル所見

    O食堂 0.14 1.84 油脂の吸収弱く、パン粉等の炭水化物の吸収が見られるS食堂 0.03 2.72 同上 コンビニ 0.25 0.01 油脂の強い吸収が見られる。 ⑤ガスクロマト分析結果 次に、廃食用油(コンビニ)の沈殿物(固形油脂-1)のガスクロマト分析を行った。分析

    条件を表 3-6 に、クロマトグラムを図 3-6に示した。 また、比較データとして数種類の油脂のクロマトグラムを同図に示した。 図 3-6 によると沈殿物は油脂で、植物系油脂より動物系油脂の可能性がより高いことが分

    かった。 なお、この沈殿物は 20℃程度で淡褐色の透明な油状に戻ることから、粘着性物質とは考え

    難い。

    表 3-6 ガスクロマト分析条件 ガスクロマトグラフ 島津 GC-2014 データ処理:島津 GC-Solution カラム Rtx-65TG、長さ 15cm、内径 0.25mm、膜厚 0.1μm カラム温度 100℃(1 分保持)→365℃、昇温速度:20℃/min 試料気化室温度 370℃、検出器:FID、 検出器温度:370℃ キャリアーガス:He 線速度:70cm/sec、入り口圧:129KPa、スプリット比:10

    12

  • 図 3-6 固形油脂(廃食用油:コンビニ・沈殿物)及び油脂類のクロマトグラム

    ⑥廃食用油のシリカゲルクロマト分別 次に、廃食用油を吸着剤であるシリカゲルにより吸着させて、それをタイプの異なった溶

    剤により溶出させ、分別したものの量と赤外吸収スペクトルを調べた。 シリカゲルクロマトの条件は、次のとおりである。

    ・ ガラス製クロマト管(写真 3-3)のシリカゲル:30g(シリカゲル:Silica gel 70~230 mesh60Å)

    ・廃食用油試料:5.0g

    13

  • ・溶出溶剤(試薬特級):各 150ml 溶剤溶出順序:ヘキサン→ベンゼン→メタノール→アセトン

    各溶剤により溶出したものは一般的に次の特性を有している。 ・ヘキサン溶出物の特徴:飽和炭化水素類(パラフィン状)、油脂 ・ベンゼン溶出物:油脂 ・メタノール溶出物:極性が強く、酸化劣化により生成した遊離脂肪酸と考えられる。 ・アセトン溶出物:重質の油脂

    写真 3-3 シリカゲルクロマト管

    クロマト分析の結果を表 3-7 に示した。表 3-7 に示したように、食堂及びコンビニの廃食用油は、朔風が回収した家庭廃食用油に比べてヘキサン溶出分が多い。

    表 3-7 クロマト分別の結果

    ヘキサン溶出分 ベンゼン溶出分 メタノール溶出分 アセトン溶出分 廃食用油 % 外観 % 外観 % 外観 % 外観

    O食堂 5.95 白色油状 82.8 黄色油状 6.24 黄色ゼリー 4.21 黄色油状 S食堂 8.22 白色油状 75.7 黄色油状 11.2 黄色ゼリー 4.79 褐色油状 コンビニ 9.68 白色油状 71.7 白色油状 8.57 黄色ゼリー 9.79 黄色油状 朔風 0.20 白色油状 91.2 淡黄色油状 7.19 黄色油状 1.17 黄色油状 損失分%:O食堂 0.80、S食堂 0.09、コンビニ 0.26、朔風 0.22

    14

  • また、ヘキサン溶出分の赤外吸収スペクトルを図 3-7 に示したが、家庭廃食用油(朔風)の赤外吸収スペクトルは、食堂及びコンビニの廃食用油とは異なった吸収スペクトルを示し

    ている。 何れの廃食用油もヘキサンおよびベンゼンで 90%程度溶出する。O 食堂、S 食堂及びコン

    ビニのヘキサン溶出分とベンゼン溶出分は、スペクトルに有意差はなく、シリカゲルクロマ

    ト分別に用いた上澄み油のスペクトルとほぼ一致する(図 3-7、3-8)。 家庭廃食用油(朔風)のヘキサン溶出物は 0.2%と微量で長鎖メチレン基を有する脂肪族

    炭化水素化合物と考えられるが(図 3-7)、ベンゼン溶出分は他の廃食用油ベンゼン溶出分のスペクトルと一致する(図 3-8)。

    (O食堂) (S食堂) (コンビニ) (朔風) 図 3-7 ヘキサン溶出物の赤外吸収スペクトル ベンゼン溶出分は、表 3-6に示したように量的に一番多く、4 者とも油脂特有の赤外吸収

    スペクトルを示している(図 3-8)。

    15

  • (O食堂) (S食堂)

    (コンビニ) (朔風)

    図 3-8 ベンゼン溶出物の赤外吸収スペクトル メタノール溶出物は、それぞれ 6~11%程度含まれており、赤外吸収スペクトル(図 3-9)

    では、前述溶出分で見られなかった水酸基の強い吸収(-OH、3500cm-1付近)が認められ、食用油が酸化されていることを示している。この吸収はブロードで、前述ベンゼン溶出分等

    で見られたシャープな水酸基の吸収と明らかに異なっている。 このことは、メタノール溶出分の水酸基は含有量が多く、結合環境の異なる種々の水酸基

    が存在し水酸基同士が会合していることを示唆している。 また、この区分で特徴的なことは 1560cm-1 付近にカルボン酸金属塩と推定される吸収が

    認められることである。詳細な分析は行っていないが、油脂が酸化劣化して生成した脂肪酸

    (-COOH)に金属、例えば Na等が反応し、石けん(R-COONa)を生成したものと推定される。

    (O食堂) (S食堂)

    エステルの吸収

    -OH

    -COO

    -COO

    エステルの吸収 エステルの吸収

    -OH

    エステルの吸収

    -OH

    16

  • (コンビニ) (朔風)

    -OH

    -OH -COO

    図 3-9 メタノール溶出物の赤外吸収スペクトル 総てのアセトン溶出分のスペクトルは同じ吸収を示しており、前述メタノール溶出分に比

    べ、水酸基と不飽和結合(1650cm-1 付近)がやや弱くなっている。このことは、この溶出分の脂肪酸部分が比較的飽和分の多い油脂類であること、水酸基が重縮合に関与し減少した

    可能性を示唆している(図 3-10)。 (O食堂) (S食堂) (コンビニ) (朔風) 図 3-10 アセトン溶出物の赤外吸収スペクトル

    17

  • 3.3 バイオ再生重油 廃潤滑油と廃食用油を混合した「バイオ再生重油」の性状を調べた。 混合前の廃潤滑油や廃食用油と比較しやすいように 50%混合品について性状を調べ、その

    結果を表 3-8 に示した。 廃食用油は、廃潤滑油に比べ密度が高い。また、粘度も高い傾向がある。 また、流動点については、廃食用油が低温で固まりやすいのに対して、廃潤滑油の流動点

    は低く、混合油(50/50)でも十分低い性状を保っている。 さらに、灰分や硫黄分のような不純物は、廃食用油と混合することで低減し、工業用燃料

    としては、比較的良質な性状となっている。 表 3-8 バイオ再生重油(50/50)の性状

    項目 廃食用油 廃潤滑油 混合油 50/50

    密度 15℃ g/cm3 0.921 0.861 0.877

    動粘度 40℃ mm2/s 41.04 25.63 30.77

    灰分 mass% 0 0.45 0.29

    流動点 ℃ 2.5 -32.5 -12.5

    硫黄分 mass% 0 0.36 0.16

    4.バイオ再生重油の製造に伴う技術的な問題点の実験室レベルでの検討 4.1 概要

    廃食用油と廃潤滑油の混合燃料をボイラで燃焼させた際、廃食用油の混合比率が多くなる

    と廃食用油に含まれている粘着性物質が原因で廃潤滑油に含まれる灰分がバーナノズルフィ

    ルター閉塞を引き起こす恐れがあることが指摘されているため3)、粘着性物質に関する実験

    を行った。 まず最初に、廃食用油に含まれている粘着性物質の分離実験を行った。次に、廃食用油と

    廃潤滑油を混合することにより新たに粘着性物質が生成するかどうかについても調べた。 さらに、廃食用油の酸化劣化生成物である脂肪酸が熱により劣化しやすいことが知られて

    おり、バイオ再生重油の使用時に、燃料系統において高分子状の劣化物が生成する恐れがあ

    るため、廃食用油の高温下における酸化劣化による粘着性物質生成実験も行った。 その結果、粘着性物質は元々廃食用油に含まれていたものではなく、高温下における酸化

    劣化により、高分子状の粘着性物質が生成したことがわかった。 これらの実験は、株式会社マルサワ(豊橋)に依頼した。

    4.2 廃食用油に含まれる粘着性物質等の分離及び除去技術の検討 数箇所から収集した廃食用油を用いて、粘着性物質の分離及び除去実験を行った。

    また、家庭廃食用油の回収時に、ペットボトルからドラム缶に移す際に使用するろ過効果

    の高いフィルターの検討を行った。

    4.2.1 ろ過フィルターの材質に関する検討 家庭廃食用油を回収時、ペットボトルからドラム缶に写す際使用するろ過性能の高いフィ

    18

  • ルターの材質について検討した。 ろ過条件:

    ・実験に使用した材質:布数種類、綿及び市販のクッキングペーパー ・ろ過装置直径:168mm ・ろ過方法:自然落下 ・廃食用油:500ml ・温度:10、20、40、50℃の各温度で実験した。

    上記条件に於ける時間当たりのろ過液量を計測した。 その中で、優れたろ過性能を示したのは、市販されているライオンのリードヘルシークッ

    キングペーパー(材質:天然パルプ、サイズ:24cm×24cm)で、ろ過速度が最も速かった。

    4.2.2 廃食用油のろ過速度と温度 次に、このクッキングペーパーを用いて、ろ過速度に及ぼす温度の影響について調べた。

    O食堂廃食用油の結果を表 4-1 に、S食堂廃食用油の結果を表 4-2、コンビニ廃食用油の結果を表 4-3、朔風廃食用油の結果を表 4-4 に示した。

    食堂系の廃食用油は、表 4-1~4-3 に示したように、40℃では 500ml ろ過するために要する時間は 45 秒程度であったが、20℃ではろ過速度が大幅に遅くなり 8 分要した。10℃ではろ過できなかった。

    ろ過速度に影響するのは、廃食用油に含まれている動物性油脂であり、それが析出する温

    度以下ではろ過速度が極端に遅くなることがわかった。 一般的な家庭廃食用油の場合(朔風廃食用油)は、20℃でのろ過が可能であった。

    表 4-1 ろ過速度に及ぼす温度の影響(O食堂廃食用油)

    ろ過温度 10℃ 20℃ 40℃ 試料外観 (析出物:50%) 濁りあり 褐色透明

    ろ過時間 sec ろ過油量 ml 15 90 250 30 40 140 450 45 180 485 60 60 200 90 70 240

    120 270 150 300 180 85 320 210 95 340 240 95 360 300 100 390 360 105 420 480 465

    ろ過油外観 濁りあり 僅かに濁る 褐色透明

    19

  • 表 4-2 ろ過速度に及ぼす温度の影響(S食堂廃食用油)

    ろ過温度 10℃ 20℃ 40℃ 試料外観 (析出物:60%) 濁りあり 褐色透明

    ろ過時間 sec ろ過油量 ml 15 80 260 30 40 140 450 45 175 490 60 55 195 90 70 235

    120 80 270 150 300 180 85 315 210 95 340 240 100 360 300 105 395 360 110 425 480 470

    ろ過油外観 濁りあり 褐色透明 褐色透明 表 4-3 ろ過速度に及ぼす温度の影響(コンビニ廃食用油)

    ろ過温度 10℃ 20℃ 40℃ 試料外観 (析出物:60%) 濁りあり 褐色透明

    ろ過時間 sec ろ過油量 ml 15 80 250 30 35 140 430 45 170 480 60 55 200 90 240

    120 75 275 150 300 180 85 320 210 90 345 240 90 365 300 95 400 360 100 430 480 490

    ろ過油外観 濁りあり 褐色透明 褐色透明

    20

  • 表 4-4 ろ過速度に及ぼす温度の影響(朔風回収油) ろ過温度 10℃ 20℃ 試料外観 (僅かに濁る)

    ろ過時間 sec ろ過油量 ml 15 70 360 30 150 470 45 250 60 280 90 360

    120 420 150 435 180 450

    ろ過油外観 濁りあり 褐色透明

    4.2.3 粘着性物質の分離の検討 上記の各種ろ過実験で粘着性の物質が分離できなかったことから、廃食用油中には元々粘

    着性物質が含まれておらず、何らかの原因で生成したと考えられたため、次の実験を行った。 廃食用油と廃潤滑油が混ざった場合、廃食用油の劣化生成物である酸性成分(主として有

    機酸)が、廃潤滑油に含まれる塩基性成分(主として塩基性スルフォネート類)と反応して

    石けんを生成し、相溶性の関係で粘着性物質が析出するかどうかを検討した。 実験方法としては、上述した廃潤滑油(表 3-3)と廃食用油(S 食堂)を1/1(容量比)

    で混合し、70~80℃で 2 時間撹拌した。 性状を表 4-5 に示した。混合前と比較してペンタン不溶分が増加しているが、赤外吸収ス

    ペクトルから判断して、前述缶底部沈積物と同質物と推定された。 また、灰分は廃潤滑油に由来する硫酸カルシウムを主体とするもので、他に 2 酸化ケイ素

    (SiO2)が含まれているが、粘着物質は認められなかった。

    表 4-5 廃食用油/廃潤滑油(1/1 容量比)混合油の性状 項 目 混合油 密 度 15 ℃g/cm3

    0.879

    動粘度 mm2/s 40℃ 100℃

    30.93 6.655

    水分 Vol% 0.05 未満 硫黄分 % 0.18 灰分 % 0.31 残留炭素分 % 0.74 流動点 ℃ -12.5 ペンタン不溶分(A) % 0.27

    21

  • さらに、廃潤滑油中に粘着性物質が存在するかどうかを簡単な分別分析で調べた結果を表

    4-6 に示した。 ゴム膜透析実験は、以下の条件で行い、シリカゲルクロマト分別は常法に従って行った。

    <ゴム膜透析> 試料 5.00gを指サック(ゴム製、石油エーテルで十分洗浄したもの)に採取し、ソックス

    レー抽出器を用いて石油エーテルで 25 時間抽出した。

    表 4-6 廃潤滑油の分別結果 透析油のシリカゲルクロマト分別・溶出分ゴム膜透析 透析油 透析残物 ヘキサン ベンゼン メタノール

    区分量 % 94.5 5.5 51 41 8 外観 黒褐色油状 褐色ゴム状 黒褐色油状 褐色油状 赤褐 WAX 状

    以上の結果から判断して、廃潤滑油が粘着性物質生成に関与している可能性はないと判断

    される。 4.3 酸化劣化による粘着性物質の生成の可能性に関する検討 廃食用油が 25%以上混合した再生重油の燃焼実験の際、バーナノズルのフィルターが閉塞

    する現象が報告されているが3)、バイオディーゼル燃料(BDF)においても燃料噴霧ノズルのコーキングや詰まりが発生することが問題になっており、この原因として酸化安定性に劣

    る燃料から生成された劣化物が噴霧ノズル孔に堆積することによるものであることが指摘さ

    れている1)。 これらの現象には共通点があり、いずれも高温における食用油成分の酸化劣化による高分

    子状物質生成によるものと考えられるので、酸化実験を行い、粘着性物質の生成を確認する

    ことにした。 一般的に、工業炉の炉内は 1000℃程度あり、この条件を実験で再現することは難しいので、

    200℃及び 300℃と低温ではあるが、長時間実験下での酸化劣化による粘着性物質の生成の有無を確認することとした。

    (1)試験方法 廃食用油 30gを磁性坩堝に採取し、200℃及び 300℃に保った空気恒温槽内で所定時間加熱を継続した後、試料油を取り出し性状等を測定した。

    (2)熱劣化による性状変化 ①加熱温度 200℃

    加熱温度が、200℃の時の経時変化(0→3→6 時間)を表 4-7 に示した。 表 4-7 に示したように、加熱時間と共に酸価と不溶分(黄~褐色の樹脂状物質で石油エ

    ーテル、エタノール、ベンゼン、クロロホルム及び四塩化炭素に不溶である)が増加し、

    色相の低下と見かけ粘度の増加が見られた。

    22

  • このことは、熱による酸化劣化と熱重合(重縮合)による油脂の高分子化が進んでいる

    ことを示している。

    表 4-7 加熱温度 200℃における性状変化 廃食用油 O食堂 コンビニ

    加熱時間 h 0 3 6 0 3 6 色相(ASTM) 2.5 2.5 3.0 2.5 2.5 3.0 酸価 mg/KOH 0.67 1.04 2.81 1.61 1.87 2.57 加熱減量 % 0 0.2 0.5 0 0.2 0.5 不溶分* % 0 ― 0.34 0 ― 0.56 見掛け粘度 0h、3h<6h 0h、3h<<6h

    * 両廃食用油とも 6 時間後の不溶分の外観は黄褐色樹脂状で、石油エーテル、 エタノール、ベンゼン、クロロフォルム等に不溶である。

    加熱温度 200℃における O 食堂廃食用油の赤外吸収スペクトル変化を図 4-1 に、コンビ

    ニ廃食用油の赤外吸収スペクトル変化を図 4-2 に示した。 いずれも、時間と共に赤外吸収スペクトルが大きく変化している。

    酸化されたため-OH 基の吸収が強く なり、C=C は、酸化や重合により消滅 したと思われる。

    -OH C=C

    図 4-1 O食堂廃食用油の赤外吸収スペクトル経時変化(200℃劣化実験)

    23

  • 酸化されたため-OH 基の吸収が強く なり、C=C は、酸化や重合により消滅 したと思われる。

    -OH C=C

    図 4-2 コンビニ廃食用油の赤外吸収スペクトル経時変化(200℃劣化実験) ②加熱温度 300℃

    300℃における経時変化(0→1 時間)を表 4-8 に示した。加熱時間は 1 時間であったが、この場合も酸価と不溶分(黄~褐色の樹脂状物質で石油エーテル、エタノール、ベンゼン、

    クロロホルム及び四塩化炭素に不溶である)が増加し、色相の低下と見かけ粘度の増加が

    見られ、熱による酸化劣化と熱重合(重縮合)による油脂の高分子化が進んでいることを

    示している。 表 4-8 加熱温度 300℃における性状変化

    廃食用油 O食堂 コンビニ 加熱時間 h 0 1 0 1 色相 (ASTM) 2.5 3.5 2.5 4.0 動粘度 40℃ mm/s2 100℃

    38.74 8.622

    129.5(3.34)19.79(2.30)

    43.21 9.135

    237.1(5.49) 29.86(3.27)

    酸価 mg/KOH 0.67 2.62 1.61 3.25 加熱減量 % 0 4.5 0 10.3 不溶分 % 0 0.45 0 1.39

    *1 両廃食用油とも加熱 10 分程度で白煙を生じ、白煙量は加熱時間と共に激しくなった。 *2 動粘度( )内は元油に対する動粘度比 *3 不溶分の外観は何れも暗褐色樹脂状で石油エーテル、エタノール、ベンゼン、

    クロロフォルム等に不溶

    24

  • 300℃における廃食用油の性状変化を赤外吸収スペクトル(図 4-3、4-4)に示した。 図 4-3、4-4 に示したように、酸化されたため-OH 基の吸収が強くなり、C=Cは、酸

    化や重合により消滅したと思われる。

    C=C

    酸化されたため-OH 基の吸収が強く なり、C=C は、酸化や重合により消滅 したと思われる。

    -OH 基

    図 4-3 O食堂廃食用油の赤外吸収スペクトル経時変化(300℃劣化実験)

    酸化されたため-OH 基の吸収が強くなり、C=C は、酸化や重合により消滅したと思われる。

    -OH 基 C=C

    図 4-4 コンビニ廃食用油の赤外吸収スペクトル経時変化(300℃劣化実験)

    25

  • 上で述べたように、廃食用油を加熱した場合、200℃では 6 時間、300℃では 1 時間で高分子状の粘着性物質が生成することが確認された。

    工業炉では、バーナ元温度は 1000℃程度の高温にさらされることがあり、廃食用油の比率が高い燃料を使用すると、粘着性の熱劣化生成物が短時間に生成することが考えられる。

    コンビニ廃食用油の熱劣化物(300℃×1 時間)のシリカゲルクロマト分別を実施し、分別

    量及び各区分の性状を赤外吸収スペクトルで調べた。 分別結果を表 4-9 に、赤外吸収スペクトルを図 4-5~4-8 に示した。

    表 4-9 コンビニ熱劣化物(300℃×1h)のシリカゲルクロマト分別 溶出区分 ヘキサン ベンゼン メタノール アセトン

    区分量 % 42.8 38.0 5.8 13.4 酸価 mgKOH/g 0.63 2.85 10.4 3.54 外観 黄色油状 黄色ペトロラタム状 淡褐色粘着物

    *アセトン溶出分は油脂の重縮合物で糸を引く粘着性物質である。

    一般に油脂の吸着力は酸化劣化が進むにつれて強くなると考えられている。 吸着力の弱い油脂成分は無極性のヘキサンで溶出し、酸価も低い。 次いで中程度の極性のベンゼン、更に極性の強いメタノールの順に酸価が高くなっており

    酸化劣化が進んでいることを示している。 また、アセトン溶出物で酸価が低くなっているのは、酸化で生成した水酸基とカルボン酸

    基が反応(縮合)して高分子化し、酸価成分のカルボン酸基が減少しためと考えられる。

    C=C -OH

    図 4-5 コンビニ熱劣化物のヘキサン溶出分の赤外吸収スペクトル

    26

  • 図 4-5 から、ヘキサン溶出分は-OH 基の吸収がシャープであり、C=Cの吸収強度も加熱前のスペクトルと類似しており、この区分は加熱による酸化劣化をほとんど受けてい

    ないことを示している。これに対し、ベンゼン溶出分は、-OH 基の吸収が強くブロードになっており、C=Cの吸収も非常に弱くなっていることから、この区分は、ヘキサン溶

    出分と比較して酸化劣化が進んでいることを示している(図 4-6)。

    図 4-6 コンビニ熱劣化物のベンゼン溶出分の赤外吸収スペクトル

    -OH

    C=C

    COO-

    -OH

    図 4-7 コンビニ熱劣化物のメタノール溶出分の赤外吸収スペクトル

    27

  • メタノール溶出分は、ベンゼン溶出分より-OH基の吸収がさらにブロードで強くなっており、酸化が進んでいることを示している。カルボキシレート(COO-)の吸収は、油脂の劣化物であるカルボン酸(-COOH)と金属(Na等)が反応して石けんを生成していることを示している(図 4-7)。

    -OH

    図 4-8 コンビニ熱劣化物のアセトン溶出分の赤外吸収スペクトル アセトン溶出分は、石けんやC=Cの吸収が見られず、さらに酸化が進んで高分子状の物

    質が生成しているものと推定される(図 4-8)。

    4.4 バイオ再生重油の大型遠心分離機による精製実験 バイオ再生重油の製造工場においては、一般に遠心分離機で精製が行われるので、その性

    能について検討を行った。 実際の製造工場において、100%廃食用油及び 50%バイオ再生重油の遠心分離機実験を行

    うことは、廃食用油の確保等から難しいので実験室で遠心分離機の性能実験を行い、精製能

    力を確認した。

    4.4.1 原料及び実験装置 (1)原料

    廃食用油(性状は表 3-4)及び廃潤滑油(性状は表 3-3) (2)処理量 廃食用油(100%)及び廃食用油/廃潤滑油(50/50:容量比)を各 200L (3)実験装置

    28

  • 使用した装置仕様は次の通りである。 ・遠心分離機

    三菱工機㈱製 SJ-700(最大処理能力 700L/h、9,000rpm) ・コンテナ(静置槽、混合槽など)

    底部に排出バルブを備えた強化プラステック容器(金枠付,1×1×1.3m m3コンテナ) ・撹拌機

    三菱電機製 2 枚および 3 枚羽(45×170mm) ・ヒーター

    通常の投げ込みヒーター(1、2KW) 実験装置の外観を写真 4-1 に示す。左に見えるのが、大型の遠心分離機で、右にあるの

    が廃食用油と廃潤滑油を混合するために使用した混合槽である。

    写真 4-1 実験装置(遠心分離機と撹拌槽)

    4.4.2 実験方法 前項までの検討結果から、廃食用油、廃潤滑油とも静置すると容器底部に不溶分(異物)

    が沈積する。 この沈積物の成分は前者が揚げ物滓、後者は燃焼カーボン等が主体であり、傾斜法で大

    半は除去できることが分かった。 また、廃食用油から燃焼ノズルの原因となる粘着性物質が検出されなかったことから再

    生重油の製造では粘着性物質の除去に関する特別な工程は入れなかった。 実験の作業手順は次のように行った。

    ①原料油の上澄み油を金網(目開き 2mm)でろ過した。 ②ろ過油を 50~60℃に加熱し、遠心分離機で固形物等の異物を除去した。 なお、遠心分離処理は 35~40L/h で行った。

    29

  • ③廃食用油/廃潤滑油(1/1容量比)は、それぞれのろ過油 150L を混合槽に入れ、十分かき混ぜた後、遠心分離機処理を行った。

    4.4.3 実験結果 遠心分離処理油の性状を表 4-10 に示した。遠心分離処理で除去効果が期待される灰分、

    残留炭素分及び水分の値は両油とも低下しており、遠心分離処理の効果が確認された。

    表 4-10 遠心分離処理前後の性状 項 目 廃食用油 100 混合油(50/50) 外観 褐色透明 黒色不透明 密度 15℃ g/cm3 0.927 0.893 動粘度 mm2/s 40℃ 100℃

    41.54 8.901

    30.41 6.889

    水分 Vol% 0.75→0.40 0.30→0.25 灰分 % 0.01→0.00 0.33→0.28 硫黄分 % 0.00 0.15 残留炭素分 % 0.76→0.42 1.05→0.84 引火点 (PM) 350 以上 132 流動点 ℃ -5 -17.5 ペンタン不溶分(A) % 0.00 0.08

    4.5 まとめと課題 廃食用油を 25%以上廃潤滑油に混合したバイオ再生重油の燃焼実験3)において、粘着

    性物質がバーナノズルのフィルターを閉塞させる現象が観測されたことから、粘着性物質

    について分離と生成に関する実験を重ねてきたが、その結果次のことがわかった。 ○ 食堂系の廃食用油には、動物性の油脂が含まれているため、流動点が高く、室温で容

    器の底に固形分が沈殿する。このため、ろ過速度が遅くなる。 ○ 粘着性物質は、元々の廃食用油中には存在しない。 ○ 廃食用油には、酸化劣化しやすい物質が含まれているため 200℃以上の温度条件で高

    分子状の粘着性物質を生成する。温度が高くなるほど短時間で生成する。 ○ バイオ再生重油中の廃食用油含有量%と粘着性物質が生成する温度との関係について

    は今後の検討課題である。 ○ バイオ再生重油の燃焼炉の運転条件はそれぞれ異なるため、粘着性物質の生成のしや

    すさについては、燃料系統の温度等に関する調査が必要である。

    30

  • 5.経済的な家庭廃食用油の回収システムの検討 5.1 概要

    家庭から排出される廃食用油は、量が少量であることや回収場所が分散している等のため

    回収コストが嵩み、そのほとんどが一般ごみと共に焼却処理されている。 地域の消費者、給油所、スーパー、非営利団体等の協力を得て、札幌市の社会福祉法人「朔

    風」による経済性のある回収システムについて検討した。 その結果、廃食用油単独で回収を行う場合は採算が難しいが、古紙等との共同回収を実施

    することで経済性が向上することがわかった。

    5.2 札幌市における回収拠点の確立 5.2.1 自治体への協力依頼

    家庭廃食用油の回収を行うには、消費者である市民の協力が不可欠であり、そのためには、

    自治体の支援と協力が必要であると考えられたので、本プロジェクトの実施に先立ち、札幌

    市に支援と理解を得るため札幌市環境局環境事業部ごみ減量推進課資源化推進係を訪問した。 しかしながら、札幌市は、家庭廃食用油のBDF化事業を推奨中であるので、残念ながら

    協力できないということであった。

    5.2.2 回収拠点の確立 (1)古紙回収拠点の活用 家庭廃食用油の効率的な回収システムを確立するには、適切な回収拠点の確立が不可欠で

    あるが、今回のように、札幌市のような大都市を対象に、しかも数ヶ月という短期間で実証

    化実験を行うことは、かなりの困難が予想された。 本調査研究の回収拠点のひとつとして、社会福祉法人「朔風」の古紙回収拠点を活用する

    こととした。朔風は、札幌市全区を対象に 381 箇所の拠点を有している(図 5-1)。 その回収拠点に、家庭で不要となった廃食用油を持ち込んでもらい、古紙と同時に回収す

    ることで回収コストを下げることができるのではないかと考えた。 また、「朔風」は、回収品を多様化することで収入アップを図ることができる。

    北区

    東区

    白石区

    厚別区

    手稲区

    西区

    中央区

    豊平区

    清田区

    南区

    南区64,707 世帯(31世帯)

    手稲区52,953 世帯(67世帯)

    北区122,751 世帯(63世帯)

    東区115,428 世帯(58世帯)

    白石区・厚別区 白石 97,843世帯 厚別 52,794世帯

    (37世帯)

    中央区111,552 世帯(41世帯)

    豊平区・清田区 豊平 102,399世帯 清田  41,095世帯

    (37世帯)

    西区103,239 世帯(47世帯)

    図 5-1 札幌市における朔風の古紙回収拠点(合計 381 拠点)

    31

  • 社会福祉法人が廃食用油の回収作業を行う場合、協力を惜しまない市民が多いことから、

    新たに廃食用油の回収を行うことを周知する古紙回収拠点の市民向けの宣伝用パンフレット

    を朔風が作成し(図 5-2)、宣伝活動を行った。 一般市民にとっては、回収された廃食用油が、BDF にリサイクルされるのかバイオ再生重

    油にリサイクルされるのか区別がつかないので、目的をはっきり明記して理解を求めた。 その結果、2008 年 10 月から 2009 年 2 月末日までの回収数量データから判断して、参加

    者が徐々に増加し、消費者の意識の高さが感じられる結果となった。

    冷ました油をボトルへ

    ◆食用油の容器等

      サイズは問いません。

    ボトルは当店専用カゴへ

    ご家庭でご使用済みになった「天ぷら油」は

    バイオ再生重油としてリサイクルされます。

    天ぷら油回収始めました社会福祉法人「朔風(さくふう)」の

    リサイクル活動にご参加・ご協力ください。

    図 5-2 朔風が作成して配布した宣伝用パンフレット (2)新たな回収拠点の確立 上で述べた古紙回収拠点は、個人の軒下が主体である。このため、安定的に廃食用油の

    回収は出来るが、量については多くは期待できない。 そこで、新たな回収拠点としてスーパー及び給油所に回収拠点の提供を依頼することと

    した。 ①スーパー 札幌市内の店舗では、家庭廃食用油の回収を行っているところがあるが、BDF化を目

    的にしており、競合するのを避けるため、別途協力要請を行った。 その結果、ホクレン傘下の 11 箇所の店舗の協力を得られることとなった。 その店舗を表 5-1 に示した。

    32

  • 表 5-1 回収拠点を提供したホクレンの店舗 No 店名 住所

    1 ひばりが丘 札幌市厚別区厚別南2丁目10-42 新琴似店 札幌市北区新琴似4条17丁目1-253 屯田店 札幌市北区屯田4条6丁目6-164 屯田8条店 札幌市北区屯田8条10丁目6-15 里塚店 札幌市清田区里塚1条3丁目14-126 南22条店 札幌市中央区南22条西11丁目1-17 新発寒店 札幌市手稲区新発寒4条1丁目1-608 前田店 札幌市手稲区前田6条15丁目3-309 49条店 札幌市東区北49条東15丁目723-1

    10 東苗穂店 札幌市東区東苗穂8条1丁目18-111 中ノ沢 札幌市南区中ノ沢2丁目2

    ②給油所

    新たな回収拠点として給油所(札幌市内には、331 店舗の給油所がある:札幌地方石油業協同組合名簿より推定 2008 年 10 月)を加えるため、札幌市内に給油所を有する大手の石油販売会社を訪問し協力を求めた。

    各社とも社会福祉法人が回収することに対して好意的であり、直接給油所の利益にはつ

    ながらない取組みであるが、社会貢献活動に積極性が感じられた。 その結果、札幌市内で 56 箇所の給油所が廃食用油の回収拠点を提供してくれることに

    なった。 写真 5-1 に回収拠点となった店舗のひとつと、表 5-2 に協力給油所の店舗一覧表を示し

    た。 給油所の廃食用油回収は、のぼり等の準備の都合もあり 2008 年 12 月から開始された。

    札幌市における新たな廃食用油の回収拠点(合計 67 拠点)を図 5-2 に示した。

    写真 5 給油所における廃食用油回収風景 写真 5-1 給油所における回収風景

    のぼり

    33

  • 表 5-2 回収拠点となった給油所店舗名 No 会社名 系列 支店名 住所

    1 ㈱アイックス 出光 セルフ新札幌 札幌市厚別区厚別東1条1丁目3-742 北日本石油 コスモ 丘珠空港通 札幌市東区伏古14条3丁目10-20

    3 北日本石油 コスモ もみじ台 札幌市厚別区もみじ台北7丁目1-64 北日本石油 コスモ 大谷地流通センター 札幌市白石区本通20丁目北1番65号5 北日本石油 コスモ 北野 札幌市清田区北野6条1丁目4-386 北日本石油 コスモ 西岡サービスステーション 札幌市豊平区西岡4条3丁目7-397 北日本石油 コスモ 北32条 札幌市北区32条西11丁目1-25

    8 北日本石油 コスモ オーベスト福井 札幌市西区福井2丁目69-19 北日本石油 コスモ 北5条西 札幌市中央区北4条西23丁目

    10 北日本石油 コスモ 北15条東 札幌市東区北15条東18丁目1-2711 北日本石油 コスモ 市場第1 札幌市中央区北12条西23丁目12 北日本石油 コスモ 新琴似通り 札幌市北区新琴似3条6丁目13 北日本石油 コスモ 手稲曙通 札幌市手稲区曙4条3丁目18-20

    14 北日本石油 コスモ バードタウン西野 札幌市西区西野6条8丁目1-115 北日本石油 コスモ ローズアベニュー白石 札幌市白石区本通1丁目南2-1016 北日本石油 コスモ ワンダーステーション西野 札幌市西区西野4条2丁目1-2317 北海道カーオイル コスモ 篠路太平 札幌市北区太平5条5丁目4-818 北海道カーオイル コスモ エクスラン宮の森 札幌市中央区宮の森3条6丁目6-7

    19 北海道カーオイル コスモ 琴似八軒 札幌市西区八軒6条東4丁目1-120 北海道カーオイル コスモ 手稲前田 札幌市手稲区前田7条12丁目1-521 北海道カーオイル コスモ 屯田 札幌市北区屯田3条4丁目4-222 北海道カーオイル コスモ セルフまこまない 札幌市南区真駒内上町1丁目123 北海道カーオイル コスモ セリフ屯田7条 札幌市北区屯田7条4丁目7-124 前側石油 JOMO 北25条 札幌市東区北25条東8丁目1-5

    25 前側石油 JOMO 東北通 札幌市白石区栄通5丁目1-2926 前側石油 JOMO 手稲前田 札幌市手稲区前田5条6丁目3-2927 前側石油 JOMO 澄川 札幌市南区澄川6条4丁目28 栗林石油 新日石 月寒 札幌市豊平区月寒中央通10丁目3-3129 栗林石油 新日石 雁来バイパス 札幌市東区東雁来7条1丁目16-37

    20 栗林石油 新日石 栄通 札幌市白石区栄通20丁目1-3131 栗林石油 新日石 白石本通 札幌市白石区本通11丁目北1番26号32 栗林石油 新日石 発寒 札幌市西区西町北2丁目1-1033 栗林石油 新日石 藤野中央 札幌市南区藤野3条5丁目5-134 北海道エネルギー 新日石 チャレンジ新札幌 札幌市厚別区厚別中央3条6丁目1-1135 北海道エネルギー 新日石 ベニータウン 札幌市厚別区上野幌3条4丁目18-1

    36 北海道エネルギー 新日石 手稲富丘 札幌市手稲区富丘3条4丁目11-2237 北海道エネルギー 新日石 チャレンジ手稲インター 札幌市手稲区西宮の沢4条1丁目19238 北海道エネルギー 新日石 平岡通 札幌市清田区北野6条5丁目374-52339 北海道エネルギー 新日石 セルフ平岡梅林 札幌市清田区平岡3条2丁目12-3040 北海道エネルギー 新日石 三角山 札幌市西区山の手3条11丁目1-16

    41 北海道エネルギー 新日石 東発寒 札幌市西区発寒14条12丁目2-242 北海道エネルギー 新日石 札幌西線 札幌市中央区南4条西14丁目1-2743 北海道エネルギー 新日石 旭ヶ丘 札幌市中央区南9条西21丁目5-1544 北海道エネルギー 新日石 ノースタウン39 札幌市東区北39条東15丁目53645 北海道エネルギー 新日石 元町 札幌市東区北18条東16丁目1-246 北海道エネルギー 新日石 チャレンジ川沿 札幌市南区川沿15条1丁目1-65

    47 北海道エネルギー 新日石 藻岩 札幌市南区南35条11丁目1-848 北海道エネルギー 新日石 北郷インター 札幌市白石区北郷6条7丁目2-349 北海道エネルギー 新日石 菊水 札幌市白石区菊水3条2丁目1-2840 北海道エネルギー 新日石 羊が丘 札幌市豊平区福住2条1丁目2641 北海道エネルギー 新日石 南平岸 札幌市豊平区平岸6条13丁目4-1

    52 北海道エネルギー 新日石 新川東 札幌市北区北31条西14丁目15953 北海道エネルギー 新日石 セルフ北19条 札幌市北区北19条西5丁目2-154 ㈱トキワ 新日石 札幌トキワジャンティ北野 札幌市清田区平岡6条1丁目3-155 ㈱トキワ 新日石 南1条 札幌市中央区南1条8丁目56 キタセキ コスモ 札幌新川 札幌市北区新川3条17丁目1-1

    34

  • 北区

    東区

    白石区

    厚別区

    手稲区

    西区

    中央区

    豊平区

    清田区

    南区

    南区64,707 世帯(6箇所)

    手稲区52,953 世帯(7箇所)

    北区122,751 世帯(11箇所)

    東区115,428 世帯(8箇所)

    白石区・厚別区 白石 97,843世帯 厚別 52,794世帯

    (12箇所)

    中央区111,552 世帯(7箇所)

    豊平区・清田区 豊平 102,399世帯 清田  41,095世帯

    (9箇所)

    西区103,239 世帯(6箇所)

    図 5-2 札幌市における新たな廃食用油の回収拠点(合計 67 拠点) (3)札幌市の世帯数と回収拠点数について 札幌市の世帯数(2009 年 1 月現在の住民台帳による)と 2 月末現在の回収の拠点数を

    表 5-3 に示した。表 5-3 に示したように、古紙と廃食用油の共同の従来からの拠点が 381箇所で、廃食用油専用の新たな拠点が 67 箇所、合計 448 箇所である。

    全世帯数に対する回収拠点数の比率は 0.05%である。 表 5-3 札幌市の世帯数と回収拠点数

    地域名 世帯数 拠点数

    (古紙・廃油)

    拠点数

    (廃油)

    拠点数

    (合計)

    世帯数に対する

    拠点数の割合

    中央区 118,369 41 7 48 0.04%

    北区 134,785 63 11 74 0.05%

    東区 127,888 58 8 66 0.05%

    白石区 108,148 7 44 0.04%

    厚別区 58,777 37

    5 5 0.01%

    豊平区 110,915 4 41 0.04%

    清田区 47,805 37

    5 5 0.01%

    南区 70,831 31 6 37 0.05%

    西区 103,239 47 7 54 0.05%

    手稲区 61,849 67 7 74 0.12%

    札幌全市 942,606 381 67 448 0.05%

    5.3 家庭廃食用油の回収方法 5.3.1 朔風による回収作業について

    札幌市は 10 区あるが、回収手順・回収頻度(月 2 回)を検討した結果、8 ルートを設定して回収作業を実施した。

    回収に使用したのは、古紙回収に使用している 2tトラック(写真 5-2)で、荷台に古

    35

  • 紙と廃食用油を同時に積んで回収作業を行った。

    写真 5-2 廃食用油回収に使用したトラック 運転は、朔風の職員が行い、助手として知的障がい者が同乗して、回収作業を行った。 運転手には、データ採取用のデータシートを持参して毎日記録するよう依頼した。 そのデータシートを表 5-4 に示した。このデータシートには、毎日の廃食用油の回収量

    の他、古紙回収量、出発と帰着時刻、車の走行距離、回収した廃食用油の外観等が記録で

    きるようになっている。 表 5-4 回収システム解析用のデータシート

    36

  • 5.3.2 回収ボックスとのぼりの設置 家庭廃食用油の回収拠点には、説明書を外部に添付した回収用のプラスチック製の箱(蓋

    付容器で、ペットボトルごと回収する:写真 5-3)を設置した。 また、給油所には、道路から回収拠点であることがわかりやすいようのぼり(写真 5-4)

    を設置した。設置したときの風景は、写真 5-1 に示した。

    写真 5-3 回収拠点に設置した回収箱 写真 5-4 給油所に設置したのぼり 写真 5-5 給油所に置かれた回収箱 給油所によっては、事務所の入り口に回収箱が置かれているところもあった(写真 5-5)。 5.4 朔風における荷役及びろ過作業の状況 5.4.1 荷役作業の状況 拠点によっては、古紙と共同回収となる箇所と廃食用油専用の箇所があったが、事前に

    回収ルートの明確化を行っていたので、問題なく回収作業が行われた。 今回は、雪の中での回収作業となったが、特に問題は発生しなかった。 回収された容器については、9 割がペットボトルであったが、1 割は牛乳パック、びん

    37

  • 等が見られた。ごくたまに、個人の飲食店からのものと思われるペール缶で回収されるも

    のもあった。 給油所やスーパーの場合は、回収量にバラツキが生じるため、月 2 回の定期回収では間

    に合わない場合があり、連絡を受けて追加回収を行ったケースもあった。 今後、廃食用油回収量が 150kg/日を超えるような状況になった場合は、古紙回収との

    同時回収は困難となり、トラックがもう一台必要となる可能性がある。 5.4.2 ろ過作業の状況

    家庭から回収した廃食用油には、天ぷら滓等が混入しているため、ペットボトルからドラ

    ム缶に移し替える際にろ過作業を行った。 バイオ再生重油製造原料としての廃食用油には、BDFのような特に厳しい受け入れ基準

    は不要であり、簡単なろ過で十分である。 また、数%程度の水分が混入しても問題ないので、消費者は安心して回収に出すことが出

    来る。 ろ過作業は、廃食用油の粘度によりろ過速度が異なるので、知的障がい者が興味を持って

    作業しており、社会復帰のための訓練の場になっている。作業性を上げることも重要だが、

    自立のための訓練としても重要である。

    (1)ろ過器具 ペットボトルごと回収された廃食用油は、朔風の作業場に搬入され、重量計測された後、

    写真 5-6 に示すろ過器具(メッシュ不明)により天ぷら滓が除去され、ペットボトルからドラム缶に移された。

    写真 5-6 のスプーンでかき混ぜることによりろ過速度が上がる現象が見られた。

    写真 5-6 ろ過器具 (2)ろ過の状況とろ過時間 写真 5-6 のろ過器具を使用した場合のろ過に要する時間を計測した。

    ろ過時間は、回収された廃食用油の性状や外気温度に依存するが、平均値は1kg あたり1 分であった。

    38

  • 写真 11 朔風におけるろ過作業の状況 (3)ろ過作業に要したコストの算出 ろ過の作業手順は次のとおり。

    ①重量計測 ②ろ過作業(ペットボトル、18L 缶 その他�