東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻:授業:金融レジリエンス情報学:2013年10月10日...

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1 スパークス・アセット・マネジメント 東京大学大学院工学系研究科 水田孝信 金融レジリエンス情報学 2013/10/10

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東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻:授業:金融レジリエンス情報学:2013年10月10日 資料

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スパークス・アセット・マネジメント 東京大学大学院工学系研究科

水田孝信

金融レジリエンス情報学 2013/10/10

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本講演の内容は講演者が所属する組織を代表するものではなく、

すべては個人的な見解であります。

本講演の内容は講演者が所属する組織を代表するものではなく、

すべては個人的な見解であります。

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“金融”ってどんなイメージですか? 儲けがすべてのマネーゲーム?ギャンブル? 高速取引は遊んでるだけ? 社会の役に立ってない虚業?

実は金融で働く人たちの中で ”カネを増やすだけ”の仕事をしているのは少数

そもそも金融とは何なのか?お金とは何なのか? 社会での役割は何なのか? 高度な技術が導入されてきた背景は?

このあたりをお話します。

はじめに

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僕たちの大事な年金、なんで危険な株とか買って 勝負に出てるの?

年金基金が やっていること

こんな疑問にもお答えします

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機関投資家の株式投資って どんなことをやってるの?

なぜ、企業業績と株価が関係あるの? 具体的にお話します

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金融業界で高度な情報技術を 使う分野はどこなの?

他の講師が中身の詳細をお話するんだと思います 私は浅く分野そのものの存在を紹介します

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本日のお話は以下の3つ

金融業界での情報技術導入が進んでいます とはいえ、全体では文系色の強い業界であることに 変わりはないでしょう 本日はあえて、金融のど真ん中の一例を (1)、(2)でお話しし、(3)はさらっと話します (3)の詳細は他の講師によって行われるでしょう

(1)そもそも金融とは? (2)機関投資家の株式投資手法 (3)最先端情報技術が使われている領域

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金融、っといってもいろいろですが、 私が資産運用会社で株式投資にかかわっているため、 株式投資の話が中心になります この授業を通しても株式や為替、オプションなどへの 投資の話が多く、少々偏っています。 銀行、リース、クレジットカードなどの話は あんまりありません。 (11月21日だけ銀行の話が中心となるようです。)

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2000年 気象大学校卒業 2002年 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修士課程修了 研究内容:宇宙空間プラズマのコンピュータシミュレーション 2004年 同専攻博士課程を中退 同年 スパークス・アセット・マネジメントに入社 バックオフィス業務 (ファンドの純資産の計算や取引決済の指図など) 2005年 ボトムアップ・リサーチ・アナリスト (会社の社長に取材したりと足で稼ぐ企業調査) 2006年 クオンツ・アナリスト (市場の定量分析を用いた投資) 2008年 学術界にも進出 (主に人工知能学会) 2010年 ファンドマネージャー(クオンツ・ほか) 2011年 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻博士課程 社会人をしながら入学 研究内容:人工市場を用いた金融規制のシミュレーション 2007年 日本証券アナリスト協会検定会員 2009年 中小企業診断士

自己紹介

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(1) そもそも金融とは?

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1-1. カネと金融

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人類は古代人のときより,高度な役割分担により,他の生物を凌駕 魚を取るのが得意なものは魚を取り, 木の実を集めるのが得意なものは木の実を集め,物々交換 より得意なことに集中し役割分担 時には,魚がまったくとれず,木の実をもらって飢えをしのいだ 物体自体には価値が無いが仮想的に価値があると皆で約束した物 “カネ”と木の実をいったん交換 その物を返してもらう際に魚を渡す ⇒ “カネ” お金が仲介することにより → 多くの種類の物やサービスの交換がスムーズ → 時間を越えた価値の交換 過去役割分担で活躍した人が未来役割分担で活躍するだろう人に, 活躍が実現する前に価値を渡すことが可能

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物体自体には価値が無いが

仮想的に価値があると皆で約束した物

== カネ ==

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すぐにお金が必要な人と、しばらく使わない人をむすぶ

Aさん 昔大活躍の老人 お金を多く持っている しばらく使い道がない

Bさん 新たに漁業を始めたい 道具もお金も持っていない 体力とヤル気はある

Cさん 「Bさんは今お金があれば、大活躍しますよ。 Aさん、そのしばらく使わないお金、託してみませんか?」

探してくる 探してくる

Aさんは”分け前”を受け取り、Bさんは支払う、 Cさんは少し手数料をもらう

Cさん・・金融業者

「金融」

金融は人類が協力し合うための大事な”道具”・”手段” “目的”そのものでは決してない!

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1次市場

企業

投資家

証券会社

事業資金

株式

仲介

配当(分け前)

現代の株式市場では、、、 1次市場(新品)、2次市場(中古)

新しいことを始めるには出費が先、儲けも不透明 分け前を狙った投資が必要 (大航海時代の例) これによりイノベーションが生まれる

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取引所

買う

株式 投資をやめたい

投資家

売る

投資を始めたい 投資家

企業

配当 (分け前)

短期間で仕入れ・転売 投機家

流動性 供給

2次市場(上場市場)

価格発見

流動性 享受

流動性 享受

投資は永久にするわけでない 辞めるときに簡単に転売できることが重要 でなければそもそも1次市場で投資できない (IT企業の例) ⇒ 2次市場で容易に売買できること(流動性)が 1次市場を成立させ、社会にイノベーションを提供

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(1)価値の測定 ・・・ 目利き “分け前”はいくらなのか?

山分け型: 取れた魚の量で決定: 株式 返済型: 渡したお金の量で決定: 債券・融資 (2)流動性の確保 ・・・ 苦労せず売買できる 株式・債券を買ったときと売ったときの価格差が小さい ⇒ 投資を始めたりやめたりするコストが小さい (中古の本の例) (3)お金の価値の維持 ・・・ 金融の大前提 お金は“皆で価値を約束しただけ” ⇔ 幻想 その価値の維持はとっっっっても難しい 国が財政難 ⇒ お金を刷る ⇒ お金の価値が減る ⇒ やっぱり財政難&一般市民の生活が混乱

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1-2. 価値の保存

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明日使うカネ、今月中に使うカネ、 それだったら、こんな悩みはないでしょう。 しかし、50年後に使うカネ、だったらどうでしょうか? 例えば、年金基金は、20代に払い込んだカネを、 70代に引き出して使うわけです。 50年間、カネの価値を守らないといけません。 タンスに入れておいて大丈夫でしょうか?

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物体自体には価値が無いが

仮想的に価値があると皆で約束した物

== カネ ==

現代の先進国では、 政府からある程度独立した中央銀行が

カネの価値の維持を行う

守ってくれるの?誰が? 国: 借金を手っ取り早く返したいから

カネをいっぱい作って返す⇒価値の希薄化⇒インフレーション

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少し変わったインフレの説明 政府が完全自由にカネを印刷できたら、、

所得が減少し不満

面倒だから、 毎月100万あげるよ、全員に どうせいくらでも印刷できるし

国民

政府

時給1,000円とかで 働かなくなる

国民 バイトが時給50,000円とか 牛丼も10,000円くらいにしな

いと赤字になっちゃう

牛丼屋

物価の 上昇

100万もらっても 物が高いからあんまり買えない

⇒相対的に所得減少

国民

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22 http://ja.wikipedia.org/wiki/トルコリラ より

年 レート 年 レート

1974年 14 1990年 2,993

1975年 15 1991年 5,083

1976年 17 1992年 8,547

1977年 19 1993年 14,494

1978年 25 1994年 38,411

1979年 35 1995年 59,322

1980年 89 1996年 107,182

1981年 132 1997年 204,860

1982年 185 1998年 313,500

1983年 280 1999年 540,098

1984年 443 2000年 642,840

1985年 574 2001年 1,180,000

1986年 756 2002年 1,576,711

1987年 1,018 2003年 1,410,000

1988年 1,814 2004年 1,511,631

1989年 2,311

トルコのインフレ: 1ドルあたりトルコリラ

銀行預金金利40%くらいあっても 実質的に目減り

タンス預金なんかとんでもない!

しばらく使わないカネを どうやって保管すればいいの?

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米国における物価(インフレ)調整後価値の変動

カネの価値が一定に保たれることのほうがマレだった

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ただの紙くずなんじゃないだろうか、、、、 いいえ、今のところ、 紙くずではないと、皆が信じていますよ。

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価値が変わりにくいもの

時給1,000円とかで 働かなくなる

国民 バイトが時給50,000円とか 牛丼も10,000円くらいにしな

いと赤字になっちゃう

牛丼屋

企業

投資家

事業資金

株式

配当(分け前)

売れる牛丼の数 牛丼1つあたりの利益率

一定

価値が一定

インフレでカネの価値が1/100 物価が100倍: 牛丼300円⇒30,000円

配当は価値が一定 ⇒ “名目”では100倍

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いろいろな資産

キャッシュ: インフレが来たらどうしよう? 株式: 会社が倒産したらどうしよう? 分け前をどのくらいくれるか分からない 債券: 返してくれなかったらどうしよう? インフレに対応できるの? 円: 円安になったらどうしよう? 外貨: 円高になったらどうしよう? 不動産: 液状化したらどうしよう?沈没したらどうしよう? 耐震偽造があったらどうしよう? 取引所がないけど大丈夫? 物そのもの(商品): 金、原油、牛丼、、、 付加価値がつかない 代替品がでたらどうしよう? 保管しづらいし大変 50年単位になると何が起こるか分からない、予想できない ⇒ “心配だからいろいろ持っておく”がリスク回避方法

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僕たちの大事な年金、なんで危険な株とか買って 勝負に出てるの?

年金基金が やっていること

全部キャッシュで持っているほうがよっぽど危険 それは「デフレが永久に終わらない」に 全額賭けているようなもの

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政府と中央銀行の微妙な関係

借金全部引き受けてよ、 いくらでもカネを印刷できるんでしょ?

独立性が弱い

政府 中央銀行

独立性が強すぎ

了解~

最適な独立性の強さが未だに良く分からない

面倒だから 印刷量はサイコロで決めるか

俺たち、選挙とかないし

政府 中央銀行

カネ(紙幣)が足りなくて 国民が困っているんだけど!

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(2) 機関投資家の株式投資手法

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2-1. 資本コスト

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以下の三つはどれが一番高い?

(1) 1万円札

(2) 1年後に日本政府から1万円札もらえる券

(3) 1年後に水田から1万円札もらえる券

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以下の三つはどれが一番高い?

たぶん、(1) > (2) > (3)

(1)-(2) = 日本政府にお金を貸した場合の金利 (1)-(3) = 水田にお金を貸した場合の金利 (2)-(3) = 水田の(日本政府に対する)信用リスク

(1) 1万円札 (2) 1年後に日本政府から1万円もらえる券 (3) 1年後に水田から1万円もらえる券

時間を待たされる分、リスクがある分、 少し多めに返してもらいたいものです。

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資本コストとROE(Return on Equity)

1次市場

企業

投資家

証券会社

事業資金

株式

仲介

配当(分け前)

資本コスト(%) = 要求したい分け前 / 事業資金 ROE(%) = 実際の分け前 / 事業資金

通常は、実際には配当しなかった部分も含めた純粋な利益、純利益をベースに考えます。 株主資本は初めの事業資金+配当しなかった過去の純利益の積み上げです。

資本コスト(%) = 要求したい純利益 / 株主資本 ROE(%) = 純利益 / 株主資本

いつでも使える式として、

株式:分け前が約束されていない ⇔ 資本コスト ≠ ROE この大小関係が重要!

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資本コストとROE(Return on Equity)

資本コスト(r) = 要求したい純利益 / 株主資本 ROE = 純利益 / 株主資本

ROE > r : 要求以上に利益を出す 株主資本以上の価値がある ROE = r : 要求通りの利益を出す 株主資本と同じくらいの価値 ROE < r : 要求以下の利益しか出せない 他の企業に投資したい 株主資本を毀損している、これを下回る価値しかない

また後で説明します。

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2-2. 企業価値

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その会社はいったいいくらなのか?

毎年1兆円くらい配当を出し続けそうな会社たち

いくらならこの会社を買いますか? 1兆円は安いような、、、100兆円は高いような、、、 1兆円っていっても確実じゃないんでしょ?

A社: 新大陸を発見してとってきた宝を売ります 事業資金として10兆円必要です B社: 通勤電車を運営します 事業資金として10兆円必要です

A社は資本コスト高めに要求したい、、、。 B社は確実そうだから低めでもいいかも、、、。 ⇒ A社のほうがB社より安そうだね

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その会社はいったいいくらなのか?

3

3

2

21

111 r

D

r

D

r

DIV

IV: (買う人が考える)ファンダメンタル価値:実態価値 MV: 取引所などで売買されている価格:取引価格、時価総額

予想される毎年もらえる(分け前)配当Dtを資本コストで 割り引いて全部足す ⇒ 配当割引モデル

Dtが不確実ならrは高めに設定したいよね、、、

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その会社はいったいいくらなのか?

予想される毎年入ってくる現金みたいなもの(FCFt)を 資本コストで割り引いて全部足す ⇒ ディスカウントキャッシュフローモデル

3

3

2

21

111 r

FCF

r

FCF

r

FCFIV

いずれにせよ、問題点 そんな先の配当とかFCFとか予想するの無理 だいぶ先の項の値も大きくて遠い未来の予想の依存度大 r依存度が高すぎてどうしようもない

はっきり言って、実務上、ほとんど使用不可能

(ファイナンスの教科書とかだとここまでしか載ってなくて困る、、、、)

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3

302

20

100

111 r

rROEB

r

rROEB

r

rROEBBIV

EBO(Edward-Bell-Ohlson)モデル

Ohlson, J. A., “Earnings, Book Values, and Dividends in Equity Valuation, ” Contemporary Accounting Research, Vol.11, No.2 (Spring 1995), pp.661-687.

Ohlson, 1995で初めて提示

B0: 現在の株主資本

先の式を(ある程度の仮定をおき)変形していくとこうなる

実務的に使える 1項目が大きくて、2項目以降が小さい ROE=rという並みの利益を出す年の項はゼロになる 現在の株主資本からどれだけ積み上げるか(毀損するか) ここからの式変形で現場で使われている式が出てくる

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ROE > r : 要求以上に利益を出す 株主資本以上の価値がある ROE = r : 要求通りの利益を出す 株主資本と同じくらいの価値 ROE < r : 要求以下の利益しか出せない 他の企業に投資したい 株主資本を毀損している、これを下回る価値しかない

3

302

20

100

111 r

rROEB

r

rROEB

r

rROEBBIV

ウォーレン・バフェットは、

高くて安定したROEを維持できる会社を好む

EBO(Edward-Bell-Ohlson)モデル

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株主資本 既にある

企業価値

割引後でも積みあがる価値

割引後でも積みあがる価値

実態

[ROE – r]%

の比率で積みあがる

EBO(Edward-Bell-Ohlson)モデル

これまでに積み上げた価値(株主資本)が大きいのか

これから積み上げる価値(ROE-r部分)が大きいのか

企業の特徴を示す

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2-3. 機関投資家の 株式投資実務

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r

ROEBIV 0

rPERrB

E

MV

B

r

ROE

MV

B

MV

IV 111

0

00

rPERMV

IV 11

現場で使う式

IV: (買う人が考える)ファンダメンタル価値:実態価値 MV: 取引所などで売買されている価格:取引価格、時価総額 ROE: 継続的に維持できる平均的なROE

E: 純利益、ROE = E / B0 、PER = MV / E

<>: 競合他社の平均値(rが同じくらいの企業群)

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PER

PER

rPERMV

IV 11

rPERMV

IV 11

PER

r1

PER

PER

IV

MV

現場で使う式

<>ではIV=MVと仮定 ⇒ 業界全体では実態価値で取引されている

よって

この業界のrを市場価格から 逆算して求めたことになる

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PER

PER

IV

MV

競合平均(業界平均)のPERより低いと安い(安く買える)

PER = 時価総額 / 純利益(E) 予想するのは、E と PERが<PER>と同じでよいかどうか

== E == その企業が継続的に出せそうな利益が、どれくらいか それは、次の決算発表で上がりそうか下がりそうか それは、他の人が思っているより高いか安いか 他の人がそれに気づくイベントがあるかどうか? == PER == (「バリュエーションがつく」、とか言う) 業界平均より実はもっと成長するかどうか?(rが下がる) 業界平均よりは実はもっとリスクが高いかどうか?(rが上がる) それは、他の人が思っているより高いか低いか 他の人がそれに気づくイベントがあるかどうか?

PER

PER

業界平均

予想

実態価値

取引価格

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ROEが高いかどうか?

儲かってるよね ビジネスモデルが強い 利益の質が良い (成長企業)

株主資本 既にある

企業価値

割引後でも積みあがる価値

割引後でも積みあがる価値

実態

[ROE – r]%

の比率で積みあがる

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PBR = MV / B0

ROEが業界平均より高ければ、株主資本より高くても買っていいよ ROEが業界平均より低かったり赤字が続きそうだったら、 株主資本より安くても買いたくない ⇒ 解散して株主資本を返したほうがマシですか?

株主資本 既にある

企業価値

割引後でも積みあがる価値

割引後でも積みあがる価値

実態

[ROE – r]%

の比率で積みあがる

r

ROEBIV 0

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機関投資家の株式投資実務 もっとも主流のボトムアップリサーチでは

PER、PBR、ROEという指標を主に使う 同業とこれらを比べる 利益がどれくらいなりそうか、その継続性はどんなものか、 それを脅かすリスクは何かを調べる

・ 財務諸表を良く見る ・ 会社の社長やIR(投資家向け広報)にいろいろ聞く ・ 工場や店舗を見に行く ・ 会社の顧客の動向を調べる ・ いろいろな統計を調べる

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7:45 出社:米国の株式市場やニュースのチェックを行う 8:15 朝会:アナリストやファンドマネージャーが集まり、 昨日の企業調査を報告しあう 9:00 自席:今日調べる企業の分析、質問項目の整理 10:00 自席:企業AのIR(投資家向け広報)に電話で質問 10:20 アジアの他拠点とのテレフォンカンファレンス 企業業績などについて情報交換しあう 11:30 企業Bを訪問し社長と面会し取材 13:00 企業Cを訪問しIR(投資家向け広報)と面会し取材 14:30 証券会社主催のセミナーに参加 証券会社の企業アナリストや 業界担当の某省庁官僚の話しを聞く 16:00 企業Dの決算説明会に出席 17:30 帰社:取材内容のまとめ、社内報告書の執筆 株価のチェック、他のアナリストと意見交換など

隣に座っているアナリストS君の典型的なある一日

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その他の手法および発注業務

発注

マーケットメーカー(狭義HFT)裁定取引

(アービトラージ)イベント待ち(?)

人間 執行トレーダーボトムアップ

リサーチクオンツ

投資判断

アクティブ(収益を狙う)投

投機

人間

機械

デイトレーダーディーラー

機械 パッシブ(指数どおり)

パッシブ(狭義)アルゴリズム

トレード

セールストレーダー

バイサイドトレーダー

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デイトレーダー 個人の短期売買、信用取引が多い ディーラー 証券会社や銀行が自社のお金で社員が短期売買を行う 単純に利益追求の場合が多いがそうでない場合もある 利益はトレーディング収益と呼ばれることがある マーケットメーカー ひたすら99円の買い100円の売りを出し続けるような戦略 証券会社や専門業者が自社のお金で利益目的で行うが 市場が盛りあげるために(頼まれてor自ら)行うこともある 裁定取引 99円で買ってきたものを瞬時に他で100円で売る 取引所間や現物・先物・オプション間、ETF・現物間などいろいろ 証券会社や専門業者が自社のお金で利益目的で行う イベント待ち(?) (いまいち正体不明)決算発表や不祥事、誤発注を待っている? 証券会社や専門業者が自社のお金で利益目的で行う

投機

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発注業務は証券会社・銀行、 投資判断は資産運用会社が行うことが多い 両者の取次ぎを行うのが、セールストレーダー(証券会社側)と バイサイドトレーダー(資産運用会社側) 発注業務 委託された大きな注文を細かく分解して少しづつ出す 分解の作業は証券会社・銀行側がやる場合が多い → 12月19日の授業で詳しく説明があると思われます。 人間と機械でやっていることは本質的には違いません

(機関投資家の)投資・発注業務

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クオンツ 多くの場合長期投資、一ヶ月に一度少し入れ替える程度 PERやPBR、ROEなどを使ったモデルと リスク最適化のモデルを用いて、 機械的に銘柄を数百銘柄程度選び、ポートフォリオを組む パッシブ 日経平均やTOPIXなど指数と同じ動きをするポートフォリオを作る 指数に完全にあわせるのは不可能:いろいろな技術が必要 銘柄選択は指数どおりでも議決権行使は判断を必要とする ↑大量の銘柄の議決権行使をどうやってさばくか 指数そのものを作ることも ← スマート・ベータ(インデックス) 高度な理数工学的なアプローチで作られた指数も多い ↑最小分散ポートフォリオなど

(機関投資家の)投資・投資判断

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(3) 最先端情報技術が 使われている領域

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3-1. 取引所の高速化

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100円で買い

取引所A

株式

100円で買い

取引所B

株式

99円の売り

取引所C

株式 短期間で 仕入れ・転売

投機家

99円で 買う

100円で 売る

高速

低速

少しでも 早く売りたい

取引所が多数存在 ⇒ 競争 ⇒ より流動性が高い取引所 投資家に選んでもらえる取引所

他が同じ条件なら注文処理が早い取引所に注文 何度も取引できる、機会を逃したくない

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大量の 買い注文

証券 会社

取引所

手の内が バレないように 少しづつ買う

様々な 発注

手の内を読んで 高頻度に売買

短期間で 仕入れ・転売

投機家

投資家

情報技術 自動化

株式 流動性 供給

流動性 享受

情報技術 自動化

東京証券取引所,arrowhead: 5msの注文応答時間、3msの情報配信スピード ⇒ 人間には無理

最先端IT技術を駆使した取引に ⇒ 更なる高い流動性 いつでも投資を始められ、いつでも投資をやめられる そのコスト(買いと売りの価格差)は0.1%程度の世界に

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3-2. 最先端技術が必要な領域

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(1)価値の測定 ・・・ 目利き “分け前”はいくらなのか?

山分け型: 取れた魚の量で決定: 株式 返済型: 渡したお金の量で決定: 債券・融資 (2)流動性の確保 ・・・ 苦労せず売買できる 株式・債券を買ったときと売ったときの価格差が小さい ⇒ 投資を始めたりやめたりするコストが小さい (中古の本の例) (3)お金の価値の維持 ・・・ 金融の大前提 お金は“皆で価値を約束しただけ” ⇔ 幻想 その価値の維持はとっっっっても難しい 国が財政難 ⇒ お金を刷る ⇒ お金の価値が減る ⇒ やっぱり財政難&一般市民の生活が混乱

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構成の都合上 (2)から説明します

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(2) 流動性の確保

●アルゴリズムトレード: 自動取引システム開発、セルサイド・トレーダー ●自己売買取引: ディーラー、マーケットメイカー、 アービトラージ

証券会社や銀行が顧客の注文を低コストで取り次ぎ 自己資金で流動性リスクを提供しリターンを獲得

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●アルゴリズムトレード: 自動取引システム開発、セルサイド・トレーダー

もっとも高度な数理工学を用いる領域

ファンド・口座 大量の

買い注文

年金

資産運用会社

証券会社 など

取引所

少しづつ 発注(執行) ⇒ コンピュータで 自動化

信託銀行

発注

発注

他の人にバレないように大量に株を買いたい ⇒ バレると値段がつりあがり、高い値段で売りつけられる

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取引所の高速化とアルゴ(機械)同士の戦い

大量の 買い注文

アルゴ 取引所

少しづつ 発注 ⇒ 対峙しているアルゴは何者か? ⇒ 相手の出方次第で執行戦略変更

発注

発注

東京証券取引所(arrowhead): 5msの注文応答時間、3msの情報配信スピード ⇒ 人間には無理

アルゴ

少しでも有利になるように取引所の中に アルゴサーバーを置かせてもらう ⇒ コロケーション

大量の 売り注文

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●自己売買取引: ディーラー、マーケットメイカー、 アービトラージ ・ ディーラー 証券会社の自己資金を使って短期売買 ⇒ 単純に利益を出すことが目的 “流動性供給”という側面もある ・マーケットメイカー 売りと買いの注文を同時に常に出しておく 買った株はちょっとだけ高くすぐに売る ⇒流動性供給が主たる目的だが利益も出せる ・アービトラージ(裁定取引) 実際には同じ価格のものを違う場所で少し違う値段で 売買し差額が利益となる 東証と大証、先物と現物、ETFと現物、、、など ⇒利益目的だが流動性向上に大きく貢献

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(1) 価値の測定

●デリバティブの値段付け: 金融商品開発 ●保険金の決定: アクチュアリー ●テールリスクの測定・ヘッジ: リスク管理 ●ポートフォリオマネジメント: クオンツファンドマネージャー、コンサルタント

資産運用会社や保険会社、証券会社が金融商品を 作成しそのさいの適切な販売価格を決めたり、 想定外のことが起きないようにリスクを管理する

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●デリバティブの値段付け: 金融商品開発

デリバティブ=金融派生商品とは? 原資産を特別な価格で取引する権利 例: 日経平均を1万円で買う権利 これは一体いくらなの? ⇒ 値段付け(バリュエーション) (日経平均が激しく動けばそこそこ価値があるが、 ほとんど動かないのであれば価値がない) ・特殊なオプションを作って売る、そのときの販売価格の計算 ・市場で取引されている値段がおかしいオプションを売買して儲ける もっとも簡単な場合について、確率微分方程式を使って 解析解をもとめたショールズやマートンはノーベル経済を 1997年(!)に受賞。 ⇒ 正規分布を仮定、自ら運用するファンドは2度失敗

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オプションの損益 原資産の価格がその価格になる確率がどれくらいかによって、 このオプションの価値が変ってくる

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エキゾチック・オプション 原資産の価格の経路によって価格が変る 経路依存するため値段付けの解析解を求めるのが 容易ではない ⇒ 今でも最先端の研究分野 実務上はモンテカルロ・シミュレーションを使用 このオプションが普及し始めたころ、価格付けニーズが 増大。理工系出身者にとってたいしたシミュレーションで はないが、これが出来る人の求人が急増した。

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3ヵ月後に80円で買う権利 ただし一度でも100円を超えると、紙くず ⇒ 妥当なオプション価格の算出は困難 同じ価格で始まり、同じ価格で終わっても ケースAは紙くず、ケースBは利益あり

価格

時間

100円

80円

原資産価格 ケースA

原資産価格 ケースB

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●保険金の決定: アクチュアリー

保険 例)入院したら10,000円くれる権利 この保険をいくらで販売すれば良いか? 保険会社が破綻しないように、かつ価格競争に 負けないように価格設定しなければならない 確率微分方程式をバリバリ使う ⇒アクチュアリー: 保険・年金の数理専門家の資格 保険・年金の作成には有資格者の 確認印が必要

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●テールリスクの測定・ヘッジ: リスク管理

日経平均やポートフォリオ(株や債券の集まり)の騰落率の分布 どのくらい負けうるのか? ファットテールになっていて正規分布で考えるよりも大損することがある

(1) ボラティリティ ・・・・ 標準偏差

(2) 期待ショートフォール ・・・ ファットテールの面積

騰落率

頻度

下落 上昇

(1) (1)

95%点

(2)ここの

面積を減らす

正規分布

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●ポートフォリオマネジメント: クオンツファンドマネージャー

日経平均と全く同じ騰落率となるポートフォリオ ⇒ パッシブファンド もっと手の込んだパッシブファンドが出始めている 最小分散ポートフォリオ: リスクがもっとも小さくなるような銘柄の組み合わせを探す 最小期待ショートフォールポートフォリオ: 期待ショートフォールが最小となるような銘柄の組み合わせ 上場4000銘柄の相関を考慮した組み合わせ ⇒ 一見、NP困難だが、高速に解く方法が研究: 計算方法自体が最先端の研究課題に

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コンサルタント

年金基金がどのような運用を行うべきか ・給付額と納付額に応じたもの ⇒ サープラスリスク ・インフレリスクをおさえつつポートフォリオの騰落率の リスクもおさえる ⇒ アセットアロケーション 株と債券は相関が負なので組み合わせるとリスク軽減 ⇒ 実は金融危機時は相関が上昇する! 線形的な解析では扱えない領域に ・テールリスクだけをおさえたい! 銀行融資に使う倒産確率モデル ・各企業の定量データと倒産実績の関連性を調べる (データマイニング) ・倒産リスク(信用リスク)に応じて貸付金利を決める ・銀行のグループ総研が開発している場合が多い

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(3) お金の価値の維持

●金融政策のための基礎研究: 日銀などの研究員 ●規制当局や取引所の規制研究: 当局職員など

お金は“皆で価値を約束しただけ” ⇔ 幻想 その価値の維持はとっっっっても難しい

国が財政難⇒お金を刷る⇒お金の価値が減る ⇒やっぱり財政難&一般市民の生活が混乱