第41回医学教育学会2009 初期研修医は地域医療研修に何を求め,何を学んでいく...

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演題番号P10-3 初期研修医は地域医療研修に何を 求め,何を学んでいくか? 地域の診療所が提供できる研修 医療法人 鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科 篠原翼 岡田唯男 第41回日本医学教育学会大会 ポスター 地域医療 2009724-25大阪国際交流センター

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登録時の抄録第41回日本医学教育学会大会 2009年7月24-25日 大阪国際交流センター ポスター 地域医療 演題番号P10-3 演題名  初期研修医は地域医療研修に何を求め,何を学んでいくか?    ーーー地域の診療所が提供できる研修ーーー 英語演題名what are needs and outcomes of medical residents community health training in Kameda family clinic Tateyama 著者名  篠原翼、岡田唯男所属 亀田ファミリークリニック館山背景:平成16年からの卒後臨床研修必修化され、全ての研修医は2年目に1-3ヶ月研修することになっている。地域医療を志す研修医はもちろん、専門医を志す研修医にとっても、地域医療現場との連携を学ぶことは必要であるが、地域医療研修で実際にどのように研修をおこなうのか、他の診療科と比べて異なる面が多く、戸惑うことも多い。当クリニックでは地域医療研修のあり方を検討するため,初期研修医が地域医療研修で何を求め、何を学んだかについて、また研修を提供した当クリニックスタッフに研修に関する認識について、質的研究法を用いて実態の把握を試みた。 方法: 2008年度に亀田ファミリークリニック館山にて地域医療研修をおこなった初期研修医14名を対象として,バックグラウンド・将来の志望など事前のメールでの打ち合わせののち,研修初日に,それぞれのニーズに合わせた研修目標を話し合い、設定した.研修最終日に研修で学んだ内容をプレゼンテーションする機会を設けた。研修終了後に、初期研修医に対して,研修の良かった点,改善点等について,また研修に協力していただいた各部署にも、研修の良かった点,改善点等についてアンケートを実施した。 結果:2008年度に当院にて地域医療研修をおこなった初期研修医は15名で,2週間の研修期間であった.初期研修医の地域医療研修のニーズに関しては、在宅診療の経験,コメディカルとの連携,外来診療など分けられ、地域医療研修前の研修状況・キャリアプランが影響を与えていた。研修医が学んだ内容は家庭医診療・在宅診療・他職種業務内容・コミュニケーションの取り方などが挙げられた.クリニックスタッフからは,研修システムに対する評価が得られ,スタッフへよい刺激となっていることが把握できた.考察:地域で多様な役割をはたす診療所は,研修医の様々なニーズに応えられる可能性があると思われる.

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演題番号P10-3 初期研修医は地域医療研修に何を求め,何を学んでいくか?

地域の診療所が提供できる研修

医療法人 鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科篠原翼 岡田唯男

第41回日本医学教育学会大会  ポスター 地域医療  2009年7月24-25日  大阪国際交流センター 

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背景と目的

平成16年からの卒後臨床研修必修化され、全ての研修医は2年目に1-3ヶ月研修することになっている。地域医療を志す研修医はもちろん、専門医を志す研修医にとっても、地域医療現場との連携を学ぶことは必要であるが、地域医療研修で実際にどのように研修をおこなうのか、他の診療科と比べて異なる面が多く、戸惑うことも多い。当クリニックでは地域医療研修のあり方を検討するため,初期研修医が地域医療研修で何を求め、何を学んだかについて、また研修を提供した当クリニックスタッフに研修に関する認識について、実態を把握する。

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対象と方法 2008年度に亀田ファミリークリニック館山にて地域医療研修をおこなった初期研修医12名を対象として質的・量的なミックスドメソッドをを用いて実態の把握を試みた。バックグラウンド・将来の志望など事前のメールでの打ち合わせののち,研修初日に,それぞれのニーズに合わせた研修目標について個人インタビューを行った。研修最終日に研修で学んだ内容をプレゼンテーションする機会を設けた。研修終了後に、初期研修医に対して,研修の良かった点,改善点等について,また研修に協力を依頼した各部署にも、研修の良かった点,改善点等についてアンケートを実施した。インタビュー・アンケートの結果をグラウンデッドセオリーを用いて分析を行った。分析の過程で、共著者・他職種とディスカッションを繰り返すトライアンギュレーションを行い、妥当性を高めた。

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結果 対象者について

•  2年目初期研修医12名 •  男性7名、女性5名 •  将来の志望科は、小児科1名、外科1名、救急科1名、消化器内科2名、脳神経外科1名、循環器内科1名、膠原病科1名、精神科または神経内科1名、麻酔科1名、不明2名であった。

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結果 研修前の状況

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結果 研修前の実際の言葉

•  「在宅にどういう状態の患者さんがいるか、退院先としての在宅診療の選択肢が適切か否か見極められるように」

•  「どこまでみれるか、多職種のかかわり、ケアマネ業務しっておきたい」

•  「病棟はクリック一つで回っているが、実際をみたい」

•  「外来見学(この機会以外に他の先生の外来を見学できる機会はもうなくなってしまうため)」

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結果 実際の研修内容

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結果 何を学んだか

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結果 何を学んだか 実際の言葉1

•  「力を入れるところ、抜くところ、すべての主訴に関してフルワークアップをしなくてもよい。その場で対処しなければならないこと、経過観察でみること」

•  「外来の時間配分、説明の仕方、共感の仕方、スケジュール管理、悪い結果の知らせ方、患者や家族の訴えには理由がある」

•  「なんといっても,1番は患者・家族にとって最良の生活を提供すること.その為には色んな人とこまめにコミュニケーションを取り合うことが大事だということが分かりました.」

•  「外来の感想,受診閾値が低い,followがしやすい,検査閾値が上げられる.改めて,扱う領域が広い,地域の実情に応じて扱う範囲が変わりうる」

•  「リハビリ見学感想,自分が関わった多くの急性期の患者が,退院した後どのように回復していくのか,また何に悩まされ続けるのか.今まで病棟では気づかなかった視点.」

•  「2.5人称の視点、今回の研修で最も強く感じ、また反省したことです。」

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結果 何を学んだか 実際の言葉2

•  「この地域を今後どうしていけば良いか?地域へのアプローチ,患者・家族・医師会・病診・診診連携」

•  「ERは点でしか診られないが,外来は線でつなぐ.主訴以外も引き出す.「それはうちの科ではない」がない,時間・診療科・人など横断的,時間をかけて丁寧に話を聞く,説明する.疾患ではなく,人を診ている」

•  「小児親の会:親になっていく,社会の目.社会に対する医療のあり方」 •  「訪問ヘルパー:入浴,料理,散歩,排泄など.生活に必要な介護だけでなく,楽しみも提供している.従来家族が行ってきたことの代替.1日に何回も訪問することで犯罪防止」

•  「家庭医と麻酔医の比較、家庭医、外来、在宅は社会に近く、手術、麻酔科医は社会に遠い」

•  「KFCT研修を終えて、疾患、患者、家族、地域の同心円」 •  「家庭環境など、さまざまなことを考えみんなで情報を提供・共有していることは非常に良い点であると感じた。病院で言うところの、在宅患者が入院患者であるような印象をうけた。」

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結果 研修に対しての評価

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結果 研修に対しての評価 実際の言葉

•  「個性のある研修医がKFCTに来られ、発表なども、それぞれ違った視点で行われ、自分たちの診療を振り返る機会になりました。また、外来や往診の見学などを通じ、建設的なフィードバックももらえたことも良かったです。」

•  「研修医の先生方の学ぶ姿勢、熱心さ、素直さに触れ、感動したこと。リハビリテーションの視点を少しは感じ取っていただけたこと。スタッフが何らかの刺激や学びを得ていること。」

•  「事前連絡を早めに頂きたい。研修生プロフィールもあるといいと思います。研修後のフィードバックがあるといいと思います」

•  「初期研修医のニーズに合わせるだけでなく、基本となるスケジュールがあるとよい」

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結果 研修に対する満足度

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結論

2008年度に当院にて地域医療研修をおこなった初期研修医は12名で,2週間の研修期間であった。初期研修医の地域医療研修のニーズに関しては、家庭医外来、在宅診療、コメディカルとの連携にわけられ、地域医療研修前の研修状況・キャリアプランが影響を与えていた。研修医が学んだ内容は家庭医診療・在宅診療などの多様な診療、他職種業務内容・患者の生活などの多様な視点、コミュニケーションの取り方などが挙げられた。研修システムに対しては、スタッフにも学びとなっていることが把握できた。

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考察 今後の展望について

•  次年度以降の初期研修医の地域医療研修についても、調査を継続し、理論的飽和を目指すことが望ましい。

•  本研究で得られた研修についての改善点を元に、初期研修医に対するレクチャー・ビデオレビュー・基本スケジュールの作成等、次年度以降の研修カリキュラムを改善していく予定である。

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考察 本研究の限界について ・当診療所は、外来診療のほか、訪問診療、透析診療、歯科診療部門が集約したやや規模の大きい診療所であり、より小規模の診療所において結果が異なる可能性がある。 ・当診療所に所属する医師は家庭医診療科に所属しており、診療範囲が多岐にわたっている点、家族をまとめてみる点、地域に働きかける点などの特長がある。そのため、他診療科を標榜する診療所においては、結果が異なる可能性がある。 ・今回対象となった初期研修医の将来の志望科は様々であったが、全ての診療科が網羅されてはおらず、質的研究の理論的飽和に達していない可能性がある。

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まとめ

•   初期研修医は地域医療研修に対して、外来診療、在宅診療、コメディカルとの連携を学ぶことを期待していた。

•  診療所において様々な外来診療・コメディカル診療・訪問診療の経験から、診療内容・視点の多様性を学んだと思われた。

•  地域で多様な役割を果たす診療所は,研修医の様々なニーズに応えられる可能性があると思われる。

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family clinic Tateyama 著者名  篠原翼、岡田唯男 所属 亀田ファミリークリニック館山 背景:平成16年からの卒後臨床研修必修化され、全ての研修医は2年目に1-3ヶ月研修することになっている。地域医療を志す研修医はもちろん、専門医を志す研修医にとっても、地域医療現場との連携を学ぶことは必要であるが、地域医療研修で実際にどのように研修をおこなうのか、他の診療科と比べて異なる面が多く、戸惑うことも多い。当クリニックでは地域医療研修のあり方を検討するため,初期研修医が地域医療研修で何を求め、何を学んだかについて、また研修を提供した当クリニックスタッフに研修に関

する認識について、質的研究法を用いて実態の把握を試みた。  方法: 2008年度に亀田ファミリークリニック館山にて地域医療研修をおこなった初期研修医14名を対象として,バックグラウンド・将来の志望など事前のメールでの打ち合わせののち,研修初日に,それぞれのニーズに合わせた研修目標を話し合い、設定した.研修最終日に研修で学んだ内容をプレゼンテーションする機会を設けた。研修終了後に、初期研修医に対して,研修の良かった点,改善点等について,また研修に協力していただいた各部署にも、研修の良かった点,改善点等についてアンケートを実施した。 

結果:2008年度に当院にて地域医療研修をおこなった初期研修医は15名で,2週間の研修期間であった.初期研修医の地域医療研修のニーズに関しては、在宅診療の経験,コメディカルとの連携,外来診療など分けられ、地域医療研修前の研修状況・キャリアプランが影響を与えていた。研修医が学んだ内容は家庭医診療・在宅診療・他職種業務内容・コミュニケーションの取り方などが挙げられた.クリニックスタッフからは,研修システムに対する評価が得られ,スタッフへよい刺激となっていることが把握できた.

考察:地域で多様な役割をはたす診療所は,研修医の様々なニーズに応えられる可能性があると思われる.

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