2014年度(第15回) 中南米日系進出企業の経営実態調査...

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2014年度(第15回) 中南米日系進出企業の経営実態調査 20151日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部 中南米課

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2014年度(第15回)

中南米日系進出企業の経営実態調査

2015年1月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部 中南米課

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はじめに

本調査レポートは、2014 年9 月から10 月にかけて、中南米主要7 カ国(メキシコ、ベ

ネズエラ、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)に進出している日系企

業を対象として実施した経営実態に関するアンケート調査の結果を取りまとめたものであ

る。

ジェトロでは定期的に本アンケート調査を実施しており、今回で15 回目を迎える。毎回

の調査実施にあたっては、進出日系企業の方々から多大なるご協力をいただいており、こ

の場を借りて厚くお礼申し上げたい。

本調査レポートが、中南米進出日系企業や中南米ビジネスに関心をお持ちの皆様のご参

考となれば幸いである。

日本貿易振興機構(ジェトロ)

在中南米事務所

海外調査部中南米課

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目次

第 1章 調査実施概要 ................................................. 1

1. 調査対象国別回答状況 ................................................................................................... 1

2. 回答企業における製造業と非製造業の割合 .................................................................. 1

3. 製造業の製品分野別回答状況 ........................................................................................ 2

4. 非製造業の事業分野別回答状況 .................................................................................... 3

5. 中南米事業統括拠点所在地 ............................................................................................ 4

第 2章 主な調査結果 ................................................. 5

1. 2014 年の営業利益見込み .............................................................................................. 5

2. 2015 年の営業利益見通し............................................................................................ 10

3. 今後の事業展開の方向性 ............................................................................................. 13

4. 市場開拓に向けた取り組み .......................................................................................... 21

5. 現在直面している経営上の問題点 ............................................................................... 23

6. 原材料・部品の調達状況 ............................................................................................. 32

7. FTA / EPA 活用状況と問題点 ...................................................................................... 34

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第 1章 調査実施概要

1. 調査対象国別回答状況

2014 年9 月から10 月にかけて、中南米主要7 カ国(メキシコ、ベネズエラ、コロンビ

ア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)に進出している日系企業を対象としてアン

ケート調査を実施した。アンケートの送付先は665 社で、回答企業数は391 社となり、回

答率は58.8%であった。

表:アンケート送付企業数、回答企業数、回答率

2. 回答企業における製造業と非製造業の割合

回答企業のうち、現地で製造を行っている企業(製造業)が156 社、39.9%で、現地で

製造を行っていない企業(非製造業)が235 社、61.1%であった。

図0-1:回答企業の業種別割合

調査対象国アンケート送付企業数

回答企業数

回答率

メキシコ 262 114 43.5%

ベネズエラ 19 17 89.5%

コロンビア 29 18 62.1%

ペルー 28 16 57.1%

チリ 48 38 79.2%

ブラジル 235 160 68.1%

アルゼンチン 44 28 63.6%

中南米7カ国合計 665 391 58.8%

製造業

39.9%

非製造業

60.1%

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3. 製造業の製品分野別回答状況

回答企業のうち製造業に属する企業を製品分野別に見ると、輸送用機器部品(自動車・

二輪車)が最も多く、そのあとに輸送用機器(自動車・二輪車)、電気・電子部品が続く。

図0-2:製造業の製品分野別回答数(全回答数156 社)

41

18

17

14

11

9

8

5

5

4

3

3

3

2

2

2

2

1

0

0

0

0

6

0 10 20 30 40 50

輸送用機器部品(自動車・二輪車)

輸送用機器(自動車・二輪車)

食品・農水産加工

電気・電子部品

一般機械( 金型・機械工具を含む)

電気機械・電子機器

化学品・石油製品

繊維( 紡績・織物・化学繊維)

非鉄金属

衣服・繊維製品

医薬品

ゴム製品

金属製品(メッキ加工を含む)

木材・木製品(家具・インテリア製品を除く)

窯業・土石

鉄鋼(鋳鍛造品を含む)

精密機械

プラスチック製品

家具・インテリア製品

紙・パルプ

医療機器

印刷・出版

その他製造業

(社)

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4. 非製造業の事業分野別回答状況

回答企業のうち非製造業に属する企業を事業内容別に見ると、販売会社が最も多く、そ

の後に商社、運輸/倉庫、建設/プラントが続く。

図0-3:非製造業の事業内容別回答数(全回答数235 社)

93

60

19

9

8

6

5

4

4

3

2

1

0

0

0

21

0 20 40 60 80 100

販売会社

商社

運輸/倉庫

建設/プラント

銀行

通信/ソフトウエア

保険

鉱業

流通

農・林業

漁・水産

不動産

証券

法務・税務

ホテル/旅行/外食

その他非製造業

(社)

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5. 中南米事業統括拠点所在地

中南米事業を統括する拠点の所在地を、「日本本社」、「北米拠点」、「中南米拠点」、

「その他」の4つの選択肢を提示して調査した。

中南米全体では、事業を統括する拠点は日本本社である場合が過半数を占め、そのあと

に北米拠点、中南米拠点の順となっている。国別に見た場合、メキシコにおいて「北米拠

点」と回答した企業が多く、コロンビアやアルゼンチンにおいて「中南米拠点」と回答し

た企業が多い点が目立つ。メキシコとアルゼンチンはアメリカとブラジルという経済大国

に隣接しており、それらの国に事業統括拠点が立地しているためとみられる。

図0-4:中南米事業統括拠点所在地の割合

54.5

53.8

64.7

38.9

56.3

52.6

60.4

28.6

27.2

40.6

11.8

11.1

6.3

18.4

26.4

25.0

17.5

5.7

23.5

50.0

37.5

23.7

12.6

46.4

0.8

0.0

0.0

0.0

0.0

5.3

0.6

0.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中南米全体(n=382)

メキシコ(n=106)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=159)

アルゼンチン(n=28)

日本本社 北米拠点(北米本社)

中南米拠点(中南米本社) その他

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第 2 章 主な調査結果

1. 2014 年の営業利益見込み

<2013 年に比べると黒字と赤字が二分化する傾向>

2014 年の営業利益見込みについて「黒字」と回答した企業は60.4%(236 社)で、「均

衡」が13.0%(51 社)、「赤字」が26.6%(104 社)だった。2013 年の調査では、「黒

字」が57.1%(249 社)、「均衡」が20.9%(91 社)、「赤字」が22.0%(96 社)であっ

たのと比べると、黒字と赤字で若干二分化した。

国別で見たときに、「黒字」の回答率が高かったのは、コロンビア、チリ、メキシコ、

ブラジルで、逆に低かったのはベネズエラとなった。

なお、対象6ヵ国を太平洋同盟加盟国(メキシコ、コロンビア、ペルー、チリ)とメルコ

スール加盟国(ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン)に分類すると、太平洋同盟加盟国

の営業利益見込みの方がメルコスールよりも良好な結果となった。

図1-1:2014 年の営業利益見込み

60.4

57.1

64.0

59.6

47.1

88.9

56.3

68.4

58.1

57.1

13.0

14.6

11.3

8.8

35.3

0.0

25.0

18.4

12.5

14.3

26.6

28.3

24.7

31.6

17.6

11.1

18.8

13.2

29.4

28.6

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

黒字 均衡 赤字

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<業況感は2009年以来最低>

2014年の営業利益見込みが前年比で「改善」、「横ばい」、「悪化」すると回答した割

合を基に計算した、業況感を表すDI 値(「改善」と回答した割合から、「悪化」と回答し

た割合を引いた数値)は、8.7 ポイントとなった。前年度調査の21.1 ポイントより12.4 ポ

イント低く、リーマンショック後の2009年(マイナス10.8ポイント)調査以来最低の水準

となった。

ただし、2015 年のDI 値(見込み)は47.0ポイントと高くなっており、2015年以降には

営業利益が改善する方向になると楽観視している企業が多いことがわかる。

図1-2:中南米全体のDI 値の推移

3.0

22.6

-7.4

10.3

19.9

39.5

26.2

38.3

30.2

-2.1

-10.8

40.8

24.2

10.6

21.1

8.7

47.0

-20

-10

0

10

20

30

40

50

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<政治・経済の安定・不安定で業況の明暗分かれる>

国別にDI 値を見ると、メキシコ、コロンビアが高く、ベネズエラ、チリ、アルゼンチ

ンが低くなっている。中南米全体のDI値が低迷する中、日本企業の集積が進むメキシコや

治安の改善が進み、今後の成長が期待されるコロンビアの業況が高い一方、ベネズエラや

アルゼンチンは政治・経済の不安定さのために先行きが見通せず、業況感が低くなってい

ると考えられる。他方、チリやペルーは、中国経済減速の影響を受けた銅など鉱物資源価

格の低迷が資源開発関連を中心とする日系企業の経営に影響しているものと思われる。

図1-3:国別DI 値(2014年)

図1-4:前年と比べた2014 年の営業利益見込み

8.7

-4.4

23.1

36.9

-41.2

33.3

0.0

-13.1

0.6

-10.7

-60

-40

-20

0

20

40

60

37.9

30.7

45.7

55.3

5.9

50.0

25.0

23.7

35.6

17.9

33.0

34.1

31.7

26.3

47.1

33.3

50.0

39.5

29.4

53.6

29.2

35.1

22.6

18.4

47.1

16.7

25.0

36.8

35.0

28.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

改善 横ばい 悪化

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<国内市場の拡大が営業利益改善の大きな要因>

営業利益見込みが改善する理由を見ると、「現地市場での売上増加」が74.3%(110 社)

と突出しており、「販売効率の改善」(19.6%、29 社)、「その他支出(管理費、光熱費

等)の削減」(17.6%、26 社)、「輸出拡大による売上増加」(14.9%、22 社)、「為

替変動」(12.8%、19 社)がそのあとに続く。

コスト削減や効率の改善という企業自身の努力よりも、国内市場での売上の拡大が営業

利益見込みに大きな影響を与えていることが見てとれる。

図1-5:2014年の営業利益見込みが改善する理由<中南米全体、複数回答>(回答数148 社)

12.2

10.1

10.1

10.8

12.2

12.8

14.9

17.6

19.6

74.3

0 20 40 60 80

その他

調達コストの削減

生産効率の改善(製造業のみ)

人件費の削減

その他

為替変動

輸出拡大による売上増加

その他支出(管理費、光熱費等)の削減

販売効率の改善

現地市場での売上増加

(%)

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<景気後退による利益悪化を不安視する企業も>

営業利益見込みが悪化する理由を見ると、最も回答率が高いのは「現地市場での売上減

少」(61.4%、70社)であった。「人件費の上昇」(45.6%、52社)、「調達コストの上

昇」(30.7%、35社)、「販売価格への不十分な転嫁」(30.7%、35社)がそれに続いた。

2011から13年の調査ではいずれも「人件費の上昇」(48.9%、44社)が最も高かったが、

景気後退による販売の不調を業況の悪化の理由にする企業の割合が増えた。

アルゼンチンを除きすべての国で5割以上の企業が「現地市場での売上減少」を営業利益

見込みが悪化する理由に挙げており、景気後退の影響の深刻さがうかがえる。また、「人

件費の上昇」を国別にみると、ブラジル(57.1%)、アルゼンチン(50.0%)、ベネズエラ

(50.0%)のメルコスール勢が高く、低い回答率となった太平洋同盟(メキシコ〈23.8%〉、

ペルー〈25.0%〉、コロンビア〈33.3%〉、チリ〈35.7%〉)とは対照的な結果となった。

図1-6:2014 年の営業利益見込みが悪化する理由<中南米全体、複数回答>(回答数114

社)

25.4

3.5

8.8

19.3

21.1

30.7

30.7

45.6

61.4

0 10 20 30 40 50 60 70

その他

金利の上昇

輸出低迷による売上減少

為替変動

その他支出(管理費、光熱費、燃料費等)の増加

販売価格への不十分な転嫁

調達コストの上昇

人件費の上昇

現地市場での売上減少

(%)

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2. 2015 年の営業利益見通し

<2015年の営業利益は改善すると期待>

2015年の業況感を表すDI 値は、中南米全体で47.0 ポイントとなった。2014 年の8.7

ポイントに比べて大幅に高い数値となっており、厳しい現況の中でも2015 年の業況改善に

対する期待がうかがえる。

国別に見るとベネズエラを除いて全ての国において、2015年のDI 値は2014 年のDI値

を上回っている。ベネズエラは「21世紀型社会主義」国家を目指す同国政府による外貨規

制などの規制が企業の経営に影響を与えており、業況も悲観的となっている。

図2-1:国別DI 値(2015年)

図2-2:前年と比べた2015年の営業利益見通し

47.0 33.7

61.8

74.6

-35.3

77.8

56.3

21.0

46.9

0.0

-60.0

-40.0

-20.0

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

56.0

45.9

67.2

77.2

0.0

77.8

56.3

36.8

54.4

25.0

35.0

42.0

27.4

20.2

64.7

22.2

37.5

47.4

38.1

50.0

9.0

12.2

5.4

2.6

35.3

0.0

6.3

15.8

7.5

25.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

改善 横ばい 悪化

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<営業利益改善の理由は2014 年と同様>

営業利益見通し改善の理由は、「現地市場での売上増加」が81.3%で最も割合が高く、

次の「販売効率の改善」(26.0%)、「輸出拡大による売上増加」(18.7%)を大きく上回

っている。3位以下の順位は異なるものの、2014年の営業利益見込み改善の理由とほぼ同じ

結果となっている。

図2-3:2015 年の営業利益見通しが改善する理由<中南米全体、複数回答>(回答数219

社)

9.6

3.7

7.8

13.2

13.7

15.5

18.7

26.0

81.3

0.0 25.0 50.0 75.0 100.0

その他

為替変動

人件費の削減

生産効率の改善(製造業のみ)

調達コストの削減

その他支出(管理費、光熱費等)の削減

輸出拡大による売上増加

販売効率の改善

現地市場での売上増加

(%)

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<営業利益改善・悪化ともに市場の動きによって大きく左右>

営業利益見通しが悪化する主な理由は、「現地市場での売上減少」(57.1%)、「人件

費の上昇」(45.7%)、「販売価格への不十分な転嫁」と「その他支出(管理費、光熱費、

燃料費等)の増加」(それぞれ25.7%)となっている。図2-3 で営業利益見通しが改善する

第一の理由として「現地市場での売上増加」が挙がっている一方、悪化の第一の理由も「現

地市場での売上減少」で、市場の動きに関連したものとなっている。

また、人件費や管理費などのコストの上昇が、営業利益にマイナスの影響を与える要因

となっていることも見て取れる。

図2-4:2015 年の営業利益見通しが悪化する理由<中南米全体、複数回答>(回答数35 社)

34.3

2.9

5.7

22.9

25.7

25.7

25.7

45.7

57.1

0 10 20 30 40 50 60

その他

金利の上昇

輸出低迷による売上減少

調達コストの上昇

販売価格への不十分な転嫁

その他支出(管理費、光熱費、燃料費等)の増加

為替変動

人件費の上昇

現地市場での売上減少

(%)

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3. 今後の事業展開の方向性

<国によって事業展開の方向性に大きな差>

中南米全体で見ると、今後1~2年の事業展開の方向性として、「拡大」と回答した割合

が62.9%(246 社)で、「現状維持」の33.2%(130 社)、「縮小」の3.8%(15 社)を

大きく上回った。

国別に見ると、コロンビアで88.9%(16 社)、メキシコで81.6%(93 社)が「拡大」

と回答しており、ブラジル(61.9%〈99 社〉)、チリ(60.5%〈22 社〉)と続く。これ

らの国と対照的なのがアルゼンチンとベネズエラで、「現状維持」と回答した割合がもっ

と多く、それぞれ64.3%、55.8%、「縮小」と回答した割合がそれぞれ14.3%、35.3%とな

っている。

ベネズエラとアルゼンチンについては、輸入規制や為替管理、高インフレに伴う販売価

格統制、政治の不安定性など、今後の政治・経済の展開を見通せない要因が多いため、他

国と比べると「縮小」と回答した割合が高くなっている。

図3-1:今後1~2 年の事業展開の方向性

62.9

51.7

75.3

81.6

5.9

88.9

50.0

60.5

61.9

21.4

33.2

41.5

24.2

18.4

58.8

11.1

50.0

36.8

35.6

64.3

3.8

6.8

0.5

0.0

35.3

0.0

0.0

2.6

2.5

14.3

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

拡大 現状維持 縮小 第3国(地域)へ移転・撤退

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<市場の将来性を見込んで事業展開を拡大>

事業展開の方向性を「拡大」と回答した主な理由は、「売上の増加」(85.4%)と「成

長性、潜在力の高さ」(54.9%)であった。

国別に見ると、「売上の増加」と回答した割合はベネズエラ(100.0%、1 社)、ペルー

(100.0%、8 社)、メキシコ(93.5%、87 社)、コロンビア(81.3%、13 社)、ブラジ

ル(80.8%、80 社)で高く、「成長性、潜在力の高さ」はペルー(75.0%、6 社)、コロ

ンビア(62.5%、13 社)で高くなっている。

全体を通して、今後の市場の拡大可能性や潜在性の高さを見込んで事業拡大の方針を立

てる企業が多く、労働力確保や規制の緩和などを理由として事業拡大を考える企業は少な

いようだ。

図 3-2:「拡大」の理由<中南米全体、複数回答>(回答数 246 社)

6.1

0.8

1.2

5.3

16.3

17.5

20.3

54.9

85.4

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

その他

労働力確保の容易さ

規制の緩和

コストの低下(調達コストや人件費など)

生産・販売ネットワーク見直し

高付加価値製品への高い受容性

取引先との関係

成長性、潜在力の高さ

売上の増加

(%)

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<拡大する機能は販売機能が中心>

「拡大」する具体的な機能は、「販売機能」(75.6%)がトップとなっており、それに

続く「生産(汎用品)」(21.5%)、「生産(高付加価値品)」(21.1%)、「物流機能(15.0%)」

と大きな差がある。

国別に見ると、「販売機能」と回答した割合は、コロンビア(100%、16 社)、ペルー

(100%、8 社)、ベネズエラ(100.0%、1 社)、ブラジル(83.8%、83 社)、アルゼンチ

ン(83.3%、5 社)で高い。

中南米全体で見たときに、「生産」を拡大すると回答した割合は20%台、「物流」を拡

大すると回答した割合は15.0%にとどまっており、中南米市場の攻略に向けて、まずは販売

力強化が重視されていることがわかる。

他方、メキシコは「生産(汎用品)」と「生産(高付加価値)」がそれぞれ37.6%(35

社)と31.2%(29 社)、アルゼンチンは「生産(高付加価値)」と「研究開発」がそれ

ぞれ50.0%(3 社)と33.3%(2 社)、チリは「物流機能」が30.4%(7 社)と高く、国

によって機能のすみわけが進む傾向を示唆している。

図 3-3:具体的に拡大する機能<中南米全体、複数回答>

9.8

4.9

6.1

12.6

15.0

21.1

21.5

75.6

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

その他

地域統括機能

研究開発

サービス事務機能(シェアードサービス、コールセンターなど)

物流機能

生産(高付加価値品)

生産(汎用品)

販売機能

(%)

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<景気後退が事業縮小検討の原因>

少数ではあるものの、事業展開の方向性を「縮小」と回答した企業の割合は3.8%(15

社)であった。

特に、ベネズエラでは「縮小」と回答した企業の割合が35.3%に達している。また、ア

ルゼンチンでは「縮小」の割合が 14.3%となっている。

理由を見ると、ベネズエラ、アルゼンチンでは「売上の減少」に次いで「コストの増加」、

「成長性、潜在力の低さ」が挙げられており、両国の景気後退の影響が考えられる。

図 3-4:「縮小」「第 3 国(地域)へ移転・撤退」の理由<中南米全体、複数回答>

20.0

6.7

6.7

13.3

13.3

26.7

40.0

46.7

60.0

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

その他

取引先との関係

労働力の確保の難しさ

生産・販売ネットワーク見直し

高付加価値製品への低い受容性

規制の強化

成長性、潜在力の低さ

コストの増加(調達コストや人件費など)

売上の減少

(%)

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<人材面では現地化を進めるものの、経営の権限は本社が留保>

事業展開に関連する項目として、経営の現地化に向けた取り組みについても調査を行っ

た。回答は「現地化を意識した現地人材の研修・育成の強化」(69.8%、273 社)、「現

地人材の登用(部長・課長級)」(58.1%、227 社)、「現地化を意識した即戦力となる

現地人材の中途採用」(53.2%、208 社)の順に多かった。国別に見ても、各国とも上位

の回答は概ね中南米全体の回答と同じ順位となっている。

一方、「現地における製品・サービス開発力の強化」(20.2%、79 社)、「現地におけ

る販売戦略の決定権限強化」(15.3%、60 社)、「本社から現地への権限の委譲」(11.8%、

46 社)と回答した割合は低く、人材の面では現地化を進めるものの、経営に関する権限は

本社が持ち続けるという方向性が見られる。

図 3-5:経営の現地化を進めるにあたっての取り組み<中南米全体、複数回答>

2.8

5.1

3.1

11.8

15.3

20.2

26.9

29.9

53.2

58.1

69.8

0 20 40 60 80

その他

現地化の取り組みはしていない

M&Aによる人材・経営資源の獲得

本社から現地への権限の委譲

現地における販売戦略の決定権限強化

現地における製品・サービス開発力の強化

現地人材の登用(役員級)

現地化を意識した能力主義など人事制度の改正

現地化を意識した即戦力となる現地人材の中途

採用

現地人材の登用(部長・課長級)

現地化を意識した現地人材の研修・育成の強化

(%)

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<権限以上の意識と現地人材の能力にギャップ>

経営の現地化を進めるにあたっての問題点は、まずは本社・日本サイドの問題として「日

本人駐在員の語学力(英語・現地語)が現地化の推進に向けた課題」(30.4%、119 社)、「本

社から現地への権限以上が進まない」(23.3%、91 社)、「日本人駐在員のマネジメント

力」(20.2%、79 社)が挙げられる。他方、現地サイドの問題としては「現地人材の能力・

意識」(49.1%、192 社)、「幹部候補人材の採用難」(41.7%、163 社)の割合が高い。

国別にみると、「現地人材の能力・意識」の割合はどの国でも30%を上回る中、とりわ

けブラジル(53.8%、86 社)とメキシコ(50.9%、58 社)が高く、「幹部候補人材の採

用難」ではベネズエラ(58.8%、10 社)、チリ(50.5%、19 社)、ブラジル(45.6%、

73 社)が高くなっている。

図 3-6:経営の現地化を進めるにあたっての問題点<中南米全体、複数回答>

11.8

3.6

12.5

16.9

20.5

21.0

41.7

49.1

6.1

8.4

9.0

19.4

20.2

23.3

30.4

0.0 20.0 40.0 60.0

特に問題はない

その他

現地における製品・サービス開発力

幹部候補人材の離職率の高さ

現地人材の語学力(日本語および英語)が現地化の

推進に向けた課題

現地における企画・マーケティング力

幹部候補人材の採用難

現地人材の能力・意識が現地化の推進に向けた課

その他

人材登用について本社方針との不一致

現地人材に割り振るポジションが不足している

日本人駐在員削減の難しさ

日本人駐在員のマネジメント力

本社から現地への権限委譲が進まない

日本人駐在員の語学力(英語・現地語)が現地化の

推進に向けた課題

現地サイドの問題

本社・日本サイドの問題

(%)

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<進む人材面の現地化>

中南米全体で過去1年間の現地従業員数、日本人駐在員数の変化を見ると、前者の「増加」

が45.0%である一方、後者は 21.0%となっている。このことから、進出日系企業が現地の

従業員を日本人駐在員より増やしている企業の割合が高いことが分かる。

国別で見た場合には、メキシコとコロンビアが現地従業員数、日本人駐在員数共に中南

米全体よりも増やす企業の割合が高い。メキシコとコロンビアでのこの傾向は、図 3-1 で

見た、「今後 1~2 年の事業展開の方向性」の「拡大」、「現状維持」の傾向と一致して

いる。

図 3-7:過去 1 年間の現地従業員数の変化

図 3-8:過去 1 年間の日本人駐在員数の変化

45.0

32.7

58.6

66.7

5.9

66.7

31.3

42.1

39.4

10.7

37.9

41.0

34.4

28.9

47.1

16.7

68.8

44.7

38.8

50.0

17.1

26.3

7.0

4.4

47.1

16.7

0.0

13.2

21.9

39.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

増加 横ばい 減少

21.0

16.6

25.8

33.3

5.9

27.8

12.5

7.9

20.0

3.6

70.1

70.7

69.4

63.2

76.5

66.7

87.5

81.6

69.4

75.0

9.0

12.7

4.8

3.5

17.6

5.6

0.0

10.5

10.6

21.4

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

増加 横ばい 減少

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<メキシコ、ブラジルの現地従業員数の増加予定が顕著>

中南米全体での今後の現地従業員数の予定を見ると、「増加」が49.9%となっている。

一方、日本人駐在員数の「増加」は 15.3%にとどまり、図 3-7、図 3-8 の「過去 1 年間

の変化」で見た、「現地従業員数を増やし、日本人駐在員数は増やさない」という傾向が、

今後の予定に顕著に表れている。

国別に見た場合、過去 1 年間の変化と同様に、今後の現地従業員数と日本人駐在員数共

にメキシコとコロンビアで「増加」と回答した割合が高くなっている。一方、ベネズエラ、

ペルー、アルゼンチンでは現地従業員数で「横ばい」と回答した企業が「増加」と答えた

企業の割合より高くなっている。

図 3-9:今後の現地従業員数の予定

図 3-10:今後の日本人駐在員数の予定

49.9

40.5

60.2

67.5

11.8

61.1

31.3

50.0

43.8

39.3

38.1

42.9

32.8

31.6

41.2

33.3

43.8

31.6

41.9

50.0

12.0

16.6

7.0

0.9

47.1

5.6

25.0

18.4

14.4

10.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

増加 横ばい 減少

15.3

11.2

19.9

25.4

5.9

22.2

6.3

7.9

11.9

10.7

73.9

75.6

72.0

64.9

70.6

77.8

81.3

86.8

76.3

75.0

10.7

13.2

8.1

9.6

23.5

0.0

12.5

5.3

11.9

14.3

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中南米全体(n=391)

メルコスール(n=205)

太平洋同盟(n=186)

メキシコ(n=114)

ベネズエラ(n=17)

コロンビア(n=18)

ペルー(n=16)

チリ(n=38)

ブラジル(n=160)

アルゼンチン(n=28)

増加 横ばい 減少

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4. 市場開拓に向けた取り組み

<中南米市場全体では日系企業との競合が最多>

最も競合関係にある企業としては 30.2%が日系企業を挙げた。以下欧州系企業18.7%、

米国系企業14.8%、中国企業9.0%、韓国系企業5.1%と続く。地場資本企業15.3%と競合す

る企業の割合も高い。

日系企業が主要競合相手となっているのはメキシコ(58.8%)、コロンビア(22.2%)

など。欧州系企業と競合する割合が高い国は、ペルー(37.5%)、アルゼンチン(28.6%)、

ブラジル(28.1%)。米国系企業との競合が大きいのはベネズエラ(23.5%)、コロンビア

(22.2%)であり、その他諸国では概ね 10%台の比率となっている。中南米市場でも中国

系や韓国系企業のプレゼンスが高まっているが、特に中国系企業と競合する割合が高いの

はコロンビア(33.3%)とベネズエラ(29.4%)、韓国系企業との競合ではベネズエラ(17.6%)

とペルー(12.5%)であった。

図 4-1:同業種企業で、最も競合関係にある企業

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<市場での競合は激化の一途>

競合状況の変化について、「競合状況に変化なし」との回答比率は 50.9%に達し、前回

調査までもっとも高かった「競合が激化」と回答する企業の割合(47.1%)を上回った。「競

合が激化」した比率を国別に見ると、コロンビア(83.3%)が前年度調査(86.4%)に引き

続き圧倒的に高い。

日系企業にとってブラジル、メキシコは中南米市場開拓の主戦場であることには変わり

ないが、欧米企業のコロンビアへの注目度が高まっていることから、前年に引き続き「競

合が激化」していることが考えられる。例年調査同様、ベネズエラ、アルゼンチン、ペル

ーでは競合状況に変化なしの割合が高い。

太平洋同盟とメルコスールで比較すると、自由市場経済を標榜する太平洋同盟に進出す

る企業の方が、保護主義的政策で国内産品が有利な立場に立つこともあるメルコスールに

進出する企業と比べると、より激しい競合に直面している状況がうかがえる。

図 4-2:過去1年間の競合状況の変化について

39.3

45.0

50.0

43.8

83.3

35.3

47.4

51.1

43.4

47.1

57.1

52.5

47.4

56.3

16.7

58.8

51.8

47.8

53.7

50.9

3.6

2.5

2.6

0.0

0.0

5.9

0.9

1.1

2.9

2.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

アルゼンチン(n=28)

ブラジル(n=160)

チリ(n=38)

ペルー(n=16)

コロンビア(n=18)

ベネズエラ(n=17)

メキシコ(n=114)

太平洋同盟(n=186)

メルコスール(n=205)

中南米全体(n=391)

競合が激化 競合状況に変化なし 競合は緩和

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5. 現在直面している経営上の問題点

<競合相手の台頭と取引先からの値下げ要請に直面>

現在直面する販売・営業面の問題点として、「競合相手の台頭(コスト面で競合)」が

51.4%(201 社)、次いで、「主要販売市場の停滞」が37.6%(147 社)、「主要取引先

からの値下げ要請」が 32.2%(126 社)で高い比率を示している。

国別に見ても「競合相手の台頭(コスト面で競合)」が各国でそれぞれ第1位を占めてい

るが、ベネズエラだけは第1位が「その他の問題」(58.8%、10 社)、第2位が「売掛金回

収の停滞」(41.2%、7 社)、第3位が「現地の規制緩和が進まない」(29.4%、5 社)と

なっている。インフレ対策を理由とした基礎食料品や一部の医薬品等を対象とする価格統

制などが継続していること、輸入用外貨取得において国内非生産・不十分証明書の提出が

必要とされる対象品目が増加していること、それによって取引先による輸入用外貨の確保

が困難になっていることなどが背景にあるものと思われる。また、アルゼンチンでは第1位

が「現地の規制緩和が進まない」(57.1%、16 社)、第2位が「主要販売市場の停滞」(35.7%、

10 社)、第3位が「その他の問題」(32.1%、8 社)となっている一方、「競合相手の台

頭」は低い結果となった。

図 5-1:現在直面する販売・営業面の問題点<中南米全体、複数回答>

6.1

11.5

3.6

10.5

11.3

17.6

18.9

18.9

19.7

31.7

32.2

37.6

51.4

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

特に問題はない

その他の問題

本社からの発注量の減少

世界的な供給過剰構造による販売価格の下落

競合相手の台頭(品質面で競合)

売掛金回収の停滞

現地市場への安価な輸入品の流入

取引先からの発注量の減少

現地の規制緩和が進まない

新規顧客の開拓が進まない

主要取引先からの値下げ要請

主要販売市場の低迷(消費低迷)

競合相手の台頭(コスト面で競合)

(%)

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24

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<財務面では為替レートの変動や税務への対応に苦慮>

現在直面する財務・金融・為替面の問題点として、「現地通貨の対ドル為替レートの変

動」と「税務(法人税、移転価格課税など)の負担」がともに55.2%(216 社)で高い数

値を示している。

国別では「現地通貨の対ドル為替レートの変動」についてアルゼンチン(85.7%、24 社)、

ベネズエラ(76.5%、13 社)、チリ(71.1%、27 社)での比率が高い。「税務(法人税、

移転価格課税など)の負担」についてはブラジル(80.0%、128 社)で圧倒的に高い。

一方、他国では低い比率であった「対外送金に関わる規制」についてはアルゼンチン

(82.1%、23 社)、ベネズエラ(70.6%、12 社)の 2 カ国のみが突出している。アルゼ

ンチンでは利益送金用の外貨を確保する際の中央銀行での審査が厳格化している上に、当

該審査基準が明らかにされていないこと、ベネズエラでは外貨確保に際して外貨管理委員

会(CADIVI)から発給割当を受ける必要があるが、利益や配当金などの送金を目的とする割

当は同委員会の行政決定文書で認められているにもかかわらず、実際にはほとんど認めて

いないことなどが背景になっている。

図 5-2:現在直面する財務・金融・為替面の問題点<中南米全体、複数回答>

11.0

6.1

6.9

10.0

11.3

11.5

14.6

23.0

24.8

55.2

55.2

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

特に問題はない

その他の問題

現地での金融機関からの資金調達が困難

円の対ドル為替レートの変動

現地通貨の対円為替レートの変動

資金調達・決済に関わる規制

金利の上昇

対外送金に関わる規制

業務規模拡大に必要なキャッシュフローの不足

税務(法人税、移転価格課税など)の負担

現地通貨の対ドル為替レートの変動

(%)

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25

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<従業員の賃金上昇と人材の採用難が問題>

雇用・労働面の問題点として、「従業員の賃金上昇」が 66.0%(258 社)と高い比率を

示した。次いで「従業員の質」が49.4%(193 社)、「人材(中間管理職)の採用難」が 31.2%

(122 社)となっている。「人材(中間管理職)の採用難」が高い国はチリ(39.5%、15 社)、

メキシコ(36.0%、41 社)、コロンビア(33.3%、6 社)、ブラジル(33.1%、53 社)

となっている。これらの国では優秀な人材の取り合いが発生しており、社員の質や数の確

保に苦慮する日系企業の姿が浮かび上がっている。

図 5-3:現在直面する雇用・労働面の問題点<中南米全体、複数回答>

6.4

4.6

3.8

6.1

7.2

11.0

16.4

17.4

25.1

27.4

27.4

28.6

31.2

49.4

66.0

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

特に問題はない

その他の問題

外国人労働者の雇用規制

人材(一般ワーカー)の採用難(製造業のみ)

日本人出向役職員(駐在員)への査証発給制限

人材(技術者)の採用難(製造業のみ)

管理職、現場責任者の現地化が困難

人材(一般スタッフ・事務員)の採用難

日本人出向役職員(駐在員)のコスト

解雇・人員削減に対する規制

従業員の定着率

労働訴訟問題

人材(中間管理職)の採用難

従業員の質

従業員の賃金上昇

(%)

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<時間を要し、煩雑な通関手続>

貿易制度面の問題点としては、「通関諸手続きが煩雑」50.9%(199 社)、「通関に時

間を要する」46.5%(182 社)が高い比率を示した。特に、ブラジルやアルゼンチン、ベ

ネズエラのメルコスール諸国でその比率が高いが(50%台~60%台)、メキシコでも「通

関諸手続きが煩雑」は59.6%と高くなっている。

図 5-4:現在直面する貿易制度面の問題点<中南米全体、複数回答>

22.3

6.4

4.6

4.6

7.2

14.1

15.9

19.4

24.3

32.7

46.5

50.9

0 20 40 60 80

特に問題はない

その他の問題

輸出制限・輸出税がある

検疫制度が厳格または不透明

原産地規則

非関税障壁が高い

関税の課税評価査定/分類認定基準が不明瞭

検査制度が不明瞭

通達・規則内容の周知徹底が不十分

輸入関税が高い

通関に時間を要する

通関等諸手続きが煩雑

(%)

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<現地調達の難しさに直面>

生産面の問題点としては、「原材料・部品の現地調達の難しさ」55.8%(87 社)、「調

達コストの上昇」53.2%(83 社)が高い比率を示した。

国別に見ると、「原材料・部品の現地調達の難しさ」は日系製造業の生産拠点が少ない

ペルーやチリ、ある程度裾野産業が育っているブラジルでは前年調査に引き続き低い割合

となっているが、メキシコ、ベネズエラ、アルゼンチンでは60%以上と高くなっている。

ただし、ブラジルは「調達コストの上昇」を問題とする企業の割合が76.2%と高いのも特徴

の一つとなっている。ブラジルは以前から関税障壁などを高く設定して国内産業の育成に

努めてきたため、ある程度の裾野産業が存在する。しかし、「ブラジルコスト」が影響し

て現地調達部品の価格は高いが、政府の産業政策などにより一定の現調率の達成が求めら

れる産業においては、割高な部品でも調達せざるを得ない。

図 5-5:現在直面する生産面の問題点<中南米全体、複数回答>(製造業:156 社)

3.2

8.3

6.4

10.3

13.5

15.4

18.6

33.3

35.9

46.2

53.2

55.8

0 20 40 60 80

特に問題はない

その他の問題

短期間での生産品目の切り替えが困難

資本財・中間財輸入に対する高関税

設備面での生産能力の不足

環境規制の厳格化

電力不足・停電

物流インフラの未整備

限界に近づきつつあるコスト削減

品質管理の難しさ

調達コストの上昇

原材料・部品の現地調達の難しさ

(%)

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<税制・税務手続、行政手続の煩雑さが目立つメルコスール諸国>

投資環境面での問題点では、「税制・税務手続の煩雑さ」が全体では 66.2%(259 社)

だが、国別ではメルコスール諸国のブラジル 86.9%(139 社)、アルゼンチン 39.3%(11

社)、ベネズエラ47.1%(8 社)といずれも高い比率を示した。「行政手続の煩雑さ(許

認可など)」についても全体では 57.0%(223 社)だが、メルコスール諸国のベネズエラ

88.2%(15 社)、アルゼンチン 64.3%(18 社)、ブラジル 71.3%(114 社)といずれ

も全体の数値を上回った。投資環境面でメルコスール諸国の厳しさが目立つ。

ただし、「人件費の高騰」についてはブラジル 80.6%(129 社)、アルゼンチン 78.6%

(22 社)、ベネズエラ 58.8%(10 社)に続いてチリ 55.3%(21 社)、コロンビア 27.8%

(5 社)となっており、これは在中南米日系企業にほぼ共通した問題点といえよう。ただ

し、メキシコでは23.7%(27社)であり、同国の人件費の上昇圧力は依然として低い。

図 5-6:現在直面する投資環境面でのリスク(問題点)<中南米全体、複数回答>

3.6

4.1

3.6

4.9

6.9

12.3

18.4

18.7

21.2

35.3

35.8

37.9

42.2

44.8

49.1

56.0

57.0

66.2

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

特に問題はない

その他

消費者運動・排斥運動(不買運動、市民の抗議等)

出資比率制限など外資規制

知的財産権保護の欠如

関連産業集積の未成熟・未発展

取引リスク(代金回収リスク等)

労働力の不足・人材採用難

土地/事務所スペースの不足、地価/賃料の上昇

不安定な政治・社会情勢

労働争議・訴訟

不安定な為替

法制度の未整備・不透明な運用

現地政府の不透明な政策運営

インフラ(電力、物流、通信など)の未整備

人件費の高騰

行政手続きの煩雑さ(許認可など)

税制・税務手続きの煩雑さ

(%)

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(参考)投資環境面でのメリット(長所)

「市場規模/成長性」70.6%(276 社)が突出している。国別ではコロンビア 88.9%(16

社)、メキシコ 81.6%(93 社)、ブラジル 81.3%(130 社)の比率が高い。次に「安定

した政治・社会情勢」が 30.2%(118 社)、国別ではチリ 78.9%(30 社)、コロンビア

77.8%(14 社)の比率が高い。なお、メキシコでは「取引先(納入先)企業の集積」と答

えた企業の比率が高い(38.6%,44社)のが特徴的であり、タイのように日系自動車産業

の集積が進んでおり、日系の顧客が多いことが同国の魅力となっている状況がうかがえる。

図 5-7:投資環境面でのメリット(長所)<中南米全体、複数回答>

10.5

1.3

1.8

2.0

2.8

5.4

5.6

6.9

7.2

7.2

7.4

7.7

9.5

10.7

11.3

16.9

30.2

70.6

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

その他

裾野産業の集積(現地調達が容易)

投資奨励制度の充実

各種手続き等が迅速

従業員の雇いやすさ(専門職・技術職、中間管理

職等)

言語・コミュニケーション上の障害の少なさ

従業員の定着率の高さ

従業員の質の高さ(一般ワーカー)

インフラ(電力、運輸、通信など)の充実

土地/事務所スペースが豊富、地価/賃料の安さ

(法人税、輸出入関税など)税制面でのインセン

ティブ

従業員の質の高さ(専門職・技術職)

従業員の質の高さ(中間管理職)

駐在員の生活環境が優れている

従業員の雇いやすさ(一般ワーカー、一般スタッフ・事務

員等)

取引先(納入先)企業の集積

安定した政治・社会情勢

市場規模/成長性

(%)

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<一部の国で高い治安、テロへの懸念>

安全面での問題点で最も比率が高かったのは「治安、テロ」63.4%(248 社)だった。

国別ではペルー75.0%(12 社)、コロンビア 66.7%(12 社)、ベネズエラ 88.2%(15 社)、

メキシコ 69.3%(79 社)が高い比率を示している。

一方、「紛争、民族/宗教対立」(3.6%、14 社)や「疾病(深刻な感染症等)」(3.6%、

14 社)の比率は低い。

図 5-8:現在直面する安全面での問題点<中南米全体、複数回答>

5.4

1.3

2.0

3.6

3.6

6.4

7.9

16.1

16.4

24.8

30.9

42.2

48.1

63.4

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

その他、進出国特有の事項

当局等による外国人の取り締まり

サイバーテロ(ハッキング等)、産業スパイ等

疾病(深刻な感染症等)

紛争、民族/宗教対立

民事トラブル

政争

環境汚染

自然災害

駐在員・家族の居住・生活トラブル

外国人が巻き込まれ易い事故の存在

外国人・企業を対象とした犯罪(殺傷害、誘

拐、強盗・盗難、詐欺等)

デモ、ストライキ

治安、テロ

(%)

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<賃金、税制、行政手続きの煩雑さで差がつくブラジルとメキシコ>

今まで見てきた経営上の課題について進出企業数が多いブラジル、メキシコについて比

較すると、ブラジルでは「税制・税務手続きの煩雑さ」、「行政手続きの煩雑さ(許認可

など)」、「人件費の高騰」、「調達コストの上昇」、「不安定な為替」、「インフラの

未整備」、などが大きな課題と指摘されている。特に、「人件費の高騰」は同国労働市場

での恒常的な賃金上昇圧力が働いていることが要因の一つだろう。投資環境面のほとんど

の分野で、ブラジルの方がメキシコよりも問題点を指摘する企業が多く、同国のビジネス

環境のハードルの高さが浮き彫りになった。

図 5-9:投資環境面でのリスク(問題点)<ブラジル・メキシコ比較、複数回答>

2.6

7.9

14.9

18.4

7.9

22.8

15.8

34.2

30.7

36.0

8.8

51.8

23.7

66.7

9.4

11.9

21.3

23.1

33.8

37.5

45.0

51.3

51.3

58.8

59.4

71.3

80.6

86.9

0 20 40 60 80 100

知的財産権保護の欠如

関連産業集積の未成熟・未発展

取引リスク(代金回収リスク等)

労働力の不足・人材採用難

土地/事務所スペースの不足、地価/賃料の

上昇

不安定な政治・社会情勢

不安定な為替

法制度の未整備・不透明な運用

現地政府の不透明な政策運営

インフラ(電力、物流、通信など)の未整備

労働争議・訴訟

行政手続きの煩雑さ(許認可など)

人件費の高騰

税制・税務手続きの煩雑さ

ブラジル(n=160) メキシコ(n=114)

(%)

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6. 原材料・部品の調達状況

<原材料・部品調達先は現地、日本、米国の順>

中南米全体では現地調達の比率が最も高く(37.9%)、日本(24.7%)、米国(10.9%)

が続いた。国別では現地調達がチリ(79.4%)、ペルー(68.0%)、ブラジル(45.2%)、

日本からはベネズエラ(38.0%)、メキシコ(34.5%)、コロンビア(27.3%)、米国から

はメキシコ(20.9%)の割合が高くなっている

メキシコの現調率はブラジルやアジア新興国と比べるとかなり低いが、米国からの調達

が多く、NAFTA を活用して北米ワイドで最適な調達先を選定しているものと思われる。近

年は自動車産業を中心に日系サプライチェーンが二次サプライヤー(Tier2)、三次サプラ

イヤー(Tier3)レベルまで構築されつつあるため、中期的には現地調達が拡大するだろう。

図 6-1:部品・原材料の調達先の内訳(製造業:156 社)

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<現地からの調達はほとんどが地場企業から>

現地からの部品・原材料の調達のうち、最も割合が高いのが地場企業からの調達(66.4%)、

次に現地進出日系企業(17.5%)、その他外資企業(16.1%)と続いた。どの国でも地場企

業からの調達比率が最も高くなっているが、なかでもチリ(94.0 %)、コロンビア(92.5 %)、

ブラジル(82.2 %)、ベネズエラ(82.0 %)の比率が高い。

アルゼンチンはその他外資企業からの調達(33.9%)、メキシコは現地日本企業からの

調達(37.2%)が高いのが特徴となっている。

図 6-2:部品・原材料の調達先の内訳〔現地〕(製造業:118 社)

17.5

37.2

0.0

7.5

20.2

0.3

6.4

0.9

66.4

41.8

82.0

92.5

67.8

94.0

82.2

65.3

16.1

21.0

18.0

0.0

12.0

5.7

11.4

33.9

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中南米全体(n=118)

メキシコ(n=44)

ベネズエラ(n=5)

コロンビア(n=4)

ペルー(n=5)

チリ(n=7)

ブラジル(n=45)

アルゼンチン(n=8)

現地進出日系企業 地場企業 その他外資企業

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7. FTA / EPA 活用状況と問題点

<メキシコ:多くの国・地域とのあいだで FTA を利用>

メキシコの企業は輸出入ともに FTA を積極的に活用している。チリへの輸出に FTA を

活用している企業は 100.0%(4 社)、中米 5 ヵ国向けには 80.0%(10 社)、メルコスー

ル向けには 76.9%(13 社)、NAFTA 向けには 67.6%(37 社)、日本向けには 57.9%(19

社)といずれも高い割合となっている。輸入では NAFTA からの輸入で 80.8%(73 社)、

日本からの輸入で 66.3%(80 社)、メルコスールからの輸入で 62.5%(8 社)、EU から

の輸入で 58.8%(17 社)の企業が FTA を利用している。

メキシコは世界各国・地域との FTA ネットワークを構築してきた。FTA を活用する企

業数と割合の高さから、同国に進出している日系企業が FTA ネットワークを積極的に活用

してビジネスを展開している姿が浮かび上がっている。

図 7-1:メキシコ(輸出)

図 7-2:メキシコ(輸入)

57.9

67.6

76.9

80.0

100.0

55.6

5.3

13.5

0.0

10.0

0.0

22.2

36.8

18.9

23.1

10.0

0.0

22.2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

日本(19社)

NAFTA(37社)

メルコスール(13社)

中米5ヵ国(10社)

チリ(4社)

EU(9社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

66.3

80.8

62.5

58.8

7.5

6.8

0.0

17.6

26.3

12.3

37.5

23.5

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

日本(80社)

NAFTA(73社)

メルコスール(8社)

EU(17社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

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<コロンビア:輸入で活用の割合多い>

コロンビアでは輸入で FTA を活用している企業の割合が高い。メキシコ、アンデス共同

体、チリ、米国、EU からの輸入で 100%の企業が FTA を利用と回答、メルコスールから

の輸入には 66.7%(6 社)が活用している。輸出ではメキシコ(50.0%、2 社)、中米 5 ヵ

国(50.0%、2 社)、アンデス共同体(50.0%、4 社)で FTA を活用するケースが見られ

る。

図 7-3:コロンビア(輸出)

図 7-4:コロンビア(輸入)

50.0

50.0

50.0

0.0

0.0

0.0

25.0

0.0

50.0

50.0

25.0

100.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メキシコ(2社)

中米5ヵ国(2社)

アンデス共同体(4社)

チリ(1社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

66.7

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

16.7

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

16.7

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メルコスール(6社)

メキシコ(1社)

アンデス共同体(1社)

チリ(1社)

米国(4社)

EU(2社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

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<ペルー:輸入で高い利用率>

ペルー進出日系企業は主に輸入で FTA を利用している。輸入ではメルコスール、アン

デス共同体、メキシコのほか、中国や韓国との FTA も活用している企業が見られる。日

本ペルーEPA を活用しているのは輸出入ともに 1 社にとどまった。

図 7-5 ペルー(輸出)

図 7-6 ペルー(輸入)

20.0

50.0

33.3

50.0

33.3

0.0

100.0

50.0

60.0

0.0

0.0

0.0

66.7

50.0

0.0

50.0

20.0

50.0

66.7

50.0

0.0

50.0

0.0

0.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

日本(5社)

メルコスール(2社)

アンデス共同体(3社)

チリ(2社)

米国(3社)

中国(2社)

韓国(1社)

EU(2社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

10.0

50.0

75.0

100.0

40.0

33.3

33.3

100.0

0.0

20.0

0.0

0.0

0.0

20.0

16.7

16.7

0.0

20.0

70.0

50.0

25.0

0.0

40.0

50.0

50.0

0.0

80.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

日本(10社)

メルコスール(4社)

メキシコ(4社)

アンデス共同体(3社)

チリ(5社)

米国(6社)

中国(6社)

韓国(1社)

EU(5社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

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<チリ:輸入での FTA の活用目立つ>

チリ進出日系企業は輸出入ともに FTA を活用している。輸入では中国や韓国からの輸

入での活用が目立つ。価格競争の厳しい同国市場で勝ち抜くためのツールの1つとして

FTA を活用しているようだ。日智 EPA の利用割合は輸出で30.8%(13 社)、輸入で55.5%

(20 社)であった。

図 7-7:チリ(輸出)

図 7-8:チリ(輸入)

30.8

100.0

100.0

50.0

33.3

50.0

75.0

0.0

50.0

50.0

0.0

0.0

0.0

50.0

66.7

50.0

0.0

0.0

50.0

50.0

69.2

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

25.0

100.0

0.0

0.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

日本(13社)

メルコスール(3社)

メキシコ(1社)

中米5ヵ国(2社)

アンデス共同体(3社)

ペルー(4社)

米国(4社)

中国(1社)

韓国(2社)

EU(2社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

55.0

57.1

75.0

50.0

0.0

66.7

81.8

72.7

75.0

100.0

71.4

0.0

20.0

14.3

12.5

0.0

0.0

0.0

9.1

18.2

0.0

0.0

14.3

0.0

25.0

28.6

12.5

50.0

100.0

33.3

9.1

9.1

25.0

0.0

14.3

100.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

日本(20社)

メルコスール(7社)

メキシコ(8社)

中米5ヵ国(2社)

アンデス共同体(1社)

ペルー(3社)

米国(11社)

中国(11社)

韓国(4社)

インド(1社)

EU(7社)

EFTA(1社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

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<ブラジル:中南米諸国向けの輸出で活用>

ブラジル進出日系企業は輸出ではチリ向けで 73.3%(15 社)、アンデス共同体向けで

70.0%(10 社)、ペルー向けで 68.8%(16 社)、メキシコ向けで 66.7%(9 社)、メル

コスール向けで 60.0%(35 社)と FTA を利用している比率が高い。輸入ではメルコスー

ルからの輸入で 66.7%(18 社)、メキシコからの輸入で 50%(8 社)が FTA を利用して

いる。輸出では中南米諸国との貿易協定を積極的に活用しているほか、メルコスール域内

からの輸入、メキシコとの自動車協定を活用していることが分かる。

図 7-9:ブラジル(輸出)

図 7-10:ブラジル(輸入)

60.0

66.7

70.0

73.3

68.8

0.0

14.3

11.1

10.0

13.3

12.5

0.0

25.7

22.2

20.0

13.3

18.8

100.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メルコスール(35社)

メキシコ(9社)

アンデス共同体(10社)

チリ(15社)

ペルー(16社)

インド(1社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

66.7

50.0

0.0

50.0

0.0

0.0

5.6

12.5

0.0

0.0

0.0

0.0

27.8

37.5

100.0

50.0

100.0

100.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メルコスール(18社)

メキシコ(8社)

アンデス共同体(1社)

チリ(2社)

ペルー(1社)

インド(3社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

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<アルゼンチン:メルコスールとメキシコとの自動車協定を活用>

アルゼンチン進出日系企業はメルコスールとメキシコとの自動車協定を活用しているよ

うだ。輸出ではメルコスール向けに輸出している企業 7 社すべて、メキシコ向けに輸出し

ている企業 1 社、輸入ではメルコスールから輸入している 11 社、メキシコから輸入してい

る 3 社すべてが協定を利用している。

図 7-11:アルゼンチン(輸出)

図 7-12:アルゼンチン(輸入)

100.0

100.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

100.0

100.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メルコスール(7社)

メキシコ(1社)

アンデス共同体(1社)

チリ(1社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

100.0

100.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

100.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メルコスール(11社)

メキシコ(3社)

インド(1社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

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<ベネズエラ:メルコスールのみ活用>

ベネズエラ進出日系企業の中では、メルコスールを利用していると回答した企業は輸出

入ともにわずか 1 社となった。

図 7-13 ベネズエラ(輸出)

図 7-14 ベネズエラ(輸入)

100.0 0.0 0.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メルコスール(1社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

25.0 25.0 50.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

メルコスール(4社)

利用している 利用を検討中 利用していない(予定なし)

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<煩雑かつ時間がかかる原産地証明書手続きを問題視>

FTA の活用にあたって、輸出面で深刻な問題を抱える企業の比率は低いようだが(「特

に問題はない」52.2%)、前年度調査と同様に「原産地証明書手続きに時間を要する」が

21.7%(前年 17.2%)と高く、「原産地証明書の取得手続きが煩雑である」が 12.2%(前

年 8.4%)、「社内に対応出来る人材が不足している」が 10.4%(前年 10.1%)となった。

図 7-15:FTA を活用するにあたっての輸出面での問題点

7.0

52.2

1.7

2.6

6.1

6.1

7.0

7.8

10.4

12.2

21.7

0.0 20.0 40.0 60.0

その他

特に問題はない

FTA/EPA利用に向け、調達先の協力が得

られにくい

FTA/EPA上の関税割当が機能していない

主要な輸出先との間にFTA/EPAが存在し

ない

原産地証明書の発給コストが高い

既存FTA/EPAの原産地規則が各々異なり

煩雑である

原産地規則の基準を満たせない、もしくは非常

に困難

社内に対応出来る人材が不足している

原産地証明書の取得手続きが煩雑である

原産地証明書手続きに時間を要する

(%)

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<輸入で問題を抱える企業はわずか>

輸出と同様に輸入面でも FTA の活用の際に問題を抱える企業は少ないようだ(「特に問

題はない」68.0%)。「FTA/EPA による特恵税率と一般税率との関税差が少なく、メリ

ットがない」と回答した企業は 10.1%、「主要な輸入元との間に FTA/EPA が存在しない」

が 9.0%となった。

図 7-16:FTA を活用するにあたっての輸入面での問題点

6.2

68.0

5.6

6.7

9.0

10.1

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

その他

特に問題はない

輸入国側税関での厳格な特恵関税認定検査

FTA/EPA利用に向け、調達先の協力が得

られない

主要な輸入元との間にFTA/EPAが存在し

ない

FTA/EPAによる特恵税率と一般税率との

関税差が少なく、メリットがない

(%)