〈ベーシック薬学教科書シリーズ〉『分析科学(第3版 ......〈ベーシック薬学教科書シリーズ〉『分析科学(第3版)』:章末問題の解答
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法...
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A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
2014年度秋学期 応用数学(解析)
浅野 晃 関西大学総合情報学部
第1部・「無限」の理解 収束とは何か,ε-δ論法
第4回
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分を習ったときの説明
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
何かだまされている気がする
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分の説明
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
関数 f(x) = x2 の微分
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分の説明
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
関数 f(x) = x2 の微分
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分の説明
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
関数 f(x) = x2 の微分
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分の説明
h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
関数 f(x) = x2 の微分
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分の説明
h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
関数 f(x) = x2 の微分
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分の説明
h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
やっぱり h はゼロ
関数 f(x) = x2 の微分
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
微分の説明
h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
やっぱり h はゼロ
これっておかしくありませんか?
関数 f(x) = x2 の微分
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
収束=「限りなく近づく」ことの 意味
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
α
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
α
ε
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
α
α – ε α + ε
ε
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
a1
α
α – ε α + ε
ε ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1
α
α – ε α + ε
ε ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2
α
α – ε α + ε
ε ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε…
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε…
aN–1
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε…
aN–1aN
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε…
aN–1aN
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε…
aN–1aN+1
aN
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε…
aN–1aN+1
aN
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε
ε ε…
aN–1aN+1
aN
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
…
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
α – ε α + ε
ε ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
εをどんなに小さくしても
α – ε α + ε
ε ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε ε
εをどんなに小さくしても
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε ε
εをどんなに小さくしても
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε ε
εをどんなに小さくしてもaN
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε ε
εをどんなに小さくしてもaN
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε ε
εをどんなに小さくしてもaN
…
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
数列が十分大きな番号 N まで進めば
a1a2a3
α
α – ε α + ε…
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε ε
εをどんなに小さくしてもaN
そういうNがある
…
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとはα のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとはα のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
数列が十分大きな番号 N まで進めば
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとはα のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε – N 論法
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε – N 論法
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る
ε – N 論法
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散する
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,
数列が十分大きな番号 N まで進めば
2014
A. A
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数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる
2014
A. A
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数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
2014
A. A
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数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
2014
A. A
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, Kan
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数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,
数列が十分大きな番号 N まで進めば
N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていないどんなに狭い区間[α – ε, α + ε]
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていないどんなに狭い区間[α – ε, α + ε]
どんなに大きな数 G
十分大きな番号 N
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない
どれも「無限」ではなく有限
どんなに狭い区間[α – ε, α + ε]
どんなに大きな数 G
十分大きな番号 N
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない
どれも「無限」ではなく有限
どんなに狭い区間[α – ε, α + ε]
どんなに大きな数 G
十分大きな番号 N
ただし,求めに応じて 好きなだけ狭く・大きくできる
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない
どれも「無限」ではなく有限
どんなに狭い区間[α – ε, α + ε]
どんなに大きな数 G
十分大きな番号 N
ただし,求めに応じて 好きなだけ狭く・大きくできる
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
実数の連続性と収束
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
2014
A. A
sano
, Kan
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実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
2014
A. A
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sai U
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実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
2014
A. A
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, Kan
sai U
niv.
実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する
有界(このへんに達することはできない)
実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
2014
A. A
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実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する
有界(このへんに達することはできない)
実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
…
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, Kan
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実数の連続性と収束
実数の有界な単調数列は収束する
有界(このへんに達することはできない)
実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現
単調増加だから つねに増加していくが, 収束する
数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …
「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …
…
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在するα
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在するα
α′α より小さい α′ を考えると
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
α′ はどれだけ α に近くてもよい
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
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n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
α′ はどれだけ α に近くてもよい
これをε( > 0)と考えると
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
α′ はどれだけ α に近くてもよい
これをε( > 0)と考えると
ε
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
α′ はどれだけ α に近くてもよい
これをε( > 0)と考えると
α からの隔たり ε をどんなに小さく設定しても, そこに入る an がある
ε
つまり,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する
…αα′
α より小さい α′ を考えると
α′ と α の間に来る an がある
an
n 番目
α
α′an
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
α′ はどれだけ α に近くてもよい
これをε( > 0)と考えると
α からの隔たり ε をどんなに小さく設定しても, そこに入る an がある
ε
つまり,
{an} は α に収束する
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
数列の収束に関する例題
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題a > 0 のとき
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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を証明せよ。
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題a > 0 のとき
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
を証明せよ。
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題a > 0 のとき
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
を証明せよ。
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。
n > k となる番号 n について,
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題a > 0 のとき
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
を証明せよ。
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。
n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題a > 0 のとき
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
を証明せよ。
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。
n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
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"n−k
=C · 2k
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C · 2k
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(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
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"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
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(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
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2a+ (n− k)
< C ×!1
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"n−k
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(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
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2a+ (n− k)
< C ×!1
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"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
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n!=
ak
k!× a
k + 1× a
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n= C × a
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で,k > 2aですからan
n!< C × a
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"n−k
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とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
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n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
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例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
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n!=
ak
k!× a
k + 1× a
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n= C × a
k + 1× a
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k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
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"n−k
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(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
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k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
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k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
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2
"n−k
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2n<
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(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
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n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
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k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
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2n<
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(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
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例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
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2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
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とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
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n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
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で,k > 2aですからan
n!< C × a
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2
"n−k
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2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
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(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が であれば
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が であれば
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が であれば
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
例題n > k となる番号 n について,
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
k > 2a なので
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が であれば
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
つまり {an / n!} は 0 に 収束する
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A εε
縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A εε
縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても
δδ
a
横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A εε
縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても
δδ
a
横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば
x と a との隔たりが δ より小さければ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A εε
縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても
δδ
a
横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば
xx と a との隔たりが δ より小さければ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A εε
縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても
δδ
a
横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば
xx と a との隔たりが δ より小さければ
f(x)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A εε
縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても
δδ
a
横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば
xx と a との隔たりが δ より小さければ
f(x) と A との隔たりも ε より小さいf(x)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)
x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)
x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)
x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
ε – δ 論法
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)
x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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ε – δ 論法
ε も δ も,ただの正の数で,0ではないし, 0に「無限に」近づくわけでもない
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
最初の微分の例h → 0 と書いてあっても, h はあくまで正の数で,0ではない
hはゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子をhで割る
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
やっぱりh はゼロ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
最初の微分の例h → 0 と書いてあっても, h はあくまで正の数で,0ではない
hはゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子をhで割る
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
やっぱりh はゼロ ではなくて
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
最初の微分の例h → 0 と書いてあっても, h はあくまで正の数で,0ではない
hはゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子をhで割る
2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法
なんかごまかされている気がする
微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。
df(x)
dx= lim
h→0
f(x+ h)− f(x)
h
= limh→0
(x+ h)2 − x2
h
= limh→0
h(2x+ h)
h
= limh→0
(2x+ h) = 2x
(1)
上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?
この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。
数列の収束
「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。
αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)
と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。
同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは
どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。
すなわち
∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)
1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 1/5 ページ
やっぱりh はゼロ ではなくて収束する先が h = 0 を代入したときの値と同じ,というだけ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a x
A
a
B
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a
xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA
x
A
a
B
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a
xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA
x
A
a
B
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a
xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA
x
A
a
B
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a
xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA
x
A
a
B
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a
xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA
x
A
a
B
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
右極限
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a
xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA
x
A
a
B
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
右極限
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
左極限と右極限
単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■
例題
a > 0のとき, limn→∞
an
n!= 0であることを証明せよ。
k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak
k!= C とおきます。すると,n > kのとき
an
n!=
ak
k!× a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
n= C × a
k + 1× a
k + 2× · · ·× a
k + (n− k)(4)
で,k > 2aですからan
n!< C × a
2a+ 1× a
2a+ 2× · · ·× a
2a+ (n− k)
< C ×!1
2
"n−k
=C · 2k
2n<
C · 2k
n
(5)
とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k
εとなる nを考える
と,上の式に代入して an
n!< εとなります。すなわち,an
n!は 0に収束します。■
関数の極限
ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a
f(x) = Aであることは,次のように定義されます。
どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。
これを,数学の表現では
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)
と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。
この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0
としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 3/5 ページ
関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは
x
A
a
xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA
x
A
a
B
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
左極限
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
右極限
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の「連続」と「一様連続」
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の連続性
関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること
x
f(a)
a
関数 f(x) が x = a で連続であるとは
xa
f(a)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の連続性
関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること
x
f(a)
a
関数 f(x) が x = a で連続であるとは
xa
f(a)
a で連続
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の連続性
関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること
x
f(a)
a
関数 f(x) が x = a で連続であるとは
xa
f(a)
右極限はf(a)で ない
a で連続
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の連続性
関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること
x
f(a)
a
関数 f(x) が x = a で連続であるとは
xa
f(a)左極限はf(a)
右極限はf(a)で ない
a で連続
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の連続性
関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること
x
f(a)
a
関数 f(x) が x = a で連続であるとは
xa
f(a)左極限はf(a)
右極限はf(a)で ない
a で連続 a で不連続
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数の連続性
関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること
x
f(a)
a
関数 f(x) が x = a で連続であるとは
xa
f(a)左極限はf(a)
右極限はf(a)で ない
a で連続 a で不連続
区間 I のどの点でも連続なら「区間 I で連続」
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
f(a) εε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには f(a) ε
ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには f(a) ε
ε
a
δδ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xが aの左右δの範囲に 入ればよい
f(a) εε
a
δδ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
εεf(b)
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xが aの左右δの範囲に 入ればよい
f(a) εε
a
δδ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
εεf(b)
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xが aの左右δの範囲に 入ればよい
f(a) εε
a
δδ
同じεでも
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
εεf(b)
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xが aの左右δの範囲に 入ればよい
f(a) εε
a
δδ
δδ
b
同じεでも
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
ε – δ 論法で話をすると
x
εεf(b)
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xが aの左右δの範囲に 入ればよい
f(a) εε
a
δδ
δδ
b
同じεでも
要求される δの「狭さ」は 異なる
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
一様連続
x
δδ
εεf(b)
a
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xがaの左右δの範囲に入ればよい
f(a) εε
δδ
b
同じεでも
求められる δの「狭さ」は 異なる
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
一様連続
x
δδ
εεf(b)
a
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xがaの左右δの範囲に入ればよい
f(a) εε
δδ
b
同じεでも
求められる δの「狭さ」は 異なる
この場合は「狭い方の δ 」をどこででも用いればよい
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
一様連続
x
δδ
εεf(b)
a
f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには
xがaの左右δの範囲に入ればよい
f(a) εε
δδ
b
同じεでも
求められる δの「狭さ」は 異なる
この場合は「狭い方の δ 」をどこででも用いればよいどの点でも「共通の δ 」を用いれば連続といえるとき [一様連続]という
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 5/5 ページ
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
区間 [0, 1) を考える
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 5/5 ページ
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
区間 [0, 1) を考える
ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 5/5 ページ
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
区間 [0, 1) を考える
δ
ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
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xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
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区間 [0, 1) を考える
δ
ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 5/5 ページ
xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
区間 [0, 1) を考える
δ
ε
ε
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 5/5 ページ
xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
区間 [0, 1) を考える
δ
ε
ε
δ
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
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xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
区間 [0, 1) を考える
δ
ε
ε
δ要求される δの「狭さ」は いくらでも狭くなる
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
連続だが一様連続でない例
f(x)-1
1
図 3: 連続だが一様連続でない関数
f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。
関数列の収束
ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)
と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。
問題
数列 {an} = 1,1
4,1
9, . . . ,
1
n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。
参考文献
細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4
瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8
齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 5/5 ページ
xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する
f(x)
ε
ε
δδ
同じ
異なる
図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる
なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a
に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim
x→a−0, lim
x→a+0と書きます。
関数の連続性と一様連続性
関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと
∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)
となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。
さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。
区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。
例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1
x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近
づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。
もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1
2n, an = 1− 1
nとすると,xn − an =
1
2nで,|f(xn)−
3正確な証明は略します。
浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/ 4/5 ページ
区間 [0, 1) を考える
δ
ε
ε
δ要求される δの「狭さ」は いくらでも狭くなる
区間内で 「共通のδ」は 存在しない
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f(x) f(x)
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)
f(x) f(x)
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
f(x) f(x)
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x) f(x)
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく
f(x)
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f(x)
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
f(x)
x
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
f(x)
x
f2(x)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
f(x)
x
f2(x)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
f(x)
x
f2(x)f3(x)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
…f(x)
x
f2(x)f3(x)
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
…f(x)
x
f2(x)f3(x)
左のほうでは収束していくが
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
…f(x)
x
f2(x)f3(x)
左のほうでは収束していくがいくらでも右に行けば いつまでたっても 収束しない
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
関数列の収束と「一様収束」
x
f1(x)f2(x)
…
f(x)
区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]
f1(x)
…f(x)
x
f2(x)f3(x)
左のほうでは収束していくがいくらでも右に行けば いつまでたっても 収束しない
[一様収束]でない
2014
A. A
sano
, Kan
sai U
niv.
今日のまとめ
「限りなく近づく」とは, 「無限」ではない
求めに応じて 好きなだけ近くできること