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0 平成19年 1月25日 金属資源開発調査企画グループ 担当審議役 澤田 賢治 2006年世界の非鉄金属の趨勢について

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平成19年 1月25日金属資源開発調査企画グループ担当審議役 澤田 賢治

2006年世界の非鉄金属の趨勢について

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2006年鉱業分野の十大ニュース

1.金属価格の高騰

2.非鉄メジャー、日本の資源関連企業も史上最高の収益

3.中南米における資源ナショナリズムの台頭

4.非鉄メジャーの大型買収

5.相次ぐ鉱山ストライキ

6.鉱山と地域住民との紛争

7.難航した銅買鉱交渉

8.日本企業による海外鉱山開発の進展

9.日本の資源安定確保に向けた戦略構築

10.中国の資源外交と輸出入統制

・ 2006年の世界鉱業は、金属価格の高騰が進み、非鉄メジャーの利益は過去最高を記録。・ その結果、潤沢な非鉄メジャーのキャッシュフローを背景に大型買収の動きが見られた。

・ その一方、利益の適正配分を巡って、中南米における資源ナショナリズムの台頭、鉱山

労働組合による労働改善を求める鉱山ストが相次ぐとともに、鉱山側と地域住民との

紛争もあった。また、日本側製錬企業とEscondida鉱山(BHP Billiton)との買鉱交渉が難航した。

・ 台頭めざましい中国の資源外交や国内需要を優先とする輸出入統制も見られた。

日本政府は、鉱物資源の安定供給確保に向けた戦略構築を推進した。日本企業による

海外鉱山開発の進展もあった。

JOGMEC金属資源開発

調査企画グループによる

2006年鉱業分野十大

ニュース

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1.金属価格の高騰

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May-03

Jul-03Sep-03Nov-03Jan-04Mar-04

May-04

Jul-04Sep-04Nov-04Jan-05Mar-05

May-05

Jul-05Sep-05Nov-05Jan-06Mar-06

May-06

Jul-06Sep-06

価格推移(2003年5月の価格 = 1.00)

C u

Zn

N i

A l

A u

・ 銅、亜鉛、ニッケル、アルミ、金の価格を、2003年5月をベース(1.00)として、2006年10月までの推移を表示した。2005年と比較して、2006年価格はおよそ以下のようになる。銅: 3,684 $/t →182%、亜鉛: 1,382 $/t →221%、 ニッケル: 14,734 $/t →152%アルミ: 1,898 $/t → 34%、 金: 445 $/oz →35%

2005年 2006年

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2.非鉄メジャー、日本の資源関連企業も史上最高の利益・ 売上高上位にある主要非鉄メジャーに対して、2003-2006年の当期利益の推移を 表示。

2006年は2006年前期を2倍にした推定値であるが、当期利益は各社とも過去最高。・ わが国非鉄大手7社(三菱・日鉱・住友・三井・同和H・古河・東邦)の経常利益は、2005年度の5,882億円から2006年度の7,933億円(予想)と35%の増加の見通し。

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2,000

4,000

6,000

8,000

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12,000

14,000

当期利益(百万ドル)

2003 1,592 3,379 1,508 1,548 88 95 151 191

2004 2,913 6,398 2,813 2,573 1,134 1,046 1,067 672

2005 3,521 7,420 5,215 2,662 1,780 1,606 1,706 872

2006(F) 5,886 12,172 7,592 6,102 3,382 1,612 2,777 2,380

Anglo American BHP Billiton Rio Tinto CVRD CODELCO Phelps Dodge Xstrata Falconbridge

・ 2006年当期利益 = (第1四半期+第2四半期) × 2・ XstrataはFalconbridgeを2006年8月に買収

XstrataはFalconbridgeの買収により当期利益第5位のメジャー

非鉄大手7社の経常利益

(2005年度と2006年度見通し)

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1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

経常利益(億円)

非鉄大手7社 5,882 7,933

2005 2006

出典: 日刊工業新聞18.11.15

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3.中南米における資源ナショナリズムの台頭・ 南米エクアドルの大統領選決戦投票が2006年11月26日に行われ、左派・国家同盟のラファエル・コレア元経済・財務相が当選し、南米12カ国中8番目の左派系政権誕生となった。

・ 南米左派政権の国は、エクアドル・ベネズエラ・ペルー・ボリビア・ブラジル・チリ・

ウルグアイ・アルゼンチンの8カ国である。

・ 最近の南米における左派政権の誕生は以下の通り。

2003年 5月: アルゼンチンでキルチネル政権2005年 3月: ウルグアイでバスケ2005年12月: ボリビアでモラレス政権2006年 3月: チリでバチェレ政権2006年 4月: ガルシア政権2006年 5月: コロンビアでウリベ政権が再選2006年10月: ブラジルでルラ政権が再選2006年10月: エクアドルでコレア政権2006年12月: ベネズエラでチャベス政権の再選・ 特に、ベネズエラのチャベス大統領は、石油産業の国有化

を進め国庫収入を強化。ボリビアのモラレス大統領は、

国有化というより、国営企業(COMIBOL)企業による鉱山開発の推進を実施。ベネズエラとボリビア

の急進左派は他の穏健左派国とは大き

ベネズエラ

(急進左派)

エクアドル

(急進左派)

ペルー

ボリビア

(急進左派)

チリ

ブラジル

ウルグアイ

アルゼンチン

ス政権

の再建と民間

く異なる。

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4.非鉄メジャーの大型買収・ 2006年には、日本円で2~3兆円規模の大型買収が見られた。

2006年 7 月 XstrataがFalconbridgeを買収(買収額 $ 161億)2006年11月 CVRDがIncoを買収(買収額 $ 170億)2006年11月 Freeport McMoranがPhelps Dodgeを買収(買収額 $259億)2006年12月 ZinifexとUmicoreは亜鉛製錬と合金事業の統合会社設立。

・ その結果、売上高ベースでは、第1位 Anglo American, 第2位 BHP Billiton,第3位 Rio Tintoに続いて、第4位~6位の非鉄メジャーの誕生となった。

売上高

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5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

Anglo Am

erican

BHP Billiton

Rio Tinto

CVRD

CODELCO

Phelps Dodge

Falconbridge

Xstrata

Norilsk Nickel

Grupo Mexico

INCO

Teck Cominco

Freeport McMoran

2005年売上高(百万ドル)

(CVRD+INCO, $ 18,910百万)

(FCX+Phelps Dodge、$ 12,833百万)

Xstrata+Falcon、$ 16,239百万)

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5.相次ぐ鉱山ストライキ

Escondidaで8月に約1ヶ月の鉱山スト

・ 労働協約改正に伴う会社側と労働組合の間で交渉が難航

し、世界最大の銅鉱山(チリのEscondida)では1ヶ月のスト。・ 同様なストはペルー・メキシコ・ザンビア等広範囲に及んだ。

・ 特に、メキシコではグルポメヒコの鉱山ストが2月下旬にサン・マルチン鉱山で始まり、カナネア、ラ・カリダ鉱山に

広がり, 3月上旬には全国鉱業ストライキに発展。①政府に罷免されたゴメス組合委員長を支持する

②労働協約の改定交渉

セロ・ベルデ銅鉱山

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6.鉱山と地域住民との紛争

・ 地域住民問題の発生の要因として以下のことが指摘される。

① 鉱山操業による環境汚染や健康被害への懸念(氷河破壊・廃水による汚染等)

② 地域社会の農業や地場産業への影響

③ 地域社会に対する利益還元(道路整備・教育・医療施設の建設)

④ 地域社会と鉱山側とのコミューニケーションの不足

・ インドネシアでは、海外企業が高収益をあげるなか、地元への利益還元を要求した

数百人の地域住民によるデモが2006年3月19日にニューモント社キャンプを襲撃した。・ 世界最大級のインドネシアにあるグラスベルグ銅鉱山において、2006年2月21日、鉱山内での先住民不法採掘者と鉱山警察側との衝突があった。この種衝突は、パプア

州内での分離独立活動家と政府治安部隊との衝突に発展(2006年3月16日)。・ ペルーでも、セロ・ベルデ銅鉱山とヤナコチャ金山の地域住民が大規模な抗議運動。

バツヒジャウ

グラスベルグ鉱山

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7.難航した銅買鉱交渉

従来 : 基準価格(90 ¢/Lb)を設定し、これから製錬加工費(TC/RC)を差し引いたものが鉱山側取り分であり、LME価格が90¢/Lbを越えた場合は鉱山側 9、製錬企業 1の割合で分配していた。

・ 長期契約による製錬原料(銅精鉱)の価格交渉は年2回行われている。2006年央積み価格交渉(2006年7月~2007年6月)において、わが国銅製錬企業とEscondida鉱山(57.5%の権益保有のBHP Billitonが実質交渉相手)との価格交渉が決着したが、鉱山側に有利で製錬各社に不利なものとなった。

・ 2006年末に行われた2007/2008年積み交渉においては、pp(プライス パーティシペーション)

の廃止が決定。

今回 : 基準価格が90¢/Lbから120¢/Lbに引き上げ。さらに、上限を180¢/Lbとする。

  従 来 ( 3 4 0 ¢ / L b の 場 合 ) 今 後 ( 3 4 0 ¢ / L b の 場 合 )

3 4 0 ¢ / L b 3 4 0 ¢ / L b

9 0 %

1 8 0 ¢ / L b9 0 %

1 2 0 ¢ / L b 1 0 %1 0 %9 0 ¢ / L b )

T C / R C T C / R C

  製 錬 側

  鉱 山 側

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8.日本企業による海外鉱山開発の進展・ わが国非鉄大手7社は、銅生産企業4社(住友・日鉱・日鉄・三菱)と亜鉛企業3社(三井・同和・東邦亜鉛)に大別。各社とも、収益増で総じて探鉱開発投資に意欲的。

・ 2006年におけるわが国企業の動きとしては以下の通り。鉱山開発: 米国、アラスカ州でポゴ金山が開山(住友金属鉱山と住友商事により2月)

ペルーのパルカ鉱山で鉱山開山(三井金属により3月19日)開発投資: PPC社がカナダのRegalito Copper社を$ 1.37億で買収(2006年3月)。

その結果、チリのレガリト鉱山を確保。

住友商事がボリビアのSan Cristobal鉱山の権益35%を260億円プラス出来高で確保(2006年9月26日)。

パルカ鉱山の概要

・権益: 三井金属鉱業株式会社100%。操業はサンタルイサ鉱業が

三井金属から粗鉱権を得て実施。

・鉱量: 約3百万t(Zn 12%, Pb 1%)・生産: 16,000t/年・JOGMEC支援: 海外地質構造調査(1994

- 2000年度)

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9.日本の資源安定確保に向けた戦略構築

・ 経済産業省としては、5月31日に公表したエネルギー安全保障を核とした「新・国家エネルギー戦略」中に、総合資源確保戦略として取組むべくテーマとして、石油戦略に加えて「レアメタルなどの鉱物

資源についても、海外における資源開発、供給源の多様化等の施策を、政府及び関係機関一体と

なって戦略的・総合的に推進する」と明記した。

・ 資源エネルギー庁長官の私的研究会として設置された「資源戦略研究会」に係る報告書が2006年6月に公表された。その中で、安定供給の確保に向けた取り組みとして以下のことが指摘された。

(1) 中長期的な視点からの取り組み

① 探鉱開発等による原料確保のための取り組み

② 資源国との関係強化のための多面的・総合的な取り組みの強化

③ リサイクルの推進

④ 代替材料開発

(2) 短期的な供給不安定への対応

① レアメタル備蓄

(3) 上記の取り組みの基盤となる環境整備

① レアメタルの需給動向等に関する調査・統計の充実

② 探鉱開発等に係る人材育成

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10.中国の資源外交と輸出入統制

・ 湖錦濤国家主席は、資源確保のため、2003年秋にはAPEC首脳会議に参加して豪州と、2004年秋にチリで開催されたAPECにてチリ・ブラジル・キューバなどの中南米資源保有国と会談している。2005年にはインドネシア・ブルネイを、2006年にはアフリカ諸国を歴訪。

・ 中国政府は2006年9月15日から輸出増値税還付率調整を実施。・ 中国政府は2006年11月1日には一部の非鉄金属製品の輸出税を10~15%にするなど国内活用振興策を推進。

輸出増値税還付率調整

非鉄金属産品については、「輸出増値

税還付率を取り消す産品」或いは

「輸出増値税引き下げる産品」に位置

づけられ、還付率を0%或いは13%から5%,8%,11%に引き下げられた。

① 環境高負荷かつエネルギー多

消費型産業であるため。

② 国内資源の国内活用振興策