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335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 1 . 1 - 1 . リンは生物にとって不可欠な元素であり、リンの化合物であるリン酸カルシウムは骨や歯の構成要素にも なっている。そのため、世界で生産されるリン鉱石の 90%が肥料用として使用されている。残り 10%以下が工 業用として使用されている。 世界のリン鉱石生産量を表 1-1、図 1-1 に示す。2013 年の世界リン鉱石生産量は前年比 103%の 224,000 千 t であった。主要生産国は中国、米国、モロッコ等であり、上位 3 ヶ国で全体の 70%を占めている。2013 年 の主要各国の生産量は、中国が 97,000 千 t、米国が 32,300 千 t、モロッコ及び西サハラが 28,000 千 t であっ た。また、2013 年から新たにサウジアラビア、カザフスタンの生産量が発表されているが、このうちサウジア ラビアについては国営の鉱業会社 Saudi Arabian Mining Company.(略称:Maaden)が世界最大のリン安プラント (年産3,000,000t)を立ち上げ、その原料となるリン鉱石の生産が同時に始まったことによる。カザフスタンは黄 リン生産拠点の一つである。 市場では一時期、リン鉱石の枯渇問題が注目されたが、モロッコで鉱石埋蔵量が大幅に増加修正されるな ど、最近では資源枯渇問題に特段の切迫性は無くなったとされている。一方、もともとリン鉱石にはアルミニウ ムやマウネシウムに加え様々な元素が不純物として含まれており、産出される地域及び鉱山によって不純物 の成分やコンテントが異なる。用途によって不純物含有率の許容範囲が異なり、例えば工業用では不純物除 去に対する要求が非常に厳しく、鉄、アルミニウム、マグネシウム成分を ppm まで下げる必要があるが、肥料 用はこれらが 2~3%含まれていても許容される。リンを肥料用、工業用に使用する場合、不純物が少なく、含 まれていても簡単に除去できるなど、各用途に適した品質で加工のしやすい鉱石を調達できるか否かが問題 となる。日本はペルーに鉱山権益を保有しているが、スペック上の制約によりインド等向けに供給されてい る。 主要用途が肥料であるリンは世界各国において、食糧政策に直接かかわる戦略物資と位置付けられてお り、リン鉱石の権益を保有している国がリンをどのような形で、どの程度の規模で販売するかは国家戦略に通 じるものがある。例えば、どの国でも自国内の食糧調達を優先し、国内、あるいは権益を持つ海外鉱山で採 れるリン資源は国内で使用する肥料としてまず確保する。米国のようにリン鉱石での輸出は行わず、全てリン 化合物の形で輸出(リン酸までのプロセスを自国内でおこなう)ケースもある。また、中国は輸出規制を実施し、 徐々に輸出量を減らしている。リン鉱石の資源枯渇の問題は無くなったとしても、各国がリンを戦略物資と位 置付けている以上、高品質で使いやすいリン鉱石は将来入手しにくくなる可能性もある。日本では農業人口、 作付面積とも減少しているが、何らかの状況によりリンや肥料の輸入に制限かけられた場合のリスクは非常 に大きい。 こうした中、大手肥料メーカーや商社では海外の鉱山プロジェクトへの出資を検討したり、工業用に加え、 肥料用リンの取扱を新たに検討したりする動きもある。

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335 鉱物資源マテリアルフロー 2014

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1.需給動向

1-1.世界の需給動向

リンは生物にとって不可欠な元素であり、リンの化合物であるリン酸カルシウムは骨や歯の構成要素にも

なっている。そのため、世界で生産されるリン鉱石の90%が肥料用として使用されている。残り10%以下が工

業用として使用されている。

世界のリン鉱石生産量を表 1-1、図 1-1 に示す。2013 年の世界リン鉱石生産量は前年比 103%の 224,000

千 t であった。主要生産国は中国、米国、モロッコ等であり、上位 3 ヶ国で全体の 70%を占めている。2013 年

の主要各国の生産量は、中国が 97,000 千 t、米国が 32,300 千 t、モロッコ及び西サハラが 28,000 千 t であっ

た。また、2013 年から新たにサウジアラビア、カザフスタンの生産量が発表されているが、このうちサウジア

ラビアについては国営の鉱業会社Saudi Arabian Mining Company.(略称:Maaden)が世界最大のリン安プラント

(年産3,000,000t)を立ち上げ、その原料となるリン鉱石の生産が同時に始まったことによる。カザフスタンは黄

リン生産拠点の一つである。

市場では一時期、リン鉱石の枯渇問題が注目されたが、モロッコで鉱石埋蔵量が大幅に増加修正されるな

ど、最近では資源枯渇問題に特段の切迫性は無くなったとされている。一方、もともとリン鉱石にはアルミニウ

ムやマウネシウムに加え様々な元素が不純物として含まれており、産出される地域及び鉱山によって不純物

の成分やコンテントが異なる。用途によって不純物含有率の許容範囲が異なり、例えば工業用では不純物除

去に対する要求が非常に厳しく、鉄、アルミニウム、マグネシウム成分を ppm まで下げる必要があるが、肥料

用はこれらが 2~3%含まれていても許容される。リンを肥料用、工業用に使用する場合、不純物が少なく、含

まれていても簡単に除去できるなど、各用途に適した品質で加工のしやすい鉱石を調達できるか否かが問題

となる。日本はペルーに鉱山権益を保有しているが、スペック上の制約によりインド等向けに供給されてい

る。

主要用途が肥料であるリンは世界各国において、食糧政策に直接かかわる戦略物資と位置付けられてお

り、リン鉱石の権益を保有している国がリンをどのような形で、どの程度の規模で販売するかは国家戦略に通

じるものがある。例えば、どの国でも自国内の食糧調達を優先し、国内、あるいは権益を持つ海外鉱山で採

れるリン資源は国内で使用する肥料としてまず確保する。米国のようにリン鉱石での輸出は行わず、全てリン

化合物の形で輸出(リン酸までのプロセスを自国内でおこなう)ケースもある。また、中国は輸出規制を実施し、

徐々に輸出量を減らしている。リン鉱石の資源枯渇の問題は無くなったとしても、各国がリンを戦略物資と位

置付けている以上、高品質で使いやすいリン鉱石は将来入手しにくくなる可能性もある。日本では農業人口、

作付面積とも減少しているが、何らかの状況によりリンや肥料の輸入に制限かけられた場合のリスクは非常

に大きい。

こうした中、大手肥料メーカーや商社では海外の鉱山プロジェクトへの出資を検討したり、工業用に加え、

肥料用リンの取扱を新たに検討したりする動きもある。

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336鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

表 1-1 世界のリン鉱石生産量

単位:純分千t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 25,500 30,400 30,700 45,400 50,700 60,200 68,000 81,000 95,300 97,000 102% 43%米国 35,800 36,300 30,100 29,700 30,200 26,400 25,800 28,100 30,100 32,300 107% 14%モロッコ・西サハラ 26,700 25,200 27,000 27,000 25,000 23,000 25,800 28,000 28,000 28,000 100% 13%ロシア 11,000 11,000 11,000 11,000 10,400 10,000 11,000 11,200 11,200 12,500 112% 6%ヨルダン 6,220 6,230 5,870 5,540 6,270 5,280 6,000 6,500 6,380 7,000 110% 3%ブラジル 5,400 6,100 5,800 6,000 6,200 6,350 5,700 6,200 6,750 6,740 100% 3%

エジプト 2,220 2,730 2,200 2,200 3,000 5,000 6,000 3,500 6,240 6,000 96% 3%チュニジア 8,050 8,000 8,000 7,800 8,000 7,400 7,600 5,000 2,600 4,000 154% 2%ペルー — — — — — — 791 2,540 3,210 3,900 121% 2%イスラエル 2,950 2,900 2,950 3,100 3,090 2,700 3,140 3,100 3,510 3,600 103% 2%サウジアラビア — — — — — — — — — 3,000 — 1%豪州 2,010 2,050 2,300 2,200 2,800 2,800 2,600 2,650 2,600 2,600 100% 1%

南ア 2,740 2,580 2,600 2,560 2,290 2,240 2,500 2,500 2,240 2,300 103% 1%メキシコ — — — — — — 1,510 1,510 1,700 1,700 100% 1%カザフスタン — — — — — — — — — 1,600 — 1%アルジェリア — — — — — 1,800 1,800 1,500 1,250 1,500 120% 1%インド 1,180 — — — — — 1,240 1,250 1,260 1,270 101% 1%セネガル 1,600 1,520 600 600 700 650 950 980 1380 920 67% 0%

トーゴ 1,120 1,220 1,000 800 800 850 850 730 870 900 103% 0%シリア 2,880 3,500 3,850 3,700 3,220 2,470 3,000 3,100 1,000 500 50% 0%イラク — — — — — — — 30 200 350 175% 0%カナダ 1,000 1,000 550 700 950 700 700 900 900 300 33% 0%その他 4,820 6,500 7,740 8,110 7,440 8,620 6,400 6,790 10,100 5,630 56% 3%世界 141,000 147,000 142,000 156,000 161,000 166,000 181,000 198,000 217,000 224,000 103% 100%

出典:Unitd Stats Gological Survy「Minral Commodity Summaris PHOSPHATE ROCK」 World Mine Production

0

20,000

40,000

60,000

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180,000

200,000

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2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t)

その他

エジプト

ブラジル

ヨルダン

ロシア

モロッコ・西サハラ

米国

中国

図 1-1 世界のリン鉱石生産量

1-2.国内の需給動向

リンの国内需給を表 1-2、図 1-2 に示す。また、リンの種類別内需(肥料用及び工業用)を図 1-3、図 1-4 に

示す。2013年のリンの供給量は前年比95%の212.3千t、需要量は前年比95%の200.9千t(内需194.1千t、

輸出6.8 千 t)であった。

内需のうち約 86%が肥料用として使用されている。肥料用リンにはリン単肥と複合肥料があり、肥料用の

原料は全てリン鉱石から出発する。このうち、リン単肥とはリンとアンモニアなどを化合させてリン酸にするの

ではなく、電気融解した熔性リン肥など、リンと他の物質を化合させずにリンの構造を変えて肥料としたもので、

複合肥料とはリンに硫酸を加えたリン化合物や、リン酸にアンモニアを加えたリン安など、リンと他の物質を化

合させたものである。

主なリン酸肥料の種類には、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔性リン肥、焼成リン肥等がある。過リン酸石

灰はリン鉱石を硫酸と反応させ生成するリン酸一カルシウムと硫酸カルシウム(石膏)の混合物である。重過

リン酸石灰は、リン鉱石とリン酸、またはリン酸と硫酸の混合液を作用させて可溶性リン酸を 30%以上、水溶

性リン酸を 28%以上にしたものである。熔性リン肥は、リン鉱石と蛇紋岩を電気炉で加熱融解して得られる。

焼成リン肥は、リン鉱石を炭酸ナトリウム、リン酸と融解しない程度の高温で焼成し、アパタイト構造を破壊し

て、フッ素を除去したものである。

また、リンは複合肥料の一種である化成肥料の原料としても多く使用されている。化成肥料には、低度化成

肥料(N、P2O5、K2O の合計が 30%以下)と高度化成肥料(30%以上)の 2 種類がある。低度化成肥料は、過リ

ン酸石灰(P2O516~18%)に硫安と塩化カリウムなどを加えて製造する。一方、高度化成肥料は過リン酸石灰

の代わりに高品位のリン酸源としてリン安(リン酸アンモニウム)を使用する。リン安には、湿式リン酸をアンモ

ニアで pH4 程度まで中和して得たスラリーを乾燥して製造するリン酸一アンモニウムと、このスラリーに更に

アンモニウムを加えながら造粒したリン酸二アンモニウムの 2 種が多く使われている。

複合肥料は輸入リン鉱石から精製された粗リン酸を原料としたものと、中国などから入ってくる輸入リン安を

原料としたものとがある。

安価な輸入リン安の需要拡大の一方で、日本製の粗リン酸も依然として使用されているが、この理由は二

つある。一つはリン安からは作れない肥料があること、もう一つは肥料メーカーの設備投資の問題である。

リン安は粗リン酸にアンモニアを化合させたものであるが、それとは別に粗リン酸に硝酸を化合させた肥料

があり、両者は植物によって使い分けられている。リンに硝酸を化合した肥料の需要が無くならない限り、肥

料メーカーは粗リン酸を調達せざるを得ない。もう一つの理由である肥料メーカーの設備の問題とは、これま

で肥料メーカーでは粗リン酸とアンモニアをスラリー法で反応させてリン安を製造し、そこから様々な反応によ

り肥料を生産しているが、輸入リン安を採用するには設備や製造プロセスを変更する必要が出てくる。それに

は設備投資が必要であるため、材料を安価な輸入リン安に切り替えたとしても設備投資やプロセス変更にか

かるコストで相殺されてしまうのであれば、従来通り粗リン酸からの製造方法で生産するという考え方である。

工業用リンの2013年の内需は前年比126%の27.8千t であった。内需の約20%が添加剤など食品関連で

あるとされているが、国内の人口増加が見込めない中で食品添加剤用の需要は成熟状態となっている。その

他の用途としては、半導体、コンデンサ、金属表面処理などである。

工業用に使用されるリンには、鉱石から湿式法で生産した湿式リン酸と、乾式法で作られた黄リンを原料と

したリン化合物の 2 種類がある。

大まかなフローは湿式の場合、①鉱石に硫酸を添加し、粗リン酸(PA)を製造、②PA を精製して精製リン酸

(PPA)を製造、③PPA にアンモニアやカルシウムを添加し二次塩を製造、④二次塩を用途に合わせて販売

(必要に応じてブレンドして販売)、となる。湿式のPPAは食品添加物として食品メーカー、表面処理剤、コンデ

ンサ材料などに供給される。その先のリン化合物(二次塩)でも、基本は食品添加剤及び工業用である。

湿式では鉱石に硫酸を加えて粗リン酸を製造した後、液中の不純物を除去して PPA とするのに対し、乾式

では黄リンに水を加えれば PPA ができる。乾式のフローは、①鉱石をケイ素、炭素とともに電気炉において

1,400~1,500℃の高温で分解し黄リン(P4)を生産、②P4に水を加えてPPAを生産、③PPAを高純度化または

アンモニアやカルシウムの添加で二次塩を製造、④二次塩を各種用途に販売(必要に応じてブレンドして販

売)となっている。乾式の場合は日本での出発点は中国、ベトナムから輸入した黄リンである。リン鉱石から黄

リンを取り出すには電気炉における高温分解による大量の電力が必要であるため、電気料金が安い中国や

ベトナムが製造し、日本は全量を輸入している。

湿式、乾式ともに、製品形態としては PA、PPA は液体であるため液物と呼ばれ、それ以降(二次塩以降)は

粉末であることから粉物と呼称される。

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337 鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

表 1-1 世界のリン鉱石生産量

単位:純分千t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 25,500 30,400 30,700 45,400 50,700 60,200 68,000 81,000 95,300 97,000 102% 43%米国 35,800 36,300 30,100 29,700 30,200 26,400 25,800 28,100 30,100 32,300 107% 14%モロッコ・西サハラ 26,700 25,200 27,000 27,000 25,000 23,000 25,800 28,000 28,000 28,000 100% 13%ロシア 11,000 11,000 11,000 11,000 10,400 10,000 11,000 11,200 11,200 12,500 112% 6%ヨルダン 6,220 6,230 5,870 5,540 6,270 5,280 6,000 6,500 6,380 7,000 110% 3%ブラジル 5,400 6,100 5,800 6,000 6,200 6,350 5,700 6,200 6,750 6,740 100% 3%

エジプト 2,220 2,730 2,200 2,200 3,000 5,000 6,000 3,500 6,240 6,000 96% 3%チュニジア 8,050 8,000 8,000 7,800 8,000 7,400 7,600 5,000 2,600 4,000 154% 2%ペルー — — — — — — 791 2,540 3,210 3,900 121% 2%イスラエル 2,950 2,900 2,950 3,100 3,090 2,700 3,140 3,100 3,510 3,600 103% 2%サウジアラビア — — — — — — — — — 3,000 — 1%豪州 2,010 2,050 2,300 2,200 2,800 2,800 2,600 2,650 2,600 2,600 100% 1%

南ア 2,740 2,580 2,600 2,560 2,290 2,240 2,500 2,500 2,240 2,300 103% 1%メキシコ — — — — — — 1,510 1,510 1,700 1,700 100% 1%カザフスタン — — — — — — — — — 1,600 — 1%アルジェリア — — — — — 1,800 1,800 1,500 1,250 1,500 120% 1%インド 1,180 — — — — — 1,240 1,250 1,260 1,270 101% 1%セネガル 1,600 1,520 600 600 700 650 950 980 1380 920 67% 0%

トーゴ 1,120 1,220 1,000 800 800 850 850 730 870 900 103% 0%シリア 2,880 3,500 3,850 3,700 3,220 2,470 3,000 3,100 1,000 500 50% 0%イラク — — — — — — — 30 200 350 175% 0%カナダ 1,000 1,000 550 700 950 700 700 900 900 300 33% 0%その他 4,820 6,500 7,740 8,110 7,440 8,620 6,400 6,790 10,100 5,630 56% 3%世界 141,000 147,000 142,000 156,000 161,000 166,000 181,000 198,000 217,000 224,000 103% 100%

出典:Unitd Stats Gological Survy「Minral Commodity Summaris PHOSPHATE ROCK」 World Mine Production

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

180,000

200,000

220,000

240,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t)

その他

エジプト

ブラジル

ヨルダン

ロシア

モロッコ・西サハラ

米国

中国

図 1-1 世界のリン鉱石生産量

1-2.国内の需給動向

リンの国内需給を表 1-2、図 1-2 に示す。また、リンの種類別内需(肥料用及び工業用)を図 1-3、図 1-4 に

示す。2013年のリンの供給量は前年比95%の212.3千t、需要量は前年比95%の200.9千t(内需194.1千t、

輸出6.8 千 t)であった。

内需のうち約 86%が肥料用として使用されている。肥料用リンにはリン単肥と複合肥料があり、肥料用の

原料は全てリン鉱石から出発する。このうち、リン単肥とはリンとアンモニアなどを化合させてリン酸にするの

ではなく、電気融解した熔性リン肥など、リンと他の物質を化合させずにリンの構造を変えて肥料としたもので、

複合肥料とはリンに硫酸を加えたリン化合物や、リン酸にアンモニアを加えたリン安など、リンと他の物質を化

合させたものである。

主なリン酸肥料の種類には、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔性リン肥、焼成リン肥等がある。過リン酸石

灰はリン鉱石を硫酸と反応させ生成するリン酸一カルシウムと硫酸カルシウム(石膏)の混合物である。重過

リン酸石灰は、リン鉱石とリン酸、またはリン酸と硫酸の混合液を作用させて可溶性リン酸を 30%以上、水溶

性リン酸を 28%以上にしたものである。熔性リン肥は、リン鉱石と蛇紋岩を電気炉で加熱融解して得られる。

焼成リン肥は、リン鉱石を炭酸ナトリウム、リン酸と融解しない程度の高温で焼成し、アパタイト構造を破壊し

て、フッ素を除去したものである。

また、リンは複合肥料の一種である化成肥料の原料としても多く使用されている。化成肥料には、低度化成

肥料(N、P2O5、K2O の合計が 30%以下)と高度化成肥料(30%以上)の 2 種類がある。低度化成肥料は、過リ

ン酸石灰(P2O516~18%)に硫安と塩化カリウムなどを加えて製造する。一方、高度化成肥料は過リン酸石灰

の代わりに高品位のリン酸源としてリン安(リン酸アンモニウム)を使用する。リン安には、湿式リン酸をアンモ

ニアで pH4 程度まで中和して得たスラリーを乾燥して製造するリン酸一アンモニウムと、このスラリーに更に

アンモニウムを加えながら造粒したリン酸二アンモニウムの 2 種が多く使われている。

複合肥料は輸入リン鉱石から精製された粗リン酸を原料としたものと、中国などから入ってくる輸入リン安を

原料としたものとがある。

安価な輸入リン安の需要拡大の一方で、日本製の粗リン酸も依然として使用されているが、この理由は二

つある。一つはリン安からは作れない肥料があること、もう一つは肥料メーカーの設備投資の問題である。

リン安は粗リン酸にアンモニアを化合させたものであるが、それとは別に粗リン酸に硝酸を化合させた肥料

があり、両者は植物によって使い分けられている。リンに硝酸を化合した肥料の需要が無くならない限り、肥

料メーカーは粗リン酸を調達せざるを得ない。もう一つの理由である肥料メーカーの設備の問題とは、これま

で肥料メーカーでは粗リン酸とアンモニアをスラリー法で反応させてリン安を製造し、そこから様々な反応によ

り肥料を生産しているが、輸入リン安を採用するには設備や製造プロセスを変更する必要が出てくる。それに

は設備投資が必要であるため、材料を安価な輸入リン安に切り替えたとしても設備投資やプロセス変更にか

かるコストで相殺されてしまうのであれば、従来通り粗リン酸からの製造方法で生産するという考え方である。

工業用リンの2013年の内需は前年比126%の27.8千t であった。内需の約20%が添加剤など食品関連で

あるとされているが、国内の人口増加が見込めない中で食品添加剤用の需要は成熟状態となっている。その

他の用途としては、半導体、コンデンサ、金属表面処理などである。

工業用に使用されるリンには、鉱石から湿式法で生産した湿式リン酸と、乾式法で作られた黄リンを原料と

したリン化合物の 2 種類がある。

大まかなフローは湿式の場合、①鉱石に硫酸を添加し、粗リン酸(PA)を製造、②PA を精製して精製リン酸

(PPA)を製造、③PPA にアンモニアやカルシウムを添加し二次塩を製造、④二次塩を用途に合わせて販売

(必要に応じてブレンドして販売)、となる。湿式のPPAは食品添加物として食品メーカー、表面処理剤、コンデ

ンサ材料などに供給される。その先のリン化合物(二次塩)でも、基本は食品添加剤及び工業用である。

湿式では鉱石に硫酸を加えて粗リン酸を製造した後、液中の不純物を除去して PPA とするのに対し、乾式

では黄リンに水を加えれば PPA ができる。乾式のフローは、①鉱石をケイ素、炭素とともに電気炉において

1,400~1,500℃の高温で分解し黄リン(P4)を生産、②P4に水を加えてPPAを生産、③PPAを高純度化または

アンモニアやカルシウムの添加で二次塩を製造、④二次塩を各種用途に販売(必要に応じてブレンドして販

売)となっている。乾式の場合は日本での出発点は中国、ベトナムから輸入した黄リンである。リン鉱石から黄

リンを取り出すには電気炉における高温分解による大量の電力が必要であるため、電気料金が安い中国や

ベトナムが製造し、日本は全量を輸入している。

湿式、乾式ともに、製品形態としては PA、PPA は液体であるため液物と呼ばれ、それ以降(二次塩以降)は

粉末であることから粉物と呼称される。

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 337 2015/03/18 13:32:21

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338鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

表 1-2 リンの国内需給

単位:純分千t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12年比

リン単肥 9.5 10.5 11.7 9.5 8.9 11.6 10.4 12.1 13.0 9.7 75%

複合肥料 48.7 49.0 51.5 48.3 40.7 47.6 43.4 43.1 47.0 41.5 88%

工業用リン4) 1.8 2.5 2.8 3.1 2.6 2.9 2.1 1.9 1.4 1.3 92%

小計 60.0 62.0 65.9 60.9 52.1 62.1 55.9 57.1 61.4 52.5 86%

221.5 219.2 223.1 214.8 224.7 152.2 158.1 181.8 162.7 159.8 98%

281.5 281.3 289.0 275.6 276.8 214.4 214.0 238.9 224.1 212.3 95%

リン単肥 49.1 47.4 47.0 48.0 34.8 32.5 33.4 32.5 33.4 27.6 83%

複合肥料 172.4 164.8 164.5 171.7 133.7 142.5 145.9 138.9 150.0 138.7 92%

小計 221.6 212.2 211.4 219.7 168.4 174.9 179.3 171.4 183.5 166.3 91%

リン酸 36.3 33.6 30.2 24.4 20.1 16.4 20.4 15.8 16.0 - -

オキシ塩化リン 2.6 2.5 2.7 2.8 2.2 2.6 2.6 2.0 1.4 - -

五酸化リン 1.5 1.0 0.9 1.0 0.8 0.9 0.8 0.8 0.8 - -

リン酸ナトリウム 1.2 1.2 1.2 1.2 1.0 1.0 1.0 1.0 0.8 - -

縮合リン酸ナトリウム類 1.3 1.4 1.5 1.4 1.1 1.0 1.1 0.9 0.9 - -

三塩化リン 0.8 0.7 0.7 0.8 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 - -

リン酸アンモニウム 0.8 0.8 0.7 0.8 0.6 0.5 0.5 0.5 0.4 - -

リン酸カリウム 0.8 0.8 0.8 0.7 0.6 0.5 0.5 0.5 0.4 - -

トリポリリン酸ナトリウム 0.9 0.9 0.8 0.8 0.6 0.6 0.6 0.4 0.4 - -

赤リン 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 - -

リン酸カルシウム 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.3 0.3 - -

ピロリン酸カリウム 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 - -

小計 46.8 43.4 40.1 34.3 28.0 24.4 28.6 22.7 22.0 27.8 126%

268.4 255.6 251.5 254.0 196.4 199.3 207.8 194.1 205.5 194.1 94%

16.23 14.89 15.84 15.52 13.57 6.65 7.93 6.99 6.79 6.83 101%

284.6 270.5 267.4 269.5 210.0 206.0 215.8 201.1 212.2 200.9 95%

-3.1 10.7 21.7 6.1 66.8 8.4 -1.7 37.9 11.8 11.4 96%出典:1)日本肥料アンモニア協会(肥料年度7月~翌6月)、2)財務省貿易統計(暦年数値)、3)日本無機薬品協会(年度数値)、4)無機薬品工業会(年度数値)

※2013年の内需のうち工業用の内訳は無機薬品協会の資料「無機薬品の実績と見通し」廃刊のためデータなし。

純分換算率:肥料用リン リン単肥13%、複合肥料7%、 工業用リン  リン酸39%、オキシ塩化リン20%、無水リン酸(五酸化リン)44%、リン酸ナトリウム20%、縮合リン酸ナトリウム類 ピロリン酸ナトリウム26%、メタ・ヘキサメタリン酸ナトリウム30%、テトラリン酸ナトリウム26%)、三塩化リン23%、リン酸アンモニウム25%、 リン酸カリウム19%、トリポリリン酸ナトリウム25%、赤リン100%、リン酸カルシウム23%、ピロリン酸カリウム19%

供給-需要

小計

輸入2)

合計

内需

供給

肥料用1)

工業用3)需要

輸出

合計

在庫1)

0

50

100

150

200

250

300

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t)

供給

需要

図 1-2 リンの国内需給

0

50

100

150

200

250

300

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t) リン単肥

複合肥料

図 1-3 リンの内需(肥料用:種類別)

0

10

20

30

40

50

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t)工業用リン

図 1-4 リンの内需(工業用)

2.輸出入動向

2-1.輸出入動向

日本はでリン鉱石が産出されず、全量輸入に頼っている。リンの輸出入数量を表 2-1、図 2-1、図 2-2 に示

す。2013 年のリン鉱石、黄リンなどのリン原料の輸入量は前年比94%の 52,656t であった。

日本の農業は作物を大量に効率良く生産するというより、高品質で付加価値の高い作物を生産するという

考え方であり、肥料を大量に使うという状況ではなくなった。そのため、鉱石からリン酸を取り出して肥料を作

るのではなく、中間素材であるリン安の形で輸入するケースが増加。リン鉱石の輸入量は微減傾向で推移し、

2013年は前年比96%の36,350t であった。工業用の原料として使用される黄リン輸入量も2011年以降連続し

て減少している。2013 年の日本の黄リンの輸入量は前年比89%の 16,306t に留まった。

リン酸などの中間原料及び素材の輸入量は前年比 90%の 36,711t であった。このうちリン酸の輸入量が前

年比89%の 17,499t、リン酸塩の輸入量は前年比90%の 19,212t となっている。ほとんどが工業用である。

原料、素材の輸入量が減少傾向を示す一方で、製品である肥料は 2010 年以降増加してきており、2013 年

は前年比107%の 70,408t となった。このうちリン酸肥料は前年比 101%の 19,812t、複合肥料は前年比110%

の 50,596t となっている。これまで述べてきたように、国内で鉱石から粗リン酸を取り出して肥料を作るのでは

なく、海外からのリン安輸入が増えてきていることが製品輸入量増加の要因である。リン酸肥料とは、リン酸

三ナトリウム、重過燐石灰、熔リンなど、複合肥料はリン安類や高度化成肥料を指す。

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339 鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

表 1-2 リンの国内需給

単位:純分千t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12年比

リン単肥 9.5 10.5 11.7 9.5 8.9 11.6 10.4 12.1 13.0 9.7 75%

複合肥料 48.7 49.0 51.5 48.3 40.7 47.6 43.4 43.1 47.0 41.5 88%

工業用リン4) 1.8 2.5 2.8 3.1 2.6 2.9 2.1 1.9 1.4 1.3 92%

小計 60.0 62.0 65.9 60.9 52.1 62.1 55.9 57.1 61.4 52.5 86%

221.5 219.2 223.1 214.8 224.7 152.2 158.1 181.8 162.7 159.8 98%

281.5 281.3 289.0 275.6 276.8 214.4 214.0 238.9 224.1 212.3 95%

リン単肥 49.1 47.4 47.0 48.0 34.8 32.5 33.4 32.5 33.4 27.6 83%

複合肥料 172.4 164.8 164.5 171.7 133.7 142.5 145.9 138.9 150.0 138.7 92%

小計 221.6 212.2 211.4 219.7 168.4 174.9 179.3 171.4 183.5 166.3 91%

リン酸 36.3 33.6 30.2 24.4 20.1 16.4 20.4 15.8 16.0 - -

オキシ塩化リン 2.6 2.5 2.7 2.8 2.2 2.6 2.6 2.0 1.4 - -

五酸化リン 1.5 1.0 0.9 1.0 0.8 0.9 0.8 0.8 0.8 - -

リン酸ナトリウム 1.2 1.2 1.2 1.2 1.0 1.0 1.0 1.0 0.8 - -

縮合リン酸ナトリウム類 1.3 1.4 1.5 1.4 1.1 1.0 1.1 0.9 0.9 - -

三塩化リン 0.8 0.7 0.7 0.8 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 - -

リン酸アンモニウム 0.8 0.8 0.7 0.8 0.6 0.5 0.5 0.5 0.4 - -

リン酸カリウム 0.8 0.8 0.8 0.7 0.6 0.5 0.5 0.5 0.4 - -

トリポリリン酸ナトリウム 0.9 0.9 0.8 0.8 0.6 0.6 0.6 0.4 0.4 - -

赤リン 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 - -

リン酸カルシウム 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.3 0.3 - -

ピロリン酸カリウム 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 - -

小計 46.8 43.4 40.1 34.3 28.0 24.4 28.6 22.7 22.0 27.8 126%

268.4 255.6 251.5 254.0 196.4 199.3 207.8 194.1 205.5 194.1 94%

16.23 14.89 15.84 15.52 13.57 6.65 7.93 6.99 6.79 6.83 101%

284.6 270.5 267.4 269.5 210.0 206.0 215.8 201.1 212.2 200.9 95%

-3.1 10.7 21.7 6.1 66.8 8.4 -1.7 37.9 11.8 11.4 96%出典:1)日本肥料アンモニア協会(肥料年度7月~翌6月)、2)財務省貿易統計(暦年数値)、3)日本無機薬品協会(年度数値)、4)無機薬品工業会(年度数値)

※2013年の内需のうち工業用の内訳は無機薬品協会の資料「無機薬品の実績と見通し」廃刊のためデータなし。

純分換算率:肥料用リン リン単肥13%、複合肥料7%、 工業用リン  リン酸39%、オキシ塩化リン20%、無水リン酸(五酸化リン)44%、リン酸ナトリウム20%、縮合リン酸ナトリウム類 ピロリン酸ナトリウム26%、メタ・ヘキサメタリン酸ナトリウム30%、テトラリン酸ナトリウム26%)、三塩化リン23%、リン酸アンモニウム25%、 リン酸カリウム19%、トリポリリン酸ナトリウム25%、赤リン100%、リン酸カルシウム23%、ピロリン酸カリウム19%

供給-需要

小計

輸入2)

合計

内需

供給

肥料用1)

工業用3)需要

輸出

合計

在庫1)

0

50

100

150

200

250

300

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t)

供給

需要

図 1-2 リンの国内需給

0

50

100

150

200

250

300

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t) リン単肥

複合肥料

図 1-3 リンの内需(肥料用:種類別)

0

10

20

30

40

50

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分千t)工業用リン

図 1-4 リンの内需(工業用)

2.輸出入動向

2-1.輸出入動向

日本はでリン鉱石が産出されず、全量輸入に頼っている。リンの輸出入数量を表 2-1、図 2-1、図 2-2 に示

す。2013 年のリン鉱石、黄リンなどのリン原料の輸入量は前年比94%の 52,656t であった。

日本の農業は作物を大量に効率良く生産するというより、高品質で付加価値の高い作物を生産するという

考え方であり、肥料を大量に使うという状況ではなくなった。そのため、鉱石からリン酸を取り出して肥料を作

るのではなく、中間素材であるリン安の形で輸入するケースが増加。リン鉱石の輸入量は微減傾向で推移し、

2013年は前年比96%の36,350t であった。工業用の原料として使用される黄リン輸入量も2011年以降連続し

て減少している。2013 年の日本の黄リンの輸入量は前年比89%の 16,306t に留まった。

リン酸などの中間原料及び素材の輸入量は前年比 90%の 36,711t であった。このうちリン酸の輸入量が前

年比89%の 17,499t、リン酸塩の輸入量は前年比90%の 19,212t となっている。ほとんどが工業用である。

原料、素材の輸入量が減少傾向を示す一方で、製品である肥料は 2010 年以降増加してきており、2013 年

は前年比107%の 70,408t となった。このうちリン酸肥料は前年比 101%の 19,812t、複合肥料は前年比110%

の 50,596t となっている。これまで述べてきたように、国内で鉱石から粗リン酸を取り出して肥料を作るのでは

なく、海外からのリン安輸入が増えてきていることが製品輸入量増加の要因である。リン酸肥料とは、リン酸

三ナトリウム、重過燐石灰、熔リンなど、複合肥料はリン安類や高度化成肥料を指す。

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 339 2015/03/18 13:32:21

Page 6: 1.需給動向 - JOGMEC金属資源情報mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/31_201504_P.pdf335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 リン(P) 5. マ テ リ ア ル フ

340鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

2013 年のリンの輸出は前年比101%の 6,830t で、うち原料の輸出量は前年比108%の 13t、素材の輸出量

は前年比 95%の 5,032t、製品の輸出量は前年比 119%の 1,785t となっている。原料として輸出されているの

は難燃剤用の赤リンである。素材として日本から輸出されるリン酸には、半導体洗浄用などの高純度品と金

属表面処理用がある。製品である肥料の輸出は日本メーカーのみ生産している特殊なものが一部ある程度

である。

表 2-1 リンの輸出入数量

単位:純分t

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 82,057 77,430 78,352 72,211 77,622 47,913 31,048 50,233 37,864 36,350 96%

輸出 - - - - - - - - - -

輸入 31,602 31,481 31,253 28,624 31,282 13,774 24,272 20,678 18,255 16,306 89%

輸出 31 40 56 67 67 36 26 9 12 13 108%

輸入 113,659 108,910 109,605 100,835 108,904 61,687 55,321 70,911 56,119 52,656 94%

輸出 31 40 56 67 67 36 26 9 12 13 108%

輸入-輸出 113,628 108,871 109,549 100,768 108,837 61,651 55,294 70,901 56,108 52,643 94%

輸入 9,195 13,912 12,558 17,321 25,412 21,892 26,531 24,652 19,571 17,499 89%

輸出 9,573 8,614 9,658 8,919 7,833 3,304 4,030 3,669 3,244 2,876 89%

輸入 17,716 19,149 21,281 22,078 19,464 18,163 23,247 22,572 21,327 19,212 90%

輸出 4,670 4,034 3,992 4,386 3,225 2,030 2,281 1,506 2,035 2,157 106%

輸入 26,910 33,061 33,839 39,399 44,876 40,055 49,778 47,224 40,898 36,711 90%

輸出 14,242 12,648 13,651 13,304 11,058 5,333 6,311 5,174 5,279 5,032 95%

輸入-輸出 12,668 20,413 20,189 26,095 33,818 34,722 43,467 42,049 35,619 31,679 89%

輸入 22,355 21,662 22,158 19,748 13,897 8,684 13,050 17,744 19,605 19,812 101%

輸出 52.0 54.5 106.0 123.2 81.4 58.1 63.8 63.2 72.9 49.3 68%

輸入 58,605 55,607 57,472 54,789 57,016 41,795 39,943 45,969 46,070 50,596 110%

輸出 1,907 2,150 2,023 2,022 2,367 1,227 1,525 1,738 1,430 1,736 121%

輸入 80,959 77,269 79,630 74,537 70,913 50,479 52,993 63,713 65,675 70,408 107%

輸出 1,959 2,205 2,129 2,145 2,449 1,285 1,589 1,801 1,503 1,785 119%

輸入-輸出 79,000 75,065 77,501 72,392 68,465 49,194 51,404 61,912 64,172 68,622 107%

輸入 221,528 219,240 223,074 214,771 224,694 152,221 158,091 181,848 162,692 159,775 98%

輸出 16,232 14,892 15,835 15,517 13,574 6,654 7,927 6,985 6,794 6,830 101%

輸入-輸出 205,296 204,348 207,239 199,254 211,120 145,567 150,164 174,863 155,899 152,945 98%

出典:財務省貿易統計

純分換算率:鉱石10%、黄リン100%、リン酸(五酸化二リン44%、リン酸・ポリリン酸39%)、リン酸塩30%、リン酸肥料13%、複合肥料7%

※原料は鉱石、黄リン、素材はリン酸、リン酸塩、製品はリン酸肥料、複合肥料による。

合計

リン酸肥料

複合肥料

リン酸塩

リン酸

鉱石

黄リン原料

小計

小計

素材

製品

小計

0

25,000

50,000

75,000

100,000

125,000

150,000

175,000

200,000

225,000

250,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)黄リン

リン酸

リン酸塩

リン酸肥料

鉱石

複合肥料

図 2-1 リンの輸入数量

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)黄リン

リン酸肥料

複合肥料

リン酸塩

リン酸

図 2-2 リンの輸出数量

2-2.輸出入相手国

2-2-1.リン鉱石

リン鉱石の輸入相手国を表2-2、図2-3に示す。主な相手国は、中国、ヨルダン、南ア、モロッコ、ベトナムな

どである。特に中国、ヨルダン、南アの上位3 ヶ国で全体の82%を占める。2013 年にモロッコからの輸入量が

減り、その分ヨルダンからの輸入量が増加しているが、輸入港に船が入港するタイミングによるものであり、

特にヨルダンからの輸入を企てたものではない。ベトナムの鉱石は大部分がリン単肥である熔リン肥料として

使用されており、熔リン肥料メーカーによる輸入が多い。ベトナムで採れる鉱石は中国からの鉱脈の延長上

にあり、品質がほぼ中国と同じである。

南アフリカからの鉱石輸入は 2012 年に前年比で半減近くまで落ち込み、2013 年も引き続き減少している。

これは南アフリカでのリン鉱石価格高騰による。南アフリカのリン鉱石はマグネシウム成分が少なく高純度

(=高品質)であり、鉱石の採掘~販売までを現地の国営企業が行っているため価格が高めに設定されてい

るようである。

2011 年から輸入が始まったナウルでは国土全体が鳥糞由来のリンで形成されており、唯一の産業がリン

の輸出である。

表 2-2 リン鉱石の輸入相手国

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 39,942 38,733 26,081 27,539 28,862 11,276 15,844 16,442 15,379 14,092 92% 39%ヨルダン 11,379 14,942 16,535 15,145 18,637 13,051 1,900 9,297 6,000 9,320 155% 26%南ア 17,473 11,127 14,892 12,395 7,851 5,009 5,420 13,666 7,805 6,106 78% 17%モロッコ 10,421 11,193 18,482 13,183 15,250 7,200 6,250 8,455 5,737 2,740 48% 8%ベトナム - - 6 2,294 3,306 2,681 912 814 1,070 2,250 210% 6%ナウル - - - - - - - 450 1,335 1,520 114% 4%イスラエル 1,615 1,170 1,694 1,390 2,107 - 701 543 525 320 61% 1%その他 1,226 264 662 264 1,609 8,696 22 566 13 2 15% 0%

合計 82,057 77,430 78,352 72,211 77,622 47,913 31,048 50,233 37,864 36,350 96% 100%出典:財務省貿易統計純分換算率:リン鉱石10%

輸入

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 340 2015/03/18 13:32:21

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341 鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

2013 年のリンの輸出は前年比101%の 6,830t で、うち原料の輸出量は前年比108%の 13t、素材の輸出量

は前年比 95%の 5,032t、製品の輸出量は前年比 119%の 1,785t となっている。原料として輸出されているの

は難燃剤用の赤リンである。素材として日本から輸出されるリン酸には、半導体洗浄用などの高純度品と金

属表面処理用がある。製品である肥料の輸出は日本メーカーのみ生産している特殊なものが一部ある程度

である。

表 2-1 リンの輸出入数量

単位:純分t

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 82,057 77,430 78,352 72,211 77,622 47,913 31,048 50,233 37,864 36,350 96%

輸出 - - - - - - - - - -

輸入 31,602 31,481 31,253 28,624 31,282 13,774 24,272 20,678 18,255 16,306 89%

輸出 31 40 56 67 67 36 26 9 12 13 108%

輸入 113,659 108,910 109,605 100,835 108,904 61,687 55,321 70,911 56,119 52,656 94%

輸出 31 40 56 67 67 36 26 9 12 13 108%

輸入-輸出 113,628 108,871 109,549 100,768 108,837 61,651 55,294 70,901 56,108 52,643 94%

輸入 9,195 13,912 12,558 17,321 25,412 21,892 26,531 24,652 19,571 17,499 89%

輸出 9,573 8,614 9,658 8,919 7,833 3,304 4,030 3,669 3,244 2,876 89%

輸入 17,716 19,149 21,281 22,078 19,464 18,163 23,247 22,572 21,327 19,212 90%

輸出 4,670 4,034 3,992 4,386 3,225 2,030 2,281 1,506 2,035 2,157 106%

輸入 26,910 33,061 33,839 39,399 44,876 40,055 49,778 47,224 40,898 36,711 90%

輸出 14,242 12,648 13,651 13,304 11,058 5,333 6,311 5,174 5,279 5,032 95%

輸入-輸出 12,668 20,413 20,189 26,095 33,818 34,722 43,467 42,049 35,619 31,679 89%

輸入 22,355 21,662 22,158 19,748 13,897 8,684 13,050 17,744 19,605 19,812 101%

輸出 52.0 54.5 106.0 123.2 81.4 58.1 63.8 63.2 72.9 49.3 68%

輸入 58,605 55,607 57,472 54,789 57,016 41,795 39,943 45,969 46,070 50,596 110%

輸出 1,907 2,150 2,023 2,022 2,367 1,227 1,525 1,738 1,430 1,736 121%

輸入 80,959 77,269 79,630 74,537 70,913 50,479 52,993 63,713 65,675 70,408 107%

輸出 1,959 2,205 2,129 2,145 2,449 1,285 1,589 1,801 1,503 1,785 119%

輸入-輸出 79,000 75,065 77,501 72,392 68,465 49,194 51,404 61,912 64,172 68,622 107%

輸入 221,528 219,240 223,074 214,771 224,694 152,221 158,091 181,848 162,692 159,775 98%

輸出 16,232 14,892 15,835 15,517 13,574 6,654 7,927 6,985 6,794 6,830 101%

輸入-輸出 205,296 204,348 207,239 199,254 211,120 145,567 150,164 174,863 155,899 152,945 98%

出典:財務省貿易統計

純分換算率:鉱石10%、黄リン100%、リン酸(五酸化二リン44%、リン酸・ポリリン酸39%)、リン酸塩30%、リン酸肥料13%、複合肥料7%

※原料は鉱石、黄リン、素材はリン酸、リン酸塩、製品はリン酸肥料、複合肥料による。

合計

リン酸肥料

複合肥料

リン酸塩

リン酸

鉱石

黄リン原料

小計

小計

素材

製品

小計

0

25,000

50,000

75,000

100,000

125,000

150,000

175,000

200,000

225,000

250,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)黄リン

リン酸

リン酸塩

リン酸肥料

鉱石

複合肥料

図 2-1 リンの輸入数量

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)黄リン

リン酸肥料

複合肥料

リン酸塩

リン酸

図 2-2 リンの輸出数量

2-2.輸出入相手国

2-2-1.リン鉱石

リン鉱石の輸入相手国を表2-2、図2-3に示す。主な相手国は、中国、ヨルダン、南ア、モロッコ、ベトナムな

どである。特に中国、ヨルダン、南アの上位3 ヶ国で全体の82%を占める。2013 年にモロッコからの輸入量が

減り、その分ヨルダンからの輸入量が増加しているが、輸入港に船が入港するタイミングによるものであり、

特にヨルダンからの輸入を企てたものではない。ベトナムの鉱石は大部分がリン単肥である熔リン肥料として

使用されており、熔リン肥料メーカーによる輸入が多い。ベトナムで採れる鉱石は中国からの鉱脈の延長上

にあり、品質がほぼ中国と同じである。

南アフリカからの鉱石輸入は 2012 年に前年比で半減近くまで落ち込み、2013 年も引き続き減少している。

これは南アフリカでのリン鉱石価格高騰による。南アフリカのリン鉱石はマグネシウム成分が少なく高純度

(=高品質)であり、鉱石の採掘~販売までを現地の国営企業が行っているため価格が高めに設定されてい

るようである。

2011 年から輸入が始まったナウルでは国土全体が鳥糞由来のリンで形成されており、唯一の産業がリン

の輸出である。

表 2-2 リン鉱石の輸入相手国

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 39,942 38,733 26,081 27,539 28,862 11,276 15,844 16,442 15,379 14,092 92% 39%ヨルダン 11,379 14,942 16,535 15,145 18,637 13,051 1,900 9,297 6,000 9,320 155% 26%南ア 17,473 11,127 14,892 12,395 7,851 5,009 5,420 13,666 7,805 6,106 78% 17%モロッコ 10,421 11,193 18,482 13,183 15,250 7,200 6,250 8,455 5,737 2,740 48% 8%ベトナム - - 6 2,294 3,306 2,681 912 814 1,070 2,250 210% 6%ナウル - - - - - - - 450 1,335 1,520 114% 4%イスラエル 1,615 1,170 1,694 1,390 2,107 - 701 543 525 320 61% 1%その他 1,226 264 662 264 1,609 8,696 22 566 13 2 15% 0%

合計 82,057 77,430 78,352 72,211 77,622 47,913 31,048 50,233 37,864 36,350 96% 100%出典:財務省貿易統計純分換算率:リン鉱石10%

輸入

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 341 2015/03/18 13:32:21

Page 8: 1.需給動向 - JOGMEC金属資源情報mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/31_201504_P.pdf335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 リン(P) 5. マ テ リ ア ル フ

342鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)

その他モロッコ南アヨルダン中国

図 2-3 リン鉱石の輸入相手国

2-2-2.黄リン

黄リンの輸出入相手国を表 2-3、輸入相手国を図2-4 に示す。主な相手国はベトナム、中国の 2 ヶ国であり、

2010 年までは中国からの輸入量が多かったが、2011 年にほぼ半々となり、2012 年以降はベトナムからの輸

入量が多くなった。これは価格競争の末、ベトナムの競争力が上がったためである。このほか、オランダから

の輸入が 2013 年に激減しているが、これは現地の黄リンメーカーが倒産したためである。

表 2-3 黄リンの輸出入相手国

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

ベトナム - 50 907 840 2,500 5,023 9,139 9,866 12,614 12,281 97% 75%中国 30,861 30,906 28,728 26,095 24,255 8,351 13,948 9,928 5,426 4,007 74% 25%オランダ 652 482 1,590 1,672 4,139 284 1,145 883 215 18 9% 0%ドイツ 89 42 27 17 20 6 - - - - - -その他 0 0 0 0 368 110 40 1 - 0 - 0%

合計 31602 31481 31253 28624 31282 13774 24272 20678 18255 16,306 89% 100%韓国 24.675 34.178 43.62 58.783 58.88 31.602 22.012 5.234 4.252 6.27 147% 49%中国 0.876 0.086 1.327 1.172 1.179 0.634 1.324 1.712 2.408 2.375 99% 19%台湾 0 0.693 0.838 0.536 0.616 0.851 1.209 1.151 1.106 1.41 127% 11%米国 1.235 1.676 1.618 0.117 3.112 0.207 0.4 0.225 1.657 0.329 20% 3%その他 4 3 8 7 4 2 1 1 2 2 101% 18%

合計 30.912 39.654 55.8 67.291 67.392 35.607 26.226 9.307 11.746 12.723 108% 100%出典:財務省貿易統計純分換算率:黄リン100%

輸入

輸出

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)その他ドイツオランダ中国ベトナム

図 2-4 黄リンの輸入相手国

2-2-3.リン酸

リン酸の輸出入相手国を表2-4、図2-5、図2-6 に示す。輸出入量の中には、粗リン酸、精製リン酸、高純度

リン酸が混在している。2013 年の主要輸入相手国は中国、南アで、この 2 ヶ国で全体の 97%を占める。中国

からの輸入が全体の 80%と寡占状態であり、業界内では中国に代わる原料ソース開拓が課題になってはい

るものの、品質とコストを考えると難しい状況である。

2013 年の輸出の主要相手国は、韓国が全体の 42%を占め 1,214t、米国が 24%の 687t、シンガポールが

16%の 453t となり、上位3 ヶ国の占有率は 82%であった。韓国、米国、シンガポール向けは半導体向けの高

純度リン酸、インドネシア、マレーシア、タイ、中国向けは金属表面処理用の精製リン酸と推定される。一番の

相手国である韓国向け輸出は2012年に前年に比べ大きく減少し、2013年も前年比82%となっている。これは

韓国の国策である Buy Korea 政策の一環で、液晶や半導体などの電子機器及びその部材に加え、洗浄剤な

ども国産品の採用が積極的に進められた結果、日本からの調達量が減少したためと推定される。米国向けに

ついても半導体市場の落ち込みから前年比減少となった。シンガポール向けは前年比 106%と増えているが、

輸出量そのものが上位 2 ヶ国に比べ少ないため輸出量全体への影響は小さい。

表 2-4 リン酸の輸出入相手国

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 6,098 7,609 8,463 8,626 16,385 16,575 16,826 19,010 14,105 13,970 99% 80%南ア 2,447 5,375 0 4,078 3,891 4,268 8,933 4,653 4,588 2,942 64% 17%台湾 14 413 282 479 896 877 612 412 472 254 54% 1%

米国 0.4 7.4 7.2 7.1 19 18 37 35 79 127 161% 1%ドイツ 55 0.6 0.9 1.1 0.9 0.9 0.0 476 239 97 41% 1%

マレーシア 225 234 148 178 170 29 31 27 35 39 111% 0%韓国 211 128 116 188 3,961 0.0 15.7 22.5 41.3 37.5 91% 0%ウルグアイ 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.3 3.7 0.6 18.8 3,087% 0%

イスラエル 0.0 0.0 0.0 8.0 0.0 70 61 7.6 7.8 7.8 100% 0%イタリア 0.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 1.9 2.5 3.7 148% 0%その他 144 143 3,541 3,756 88 53 2.0 4.0 0.1 1.5 1,100% 0%

合計 9,195 13,912 12,558 17,321 25,412 21,892 26,531 24,652 19,571 17,499 89% 100%韓国 2,306 2,963 4,442 4,875 4,554 2,261 2,286 2,127 1,476 1,214 82% 42%米国 695 646 733 1,051 1,449 257 730 702 812 687 85% 24%

シンガポール 359 385 323 369 391 220 410 354 426 453 106% 16%マレーシア 32 12 9 19 4 69 82 75 79 155 197% 5%タイ 362 175 189 211 180 152 126 70 104 121 117% 4%

インドネシア 7 11 8 7 11 9 8 183 193 115 60% 4%中国 361 426 747 789 578 268 300 99 88 79 89% 3%その他 5,451 3,996 3,208 1,596 666 68 88 59 66 51 78% 2%

合計 9,573 8,614 9,658 8,919 7,833 3,304 4,030 3,669 3,244 2,876 89% 100%出典:財務省貿易統計純分換算率:五酸化二リン44%、リン酸・ポリリン酸39%

※四捨五入により、各数値と合計値、前年比、構成比が合致しない場合がある。

輸出

輸入

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)

その他台湾南ア中国

図 2-5 リン酸の輸入相手国

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 342 2015/03/18 13:32:22

Page 9: 1.需給動向 - JOGMEC金属資源情報mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/31_201504_P.pdf335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 リン(P) 5. マ テ リ ア ル フ

343 鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)

その他モロッコ南アヨルダン中国

図 2-3 リン鉱石の輸入相手国

2-2-2.黄リン

黄リンの輸出入相手国を表 2-3、輸入相手国を図2-4 に示す。主な相手国はベトナム、中国の 2 ヶ国であり、

2010 年までは中国からの輸入量が多かったが、2011 年にほぼ半々となり、2012 年以降はベトナムからの輸

入量が多くなった。これは価格競争の末、ベトナムの競争力が上がったためである。このほか、オランダから

の輸入が 2013 年に激減しているが、これは現地の黄リンメーカーが倒産したためである。

表 2-3 黄リンの輸出入相手国

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

ベトナム - 50 907 840 2,500 5,023 9,139 9,866 12,614 12,281 97% 75%中国 30,861 30,906 28,728 26,095 24,255 8,351 13,948 9,928 5,426 4,007 74% 25%オランダ 652 482 1,590 1,672 4,139 284 1,145 883 215 18 9% 0%ドイツ 89 42 27 17 20 6 - - - - - -その他 0 0 0 0 368 110 40 1 - 0 - 0%

合計 31602 31481 31253 28624 31282 13774 24272 20678 18255 16,306 89% 100%韓国 24.675 34.178 43.62 58.783 58.88 31.602 22.012 5.234 4.252 6.27 147% 49%中国 0.876 0.086 1.327 1.172 1.179 0.634 1.324 1.712 2.408 2.375 99% 19%台湾 0 0.693 0.838 0.536 0.616 0.851 1.209 1.151 1.106 1.41 127% 11%米国 1.235 1.676 1.618 0.117 3.112 0.207 0.4 0.225 1.657 0.329 20% 3%その他 4 3 8 7 4 2 1 1 2 2 101% 18%

合計 30.912 39.654 55.8 67.291 67.392 35.607 26.226 9.307 11.746 12.723 108% 100%出典:財務省貿易統計純分換算率:黄リン100%

輸入

輸出

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)その他ドイツオランダ中国ベトナム

図 2-4 黄リンの輸入相手国

2-2-3.リン酸

リン酸の輸出入相手国を表2-4、図2-5、図2-6 に示す。輸出入量の中には、粗リン酸、精製リン酸、高純度

リン酸が混在している。2013 年の主要輸入相手国は中国、南アで、この 2 ヶ国で全体の 97%を占める。中国

からの輸入が全体の 80%と寡占状態であり、業界内では中国に代わる原料ソース開拓が課題になってはい

るものの、品質とコストを考えると難しい状況である。

2013 年の輸出の主要相手国は、韓国が全体の 42%を占め 1,214t、米国が 24%の 687t、シンガポールが

16%の 453t となり、上位3 ヶ国の占有率は 82%であった。韓国、米国、シンガポール向けは半導体向けの高

純度リン酸、インドネシア、マレーシア、タイ、中国向けは金属表面処理用の精製リン酸と推定される。一番の

相手国である韓国向け輸出は2012年に前年に比べ大きく減少し、2013年も前年比82%となっている。これは

韓国の国策である Buy Korea 政策の一環で、液晶や半導体などの電子機器及びその部材に加え、洗浄剤な

ども国産品の採用が積極的に進められた結果、日本からの調達量が減少したためと推定される。米国向けに

ついても半導体市場の落ち込みから前年比減少となった。シンガポール向けは前年比 106%と増えているが、

輸出量そのものが上位 2 ヶ国に比べ少ないため輸出量全体への影響は小さい。

表 2-4 リン酸の輸出入相手国

単位:純分t2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比 構成比

中国 6,098 7,609 8,463 8,626 16,385 16,575 16,826 19,010 14,105 13,970 99% 80%南ア 2,447 5,375 0 4,078 3,891 4,268 8,933 4,653 4,588 2,942 64% 17%台湾 14 413 282 479 896 877 612 412 472 254 54% 1%

米国 0.4 7.4 7.2 7.1 19 18 37 35 79 127 161% 1%ドイツ 55 0.6 0.9 1.1 0.9 0.9 0.0 476 239 97 41% 1%

マレーシア 225 234 148 178 170 29 31 27 35 39 111% 0%韓国 211 128 116 188 3,961 0.0 15.7 22.5 41.3 37.5 91% 0%ウルグアイ 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.3 3.7 0.6 18.8 3,087% 0%

イスラエル 0.0 0.0 0.0 8.0 0.0 70 61 7.6 7.8 7.8 100% 0%イタリア 0.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 1.9 2.5 3.7 148% 0%その他 144 143 3,541 3,756 88 53 2.0 4.0 0.1 1.5 1,100% 0%

合計 9,195 13,912 12,558 17,321 25,412 21,892 26,531 24,652 19,571 17,499 89% 100%韓国 2,306 2,963 4,442 4,875 4,554 2,261 2,286 2,127 1,476 1,214 82% 42%米国 695 646 733 1,051 1,449 257 730 702 812 687 85% 24%

シンガポール 359 385 323 369 391 220 410 354 426 453 106% 16%マレーシア 32 12 9 19 4 69 82 75 79 155 197% 5%タイ 362 175 189 211 180 152 126 70 104 121 117% 4%

インドネシア 7 11 8 7 11 9 8 183 193 115 60% 4%中国 361 426 747 789 578 268 300 99 88 79 89% 3%その他 5,451 3,996 3,208 1,596 666 68 88 59 66 51 78% 2%

合計 9,573 8,614 9,658 8,919 7,833 3,304 4,030 3,669 3,244 2,876 89% 100%出典:財務省貿易統計純分換算率:五酸化二リン44%、リン酸・ポリリン酸39%

※四捨五入により、各数値と合計値、前年比、構成比が合致しない場合がある。

輸出

輸入

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)

その他台湾南ア中国

図 2-5 リン酸の輸入相手国

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 343 2015/03/18 13:32:22

Page 10: 1.需給動向 - JOGMEC金属資源情報mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/31_201504_P.pdf335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 リン(P) 5. マ テ リ ア ル フ

344鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)

その他シンガポール米国韓国

図 2-6 リン酸の輸出相手国

2-3.輸出入価格

リンの平均輸出入価格を表 2-5、図 2-7、図 2-8 に示す。2013 年のリン鉱石の輸入価格は前年比 91%の

254.1$/t であった。黄リンの輸入価格は前年比100%の 3.6$/㎏、リン酸の輸入価格は前年比94%の 0.9$/㎏

であった。リンの輸入価格を見ると、原料、素材、製品とも 2008 年に一気に上昇、2009 年には鉱石以外のリン

価格は一気に下落し、その後は大きな増減は無い。鉱石は 2008 年に続き 2009 年の平均輸入価格も前年より

高くなったが、2010 年以降は急激に下落している。

2008 年の価格上昇は、いわゆるリンパニックである。当時、リン鉱石の資源枯渇の可能性が指摘されたこ

と、世界の人口増による食糧不足の危機が叫ばれたことで、鉱石から素材であるリン酸、製品である肥料まで

全てのリンの価格が高騰した。

輸出価格はリンパニックで輸入価格が上がった翌年の 2009 年に大きく上昇しているが、これは価格が高騰

した材料を使用して生産された各種リンが市場に出るのに1年程度のタイムラグが生じたためである。輸出の

主力である工業用の精製リン酸(PPA)は半導体や金属表面処理に使用され、主なマーケットは欧州や中国で

ある。自動車産業、半導体産業の状況が好調であれば PPA 使用量も増えて輸出価格も上がるが、不調にな

ると輸出価格は下がる。

リン鉱石の輸入価格が2013年に前年に比べ26$/t程度下がっているが、これはロシアの化学メーカーであ

る Acron OAO がリン鉱石の採掘を開始し、供給量が増えたことから世界規模でリン鉱石の価格が下落した影

響である。

リンの主要用途である肥料向けについては、日本国内の農業市場の縮小により鉱石、素材、製品ともに輸

入のボリュームはワールドワイドで見ると大きな規模とは言えない。一方で、例えばインドのように人口問題

を抱える国や、農業が主要産業となっている国では肥料の市場も大きく、材料であるリンを大量に調達する必

要があるため、原料メーカー、素材メーカーと年間契約を結んで大量に買い付ける。インドに比べ日本の輸入

価格はスポット的な購入が主体となり、高くなりがちである。

表 2-5 リンの平均輸出入価格

単位 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 101.7 115.9 128.6 147.5 356.2 457.2 223.7 259.2 280.2 254.1 91%

輸出 - - - - - - - - - - -

輸入 1.9 2.2 2.1 2.0 6.6 3.4 3.1 3.4 3.6 3.6 100%

輸出 110.0 35.7 33.7 30.7 33.8 48.0 93.2 216.7 245.1 218.3 89%

輸入 0.5 0.5 0.5 0.5 1.1 0.7 0.7 0.9 1.0 0.9 94%

輸出 1.7 1.6 1.6 1.6 2.8 3.5 2.6 2.8 2.7 2.5 91%

輸入 0.5 0.5 0.6 0.6 1.3 0.9 0.9 1.0 1.1 1.1 96%

輸出 1.7 2.0 2.2 2.1 3.2 4.0 4.7 8.0 6.2 5.5 89%

輸入 200.7 232.2 247.0 253.5 671.2 409.1 380.0 462.1 448.7 460.9 103%

輸出 1,211.1 932.6 644.2 751.2 1,057.1 1,461.3 1,756.4 1,901.4 1,658.0 1,296.6 78%

輸入 325.1 368.0 390.1 468.1 1,007.0 649.2 598.1 707.7 657.5 578.0 88%

輸出 1,071.5 1,095.2 1,136.1 1,258.6 1,517.1 1,570.4 1,464.8 1,649.2 1,754.8 1,491.5 85%

出典:財務省貿易統計

※輸出入価格は貿易統計の貿易額を財務省による年間平均為替レートにより米ドルベースに換算し、年間平均価格を示した。

$/t

$/t

リン酸 $/kg

製品

$/kg

リン酸肥料

複合肥料

原料

素材

$/t

$/kg

鉱石

黄リン

リン酸塩

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/MTU)鉱石(輸入)

リン酸肥料(輸入)

複合肥料(輸入)

リン酸肥料(輸出)

複合肥料(輸出)

図 2-7 リン(鉱石、リン酸肥料、複合肥料)の平均輸出入価格

0

50

100

150

200

250

0

2

4

6

8

10

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/kg)($/kg)

黄リン(輸入)

リン酸(輸入)

リン酸塩(輸入)

リン酸(輸出)

リン酸塩(輸出)

図 2-8 リン(黄リン、リン酸、リン酸塩)の平均輸出入価格

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 344 2015/03/18 13:32:22

Page 11: 1.需給動向 - JOGMEC金属資源情報mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/31_201504_P.pdf335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 リン(P) 5. マ テ リ ア ル フ

345 鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(純分t)

その他シンガポール米国韓国

図 2-6 リン酸の輸出相手国

2-3.輸出入価格

リンの平均輸出入価格を表 2-5、図 2-7、図 2-8 に示す。2013 年のリン鉱石の輸入価格は前年比 91%の

254.1$/t であった。黄リンの輸入価格は前年比100%の 3.6$/㎏、リン酸の輸入価格は前年比94%の 0.9$/㎏

であった。リンの輸入価格を見ると、原料、素材、製品とも 2008 年に一気に上昇、2009 年には鉱石以外のリン

価格は一気に下落し、その後は大きな増減は無い。鉱石は 2008 年に続き 2009 年の平均輸入価格も前年より

高くなったが、2010 年以降は急激に下落している。

2008 年の価格上昇は、いわゆるリンパニックである。当時、リン鉱石の資源枯渇の可能性が指摘されたこ

と、世界の人口増による食糧不足の危機が叫ばれたことで、鉱石から素材であるリン酸、製品である肥料まで

全てのリンの価格が高騰した。

輸出価格はリンパニックで輸入価格が上がった翌年の 2009 年に大きく上昇しているが、これは価格が高騰

した材料を使用して生産された各種リンが市場に出るのに1年程度のタイムラグが生じたためである。輸出の

主力である工業用の精製リン酸(PPA)は半導体や金属表面処理に使用され、主なマーケットは欧州や中国で

ある。自動車産業、半導体産業の状況が好調であれば PPA 使用量も増えて輸出価格も上がるが、不調にな

ると輸出価格は下がる。

リン鉱石の輸入価格が2013年に前年に比べ26$/t程度下がっているが、これはロシアの化学メーカーであ

る Acron OAO がリン鉱石の採掘を開始し、供給量が増えたことから世界規模でリン鉱石の価格が下落した影

響である。

リンの主要用途である肥料向けについては、日本国内の農業市場の縮小により鉱石、素材、製品ともに輸

入のボリュームはワールドワイドで見ると大きな規模とは言えない。一方で、例えばインドのように人口問題

を抱える国や、農業が主要産業となっている国では肥料の市場も大きく、材料であるリンを大量に調達する必

要があるため、原料メーカー、素材メーカーと年間契約を結んで大量に買い付ける。インドに比べ日本の輸入

価格はスポット的な購入が主体となり、高くなりがちである。

表 2-5 リンの平均輸出入価格

単位 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 13/12比

輸入 101.7 115.9 128.6 147.5 356.2 457.2 223.7 259.2 280.2 254.1 91%

輸出 - - - - - - - - - - -

輸入 1.9 2.2 2.1 2.0 6.6 3.4 3.1 3.4 3.6 3.6 100%

輸出 110.0 35.7 33.7 30.7 33.8 48.0 93.2 216.7 245.1 218.3 89%

輸入 0.5 0.5 0.5 0.5 1.1 0.7 0.7 0.9 1.0 0.9 94%

輸出 1.7 1.6 1.6 1.6 2.8 3.5 2.6 2.8 2.7 2.5 91%

輸入 0.5 0.5 0.6 0.6 1.3 0.9 0.9 1.0 1.1 1.1 96%

輸出 1.7 2.0 2.2 2.1 3.2 4.0 4.7 8.0 6.2 5.5 89%

輸入 200.7 232.2 247.0 253.5 671.2 409.1 380.0 462.1 448.7 460.9 103%

輸出 1,211.1 932.6 644.2 751.2 1,057.1 1,461.3 1,756.4 1,901.4 1,658.0 1,296.6 78%

輸入 325.1 368.0 390.1 468.1 1,007.0 649.2 598.1 707.7 657.5 578.0 88%

輸出 1,071.5 1,095.2 1,136.1 1,258.6 1,517.1 1,570.4 1,464.8 1,649.2 1,754.8 1,491.5 85%

出典:財務省貿易統計

※輸出入価格は貿易統計の貿易額を財務省による年間平均為替レートにより米ドルベースに換算し、年間平均価格を示した。

$/t

$/t

リン酸 $/kg

製品

$/kg

リン酸肥料

複合肥料

原料

素材

$/t

$/kg

鉱石

黄リン

リン酸塩

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/MTU)鉱石(輸入)

リン酸肥料(輸入)

複合肥料(輸入)

リン酸肥料(輸出)

複合肥料(輸出)

図 2-7 リン(鉱石、リン酸肥料、複合肥料)の平均輸出入価格

0

50

100

150

200

250

0

2

4

6

8

10

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

($/kg)($/kg)

黄リン(輸入)

リン酸(輸入)

リン酸塩(輸入)

リン酸(輸出)

リン酸塩(輸出)

図 2-8 リン(黄リン、リン酸、リン酸塩)の平均輸出入価格

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 345 2015/03/18 13:32:23

Page 12: 1.需給動向 - JOGMEC金属資源情報mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/31_201504_P.pdf335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 リン(P) 5. マ テ リ ア ル フ

346鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

3.生産者及び生産品目

日本におけるリンの主要生産者は表3 の通りである。

表 3 主要生産者及び生産品目

湿式 乾式 湿式 乾式 湿式 乾式日本燐酸 ○ - - - - -東洋燐酸 ○ - - - - -下関三井化学 - - ○ - ○日本化学工業 - - - ○ - ○ラサ工業 - - - ○ - ○リン化学工業 - - - ○ - ○

出典:矢野経済研究所作成

粗リン酸

精製リン酸

食品添加用工業用肥料用

4.リサイクル

リンのリサイクル率は以下の定義により推計すると 0%である。

国内のリンのリサイクルへの取り組みは 2008 年のリン価格の急騰(リンパニック)をきっかけに始まった。

現在、日本燐酸が下水汚泥の焼却灰をリン酸原料代替物として利用している他、下関三井化学が独自の難回

収物資源化サービスに取り組むなど、企業によるリサイクル事業の他、国土交通省や各自治体でも研究開発

が進められている。

鉄鋼業では、鉄鋼特性に有害なリンを製鋼過程において製品から徹底的に除去するため、製鋼スラグ中に

リンが濃縮される。製鋼スラグは年間約 1,000 万 t も排出されるので、これを再利用できれば現在輸入してい

るリン鉱石分にほぼ匹敵するリン量を賄うことができるが、製鋼スラグはその大部分がコンクリート骨材や路

盤材等の建設用材料に使用されており、スラグからのリンのリサイクルは行われていない。

肥料用として使用されるリンは、化学肥料から土(土壌)、作物へと流れ、人体や家畜などへと循環するため、

使用済の製品からの回収は非常に難しい状況である。

リサイクル率 =(使用済み製品のマテリアルリサイクル量)/(見掛消費)

見掛消費 =(国内生産)+(原料・素材の輸入)-(原料・素材の輸出)

※原料は鉱石、黄リン、素材はリン酸、リン酸塩の合計値。

5.マ

テリ

アル

フロ

リン

のマ

テリ

アル

フロ

ー(2013)

国内

生産

量65,0

60

t国

内生

産量

16,5

68

t国

内生

産量

需要

量166,2

65

輸入

量36,3

50

t輸

入量

輸入

量17,4

99

t輸

入量

34,9

11

輸出

量輸

出量

2,8

76

t輸

出量

肥料

日本

燐酸

日本

化学

工業

国内

生産

量需

要量

27,8

00

輸入

量19,2

12

輸出

量2,1

57

輸入

量16

,306

輸出

量13

※海

外か

ら100%

輸入

※中

国、

ベト

ナム

から

輸入

国内

生産

日本

ソー

三国

製薬

国内

生産

日本

化学

工業

国内

生産

純分

換算

率:鉱

石10%

、黄

リン

100%

、リ

ン酸

(五

酸化

二リ

ン44%

、リ

ン酸

・ポ

リリ

ン酸

39%

)、

リン

酸塩

30%

※国

内生

産量

は無

機薬

品協

会統

計、

経済

産業

省生

産動

態統

計よ

黄リ

ン高

純度

リン

酸塩

化リ

ン(三

塩化

・五

塩化

・オ

キシ塩

化リ

ン等

)

リチ

ウム

イオ

ン電

-

五酸

化二

リン

-メ

ッキ

、電

極国

内主

要生

産企

日本

化学

工業

-半

導体

エッ

チン

赤リ

-L

CD

パネ

ルエ

ッチ

ング

国内

主要

生産

企業

ラサ

工業

リン

系難

燃剤

・可

塑剤

リン

化学

工業

-

国内

主要

生産

企業

リン

酸塩

(ホス

フィン

酸塩

、ホ

スホ

ン酸

塩等

)

国内

主要

生産

企業

下関

三井

工業

用リ

ン食

品・医

薬品

添加

物ラ

サ工

東洋

燐酸

乾式

リン

酸(工

業用

-

※海

外か

ら100

%輸

入-

工業

用国

内主

要生

産企

-

湿式

リン

酸湿

式リ

ン酸

(工

業用

原料

素材

製品

・主

要用

リン

鉱石

(リ

ン酸

塩鉱

物を

主成

分と

した

鉱石

粗リ

ン酸

精製

リン

酸リ

ン酸

アン

モニ

ウム

肥料

用リ

ン肥

料-

 輸

出入

のみ

国内

生産

あり

製造

フロ

ー(国

内製

造あ

り)

リサ

イク

ルの

フロ

ー直

接の

輸出

入な

し製

造フ

ロー

(国

内製

造な

し)

鉱物資源マテリアルフロー2014.indb 346 2015/03/18 13:32:23

Page 13: 1.需給動向 - JOGMEC金属資源情報mric.jogmec.go.jp/public/report/2015-03/31_201504_P.pdf335 鉱物資源マテリアルフロー 2014 リン(P) 5. マ テ リ ア ル フ

347 鉱物資源マテリアルフロー 2014

リン(P)

3.生産者及び生産品目

日本におけるリンの主要生産者は表3 の通りである。

表 3 主要生産者及び生産品目

湿式 乾式 湿式 乾式 湿式 乾式日本燐酸 ○ - - - - -東洋燐酸 ○ - - - - -下関三井化学 - - ○ - ○日本化学工業 - - - ○ - ○ラサ工業 - - - ○ - ○リン化学工業 - - - ○ - ○

出典:矢野経済研究所作成

粗リン酸

精製リン酸

食品添加用工業用肥料用

4.リサイクル

リンのリサイクル率は以下の定義により推計すると 0%である。

国内のリンのリサイクルへの取り組みは 2008 年のリン価格の急騰(リンパニック)をきっかけに始まった。

現在、日本燐酸が下水汚泥の焼却灰をリン酸原料代替物として利用している他、下関三井化学が独自の難回

収物資源化サービスに取り組むなど、企業によるリサイクル事業の他、国土交通省や各自治体でも研究開発

が進められている。

鉄鋼業では、鉄鋼特性に有害なリンを製鋼過程において製品から徹底的に除去するため、製鋼スラグ中に

リンが濃縮される。製鋼スラグは年間約 1,000 万 t も排出されるので、これを再利用できれば現在輸入してい

るリン鉱石分にほぼ匹敵するリン量を賄うことができるが、製鋼スラグはその大部分がコンクリート骨材や路

盤材等の建設用材料に使用されており、スラグからのリンのリサイクルは行われていない。

肥料用として使用されるリンは、化学肥料から土(土壌)、作物へと流れ、人体や家畜などへと循環するため、

使用済の製品からの回収は非常に難しい状況である。

リサイクル率 =(使用済み製品のマテリアルリサイクル量)/(見掛消費)

見掛消費 =(国内生産)+(原料・素材の輸入)-(原料・素材の輸出)

※原料は鉱石、黄リン、素材はリン酸、リン酸塩の合計値。

5.マ

テリ

アル

フロ

リン

のマ

テリ

アル

フロ

ー(2013)

国内

生産

量65,0

60

t国

内生

産量

16,5

68

t国

内生

産量

需要

量166,2

65

輸入

量36,3

50

t輸

入量

輸入

量17,4

99

t輸

入量

34,9

11

輸出

量輸

出量

2,8

76

t輸

出量

肥料

日本

燐酸

日本

化学

工業

国内

生産

量需

要量

27,8

00

輸入

量19,2

12

輸出

量2,1

57

輸入

量16

,306

輸出

量13

※海

外か

ら100%

輸入

※中

国、

ベト

ナム

から

輸入

国内

生産

日本

ソー

三国

製薬

国内

生産

日本

化学

工業

国内

生産

純分

換算

率:鉱

石10%

、黄

リン

100%

、リ

ン酸

(五

酸化

二リ

ン44%

、リ

ン酸

・ポ

リリ

ン酸

39%

)、

リン

酸塩

30%

※国

内生

産量

は無

機薬

品協

会統

計、

経済

産業

省生

産動

態統

計よ

黄リ

ン高

純度

リン

酸塩

化リ

ン(三

塩化

・五

塩化

・オ

キシ塩

化リ

ン等

)

リチ

ウム

イオ

ン電

-

五酸

化二

リン

-メ

ッキ

、電

極国

内主

要生

産企

日本

化学

工業

-半

導体

エッ

チン

赤リ

-L

CD

パネ

ルエ

ッチ

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国内

主要

生産

企業

ラサ

工業

リン

系難

燃剤

・可

塑剤

リン

化学

工業

-

国内

主要

生産

企業

リン

酸塩

(ホス

フィン

酸塩

、ホ

スホ

ン酸

塩等

)

国内

主要

生産

企業

下関

三井

工業

用リ

ン食

品・医

薬品

添加

物ラ

サ工

東洋

燐酸

乾式

リン

酸(工

業用

-

※海

外か

ら100

%輸

入-

工業

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内主

要生

産企

-

湿式

リン

酸湿

式リ

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(工

業用

原料

素材

製品

・主

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リン

鉱石

(リ

ン酸

塩鉱

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鉱石

粗リ

ン酸

精製

リン

酸リ

ン酸

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肥料

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 輸

出入

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国内

生産

あり

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ー(国

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(国

内製

造な

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