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1 2 69 2006.タキイ最前線 創刊号 野菜のチーム 日本農園芸資材研究会 理事 技術部長 稲山 光男 キュウリ 7 筆者紹介 筆者略歴 稲山 光男 1962 ・越 1964 から 1967 (そ )。 に、 キュ 、およびキュ における などの する。 1991 にそ 1997 2000 ター・園 として、 ころかかわった から け、 ーな している。

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692006.タキイ最前線 創刊号

花芽の分化

キュウリの場合は、花芽分化にナス科野

菜のような規則性がありません。第1図に

示すように、トマトやナスはある程度生育

すると、生長点部位に花芽を分化し、花芽

が分化されて生長が止まると、今度はわき

芽を形成して生長します。そして、再び生

長点部位に花芽を分化し、これを繰り返し

ながら生育することになります。

それに対して、キュウリの場合は図から

も分かるように、生長点部分は葉芽のみを

次々に分化し続け、花芽は生長した葉芽の

内側に分化します。したがって、キュウリ

の生育過程から見ると、初めは栄養生長が

先行し、その後に生殖生長が加わる形にな

ります。

また、トマトやナスの花には「雄花」「雌

花」の雌雄の別はありませんが、キュウリ

には「雄花」「雌花」「両性花」の3種の花

があります(写真1・2・3)。これらの

うち、果実に発達する栽培上必要な花は雌

花のみなので、雌花の着生数は収量に関係

が深いということになります。キュウリの

雌花着生性は、基本的には遺伝的なものに

由来し、栽培上では品種特性として「節成

り性」と扱われます(第2図)。

しかし、雌花の着生は遺伝的な支配を受

けながらも、生育環境要因でも左右されま

す。低温や短日条件が、雌花着生を促す要

因になります。したがって、同じ品種を促

成栽培の作型と抑制栽培の作型で栽培して

みると、まったく別品種のような雌花着生

の様相を呈します。

多収を得るには節数を確保

前項でも述べたように、キュウリの花芽

は葉芽腋に分化することから、基本的には

節数(葉数)の増加が収量の増加につなが

ります(第3図)。

節数を確保する方法には、「つる下げ栽

培」と「摘芯栽培」の二つがあります(写

真4・5)。つる下げ栽培といわれるのは、

主枝(親づる)を伸ばして一定の高さに達

野菜のQ&Aチーム日本農園芸資材研究会 理事 技術部長

稲山 光男

キュウリ第7回

筆者紹介筆者略歴稲山 光男1962年、埼玉県農業試験場・越谷支場に勤務。1964年から野菜担当。1967年、埼玉県園芸試験場そ菜・花き部に勤務(そ菜担当)。主に、施設栽培キュウリの品種特性調査、作型開発、増収技術、高品質生産技術、およびキュウリの施設栽培における環境制御法などの試験研究に従事する。1991年にそ菜部長。1997年、同試験場・鶴ヶ島洪積畑支場長。2000年、埼玉県農林総合研究センター・園芸支所長。退職後は日本農園芸資材研究会の技術部長として、現職のころかかわった各地の野菜産地から要請を受け、産地の活性化に比較的フリーな立場で尽力している。

キュウリの良品多収技術

キュウリは、その原種と思われる

ものが、インドのヒマラヤ山麓シッ

キム地方に分布していることから、

原産地はインドであることが定説に

なっています。

野生のキュウリは標高1500m

前後の所で雑草となっていて、その

果実は小さく、激しい苦みを有し、

とても食べられるものではないとい

います。したがって、キュウリはヒ

マラヤ山麓からネパール付近に分布

していた野生種が、長い歳月をかけ

て現在の栽培種に進化したものだと

思われます。そして、世界各地へ文

化の交流とともに伝播し、それぞれ

の地域において、気候・風土やその

土地の食文化などを背景に系統の選

抜や改良が加えられ、各地に土着し

たのでしょう。

日本へは、10世紀以前に中国から

入ってきていますが、しばらくの間

は重要視されなかったらしく、シロ

ウリやマクワウリの方が評価されて

先に定着したようです。キュウリに

ついては、江戸時代の中ごろに「ウ

リ類の中でも下品なもの、味のよい

ものではない」とか、「田舎で作る

もので都では見ることが少ない」な

どといわれていた記録が残されてい

ます。

各地で栽培されるようになったの

は江戸時代末期といわれ、キュウリ

が野菜の中で現在の位置にまで普及

したのは、第二次世界大戦後のこと

です。品種改良が進み、国民の食生

活も変化したのに加えて、施設園芸

が普及し、作型が多様化して周年栽

培が可能になったことによるものと

いわれています。

キュウリの原産地と日本への伝播

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したら生長点を下げ、再び一定の高さに達

したらつるを下げるという作業を、栽培期

間中に繰り返し行って節数を確保する方法

です。また、摘芯栽培とは、主枝(親づる)

を一定の高さ(一般的には1・8m前後、

約20節)で摘芯して、主枝から発生する側

枝(子づる)も2節位で摘芯、その側枝か

ら発生してくる側枝(孫づる)も同様に摘

芯するもので、側枝を摘芯しながら節数を

確保していく方法です。

つる下げ栽培では、栽培期間中に頻繁に

つるを下げる作業を行う必要があります。

これは労力を要するだけでなく、肥大途中

の果実が着生している状態でつるを下げた

り、摘葉したりするため、着生果実へ影響

を与えることになり、好ましいとはいえま

せん。一方、摘芯栽培では、主枝からの側

枝(子づる)の発生が重要で、その後の側

枝発生のもとになります。これには、初期

の草勢と草姿形成がポイントで、その後は

常に旺盛な草勢維持管理に努めることが、

節数増加につながります(写真6)。

第1図 ウリ科の花芽分化とナス科の花芽分化

わき芽 (生長点)

生長点

花芽 花芽

キュウリ トマト

第2図 着果習性から見た品種の型

主枝型 主枝・側枝型 側枝型 側枝・主枝型

第3図 収量を構成する諸要因

生殖生長

栄養生長 (養分吸収) (光合成)

(土壌管理)

果実肥大

節数×着果率×栽植株数

雌花着生数÷節数

草丈+側枝の発生数……(摘芯節数)

地  力

施  肥

土壌水分

地下部環境

主枝の伸長

側枝の発育

葉数の増加

地上部環境

整枝・摘葉

病害虫防除

温  度

炭酸ガス

品  種 育苗管理

株負担

(環境管理)

(落葉)

発育速度 収穫果の大きさ 開花後日数

(栄養)

} {

収 量 収穫果数×1果平均重

つる下げ栽培。下げたつるはベッド上に置かれ

る。頻繁につるが下げられることから、葉も小

さくなる。

草勢が強ければ、

このように子づる

を摘芯すると、す

ぐに孫づるの発生

が見られる。

↑開花時の雌花は、上を向いて開くようでなければならない。

↑キュウリの雄花(雄花節からは側枝が発生しやすい)。

↑両性花が発育肥大した両性果。

摘芯栽培。

写真1写真2写真3

写真5 写真4

写真6

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712006.タキイ最前線 創刊号

キュウリの根は、トマトやナスに比

べて酸素要求量が多いことから、地表

下の比較的浅い土層を横へ伸びて、根

群形成をしていく特性があります(第

4図)。一方で、土壌の表層部分は空

気中の温湿度などの影響を受けやすく、

根圏環境も変化しやすいということに

なります。特に、土壌の乾湿があると、

根が障害を受けやすいので注意が必要

です。

そこで、栽培にあたっては堆たい

肥ひ

を十

分に施して深耕し、物理性に富んだ、

排水性がよくて保水性のある深い耕土

をつくり、根群の発達に好適な根圏環

境領域の土壌条件にしておきましょう。

そのような土づくりをしておくと、根

が深層まで発達して、環境変化の影響

を受けにくくなります。

施肥量の決定

キュウリは葉が大きいうえ、側枝を

次々に発生させて旺盛な生育をさせる

ことが、多収を得るための基本になり

ます。したがって、一般的には多肥の

傾向が強い作物だといえます。

とはいえ、本来は目標収量を設定し、

その収量を得るための施肥でありたい

ものです。もちろん、作型によって栽

培時期が違うと生育様相も違い、養分

の吸収量にも違いが生じるのは当然の

ことです。

作型別のキュウリの収量と、1tを

得るための養分の吸収量を示すと、第

1表のようになります。しかし、施肥

にあたっては、天然供給量および栽培

圃ほ

場が持つ地力の違い、土壌の種類や

圃場の立地条件などによる肥料の流亡

度合いなど、様々な条件が考えられま

す。ただし、施肥量を決める目安とし

ては、養分吸収量に、土質による施肥

倍率を乗じて、施肥量を算出すること

ができます(第2表)。

そして、施肥の際はすでに述べたよ

うに、その圃場の残存養

分などを考慮に入れて行

うことになります。また、

肥培管理については、生

育段階ごとに生育状況を

観察した結果と、天候な

どの予測により、必要に

応じて追肥の量や成分割

合などを補正しながら行

うことが大切です。

潅水管理

キュウリの茎葉はその

90%以上が水分であり、

収穫する果実はほとんど

が水分です。また、キュ

ウリの葉は大きく、摘芯

栽培における収穫期の1株当たりの着

葉数は、50〜60枚にもなります。土壌

が過湿状態になると、酸素不足から根

の障害を起こしてしまいますが、キュ

ウリは水分の吸収が多いので、通常は

多水分の管理を行うことになります。

土壌水分の状態を簡便に知るには、

テンショメーターという土壌水分の測

定器を用い、地表下15㎝位置の水分状

態を測定します。キュウリの場合は、

その測定値でpF1・7〜2・3の範囲

を目安に、土壌水分管理をします。

土壌管理のポイント

第4図 キュウリの根系(播種後6週間) (ウェーバーら、1927)

深さ(㎝)

0

30

60

90

作   型

促   成

半 促 成

早   熟

夏キュウリ

ハウス抑制

15

12

7

7

5

33

30

18

18

15

11

10

6

6

5

45

42

28

28

23

2.2

2.5

2.5

2.5

3.0

0.7

0.8

0.8

0.8

1.0

3.0

3.5

4.0

4.0

4.5

10a当たり 収穫(t)

10a当たり吸収量(kg)

N P2O5 K2O N P2O5 K2O

収量1t当たり吸収量(kg)

第1表 作型別推定養分吸収量 (藤枝)

作   型

促   成

半 促 成

早   熟

夏キュウリ

ハウス抑制

15

12

7

7

5

1.5

1.5

1.8

1.8

1.5

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

3.0

3.0

4.0

3.0

3.0

50

45

32

32

23

33

30

24

18

15

45

42

28

28

23

10a当たり 目標収量 (t)

施肥倍率

N P2O5 K2O N P2O5 K2O

10a当たり施肥量(kg)

第2表 作型別施肥基準 (藤枝)

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地上部管理のポイント

●定植活着から主枝摘芯までの管理が大切

良品多収を得るには、節数の確保が

決め手になることは、すでに述べた通

りですが、そのためには草姿の形成が

基本となります。定植時の活着の良否

に始まって、主枝の摘芯期までの生育

管理が、その作を大きく左右します。

つまり、定植後から主枝の雌花が開花

肥大してくるまでの、栄養生長期の生

育管理が特に大切で、それはこの段階

で草姿が形成されてしまうからです。

理想的な草姿は、側枝の発生が良好

で、強い草勢が栽培期間中、維持され

ることにあります(第5図、写真5・

7)。そのためには、定植活着後の生

育環境管理が重要で、日中は光合成が

十分行われる環境条件で管理する必要

があります。特に、午前中は十分日光

を取り込んで、温度は25〜30℃とやや

高めにし、空気中湿度も80%くらいの

高湿度条件にするなど、光合成を促進

させる環境条件で管理します。

そして、午後から夜間にかけては第

6図に示す通り、気温が下がるように

十分な換気をします。特に夕方から前

半夜の、15℃に至る下降温度推移をた

どっていく際は、外気温の低下にとも

なって徐々に温度が下がるように、天

窓やカーテンなどの換気から保温へ変

わる管理を、一つひとつ調節しながら

行うようにします。

これは、日中に葉で行われた光合成

によって得られた光合成産物を、生長

点や根などの各器官にスムーズに転流

させ、その後、低温管理をすることで

呼吸による消耗を抑制し、光合成産物

の体内蓄積を図るものです。これによ

って草勢が強くなり、生育段階で側枝

の発生が促されることになります。

第6図 温度管理の日変化(施設栽培)

日の出

日の入り

早朝加温

光合成促進

消耗抑制

呼吸消耗抑制

設定温度

転流促進

温度(℃)

30

20

10

54 6 9 12 15 18 21 24 4(時)

第5図 生育の違いによって草姿も違う

主枝の草勢が弱くて主枝着果が多く、子づるの発生が悪いもの。

Ⅰ 生育が進むにつれ草勢が強くなり、摘芯したことによって上節位から側枝発生が見られたもの。

Ⅱ 初期生育はよかったが雌花が開花してきたら草勢が落ち込み、摘芯によって上節位からは側枝が出たもの。中段からの側枝発生が見られないもの。

Ⅲ 初期生育から旺盛で各節からの側枝がよく発生し、収穫期に入っても側枝の発生が止まらなかったもの。

←草勢が強く維持されていると、力強い果実が収穫できる。

↑1条植え1条仕立ての誘引。株の両側にテープを4段張りし、側枝が垂れないようにする。

↑側枝がテープにかかることによって、下節位葉も受光できる。

写真7

写真8

写真9

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これまでに述べたような基本的管理

を忠実に行っていても、天候や微妙な

栽培環境の変化、管理のわずかな判断

ミスなどを、キュウリは敏感にとらえ

て反応するため、予測していたような

生育を示すとは限りません。現段階で

の生育が、適正な状態にあるかどうか

については、日ごろの生育状態の観察

から判断し、温度や湿度、土壌水分な

どの管理に手を加えながら、理想とし

て描く草姿に近づけるよう常に修正し

てやります。

●生育状態の観察部位の状況

・定植活着段階…展葉してくる際に、

葉色がやや淡く光沢を帯びていれば

安心。このような状態であれば、巻

きひげも太く、力強い伸びが感じら

れるはずである。

・本葉5〜8枚展開時…展開葉の葉縁

が大きく波状を呈していて、早朝、

ここに溢泌が見られるようであれば、

順調に根群が発達している。また、

下節位から側枝の発生も見られるが、

これは伸ばさないで早めに摘除する

方がよい。5節位までは摘除する。

・本葉8枚展開から主枝の摘芯まで…

芯の大きさに注意する。生長点を何

葉もの未展葉が包んでいる、大きな

芯の状態がよい(写真10)。また、展

葉直後の葉位から生長点にかけての

茎が、急に細くなっていないか(写

真11)調べ、節間がつまった生育が

見られればよい。

・そのほか…雌花の開花節位は低いか

どうか(第7図)、開花雌花は上向き

で開いているのが良好、葉柄は茎に

対して45度で伸び、葉身は葉柄に対

して90度で着葉していると理想的、

などがある。

観察の部位とその状態がどうあるべ

きかについては、いろいろな尺度をも

って見ることができますが、その中か

らいくつかの例を挙げてみました。こ

のように、生育段階ごとに観察のポイ

ントとなる部位は変わりますが(第8

図)、標準となる生育様相との間に違い

が見られるかどうか観察し、違いが見

られた場合は、その要因として何が考

えられるかを見い出して対応すること

になります。また、生理障害や病害虫

に起因する要因も、併せて同様に観察

することが、早期発見につながります。

観察のポイント

732006.タキイ最前線 創刊号

第7図 定植後の生育と雌花の開花位置

(節)

30

20

10

0定植 10 20 30 40(日)

活着促進

草姿形成

6〜7

5〜6

4〜5節下

雌花の開花

第8図 生育診断のポイント

芯が大きく 包まれている。

上を向いて 開花している。

中段の側枝の 発生はどうか?

孫づるの発生は?

しおれた花弁は黄色いか?

子葉がいつまでも 生きている。

敷きわらの下に 白い根が見える。

巻きひげは太く 元気がよいか?

生長点近くで茎は 細くなっていないか?

葉色光沢は?

葉身

葉柄

開花部位は? 45°

90°

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74 2006.タキイ最前線 創刊号

省力・減農薬高品質多収栽培

キュウリは、収穫始期からおよそ60

〜70日間の期間は、容易に強い草勢が

維持されます。そのため、この間に収

穫される果実は形状がよく揃い、果色

や光沢も良好で、高い上物収量を得る

ことができます。

また、近年は流通側の要望として、

周年供給や減農薬栽培などが求められ

ています。一方では、生産農家の労働

力不足も、産地が抱える大きな問題と

なっています。

そこで第9図のように、経営面積を

2分割して短期作型を組み合わせるこ

とで、栽培期間が短いという特徴によ

り、草勢管理や整枝管理などにきめ細

い神経や労力を費やせずに済ませるこ

とが可能となります。

この体系では、経営面積の制限因子

となる収穫や選別、荷造り労力、経営

面積や年間の収穫面積、延収穫期間は

変わりません。しかし、作期を変えて

作付面積を分散することで、その時々

の作業面積が2分の1になるため、1

回の管理労力を軽減できるというのが

特長です。基本的には、いずれの作型

とも収穫期間を重複させないような、

作型の組み合わせがポイントです。

また、収穫を打ち切って次作の準備

に入る作業と、収穫が始まった圃場の

作業は競合しますので、自家育苗は無

理になります。購入苗の利用を前提に

導入しないと、収穫作業が優先する中

で、きめ細い管理を必要とする育苗は

おろそかになりがちで、次作の作柄に

影響する心配があります。

なお、各作型の収穫時期が決まって

いるため、作型別に適する品種を用い

て品種の能力を発揮させることが、い

っそうの品質向上と多収につながりま

す。

8月 作 型

周年栽培体系 短期どり 栽培体系Ⅰ 2,521kg/a

(上物率81%)

慣行栽培体系

短期どり周年体系作業労働時間

4,342kg/2a (上物率74%)

1,356時間/10a 57.5 123 133.5 102 68 118.5 137 114.5 104.5 119.5 154.5 123

短期どり 栽培体系Ⅱ 2,201kg/a

(上物率84%)

4,722kg/2a (上物率83%)

上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下

9 10 11 12 1 2 3上 中 下

4上 中 下

5上 中 下

6上 中 下

7

慣行体系作業労働時間

粗収入の比較 短期どり周年体系:686.6万円/10a 慣行体系:546.7万円/10a1,504時間/10a 96 133 152 132 88 56 121 161 178 150 154 83

播種 定植 生育期 育苗期 収穫期

第9図 短期どり栽培体系における収量・品質および粗収入・作業労働時間

743(80%) 708(81%)

1,070(82%)

699(84%) 705(87%)

1,207(79%) 3,135(71%)

797(79%)

↑このように、芯が大きい状態で生育するのが望ましい。

↑主枝の摘芯期の少し前になると、茎が急に細くなり、芯も小さくなっている。この場合、中段からの側枝発生は望めない。

写真10

写真11