20121220 matsumoto
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26-Jun-2015 -
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Business
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ソーシャルゲームに学ぶ 電子書籍の売り方(近未来編)
まつもとあつし(ペイドコンテンツ研究会2012/12/20)
まつもとです
ジャーナリスト/コンテンツプロデューサー
アスキー・ITmedia・ダ・ヴィンチなどの媒体に寄稿・連載を行っています。
著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア死ぬメディア』『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(いずれもアスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフトー映像の新しい消費形態』(NTT出版)『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?』(マイナビ新書・コグレマサト氏との共著)など
東京大学情報学環博士課程在籍
ITベンチャー・出版社・広告代理店を経験。ソーシャルゲームやショートアニメなどのプロデュースを行ったことも。
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はじめに
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【オーダー】
「ソーシャルゲームの仕組み」から電子書籍の売り方を考察できないか?
それ結構無茶ぶりです(汗)
困った・・・ ん?・・・でも結構面白いテーマかも?
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新書(4月発売)に何を書いたのか?
「元年とうたわれながらも、2010年まで結局市場はそれほど広がらなかった電子書
籍に対して、ソーシャルゲームのそれはまさに元年と呼ぶにふさわしい伸びを見せた。」
時まさにコンプガチャ規制前夜
3500億円規模まで成長しているソーシャルゲーム(パッケージゲームを抜く)
CESA(一般社団法人コンピュータエンターテ
インメント協会)が行った調査によると、モバゲー、GREEとも無課金で遊び続けているユーザーが約75%を占める。残りの15%前後
のユーザーにいかにアイテムを買ってもらうかに、各ゲーム提供者は知恵を絞っている。
ゲーム内で使える強力なレアアイテムを、ゲーム外の「ガチャ」で当てることができる。
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コンプガチャと射幸性
アイドルマスターシンデレラガールズ
コンプガチャシミュレーター ver.0.93 http://www.ani-ban.info/aimas/comp_sim/
5月に消費者庁はコンプガ
チャを景表法の「絵合わせ」と判断。業界は自主規制へ。
現在は、絵合わせ要素を排したインデックスガチャなどが登場。
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注:射幸性自体が「悪」ではない。
デジタルで儲けるって・・・
音楽(例:Music Unlimited)、映像(例:Hulu)、そして書籍(例:BookPass)もが定額制に向かう。
そんな中、売上を伸ばすソーシャルゲーム(ガチャ)。
そこにはどんな違いが?
そういえば、ゲームってもともと物語的だったが、ソーシャルゲームってエンディングすらない、ストーリーが捨象された世界・・・。
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「物語」はどこへ?
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ドラクエ(1986)
ドラクエⅢ(1988)
512KB(待受画像1枚分)のROMに全てのデータを凝縮
ROMは2MBに。ル
イーダの酒場でのギャンブル的要素など
テキストADV ≒電子書籍
ソーシャルゲーム
FPS
ゲーム機の高スペック化・消費の多様化
射幸的面白さ
射幸的面白さ
3DCGスポーツ
物語への没入
ソシャゲに何を学べるか?
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①いわゆる「ソーシャル」的なサービスであること
②ゲーミフィケーションを支える行動分析と運営
Social Game
ソーシャルメディアと書籍
「ソーシャルリーディング」
しかし「読書は1人でするもの」という反論も。
読み進める段階では確かにそうかも。しかし、読後の感想がネットに投稿されたことをきっかけにブレークする例も。
TVアニメのTwitter実況(同期)、ニコニコ動画のコメント(疑似同期)のように、読書も、みなで楽しむ、あるいは学ぶもの(≒輪読)になる?
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行動分析
ゲーミフィケーション。読書体験は著者が提供するもの(ベソス氏)
しかし、行動分析は紙(アナログ)の時代と異なり、デジタルであれば様々な指標(KPI=重要業績評価指標)が取れるはず。
ソーシャルゲームの徹底した行動分析とそれに即した運営には学ぶべき点が多い。
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変わる「作品」作り
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ASCII.jp:『ドラゴンコレクション』が拓いたソーシャルコンテンツの一里塚 http://ascii.jp/elem/000/000/693/693409/
• パッケージゲームのノウハウでは上手く行かず、悔しい思いも。
• 徹底的にソーシャルゲームの方法論を取り入れる。
• PRもリリース前ではなく、リリース後を重視。
「ソーシャルコンテンツではリリース前後のPRよりも、新しいお
客様を連れてきてもらえるような“ゲームデザイン”が重要です」
• 少人数での機動的な開発と運営体制
• 既存タイトルの知名度に頼ることのない独自IP(知的財産)の採用
• ソーシャルコンテンツでは当時珍しかった(しかし本来は王道とも言える)ファンタジー風の世界観構築。
ここまでをまとめると・・・
低価格化が進むデジタルコンテンツの世界で、売上を伸ばすソーシャルゲーム。
ゲームフィケーション(夢中にさせる仕組み)の本編と、ゲームの外で射幸心を刺激する「ガチャ」の存在。
「夢中」を数字にする行動分析と、それを企画や開発に反映させることができる運営体制がそこにある。
「リリースしたらあとは天に任せる」というもの作りは、非常に贅沢なものに。
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「本」はどうでしょうか?
紙の本というパッケージが、電子になっただけでは、定額化・低価格化は避けられないのでは?
デジタルデータとなり、ネット空間に存在するのであれば、ユーザーがどのように読書し、それを楽しんでいるかといった行動履歴もつぶさに把握出来るはず。 (もちろん、プライバシー・セキュリティへの配慮は必要)
デジタル時代に即したバリューチェーンの構築が求められる。
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バリューチェーン(ポーター)
この再構築なくしては、マージンは痩せゆく一方・・・
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すでにその萌芽も・・・
企画・開発段階
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本文だけでなく、ユーザーコンテンツとの創発でコンテンツが成立
資金調達段階
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資金だけでなく、見込み客と彼らによる告知が並行して行われている。
販促段階
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• 出したら終わり、という時代は終わり。
• ソーシャルメディアを活用した販促は必須。(エゴサーチ、アクティブサポート・・・)
• 販促の効果測定も必須。(言及数とランキング、アクセスログ・・・)
• ソーシャルゲームのPR同様、コストのかけ方は転換が必要であるはず。
• この状況を背景に生まれたコルク(エージェント)にも注目しています。
【連載】まつもとあつしの 電子書籍最前線part1(前編) ダイヤモンド社の電子書籍作り « 電子書籍のニュース、レビュー、アプリ紹介サイト ダ・ヴィンチ電子部 http://blog.mediafactory.co.jp/dd/?p=11665
早すぎたGoogleブック検索
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オプトアウト方式によって反発を招いてしまったが、書籍も検索可能とし、どのページがよく参照されるかといったAnalyticsを提供し、販売サイトへのリンクも可能な仕組みは時代を先取りして(しすぎて)いた。
現実路線のKindle
KDP、ソーシャル
リーディングなど次の一手も組み込み済み。
国内勢はこれにどう向き合うか?
「パブリッジ」やNIIの「e読書.jp」には注目しています。
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ソーシャルからパーソナルへ
急成長するLINEのように、クローズドな関係でのコミュニケーションに「読書」がどのように介在できるかも、気になるところです。
バーチャルグラフ<リアルグラフ・インタレストグラフ
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まとめ
デジタル化・ソーシャル化する書籍。
作り方から売り方まで、バリューチェーンは変わらざるを得ない。
変わらなければ、待つのは定額化・低価格化。
展開を成功に導けるのは、結局は人。
編集者は職人からプロデューサーにならなければならない。
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ご静聴ありがとうございました!