コモンズというしくみ――自然、地域社会、そして復興(2013年11月30日...

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20131130日(土) 京都大学百周年時計台記念館 17回京都大学地球環境フォーラム 「地球のつかい方」 コモンズというしくみ ――自然、地域社会、そして復 宮内泰介 北海道大学大学院文学研究科教授(環境社会学)

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2013年11月30日(土) 京都大学百周年時計台記念館第17回京都大学地球環境フォーラム 「地球のつかい方」

コモンズというしくみ――自然、地域社会、そして復興

宮内泰介北海道大学大学院文学研究科教授(環境社会学)

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宮城県石巻市 北上川河口地域(追波湾)の岩ノリ採集

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宮城県石巻市 北上川河口地域(追波湾)のノリ(Porphyra sp.)採集

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宮城県石巻市 北上川河口地域(追波湾)のフノリ(Gloiopeltis spp.)採集

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宮城県石巻市 北上川河口地域(追波湾)のフノリ(Gloiopeltis spp.)採集

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ノリ採集に見る人と自然の相互作用

「山の石を砕いて、海岸のほうに転がしていく。その石には付きやすい。新しい石や岩には付きやすい」 (S.T.さん、2010.3.21)

「つぎ石工事はフノリのため。フノリは当時は農家でいえば米と同じだから」 (E.E.さん、2010.3.22)

「フノリなんかは、採らないと、余計な草がつく。ノラというノリみたいな草がついて、食用に適さなくなる。だから採った方がきれいなのがおがってくる」 E.E.さん、2009.8.5)

「フノリなんかね、繁殖時期に採ったやつを水で洗ってその水をじょうろで岩にかけるんですよ。そうすると、すぐ密着してしまうんだ。流れない」 (E.E.さん、2009.8.5)

「マツモの根っこは食べないので残しておく。根っこを残しておけばまた再生する」(S.T.さん、2010.3.21)→人と自然の相互作用

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宮城県石巻市 北上川河口地域 の自然資源

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宮城県・北上川河口地域のヨシ(葦)原

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宮城県石巻市 北上川河口地域のヨシ(葦)原

環境省「日本の音風景100選」

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宮城県石巻市 北上川河口地域のヨシ(葦)原

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宮城県・北上川河口地域のヨシ原

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ヨシ原の成り立ち

石巻への洪水の防止– 北上川大洪水(1910年)

国土交通省東北地方整備局ホームページより

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ヨシ原の成り立ち

北上川河口の開削工事– 1911年~1931年にかけて工事

国土交通省東北地方整備局ホームページより

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川沿いに集落と田畑

湿地

1915年(大正4年)

1km

河川改修前

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流路の掘削

北上川沿いに荒地(ヨシ)

田畑と集落の移転

1936年(昭和11年)

1km

河川改修後

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大正4年(1915年)

河川改修前1km

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田んぼの記憶=歴史性

昭和11年(1936年)

河川改修後1km

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『北上町史 通史編』2005より

現在のヨシ原エリア

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生物多様性のためのヨシ原の役割

• 水質浄化機能

– 濁りの沈殿除去

– 窒素や燐の吸収除去

– 有機物の分解

– 硝化および脱窒

• 生物多様性の場

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宮城県石巻市 北上川河口地域のヨシ(葦)原

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ヨシ刈りがヨシを守っている

• ヨシ刈りの生態学的意義

– 他種の侵入の防止

– 新芽の成長の促進

– 栄養塩類などの流出防止

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付加価値を付けた地域ビジネスとして

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タロイモ(Colocasia esculenta)

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サツマイモ

キャッサバlosi(Saccharum edule)

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ヤムイモの収穫

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kaufe(Pandanus sp. 和名アダン)

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kaoasi(Bambusa blumeana)

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kaoasi(Bambusa blumeana)を植える

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amau(Ficus copiosa)

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amau(Ficus copiosa)

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fasa(Vitex cofassus)

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fasa(Vitex cofassus)でカヌーを作る

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abalolo絞め殺しの木

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クスクス(Phalanger orientalis)

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人間と自然との間の多様な相互関係の蓄積

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ここまでのまとめ:自然とは何か?

• 「原生自然」は幻想

• 人間との相互作用にもとづく自然が重要

• 自然を守るとは、人間との相互作用を適切に保つこと/相互作用を「守る」こと

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自然

人間

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自然

人間

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自然

人間

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自然

人間 人間

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人間 人間

自然

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宮城県石巻市 北上川河口地域(追波湾)のノリ(Porphyra sp.)採集

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1 km

北上町

宮城県石巻市北上川河口地域(旧北上町)

岩のりの共同利用と共同管理のしくみ

集落 磯物

白浜 磯物はとっていない

小室 契約講によるヒジキの開口

大室契約講によるヒジキの開口と共同採集:契約講の収入に。磯物無断採集の罰則あり。

小泊契約講と漁協婦人部で開口。ヒジキは共同採集:契約講の収入

相川契約講によるヒジキの開口と共同採集:契約講の収入。ツノマタ、フノリは個人採集。

小指契約講によるヒジキの開口と共同採集:契約講の収入(今も):共同採集のあと個人採集になる

大指個人採集。現在青年部でヒジキ養殖に取り組む。

小滝契約講による開口。個人採集。双子島周辺にかぎりオープンアクセス。

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=東北地方の一部(宮城・山形)に分布する集落の自治組織–各世帯(本家)から長男が参加

–集落の中の決まり事を決める組織

–集落の中の相互扶助を担うたとえば

• 不幸や病人を抱える家に対する助力

• 屋根葺き替えの際の相互扶助

–共有財産を持ち、また独自財源をもつ• 山、土地、竹林、ヨシの権利など

「契約講」とは

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自然

人間 人間

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自然

社会のしくみ

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自然

組織があり、メンバーがいて、

ルールがある

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自然

コモンズ(地域共同管理のしくみ)

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自然資源の共同利用と共同管理のしくみ(コモンズ)

- 自然資源はそれぞれの資源の特徴に応じる形で多様に共同管理されている

自然資源の種類 管轄する社会組織 利益の還元先アワビ 漁協 世帯魚 漁協 世帯養殖(ワカメ,コンブ,ホタテ)

漁協 世帯

ウニ 契約講 世帯天然ワカメ・天然コンブ

契約講 契約講および世帯

海草採集 契約講 契約講および世帯国有林 国と村落組織 世帯部落林(共有林) 契約講 契約講および世帯炭焼き 契約講 世帯

ヤマガヤ(ススキ) 契約講 世帯

共有地 契約講 契約講および世帯

大室南部神楽保存会』FBページより

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人が使いながら守ってきた自然

宮城県石巻市 北上川河口地域のヨシ(葦)原

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地域社会が使いながら守ってきた自然

「契約講」

宮城県石巻市 北上川河口地域のヨシ(葦)原

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川沿いに集落と田畑

湿地

1915年(大正4年)

1km

河川改修前

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流路の掘削

北上川沿いに荒地(ヨシ)

田畑と集落の移転

1936年(昭和11年)

1km

河川改修後

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昭和初期の権利争い

1km

合意により各集落=契約講の権利に

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1km

昭和初期の権利争い

合意により各集落=契約講の権利に

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「契約講」(集落組織)が権利をもつ

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自然=社会のしくみ=文化=歴史

宮城県石巻市北上町 北上川河口地域のヨシ(葦)原

地域のコモンズ(共有財産)としてのヨシ原

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カンバドス

スペイン・カンバドスの干潟における採貝漁業

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カンバドス

スペイン・カンバドスの干潟における採貝漁業

• 【管理主体】カンバドス漁協の「歩く採貝漁業」部会が人と資源を管理している。部会の代表が今日採ってよい場所を決める。

• 【半栽培】貝の生産性を保つため(向上させるため)砂の入れ替えや種入れなどを行っている。

• 【ルール】共同作業の日(月3日)と各自の収穫の日(月15日)がある。共同作業の日の95%にちゃんと出ていて、かつ、収穫の日の70%にでていることが、次年もライセンスが得られる条件。

• 【ルール】毎月の収穫日のスケジュールを決め、政府の許可をもらう形。スケジュールは、部会代表が決める。

• 【ルール】収穫は全量、漁協の部会が集荷・販売

• 生態学の博士号をもったテクニカル・アシスタントがおり、資源管理などに助言している。

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カンバドス

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カンバドス

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ここまでのまとめ:自然とコモンズ

• 地域の中には、自然と人をつなぐ社会的なしくみ(コモンズ)がある。

• 地域組織、ルール など

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宮城県石巻市 北上川河口地域(追波湾)の岩ノリ採集

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宮城県石巻市北上町 北上川河口地域のヨシ(葦)原

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2011年3月11日東日本大震災

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2011年3月11日東日本大震災

石巻市旧北上町:•人口: 3,718人のうち、死者・行方不明265

名•全壊:633棟、半壊および一部損壊他:463棟(被害がなかったのは55棟のみ)。

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震災後の私たちの対応:集団高台移転支援

• 2011年10月~ 集団高台移転の合意形成への支援

• 役場、北海道大学、法政大学、日本建築家協会(JIA)、NPO法人パルシックの協働

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集団高台移転予定地(石巻市北上町相川)

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集団高台移転:合意形成へ向けての話し合い

• 2011年10~11月地区別ワークショップ

• 各地区内での話し合い

• 2011年12月地区別ワークショップ

• 各地区内での話し合い

• 2012年2月地区別ワークショップ

地区の話し合いの中から、住民の視点による要望がまとまってきた

役場からの応答

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集団高台移転:3つのステージ

1st stage

住んでいた場所が「災害危険区域」に指定されることへの合意(2011年11~12

月)

2nd stage

誰が集団移転に参加するか、また、どこに移転するかの決定(2012年1~2月)

3rd stage

移転先のデザインについての合意(2012年3月~)

Shirahama

Komuro

Ohmuro

Kodomari

AikawaKosashi

Ohsashi

Kotaki

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集団高台移転:合意形成へ向けての話し合い

• 役場、日本建築家協会(東北支部宮城地域会)、法政大学、北海道大学、PARCICの協働

• ファシリテーション(主に宮内)+説明(主に役場

と建築家)+議論(住民)→記録(主に北大・法政の学生)

• 行政区長ないし契約講長による招集

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集団高台移転:集落ごとの話し合い

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集団高台移転:2011年10~11月地区別ワークショップから

10/27~31

各地区での話し合いから

・住み慣れたこの土地で暮らしたい・コミュニティの復活とリニューアルに期待・地域のコミュニティが消滅してしまわないか不安・ここに住み続けたいが、これからの産業に対する不安があって、地域がどうなっていくかわからない・何人ここに残るかわからないと決められない・被害にあわなかった人たちも同じコミュニティの仲間として含めた地域づくりを・今までの集落のコミュニティを保って集団移転したい・みんなで暮らせれば不安はない・他地区と一緒になっても違和感はない・現在ここから離れている人でも戻ってきたいという人がいる

コミュニティの維持と不安

・自分も年をとってきたし、高齢者もいるのでできるだけ早く家に入りたい

・集団移転の答えを早くまとめないと、若くて継ぐものがない人は出ていってしまう進むなら、集団高台移転に参加したい・時間がかかると集団移転への気持ちが散り散りになってしまう・仮設住宅のように気をつかう環境が2年など長期的に続くと、だんだん疲れてくるのでは・早く方針が決まらないと動けない・あんまり遅い・早いスピードで造成がと、自分で造成を始めてしまう人もいるかもしれない

早く!

→自然環境を活かしたまちづくりの提案 (役場/JIA)→制度的なことは現状どうしようもない面もあるが、工夫はできる(役場/JIA)

・公共施設や郵便局・お店、集会所を・インフラ整備、火災の対応・避難場所や避難道路、道路の勾配・移転後の交通アクセス

学校・小学校がどこにできるのか・近くに学校がほしい・統合する?

合意形成・早く合意形成をして、色々要望できる体制を住民の側でも作りたい→合意形成ができ次第、用地交渉に進める(役場)・地域全体の将来図を描かないと

コミュニティと将来のまちづくり

・今から家を建てられない人には災害公営住宅がよい・公営住宅が建った場合の抽選方法は?→全市から抽選になると他地区からも入ってくるかも十三浜地区の人を優先できればいいが...・もといた人たちがこの地域に戻ってくるためにも公営住宅が必要

災害公営住宅の可能性と課題

・わかりやすく縮尺の大きい図面を作ってほしい・風よけの防風林を残してほしい・使える制度や事業について、わかりやすく解説してもらう機会がほしい・集団移転でも、気をつかわないように隣の家との間にスペースがほしい

・土地の買取り価格(坪単価)を具体的に知りたい→土地の払い下げの値段は時価(市場価格)の予定(役場)

・借地代はいくらになるのか・土地の支払い方法がどうなるのか不安・お金の情報が入ってこず、仕組みがわかりづらい・収入が不安定、二重三重ローン・漁業資材にお金がかかるのに、家や土地を買う資金が借りられるか不安

お金の不安

要望

・作業場や大事な資材を置く納屋を建てるのに100坪じゃ足りない。200~300坪は必要・多世帯同居だと家や駐車スペースも広くなってくる・漁業専業でなくても100坪以上の広さが欲しい・海で使うものだから臭いもするし、宅地の狭い所では資材を置いておけない

打開案・世帯分離して100坪ずつ土地を使うことができる可能あり(役場)→2世帯住宅ではなく、家は2つ必要

・家の1階部分を作業スペースにすることもできる・集団移転地の近くの外の土地に使えるところがあれば、そこに作業場を建てられるのでは

宅地100坪制限の問題/作業場をどこに?

作業場・共同作業場だと、家によって仕事の時間帯が異なるので思うように使えない・それぞれの家が今後どう漁業を続けていくかわからない、各家で独立してやりたい・元の土地が作業場として使えるなら100坪でもいける?・漁具を流される危険性のある所に置きたくない

従前地・跡地をどうするのか・跡地は買い上げてもらえるのか?・跡地にまだ瓦礫が残っていて手作業で取る必要がある・小屋を建てて以前の家のものを置きたい・作業場を建てたい・避難できる道路さえ整備されれば活用したい・工場や楽しみでやっていた田畑の跡地はどうなる?

原則、集団高台移転を希望

かかる費用によっては、自分の土地に自力での移転を考えている人も

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集団高台移転:女性だけの話し合い

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かわら版を作って被災世帯に全戸配布

地区の話し合いの中から、住民の視点によるQ&Aができた

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被災地の中でも早い集団移転

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契約講と高台移転

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被災地の中でも早い集団移転

集団高台移転 漁業復興

市民社会

契約講

日本建築家協会

大学

政府

漁協

NPO

自治体

協働の「成功」

• 自然資源管理を軸とした伝統的な地域組織と他の関係者が結びつくことで新しい事態に対応

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被災地の中でも早い集団移転

• 自然資源管理を軸とした地域組織・地域のまとまりの強さ

→意見集約が相対的に容易。(それでも簡単にはまとまらない

が…)

• 「コミュニティ」という言葉が住民から頻繁に聞かれた。

• 「ここで一緒に暮らしたい」

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お祭りや神楽の復興の取り組み

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第3ステージ:移転地のデザインについての話し合いへ

Shirahama

Komuro

Ohmuro

Kodomari

AikawaKosashi

Ohsashi

Kotaki

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高台集団移転の造成工事が開始される

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復興へ向けて

復興の力||

地域の力||

自然とのつながりをもとにした地域のつながり(コモンズ)

大室南部神楽保存会』FBページより

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コモンズというしくみ――自然、地域社会、そして復興

本日の話のまとめ:

1. 自然と人との相互作用が重要

2. 地域の中には、自然と人をつなぐ社会的なしくみがある。

3. そうした社会的なしくみは復興にも役立つ