11月8日(木) 18:50~20:50(第2会場) 磁気刺激法の臨床...

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SS1-1 反復ペア TMS 刺激による一次視覚野の興奮性調 木村 岳裕 金沢大学国際基幹教育院 rTMS による皮質興奮性調節は一次運動野の研究が主であり, θ バースト刺激,4連発TMS,反復ペアTMS(rPPS)が用いら れている。しかし,視覚野(V1)における興奮性調節の研究は 無い。先ず,V1 への rPPS 効果をパターン VEP の回復曲線で検 討した。50~200 msの刺激間隔でパターンを反転させ,先行刺 激と後続刺激のN75-P100とP100-N145の頂点間振幅比から抑 制率を算出し,個体差が少ない90 ms の刺激間隔をVEP抑制の 基準とした。次に,視覚野へのrPPSを0.2 Hzの視覚マスク閾値 強度で30分間行った。P100-N145のVEP抑制は介入前と比較し て直後から10分後まで減少し,脱抑制効果を認めた。一方,V1 への rPPS 効果を単発のフラッシュ/ パターン VEP で比較した。 フラッシュVEPでのみ振幅低下が誘導され,視覚刺激感受性に よって異なる作用を示すことを確認した。 SS1-3 磁気刺激による聴覚視覚統合の干渉 ─マガー ク効果を用いた検討─ 村上 丈伸 福島県立医科大学医学部神経内科 異なる情報が脳内で同時に処理されるときに錯覚を起こすこと がある。マガーク効果はその一例で,聴覚認知が視覚性情報か ら干渉を受けることによる錯聴である。近年の脳機能画像研究 において運動領域が言語認知に寄与することが分かったが,錯 覚については不明な点が多い。26名の健常成人を対象とした。 音声と映像とが一致しない刺激(マガーク課題)と,一致した 刺激とをランダムに提示し,視聴して認識した音声について質 問する課題を用いて,機能的MRIを行った。また同じ課題を用 いて口領域と足領域の運動野にTMSを行い,マガーク効果へ の影響を検討した。機能的MRIでは,左下前頭回の脳活動がマ ガーク効果の出現率と負相関を示し,マガーク課題で左下前頭 回と両側中心前回との機能的結合が増大した。口領域の運動野 への TMS は,足領域への TMS と比べてマガーク効果の出現率 を有意に低下させた。本研究結果から,運動領域は錯覚を起こ さないように働くと考えられた。 SS1-2 tACS による視覚野の可塑性誘導 中薗 寿人 1 ,緒方 勝也 1 ,竹田 昂典 1 ,山田 絵美 1 木村 岳裕 2 ,飛松 省三 1 1 九州大学大学院医学研究院臨床神経生理学 2 金沢大学国際基幹教育院 経頭蓋交流電気刺激(tACS)は,大脳皮質の振動現象を同調さ せ,脳機能を調整する手法である。運動野では20 Hz-tACSの方 が 10 Hz より効果が高いことが知られている。一方,視覚野に 対する 10 Hz tACS は視覚野の α 帯域の振動現象を調整するが, その詳細は不明である。我々は10 Hzと20 HzのtACSを視覚野 に行い,その刺激後効果を図形反転刺激による視覚誘発電位 (VEP)や安静時 α 活動,コントラスト感度を用いて検討した。 10 Hz-tACS は VEP 振幅と安静時 α 活動の両者を増大させ,さ らに,コントラスト感度が上昇した。一方,20 Hz-tACSでは安 静時のα β 活動を調整したが,VEP振幅には影響しなかった。 以上より,tACS は周波数依存性に視覚野の振動現象を調整し, 可塑的効果を誘導することが示された。また,tACSの神経調 節は脳領域の固有のリズムと関連する可能性が考えられた。 SS1-4 文献レビュー2018 濱田  雅 東京大学医学部附属病院神経内科 この一年も多くの論文が発表された。 安全性・副作用に関する報告 反復磁気刺激後にけいれん誘発の報告があった(BrainStimul., 2018, in press; 2018, 11(2):454-5)。またCharles Bonnet症候 群が誘発された報告(BrainStimul.2018,inpress),ペースメー カー挿入中患者における磁気刺激の安全性に関する報告もあっ た(Headache,2018;58(2):295-7)。 動物・モデル研究 新しい磁気刺激装置により齧歯類動物でも局所刺激が可能であ るとする報告があった(Brain Stimul, 2018;11(3):663-5)。 ヒトでの基礎・臨床研究 乳児での磁気刺激によるマッピングの報告があった (Neurology,2018;89(20):2115-7)。人における超音波神経刺激 の報告があった(Hum Brain Mapp, 2018;39(5):1955-2006)。 このほかにも多くの論文が発表されたが,紙面の制限から一部 の論文をまとめさせて頂いた。 サテライトシンポジウム 1 11月8日(木) 18:50~20:50(第2会場) 磁気刺激法の臨床応用と安全性の基礎と臨床 当番世話人・座長:飛松 省三(九州大学大学院医学研究院)         座長:宇川 義一(福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座) 共催:エーザイ株式会社                    414 臨床神経生理学 46 巻 5 号

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SS1-1 反復ペアTMS刺激による一次視覚野の興奮性調整

木村 岳裕

金沢大学国際基幹教育院

rTMSによる皮質興奮性調節は一次運動野の研究が主であり,θバースト刺激,4連発TMS,反復ペアTMS(rPPS)が用いられている。しかし,視覚野(V1)における興奮性調節の研究は無い。先ず,V1へのrPPS効果をパターンVEPの回復曲線で検討した。50~200msの刺激間隔でパターンを反転させ,先行刺激と後続刺激のN75-P100とP100-N145の頂点間振幅比から抑制率を算出し,個体差が少ない90msの刺激間隔をVEP抑制の基準とした。次に,視覚野へのrPPSを0.2Hzの視覚マスク閾値強度で30分間行った。P100-N145のVEP抑制は介入前と比較して直後から10分後まで減少し,脱抑制効果を認めた。一方,V1へのrPPS効果を単発のフラッシュ/パターンVEPで比較した。フラッシュVEPでのみ振幅低下が誘導され,視覚刺激感受性によって異なる作用を示すことを確認した。

SS1-3 磁気刺激による聴覚視覚統合の干渉 ─マガーク効果を用いた検討─

村上 丈伸

福島県立医科大学医学部神経内科

異なる情報が脳内で同時に処理されるときに錯覚を起こすことがある。マガーク効果はその一例で,聴覚認知が視覚性情報から干渉を受けることによる錯聴である。近年の脳機能画像研究において運動領域が言語認知に寄与することが分かったが,錯覚については不明な点が多い。26名の健常成人を対象とした。音声と映像とが一致しない刺激(マガーク課題)と,一致した刺激とをランダムに提示し,視聴して認識した音声について質問する課題を用いて,機能的MRIを行った。また同じ課題を用いて口領域と足領域の運動野にTMSを行い,マガーク効果への影響を検討した。機能的MRIでは,左下前頭回の脳活動がマガーク効果の出現率と負相関を示し,マガーク課題で左下前頭回と両側中心前回との機能的結合が増大した。口領域の運動野へのTMSは,足領域へのTMSと比べてマガーク効果の出現率を有意に低下させた。本研究結果から,運動領域は錯覚を起こさないように働くと考えられた。

SS1-2 tACSによる視覚野の可塑性誘導

中薗 寿人1,緒方 勝也1,竹田 昂典1,山田 絵美1,木村 岳裕2,飛松 省三1

1九州大学大学院医学研究院臨床神経生理学2金沢大学国際基幹教育院

経頭蓋交流電気刺激(tACS)は,大脳皮質の振動現象を同調させ,脳機能を調整する手法である。運動野では20Hz-tACSの方が10Hzより効果が高いことが知られている。一方,視覚野に対する10HztACSは視覚野のα帯域の振動現象を調整するが,その詳細は不明である。我々は10Hzと20HzのtACSを視覚野に行い,その刺激後効果を図形反転刺激による視覚誘発電位

(VEP)や安静時α活動,コントラスト感度を用いて検討した。10Hz-tACSはVEP振幅と安静時α活動の両者を増大させ,さらに,コントラスト感度が上昇した。一方,20Hz-tACSでは安静時のαとβ活動を調整したが,VEP振幅には影響しなかった。以上より,tACSは周波数依存性に視覚野の振動現象を調整し,可塑的効果を誘導することが示された。また,tACSの神経調節は脳領域の固有のリズムと関連する可能性が考えられた。

SS1-4 文献レビュー2018

濱田  雅

東京大学医学部附属病院神経内科

この一年も多くの論文が発表された。安全性・副作用に関する報告反復磁気刺激後にけいれん誘発の報告があった(BrainStimul.,2018,inpress;2018,11(2):454-5)。またCharlesBonnet症候群が誘発された報告(BrainStimul.2018,inpress),ペースメーカー挿入中患者における磁気刺激の安全性に関する報告もあった(Headache,2018;58(2):295-7)。動物・モデル研究新しい磁気刺激装置により齧歯類動物でも局所刺激が可能であるとする報告があった(BrainStimul,2018;11(3):663-5)。ヒトでの基礎・臨床研究乳 児 で の 磁 気 刺 激 に よ る マ ッ ピ ン グ の 報 告 が あ っ た

(Neurology,2018;89(20):2115-7)。人における超音波神経刺激の報告があった(HumBrainMapp,2018;39(5):1955-2006)。このほかにも多くの論文が発表されたが,紙面の制限から一部の論文をまとめさせて頂いた。

サテライトシンポジウム1� 11月8日(木) 18:50~20:50(第2会場)磁気刺激法の臨床応用と安全性の基礎と臨床

当番世話人・座長:飛松 省三(九州大学大学院医学研究院)        

サテライトシンポジウム1� 11月8日(木) 18:50~20:50(第2会場)磁気刺激法の臨床応用と安全性の基礎と臨床

当番世話人・座長:飛松 省三(九州大学大学院医学研究院)        座長:宇川 義一(福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座)共催:エーザイ株式会社                   

414 臨床神経生理学 46巻5号