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2016 年 12 月 21 日日本弁護士連合会シンポジウム 公益通報(内部告発)を 社会に活かすために ~公益通報者保護法改正に向けて~ 報告書 2017 年6月 日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会

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2016 年 12 月 21 日日本弁護士連合会シンポジウム

公益通報(内部告発)を

社会に活かすために ~公益通報者保護法改正に向けて~

報告書

2017 年6月

日本弁護士連合会

消費者問題対策委員会

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番号 資料名 頁

1 シンポジウムプログラム 1

2 シンポジウム発⾔録 2

3 「市⺠のための公益通報者保護法の抜本的な改正を!」 拝師徳彦 32

4 平成16年5⽉21⽇衆議院内各委員会附帯決議 35

5 公益通報相談統計(2010年度〜2015年度 東京) 36

6 公益通報者サポートセンター統計(平成22年度〜平成28年度 ⼤阪弁護⼠会) 37

7 「公益通報者保護法の改正に向けた課題」 串岡弘昭 41

8 「事業者からみた公益通報者保護制度の現状と課題」 ⼭⼝利昭 43

9 レジュメ 光前幸⼀ 49

10 「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会最終報告書の概要について」平成28年12⽉15⽇ 消費者庁消費者制度課 52

11 「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会最終報告書」(抜粋)平成28年12⽉ 公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会 57

12 「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」ワーキング・グループ報告書(抜粋)平成28年11⽉ 公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会ワーキンググループ 62

13 「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運⽤に関する⺠間事業者向けガイドライン」 平成28年12⽉9⽇ 消費者庁 77

14 「公益通報者保護法を踏まえた国の⾏政機関の通報対応に関するガイドライン(内部の職員からの通報)」 平成29年3⽉21⽇⼀部改正 84

15 「公益通報者保護法を踏まえた国の⾏政機関の通報対応に関するガイドライン(外部の労働者等からの通報)」 平成29年3⽉21⽇⼀部改正 88

シンポジウム「公益通報(内部告発)を社会に活かすために〜公益通報者保護法改正に向けて〜」⽬次

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※ 本資料は,シンポジウムにおける報告者及びパネリスト個人名義のレジュメと発言内容をまとめたものであり,当連合会の公式な見解ではありません。
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日 時:2016年12月21日(水)18:15~20:00

場 所:弁護士会館17階1701会議室

総合司会:林 尚美(日弁連消費者問題対策委員会副委員長)

《プログラム》

1 開会挨拶 岩渕 健彦(日弁連副会長)

2 基調報告(1) 拝師 徳彦(日弁連消費者問題対策委員会委員)

基調報告(2) 中村 雅人(日弁連消費者問題対策委員会幹事)

3 パネルディスカッション

〈パネリスト〉

串岡 弘昭 氏(通報経験者)

拝師 徳彦 (日弁連消費者問題対策委員会委員)

山口 利昭 氏(消費者庁公益通報制度の実効性の向上に関する検討会委員)

光前 幸一 氏(消費者庁公益通報制度の実効性の向上に関する検討会委員)

河村真紀子 氏(主婦連合会事務局長)

〈コーディネーター〉

浅岡 美恵(日弁連消費者問題対策委員会幹事)

4 パネルディスカッション

5 消費者庁からの報告 加納 克利 氏(消費者庁消費者制度課長)

主催:日本弁護士連合会

共催:東京弁護士会,第一東京弁護士会,第二東京弁護士会

シンポジウム 公益通報(内部告発)を

社会に活かすために 〜公益通報者保護法改正に向けて〜

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資料1
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※役職は,本シンポジウム開催時点のものです。
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シンポジウム

公益通報(内部告発)を社会に活かすために~公益通報者保護法改正に向けて~

発言録

2016 年 12 月 21 日(水)18:15~20:00

弁護士会館 17 階1701会議室

(司会・林) それでは定刻になりましたので,日本弁護士連合会主催のシンポジ

ウム「公益通報(内部告発)を社会に活かすために~公益通報者保護法改正に向け

て~」を開催いたします。本日は大変お忙しい中,本シンポジウムにお越しいただ

きありがとうございました。本日の司会は消費者問題対策委員会副委員長の林尚美

が務めます。最後までどうぞよろしくお願いします。

それでは,シンポジウムに先立ちまして,当連合会副会長の岩渕健彦から開会の

ご挨拶をさせていただきます。岩渕副会長,よろしくお願いします。

1 開会挨拶

(岩渕) 日本弁護士連合会副会長の岩渕でございます。本日は年末のお忙しいと

ころ,お集まりいただきまして誠にありがとうございます。また,テレビ会議を通

じましてご参加いただいている方々にも御礼申し上げます。

さて,公益通報者保護制度は施行から10年が経過しておりますが,制定当時か

ら,通報者保護の実効性確保に欠けることが指摘されているにもかかわらず,法改

正は先送りされており,社会での理解や活用が進んでいるとはいえません。この間,

誰もが知るような大企業においても不適切な会計が行われ,また偽装・偽造問題等

の不正・不祥事も多数発生しています。公益通報制度の重要性や改善が求められる

ところであります。

当連合会におきましては,公益通報者保護の立法時より複数回,意見書や声明を

公表しています。最近は,本年6月9日に「公益通報者保護の実効性を高める法改

正を求める会長声明」を公表しています。また,9月には全国の各弁護士会におい

て一斉に110番を実施することを呼びかけまして,公益通報制度の役割について

の検討及び提言を行ってまいりました。

一方,消費者庁では,2009年に公益通報者保護制度専門調査会を設置し,2

011年に同調査会報告を公表しました。昨年,新たに「公益通報者保護制度の実

効性の向上に関する検討会」を設置し,本年12月15日には最終報告書が取りま

とめられ,法改正に向けた課題が浮かび上がったところです。

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資料2
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本日は,この最終報告書の内容についても議論するとともに,今後の法制度がど

のようにあるべきかについて,様々な立場から意見交換を行いたいと思いますので,

どうぞよろしくお願いします。

本日のこのシンポジウムが,公益通報を必要とする者が安心して通報できる制度

への一助となることを祈念して,このシンポジウムを開催したいと思います。本日

はどうぞよろしくお願いします。(拍手)

(司会) 岩渕副会長,ありがとうございました。

2 基調報告

(司会) それでは早速プログラムに入ります。なお,事前に広報しておりました

プログラムでは基調報告4名となっておりましたが,2名に変更させていただきま

す。またパネリスト4名としておりましたが5名に変更させていただきます。また,

本日のシンポジウム登壇者の敬称は全て「さん」とさせていただきますので,あら

かじめご了承ください。

それでは,当連合会消費者問題対策委員会委員の拝師徳彦さんからご報告申し上

げます。よろしくお願いします。

2-1 基調報告(1)

(拝師) 皆さん,こんばんは。弁護士の拝師です。私は,公益通報の問題につい

て一弁護士として関わり,あるいは通報当事者の方や消費者団体の方といろいろと

情報交換や議論をして,現行法に様々な問題点があることを確認しながら活動して

きました。ここではその経験や勉強の成果を踏まえて,公益通報者保護法の「問題

点」や「あるべき姿」について触れたいと思います。その上で,消費者庁の公益通

報の検討会の委員もしておりましたので,消費者庁のワーキングの概要,それから,

この前,公表されました最終取りまとめの中身についてごく簡単に触れたいと思い

ます。

公益通報者保護法が施行されて10年と先ほど岩渕副会長からもお話がありまし

たが,一体,この法律がちゃんと機能しているだろうかということで,まずは現状

の振り返りをしてみます。

本日も,通報当事者でいろいろな嫌がらせを受けて苦労された当事者の方々が何

名もいらっしゃっていますが,個別に見ていくと,非常に問題のある事案も公益通

報者保護法ができてからも現にあります。これを少し見やすい形でまとめてもらっ

たものがこの図です。一緒に活動しているグループの方にまとめていただいたもの

です。パワーポイントだと見にくいので,詳しい資料(32ページ)をご覧いただ

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くと細かいこともよくわかると思います。

2015年中にいろいろな企業の不祥事が発覚しました。かなり大きな問題で社

会の耳目を集めた事件ばかりです。矢印の先端の部分が発覚したとき,大体201

5年末ですが,問題はその不祥事がそれまで何年間,企業の中で眠っていたかをわ

かりやすくビジュアル化したものです。

これを見ると,2006年に公益通報者保護法が施行されています。ところが,

施行後もすぐに不祥事が発覚しない。2006年以前からずっと不祥事が行われて

その後も続いています。一番下の化血研といっていますが,化学血液療法研究所の

問題もありますし,旭化成の建材の問題もかなり古くからあったんじゃないかと言

われていますが,いずれにしましても,公益通報者保護法が施行されて,そこから

どんどん社会の不祥事が出てきたのか,あるいは,通報によって問題が解決されて

きたのかというと決してそうではないということです。何らかの形でずっと眠って

いる。中には通報したかった方もいらっしゃるかもしれないけれども,やはり多く

の方は怖くて通報できない。そういう中でずっと不祥事が続けられて,いろいろな

きっかけで社会へ,表に出てきます。これはあくまで2015年に表に出てきた社

会の大きな不祥事という,かなり氷山の一角中の一角だと思いますが,それだけを

見ても,これだけの状況になっているということを確認しておきたいと思います。

では今の公益通報者保護法,どこが問題で,どうして通報者の方々が安心して通

報できないのか。不祥事がこのように眠ってしまうのかということについて少し確

認していきたいと思います。

現在の公益通報者保護法の問題点ですが,問題点はいっぱいありますので,逐一

お話ししていると,とても15分では終わりませんので,ざっとお話をします。

1の目的規定のところは多少技術的なことなのでこれはいいかと思いますが,重

要なのは2,3です。2番の「適用範囲が狭い」というところ,大括りの話でいう

と,労働者しか保護の対象になっていなくて,例えば退職した人とか取締役,取引

先等が保護対象になっていない。また,一定の刑事罰で担保を得た法律についての

ものしか保護の対象になっていないとか,適用対象が狭いよという一つの大括りの

問題があると整理しました。

その下の部分が更に問題で,公益通報者が安心して通報できない制度設計になっ

ているということで,仮に公益通報者保護法の対象になったとしても,「保護が不十

分だ」というところが根本的な問題だと思っています。

特に,通報当事者の方と話していてよく言われるのは,今の保護法の建て付けと

いうのは,公益通報をして,それが企業側にばれて,その人に対して解雇や不当な

配転命令とかいろいろな嫌がらせをされる。それに対して通報した側,いじめられ

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た側が,自分で民事裁判で闘って,時間もコストもリスクも負って裁判で勝たない

と,嫌がらせに対する救済ができないということになっています。しかも企業の方

は,それは公益通報を理由とした処分じゃないからということで争ってくるので,

裁判自体も長引くし,一回こっちで勝っているのに,また別の理由を付けて嫌がら

せをするということが現に行われています。

そのように,現在の公益通報者保護法というのは,仮に保護法の対象となったと

しても,十分に通報者を保護し切れていないがゆえに,通報者が安心して通報でき

ないという状況になっております。

ですから,同じスライドの下の段を見ていただきますと,「あるべき改正法の骨子」

としては,私や私が一緒に活動してきたグループの中で議論したものですが,一つ

は,当然,適用場面が狭い部分については適用場面をもっと拡大しようよというも

の。通報当事者になれる人,保護の対象になる人を増やすとか,通報対象事実を広

げるとか,あるいは後でまたパネルで詳しく出てくると思いますが,今は内部通報,

行政通報,外部通報(マスコミ等)と3段階に分かれていて,基本的には内部通報

はすごくしやすいんだけれども,外部はちょっと通報しにくいという法の建て付け

になっております。内部だとどうしても,名前がばれてしまって怖くて通報できな

い等いろいろな問題がありますが,そういう形のものをなるべく適用場面を広げて

いこうというもの。行政,外部についても,通報しやすい要件にしていこうという

のが一つのあるべき姿だろうと思います。

もう一つは,先ほど申し上げた「民事ルール優先」の建て付けを,もっと「通報

者保護を実効性のあるものにしなければいけないんじゃないか」ということです。

中身としてはいろいろありますが,通報者への報復行為に対する「罰則」や「行政

処分」なんかをきちんと入れていくということ。あるいは,通報するときに通報書

類の持ち出し行為の問題。普通は裏付けがないと通報してもなかなか信じてもらえ

ない,動いてもらえなかったりするので,裏付け資料を持ち出して通報することが

あるのですが,こうした資料を持ち出したときに,それを捉えて処分することも,

法律を変えて,きちんと禁止していかなければいけないんじゃないかというのが

我々の意見です。

それに対して消費者庁の方で,関係者からのヒアリングを行いながら公益通報者

保護制度の実効性の向上に関する検討会を立ち上げました。さらにその中で特に専

門性が高いと思われる論点については,ワーキンググループを立ち上げて検討して,

ワーキングの取りまとめがされ,それを受けて親会議の検討会でも,先日,最終報

告書が出されています。

それについても,かいつまんでお話しします。これはあくまでイメージとして,

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消費者庁が作った資料(34ページ,55ページ)を御覧いただくと概要がわかる

と思います。

大ざっぱには,通報者の範囲の問題については,現行の労働者だけの部分を退職

者や役員も含める方向で検討したらどうか,あるいは,先ほど内部通報はしやすい

建て付けになっているけれども,行政通報とか外部通報がハードルが高いという部

分については,一定,何らかの形で緩める方向で検討したらどうかということにな

っております。それから,先ほど言った通報者を実効的に保護する方策については,

行政措置について何らかの形で入れたらどうかということになっています。この点

は一歩前進だと思っています。他方で刑事罰については,ワーキングとりまとめで

は,「慎重に」ということで,やや消極的意見になっています。

それから「守秘義務」ですね,通報したことについてきちんと秘密を守ってもら

わないと,名前をばらされて,この人がこんなことを通報したということが知られ

てしまうと,不利益やいじめのターゲットになりますから,そういう守秘義務も出

していこうという議論になっております。

大枠で,一言で言うとすると,100%満足できるものではないけれども,今ま

で10年間,本当は5年位で見直しして改正しなければいけなかったものを10年

経ってようやくちょっと何とかしなければいけないという方向性が出てきたかなと

いう意味では一歩前進している中身だと思っています。

そのワーキングのとりまとめを受けて最終取りまとめということができていまし

て,それが以下に最終報告書が掲載されています。基本的には,今言ったワーキン

グの中身を引用していますので,多くの論点は,基本的にはそちらの方向性でとい

うことですが,若干違うのは,1つは「刑事罰」については,検討会の中に通報当

事者の串岡さんとかもいらっしゃって,刑事罰の必要性についてはかなり強く訴え

られたということがあります。私も必要だということで申し上げてきましたが,こ

れについては,ここにあるように若干,ニュアンスが前向きになったかなというこ

とです。「通報経験者からの意見の聴取等,通報者が被る不利益の実態に関する更な

る調査を踏まえた上で,引き続き検討すべき」ということで,慎重な意見から引き

続き検討すべきということで,まだ導入の道が残されていると私は思っています。

もう一つ大きいと思っているのは,2にあるように「消費者庁の果たすべき役割」

について,先ほど言ったように通報者への不利益取扱いに対して何らかの行政措置

を入れるということになっておりますが,その辺を消費者庁が主導してやる。消費

者庁だけがやるのか,他の省庁の力を借りてやるのか,その辺ははっきりしません

が,こうした体制整備は消費者庁が中心になってやりますよと。それから消費者庁

に通報窓口を設けて,公益通報者保護法に関するものは消費者庁に一旦情報を集め

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て,それでまたほかの省庁に上げていくという体制をつくるということになってい

ます。ここをきちんとやってもらえると,今まで民事ルールだけで行政がノータッ

チだった部分に行政が入ってこられるという意味では大きいと思っています。

本日,消費者庁の加納さんがいらっしゃっているので,最後にぜひ一言いただき

たいと思いますが,一番の問題は,「今後の進め方」のところですね。ここまできた

ら,きちんと法改正につなげていただきたいと思いますが,そこに向けた工程表が

出ていない。いつまでにどういう段取りでやるのかがまだはっきり出てきていませ

ん。今まで経済団体等から正式な意見聴取もしていません。もちろんそういうこと

をやらなければいけないでしょうけれども,いずれにしましても,ここまで来た問

題について,かなり大きな方向性が示されていますので,消費者庁としてはもう一

息,踏ん張ってもらって,ここはぜひ,きちんと法改正につなげていく。そして,

当然,各方面からの反対等も予想されますから,それについては我々,消費者団体

とか日弁連とか,いろいろな市民団体・一般市民の方も含めて,この問題は非常に

大事だということを理解してもらった上で,声を挙げていくことが必要だと思いま

す。そのための議論をこの後,いろいろしていただければと思います。私からは以

上です(拍手)。

2-2 基調報告(2)

(司会) 次に消費者問題対策委員会幹事の中村雅人さんからご報告申し上げます。

(中村) 弁護士の中村雅人です。東京弁護士会所属です。私からは弁護士会が公

益通報の問題にどう取り組んでいて,そこからどういう問題が見えて,日弁連は2

015年9月に公益通報者保護法の改正試案を出していますが,なぜ,日弁連が改

正を求めるかを知っていただこうと思い報告させていただきます。

公益通報者保護法ができたのは,大方の方は御存じかと思いますが,もともと内

閣府で「21世紀型の消費者政策の在り方」ということを検討しておりまして,国

民生活審議会の消費者政策部会でやっておりましたが,そこで「消費者政策をいか

に実効性のあるものにするか」というテーマで,実効性確保のために公益通報者保

護制度が必要だと書かれています。公益通報者保護法というと,労働法のように思

いますが,そうではないです。内閣府の国民生活局が今は消費者庁になったわけで

すが,そこが消費者政策の実効性を確保するために公益通報制度が要るんだという

立て方で報告書をまとめました。それが2003年5月でした。

その1年後の2004年にはもうこの法律ができているんです。政府の審議会の

答申から1年後に法律になっているというところは,今の行政担当者には,もう一

回思いを引き継いでもらいたいのですが,何年かかって検討しているかと思うほど

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の法案はいっぱいありますので,よろしくお願いします。

この法律ができるときの国生審には,日弁連はどういう関わり方をしたかという

と,後ほどコーディネーターをやられる浅岡美恵弁護士が審議会の委員の一人とし

て検討され,日弁連の消費者問題対策委員会がそれをバックアップしてずっと意見

表明等をしてきました。法律ができたときには,全会一致にならずに,当時の民主

党の反対もあったのですが,結局,賛成多数で成立した法律というほど際どいわけ

で,中身が完璧ではないということがその大きな理由なんですが,この法律で本当

に通報者が守れるのか,逆に保護しにくくなるのではないかという反対意見でした

が,そういうことを踏まえて5年後には見直ししましょうという附則が付いていて,

附帯決議の中でもそのことが確認されていました。ところが,5年後の見直しがで

きずで,既に10年過ぎているわけです。

その法制定時に「日弁連」という言葉が出てくる国会の附帯決議があります。公

益通報者保護法制定時の「衆議院内閣委員会附帯決議」(35ページ)ですが,この

第8項に,「本法の運用に当たっては,通報をしようとする者が事前に相談できる場

が必要であることから,国,地方を通じて行政機関における通報・相談の受付窓口

の整備・充実に努めること。また,民間における相談窓口の充実に関し,日本弁護

士連合会等に協力を要請すること。」とあります。

国会の附帯決議に日本弁護士連合会という言葉が入っているのは幾つあるか知っ

ていますか。私が一生懸命調べたところ12本ありまして,12本のうちの1つで,

なかなかない,珍しいことですが,なぜこういうのが入ったかというと,弁護士と

いうのは,法律上の知り得た秘密を守る守秘義務が法律で書かれています。そうい

う職業の人が,公益通報の相談に乗るのが相応しいというのでここに入ってきてい

ます。地方・国などの行政機関における通報窓口にも実は弁護士が外部窓口として

多数関与するようになっていきますが,やはり弁護士が法律上の守秘義務を負って

いる者であるということから,公益通報者保護に関しては,制度的に非常に期待さ

れている位置付けがあるということです。

この附帯決議を受けて,当時,内閣府と日弁連の協議がありまして,日弁連会長

名で各弁護士会に「公益通報の相談窓口をつくりなさい」という通知が実は出てい

ます。それに従ってつくったのが東京三弁護士会と大阪,京都でしたが,他の弁護

士会でなかなかできない。しかし,今年(2016年),公益通報110番の活動を

やりましたら,32の弁護士会が実施し,57件の公益通報相談が入り,そのうち,

公益通報に関する相談は16件でした。

弁護士会の相談は,常設でやっているところの状況がどうなっているかというこ

とですが,36ページは東京三弁護士会の2010年から2015年の統計ですが,

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ご覧になるとわかるように,そこそこ件数はあります。相談者の立場を見るとわか

るように,退職者とか役員とか取引先,いわゆる法律でいう労働者でない者の通報

もかなり多い。一番右の欄で,この法律の保護の対象になるのは,この法律の中に

定められた400数十本の法律・罰則で保護している公益,そういうものを違法に

侵害した者に対しての保護と限定されていますが,別表の法律に全然当てはまらな

いけれども,公益通報されて相談が来るというものが非常に多い。法律の枠の中,

対象の中のものと,対象外のものと,不明なものがほぼ同数という,それほどすご

い状況なわけです。これが東京の状況です。

それから,大阪の相談サポートセンターの状況(37~40ページ)は,こちら

も似たようなもので退職者,役員,取引先等がやはり相談があるのにあぶれている

ということです。

こういう相談の中で,私たちはどういうことを感じているかというと,相談者自

身が非常にためらって,会社の不正を知ったけれども通報すべきか悩んでいるとい

う段階での相談や,通報したら不利益処分を受けたという相談,それから不正の証

拠を持ち出したら懲戒になった,権利回復のために裁判に踏み切るかどうか非常に

迷っている,裁判をやっても不利益処分を受ける前の元の位置に戻してもらえなか

った,そういうのが非常に多い。

それから,相談を受けた弁護士も非常にためらっているのが非常にわかりますが,

内部通報を勧めていいのかどうか。マスコミ等の外部に持っていけと言っていいの

かどうか。もし不利益を被ってしまったら,その後,裁判を通してでも救ってあげ

られるかということで,担当弁護士も非常に悩みます。

結局,今の法制度は皆さんのためらいを払拭してくれるか。さっき拝師さんのお

話にもありましたが安心して通報できるか。裁判所はまた通報者を保護してくれる

のかというところに大きな問題があって,日弁連の相談の取り組みからすると,ま

だまだ安心して通報できる制度になりきっていないということが言えると思います。

それからまた,企業の中にも,せっかく内部通報の仕組みをつくっても,誰も通

報してこない。先ほどの不祥事の例がいっぱいありましたが,あれもほとんどそう

なんですね。せっかくコンプライアンス等の窓口があるのに,誰も通報してこない

で不正が延々と続く。それから行政官庁に通報して,そこからばれてしまって処分

を受けたという例があるなど,病理的な現象がたくさん出てきている。

結局,法改正の時には立法事実が必要だとよく言われていますが,何をもって立

法事実かというと,私は10年経って,この法制度を使ってみて非常に使いにくい。

不正はたくさんあるんだけれども,企業不祥事はいっぱいあるけれども,通報自体

がしにくい。相談を受けてもこっちも動きにくい,これが現状で,それこそが私は

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立法事実だと思います。

では,内部通報制度でうまくいった例があるかというと,これはなかなか表に出

てこない。ほとんど統計も取れない。それはそうですね。悪いことをして,それを

誰かが通報したからうまく直りましたということをわざわざ言う企業はいないと思

うんですね。そういう立法事実を求めると難しい部分があるということを承知して

おいていただきたい。その上で法が使いやすいものになるように検討すべきです。

最後に「参考」として弁護士が関与する問題場面を4つほど挙げました。これは

非常に危うい法制度の中で,弁護士が,はまってしまった落とし穴と見ていただき

たいと思います。

最後にこの辺の問題になりますと,皆さんにはチラシをお配りしましたが,20

17年3月1日に東京三弁護士会で「コンプライアンス経営の現状と公益通報者保

護法の改正動向」というシンポジウムを開催します。この問題について更に詳しく

扱いますので,ぜひお越しいただきたいと思います。以上です。(拍手)

(司会) 中村さん,ありがとうございました。ここでパネルディスカッションの

準備をします。準備ができ次第,再開いたします。パネリストの方はご移動をお願

いします。

3 パネルディスカッション

(浅岡) 本日,パネルディスカッションのコーディネーターをさせていただきま

す浅岡でございます。今日は時間がとてもタイトなものですから,予定を変更いた

しまして,パネルディスカッションの中で,まず,パネリストの方々から報告をい

ただくことにいたします。

それでは,パネリストの方を紹介させていただきます。串岡さん,拝師さん,山

口さん,光前さんは,消費者庁の検討会・ワーキンググループにご参加いただいて

いる方々です。河村さんは主婦連の立場からご参加いただいています。

先ほどのお二人のご報告にもございましたように,この公益通報者保護法はまだ

社会によく浸透していない。最終報告書の中でもそのようにまとめられております

が,十分機能しているとは言い難いなかで,検討会で検討がなされてまいりました。

それぞれのお立場から,公益通報制度の重要性,その改正のポイント,どういう点

が今後の課題かということについて,まず,お話をいただきたいと思います。各パ

ネリストの皆様の資料をご参照ください。まず串岡さんからお願いします。

(串岡) 皆さん,こんばんは。たくさんの人が来ておられまして大変驚きました。

10分足らずでありますが,私の考えを申し上げます。

この公益通報者保護法は,マイナスの法律になってしまったと思っています。そ

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れは,この法律ができない方がよかったという意味ではありません。そうではなく

て,法律ができたことで,内部告発を議論する場合のメルクマール,標識ができた

という意味ではよかったと評価しています。一国の内部告発をめぐる気風を変えた,

という意味です。つまり,内部告発は「密告」ではなく,むしろ,高い倫理性に裏

打ちされた道義的な公益行為だ,ということを国民が知るきっかけになったという

意味では非常によかったということです。しかもこの法律を基準として,この法律

がどういう問題があるか,ないかということが判断できるようになったというのも

功の部分です。

次には,マイナスの部分ですが,資料に「現行公益通報者保護法の問題点」とい

うことで書いてありますが,目的の方で,公益通報者を保護するとしているが,条

文の方で公益通報を事実上困難にしてしまっている。はっきりこの場で申し上げれ

ば,事業者を公益通報から守る法律になってしまったと言えると思います。そうい

う意味では,公益通報者保護法がなかったときより大きな後退をしてしまっていま

す。

なぜこういう法律ができたのかということを申し上げますと,いま中村さんは「立

法事実」と言われましたが,立法事実の基になるには,内部告発者の調査というか,

内部告発者から意見を聞かなければならなかったはずですが,法律が成立していく

過程で,一度たりとも聞かれたことはありませんでした。あるいは同じ,雪印食品

を告発した西宮冷蔵の水谷さんにしても聞かれていません。誰も聞かれなかった。

聞かれないで,専門家と称するような人たちによってつくられはしたんですけれど

も,やっぱり立法事実を知っていなかったということだと思います。

私らが最も信頼をおいて通報できるところは絶対に報復を受けないところ,それ

はメディアであります。ですから,メディアに通報できなくなるというのは極めて

問題でありました。その次に行政機関への通報ですが,行政機関はなかなか動いて

くれないということが事実あります。これが非常に大きな問題です。通報しても深

刻な認識を持ち得ないというところが大きな問題だろうと思います。時間の「関係

で早口で申し上げましたが,私ほど何回も内部告発をした人間はいないと思います

が,その基本は「常に公にする」ということでありました。つまりメディアに訴え

て,その次に行政機関へ行く。

もう一つ申し上げたいのは,「行政機関とメディアをセットにしていた」というこ

とです。行政機関に先に行くか,メディアであるかというところでは,メディアに

訴えて国民に知らせた上で行政担当機関に訴えた。つまり,最初に「闇カルテル」

の件については新聞に出しまして,次に公正取引委員会,違法運賃の収受において

はメディアに新聞発表して,それから運輸省等に行ったということであります。つ

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まり,メディアと行政機関はセットにしている。この2つの次に,会社に言う。会

社には,メディアと行政機関にはもう言ってありますよ,あなた方はこれを隠蔽し

ようなどということはできませんよという立場でこれを是正していかなければなら

ないということが私の基本的な考え方です。

そういう意味で言えば,この法律は立法理念から変えなければならないと私は思

っています。

それから,現行法の問題点を一番下に書いてあります。民事ルールでは公益通報

者は保護できない。2番目として裁判での勝訴でも公益通報者は守れないというこ

とです。それから刑事罰の必要性は当然のことです。これを消費者庁の委員会の中

でもできるだけ詳しく書いたつもりですので,この後の討論がありましたら,また

それを申し上げたいと思います。以上です。

(浅岡) ありがとうございました。ちなみに串岡さんは,ご案内のとおりだと思

いますけれども,運送会社に長年おられまして,長年にわたり不利益措置を受けた

経験からお話しいただきました。幾つかご指摘を受けましたが,併せて皆様にご報

告いただきまして議論を進めます。

次に山口さんから,事業者の方からの相談,あるいは通報したという方の相談も

受けておられる経験から,ご指摘いただきたいと存じます。よろしくお願いします。

(山口) 大阪弁護士会の山口利昭でございます。よろしくお願いします。

今回,公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討委員会の委員をさせてい

ただきまして,今回取りまとめということですが,私は企業の内部統制,いわゆる

企業のコンプライアンス支援ということが中心でいろいろ仕事をしておりまして,

内部通報制度の外部窓口をやりますし,また内部通報窓口の支援・コンサルティン

グということもやっておりますし,実際に何かあったときの不正調査も普段仕事と

してやっております。

私が今回,こういった公益通報者保護制度,レジュメをつくってまいりましたの

で,全てお話しする時間はありませんので,最初のところだけ少しご紹介申し上げ

ますが,先ほど串岡さんからもお話がありましたが,企業というのは隠したがる,

不正を公表したがらない,これはある程度は本当です。実際そうでして,つい最近,

私がよく一緒に不正調査の仕事をする監査法人系の調査会社が調査結果を公表しま

したが,例えば経営者,社長が自分の会社の中で不正があったかどうかを知る1位

が内部通報とのことです。ただ,実際に不正が発覚した,経営者がそういうことを

知ったとしても,公表するかどうかということになると,スライド2枚目に書いて

あるとおり,公表しないという会社が6割近くです。公表したという会社は34%,

約3分の1です。

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何で公表しないのかといいますと,私が不正調査にかかわると経営者は大体同じ

ことをおっしゃるんですが,「それほど大したことないですよ」と。いわゆる重要性

がないという形で,公表しない会社の9割が「不正による損失が5,000万未満

の不正だったため」と回答されています。

ところが,我々が不正調査する中で本当に5,000万未満の不正というのは重

要性がないのかということで,いろいろと調査を独自にやっていくと,結局は5,

000万未満だろうなという希望的観測に基づいて結局,公表していないのが実際

のところです。

例えば,これは代表例ですが,調査スコープは適正だったかどうか。不正がある

という申告があったからこそ,そこの不正があると言われるところだけ調査した。

だけど,その背後にはひょっとしたらその10倍ぐらいの不正があるのかもしれな

い。だけど,それはそういった申告がないから調査は及びませんというケースもあ

りますし,また先ほど5,000万といいましたが,その5,000万がミスによ

るものなのか,それとも経営者がかかわるような故意のものか。ひょっとしたら経

営者の故意にかかわるものであれば,もっともっと質的にも極めて悪いもので,も

っともっと大きなものに発展していくのかもしれない。だけどもやはり,こういっ

た表面に出てきたものが5,000万未満という形だったので不正は公表しません

でした。これが実際なんですね。

ですから,先ほどの拝師さんの発表にもありましたが,表に出てきた不祥事・不

正は氷山の一角で,それが表に出てくることが実際にはない,というのが現実で,

こういった表に出ないことを我々は内部通報とか,いわゆる第三者への情報提供が

保護されることによって,企業コンプライアンスという形で多くの企業へ浸透して

いくということを我々は願っているところです。

今回,私が検討委員会の委員として参画させていただいたのは,企業側に立った

形でのいろいろな立法事実にかかわる問題も指摘していくということがありました

が,今回,法改正につながるものとして,今後いろいろと検討していく必要はある

と思いますが,私がやるべきことは,経営者の人がこれをきちんと会社の中で内部

通報制度を整備・運用すれば,あなたにとっても役に立つんです。あなたにとって

も決して害ではなくて役に立つんです。そういうことを広く伝えていきたい,と思

ったからです。

一つは,レジュメにも書きましたが,各企業とも公益通報制度,内部通報制度を

充実させることは,最後は一般のレポートライン(日常の報告体制)の健全化につ

ながるんです。決して立派な通報制度をつくることが最終目標ではなくて,そのこ

とによって普通の部下と上司との間での「情報共有」,「風通しのいい雰囲気」がそ

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こでつくられる。これが最終目標なんですよ。そのための内部通報制度であるとい

うことを強く言いたいですし,ここは串岡さんとは少し意見が違うことが多かった

のですが,私はちゃんとしたものを会社の中でつくらないと,最近の問題のような

内部告発がたくさん増えますよと。内部通報をきちんと処理できたら,内部通報を

受け付けて,自分の会社で不祥事にきちんと自浄能力を発揮できたら,決してマス

コミから大きな批判は受けない。内部告発されちゃうから大きな批判を受けること

になる。こういうことで,やはり企業にとっても内部通報制度をきちんとつくる。

公益通報制度に対する対応をきちんととる。こういうことが企業にとっても非常に

重要であるということを今後も訴え続けていきたいと思います。以上です。

(浅岡) ありがとうございました。串岡さんからは,通報しようとする側から見

ると,メディアなど,外部通報が,より信頼できるという経験のお話がありました。

山口さんからは,企業の内部においてしっかりした制度がつくられることが,企業

にとって重要だという視点からご指摘いただきました。保護される通報者は,基本

的には労働者という立場の方が前提になっておりますが,労働問題にかかわってこ

られました光前さんからお願いします。

(光前) 東京弁護士会の光前と申します。私も消費者庁の検討委員会に委員とし

て参加させていただきました。私は主に東京弁護士会の公益通報者保護法特別委員

会で活動していたものですから,その活動の経験を通じて検討委員会でも発言させ

ていただきました。

委員会での審議の状況は,東京弁護士会の会報誌『LIBRA』2016年11

月号で特集記事を組み1,「注目したい公益通報者保護法の改正動向」というパート

で解説してあるのでご覧ください。

私のこの法律に対する問題意識ですが,通報制度というのは歴史的,地域的に見

ると,通報を禁圧するというか,封印の時代から,通報の自由,通報の支援・奨励,

さらには義務化というさまざまなレベルがある。通報というものに対する社会の意

識の意識により,通報制度に対する規定は違ってくるということです。

後で説明しますが,今の日本の公益通報者保護法というのは,通報の自由を認め

たというレベルにとどまっています。通報を支援したり,奨励したり義務化したり

すれば,通報行為に対して一定の保護規定が出てくるわけですが,現在は,通報の

自由を認めるだけですから,現行法での保護内容に特別なものはなく,労働法や民

法等の他の法律で保護されている範囲にとどまるという構造になっています。

語弊はあるかもしれませんが,「通報は自由ですよと。ただ,国が通報してくださ

1 東京弁護士会ホームページ参照(https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2016_11/p02-23.pdf)

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いとまでは言っていません。ですから,通報した結果についても自己責任なんです

よ」というのが今の法律の建前なんです。その結果,通報が適法か違法かというこ

とについては,通報することによる被通報者の権利侵害行為について,正当化事由

があるか否かが判断されるわけです。これは,名誉毀損の違法性判断と全く同じ構

造になっています。

そして,適法(違法性のない)な通報に対して何か報復的な行為があった場合の

救済については,一般法による救済しかない。例えば,労働者が適法な通報して解

雇とか配転とか降職とか減給を受けた場合には,労基法あるいは労働契約法よって

保護する。それから,取締役が解任された場合には,会社法の規定によって,任期

途中の解任であればその期間の報酬額相当額の損害賠償しか求められない。あるい

は,通報したことによって不当に契約を解消されたとか,取引を停止されたとか,

損害賠償請求の訴えを起こされたときには民法の救済しかない。したがって,たと

え,公益目的で通報したとしても,被通報者から違法性を指摘されたり,更に報復

を受けた場合の救済というのは非常に困難になっているのが現状です。

そこで弁護士会としては,公益通報をしたことによって被害を受けたときの救済

としては余りにもひどいのではないか。公益的な活動に対する救済方法としては,

これより一歩進めなければいけないのではないかということでこの10年,活動し

てきたわけです。

ただ,もとを質せば,今の法律の規定というのは通報の自由を認めているだけな

ので,基本的なところで,先ほど串岡さんが言われたとおり,公益通報を支援する

法律,あるいは奨励する法律でないと積極的な保護という考えは出てこない。です

から,通報そのものに対する基本的な考え方を変えなければいけない。

ただそうなると,国民というか私たちが,いま「公益通報に対してどういう考え

方を持っているか」という意識が非常に重要になってきます。これは最後の結論に

もなるのですが,私たちはもっともっと通報の意義・重要性,今の社会においてど

のような位置付けをしたらいいのかということをきちんと考えて,その上で要件と

効果を考える。その結果,通報制度そのものについて,もう一回,もとから考え直

すということが必要ではないかというのが基本的な考え方です。以上です。

(浅岡) ありがとうございました。そもそもこの法律が機能しないといわれるの

は,根本に大きな問題があるのではないか。それをどう乗り越えるかという議論を

していただきました。

次に,河村さんにお願いいたします。消費者の立場,社会的な立場から,公益通

報ということにはどのようなことを期待しておられますか。

(河村) 消費者団体主婦連合会の河村でございます。資料は特に用意していませ

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んが,消費者にとってのこの法律の意味というのは,事業者の不祥事,不正行為に

よって,消費者が身体的,財産的に被害を受けることを,最も機能する場合は未然

に防ぐことができる。起こってしまった時には,早期にそれをやめさせて是正する

ことができる。つまり,そのことによって「消費者の安全の権利」というのが守ら

れるということが大きな意義であろうと考えています。

この法律ができて10年経っていますが,今までの報告でもたくさんありました

ように,機能していないと言われています。通報者が守られていない,通報が活か

されていない,不正が是正されていないと,その意義が活かされていないわけです

ね。ですから法改正に当たっては,通報者が守られることは当然なんですが,守ら

れるだけではなくて,消費者の安全の権利のために不正な状態の是正がなされるよ

うに,この公益通報がしやすくなる社会を実現できる改正が必要だと思っています。

もう一つは,内部通報,外部通報とある中で,今は内部が優先するという面が強

い法律になっていますが,消費者に被害を与えかねないような不正な行為がまだ行

われていないところであれば内部でそれをストップしていくということでいいと思

いますが,それが既に行われている,違法行為が行われている場合には,消費者は

そのことを知りたいと思います。それが消費者の知る権利だと思っています。

それを知った上で消費者は事業者を選択することができる。選択するときに,不

祥事・不正行為をやったところがけしからんというのはもちろんですが,起きてし

まったとしても,その企業が通報者に対してどういう処遇をしたのか,どれだけ速

やかに消費者に被害を与える行為を是正したのかということを見て消費者は判断で

きますから,「知る権利」,「選択する権利」が守られるように,なるべく外部へのハ

ードルを低くするということを消費者としては望んでおります。

外部のハードルを低くするということのもう一つの意味は,不正行為が企業のト

ップに関わることであったり,組織ぐるみであった場合,ハードルを低くしておか

ないと,不祥事の是正というところにつながっていかないと考えています。したが

って,通報者が守られる仕組みをつくること,安心して通報することができる制度

にすることによって,また,その通報のハードルを下げて,公益通報というものが

歓迎される社会をつくることによって消費者の権利が実現して,「安全・安心」につ

ながると思います。ぜひそのような改正につなげていただけたらと考えております。

(浅岡) ありがとうございました。それぞれのお立場から,公益通報者保護法は

現行法のままではよくない,やはり改正の必要があるということでは共通認識とな

っているかと思います。今回の最終報告書及びワーキンググループの報告書をご覧

いただいてもわかりますように,通報者に退職者を加えるということを除きますと,

その余にはほぼ全部の項目に,「今後の検討」という留保が付いています。

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さらに,現行法は,通報者が誰にどう通報するのかという点について,労務提供

先,監督官庁,行政,その他の外部とで,それぞれ要件が異なっています。とりわ

け,行政機関への通報にも真実相当性の要件のハードルがある。行政機関以外の外

部への通報には更に様々なハードルがある。イギリスの法律を参考にできた法律で

すが,イギリス法では監督官庁,行政機関に通報後の外部への通報というルートが

法律上,保護されているのですが,日本ではそれルートが認められていません。私

もこの立法に関わった時に,大変残念に思ったものです。

その背景には,事業者の方がこういう通報制度の意義や役割をまだ受容していた

だいていないことがありました。先ほど串岡さんが,外部,メディアなどに通報す

るのが一番安心とおっしゃいましたが,現行法上は,要件的にはなかなか厳しいも

のになっています。

今回の改正議論について,報告書にはたくさんの項目につきまして取りまとめが

なされています。本日,これを全部取り上げて議論することは時間がありませんの

で,重要な項目について議論してまいりたいと思います。

まず,通報者につきましては,退職者を加えるというところは,退職後の年限等

に若干の議論があるものの,ほぼ確定したと思いますが,役員,取引業者について

はまだ,方向性が見えるかなというところでした。特に,役員,取引業者について,

こういう観点から考えるべきだということについて,どなたかご指摘があればいた

だけますか。拝師さん,いかがでしょうか。

(拝師) 役員の関係も,実際に経営者が絡んだような問題になると,立場として

は非常に弱いことがあり得るわけです。通報したことを理由に解任等されるという

ことになると,そもそも企業内の不正を是正する立場を失ってしまいますから,き

ちんと守るべきところは守る必要があると思います。それから中村さんからも報告

がありましたが,実際のケースの中でも,役員の方からの通報の相談もそれなりに

あるということで,本来的には役員の方が自分の権限を使っていろいろな不祥事を

是正させることができればいいのですが,必ずしもそういう問題も,制度どおりに

機能しないケースがあり得ますから,その場合には,公益通報者保護制度の枠の中

で保護していくことが必要だろうと思います。

(浅岡) 事業者の規模にもよりまして,その深刻度が異なるかとは思います。取

引業者について光前さん,何かコメントがあったらお願いします。

(光前) 日本の法律では,原則として労働者だけということですが,イギリスの

公益開示法が労働者だけだったことからそれに引っ張られてつくられたのですが,

立法経緯としてはイギリスの公益開示法は労働法の改正の中でやられた。イギリス

の労働法は原則として解雇自由なものですから,そこを規制しなければいけないと

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いうことで労働者の内部通報については解雇できないという形で法律を規定したも

のですから,通報の対象者が労働者だけになってしまったんです。

ですから,日本の公益通報者保護法の場合に,通報対象者を労働者に限定する理

由は全く何もないんです。先ほどご紹介したとおり,日本の労働法は,一般に解雇

自由の原則がかなり制限されていますから,公益通報したから,仮に解雇したよう

な場合については,公益通報者保護法がなかったとしても,労働者は保護されてい

るんですね。そういうことを考えると,もし通報の社会的な意義が理解されている

のであれば,もっと幅広に通報者の範囲を広くして,社会の健全化に資する法律に

したほうがいいという声が出てくるので,中村さんの報告にもあったとおり,取引

業者からの通報は需要があるので,それについてはきちんと法律で保護する必要が

あるということです。

(浅岡) 本当はいろいろと議論をお聞きしたいのですが,時間が限られておりま

すので,サクサクとまいりたいと思います。この通報対象事実につきましては,「刑

事罰の担保のある違法行為」というのが正面からの対象範囲であるということにな

って,そういう取りまとめになっているように見えます。山口さんの資料を拝見し

ますと,パワハラに対して事業者は対応しなければいけないと書いていただいてい

ます(48ページ)。パワハラそのものは,公益通報対象事実に該当するわけではな

いですね。この点をどのように捉えて考えていったらよろしいでしょうか。

(山口) 先ほどの質問もそうですが,法律的に考えていくと,例えば,現行法の

建て付けと,通報対象事実を広げることの必要性と,どうしても抵触する部分があ

って,今回も「前向きに検討する」と。必ず立法化するところまではいっていない

というのがまだ議論する部分があるかなと思いますが,パワハラの問題というのは,

私が実際に通報窓口をやっていても非常に多いのです。最近,社内のヘルプライン

というところにはパワハラ通報が届く確率が非常に高い。

ところが,公益通報者保護法上は公益通報に当たるかどうかということになると,

現行法上はなかなか当たらないのではないかと思われます。だけれども,実際に受

け付けている私どもからすると,ついこの間の大手の広告代理店というのがありま

したが,非常に厳しいパワハラの裏には労基法違反という事実がある。それから,

経済法,例えば不正競争防止法違反があるとか,パワハラの背後にはいろいろな事

実がある。またそのパワハラの対応によっては,ひょっとしたら刑法犯に当たるよ

うな問題も出てくるかもしれない。

私はいろいろな会社で社員の方に,単なるパワハラということだと公益通報に当

たらないかもしれませんけれども,あなたの受けていることを一体どういうことが

原因で受けているのかということまで含めて,きちんと申告していただきたいとい

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うことを周知徹底しています。ですから,背景事情まで探っていけば,パワハラの

多くも公益通報に当たるケースが多いのではないかということを強調しておきたい

ということです。

(浅岡) 今の法律の建て付けから,表面的なことだけではじいてはいけないとい

うご指摘だと思います。確かにそうしたパワーハラスメント,嫌がらせからの保護

が必要で,不利益措置の根源だと思いますが,その背景には何か隠したいことがあ

るのではないか。通報者の側も,通報しようとする側もそういう目で職場を見直し

てみるということも必要かなと思うのですが,全体をどう調整するのか,バランス

をとるのかについては後でお話ししていただくことにします。

現行法は,民事的に不利益措置をとった内容を無効とするということをベースと

して,民事ルールとして策定されたのですが,民事ルールだけでは公益通報者保護

の実効性を確保できない。今回の検討会で,この点の認識は共有されたと考えてよ

ろしいでしょうか。検討会の皆様が頷いておられるので,そういうコンセンサスに

なったかなと思いますが,ではどのような仕組みを補強するかという点で,先ほど

拝師さんから幾つかお話がありましたが,行政措置を何か導入しようということは,

ほぼ了解ということでよろしいでしょうか。

(拝師) 行政措置といってもいろいろとありますが,とりあえずワーキングの中

で,ここまではいいだろうという方向性が出たというのは勧告・公表のところです。

その先は,私は行政処分という形で命令を出して違反すれば刑罰というところまで

はっきり出しておきたかったのですが,そこまでの方向性は出てこなかったという

段階だと思います。

(山口) ちょっといいですか。ここで嘘を言ってはいけないので。私は検討会で

はかなり強く反対をしておりました。

やはり事業者の名前が公表されるということは,ブラック企業というイメージを

今の時代は持たれるということがあり,不利益処分のペナルティといいますか,そ

ういう形で公表措置をとらされるということは企業にとっては相当ダメージが大き

いということがあるので,かなり慎重に対応していただきたい。しかも,私が検討

会で申し上げたのは,私はどちらかというといろいろな不祥事の事実が確定したの

でなくて,噂があれば,そのおそれがあれば,遠慮なく通報してくださいと。ある

意味,オオカミ少年でもいいから,広く皆さん方がおかしいと思うことを挙げてく

れということで通報制度を運用している企業がかなり増えてきている。

そういう中で,公益通報が,真実かどうかわからないけれども,それを不利益な

処分がされたということで,それでペナルティを受けると,さも本当にそういう事

実があったかのように,これは一般の方がどう見るかという問題ですが,そういう

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ことにもなるのではないかということでかなり危惧は,発言として,しておりまし

た。

ただ,労働法に詳しい委員の方,島田さんとかは,実際問題として,社名を公表

するのであれば,よほどきちんとした手続の下で,是正措置をしたにもかかわらず,

なかなかその是正措置に従わないとか,企業側の対応が相当悪いケースだけが公表

されるわけだから,山口さんが言うほどの懸念は出てこないのではないかというよ

うな意見もございまして,私としても納得したようなところです。そこについて発

言させていただきました。

(浅岡) リアルなお話しで,とても理解できます。もちろん行政手続にも慎重な

手続を要することは法律過程としては当然だと思います。光前さん,そのように慎

重さを伴うものであっても,事業者に対する行政措置があることには効果があるも

のでしょうか。

(光前) 私は拝師さんとか山口さんの中間ぐらいの意見だったのですが,いま個

別法で通報者に不利益を科した場合に刑罰規定を設けているのは,皆さんよく御存

じの労基法違反の申告をしたときに,使用者がそれに対して不利益処分にすると刑

罰,あと原子力規制法の第66条も同じような建て付けになっておりますが,一番

わかりやすいのは労基法の例ですが,第104条に違反して不利益を科した場合,

刑罰の例というのは本当に少ない伝家の宝刀です。

ただ,長時間労働というようなものがかなり前から問題となっていて,私たちは

昔から,伝家の宝刀を発揮しろと言っていたのですが,なかなか発揮しなかった。

ただ,ああいう宝刀があることが大きいので,制度として少なくとも行政処分する

ことができる制度は設けるべきだというのが私たちの意見です。串岡さんは,刑事

罰もということで,その辺ではかなり意見が分かれていましたが,行政処分は設け

た方がいいという意見が大勢を占めたのではないかと思います。

(浅岡) それで,その程度には前進させたいなと。これに対して串岡さんは,刑

事罰がないとやはり安心できないんだというご意見でしたね。

(串岡) 私は,いま光前さんが言われたように,第104条については労働基準

法では罰則がかかっています。非常に多くの罰則,第117条から第120条まで

入っております。刑法の特別法的な法律もあるのが労基法第5条ですけれども,そ

れほど厳しい罰則をかけていても,実際にその罰則が適用されているのはごくごく

稀ですから,そういう意味では,このワーキンググループで刑法の東大の先生がい

て,「刑法の謙抑性」から余り乗り気ではなかったのですが,私はこれはぜひ入れな

くてはならないと主張しています。入れても,それでも怖くて通報できなかったの

が,東京電力原子炉のひび割れ偽装事件では,社員もOBも誰一人として真相解明

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のために協力をしなかった。2年間も隠し通そうとした。だから刑法の謙抑性とい

うのは,刑罰を設けても確保できるんだということからいえば,ぜひ入れてもらわ

なければならない。

もう一つ申し上げておきたいのは,内部告発した場合の報復は,内部告発を行っ

た後に人事行為が行われて,そしてその会社人生の全てを失わせるといっても過言

ではありません。内部告発をしなければ昇進も昇格もあるわけです。家族を養って

いけるわけですから,そういう点から考えてみますと,今の民事ルールでは,とて

も守れるものではない。刑罰があっても守れるものではない。だからいろいろな方

策を考えておかなければならないのですが,その方策は,従来の民事ルールのまま

であるということが問題だと言っているわけです。

(浅岡) ありがとうございます。ここは何とか一歩踏み出したいところです。

先ほどからも内部への通報が活かされる仕組み,そういう意味で内部通報制度を

充実させていこう。今回ガイドラインも出されたということでございましたが,そ

れはそれで重要といたしまして,内部通報を機能させるために,更にほかのルート,

行政のルート,外部のルートの要件の緩和の必要性ということがかなり議論されて

まいったかと思います。行政への通報で特に議論があったのは,真実相当性の要件

を緩和すべきかという点でしたが,拝師さんや光前さんは何かありますか。

(拝師) 内部通報,行政通報,外部通報の議論に当たっては,一番重要な視点だ

と思ったのは,座長になった宇賀教授が消費者庁にヒアリングを行ったときに,「制

度間競争」という話をされました。山口さんがおっしゃっているように,確かに,

何でもかんでも外に出てきて,不祥事とか不正のタネが行政とかマスコミに出てく

るというのは決して状況としては好ましくないと思います。ですから,最終的には

内部で処理して,自らが襟を正して企業がやっていけばいいんですけれども,問題

は,今の制度は,外部への道,行政通報への道についてハードルを高くしてしまっ

ているので,余り内部通報をきちんとしようという努力をしなくても,みんな内部

にとどまってしまうというような状況があります。

制度間競争というのは,内部を良くしようとしたら,行政通報,外部通報のハー

ドルも低くして選択肢を広げる。そうすると,企業は必死で内部に通報してもらう

ために,いろいろな安心感を与えるようなことをしたり,場合によっては報償を与

えるようなところもあるかもしれない。いろいろなことをするわけです。そういう

ものが基本的には必要だということで考えていますので,そこの視点だけ発言して

おきたいと思います。

(浅岡) 特に行政への通報には真実相当性の要件というのは厳しすぎるのではな

いかとの指摘があり,今回の検討会でも「緩和の方向で」というのは示唆されてい

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るかと思いますが,山口さん,いかがでしょうか。

(山口) 違法要件について,真実相当性が緩和されるというのは大きな一歩だと

思いますし,私の感覚では,検討会の中では,そこは一部の委員からは出ましたが,

緩和ということに関しては,異論は少なかったのではないかと思います。私なんか

は,実際に行政通報をやりたいという告発者のいろいろな意見に基づいて実際にそ

ういった通報にもかかわるわけですが,私がするならば,行政が通報を受けたとき

に,これはほんとの話ですが,行政にも問題があった。要するに,企業に不正があ

ったんだけれども,その不正の一端は行政にもあるんだということが結構多いんで

すね。

例えば,性能偽装事件に関しては,ある程度,その行政もしくは行政監督の外郭

団体が検査を行う。その検査がきちんと手続どおりに行われたら――もちろん一番

悪いのは企業ですけれども,もっと早めに見つかったのに,その手続がルールどお

りにされていなかったから,長期間,不祥事が表に出ずに,行政への通報,もしく

は第三者への通報があった。こういう場合は行政が通報に基づく調査に対して非常

に後ろ向きになる。こういうこともあるので,できるだけ行政のいろいろな通報と

いうのはハードルを低くして,いわば企業の側からも行政のやっていることを監視

するぐらいのことが必要になってくると思いますから,私はむしろ歓迎をしており

ます。

(浅岡) そういう方向で,どのような表現ぶりをとるかについて,検討課題とし

て残っているということかと思います。今のご指摘ですと,行政にも不正がある,

事業者にもあるというときには,どちらもなかなか動いてくれないかもしれないと

いうことがあるということですが,外部への通報の要件の緩和も指摘はあるのです

が,具体的にはどんなことが考えられますか。光前さん,何かアイデアはあります

か。

(光前) 再度,お話ししますが,公益通報者保護というのは,「企業(内部)へ

の通報」,「行政への通報」,「外部への通報」という全く性質の異なる3つの通報を

一緒くたに「公益通報」と1つのものにしてしまっている。そこで議論が混乱して

しまいまして,公益通報というと,ある者は外部通報を考える。例えば,串岡さん

は外部通報を考えるし,山口さんは内部通報・事業通報を考える。そこで議論が混

乱してきますが,行政通報については,そのへんが割とニュートラルなところがあ

って,意見の一致があったのですが,先ほど山口さんからご指摘のあったとおり,

今の行政通報というのは,通報先はあくまでも,その違法行為についての勧告権限

や監督権限がある行政機関に対する通報しか認めていないんですね。そうすると,

実際のところ,そのような違法行為の通報行為があると,行政機関というのは,自

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分たちの監督権限の不行使,怠慢が白日の下にさらされてしまう結果となるので,

通報事実についてあまりきちんと調査しないという弊害があった。

そこで,もっと中立的な行政機関が行政通報を一括して引き受けたほうがいいの

ではないかということで,行政通報を一括して受け付ける窓口を設けるべきだとい

う意見を私や拝師さんは主張してきました。そうすると,どこが一括して受け付け

るのだということになりますが,それは消費者庁の出番でしょうということで,消

費者庁が行政通報を一括して受け付ける窓口となって,実際の調査等々については,

各所轄官庁が行い,消費者庁がその監督権限を持つような形で調査,処分権限を行

使するというのがいいのではないかという意見を述べておりますが,行政ルートの

窓口の一本化ということについては,今回の報告書でもかなり取り上げられている

と思います。

(浅岡) 全体の最終取りまとめの中にも言及されていますので期待したいところ

です。外部通報について窓口について,どなたかご意見がありますか。

(串岡) 「内部告発」といった言葉の響きからは外部への通報というニュアンス,

そういう印象を持たれた方が非常に多かったと思うんですね。内部告発を行った者

としては,運輸会社を告発した私としては,お客さん,荷主に対して,あなた方は

違法な運賃を取られていますよ,闇カルテルを結ばれていますよということを知ら

せたいわけです。その意味で,外部通報先は,真っ先に確保しておかなければなら

ないわけです。

その意味では,座長の宇賀さんが制度間競争のことに言及されていますが,この

法律がなかったときは制度間競争があったわけです。少なくとも誰がどこへ内部告

発したらいいか。もし企業が信頼できるなら,企業に訴えることは可能でしょう,

あるいは行政機関に訴えることも可能でしょう。だけど,全てに可能だったわけで

すが,事もあろうに内部通報,一番危険なところ,つまり全ての内部告発者が報復

を受けてきて,そこへ訴えたら隠蔽される。必ず隠蔽しますよ,これは人間の性(さ

が)だと言ってもいい。人間が善であるとか悪であるとかではなしに,人間は弱い

ものであるからです。内部告発者は常に報復を受けてきました。私の考えは,内部

通報にこそ,外部通報のような要件を設けるべきなのです。そして,企業は,内部

告発者に対して,絶対に報復しないという措置を講じない限り,内部通報制度を設

けただけでは社員は信用しないわけです。なぜなら,報復をされなかったという実

績がないからです。そこは企業が,「あなたは自由に物を言ってください,それに対

しては絶対報復しません,もし報復したら,その報復した人間に対して処置をしま

す」といえる規定を設けない限り,内部に訴えられないということを,私は申し上

げておきたいのです。

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(浅岡) 串岡さんに指摘されますと,大変重いものを感じます。それにもせよ,

内部通報も改善していかなければいけない。これも大事な視点と思います。

(光前) 先ほど回答がこけてしまって申しわけありません。今の制度はこの図を

見ていただくとわかりますが,労務提供先に対する通報は真実相当性が不要だと。

監督官庁に対する通報は真実相当性が必要だと。外部通報については真実相当性の

ほかに,さらにイロハニホのいずれかの要件が必要だということで,要件的に労務

提供先が一番緩やかで,その次が監督官庁,その次が外部通報になっています。

このことに関して検討委員会では,行政通報と外部通報のプライオリティをどう

するか。これを同列にしたらいいんじゃないかという意見も出ましたが,同一はお

かしいと。監督官庁のほうが優先させるべきだろうという意見が強くて,そうであ

れば,イロハニホの要件が非常に曖昧で分かりづらい。

ここの要件は少し違う形で設けようということで,もう少し監督官庁と外部通報

の要件の差を縮めて,監督官庁がおかしなことをやれば,すぐ外部通報ができます

よということにして,外部通報に監督官庁をコントロールするような機能を設けて,

その上で内部通報をコントロールする機能を設ける。外部通報のイロハニホの要件

を緩和して,外部通報しやすくする。

ただ,外部通報についての真実相当性も緩和したらいいんじゃないかという意見

もあったことはあったんです。特にマスコミ関係者の方からそういう意見がありま

したが,外部通報はさすがに真実相当性を削るわけにいかないだろうというのが検

討委員会の意見で,そういう意味では,監督官庁についての通報については真実相

当性を削ってもいいんだという意見が多かったんですが,外部通報については真実

相当性の要件についてまで削れなかった。それについて串岡さんからかなり意見も

あったということですね。

(浅岡) まだまだ議論したいところですが,時間も迫っておりますので,このテ

ーマはその程度で終えたいと思います。次に,現行法での通報先ごとに要件を図示

しますと,次のとおりになります。

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現行制度では,通報者にとって,労務提供先もイエロー,外部はほとんどレッド

状態,監督官庁への通報も若干危険という現状で,これをもう少し安心して通報で

きるものにしていくにはどうしたらいいかということで更なる検討の知恵を出して

いく時期に来ているかと思います。

そういう中でも,労務提供先にも,また,行政以外の外部への通報の場合も同じ

ですが,通報者の個人情報を漏らしてはいないという,「守秘義務」を入れていこう

というのが新しい点かと思います。今回の配布資料の中(72ページ)に守秘義務

という項目が入っています。情報者の名前を本人の同意なくして漏らしてはならな

いとの守秘義務を事業者に課す。行政は当然に守秘義務を負っていとの建て付けで

すが,ここに例外があるかのような書き方になっています。検討会の最後でもこの

例外についての懸念が示されたところですが,山口さん,こうした例外を考えてい

くべきなのか,そうではなくて通報者に関する情報が守られると安心させる方策と

してはどのようにしたらいいと思われますか。

(山口) そこはかなり発言させていただいた部分で,労務提供先が守秘義務を負

うということも規定としては当然です。これは私からすれば内部統制の問題です。

こういったヘルプラインを使うのではなくて,内部で通報者から情報が来たときに,

秘密を守るという形で情報管理の体制をつくるというのは立派な内部統制の一つだ

と思います。

が,常に言い続けたのが,逆に,そうは言っても本格的に調査をし出すと,誰も

情報は漏らしていないんだけれども社内ではもうわかってしまう。現実に誰が通報

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したのか。そこに持ってきた証拠というのは誰がその証拠にアクセスできるかとい

うのが特定できるわけです。そういうことを一番最初,例えば,通報まで一言もそ

の方が社内で黙っているというケースは稀であって,例えば上司や仲間に,あれは

おかしくないかいということは必ず言う。そういうことがあったけれども,なかな

か周りが動かないから内部通報になる。ということになれば,あいつがしゃべった

んだなとすぐ,バレちゃう。ですから,守秘義務というのはもちろん情報管理も必

要ですが,ある程度,本格的に調査するような不正であれば,被害が重大な不正で

あればあるほど,その通報者の氏名はバレる可能性が高いということは理解してい

ただいたほうがいいんじゃないかということです。

(浅岡) ただ,「同意なくして漏らしてはならない」という大きな原則はしっか

り示す必要があると。拝師さん,この原則を示していることでもやっぱり漏れちゃ

うかもしれないというところはどのように考えていけばよろしいでしょうか。

(拝師) 基本的には,通報窓口の約束事として,通報した人が同意しない限り,

通報者の名前とかそういったことは漏らさないというのは徹底すべきだと思います。

ただ,現実問題として,通報した内容を是正するための前提として,その通報内容

の事実関係について調査しなければいけない。ところが実際には,山口さんがおっ

しゃったように,調査の過程の中で,企業の中では誰が通報したのか自然にバレて

しまうこともありうる。ですから,そこは守秘義務だけではフォローできない部分

があって,万が一,名前がわかってしまう場合,故意に漏らしてわかっちゃう場合

に限らず,わかってしまう場合もありますから,そのときのためにさっき申し上げ

ているような行政処分,刑事罰というのを置いておいて,名前がわかった場合でも,

不利益措置をしてはいけないということを徹底すべきだと思います。

(浅岡) 人事考課においても同じように,そういうことで不利益処分を行っては

いけないというような幾つかの保護の仕組みを加えたパッケージで,全体としてい

かに保護していくかということについて,更に要件を議論しようということが必要

かと思います。

パネルディスカッションで予定された時間はほぼ終了に近づいておりますが,こ

の法律の要件の下では通報者保護の目的を十分に達成できないことから,法律の中

に第6条が加えられておりまして,一般法理で救済できる領域があることの念押し

をしています。この点も,内部通報制度との活用という観点からも重要なポイント

かと思われます。そこに弁護士会の役割もあるという先ほどのお話があったと思い

ます。

それでは皆様に最後1分ずつ,今後こういう点が大事だという点について,河村

さんのほうから。長らくお待たせしました。

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(河村) 1分ということで,途中でなかなか意見を言う機会がなかったのですが,

言えなかったところで急いで言いますと,現行法では罰則規定の不十分さがあげら

れます。通報を理由とする不利益取扱いに対して,処分無効のためには裁判で闘わ

なくてはいけないなど,通報者は大きな負担を強いられています。社会のために勇

気を奮って不正を通報した人が不当な扱いを受け,長く苦しみ続けている例がいく

つも報告されています。不利益取扱いには罰則の強化が重要であり,消費者団体と

して刑事罰の導入を求めます。また通報を受けた窓口から通報者についての情報が

漏洩しても現行法ではペナルティがないことも問題です。罰則の強化は通報するこ

とへの安心感につながると思います。また,先ほどの行政通報のことで言えば,ハ

ードルを下げるだけではなく,行政への通報が十分に機能するような改正を期待し

ています。5年目の見直しも見送られ,施行から10年余り,今なお不祥事は後を

絶ちません。しかも問題が明るみに出るまでに長い期間を要し,その間に消費者の

身体生命,財産に多大な被害が出ています。通報者を守り,公益を守れるしっかり

した法改正に確実につながることを望みます。以上です。

(浅岡) 時間が少なくてすみません。串岡さん,よろしくお願いします。

(串岡) 申し遅れてしまいましたが,現実に今,内部告発を行ったがゆえに不利

益な処分を受けて闘っている方,金沢大学准教授の小川さんが今日,わざわざ金沢

から来てくれています。これは下にあるように,いろいろ内部告発したら,厚生労

働省から名前を明らかにされてしまった事件。もうお一人,オリンパスの濱田さん

が内部に訴えたのも,これも内部に知らされてしまったという事例です。したがっ

て,この人たちから見れば,会社人生,あるいは小川さんの場合,大学でのあれだ

け立派な業績を上げられていても,教授への道は断たれたのではないかというよう

な気さえいたします。そういうような現実にあるんだということをよく認識してい

ただければと思います。

(浅岡) ありがとうございます。厳しい現実,それでも闘っている方々からは学

ぶところは大きいと思います。拝師さん,どうぞ。

(拝師) 細かいことはいろいろと申し上げましたけれども,とにかくまずは,今,

議論してきた方向性の中できちんとした法改正をしていただきたい,立法作業を確

実に進めていただきたいと思っています。後で司会の方からご案内があるかもしれ

ませんが,パブリックコメントが本日から始まっているということなので,ぜひこ

ういうものに意見を出していただいて,締切(2017年2月28日)までまだ時

間がありますので,ぜひこういうもので声をあげていく。そしていろいろな場面で

我々は活動して,集会とかいろいろな場面で声を挙げていきたいと思いますので,

そのときにもぜひ皆さんにご協力いただきたいと思います。よろしくお願いします。

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(浅岡) パブリックコメントは,電子政府の総合窓口「e-Gov(イーガフ)」

というサイトから応募できるそうです。それでは,山口さんお願いします。

(山口) 私は弁護士人生の中で消費者運動というのはほとんどやったことがなく

て,ちょっと論点がずれているかもしれませんけれども,先ほどの行政手続,いわ

ゆる不利益処分の制裁の問題も含めて,本当に,小さな小さな消費者庁というとこ

ろが担っていける制度なのかなと。本当に法改正を実現したかったら,もっと現実

を見ながら対応していかなければいけないんじゃないのかなと思うのです。だから

大きな風呂敷を広げるのはいいんだけれども,まずはやっぱり法改正という経験を,

多少不満は残るかもしれませんが,まず一つ必ずここでつけること。ひょっとした

らその後,何か神風が吹いてくる。個人情報保護法がいろいろと変わったように,

公益通報者保護法にも一気に変わるということもあるかもしれない。でも,そのた

めには地道に,今,消費者庁がこのぐらいの大きさの消費者庁で頑張っているが,

今できる範囲はどこなのか。そのことで他省庁とのすり合わせ,経済団体とのすり

合わせを続けていく。

審議会の中でとても意地悪な意見を私も言ったかもしれませんけれども,それは

ある程度,どこかで同じようなことで意地悪を言われる可能性があるかもしれない

から,そのうちに私が叩かれておこうということでいろいろ議事録でもおわかりの

とおり,叩かれ役もやったつもりです。そういう一つひとつ,地道につなげていく

こと。法改正につなげていく過程を大事にしていかなければいけないのではないか

と思います。

(浅岡) 貴重な意見をずっと言ってくださったと思います。光前さん,お願いし

ます。

(光前) 冒頭にも申し上げましたが,公益通報という名の通報でもあるにもかか

わらず,その結果に対しては,通報者は自己責任を問われています。それは法の建

て付けとしておかしいのではないか。公益という名前を課して通報制度を設けるの

であれば,国がきちんとそれに対してなにがしかの支援なり保護策をもっと積極的

にとるべきではないかというのは当然出てくる議論で,それが現実の立法事実とし

ても出てきていますから,できることから一つひとつやらなければいけない。

特に私は裁判の中で,今日は余り議論にならなかったですが,通報と被害との因

果関係の推定の規定が絶対必要だと思っております。それから損害賠償についても

制裁的な損害賠償が絶対必要だと思います。この2点は,制度的に裁判所の運用で

何とかなる余地もありますが,因果関係の推定についてはぜひもう一度検討してい

ただきたいと思います。

(浅岡) ありがとうございました。検討会では,誠に短い時間でたくさんの論点

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が取りまとめられ,なお検討の方向のニュアンスが少しずつ違いながら,幾つも残

っている状況です。しかしながら,本日の議論の中でも,かなりの方向性が見えて

きており,ここを一歩踏み出そうじゃないかというところまで来ていると思われま

す。ぜひとも,消費者庁で,ひと踏ん張りしていただき,我々も協力しながら,ま

ずは一つ立法に踏み出す,更にまた,次のことを考えていく,これが時代の要請か

と思いますので,今後とも引き続き議論を重ねる機会を持ってまいりたいと思いま

す。3月には東京三弁護士会でシンポジウムを開催いただけるので,期待しており

ます。時間がなく,慌ただしいパネルディスカッションとなりましたが,これにて今

回は終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)

(司会) パネリストの皆様,貴重なお話を聞かせていただいてどうもありがとう

ございました。皆様,もう一度盛大な拍手をお願いします。(拍手)

4 消費者庁からの報告

(司会) ここで消費者庁消費者制度課長の加納克利さんからご報告いただきたい

と思います。よろしくお願いします

(加納) 皆様,こんばんは。消費者庁の加納と申します。今日はシンポジウムに

お声がけいただきましてどうもありがとうございました。公益通報者保護法の問題

は,消費者庁にとっては非常に重要な問題でありまして,消費者庁創設時の国会の

附帯決議でも通報窓口の一本化ということが掲げられておりまして,消費者行政を

強化していく上で非常に重要な制度だと思っています。

私も,幾つかの法改正,新規立法などを担当してまいりまして,この制度もしっ

かり動かしていかなければいけないなと思いまして,いろいろ検討会を立ち上げて

まいりました。現時点で成案を得るには至っていないかなと言わざるを得ない状況

でして,一つは実態の把握という点でまだ弱いかなという気がしています。

幾つかのお話で,内部通報制度はその実態が外に出にくいということで,そこが

悩ましいところでもありますが,ほかの立法をする場合には,例えばこういう苦情

があると,インターネットで調べるとこういう苦情相談があって,現行法でうまく

いかないところの件数がこういう形で推移しているというのが重要なデータとして

立法の根拠になりますが,そういう点が弱いというのが一つあります。こういうと

ころをしっかり補強していかなければいけないというのがあります。

もう一つ,制裁の規定として刑事罰とか行政措置というようなものが検討課題と

して挙がっておりまして,これを導入すると,この法律の性格が大きく変わること

になりますが,この議論が,特に刑事罰について,もうちょっと詰めないと物にな

らないかなという印象は受けます。

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ワーキンググループでそこのところを刑法の先生,東京大学の佐伯仁志教授も交

えて議論しましたが,その際に当然,類例も参照しながら検討するときに,既にあ

る公益通報者保護法というのは,非常にたくさんの法律を通報対象事実としていま

すので,その中で罰則を入れているものもあれば,入れていないものもある中で,

なぜこの法律に罰則を入れるのかということが当然問題になるわけでして,消費者

庁,我々でいろいろと考えて,保護法域はこうだとか,そういうことを我々なりに

考えてペーパーを示しましたが,議論がほとんど深まりませんでした。個人的には

非常に残念に思っているところですが,そういったところをしっかりとやっていか

ないとなかなか物にならないという気がしています。

他方で,この制度をどう実効的なものにしていくかというのは重要な課題であり

まして,少しずつでも動かしていかないと,いつまでたっても現状と変わらないと

いうことになりかねないことになります。次のステップはどうするのかという工程

表が示されていないというお話も冒頭にありましたが,消費者庁としてダラダラと

やるつもりはありませんが,ただし,中身を詰めないと物にならないというのも現

実でありまして,そこはしっかり補強しながらやっていくということであります。

先ほどご紹介もありましたが,パブリックコメントを本日から2か月強という期

間をかけてやりたいと思っています。これは主として制度改正に関して各方面から

意見をちょうだいして議論を深めていきたいと思いますので,弁護士会の皆様にお

かれましてはいろいろとご意見を寄せていただきたいと思います。寄せていただい

た意見を踏まえて更に中身を詰めていきたいと思います。以上でございます。よろ

しくお願いします。(拍手)

(司会) 加納さん,ありがとうございました。

5 閉会挨拶

(司会) それでは最後に当連合会消費者問題対策委員会委員長の瀬戸和宏から閉

会の挨拶を申し上げます。

(瀬戸) 皆様,本日は遅くまでありがとうございました。約80名の方にご参加

していただきました。

私はこの法律ができる前後から中村雅人さんや光前幸一さんに連れられて,ずっ

と関与してきましたが,法律ができた当初から,この公益通報者保護法という法律

の名前にどうも納得ができないできました。

先ほど,串岡さんが立法理念から変えなきゃいけないとおっしゃいました。

この法律は,公益通報という社会に良いことをしたら,社会から褒めてもらえる

わけではなく,何か悪いことをしたかのように不利益が予想され,その不利益から

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守られる対象になるというのです。しかも,この法律は守られるための要件を定め

ているのです。その要件を満たさないと,守られもしないのです。どうも,しっく

りしません。

そうしたら,今日,光前さんが,今の法律は,通報の自由はあるがあとは自己責

任なんだというお話をされました。私の中で,私の考えと一致しました。

スクリーンには,「安心して通報できる制度へ」と書いてあります。今の制度はど

うかというと,ハイリスク・ノーリターンですね。良いことをして,何のリターン

もなくて,もしかしたら会社をクビになっちゃうというハイリスクだけがある。今

日した議論というのは,ハイリスクをミドルリスクにする,あるいはローリスクに

するという話で,ノーリスクになりそうもないということが,聞いていてわかりま

した。

これだったら,もし自分が通報しようかなと思ったときに,躊躇しますよね。 こ

れを躊躇しなくするには,社会が公益通報した人に感謝するような社会,自己満足

かもしれませんが,そういう社会になってほしい。社会の意識が,公益通報した人

を処分するような会社は悪い会社なのだと変わっていかないと,この制度はなかな

か良くならないのかなと,今日の話を聞いていて思いました。

ですから,ペナルティをかけてもよいという河村さんの話は,公益通報をした人

に不利益を与えるようなそんな悪い会社ならペナルティをかけたらどうか,という

ことで,そういう考え方に行き着くのかなと思います。

社会の意識を変えるためには教育も必要ですが,法律が変わっていく中で私たち

も変わっていくのかなと思いますので,ぜひ立法に向けて頑張りましょう。本日は

どうもありがとうございました。(拍手)

(司会) 皆様,長時間にわたりお疲れ様でした。以上をもちまして全てのプログ

ラムを終了いたします。どうもありがとうございました。

(了)

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市⺠のための市⺠のための公益通報者保護法の公益通報者保護法抜本的な改正を!抜本 改弁護⼠ 拝師徳彦

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テキストボックス
資料3
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現在の公益通報者保護法の問題点現在の公益通報者保護法の問題点1 ⽬的規定が抑制的・公益通報を積極的に推進しようという体裁になっておらず,公益通報者保護に抑制的にみえる。

2 適⽤場⾯が狭い2 適⽤場⾯が狭い・労働者以外の通報者(退職者,取引先等)が保護対象となっていないが,実際には通報した退職者等にも嫌がらせがなされている。所定の法律違反以外の不当⾏為(規則違反 内規違反等)について通報した場合は保護されない・所定の法律違反以外の不当⾏為(規則違反,内規違反等)について通報した場合は保護されない。

・「通報対象事実」が狭い結果,「⽣じようとしていると思料する場合」も限定的に。・内部通報優先で外部通報には⾼いハードル(真実相当性+証拠隠滅のおそれ等)。

3 公益通報者が安⼼して通報できない制度設計に通報者に対し繰り返し嫌がらせをする企業も存在・通報者に対し繰り返し嫌がらせをする企業も存在。

・証拠書類の持ち出しが保護されず,処分の対象にされることも。・通報事実に関し,社内で事実に反する説明が横⾏することも。・通報を受け付けた窓⼝から通報者についての情報が漏えいしてもペナルティなし。

4 通報当事者へのフォロ (メンタルケア等)がない4 通報当事者へのフォロー(メンタルケア等)がない

あるべき改正法の⾻⼦的規定 積極化1 ⽬的規定の積極化

公益通報をより積極的に推進し,そのために公益通報者保護を徹底するという体裁に⽬的規定を改定定

2 公益通報者保護制度の適⽤場⾯の拡⼤① 保護 対象となる公益通報者 拡⼤① 保護の対象となる公益通報者の拡⼤② 公益通報の対象事実の拡⼤③ 内部通報優先の仕組みを撤廃④ 公益通報者の主観的要件の緩和④ 公益通報者の主観的要件の緩和

3 公益通報者保護制度の実効性の確保① 公益通報 外部受付 調査 勧告を独⾃ 権限 ⾏う⾏政機関 設置① 公益通報の外部受付・調査・勧告を独⾃の権限で⾏う⾏政機関の設置② 通報者への報復⾏為に対する罰則・⾏政処分の制定③ ⺠事ルールにおける通報者の⽴証責任の軽減④ 証拠書類の持ち出し⾏為の免責④ 証拠書類の持ち出し⾏為の免責⑤ リーニエンシー制度の導⼊(内部通報優先とならないよう配慮が必要)⑥ 通報受付担当者・受付機関の守秘義務⑦ 通報事実についての従業員等への真実説明義務⑧ 第三者機関が調査を⾏わない場合の通報者の調査申⽴権⑧ 第三者機関が調査を⾏わない場合の通報者の調査申⽴権

4 公益通報者への⽀援① ⾏政から公益通報者の被害者の会等を紹介② ⾏政にメンタル相談窓⼝を設置 33 / 92

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最終とりまとめのポイント最終とりまとめのポイント◎基本的にはWG報告書を引⽤◎基本的にはWG報告書を引⽤1 刑事罰について通報経験者からの意⾒の聴取等、通報者が被る不利益の実態に関する報経 ⾒ 聴取 報 被 不 実 関更なる調査を踏まえた上で、引き続き検討すべき。2 消費者庁の果たすべき役割について(1)通報者への不利益取扱いに対して⾏政措置等を設けるに当たり(1)通報者への不利益取扱いに対して⾏政措置等を設けるに当たり関係⾏政機関との役割分担を構築する等必要な体制整備を⾏う。(2)①消費者庁に通報や通報対応に関する意⾒・苦情等を受け付けるための⼀元窓⼝を設ける ②寄せられた意⾒・苦情等につき調査しるための⼀元窓⼝を設ける。②寄せられた意⾒・苦情等につき調査し、当該⾏政機関に対し改善要請等を⾏う。→所要の法改正を⾏うことも含めて、具体的な検討を⾏うべき。

3 今後の進め⽅(法改正)・最終報告書の内容について広く周知。問題 課題があるとされている事項について 経済団体や中⼩企業・問題・課題があるとされている事項について、経済団体や中⼩企業

団体等の各関係団体からの意⾒や、通報経験者等の当事者を含めた国⺠全体からの意⾒の集約を図り、できる限り早急に法改正の内容についてより具体化。

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テキストボックス
資料4
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解雇

配置転換

降格減給

懲戒処分

雑役従事

嫌がらせ

その他

あり

不明

なし

2010 33 1 5 2 4 7 6 2 2 9 10 13 9 20 16

2011 20 3 1 3 2 1 1 3 7 7 10 7 7

2012 26 2 4 1 1 8 10 2 2 4 0 1 7 7 15 13 16 12

2013 12 1 6 0 1 6 5 4 5 3 0 1 6 4 7 11 6 9

2014 18 1 1 0 0 5 8 0 1 1 0 0 3 4 8 10 4 12

2015 21 0 0 1 2 3 4 3 3 1 0 0 13 2 9 11 5 10

計 130 5 19 2 7 26 37 17 14 11 1 2 41 34 59 64 58 66

その他

公益通報相談統計(2010年度~2015年度 東京)

退職者

年度

別表の法律違反の有無

不利益

不利益なし

既通報

派遣

 未通報

相談者の立場 経過

労働者

役員等

取引先

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資料5
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大阪弁護士会 公益通報者サポートセンター統計(平成22年度~平成28年度)
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資料6
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資料7
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2016年12月21日2016年12月21日日弁連シンポジウム「公益通報(内部告発を社会に活かすために」「公益通報(内部告発を社会に活かすために」

事業者側からみた事業者側からみた公益通報者保護制度の現状と課題

山口利昭法律事務所山口利昭法律事務所

弁護士 山 口 利 昭 (大阪弁護士会)

Yamaguchi-Law-Office.Osaka©2016

企業は不祥事を公表しないのが原則?業は不祥事 公表 な 原則?-内部通報・内部告発リスクを軽視

上場会社における企業不正に関する実態調査(2016年11月17日付けデロイトトーマツ公表資料より

上場会社3600社のうち、402社から回答あり)

不正発覚 端緒不正発覚の端緒1位 内部通報(25%) 2位 内部監査(20%)3位 内部統制活動(19%) 4位 外部への情報提供(14%)3位 内部統制活動(19%) 4位 外部への情報提供(14%)

不正発覚後の対応実態不正発覚後の対応実態1位 重要性がないため公表せず(58%)2位 公表した(34%)

※ 重要性がないため公表しない企業の9割が「5000万円未満の不正だ たため」と回答

2Yamaguchi-law-office 2016の不正だったため」と回答

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資料8
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企業は不祥事を公表しないのが原則?業は不祥事 公表 な 原則?-内部通報・内部告発リスクを軽視

5000万円未満の不正は重要性がない?企業は公表したくないバイアスにとりつかれる業 公表 くな れ

① 調査スコープは適正か?内部通報 内部告発が さ た だけを調査 象と内部通報、内部告発がなされた不正だけを調査の対象としており、件外調査までスコープの対象とすることが少ないいつまで遡って調査するのか 他の部署で同様の不正はないつまで遡って調査するのか、他の部署で同様の不正はないか?→だれが調査範囲を決定しているのか?

② 不正の量的判断だけでよいのか?質的重要性は?社員単独の不正なのか、経営者も関与していたのか?不正はミスで発生したのか、故意によるものか?→量的には5000万円以下であったとしても、内部統制が無効化されているケ スでは質的には重要である

3Yamaguchi-law-office 2016効化されているケースでは質的には重要である

内部通報者 内部告発者の現状を知る内部通報者・内部告発者の現状を知る

・社員はなぜ内部通報をするのか?(外部通報窓口の経験より)

通報者の意図 通報の特徴

不平不満型(労務コンプライアンス) 時間外労働、賃金問題、人事問題不平不満型(労務コンプライアンス) 時間外労働、賃金問題、人事問題

職場環境配慮不全型 パワハラ・セクハラ

SOS発信型(不正関与者の苦悩) 会計不正等 少数だが重大問題SOS発信型(不正関与者の苦悩) 会計不正等 少数だが重大問題

リニエンシー型(自己申告免責) 懲戒処分の減免(近時の判例あり)

愛社精神型(内部告発に共通) 企業の理想像を追い求める愛社精神型(内部告発に共通) 企業の理想像を追い求める

内紛型 会社と従業員のトラブル支配権争いの道具として活用

不誠実目的型(虚偽申告等) 海外子会社事案等に多い

4Yamaguchi-law-office 2016 44 / 92

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内部通報者 内部告発者の現状を知る内部通報者・内部告発者の現状を知る

・社員による内部通報・内部告発の傾向(外部通報窓口の経験より)

通報制度の傾向 個人的見解

集団化傾向(代表者が通報する 通報者 支援

トナミ運輸のK氏、鹿児島県警の氏 オリ パ 氏は特別(代表者が通報する、通報者の支援

組織が存在する等)S氏、オリンパスのH氏は特別。制度化が進む中で、通報は集団化している

情報提供の密行化傾向 内部通報、内部告発を支援する法律専門家が増え、匿名性が確保される状況にある(例 オリンパスの深れる状況にある(例 オリンパスの深町正氏 ほか)

職場環境整備義務の一環として捉 とりわけセクハラ・パワハラ問題では職場環境整備義務 環として捉えられる傾向

とりわけセク ラ ワ ラ問題では二次セクハラ・二次パワハラとして対応の杜撰さが指摘されることがある

5Yamaguchi-law-office 2016

公益通報者保護法を踏まえた公 通報者保護法 踏ま内部通報制度ガイドライン改訂のポイント

民間事業者向けガイドラインが11年ぶりに改訂消費者庁・公益通報者保護制度実効性検討委員会にお消費者庁 公益通報者保護制度実効性検討委員会における審議に基づく

(改正の趣旨)• これまでのガイドラインと方向性は同じであるが、民間事業者

が 活用しやすくするため 指針を具体化 明確化が、活用しやすくするために指針を具体化・明確化• 通報者、経営者、中小事業者、消費者の各視点から、公益

通報者保護法の趣旨を踏まえたガイドラインを制定通報者保護法の趣旨を踏まえたガイドラインを制定• 内部通報制度の適切な運営が、消費者保護につながり、

社会経済全体の利益となることを示す社会経済全体の利益となることを示す

6Yamaguchi-law-office 2016 45 / 92

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公益通報者保護法を踏まえた公 通報者保護法 踏ま内部通報制度ガイドライン改訂のポイント

民間事業者向けガイドラインを事業者が理解する実益

1. ガイドラインと取締役の内部統制構築義務

ガイドラインに沿った内部通報制度を整備・運用するかどうかはガイドラインに沿 た内部通報制度を整備 運用するかどうかは原則として経営判断である(経営者の裁量権)しかし、取締役の「結果回避義務」の判断に影響を及ぼす可能性あり →セイクレスト事件大阪高裁判決 参照

2. 内部通報制度の不適切な運用2. 内部通報制度の不適切な運用

ガイドラインに沿ったヘルプライン規程が存在する場合、その不適切な運用は 訴訟における不利益事実となる適切な運用は、訴訟における不利益事実となる→オリンパス配転命令無効確認事件東京高裁判決 参照

7Yamaguchi-law-office 2016

企業が内部通報制度を機能させること業 内部通報制度 機能 とのメリット①-レポートラインの健全化

不祥事発覚に至るまでの各段階で機能する内部通報制度

未然防止 早期発見 信用回復

内部通報制度が有効に 不正が発生した時点に たとえ不祥事件を公表内部通報制度が有効に

機能している、と役職員

が認識していることが、

不正が発生した時点に

おいて、内部通報が機

能することで早期に不

たとえ不祥事件を公表

したとしても、自らの手

で対処したことで自浄識

不正への動機を減退さ

せ、不正行為の機会を

喪失させる(役職員への

正への対応が可能とな

り、いわゆる「二次不祥

事」を未然防止できる

能力を発揮することとな

り、レピュテーションリス

クを最小限度に抑える喪失させる(役職員への

浸透が必要)

事」を未然防止できる クを最小限度に抑える

内部通報制度の実効性を高めることが必要!

8Yamaguchi-law-office 2016 46 / 92

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企業が内部通報制度を機能させること業 内部通報制度 機能 とのメリット①-レポートラインの健全化

内部通報制度の先進企業は窓口通報よりも業務ライン通報を重視するを重視する

部門長への内部通報を奨励(社内規則化)⇒報告を受けた部門長がしかるべき是正措置を行 たうえで報告⇒報告を受けた部門長がしかるべき是正措置を行ったうえで報告

★ 内部通報窓口も設置しているため、報告を受けた上司は通報を無視できない(窓口へ通報されるまえに動かなければ放置したとみ無視できない(窓口へ通報されるまえに動かなければ放置したとみなされる)

内部通報窓口が機能していることが周知徹底されていなければ業務ラインへの通報の実効性はない不利益取扱を受けないことが保障されていなければ安心して上司に通不利益取扱を受けないことが保障されていなければ安心して上司に通報はできない

9Yamaguchi-law-office 2016

企業が内部通報制度を機能させること業 内部通報制度 機能 とのメリット②-不正リスクの低減を図る

① 国内 海外における競争法違反事件

経営者に現場情報が速やかに届く必要性が高まる① 国内・海外における競争法違反事件自主申告制度活用の重要性⇒住友電工株主代表訴訟 和解成立(2

014年5月7日 大阪地裁)※自主申告制度の利用が遅れたことで、元経営陣5億2000万円の支払義務② 景品表示法(平成26年11月)改正問題(課徴金に代わる自主返金制度)⇒早期に表示義務違反事実を発見、公表、自主返金(課徴金の制度) 早期 表示義務 反事実 発見 公表 自 返 (課徴減免へ)

③ 改正刑事訴訟法(司法取引は平成30年から施行)⇒独禁法違反、金商法違反事件、不正競争防止法違反事件も政令に⇒独禁法違反、金商法違反事件、不正競争防止法違反事件も政令に

より司法取引対象法令に含まれる予定。さらに法人も被疑者となりうる以上、法人の立件を免れるためには早期の情報収集が必要④ 消費者裁判手続特例法(平成28年10月施行)④ 消費者裁判手続特例法(平成28年10月施行)⇒特定適格消費者団体との事前交渉において自主的な被害回復措

置をとることにより提訴リスクを減らす。また提訴後であったとしても、訴訟要件の該当性を否認するための措置をとり敗訴リ クを減らす

10Yamaguchi-law-office 2016

訟要件の該当性を否認するための措置をとり敗訴リスクを減らす。

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企業が内部通報制度を機能させること業 内部通報制度 機能 とのメリット②-不正リスクの低減を図る

パワハラが企業に及ぼすリスクは重大である

訴訟リスク 近時はパワハラ調査の担当者まで「セカンドパワハラ」として訴えられる時代(サントリーホールディングス損害賠償請求訴訟判決)ディングス損害賠償請求訴訟判決)

風評リスク ブラック企業として社会的な信用を喪失させることになる(ゼンショ-問題参考)

良質な労働力の喪失 セクハラと異なり、パワハラは同じ職場内における第三者的立場の社員も辞める原因となる

負の連鎖リスク パワハラの加害者が、実は別件で被害者である傾向→パワハラは構造的体質がある

不祥事隠ぺいリスク パワハラの背後にある企業不祥事を隠ぺいしてしまう(二次不祥事リスク)

11Yamaguchi-law-office 2016

ご清聴ありがとうございました!ご清聴ありがとうございました!

〒530-0047大阪市北区西天満5丁目1番9号 新日本曽根崎ビル8階大阪市北区西天満5丁目1番9号 新日本曽根崎ビル8階TEL06-6367-5381 FAX[email protected]山口利昭法律事務所 弁護士 山 口 利 昭山口利昭法律事務所 弁護士 山 口 利 昭

消費者庁 公益通報者保護法検討委員会 委員日本弁護士連合会 司法制度調査会 社外取締役ガイドライ 幹事日本弁護士連合会 司法制度調査会 社外取締役ガイドラインPT幹事日本内部統制研究学会 理事日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN) 理事日本コーポレートガバナンス・ネットワーク 理事

大東建託株式会社(東証・名証1部)社外取締役大東建託株式会社(東証 名証1部)社外取締役大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社 社外監査役大阪市交通局 監査役

12Yamaguchi-law-office 2016 48 / 92

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2016 12 212016.12.21⽇弁連 シンポ

弁護⼠ 光前 幸⼀

現⾏法の基本的な構造

1 通報の⾃由(義務なし)☛結果については⾃⼰責任 例外*児童福祉法25条等 例外*児童福祉法25条等 公務員

2 通報は権利侵害☛違法性阻却事由の明⽂化

3 適法通報への報復☛⼀般法による救済 3 適法通報への報復☛ 般法による救済 ・解雇、配転、降職、減給(労働法) ・取締役解任(会社法) ・契約解消、取引停⽌、損害賠償請求(⺠法)

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資料9
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通報に対する社会認識の変化通報に対する社会認識の変化

1 社会にとって有益か、必要かの認識の程度により、以下の段階がある。 ① 通報の禁⽌ 抑制(絶対制) ① 通報の禁⽌、抑制(絶対制) ② 通報の⾃由(現⾏法) ➂ 通報の⽀援

➃ 通報 奨励( 監視社会 ) ➃ 通報の奨励(⇔監視社会?) ⓹ 通報の義務(⇔密告社会?)

2 ➂〜⑤の段階になれば、⼀般法を超えた通報者の保護が必要。・通報者の秘密保護☛プライバシー権・⼀般法を超えた保護☛通報被害の因果関係推定般法を超えた保護 通報被害の因果関係推定

制裁的な損害賠償(イギリス)簡易な救済制度(アメリカのスラップ訴訟救済制度)⾏政救済制度⾏政救済制度刑事罰

事業者の内部通報制度の現状

1 通報の積極的な奨励(マイナス情報の社内吸収)が⼀般

事業者の内部通報制度の現状

2 通報者保護のあり⽅・秘密保護の徹底・違反者の処分(就業規則に明⽰)・違反者の処分(就業規則に明⽰)・処理状況の説明・処理後のフォローアップ・リーニエンシー、報奨⾦

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改正の視点を3点だけ挙げるとすれば改正の視点を3点だけ挙げるとすれば

1 内部通報の健全化とその限界の⾒極め(組織的不正には内部通報の健全化とその限界の⾒極め(組織的不正には対応困難、⾒果てぬ夢は捨てるべき)

2 内部通報を健全化させる最良の⼿段は外部通報の脅威で実あることを認識し、外部通報要件を緩和、充実させる。

3 ⾏政通報の⼀元化、専⾨化(消費者庁)

とりまとめの評価とりまとめの評価

1 消費者庁主導のもとに、改善点を洗い出したということが最⼤の功績。ただ、各改 ポ 微妙 中途半端 改 制度各改正ポイントは微妙にからみあっており、中途半端な改正は、かえって制度にマイナス。

2 この法律は、内部通報(組織への情報提供)と外部通報(組織のマイナス情報の外部持ち出し)という相反する性質のものを、⼀緒くたに「公益通報」と定義してしまったことが問題を複雑にしており(呉越同⾈、同床異夢型法律)、どちらの通報にプライオリティーをおくかの選択も求められている。

3 当然のことではあるが、通報制度に対する⺠意がどこにあるかが改正の鍵を握っている 通報NGOとしての弁護⼠会の役割も重要握っている。通報NGOとしての弁護⼠会の役割も重要。

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公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会

最終報告書の概要について

平成28年12月15日

消費者庁消費者制度課

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資料10
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<背

景>

・公益通報者保護法の施行から10年

余が経過したが、近年においても、企業の内

部通報制度が機能せず、大きな不祥事に発展した事例や、通報を受けた行政機

関において不適切な対応が行われた事例などが発生。

・公益通報として保護されるための要件や不利益取扱いを抑止するための効果の

在り方等、同法の枠組みについても見直しを行うべきとの意見(平成26年度有

識者ヒアリング等)。

<検討会・WGの開催>

・「消費者基本計画」(平成27年3月24日閣議決定)を踏まえて、制度の見直

しを含む必要な措置の検討を行うため、平成27年6月に「公益通報者保護制

度の実効性の向上に関する検討会」を設置。

・第1次報告書において示された法改正に係る各論点について、専門的な観点

からより精緻な検討を行うため、平成28年4月、検討会の下に「ワーキン

グ・グループ」(WG)を設置。

1民間事業者の取組の促進

①事業者向けガイドライン(GL)改正

②事業者に対するインセンティブの導入

(認証制度、公共調達での評価)

2行政機関の取組の促進

①行政機関向けGL改正

②地方公共団体向けGL策定

3通報者保護の要件・効果

法改正に向けて検討すべき事項を整理

法改正に係る各論

点について、専門

的観点から検討

「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」検討結果等の概要

検討会<計

14回>

(平成

27年6月~

平成

28年

12月)

WG<計

11回>

(平成

28年4月~

11月)

検討会

WG

氏名

○-

井手裕彦

読売新聞大阪本社編集局編集委員、羽衣国際大学客員教授

◎◎

宇賀克也

東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授

○-

川島千裕

日本労働組合総連合会総合政策局長

○-

北城恪太郎

経済同友会終身幹事、日本アイ・ビー・エム㈱相談役

○-

串岡弘昭

通報経験者

○○

光前幸一

弁護士

○-

今野由梨

東京商工会議所特別顧問、

ダイヤル・サービス㈱代表取締役社長

-○

佐伯仁志

東京大学大学院法学政治学研究科教授

○○

島田陽一

早稲田大学副総長・法学学術院教授

-○

田中

亘東京大学社会科学研究所教授

○-

土田あつ子

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会

消費生活研究所主任研究員

○○

拝師徳彦

全国消費者行政ウォッチねっと事務局長、弁護士

○○

升田

純中央大学大学院法務研究科教授

(検討会は第

11回、WGは第8回まで)

○-

水尾順一

経営倫理実践研究センター首席研究員、

駿河台大経済経営学部教授

○○

山口利昭

弁護士、日本内部統制研究学会理事

○-

若杉敬明

東京大学名誉教授、

日本コーポレート・ガバナンス研究所所長

検討会・WG委員一覧(◎=座長)(五十音順、敬称略)

○法改正の方向性と課題

検討会第1次報告書において示された法改

正に係る各論点(※)について検討を行い、制

度の実効性を向上させるための法改正の方

向性や課題について、可能な限り明確化

(※)①通報者の範囲、②通報対象事実の範囲、

③外部通報の要件、④不利益取扱いに対

する行政措置・刑事罰、⑤守秘義務等

②WG報告書(別紙2)

1WG報告書の評価等

WG報告書に示された方向性に沿って、法改正に向けた具体的な検討を進めるべき。とりわけ、

①不利益取扱いからの保護・救済、通報に係る秘密保持の強化につきより充実した検討をすべき

②法の具体的内容が、国民にとってより理解しやすいものとなるよう所要の措置を講ずべき

③通報者への不利益取扱い等に対する刑事罰についても、引き続き検討すべき

2消費者庁が果たすべき役割等

①行政措置等を設けるに当たっては、関係省庁との役割分担や協力関係構築等、必要な体制整備

を行うべき

②行政機関の適切な通報対応を促すため、消費者庁における一元窓口の設置、各行政機関の通

報対応のモニタリング及び必要な改善要請等を行うべき

等3公益通報制度の実効性の向上に向けた今後の進め方

①GLの改正・策定等、制度の運用改善により対応可能なものについては早期に実現を図るべき

②法改正が必要なものについては、最終報告書の内容を広く周知して法改正に向けた議論を喚起

するとともに、各関係団体や国民からの意見の集約を図り、可能な限り早急に法改正の内容をよ

り具体化していくべき

③最終取りまとめ

①第1次報告書(別紙1)

<審議の経緯と成果>

③最終取りまとめ

(平成

28年

12月)

①第1次報告書

(平成

28年3月)

②WG報告書

(平成

28年

11月)

検討会「最終報告書」の概要

※①、②、③を合わせて検討会「最終報告書」として取りまとめ。

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○運用改善により対応可能なものについては、早急に着手・実行

(→事業者のコンプライアンス経営・消費者志向経営の推進、通報を受けた行政機関に

おける適切な対応の確保によって、通報者保護・法令遵守が図られることを期待)

○制度的手当が必要な事項については、引き続き精緻な検討を行う

<背

景>

平成12年~14年頃に相次いだ食品偽装やリコール隠し等の企業不祥事の多く

が通報を契機に発覚したことから、公益通報者保護法が制定された(16年公

布・18年施行)。

しかし、近年においても、企業の内部通報制度が機能せず、不祥事発生に

至った事例が見られる。

また、通報を受けた行政機関における不適切な対応も見られる。

<検討会の開催>

左記の事情等を背景として、平成26年

度に実施した有識者ヒアリングの結果

等も踏まえて、公益通報者保護制度の実効性向上の方向性について検討会を

開催。(平成27年

6月~平成28年

3月・合計10回

1通報者へのフィードバックと行政機関に対するモニタリング-行政機関向けガイドライン改正

※②③について、各省庁の通報窓口のほか消費者庁に通報

窓口を設置すること等、消費者庁が果たすべき役割を検討

2地方公共団体の窓口整備

行政機関の取組の促進

<通報を受けた行政機関に

おける過去の問題事例>

・通報の放置

・不適切な調査

・通報に係る秘密の漏洩

①通報者へのフィードバック等の充実

②行政機関の通報対応状況のモニタリング

③行政機関の通報対応に対する意見・苦情等の

受付体制の整備促進

市区町村における、外部の労

働者からの通報・相談窓口の

設置は、29%にとどまっている

消費者庁及び都道府県が市区町村の通報・相

談窓口の整備を支援促進

※地方公共団体向けガイドラインの策定

※地方消費者行政推進交付金も活用

1事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項の具体化-事業者向けガイドライン改正

2事業者の自主的な取組を促進するためのインセンティブの導入

従業員が安心して通報・相談できる環境を整備し、内部通報制度をコンプライアンス経営等に

積極的に活用する企業を評価する認証制度を設けることを検討。また、国の行政機関、地方

公共団体等に対し、調達・契約等において積極的に評価することを促す。

3内部通報制度の更なる導入・取組の促進

内部通報制度に係る事業者の体制の整備・運用について、制度的手当を検討。

民間事業者の取組の促進

・内部通報制度が機能せず企業

の自浄作用が発揮されなかった

事案が見られる

・中小企業における内部通報制

度の導入割合は、40%にとど

まっている

①従業員等が安心して通報・相談できる内部

通報制度の整備促進

(匿名性確保・外部

窓口の活用、社内リニエンシー制度の導入、

経営幹部から独立した通報ルートなど)

②中小企業では、企業グループ、サプライ

チェーン等を通じた取組を促進

※地方消費者行政推進交付金も活用

1通報者の範囲

2通報対象事実

3不利益取扱い禁止に違反した場合の効果

4その他

通報者保護の要件・効果

現在は労働者のみ

※通報を受理しなかった理由として

退職者からの通報であることが考

慮された可能性がある事例などあり

①退職者、②役員、③取引事業者を加える

ことについては、どのような法的効果を与え

るべきかという観点も踏まえて検討すべき。

現在は対象法律(国民の生命、身体、

財産に関わるもの等)を政令で列挙

※対象事実該当性が一般的に分か

りやすいとは言えないとの指摘あり

通報対象事実を広げることについては、通

報者が判断しやすいメルクマールを設定す

る必要性等も踏まえて検討すべき。

現在の解雇の無効等民事的な効果の

みでは不十分との指摘あり

※裁判には多大な時間・労力・費用

がかかり負担が大きいとの指摘あり

抑止効を高める観点からは刑事罰・行政的

措置を導入することも考えられるが、

刑事罰については、可罰性や構成要件等を

詳細に検討すべき。

行政的措置については、①いかなる機関が、

②いかなる措置をとるのか等を検討すべき。

以下の事項についても、引き続き検討すべき。

・通報内容を裏付ける資料の収集・持出し行為の免責

・外部通報の保護要件の緩和

(現在は、報道機関等の事業者外部への公益通報が保護さ

れるためには、通報対象事実の真実相当性に加え、①通報したことを理由に不利益取扱

を受けるおそれ、又は、②証拠隠滅等のおそれ、等についての真実相当性も必要)

・通報と不利益取扱いとの間の因果関係の推定

・通報に係る情報に関する守秘義務を設けること、当該守秘義務を負う者の範囲等

※各論点について、問題の所在に対応した制度的手当の必要

性及び内容について、専門的観点からより精緻な検討が必要

WGを設置し引き続き要検討

「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」第1次報告書の概要

別紙1

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(1)現行法の課題

(2)今後の方向性・課題

(1)現行法の課題

(2)今後の方向性・課題

(1)現行法の課題

(2)今後の方向性・課題

(1)現行法の課題

(2)今後の方向性・課題

1通報者の範囲

2通報対象事実の範囲

4不利益取扱いに対する行政措置・刑事罰

現在は労働者のみ

⇒対象範囲が狭いとの指摘あり

※①退職者、②役員等、③取引先

事業者が通報をした結果、不利益

取扱いを受けた事例あり。また、

④その他の者(労働者の家族等)

による通報も存在

現在は、公益通報を理由とする不利益

取扱いを民事上違法とする民事ルール

のみ規定

⇒不利益取扱いの抑止効を高める観

点から、①行政措置や②刑事罰を

導入すべきとの指摘あり

①通報と不利益取扱いとの因果関係について立証責任の緩和等

⇒訴訟実務との整合性や他法令との平仄等に留意しつつ、緩和等を行う方向で検討

②通報内容を裏付ける資料の収集・持出行為の免責

⇒裁判例収集・分析を踏まえ、責任減免が認められる事例等の類型化を図った上で、

不利益取扱いから通報者を保護する方向で検討(刑事免責については慎重に検

討)

③通報対象事実への関与に係る責任の減免(リニエンシー)

⇒慎重に検討

④内部通報制度等の整備

⇒内部通報制度を整備すべき対象者の範囲や履行確保のための制度的担保に留意

しつつ、内部通報制度等の整備を法定する方向で検討

など

現在は、対象法律(①国民の生命、

身体、財産等の保護にかかわる法

律で、②最終的に刑事罰の担保が

あるもの)を政令で列挙

⇒対象範囲が狭い、一般の人に

は分かりにくい、③条例が含ま

れない等の指摘あり

①法律の目的による限定については、

事例分析等を通じて追加の必要性の

高い法律が認められれば、新たに追

加する方向で検討

②刑事罰の担保による限定や③条例に

ついては、公益性や明確性、実務上

の観点等を踏まえて、今後更に検討

①行政措置については、現行制度上利

用できる救済手段に加えて導入するこ

との適切性や救済手段としての相当性

等に留意しつつ、何らかの措置を設け

る方向で検討(行政措置の種類ごとに

更に検討)

②刑事罰の導入については、不利益取

扱い抑止の手段として他に適当なもの

がないか等の点を踏まえ、慎重に検討

①退職者は含めることが適当

②役員等は、労働者との性質の違い等

に留意しつつ、含める方向で検討

③取引先事業者や④その他の者につい

ては、労働者との性質の違いやその

多様性等を踏まえて、今後更に検討

(1)現行法の課題

(2)今後の方向性・課題

5守秘義務

現在は、①行政機関への通報が保

護される要件として、真実相当性が

必要

②行政機関以外の外部への通報が

保護されるための要件として真実相

当性に加えて、法に定める特定事由

に該当することが必要(通報したこと

を理由に不利益取扱いを受けるおそ

れ等)

⇒要件が厳しいとの指摘あり

①行政機関への通報については、どの

ような要件を備えていれば保護に値する

かを十分に検討した上で、真実相当性

の要件を緩和する方向で検討

②行政機関以外の外部への通報につい

ては、真実相当性の要件は維持するも

のの、特定事由の対象範囲の拡大や追

加により緩和する方向で検討

<概要>

・「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」第1次報告書(平成28年3月)において示された法改正に係る各論点について、法律の専門家からなる

ワーキング・グループ(WG)において、その方向性や課題等を検討。平成28年

4月から11月までの計11回

にわたって会議を開催し、WG報告書を取りまとめ。

・法の基本的な枠組みの在り方や施行状況等に関する評価は大きく分かれたが、制度の実効性を向上するための法改正の方向性や課題について、可能な限り明確化。

・今後、WGにおける意見において指摘された法理論上の問題や運用上の課題も踏まえて、十分に検討することが必要。

・また、各論点の要件・効果は相互に関連していることから、法改正に向けた具体的な検討に際しては、法の基本的な枠組み全体との関係に留意することが必要。

3外部通報の要件

6その他の論点

通報先のうち、行政機関は守秘義務を

負っているものの、①労務提供先、②

行政機関以外の外部通報先について

は、通報に関する情報の守秘義務規

定が存在しない

⇒情報漏えいの不安から、安心し

て通報できないとの指摘あり

①労務提供先については、守秘義務を

設けることを前提に、具体的な要件や

効果について更に検討

②行政機関以外の外部通報先に守秘

義務を課すことは適当でない(一般法

理により保護)

「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」ワーキング・グループ報告書の概要

別紙2

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(参考)公益通報者保護法の概要

所定の要件に該当する公益通報を

行った通報者を、解雇その他の不利益

取扱いから保護。

・解雇の無効

・不利益取扱いの禁止

・労働者派遣契約の解除の無効

食品偽装やリコール隠しなど、消費者

の安全・安心を損なう企業不祥事が、事

業者内部からの通報を契機として相次い

で明らかに。

そこで、公益通報者の保護を図るとと

もに、国民の生命、身体、財産の保護に

係る法令の遵守を図るため制定。

※平成

16年6月公布、平成

18年4月施行

①労働者(公務員を含む)が、

②不正の目的でなく、

③労務提供先について、

④通報対象事実

(※)が、

⑤生じ又はまさに生じようとする旨を、

⑥所定の通報先に、

⑦所定の保護要件を満たして通報

をした場合に、「公益通報者」として保護

(※)刑法、食品衛生法、金融商品取引法、JAS法、大気汚染防止

法、廃棄物処理法、個人情報保護法、その他政令で定める対象法

律(28年12月1日現在459法律)に規定する刑罰規定違反

2.公益通報の対象

3.公益通報者の保護

1.公益通報者保護法の目的

事業者

公益通報者

(労働者)

公益通報

(事業者内部への通報)

※内部通報制度

(1)内部通報の保護要件

ア不正の目的の通報でないこと

処分等の権限を

有する行政機関

(2)行政機関への通報の保護要件

ア不正の目的の通報でないこと

イ通報内容に真実相当性があること

報道機関、消費者団体等

(被害の発生・防止等のた

めに必要と認められる者)

公益通報

(報道機関等への通報)

(3)その他外部への通報の保護要件

ア不正の目的の通報でないこと

イ通報内容に真実相当性があること

ウ以下のいずれかの要件を満たすこと

・内部通報では不利益な取扱いを受けると信

ずるに足りる相当の理由がある場合

・内部通報では証拠隠滅のおそれがある場合

・生命・身体への危害が発生する場合

内部窓口

(例:社内のコ

ンプライアンス

窓口、社内の

ヘルプライン)

外部窓口

(例:事業者

が予め定めた

民間専門機関

、法律事務所)

公益通報

(行政機関への通報)

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「公益通報者保護法を踏まえた国の⾏政機関の通報対応に関する

ガイドライン」の概要

○「公益通報」以外の通報の取扱いの適正化

○柔軟・適切な通報対応の促進(「真実相当

性の要件」の明確化等)

○調査⽅法等の適正性の確保

○消費者庁から各⾏政機関に対する必要な協

⼒要請

○通報対応状況に関する通報者へのフィード

バックの強化

○意⾒・苦情等への迅速・適切な対応

①通

報へ

の適

切な

対応

の確

保①

通報

への

適切

な対

応の

確保

1.

ガイ

ドラ

イン

の趣

○公益通報者保護法(平成16年6⽉公布、平成18年4⽉施⾏)を踏まえ、国の⾏政機関において、内部の職員等及び外部の労働

者等からの通報を適切に取り扱うため、各⾏政機関が取り組むべき基本的事項を定めた指針。

○国会の附帯決議において、⾏政機関の適切な通報対応を確保するためのガイドラインの作成等が求められたこと等を踏まえ、

平成17年7⽉に関係省庁間の申合せにより策定。

2.

改正

の経

○「消費者基本計画」(平成27年3⽉24⽇閣議決定)に、制度の⾒直しを含む必要な検討を早急に⾏うこと等が盛り込まれたことを

踏まえ、平成27年6⽉から「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」(座⻑宇賀克也東京⼤学法学部教授)を開催。

○検討会「最終報告書」(平成28年12⽉)の提⾔を踏まえ、ガイドライン(内部・外部)の改正案を策定し、所要の調整を経た上

で、平成29年3⽉21⽇に関係省庁間で申合せ・公表。

3.

主な

改正

の内

○通報の放置、不適切な調査、通報に係る秘密の漏えいなど、国の⾏政機関における不適切な通報対応を防⽌し、通報に適切に対

応することを促すため、検討会報告書の提⾔を踏まえ、以下の事項について、ガイドラインの内容を⼤幅に⾒直し・拡充。

○平成29年度のできるだけ早期に、関係省庁において改正ガイドラインを踏まえた内部規程の改正等を⾏った上で、制度の整備

・改善を順次進めていく予定。

4.

今後

の予

②通

報対

応状

況の

透明

性の

向上

②通

報対

応状

況の

透明

性の

向上

④通

報対

応ス

キル

の向

上④

通報

対応

スキ

ルの

向上

③通

報者

保護

の徹

底③

通報

者保

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徹底

⑤事

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働者

等へ

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知⑤

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者・

労働

者等

への

周知

⑥通

報対

応の

仕組

みの

評価

・改

善⑥

通報

対応

の仕

組み

の評

価・

改善

○担当者への⼗分な教育・研修等の実施

○定期的な研修・説明会の実施等を通じた全

ての職員等への周知

○各⾏政機関が⾏う周知・研修等への消費者

庁の協⼒

○通報に係る秘密保持及び個⼈情報の漏えい

等の防⽌の徹底

○匿名通報の取扱いの適正化

○通報者に対するフォローアップの強化

○各⾏政機関の所管事業に係る事業者及び労

働者等への制度の周知<外部>

○契約や補助⾦等交付の相⼿⽅事業者の内部

通報制度の整備促進<外部>

○職員や第三者の意⾒等を踏まえた定期的な

評価・点検、継続的な制度の改善

○通報対応の仕組みの運⽤状況に関する情報

の公表

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