2 子どもの遊びに関する政策の変遷 - Cabinet Office63 第2章...

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63 2子どもの遊びに関する政策の変遷 英国では、2000 年以降、「遊び 1 」が子どもの成長に重要な役割を果たしていることが政 府においても強く認識されるようになり、子どもの遊びを充実させて欲しいという国民の ニーズに応える政策が次々と発表されている。これには、子どもの遊びに直接携わるプレ イ・ワーカー 2 の活躍と、その活動を支援してきた中間支援組織によるロビー活動が強く影 響している。2008 年には子どもの遊びに関する施策に対して、これまでで最大規模となる 2 3500 万ポンドの投入が開始された。以下、2008 年に発表された子どもの遊びに関す る政府の戦略を中心に、その背景と成立の経緯、現状と課題について報告する。 2.1 子どもの遊びに関する政策形成の背景と経緯 2.1.1 背景 19161922 年に首相を務めたデイビット・ロイド・ジョージは、「遊びとは生きること の訓練であり、地域への最初の要求である 3 」という言葉を残している。この言葉が示すよ うに、20 世紀の初頭においても、遊びの重要性が認知されていなかったわけではない。し かし、今日に至るまでの子どもの遊びに関する政策の変遷は、決して平坦なものではなか った。政府にとって、遊びは常に優先順位の低い事項であったからである。その背景には、 子どもを「小さな大人」と捉え、自由な発達を許すよりも管理が必要な対象として扱って きた、英国社会の伝統的子ども観があると指摘する意見もある 4 1194060 年代 そのような中で、1948 年、ロンドンに初めて「冒険遊び場(Adventure Playground)」 が開設された。冒険遊び場とは、プレイ・ワーカーが配置され、子どもたちが自分たちに 適した遊び場を自由に作ることができるような遊び場を指す。造園家レディ・アレンが、 デンマークのコペンハーゲン郊外に設けられた廃材遊び場に感銘を受けて、そのアイディ アを英国へ持ち帰ったものである。英国の冒険遊び場は、第 2 次世界大戦によって廃墟と 化していたロンドンに子どもの遊び場を設けること、移民の子どもたちを社会に適応させ 1 Department for culture, media and sport (2004)Getting Serious About Play では、遊びを「子どもと若 者が、彼ら自身と他の人々を尊重しながら、彼ら自身の考えと両親に従い、彼ら自身の方法で、彼ら自 身の理由から楽しむこと」と定義している。それ以降、政策には、この定義が用いられている。 2 “play worker” 遊びとレジャーに関する活動を計画、組織、監督する人。(Department for children, schools and families2008The Play Strategy3 Tim Gill 氏講演(NPO 子ども&まちネット市民フォーラム「子どもにやさしいまちづくり」「子どもが主 役のまちづくり~なごや子ども条例を真に活かすために」、記録集 p.10) 4 Peter Hesltine and John Holoborn (1987) Play grounds, London

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第2章 子どもの遊びに関する政策の変遷 英国では、2000 年以降、「遊び1」が子どもの成長に重要な役割を果たしていることが政

府においても強く認識されるようになり、子どもの遊びを充実させて欲しいという国民の

ニーズに応える政策が次々と発表されている。これには、子どもの遊びに直接携わるプレ

イ・ワーカー2 の活躍と、その活動を支援してきた中間支援組織によるロビー活動が強く影響している。2008年には子どもの遊びに関する施策に対して、これまでで最大規模となる2 億 3500 万ポンドの投入が開始された。以下、2008 年に発表された子どもの遊びに関する政府の戦略を中心に、その背景と成立の経緯、現状と課題について報告する。 2.1 子どもの遊びに関する政策形成の背景と経緯 2.1.1 背景

1916~1922 年に首相を務めたデイビット・ロイド・ジョージは、「遊びとは生きることの訓練であり、地域への最初の要求である3」という言葉を残している。この言葉が示すよ

うに、20 世紀の初頭においても、遊びの重要性が認知されていなかったわけではない。しかし、今日に至るまでの子どもの遊びに関する政策の変遷は、決して平坦なものではなか

った。政府にとって、遊びは常に優先順位の低い事項であったからである。その背景には、

子どもを「小さな大人」と捉え、自由な発達を許すよりも管理が必要な対象として扱って

きた、英国社会の伝統的子ども観があると指摘する意見もある4 。 (1) 1940~60年代

そのような中で、1948年、ロンドンに初めて「冒険遊び場(Adventure Playground)」が開設された。冒険遊び場とは、プレイ・ワーカーが配置され、子どもたちが自分たちに

適した遊び場を自由に作ることができるような遊び場を指す。造園家レディ・アレンが、

デンマークのコペンハーゲン郊外に設けられた廃材遊び場に感銘を受けて、そのアイディ

アを英国へ持ち帰ったものである。英国の冒険遊び場は、第 2 次世界大戦によって廃墟と化していたロンドンに子どもの遊び場を設けること、移民の子どもたちを社会に適応させ

1 Department for culture, media and sport (2004)Getting Serious About Playでは、遊びを「子どもと若者が、彼ら自身と他の人々を尊重しながら、彼ら自身の考えと両親に従い、彼ら自身の方法で、彼ら自

身の理由から楽しむこと」と定義している。それ以降、政策には、この定義が用いられている。 2 “play worker” 遊びとレジャーに関する活動を計画、組織、監督する人。(Department for children,

schools and families(2008)The Play Strategy) 3 Tim Gill氏講演(NPO子ども&まちネット市民フォーラム「子どもにやさしいまちづくり」「子どもが主役のまちづくり~なごや子ども条例を真に活かすために」、記録集 p.10)

4 Peter Hesltine and John Holoborn (1987) Play grounds, London

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ることを目的としていた5。1970 年代までに、英国全体で約 250 ヵ所の冒険遊び場が作られた。「警察、プレイリーダー、および、イギリス環境省の調査研究報告書は、冒険児童公

園の開設後にはバンダリズム発生率の減少が見られたと」指摘している6。 (2) 1970年代

子どもの遊びに関する国レベルの政策がないことから、圧力団体の要求に応じて、その

都度、遊びのための施設が作られるなど、地方当局ごとにまちまちな対応がとられていた。

「自治体は、ボランタリー・セクターを成長するにまかせることによって、遊びに関する

その責任から手を引いてきた」と指摘されている7。また、1974年に施行された「労働環境等における健康安全法(Health and Safety at Work etc. Act)」によって、行政が遊び場での事故に対する管理責任を問われることを恐れるようになった。このことにより、冒険遊

び場の設置を減速させると同時に、子どもの遊びからリスクを徹底的に排除しようという

傾向が生まれたと考えられている8。 (3) 1980年代

1) 運動場の売却

1980 年代には、財政難から学校や地方自治体が運動場を次々売却し9 、子どもの遊びにとって厳しい状況が続いた。1988年教育改革法(Education Reform Act 1988)により、公立学校が経営の自助努力を迫られたことで、この傾向はさらに加速する。学校経営を立

て直すために切り捨てられたのが運動場であった。この当時、スポーツや体を動かす課外

活動が軽視されていたことがうかがえる10 。

2) 遊びに関する施策

当時の遊びに関する施策については、1985年の英国政府のプレイボード(Play Board)が下記のようにまとめている11 。

5 大村璋子『”自分の責任で自由に遊ぶ”遊び場づくりハンドブック』ぎょうせい、2000年 6 クレア・クーパー・マーカス『人間のための住環境デザイン』鹿島出版、1989年、p.247 引用文中の「イギリス環境省の調査研究報告書」とは、Her Majesty’s Office (1981) An investigation of difficult to let housing: Vol.2: Case studies of post war estates Housing Development Directorate occasional paper 4/80, Londonのこと。「バンダリズム」とは公共物や他人の所有物を故意に破損すること。 7 クレア・クーパー・マーカス、前掲書p.198、指摘自体はマーカスのWilson, Hugh, and Lewis Womersley

(1977) Inner area play, London.からの引用である。 8 NPO子ども&まちネット市民フォーラム「子どもにやさしいまちづくり」「子どもが主役のまちづくり~なごや子ども条例を真に活かすために」、「イギリスでの子どもの遊び環境を理解するためのキーワード

集」 9 2009 年 1月 29 日 Becky McLauchlan氏(Play England)インタビューより 10 鈴木秀人『変貌する英国パブリック・スクール スポーツ教育から見た現在』世界思想社、2002年 11 田中治彦『学校外教育論[補訂版]』学陽書房、1988 年、Play Boardの報告書Make Way for Children’s

Playについてまとめている。「プレイボード」は環境省管轄の遊びに関する協議会。

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① 遊具が設置されている遊び場:最も一般的な施策であるが、スウェーデンやオランダと

比較すると遊び場の数は少ない。 ② 休日のプログラム:学校の休暇を利用して実施されるプログラムで、地方当局がプログ

ラムを運営、もしくは補助金を支給する。 ③ 常勤職員による通年の施策:都市部を中心に実施されている。

プレイ・センター(放課後、休日の利用が可) 冒険遊び場 学校外クラブ(学童保育)

④ クラブ活動など:さまざまな団体によりレクリエーション活動が提供されている。 ⑤ リソース・センター:遊びに関する施設や団体、事業を援助するセンターで、遊具の貸

し出し、指導者の養成、情報の提供などを行う。 ⑥ その他:プール、図書館、博物館、レクリェーション・センターなどの余暇施設。 ⑦ 商業的なレクリエーション:ゲームセンター、遊園地、スケート・リンクなどだけでな

く、玩具や遊具のメーカーも子どもの遊びに貢献している。

3) 遊びに関する中間支援組織の成立

プレイボードが行った子どもの遊びに関する施策の現状分析、今後の遊びに関する政策

提言を受けて、環境省は 1987年に全国児童遊びレクリエーション・ユニットをスポーツ協議会の一組織として設置し、全国の自治体や遊びに関係する団体との連絡提携の機能をも

たせた12。さらに 1988 年には政策提言や調査を実施する「子どもの遊び協議会 (The Children’s Play Council)」13が、1989年にはロンドンにリソース・センター「全国遊び情報センター」が開設された。 (4) 1990年代

1) 子どもの権利条約批准

1991 年、英国は国連子どもの権利条約を批准した。その第 31 条には、子どもの休息及び余暇についての児童の権利が謳われており、これ以降の子どもの遊びに関する政策の根

拠となるものである。

2) ブレア政権誕生

1997年にブレア政権が誕生すると、子どもの遊びに対する社会的認知が徐々に高まる。1998年には「子どもの遊び協議会」に対して遊びに関する政策提言と調査を行うための助

12 田中治彦『学校外教育論[補訂版]』学陽書房、1988年 13 全国で子どもの遊びに関わるボランティア団体の集まりから、子どもの遊びに関わる団体や地方当局者が集まった協議会に発展。2006 年には名称を Play Englandと改め、子どもの遊びに関するイングランドの中間支援組織となった。

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成金が交付され、これ以降、遊びを推進する関係者が政策提言を行いやすい環境が整って

いった14 。

3) 遊びに関する中間支援組織の活躍

プレイウェールズ(Play Wales)やロンドンプレイ(London Play)など、遊びに関する中間支援組織が設立され、積極的に活動を展開していく。プレイウェールズが起草した政

策は、2002 年 10 月、ウェールズ議会政府による世界初の「子どもの遊びに関する総合政策15」として発表された。ロンドンプレイもロンドン市長に働きかけ、2006 年に子ども 1人につき 10㎡の遊びを確保するというガイドラインを作成している。これら遊びに関するセクターは互いに全国子ども協会(National Children’s Bureau)などを通じて連携、パートナーシップを築き、政府に対して影響力を持つようになっていく16。 (5) 2000年以降

2000 年に全国運動場協会(National Playing Fields Association)、プレイリンク(PLAYLINK)17、子どもの遊び協議会が共同で『ベストプレイ(Best Play)』というレポートを発行した。レポートの中では、どのように遊びが子どもたちの成長に貢献するの

か、どんなサービスがなぜ必要なのかが述べられている。 遊びを推進する関係者の活動が次第に実を結ぶようになったのには、かれら自身の活動

はもちろんだが、下記に示すような社会全体の風潮や世界的な傾向が追い風になった側面

もあると考えられる18 。2001 年、世論調査機関 MORI が、青少年施策に対する国民のニーズについて調査結果を発表した。その中で、成人の多くが地域サービスに対して、若者

のための活動が提供されることを強く望んでいること、幼い子どものための施設に対する

ニーズが非常に強いことが明らかになった19 。また、2007年 2月にユニセフのイノチェンティ研究所が出したレポート『豊かな国における子どもの福祉に関する概要(An overview of child well-being in rich countries)』20では、英国の子どもの福祉が先進国 21ヵ国中最下位であると発表された。これらの事柄は、英国政府の子どもに対する認識をさらに高め

14 Tim Gill 2008 ‘the child in time’ London Play is 10 15 Welsh Assembly Government 2002 Welsh Assembly Government Play Policy 16 Tim Gill氏講演(子どもの遊びと大人の役割研究会「子育ち・子育て支援団体活動公募研修事業 子どもの遊びと大人の役割を考えるフォーラム報告書 子どもの遊びを社会で保障するために」2009 年、

p.22) 17 遊びとレジャーのデザイン、計画、政策、戦略、地域での実践、資金調達、組織開発分野のコンサルティングを行う組織(http://www.playlink.org/about)

18 Tim Gill氏講演(NPO子ども&まちネット市民フォーラム「子どもにやさしいまちづくり」「子ども が主役のまちづくり~なごや子ども条例を真に活かすために」、記録集)

19 Department for culture, media and sport(2004)Getting serious about play 20 OECD加盟の先進国 21カ国の子どもの福祉を、「物」「健康と安全」「教育」「友人や家族との関係」「日常生活上のリスク」「子どもや若者自身の“実感”」から考察したもの。北欧諸国の子どもの福祉が高く

評価されている(日本については比較可能な情報が入手できなかったことから分析が行われていない)。

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るきっかけとなり、子どもの遊びに関してもさまざまな議論が行われるようになった21。 2.1.2 遊びに関する政策形成の経緯

(1) 子どもの遊びに対する政府の積極的関与の開始

2001年、国営くじの新規事業基金(New Opportunities Fund)の 2億ポンドが子どもの遊びに費やされることが決定した。この資金の最も効果的な使い道を検討するために、

文化メディアスポーツ省(以下、文化省)と教育技能省は、2002年に子どもの遊びに関する初めての総合的調査を実施した22。これは、英国全体の 0~16歳の青少年を対象として、遊びの現状とニーズを調査したものである。文化省は調査結果を受け、遊びに対して戦略

的かつ省庁横断的にアプローチする必要があるとして、教育技能省、コミュニティ・地方

自治省、大蔵省、環境・食糧・農村地域省、保健省、内務省、運輸省、地方自治体協会、

子どもの遊び協議会、国営くじ基金(Big Lottery Fund)、KIDS(障害をもった子どもの遊びを促進する組織)と政策策定グループを結成した。以降、政府は子どもの遊びに対し

て積極的に関与していくようになる23。 また同年には、「遊びの安全フォーラム」が、「遊び場での危険管理に関する見解声明書

(Risk Management in Play Provision: Position statement)」を発表。子どもの健康的な成長のためには危険から学ぶ機会が必要であり、遊び場からすべてのリスクを排除しては

ならないという考えを示した24。 2003年に打ち出された政府方針「どの子どもも大切」では、達成すべき 5つの成果指標の 3 番目として「楽しみかつ目標を達成すること」という遊びに関連する項目が取り入れられた。これは政府が初めて公式な形で、子どもたちが楽しむことの大切さを発表したも

のである25。「どの子どもも大切」を法制化した「2004年児童法」では、子どもの遊び協議会のロビー活動の結果、レクリエーションについても計画策定が地方当局に義務付けられ

ることになった(第 17 条)26。緑書『若者は大切』でも、若者が前向きな活動を行う機会

を与え、出かけられる場所を用意することを推奨している。

21 Tim Gill氏講演(子どもの遊びと大人の役割研究会「子育ち・子育て支援団体活動公募研修事業 子どもの遊びと大人の役割を考えるフォーラム報告書 子どもの遊びを社会で保障するために」2009 年

p.22)および、2009 年 1月 29日 Becky McLauchlan氏(Play England)インタビューより 22 元保健大臣 Frank Dobsonが座長を務め、子どもの遊び協議会 Tim Gillが主導した。調査報告は、2004年に Getting Serious About Playとして発表される。

23 Department for culture, media & sport(2006) Time for Play: Encouraging greater play opportunities for children and young people, p.10

24 NPO子ども&まちネット市民フォーラム「子どもにやさしいまちづくり」「子どもが主役のまちづくり~なごや子ども条例を真に活かすために」、「イギリスでの子どもの遊び環境を理解するためのキーワー

ド集」 25 Tim Gill、前掲書 26 Department for culture, media & sport(2006) Time for Play: Encouraging greater play opportunities

for children and young people

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さらに 2005年、労働党のマニュフェストは、遊びの施設へのアクセスが限られている子どもにも安全に楽しめる近代的な遊び場を提供するため、国営くじ基金の 1億 5500万ポンドを投入することを保証した。 (2) 「Time for Play」の発行

これまで政府関係省庁が実施してきた子どもの遊びに関する施策を整理するために、

2006年 8月、文化省は Time for Play27を発表した。そこで紹介されている施策は下記の通

りである。 1) 文化省

子ども省が設置されるまで文化省が子どもの遊び施策の所管を務めてきた。地域におけ

る遊びの供給を国家レベルで発展させるために、以下の遊びに関する関係者との連携を行

っている。 子どもの遊び協議会:子どもの遊びに関する政策提言と調査を依頼している。 スキルズアクティブ28(SkillsActive):遊びに関するトレーニングと資格に関する国家フレームワークの開発、地域にトレーニングセンターを提供することを依頼している。

子ども遊び情報サービス(Children’s Play Information Service):遊びに関する情報の提供を支援している。また、芸術、スポーツ、博物館や図書館と関連した活動、歴史遺

跡の保護と遊び場づくりを連携させる活動も実施している。

2) 教育技能省

2004年児童法、「どの子どもも大切」に基づいて、子どもの遊びを支援。下記の既存の枠組みの中で遊びの促進を行ってきた。 子どもトラスト:良質な遊びの機会が子どもに良い影響をもたらすことについて地方当

局が認識するように働きかけている。 確かなスタート子どもセンター:幼児基礎ステージにおいて、遊びが子どもの学びと発

達に重要であることから、幼児の遊び支援に力を入れている。 拡大学校(Extended Schools):学校における授業時間以外の楽しく発展的な活動を支援している。

「未来のための学校建設(The Building Schools for the Future)」:学校においても良質の遊びが提供をできるよう、学校建設や改築の際に支援を行う。

「若者は大切」:若者の活動と出かけられる場所を用意することを重視している。若者

27 http://www.culture.gov.uk/images/publications/DCMSPlayReport.pdf 28 活動的なレジャーおよび学習のための技能協議会。プレイワークユニットを持ち、プレイ・ワーカーのためのトレーニング、資格の認定などを行う。またプレイ・ワーカーに対する教育、トレーニング、資

格についての国家戦略を策定。(Department for culture media & sport (2004) Getting Serious About Play: A review of children’s play)

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の前向きな活動には、レクリエーションや文化的活動、スポーツ、経験を豊かにするよ

うな活動、安全で楽しい場所で時間を過ごすことが含まれている。 その他、文化省と共同でプレイ・ワーカーに対する教育やトレーニングの実施、資格認

定に対しても支援を行っている。また KIDS を通して、障害のある子どもたちに対する遊びの機会提供にも力を注いでいる。

3) コミュニティ・地方自治省

すべての人を排除しない持続可能なコミュニティの基礎となる公共の場所づくりが、コ

ミュニティ・地方自治省の役割である。その中には、遊び場となる清潔で安全な緑の空間

づくりも含まれている。 「オープンスペース、スポーツおよびレクリエーションに関する計画策定指針(planning

policy guidance note)17」は、すでに存在する子どもの遊び場を地域のニーズに応じて保護する国家計画策定フレームワークを提供している。計画策定者は、オープンスペースの

確保に関するスタンダードを地域開発フレームワークに加えなくてはならない。また、住

宅地建設の際などには、子どもの遊び場や若者たちが「ぶらぶらできる」場所を含むオー

プンスペースを確保することが定められている。 また同省は、公共の場の質の向上を目指すために、建築委員会(The Commission for

Architecture and the Built Environment)を支援している。建築委員会は、地方当局が計画策定指針 17にのっとった緑の空間を作るための支援や助言を行ったり、公共の場所を企画するクライアントに対してデザインやメンテナンスについてのアドバイスを行ったりし

ている。さらに、「パークフォース・キャンペーン」では、オープンスペースで働く人員を

増やすためのキャンペーンを展開した。十分なスタッフ体制が築かれれば、遊び場の安全

が確保されるのみならず、さまざまな活動を提供することもできるからである。 さらに同省は「近隣巡視員(Neighbourhood Wardens)」の制度も支援している。この制度により、犯罪、落書きやポイ捨て、駐車違反などを抑制できることから、魅力的な遊び

場づくりに貢献している。 イングランド、ウェールズ、北アイルランドのトラストの連盟 Groundwork による地域の環境改善活動に対しても、同省はスポンサーとなって年間 7,000 のプロジェクトを支援している。3000万ポンドを投入した「生活空間プロジェクト(Living Spaces programme)」では、支援を行った 1,000 以上のプロジェクトのうち半分が、遊び場やスケート公園などを設置した。またその中で若者は、環境整備や遊びに関する施設のデザインなどに協力し

ている。 障害のある子どもの遊びに関しては、子どもやその親、遊び場の提供者、デザイナー、

遊具を製作する人々と協力して、ガイドブック『アクセスしやすい遊び場づくり―好事例

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集29(Developing Accessible Play spaces-A Good Practice Guide)』を作成した。ガイドには具体例、チェックリスト、検討すべき課題、さらに情報を得たい場合のコンタクトリス

トなどが盛り込まれている。障害のある子どもやその家族の意見を聴くことの重要性が強

調されている。

4) 保健省

遊びは子どもの健康にとって大変重要であるという認識から様々な活動を行っている。

特に肥満防止に関しては、2010 年までに 11 歳以下の子どもの肥満を抑制するという目標を掲げ、文化省と教育技能省と共同で取り組んでいる。また、「全国健全な学校プログラム

(National Health Schools Programme)」は、遊びを含む身体を使う活動を促進するものである。また 2006年 11月には、国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence)を通じて、就学前の子どもの遊びを促進するガイドを作成した。

5) 大蔵省

遊びは非直接的に、生産性、雇用の機会の拡大に貢献するという認識を持っている。幼

いうちの活動が、人間を知的に社会的に発達させ、ゆくゆくは良い就労の機会につながっ

ていくという考えに基づき、2020年までに子どもの貧困を撲滅する運動に参加している。

6) 内務省

内務省が担当する「犯罪、若者の犯罪を含む犯罪の恐怖、反社会的な行動と若者の非行

を減らすこと」には遊びとの密接な関連が見られる。若者が犯罪に巻き込まれることを防

ぎ、さまざまな技術や正しい選択をする能力を身に付けることにおいて、レクリエーショ

ンは重要な役割を担っている。問題を抱える若者はごく一部で、本来、若者とは誇れるべ

き存在である。「若者は大切」の「若者が地域の活動にアクセスできるようにする」という

ねらいが達成されなくてはならないと考えている。 また、犯罪を犯した子どもや、犯罪者の家族となった子どもの遊びについても支援を実

施している。刑務所の面会スペースに設けられた遊びの空間は、そこを利用する家族の連

帯を維持し、犯罪者が再び過ちを犯さないように援助するものである。その他、身近な人

が刑務所にいる子どもをサポートする KIDS VIP、家族や友人などが刑務所にいることで影響を受けている人にサービスを提供するプログラムなどを実施している。

7) 環境・食糧・農村地域省

恵まれていない地域を持続可能なコミュニティとして再生すること、そして地方の自然

環境とそこへのアクセスを守ることという環境・食糧・農村地域省のねらいに、遊びは大

きく関連している。同省の森林委員会(Forestry Commission)は、遊び場の提供や家族や 29 http://www.communities.gov.uk/publications/communities/developingaccessibleplay2

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グループで参加できる活動の提供を通して、子どもや若者の遊びを支援している。また同

省は、地方環境局(Countryside Agency)による田園公園(Country Park)、地域にある自然の空間の活用を働きかけるチャリティー団体イングリッシュ・ネイチャー(English Nature)、自然環境の保全とそこでの活動に取り組むナチュラル・イングランド(Natural England)の活動を支援している。

8) 運輸省

運輸省では、道路を車だけの空間ではなく歩行者や自転車利用者等も安心して利用でき

る生活空間へと変えるホームゾーン(Home Zones)30の設置を行うとともに普及につて止

めている。また、恵まれていない地域の子どもの遊び場へのアクセスを改善するよう、地

方運輸局や関係機関に対して働きかけを行っている。

9) 国営くじ基金の役割

これらの活動を支えているのが、国営くじ基金である。国営くじ基金は、コミュニティ

のニーズに応えるため 2004年に設置された。2006年 3月には「子どもの遊びイニシアティブ(Children’s Play initiative)」に 1億 5500万ポンドを出資した。その 80%は地方当局に配分され、残り 20%は革新的な事例の開発と Play Englandの施設建設に用いられた。その他、地域における遊び戦略に関する出版、遊びの環境整備のための小規模基金による

助成も行っている。 (3) 子ども省の設置

2007年に子ども省が設置されると、子どもの遊びに関する政策の中心は文化省から子ども省へ移行した。同年 12月に子ども省から国会へ提出された「子ども計画」には、子ども省、文化省、地方社会・地方政府省が、恵まれていない地域の環境改善に努めることが明

記されている。そして、国営くじ基金から過去最大となる総額 2億 3500万ポンドが、2008~2011年の子どもの遊びのための予算として確保された。 (4) 「Fair Play」の発行

2008年 4月、子ども省と文化省は、子どもの遊び施策に関する審議書 Fair Play31を作成

30 生活道路路のレイアウトを変えることで、道路の別の利用法(子どもの遊び場を含む)を強調するプロジェクト。2001 年に運輸省は「ホームゾーン・チャレンジ」を発表し、イングランドでホームゾーンを

拡大するよう働きかけを行っている。(Department for children, school and families (2008 April) Fair Play, pp.67‐68)

31 http://publications.dcsf.gov.uk/default.aspx?PageFunction=productdetails&PageMode=publications &ProductId=DCSF-00298-2008&

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した。その中で、政府による子どもの遊び政策のねらいとして、下記の 8 点が挙げられている。 すべての住宅地に多様な形の遊び場、大人の監督がある遊び場とない遊び場、無料の遊

び場が設置されること。 近隣地域は、遊びにふさわしく安全で面白い場所であること。 遊び場へのルートは安全で、すべての子どもと若者がアクセスできること。 公園や広場は魅力的で、子どもと若者を歓迎し、良く整備・維持されていること。 子どもと若者が、公共の場においてはっきりした役割を持つ一方で、近隣の人々から彼

らの遊びが受け入れられること。 子どもと若者が、他の人々や財産を尊重する方法で遊ぶこと。 子どもと若者、その家族が、地域の遊び場の発展に積極的な役割を果たすこと。 障害のある子ども、コミュニティのマイノリティーグループ出身の子どもを含むすべて

の子どもと若者が遊び場にアクセスできること。 第 1章では遊びに関する現状分析が行われ、第 2章~第 6章で政府が検討中の方針が紹介されている。第 7章には、読者への質問事項と回答先が示されており、読者は Fair Playの内容について、意見を述べたり提案を行ったりすることができる体制になっている。

1) 現状分析(第 1章)

2006 年の「遊びの日32(Play day)」に行われた調査では、回答した子どもの 80%が外での遊びを好み、回答した親の 86%がそれに同意している。その一方で、8~15 歳の子どもを持つ親の 3 分の1が外遊びに反対し、8~10 歳の子どもの 4 分の1は大人の付き添いなしで外遊びをしたことがないと回答した。 年収が 1 万ポンド以下の家庭は、良い遊び場にアクセスすることが難しく、障害を持つ子どもの遊び場へのアクセスはさらに難しいこと、若者による反社会的行為、いじめ、犯

罪への不安、交通マナーを含む大人の態度や、良い状態で維持管理された公園が少ないこ

となどが、外遊びを抑制する原因だと分析されている。

2) あらゆる子どもに対する遊び支援(第 2章)

政府は、誕生から 19歳までのあらゆる段階で良質な遊びの機会を提供することが大切であると認識している。その中でも、就学前の子ども(0~5 歳)にとって、遊びは学びの機会であり、体を使った遊びが特に重要であると指摘している。2008~2011 年に総額 8 億9300万ポンドが自治体に配分され、確かなスタート子どもセンターで行われる遊びの活動に用いられることが計画されている。

32 1987 年に始まった「遊びの日」。毎年 8月の第一水曜日に子どもの遊ぶ権利を祝う。年ごとにテーマが決められる。

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また、学校での遊びに対する支援の重要性も認識されている。運動場や設備などを整備

するために、2011年までに学校建設のために 7億ポンドの予算を計上している。体育の授業についても見直しを行う。授業時間内や放課後にさまざまな施設と連携しておこなう拡

大学校、校庭開放等も推進する。学校が、子どもや親、コミュニティと協力するよう働き

かけを行う。 若者に対しては、前向きな活動に参加できるように働きかける。若者が訪れることので

きる様々な場所を準備することを計画している。 刑務所の親を訪ねる子どものために、イングランドとウェールズの 100 ヵ所以上の刑務所に遊びの空間が設けられていることが紹介されている。刑務所の親を訪ねる子どものス

トレスを減らし親子がともに活動できる環境を整えることは、犯罪の抑止にもつながると

指摘している。 障害を持つ子どもや、その親に対するサービスの充実も図る計画である。2008~2011年に 3億 7000万ポンドを出資し、プレイ・ワーカーが子どもを一時的に預かるショートブレイク・サービスを導入。障害を持つ子どもの遊び場へのアクセスを拡大する方針である。

3) 遊び場の増設(第 3章)

子ども計画により、安全で刺激的な遊び場づくりに資金が投入されることが決定した。

2008~2011年には 2億 3500万ポンドが公共の遊び場建設(3,500ヵ所)に費やされる。とりわけ、恵まれていない地域における遊び場整備、子ども、家族、コミュニティの参画、

遊び場の維持管理を重視する。

4) 安全の確保(第 4章)

「安全に暮らすアクションプラン(Staying Safe Action Plan)」を掲げ、2008年 4月から学校外でのいじめに取り組むガイダンスと研修を開始することを提案。警察と地方当局、

運輸関係者が公共交通機関における犯罪、反社会的行動の防止に努めるよう働き掛ける。

地域においては、巡回チームを結成したり、若者が前向きな活動に参加するよう支援を行

うなどして対応していく。 道路の安全についても、運輸省が継続的に取り組む。ドライバーの運転技術の向上や危

険運転取締りだけではなく、子ども、親、保護者の道路マナーに関するトレーニングや自

転車教習を実施する。これまで住宅地の道路に速度制限を設ける「時速 20マイル・ゾーン33(20mph zone)」の設置も推進してきたが、その実施状況等についての監査を開始する。 遊び場の安全については、プレイ・レンジャーやボランティアを配置するなどして確保

する。遊具はメンテナンスを行い、危険を排除する。その一方で、危険や困難に直面する

ことで子どもの危機管理能力が発達することを考慮し、遊び場から完全にリスクを排除し

33 最高速度を時速約 32キロメートルに制限する区画。

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てしまうことは子どもの発達に悪影響をもたらすというスタンスをとっている。

5) 子どもに寛容なコミュニティ形成(第 5章)

大人によって計画された遊び場だけが子どもの遊び場ではない。コミュニティ全体が子

どもに寛容になることの必要性を指摘している。子どものコミュニティ作りへの参画も促

進していく。ホームゾーンや緑の空間の設置を推進する他、コミュニティの計画策定者や

建設業界とも対話を行ったり、公共の場づくりに関するトレーニングを実施する。

6) 子どもの遊びに関する施策の持続可能性

各地域で子どもの遊びが重視されるようになるためには、適切な戦略が地域ごとに作成

されることが重要である。2008年 6月から始まる地域協定(Local Area Agreement)では、遊びを国家の優先課題に加える。2009 年 4 月からは地方当局に対する業務監査の指標に、遊び場に対する子どもの満足度を含むものとする。 政府は、政府の果たすべき役割を明確化し、プレイイングランド(Play England)34 とのパートナーシップにおいて、地方当局、コーディネーター等による遊び施策を支援して

いく。特に、プレイ・ワーカーの多くが、国家職業資格(National Vocational Qualification)のレベル 4以上の資格を持っていないことを課題ととらえ、2011年までに 4,000人のプレイ・ワーカーがレベル 3 を取得できるようにする。さらに、継続して専門性を深められるように、プレイワークマネージメント資格を開発することを提案している。 2.2 現行の子どもの遊びに関する政府戦略 前述の Fair Play に対して、多くの子どもや若者、大人から、下記のような意見35 が寄せられた。 ・子どもと若者の声:

9,409人が回答(うち、12%が障害のある子どもたち) 72%の子どもが、Fair Play に示された施策は安全な遊び場を実現させ、親や保護者が、外で遊ぶのを歓迎するようになるだろうと回答している。 ・大人の声:

234 人が回答(地方当局(65 人)、チャリティー団体(38 人)、国や商業組織(29 人)、 34 前身は子どもの遊び協議会。全国子ども協会(National Children’s Bureau)のもとで、地方当局等に対して遊びに関する支援を行う中間支援組織。具体的には 9 つの地域事務所を通して、遊び場のデザイ

ンについての情報提供、戦略的計画策定、トレーニングやセミナー等の開催、ネットワークづくりの他、

遊びに関するアドボカシーやキャンペーンの支援を行っている。 35 Department for children, school and families & Department for culture, media and sport (2008) The

Play Strategy, pp.15-18

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遊びに関係する団体(29人)、親(20人)、子どもに関する専門家(18人)) 全体の 84%が Fair Playに示された施策を歓迎している。とりわけ、子どもの視点が地方当局監査の指標として導入されることを評価している。

これを受けて、子ども省と文化省は、2008~2011年に子どもの遊び施策へ配分される予算の使い道を含めた、政府の「遊び戦略(Play Strategy)」を発表した。 2.2.1 ビジョン

政府は、英国を「青少年の成長にとって世界一の国にすること」を目標として掲げてい

る。この「遊び戦略」はそれに通じるものである。Fair Playに示した子どもの遊び政策のねらいに加えて、ここでは短期的、中期的、長期的なビジョンが設定されている。 短期的ビジョン:2008~2011年

安全で刺激的、かつすべての子どもを排除しない遊びの施設の利用可能性を高める。新

規のデザインや既存の施設の修理の過程で、地域のニーズを最優先する。 地域に遊びの機会を供給するための枠組みを作る。 遊びが子どもにもたらす恩恵について、引き続き研究を行うと同時に、地域において提

供されている質の高い遊び場の好事例を見つけ普及する。 中期的ビジョン:2011~2014年

子どもや若者、家族の希望に応えてよく維持された遊び場をコミュニティに築けるよう

に、子どもトラストの地域におけるリーダーシップを形成するための初期投資と支援を

実施する。 子どもの遊びに関わる人々は専門性を高め、サービスの質を高め、他の人々とも連携を

行う。 長期的ビジョン:2014~2020年

すべての子どもと若者が、世界水準の遊びやレクリエーションの場にアクセスできるよ

うにする。子どもトラストは、子どものニーズを考え、地域において最高の遊びの機会

を提供する。 2.2.2 遊び場の増設に関する政策

(1) Fair play「遊び場の増設」に対するフィードバック

子どもと若者の声:

回答者の 54%が、外で遊ばない理由を、「行く場所とすることがないから」だと回答してい

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る。とりわけ、年長の若者がおもしろいと感じる場所が少ない。 大人の声:

回答者の 63%が、施設は基本的に不足しており、メンテナンスも行われていないことを指摘している。 (2) 政府のアクション

① 2億 3500万ポンドを投入して全国 3,500ヵ所に遊び場を設置 すべての地方当局をパスファインダー(Pathfinder)36 もしくはプレイビルダー(Playbuilder)37 として指名し、使途を遊び場づくりに限定した交付金を出す。プレイイングランドが地方当局の計画策定やその実現をサポートする。

② 恵まれていない地域への投資 すべての地方当局は、遊びの機会に対して最も改善が必要な地域のための少なくとも

100万ポンドを配分される。

③ 早急な対応 すべての子どもがこの恩恵に浴せるように、2009年 4月までに資金を提供する。

④ 地方当局を支援する専門家 政府はパートナーとしてプレイイングランドと契約する。プレイイングランドは専門家

の紹介、計画策定の支援、遊び場づくりのガイドの供給などを行う。地方当局の実践の

好事例は、他の地域でも応用できるよう広く紹介される。

⑤ 刺激的な遊び場創造 2008 年 8 月、プレイイングランドと共同で、遊び場のデザインの好事例を盛り込んだ『遊びのデザイン:成功する遊び場の作り方(Design for Play: A guide to creating successful play spaces)』を出版している。

⑥ 維持管理 遊び場の維持管理のために資金を供給する他、耐久性のある素材、コストを抑えられる

天然素材を使用することを奨励する。

36 第一弾として、2008 年 4月に20の地方当局がパスファインダーとして指名を受ける。2008~2010 年に2億ポンドを、2008~2011年に 50万ポンドが配分される。第二弾として、2009 年 4月までに 10の地方

当局がパスファインダーとして指名を受け、2009~2011 年に資金を得る。各パスファインダーは、少な

くとも 28ヵ所の公共の遊び場と 1ヵ所冒険遊び場を設置し、地域コミュニティに遊び場を作る革新的なアプローチを模索する。

37 2008 年 4 月に 43の地方当局がプレイビルダーとして指名され、約 110 万ポンドの配分を受ける。少なくとも 22の遊び場を設置する。さらに2009 年 4月から86の地方当局に対しても支援を行う。

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2.2.3 あらゆる子どもに対する遊び支援に関する政策

(1) Fair play「あらゆる子どもに対する遊び支援」に対するフィードバック

子どもと若者の声:

屋外での活動を支援するべき組織として、40%の子どもが学校を挙げており、具体的には放課後のクラブ、運動場の開放などを提案している。 大人の声:

学校ができる遊び支援として、校庭開放、若者に対して満足な休憩時間を与えること、子

どものニーズに応えられるスタッフの育成を挙げている。障害のある子どもに対する支援

としては、彼らをこの支援の中心に位置づけること、遊び場までのルートの安全を確保す

ること、プレイ・ワーカーの育成、施設を整えることが必要であると指摘している。 また、遊びから疎外されている人々として、都市や貧困地域の子ども、黒人やマイノリ

ティエスニックグループの子ども、ジプシーロマの子ども、英語を母語としない子ども、

保育園の子ども、13 歳以上の子ども、ティーンエイジャーの女の子、地方の子どもが挙げられている。 (2) 政府のアクション

① 遊びに関する情報提供 2009 年 4 月までに、地方当局とサービス提供者が親や子どもに地域の遊びの機会についての情報伝達に役立つツールキットを作成する。

② 特別のニーズを有する子どもへの支援 刑務所を家族が訪問する際の遊びの機会を提供する。 障害のある子どもが、完全に恩恵を受けられるようにする。 プレイイングランドは、地方当局の計画に障害のある子どもの意見が反映されるように

働き掛けている。地方当局は、チャリティー団体 KIDSのサポートを受けることができる。また、遊びについて情報を伝えるツールキットや冒険遊び場についても、障害のあ

る子どもが利用できるように見直しを行う。さらに、プレイ・ワーカーが身に付けるべ

き技能に「平等」と「インテグレーション」の項目を追加する。

③ 幼い子どものための遊びの充実 確かなスタート子どもセンターを通して、5歳以下の子どもの遊びを支援する。今後センターを建設する場合は屋内外の遊び場を充実させる。

④ 学校における遊びの機会充実 2008 年 12 月に「すべての子どものための世界トップクラスの教育(A World-Class Education for Every Child)」が作成したビジョン「21 世紀の学校(21st Century Schools)」に、授業時間外の遊びの機会充実が盛り込まれた。2009 年の春に白書を発

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行する予定である。また、「未来のための学校建設プログラム」を通して、学校の屋外

での活動やレクリエーションの場所の確保を重視する。子ども省は教育水準局(Ofsted)とともに、学校の遊びの機会が提供されている状況を確認し、将来の学校監査の在り方

を検討している。

⑤ 若者への機会 大人によって計画されたのではない、いわば非構造的な遊びの機会も重視する。2008年 4月に始まった「マイプレイス(myplace)」では、100万~500万ポンドの助成金を通して、若者の参加を得て若者のための施設の建設を行っている。

2.2.4 安全の確保に関する政策

(1) Fair play「安全の確保」に対するフィードバック

子どもと若者の声:

回答者の 72%が、Fair playの提案は遊び場を安全にするだろうと回答している。42%が、遊び場には大人の監督があった方がいいと回答し、57%が道の安全が必要だと回答した。一方、8~13 歳の子どもの 55%が、遊び場自体はおもしろくて挑戦できるようなもので会って欲しいと答えている。 大人の声:

いじめや犯罪に対する取り組みが必要だと考えている。大人のほとんどが、8~13歳の子どもが刺激的な遊具を必要としていることを指摘。回答者の 91%は、遊び場が刺激的ではないのは、事故が起きた際に訴訟に発展するケースが多いためであると考えている。 (2) 政府のアクション

① 安全の確保 政府は 2008年 2月に「安全に暮らすための行動計画(Staying Safe Action Plan)」を発表した。これは、地方当局、サード・セクター38など、さまざまな機関が共同で取り

組むべき課題である。また政府は、「どの子どもも大切」で扱われているすべての問題

が網羅される必要があると認識している。若者が非行に走ること防ぐために前向きな活

動を提供し、いじめ対策のための実践者向けガイドを発行する。さらに、プレイ・ワー

カー、公園レンジャーやコミュニティのパトロールなどを実施し、監督下の遊びの機会

を増やすよう努める。

② ボランティア

38 “third sector”ボランティア団体、コミュニティの団体、社会的企業、チャリティー団体を指す。(Department for children, school and families & Department for culture, media and sport (2008) The Play Strategy, p.75)日本語の「第三セクター」とは異なる意味のため、音訳して表記する。

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子どもの遊びを監督するボランティアの参入も重要であると考えている。ボランティア

制度のモデルを作るために、2008~2011 年には、100 万ポンドを出資してパイロット地区を設定している。パイロット地区では、ボランティアの採用、トレーニング、持続

性、インセンティブなどの問題について、サード・セクターやコミュニティが協働する

ことが期待されている。2011 年春までに国家のボランティア制度に関する提案をまとめる。

③ 交通上の安全確保 2007年に運輸省は「子ども道路安全戦略(Child Road Safety Strategy)」を発表している。この戦略によって、地方当局が道路の安全に関する措置を決定できるようになっ

た。運輸省は、地方当局に対して 2007年以来、毎年 1億ポンドを出資している。 時速 20 マイル・ゾーン設置を求める声が大きいことから、地方当局に対してゾーンを拡大するよう働きかけを行う。また、住宅地の道路の計画、デザインについての道路

マニュアルも作成している。 さらに、学校で使用できる道路安全についての包括的学習教材を開発。子どもの歩行

と自転車のスキル改善、大人の道路利用マナー改善のためにキャンペーンやトレーニン

グを実施する。特に自転車については、2010~2011年に 1億 4000万ポンドを投入し、2012年までに 50万人の 6歳の子どもがトレーニングを受けられるよう計画している。

④ 危機管理能力を育てる刺激的な遊び場の提供 子どもが危機管理を行う力を身に付けるために、刺激的な遊び場を準備することが重要

である。この考えに基づいた遊び場の安全に関するアセスメントについて示した手引き

書『遊びを提供する際の危機管理実施ガイド(Managing Risk in Play Provision Implementation Guide)』が、この戦略とともに発行されている。また、子どもの安全についての適切な理解を広めるために、2008~2011年に 900万ポンドを投入する計画である。

2.2.5 子どもに寛容なコミュニティ形成に関する政策

(1) Fair play「子どもに寛容なコミュニティ形成」に対するフィードバック

子どもと若者の声:

新しい遊び場への関わり方に関する質問に対して、49%が場所を決めたい、68%が内容を選びたい、56%が実際に建設を手伝いたいと回答している。また、地域コミュニティが、子どもたちに対してより寛容であることを望んでいる。 大人の声:

97%が、コミュニティが早い段階から遊び場のデザインに関わるべきであると回答。 親がボランティアに参加し、子どもにとって良いモデルとなり、子どもの行動に対しても

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っと責任を持つべきであるという意見も出された。若者のポジティブなイメージを普及さ

せるべきで、そのためには若者をコミュニティへ巻き込むことが必要だと回答している。 (2) 政府のアクション

① 子どものニーズが反映されるような計画策定 子どもの遊びを支援し、遊びに関する計画を立てる職員に対して、インターネットを通

して好事例に関する情報を伝える。

② 地方当局に対するトレーニング 2011 年 3 月までに、すべての地域当局の担当者 3,000 人に対して、遊びの重要性と子どもに適した空間について理解してもらうためのトレーニングを実施する。

③ 社会住宅セクターや業務監査機関との協働 恵まれていない地域に住む子どもの遊び場を改善するために、2008年 12月に設立された住宅コミュニティ局(Homes and Communities Agency)やその他の組織の活動を通して、コミュニティの再生を目指し、遊びなどの活動が行える空間を設置する。

④ 子どもニーズと関心に合致した住宅開発 新興住宅地においては建築委員会とプレイイングランドが協働し、子どもや若者のニー

ズを満たす空間を設置する。また、公園の改良もおこない、2009 年初めには公園についてのデータベースを開設する。また、ヘルシータウン、エコタウンの建設、2012 年のオリンピックに関連した建設でも、子どもの遊びにふさわしい場所づくりを行う。

⑤ 若者に対する肯定的なアプローチ 子どもや若者に寛容なコミュニティの形成を目指すと同時に、子どもや若者も社会に対

して責任を持つように働きかける。 2.2.6 遊びを地域の優先課題とする政策

(1) 遊びに関する施策をより良いものにするための意見

子どもや若者、親は、子どもの遊びが政府と地域当局の優先課題であり続けることを望

んでいる。遊びに関する施策をさらに良いものとするために必要なこととして、下記の意

見が寄せられた。 計画策定者が遊びを理解し、すべきことを認識すること(44%) 現在ある施設の改善のための資金(28%) プレイ・ワーカーや遊びの専門家が、遊び場の計画に初期の段階から加わること(26%) 助成金等を受ける手続きが容易であること(12%) プレイ・ワーカーに対する助成金(6%)

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また、遊びを地方当局の優先課題に組み入れるためは、以下のことが重要だという意見

が寄せられた。 法制化、強制的な導入(32%) 地方当局に対して遊びに使途を限定した交付金を出すこと(31%) メディアが遊びについてキャンペーンを実施すること(29%) 地方当局が持続可能な資金を得て、遊び場や遊具をメンテナンスできるようにすること

(27%) さらに、保健分野の関係者やプレイ・ワーカーの役割の重要性を指摘する声もあった。

(2) 政府のアクション

政府による投入の成果が長期間継続することは、大変重要であると認識し、持続可能で

効果的な遊びに関する施策を行うために、地方当局に対して動機付けを行い、地方当局内

に枠組みを作り、高い技能を持ったプレイ・ワーカー育成を目指している。 ① 子ども省のスタンス 「子ども計画」で掲げられた「青少年の成長にとって世界一の国にすること」というビ

ジョンの中で、遊びはカギとなるものである。子ども省にとって、遊びは「第一の戦略

的目的(first Strategic Objective)」であり、政府は地域における遊びを支援する。

② 遊びを地域の優先課題とする 2009年 4月から導入される地方当局の業務監査指標に、公園や遊び場に対する子どもの満足度を加える。

プレイイングランドと連携して、地域の関係機関と子どもトラストが子どものニ

ーズに対応する方法についての新しいガイドを出版する。 地域における遊びの効果的な調査や遊びの質に関するアセスメントの実施が、将

来の計画策定には重要であることから、プレイイングランドは 2009年 2月までに方法を検討してシステムを作り、データベース化する。

③ 遊びに従事する人員を確保する

2011年までに 4,000人のプレイ・ワーカーが国家職業資格レベル 3を取得できるようにする。さらに、新しいプレイワークマネージメントの資格を開発すること

を通して、専門的なリーダーやマネージャーの育成を引き続き支援する。 冒険遊び場を運営するサード・セクターに対する支援を拡大する。

④ その他の支援

保健省は Play 4 Lifeキャンペーンを通して遊び施策を引き続き支援し、肥満防止に努める。

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2.3 現状と課題 2.3.1 現状

英国において子どもの遊びが注目を集めた背景には、長きにわたって、関係者がロビー

活動を行ったこと、全国子ども協会のように全国の遊びの関係者のネットワークを支える

機関があったことが挙げられる。 既に 63 の地方当局が最初のパスファインダーとプレイビルダーとして指名されており、地域コミュニティについて計画、デザインを行い、遊び場の建設や再建に努めている。こ

れらの地方当局が実施するプログラムが、子どもやその家族にどのような影響を与えたか

などについての調査が現在、実施されている。報告書は 2011年に完成予定である39。 遊びの関係者は引き続き活動を展開している。一例としてロンドンプレイを紹介する。

ロンドンプレイは 1998年に設立されたロンドンの遊びに関係する中間支援組織であり、その提言がロンドン市の遊びに関する政策策定に貢献した実績を有する。主な活動としては、

会員に対する情報提供、政策策定への参加・提言、新しい遊びの開発、遊びに関するフォ

ーラム開催などがある。現在、恵まれていない地域の道路を1日歩行者天国として遊び場

を作ったり、ロンドンの自然が残っている地域を探してコミュニティとともに遊びの空間

を創出する活動などを実施している。地方当局に大きな予算が配分された一方で、このよ

うな組織には十分な補助金配分されているとは言えない困難を抱えつつも、全国に存在す

る遊びの支援団体は精力的に活動を行っている40 。 2.3.2 課題

Time for Playには、子どもの遊びを考える上での課題が挙げられている。Time for Playが発表されてから 2 年以上経過しているが、それらのうちいくつかは、現在も継続する課題である。 ① 持続可能性 2011 年までは大きな予算が配分されているが、2011 年以降については未定である。また、政権交代が起きた場合、子どもの遊びがどのように扱われるのかは不明である41 。「子どもの遊び」が地方当局においても優先課題として位置付けられることが必要である。 ② 監督下の遊びと自由な遊び 遊び場が整備され、安全を確保する目的から大人が監督する遊び場が増加している。しか

し、遊びとは本来自由なもので、必ずしも設計された遊び場だけで行われるものではない。

39 Department for children, school and families & Department for culture, media and sport (2008) The

Play Strategy, p.70 40 2009 年 1月 29 日 Becky McLauchlan氏(Play England)インタビューより 41 2009 年 1月 29 日 Becky McLauchlan氏(Play England)インタビューより

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自由な遊びが可能なコミュニティの形成が重要である。しかし、実際には、子どもたちは

大人によって管理、コントロールされているという指摘がある。子どもや若者を正しく理

解し、どのような子ども期が望ましいのかについて検討を続けていくことが必要である42。 ③ プレイ・ワーカーの認知 プレイ・ワーカーの資格は存在しているが、その社会的認知はまだ高いとは言えず、キャ

リアは確立されたものではないことも指摘されている43 。

42 1997~2004年に子どもの遊び協議会(現プレイイングランド)代表を務め現在も子どもの遊びに関する分野で幅広く活躍する Tim Gill氏の問題意識(http://www.rethinkingchildhood.com)

43 2009 年 1月 28 日Ute Navidi氏(London Play)インタビューより