2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法...

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A. Asano, Kansai Univ. 2014年度秋学期 応用数学(解析) 浅野 晃 関西大学総合情報学部 第1部・「無限」の理解 収束とは何か,ε-δ論法 第4回

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関西大学総合情報学部 「応用数学(解析)」(担当:浅野晃)

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A. A

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sai U

niv.

2014年度秋学期 応用数学(解析)

浅野 晃 関西大学総合情報学部

第1部・「無限」の理解 収束とは何か,ε-δ論法

第4回

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微分を習ったときの説明

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何かだまされている気がする

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2014

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微分の説明

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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関数 f(x) = x2 の微分

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微分の説明

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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関数 f(x) = x2 の微分

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微分の説明

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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関数 f(x) = x2 の微分

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微分の説明

h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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関数 f(x) = x2 の微分

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微分の説明

h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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関数 f(x) = x2 の微分

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微分の説明

h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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やっぱり h はゼロ

関数 f(x) = x2 の微分

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微分の説明

h はゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子を h で割る

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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やっぱり h はゼロ

これっておかしくありませんか?

関数 f(x) = x2 の微分

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収束=「限りなく近づく」ことの 意味

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

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A. A

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

α

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

α

ε

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

ε

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

α

α – ε α + ε

ε

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

ε

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

a1

α

α – ε α + ε

ε ε

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1

α

α – ε α + ε

ε ε

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2

α

α – ε α + ε

ε ε

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε…

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε…

aN–1

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε…

aN–1aN

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε…

aN–1aN

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε…

aN–1aN+1

aN

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε…

aN–1aN+1

aN

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε

ε ε…

aN–1aN+1

aN

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

α – ε α + ε

ε ε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

εをどんなに小さくしても

α – ε α + ε

ε ε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε…

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε ε

εをどんなに小さくしても

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε…

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε ε

εをどんなに小さくしても

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε…

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε ε

εをどんなに小さくしてもaN

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε…

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε ε

εをどんなに小さくしてもaN

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε…

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε ε

εをどんなに小さくしてもaN

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

数列が十分大きな番号 N まで進めば

a1a2a3

α

α – ε α + ε…

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε ε

εをどんなに小さくしてもaN

そういうNがある

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niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

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A. A

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, Kan

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niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとはα のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

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2014

A. A

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, Kan

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niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとはα のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

数列が十分大きな番号 N まで進めば

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2014

A. A

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, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとはα のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

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数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

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A. A

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niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε – N 論法

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2014

A. A

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niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε – N 論法

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束の定義数列{an}が α に収束するとは

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

α のまわりにどんなに狭い区間 [α – ε, α + ε]を設定しても(ε > 0)

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみなその狭い区間[α – ε, α + ε]に入る

ε – N 論法

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A. A

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niv.

数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散する

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2014

A. A

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niv.

数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,

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2014

A. A

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sai U

niv.

数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,

数列が十分大きな番号 N まで進めば

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2014

A. A

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, Kan

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niv.

数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる

Page 51: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

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sai U

niv.

数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

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A. A

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数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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A. A

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niv.

数列の発散の定義数列{an}が ∞ に発散するどんなに大きな数 G を持ってきても,

数列が十分大きな番号 N まで進めば

N 番より大きな番号 n については, anはみな G より大きくなる

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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niv.

収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない

Page 55: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていないどんなに狭い区間[α – ε, α + ε]

Page 56: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていないどんなに狭い区間[α – ε, α + ε]

どんなに大きな数 G

十分大きな番号 N

Page 57: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない

どれも「無限」ではなく有限

どんなに狭い区間[α – ε, α + ε]

どんなに大きな数 G

十分大きな番号 N

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない

どれも「無限」ではなく有限

どんなに狭い区間[α – ε, α + ε]

どんなに大きな数 G

十分大きな番号 N

ただし,求めに応じて 好きなだけ狭く・大きくできる

Page 59: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

収束や発散は「無限」なのか「無限」とはひとことも言っていない

どれも「無限」ではなく有限

どんなに狭い区間[α – ε, α + ε]

どんなに大きな数 G

十分大きな番号 N

ただし,求めに応じて 好きなだけ狭く・大きくできる

Page 60: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

Page 62: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

Page 63: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

Page 64: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

Page 65: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

Page 66: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する

有界(このへんに達することはできない)

実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

Page 69: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する

有界(このへんに達することはできない)

実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

Page 70: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

実数の連続性と収束

実数の有界な単調数列は収束する

有界(このへんに達することはできない)

実数の連続性を述べる公理の,4つめの表現

単調増加だから つねに増加していくが, 収束する

数列{an}が 「単調増加」とは,a1 < a2 < … < an < …

「単調減少」とは,a1 > a2 > … > an > …

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在するα

Page 72: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在するα

α′α より小さい α′ を考えると

Page 73: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

Page 74: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

Page 75: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

Page 76: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

Page 77: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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α′ はどれだけ α に近くてもよい

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

α′ はどれだけ α に近くてもよい

これをε( > 0)と考えると

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

α′ はどれだけ α に近くてもよい

これをε( > 0)と考えると

ε

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

α′ はどれだけ α に近くてもよい

これをε( > 0)と考えると

α からの隔たり ε をどんなに小さく設定しても, そこに入る an がある

ε

つまり,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ワイエルシュトラスの定理から証明有界だから,上限 α が存在する

…αα′

α より小さい α′ を考えると

α′ と α の間に来る an がある

an

n 番目

α

α′an

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

α′ はどれだけ α に近くてもよい

これをε( > 0)と考えると

α からの隔たり ε をどんなに小さく設定しても, そこに入る an がある

ε

つまり,

{an} は α に収束する

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

数列の収束に関する例題

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題a > 0 のとき

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

を証明せよ。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題a > 0 のとき

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

を証明せよ。

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題a > 0 のとき

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

を証明せよ。

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。

n > k となる番号 n について,

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題a > 0 のとき

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

を証明せよ。

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。

n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題a > 0 のとき

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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を証明せよ。

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

と置く。番号 k は,k > 2a であるとする。

n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

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k!× a

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k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

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k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

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n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

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n!=

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k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

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k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

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2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

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k!× a

k + 1× a

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n= C × a

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で,k > 2aですからan

n!< C × a

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2a+ (n− k)

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2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

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k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

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k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

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k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

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k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

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k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

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2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が     であれば

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が     であれば

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が     であれば

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

例題n > k となる番号 n について,

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

k > 2a なので

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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そこで,どんな小さな ε( > 0) についても, 番号 n が     であれば

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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つまり {an / n!} は 0 に 収束する

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A εε

縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A εε

縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても

δδ

a

横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A εε

縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても

δδ

a

横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば

x と a との隔たりが δ より小さければ

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A εε

縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても

δδ

a

横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば

xx と a との隔たりが δ より小さければ

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A εε

縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても

δδ

a

横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば

xx と a との隔たりが δ より小さければ

f(x)

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限数列の収束と同じ論法を用いる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A εε

縦軸で A との隔たり ε を どれほど小さくしても

δδ

a

横軸で a との隔たり δ を それに応じて小さくすれば

xx と a との隔たりが δ より小さければ

f(x) と A との隔たりも ε より小さいf(x)

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)

x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)

x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)

x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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ε – δ 論法

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A. A

sano

, Kan

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niv.

関数の極限どんなに小さな ε を考えても(ε > 0)

x と a との隔たりを δ より小さくすればf(x) と A の隔たりも ε より小さくできる

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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ε – δ 論法

ε も δ も,ただの正の数で,0ではないし, 0に「無限に」近づくわけでもない

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

最初の微分の例h → 0 と書いてあっても, h はあくまで正の数で,0ではない

hはゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子をhで割る

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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やっぱりh はゼロ

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A. A

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, Kan

sai U

niv.

最初の微分の例h → 0 と書いてあっても, h はあくまで正の数で,0ではない

hはゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子をhで割る

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  1/5 ページ

やっぱりh はゼロ ではなくて

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

最初の微分の例h → 0 と書いてあっても, h はあくまで正の数で,0ではない

hはゼロに近づいているだけで, ゼロではないから, 分母分子をhで割る

2014年度秋学期 応用数学(解析) 第4回第1部・「無限」の理解/ 収束とは何か,ε-δ論法

なんかごまかされている気がする

微分を初めて習った時,例えば「f(x) = x2を xで微分せよ」という問題を次のように説明されたと思います。

df(x)

dx= lim

h→0

f(x+ h)− f(x)

h

= limh→0

(x+ h)2 − x2

h

= limh→0

h(2x+ h)

h

= limh→0

(2x+ h) = 2x

(1)

上の説明では,3行目で「hは 0に近づいているだけで,まだ 0ではないから」といって hで割っているのに,4行目では「hは 0」としています。これはおかしくありませんか?

この問題を解決するには,「収束」を正確に理解する必要があります。今日は,「限りなく近づく」という言葉で表されている「収束」について考えてみます。

数列の収束

「数列 {an}が αに収束する」とは,数学では次のような意味だと理解されています。

αのまわりにどんなに狭い区間 [α− ε,α+ ε]を設定しても 1,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはみなその狭い区間 [α− ε,α+ ε]に入る。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃N ;n > N ⇒ |an − α| < ε (2)

と書き,これをε-N論法とよびます。図 1の「4コマ漫画」で,この様子を説明しています。

同様に,「n → ∞のとき,数列 {an}が∞に発散する」とは

どんなに大きな数Gをもってきても,数列が十分大きな番号N まで進めば,N 番より大きな番号 nについては,anはGより大きくなる。

すなわち

∀G, ∃N ;n > N ⇒ an > G (3)

1“ε”は,数学ではしばしば「すごく小さな(好きなだけ小さくできる)正の数をさします。

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やっぱりh はゼロ ではなくて収束する先が h = 0 を代入したときの値と同じ,というだけ

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a x

A

a

B

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a

xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA

x

A

a

B

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a

xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA

x

A

a

B

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a

xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA

x

A

a

B

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a

xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA

x

A

a

B

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a

xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA

x

A

a

B

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

右極限

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  3/5 ページ

関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a

xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA

x

A

a

B

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

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右極限

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

左極限と右極限

単調に増加する数列 {an}が有界ならば,Weierstrassの定理により上限 αが存在します。このとき,α′ < αとなるような α′を用意します。この数列は単調増加ですから,ある番号 p以降の an (n > p)は,α′よりも大きく,一方上限 α以下ではあるはずです。つまり α′ < an ! α (n > p)です。よって,αとanの隔たりは αと α′の隔たりよりも小さい,すなわち |α− an| < α− α′となります。α′は,αより小さければどれだけ αに近くてもよいので,α − α′を上の収束の定義の εと考えると,{an}は αに収束することがわかります。■

例題

a > 0のとき, limn→∞

an

n!= 0であることを証明せよ。

k > 2aであるような番号 kをもってきて,ak

k!= C とおきます。すると,n > kのとき

an

n!=

ak

k!× a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

n= C × a

k + 1× a

k + 2× · · ·× a

k + (n− k)(4)

で,k > 2aですからan

n!< C × a

2a+ 1× a

2a+ 2× · · ·× a

2a+ (n− k)

< C ×!1

2

"n−k

=C · 2k

2n<

C · 2k

n

(5)

とすることができます。そこで,ある(小さな)正の数 εをもってきて,n >C · 2k

εとなる nを考える

と,上の式に代入して an

n!< εとなります。すなわち,an

n!は 0に収束します。■

関数の極限

ここまでに述べた数列の収束と同じ論法を使って,「関数 f(x)の x → aの極限がAである」すなわちlimx→a

f(x) = Aであることは,次のように定義されます。

どんなに小さな正の数 εを持ってきても,xと aの隔たりをある δより小さくすれば,f(x)とAの隔たりも εより小さくできる。

これを,数学の表現では

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)−A| < ε (6)

と書きます。この表現をε-δ論法とよびます 2。

この定義で,最初に述べた微分の問題を考えてみると,h → 0という表現では,hは δより小さいだけであってあくまで 0ではないので,割り算をしてもいい,ということになります。最後の行で h = 0

としているのは,収束する先が h = 0とした時の値と同じ,というだけです。2ε-N論法もε-δ論法に含めて,総称してε-δ論法ということもあります。

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関数 f(x) の x→a の極限が A であるとは

x

A

a

xが大きい方からaに近づいても 小さい方からaに近づいても,どちらの極限もA

x

A

a

B

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

左極限

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

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右極限

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の「連続」と「一様連続」

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の連続性

関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること

x

f(a)

a

関数 f(x) が x = a で連続であるとは

xa

f(a)

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の連続性

関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること

x

f(a)

a

関数 f(x) が x = a で連続であるとは

xa

f(a)

a で連続

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の連続性

関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること

x

f(a)

a

関数 f(x) が x = a で連続であるとは

xa

f(a)

右極限はf(a)で ない

a で連続

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の連続性

関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること

x

f(a)

a

関数 f(x) が x = a で連続であるとは

xa

f(a)左極限はf(a)

右極限はf(a)で ない

a で連続

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の連続性

関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること

x

f(a)

a

関数 f(x) が x = a で連続であるとは

xa

f(a)左極限はf(a)

右極限はf(a)で ない

a で連続 a で不連続

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数の連続性

関数 f(x) の x→a の極限が f(a) であること

x

f(a)

a

関数 f(x) が x = a で連続であるとは

xa

f(a)左極限はf(a)

右極限はf(a)で ない

a で連続 a で不連続

区間 I のどの点でも連続なら「区間 I で連続」

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

Page 145: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

f(a) εε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには f(a) ε

ε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには f(a) ε

ε

a

δδ

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xが aの左右δの範囲に 入ればよい

f(a) εε

a

δδ

Page 149: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

εεf(b)

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xが aの左右δの範囲に 入ればよい

f(a) εε

a

δδ

Page 150: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

εεf(b)

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xが aの左右δの範囲に 入ればよい

f(a) εε

a

δδ

同じεでも

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

εεf(b)

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xが aの左右δの範囲に 入ればよい

f(a) εε

a

δδ

δδ

b

同じεでも

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

ε – δ 論法で話をすると

x

εεf(b)

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xが aの左右δの範囲に 入ればよい

f(a) εε

a

δδ

δδ

b

同じεでも

要求される δの「狭さ」は 異なる

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

一様連続

x

δδ

εεf(b)

a

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xがaの左右δの範囲に入ればよい

f(a) εε

δδ

b

同じεでも

求められる δの「狭さ」は 異なる

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

一様連続

x

δδ

εεf(b)

a

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xがaの左右δの範囲に入ればよい

f(a) εε

δδ

b

同じεでも

求められる δの「狭さ」は 異なる

この場合は「狭い方の δ 」をどこででも用いればよい

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

一様連続

x

δδ

εεf(b)

a

f(x)が f(a)の上下εの範囲に 入るには

xがaの左右δの範囲に入ればよい

f(a) εε

δδ

b

同じεでも

求められる δの「狭さ」は 異なる

この場合は「狭い方の δ 」をどこででも用いればよいどの点でも「共通の δ 」を用いれば連続といえるとき [一様連続]という

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

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区間 [0, 1) を考える

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

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f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

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区間 [0, 1) を考える

ε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

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f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

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区間 [0, 1) を考える

δ

ε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

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xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

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区間 [0, 1) を考える

δ

ε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

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xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

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区間 [0, 1) を考える

δ

ε

ε

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

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xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

区間 [0, 1) を考える

δ

ε

ε

δ

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

区間 [0, 1) を考える

δ

ε

ε

δ要求される δの「狭さ」は いくらでも狭くなる

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

連続だが一様連続でない例

f(x)-1

1

図 3: 連続だが一様連続でない関数

f(an)| = nです。ですから,nを大きくすれば xnと anの隔たりをある δよりも小さくすることはできますが,そのとき f(xn)と f(an)の隔たりを εより小さくすることはできません。

関数列の収束

ここまでの知識を用いると,数列でなく「関数の列」f1(x), f2(x), . . . の収束を考えることができます。つまり,n → ∞のとき,区間 I の各点 xで |fn(x)− f(x)| → 0となることを,関数列 f(x)は区間 I で各点収束するといいます。ここで,一様連続の説明で述べた「連続の程度」と同じように,区間 I内の各点での「収束の程度」を考えます。すると,関数列である番号Nより先の関数 fn(x) (n > N)については,区間 I内のどの点 xでもfn(x)

と f(x)の隔たりを εより小さくできる,という収束のしかたを考えることができます。これを,関数列f(x)は区間 I で一様収束するといいます。

問題

数列 {an} = 1,1

4,1

9, . . . ,

1

n2は n → ∞のとき収束することを,ε−N 論法で示してください。

参考文献

細井勉,わかるイプシロン・デルタ,日本評論社,1995. ISBN978-4-53578-217-4

瀬山士郎,「無限と連続」の数学̶微分積分学の基礎理論案内,東京図書,2005. ISBN978-4-48900-708-8

齋藤正彦,微分積分学,東京図書,2006. ISBN978-4-48900-732-3

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  5/5 ページ

xが1に近づくと f(x)はいくらでも大きく 変化する

f(x)

ε

ε

δδ

同じ

異なる

図 2: 同じεに対しても,必要な「δの小ささ」は異なる

なお,関数の極限については「上のことが xが aにどの方向から近づいてもなりたつとき」という条件がついています。「方向」の違いとは,例えば xが aより小さくて aに近づくのか,aより大きくて a

に近づくのか,という違いです。前者の場合のみ得られる極限を左極限,後者の場合のみ得られる極限を右極限といい,それぞれ lim

x→a−0, lim

x→a+0と書きます。

関数の連続性と一様連続性

関数 f(x)の x → aの極限が f(a)であるとき,f(x)は aで連続であるといいます。 ε-δ論法で書くと

∀ε > 0, ∃δ > 0; 0 < |x− a| < δ ⇒ |f(x)− f(a)| < ε (7)

となります。さらに,関数 f(x)が区間 I のどの点でも連続のとき,f(x)は区間 I で連続といいます。

さて,ε-δ論法を用いると,同じ「x = aで連続」な関数にも「連続の程度」を考えることができます。つまり,f(x)と f(a)の隔たりがある εより小さくなるとき,xと aとの隔たりをどのくらい小さくすればよいか,つまり δをどのくらい小さくすればよいか,という問題です(図 2)。

区間 I内のどの点 aについても,f(x)と f(a)の隔たりをある εより小さくするためには,xと aとの隔たりをひとつの共通のδより小さくすればよいとき,f(x)は区間 I で一様連続であるといいます。区間 I が閉区間なら,δは区間内で必要な最小のものにすればよいので,区間 I で連続な関数はつねに一様連続です 3。しかし,区間 I が開区間のときは,「連続なのに一様連続でない」関数があります。

例えば,区間 [0, 1)で関数 f(x) =1

x− 1を考えます(図 3)。この区間内では,xが 1にいくらでも近

づけば,xのどんな小さな変化に対しても,f(x)はいくらでも大きく変化します。したがって,ひとつの f(x)と f(a)の隔たり εに対して,区間内で共通の δをとることができず,一様連続ではありません。

もう少し正確に書いてみましょう。xn = 1− 1

2n, an = 1− 1

nとすると,xn − an =

1

2nで,|f(xn)−

3正確な証明は略します。

浅野 晃/応用数学(解析)(2014 年度秋学期) 第4回 (2014. 10. 16) http://racco.mikeneko.jp/  4/5 ページ

区間 [0, 1) を考える

δ

ε

ε

δ要求される δの「狭さ」は いくらでも狭くなる

区間内で 「共通のδ」は 存在しない

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

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A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f(x) f(x)

x

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)

f(x) f(x)

x

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x) f(x)

x

Page 169: 2014年度秋学期 応用数学(解析) 第1部・「無限」の理解 / 第4回 収束とは何か,ε-δ論法 (2014. 10. 16)

2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x) f(x)

x

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく

f(x)

x

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f(x)

x

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

f(x)

x

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

f(x)

x

f2(x)

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

f(x)

x

f2(x)

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

f(x)

x

f2(x)f3(x)

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

…f(x)

x

f2(x)f3(x)

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

…f(x)

x

f2(x)f3(x)

左のほうでは収束していくが

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

…f(x)

x

f2(x)f3(x)

左のほうでは収束していくがいくらでも右に行けば いつまでたっても 収束しない

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

関数列の収束と「一様収束」

x

f1(x)f2(x)

f(x)

区間内の各点で, fn(x)とf(x)の隔たりが 0に近づく[各点収束]

f1(x)

…f(x)

x

f2(x)f3(x)

左のほうでは収束していくがいくらでも右に行けば いつまでたっても 収束しない

[一様収束]でない

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2014

A. A

sano

, Kan

sai U

niv.

今日のまとめ

「限りなく近づく」とは, 「無限」ではない

求めに応じて 好きなだけ近くできること