2019年度 成果報告(日本招聘)...後、Waters社製のSynapt...
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2019年度 技術交流助成 成果報告(日本招聘)
自治医科大学 医学部 薬理学講座臨床薬理学部門
氏名 相澤 健一
会議等名称 第84回日本循環器学会学術集会(JCS2020)
開 催 地 京都
時 期 2020年7月27日 ~ 8月2日
1) はじめに(招聘の概要)
新型コロナウイルス感染拡大のため予定は大幅に変更となったが、学会開催および技
術交流は実施に至ることができた。2020 年 3 月に予定されていた第 84 回日本循環器
学会学術集会(JCS2020)は 8月に延期され、Web開催となったが、セッションは当
初予定通りに実施され、活発な討議が行われた。また、東邦大学医療センター大橋
病院で予定していた、技術交流も同院の活動制限指針により院内で会議が実施できな
かったため、Zoom 会議となったが、当初予定通りの内容で討議が行われた。国立循環
器病研究センターにおける技術交流は予定通り、現地で対面実施された。
2) 被招聘者の紹介 鈴木亨先生は東京大学で循環器病研究について基礎から臨床、またトランスレーシ
ョン研究まで幅広い領域で顕著な成果を上げられ、2014 年に英国レスター大学循
環器内科教授に就任された。15 年以上前から先駆的に質量分析技術を疾患機序の
解析に応用し、細胞や分子レベルの機序解析から、バイオマーカーの開発に至るま
で幅広く応用した。具体的な例として、心不全のバイオマーカーとして広く臨床応
用されている B型利尿ペプチド(BNP)のプロセシング産物を質量分析計で計測し、
冠動脈再狭窄の診断に有用なバイオマーカーになることを示した。レスター大学で
は、心血管疾患症例の代謝物 2,500例以上を計測し、世界最大の疾患代謝物のデー
タベースを構築した実績を有する。その成果の一例として、心不全症例においてホ
スフォチジルコリンの代謝物であるトリメチアルミン N-オキシド(TMAO)が急性心
不全の予後予測マーカーであることを報告した。TMAO の代謝過程を解析すること
写真
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により、腸管細菌により生成されるパスウェイを明らかにし、腸内細菌と心不全病
態の関係を解明する等、日英にわたりグローバルに活躍され、質量分析計を用いた
臨床プロテオーム、メタボローム解析の多数の実績を有す。 最近では、招聘者らとの国際共同研究により、心不全症例においてホスフォチジ
ルコリンの代謝物であるトリメチアルミン N-オキシド(TMAO)が急性心不全の予後
予測マーカーであり、日本人、白人、南アジア人の間で人種差があることを明らか
にした(ESC Heart Fail, in press)。 3) 会議または集会の概要
2020 年 8 月 28 日 第 84 回日本循環器学会学術集会(JCS2020)プレナリーセッシ
ョンでシンポジストとして講演
2020 年 8 月 13 日 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科で液体クロマトグラ
フ三連四重極型質量分析計を用いた血清メタボローム解析についての技術交流
2020 年 8 月 15 日 国立循環器病研究センターで日英等異なる国における医療プロセ
スの標準化についての技術交流
4) 会議の研究テーマとその討論内容
鈴木亨先生は、レスター大研究所においてバイオインフォマティシャンとともに研究
室内で解析手法を開発中し、そのプロトコールを完成させた。具体的な代謝物計測の方
法論は、収集した血清を HILIC カラム(疎水性カラム)ならびに逆相カラムで処理の
後、Waters 社製の Synapt G2S の ESI 型質量分析計で計測するものである。データは
Progenesis 解析ソフトを経て、統計解析ソフト Simca へと移し、群間解析ならびにノ
ード解析を行い、病態の関連物質を特定する。これを用いて、臨床情報と照合し、心血
管疾患の病態ならびに予後との関連を解析している。さらに、特定物質に対し、それを
選択的に計測するための S/MRM法(single/multiple reaction monitoring)を開発す
ることが可能である。この方法を日本に導入し、自治医科大学内の島津製作所製 LC-
8050 超高速トリプル四重極型質量分析計でも計測できるような計測プロトコールを開
発し、日本のコホートにおける計測と比較検討を実施する。さらに、日英等異なる国に
おける医療プロセスの標準化についても討論し、今後の日英の医工計測におけるハー
モナイゼーションにおいてさらに発展することが可能になる。
5) 招聘した成果 今回の招聘による技術交流により、世界最先端かつ最高水準の疾患プロテオーム/
メタボローム解析の技術とノウハウを鈴木先生から直接伺い、技術指導を受けるこ
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とが可能となった。このことは、我が国の医工計測技術の発展に大きく寄与すると
考えられる。近年、今後の医学研究の方向性のひとつとして精密医療ないし層別化
医療が注目されているが、その中で人種間の疾患成因の比較研究は重要な役割を果
たすと考えられる。今回の技術交流により、日英の医学、医療の違いやプレシジョ
ン医療を中心に、グローバルな視点から技術開発することが可能になる。日本にお
ける将来の医療政策や医学研究の動向を知る貴重な機会になると思われる。
6) その他
日本循環器学会第 84 回日本循環器学会学術集会 HP(写真①)
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同上会長挨拶(写真②)
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東邦大学医療センター大橋病院循環器内科における技術支援の様子(写真③)
国立循環器病研究センターにおける技術支援の様子(写真③)
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謝辞 7) この度はこのような貴重な助成を頂戴し、公益財団法人 中谷医工計測技術振興財団に
心より御礼を申し上げます。