2018 FORMULA 4 CHAMPIONSHIP JAF F4...JAF F4 国内唯一開発競争のある...

使姿RACE RESULT EAST SERIES 610ツインリンクもてぎ Round 3 Text:大串 信(Makoto Ogushi) Photo:酒井聖一(Seiichi Sakai) /高木翔子(Shoko Takagi) PADDOCK NEWS JAFF4 国内唯一開発競争のある ミドルフォーミュラF4の魅力を探る 2018 FORMULA 4 CHAMPIONSHIP Vol. 2 モノを作るのが好き。人と違うことをしてみたかった F4東西シリーズは ダンロップタイヤの ワンメイクレースです F4協会HP www.f4k.co.jp 使フォーミュラ・ルノーのマシンをベースにオリジ  ナルF4を誕生させたチームの苦労と成果 夫婦で挑む 夢への一歩 新たな規則に適応した 「モノづくりの原点」 S.Takagi S.Takagi S.Sakai S.Sakai S.Sakai S.Sakai S.Sakai S.Sakai S.Sakai S.Sakai 79 78 JAF F4の車両規格上、フォーミュラ・ルノーのマシ ンそのものではレースに参戦することはできない。そ のため伊澤氏はもともとのステップドボトムの下に、さ らにベニア板でフラットボトムを製作し、取り付けた。 それによってフラットボトム化を実現したのだ。 マレーシアで眠っていたというフォーミュラ・ルノーのマシン。ベー スはルノーのマシンのため、その影が残っているのが分かる。だが、実 際にはあらゆるところに手が加えられ、“オリジナルF4”の車両が出 来上がった。まさにモノづくりの醍醐味といったところだろう。 ●ハンマー伊澤氏 昨年まではアルミシャ シーのマシンにて、F4 東日本シリーズに参戦。 今季は新たな規則に適 応した1台目を全チー ムのなかで初めて導入 し、開幕戦から出場を 続けている。ツインリ ンクもてぎで行なわれ た第3戦で今季初入賞。

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Page 1: 2018 FORMULA 4 CHAMPIONSHIP JAF F4...JAF F4 国内唯一開発競争のある ミドルフォーミュラF4の魅力を探る 2018 FORMULA 4 CHAMPIONSHIP Vol.2 モノを作るのが好き。人と違うことをしてみたかった

「どういう寸法、どういう強度にしな

ければならないのかということについ

て、協会の方から指導を受けたので、

それほど苦労しませんでした。ふだん

建築業で大工をやっていて、木を使っ

た工作にも慣れてたからでしょう」

 

JAF

F4とFルノーを比較した

とき車両規格上、もっとも大きな違い

はJAF

F4はフラットボトム、F

ルノーはステップドボトムである点だ。

JAF

F4を作る際には、当然なが

らフラットボトム化が必要だが、伊澤

選手は本業でもなじみの深い“ベニヤ

板”でフロアを自製した。

「ベニヤ板は強度的にはそれほど強い

ものではないので、いろいろ補強を加

えないとダメでした。実際ベニヤでフ

ロアを作って走ってみると、ちょっと

縁石で擦っただけで1㎜、2㎜簡単に

削れてしまうので、ベニヤではちょっ

と厳しいかなと。いまはアルミ板で作

り直そうかなと思っているところです。

金属加工が必要ですけど、出来合いの

アルミ板を買ってきてそれを切る分に

は問題なく自分でできるかなと思って

います」

夫婦二人三脚で目指すもの

 

驚くべきことに伊澤選手は、クルマ

づくりを夫人と二人三脚で進めた。エ

ントラント名を「ハンマーレーシング

疾はやて風☆夫婦坂」と名乗っている所以で

ある。サーキットの現場でも、つなぎ

姿の夫人が常に寄り添い、疾風のメン

テナンスからサインボード掲示までを

こなしている。

「うちの妻も(モータースポーツが)

好きなので、今までレース活動はずっ

と一緒にやってきました。本業も一緒

にやっています。今回のクルマ作りも

ふたりでやりました。一緒にやってく

れるのでぼくもレースをやれていると

いう面もあります。筑波にガレージが

あって、住んでいるのは千葉なので、

本業をなるべく早く終わらせて毎日夕

方から夜、ガレージに通って作業をし

ました。3か月くらいかかりましたね」

「わたしは言われたことをやっている

だけ」と里美夫人は笑う。傍目からは

うらやましい関係だが、予想外の作業

が割り込み、デビュー戦に向けた夫婦

の作業は壮絶な状況に陥ったという。

「前日の深夜3時くらいまで作業をし

てなんとかSUGOに運び込んだんで

すが、どうしても不十分なところがあ

って、SUGOに入ってからもほぼ毎

日徹夜しました。アンダーパネルを外

さないといけない作業がいっぱいあっ

て、SUGOのピットで、夫婦で右と

左を分担して寝そべって作業をしてい

たら、ついついそのままふたりで眠っ

ちゃっていたことがありました。ちょ

っとおかしいですよね」と伊澤選手。

「SUGOは、うっかりアンダーパネ

ルの上に工具を置き忘れたまま走って

コースに落としてしまい厳重注意を受

RACE RESULT

EAST SERIES

6月10日 ツインリンクもてぎ

Round 3

Text:大串 信(Makoto Ogushi) Photo:酒井聖一(Seiichi Sakai) /高木翔子(Shoko Takagi)

PADDOCK NEWSJAFF4国内唯一開発競争のある

ミドルフォーミュラF4の魅力を探る

2018 FORMULA 4 CHAMPIONSHIP

Vol.2

モノを作るのが好き。人と違うことをしてみたかった

F4東西シリーズはダンロップタイヤの

ワンメイクレースですF4協会HP

www.f4k.co.jp

いました。スーパーFJを経てアルミ

シャシーのJAF

F4を自分で買っ

て3年くらい走ったのですが、カーボ

ンシャシーのマシンに乗り換えようか

と思っていたら、今年から規則が変わ

ってFルノーをベースにモディファイ

してJAF仕様にすれば参加できるよ

うになったんです。それでやってみよ

うと思い、自分で中古のFルノーを探

してクルマを作りました」

本業を生かしたオリジナル

これまでコンストラクターでもなかっ

た伊澤選手はなぜ自分でマシンを作ろ

うと思い立ったのだろうか。

「もともとモノを作るのが好きですし、

ちょっと人と違うことをしてみたいと

いう性格なので、自分の実力を見るに

もそうした方がいいかなと考えたんで

す。レギュレーションが変わらなかっ

たら既存のクルマを手に入れていたと

思います。でもFルノーをベー

ノづくり」を推進するため行

なわれた車両規則改定のなか

でひとつのポイントが、フォーミュラ

ルノー向けに開発されたタトゥース製

モノコックをJAF認証サバイバルセ

ルとしたことだ。これにより、世界に

多数存在するフォーミュラルノーの中

古車をベースにJAF

F4車両を開

発することが可能になった。

これを受

けて早速、タトゥース・モノコックを

使った新顔がサーキットに現れた。ハ

ンマー伊澤選手が開発した”疾はやて風

”で

ある。開発のきっかけについて伊澤選

手に聞いた。

「本業は建築業・大工です。もともと

モータースポーツが好きでハコ車を走

らせたりしていたんですが、5、6年

前からフォーミュラカーに乗ってみよ

うという気持ちになり、FJ1600

で草レースに出たら、フォーミュラカ

ーのダイレクト感、4輪車でありなが

ら風を受ける感じにのめりこんでしま

スにできるなら自分でも作れそうだな

と。Fルノーの性能は大体見えていた

のでそれほど冒険ではありませんでし

た。自分でJAF

F4仕様にモディ

ファイすることについては、メカ的な

部分にはあまり手を入れる必要がなく

て主に外装をいじればいいだけなので、

それなら自分で出来ると思いました」

 

こうして伊澤選手は、人づてにFル

ノーの中古車を探し、なんとマレーシ

アで眠っていた車体にたどりついてそ

れを入手した。車両自体は安価だった

が、状態があまり良くなく、思いがけ

ない出費も強いられたという。

「安いには安かったんですが、程度が

あまりよくなくて、まともに走ること

すら難しい状態だったんです。1回全

部完全にバラバラにしてもう一度組み

立てたんですけど、その過程で、おか

しなパーツが結構入っていたり悪いと

ころがあったりして、それをどんどん

交換していくと最終的にすごく時間が

かかり、出費も多少かさみました。で

もクルマの勉強にはなりましたね」

 

自力でのモディファイに苦労はなか

ったのだろうか。

けました。みんなにも迷惑をかけたの

で、もう少し考えないとだめだなと反

省しています」

 

夫婦で産みの苦しみを乗り越え、ツ

インリンクもてぎで開催された参戦2

大会目、東日本シリーズ第3戦に臨ん

だハンマー伊澤駆る疾風は5位入賞を

果たした。ようやく本来目指したパフ

ォーマンスが発揮され始めたようだ。

「ベースのクルマの状態がきちんとし

ていれば、JAF仕様へのモディファ

イはそんなに大変な作業ではないと思

います。もちろん、Fルノーを買って

JAF

F4に出たいという人が他に

も出てくれば相談に乗ったりも出来る

と思います。ただ、モノを作ることは

好きでも、楽しむレベルを超えると苦

しみに変わっちゃうこともありますけ

どね(笑)」

 

ハンマーレーシングは、新たなF4

コンストラクターとして歩み出したの

である。

 フォーミュラ・ルノーのマシンをベースにオリジ  ナルF4を誕生させたチームの苦労と成果

夫婦で挑む 夢への一歩 新たな規則に適応した 「モノづくりの原点」

S.TakagiS.Takagi

S.Sakai

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S.Sakai

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JAF F4の車両規格上、フォーミュラ・ルノーのマシンそのものではレースに参戦することはできない。そのため伊澤氏はもともとのステップドボトムの下に、さらにベニア板でフラットボトムを製作し、取り付けた。それによってフラットボトム化を実現したのだ。

マレーシアで眠っていたというフォーミュラ・ルノーのマシン。ベースはルノーのマシンのため、その影が残っているのが分かる。だが、実際にはあらゆるところに手が加えられ、“オリジナルF4”の車両が出来上がった。まさにモノづくりの醍醐味といったところだろう。

●ハンマー伊澤氏昨年まではアルミシャシーのマシンにて、F4東日本シリーズに参戦。今季は新たな規則に適応した1台目を全チームのなかで初めて導入し、開幕戦から出場を続けている。ツインリンクもてぎで行なわれた第3戦で今季初入賞。