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- 2 - 1 携帯カイロの温度変化に関する研究 携帯カイロの温度変化に関する研究 携帯カイロの温度変化に関する研究 携帯カイロの温度変化に関する研究 1.研究の目的 .研究の目的 .研究の目的 .研究の目的 寒い時期に便利な携帯カイロ(以下カイロ)は、一般に、鉄が化する際に発生する熱を利用して いる。私たちは、この発熱温度や持続時間を、カイロを構成する質の量や種類を考えることで、 さまざまに変化させることができるのではないかと考えた。そこで、市販のカイロよりも高い温度 を示し、長時間発熱するカイロを作ることができるのではないかと考え、さまざまな自作カイロを 製作し、温度変化を計測する実験を試みた。 2.研究内容 .研究内容 .研究内容 .研究内容 実験 1 別々の会社から販売されている 5 種類のカイロの最高発熱温度と持続時間 ※1 を調べた。このと き、カイロの中身をビーカーに移して、その中に温度センサーを差し込み、温度変化を計測する という方をとった。室温や温度センサーなどすべて同じ条件で測定を行った。結果は、市販カ イロの最高発熱温度は 60~67℃という範囲で、持続時間は 30~40 分間であった。 実験 2 自作カイロを製作した。材料には鉄粉、水、性炭素、塩化ナトリウム、高吸水性ポリマー、 バーミキュライトを用いた。発熱質である鉄の量を 0.050mol から 0.40mol まで 0.050mol ごと に増加させて、実験 1 と同じ方でカイロの温度変化を計測した。結果は、鉄の量が 0.15mol 以 上で、市販カイロよりも最高温度が上がり、また持続時間も長くなった。 実験 3 金属のイオン化列に着目し、鉄よりもイオンになりやすい亜鉛では、より急激に化して高温 を示し、鉄よりもイオンになりにくいニッケルでは、鉄よりも低温を示すと考え、実験 1 と同様 の実験を行った。結果は、亜鉛は、最高温度が 81℃に到したが、持続時間が鉄より約 20 分短 かった。ニッケルはほとんど発熱せず、開始時の温度と変わらない 22℃のまま温度変化は見られ なかった。 実験 4 持続時間をより長くするという目的で、持続時間が比較的長い鉄と、最高温度が比較的高い亜 鉛を合し、その合割合を変化させて実験 1・2 と同様の測定を行った。結果は、合割合に関 わらず、鉄と亜鉛それぞれを単で用いたときよりも最高温度を上げたり、持続時間を伸ばした りすることはできなかった。 3.研究のまとめ .研究のまとめ .研究のまとめ .研究のまとめ (1) 鉄の量を多くすることで、最高発熱温度を高くすることができた。ただ、鉄の量がある一定量 を超えると、持続時間に変化がないことが分かった。 (2) 発熱質を鉄から亜鉛に変えると、最高発熱温度は上がったが、持続時間は短くなった。一方、 鉄よりもイオン化傾向が小さい金属では発熱しないことが分かった。 (3) 鉄と亜鉛を合したカイロでは、最高発熱温度と持続時間は、それぞれを単で用いたときよ りも下がった。最高温度を高くしつつ、持続時間を伸ばすためには、別の工夫が必要だと思わ れる。

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1111 携帯カイロの温度変化に関する研究携帯カイロの温度変化に関する研究携帯カイロの温度変化に関する研究携帯カイロの温度変化に関する研究

1111.研究の目的.研究の目的.研究の目的.研究の目的

寒い時期に便利な携帯カイロ(以下カイロ)は、一般に、鉄が酸化する際に発生する熱を利用して

いる。私たちは、この発熱温度や持続時間を、カイロを構成する物質の量や種類を考えることで、

さまざまに変化させることができるのではないかと考えた。そこで、市販のカイロよりも高い温度

を示し、長時間発熱するカイロを作ることができるのではないかと考え、さまざまな自作カイロを

製作し、温度変化を計測する実験を試みた。

2222.研究内容.研究内容.研究内容.研究内容

実験 1

別々の会社から販売されている 5 種類のカイロの最高発熱温度と持続時間

※1

を調べた。このと

き、カイロの中身をビーカーに移して、その中に温度センサーを差し込み、温度変化を計測する

という方法をとった。室温や温度センサーなどすべて同じ条件で測定を行った。結果は、市販カ

イロの最高発熱温度は 60~67℃という範囲で、持続時間は 30~40 分間であった。

実験 2

自作カイロを製作した。材料には鉄粉、水、活性炭素、塩化ナトリウム、高吸水性ポリマー、

バーミキュライトを用いた。発熱物質である鉄の量を 0.050mol から 0.40mol まで 0.050mol ごと

に増加させて、実験 1 と同じ方法でカイロの温度変化を計測した。結果は、鉄の量が 0.15mol 以

上で、市販カイロよりも最高温度が上がり、また持続時間も長くなった。

実験 3

金属のイオン化列に着目し、鉄よりもイオンになりやすい亜鉛では、より急激に酸化して高温

を示し、鉄よりもイオンになりにくいニッケルでは、鉄よりも低温を示すと考え、実験 1と同様

の実験を行った。結果は、亜鉛は、最高温度が 81℃に到達したが、持続時間が鉄より約 20 分短

かった。ニッケルはほとんど発熱せず、開始時の温度と変わらない 22℃のまま温度変化は見られ

なかった。

実験 4

持続時間をより長くするという目的で、持続時間が比較的長い鉄と、最高温度が比較的高い亜

鉛を混合し、その混合割合を変化させて実験 1・2と同様の測定を行った。結果は、混合割合に関

わらず、鉄と亜鉛それぞれを単独で用いたときよりも最高温度を上げたり、持続時間を伸ばした

りすることはできなかった。

3333.研究のまとめ.研究のまとめ.研究のまとめ.研究のまとめ

(1) 鉄の量を多くすることで、最高発熱温度を高くすることができた。ただ、鉄の量がある一定量

を超えると、持続時間に変化がないことが分かった。

(2) 発熱物質を鉄から亜鉛に変えると、最高発熱温度は上がったが、持続時間は短くなった。一方、

鉄よりもイオン化傾向が小さい金属では発熱しないことが分かった。

(3) 鉄と亜鉛を混合したカイロでは、最高発熱温度と持続時間は、それぞれを単独で用いたときよ

りも下がった。最高温度を高くしつつ、持続時間を伸ばすためには、別の工夫が必要だと思わ

れる。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・持続時間

※1

市販カイロの持続時間の定義は、「カイロが発熱して 40℃を超えてから 40℃を下回るまでの

時間」である。(桐灰化学株式会社ホームページ 「特集 カイロのしくみ」 2013/10/1 より)

・活性炭素

粒子表面の微孔に空気を取り込み、酸素を供給して反応を促進する。

・バーミキュライト

ヒル石(日本名)という雲母系の原鉱石から作られる人工用土。粒子表面の微孔に水を取り込

み、保水剤としての役割をもつ。高吸水性樹脂もこの役割をもつ。

・金属のイオン化列

「�� > � > �� > �� > � > � > � > �� > �� > � > �� > �H�� > �� > � > > �� > �」

金属を並べた列で、上列左の金属ほど陽イオンになりやすい。これを「イオン化傾向が強い」

という。イオン化傾向が強い金属は、電子を失って陽イオンになりやすく、酸化されやすい。

また、そのような金属の単体は、水・空気・酸などと激しく反応する。なお、水素�H��は金属

ではないが、比較のために列に入れてある。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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図 1:加える水の温度の違いによる気体の体積変化(牛乳)

図 2:加える水の温度の違いによる気体の体積変化(水)

図 3:ボイルシャルルの法則との比較

2222 残留牛乳の噴出現象の解明残留牛乳の噴出現象の解明残留牛乳の噴出現象の解明残留牛乳の噴出現象の解明

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

飲み終わった牛乳パックを洗う際に熱湯を注いで振ると内容物が勢いよく吹き出すという現象が

あることを知り、興味を持った。その牛乳パックの中ではどのような変化が起こり、この現象が引

き起こされるのかを追求することにした。

2222....研究内容研究内容研究内容研究内容

実験 1 牛乳と水の比較

この噴出が牛乳に含まれる成分によって起こる現象

なのかを解明するために牛乳と水で実験した。容積

230ml の三角フラスコに牛乳または水を 5ml、熱湯を

50ml入れて密栓して振り、気体の体積膨張を測定した。

その結果、増加した体積の値の平均値が牛乳と水でほぼ

一致したため、この現象は牛乳特有のものではないこと

が示唆された。

実験 2 ボイル・シャルルの法則との比較

実験 1の現象をより詳しく調べるため、実験 1 と同様

にして加える水の温度を変えて体積変化を測定した。そ

の結果、温度と体積は比例関係であることがわかった

(図 1)。また、水のみの結果も牛乳とほぼ変わらない結

果が得られた(図 2)ので、これ以降の実験は水のみで行

うことにした。

温度と体積の比例関係のグラフが得られ、それはシャ

ルルの法則のもとで成り立つのではないかと考え、この

法則に対する検証を行うことにした。水を 5ml、温度を

変えたお湯を 50ml 入れて振り、体積変化と圧力変化を

別々に測定した。その結果、シャルルの法則及びボイ

ル・シャルルの法則に従っていることが分かった(図3)。

実験 3 圧力減少の解明

実験 2内では、水を加えて振り始めた瞬間に、一時的

な圧力の減少が起こっていることが観察された。この現

象を疑問に思い検証することにした。加える水の量、温度を

それぞれ変えながら瞬間的な圧力の減少量を測定した。その結果、加えた水にフラスコ内の気体が

溶解することが原因であると考えられた。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

(1) 噴出は牛乳に関わらず起こる。

(2) 温度の変化による体積の膨張が噴出の一因である。

(3) ボイル・シャルルの法則に従う傾向がみられた。

(4) 一時的な圧力の減少は水に対するフラスコ内気体の溶解によるものであることが示唆された。

(5) 研究のきっかけは牛乳に対する現象の解明であり、結果としてその現象は、牛乳特有のもので

はないことがわかったが、今回の研究を進めていくうちに、その後授業で新しく学んだ法則が

関係していることがわかり、気体の法則について深く考えることができた。

y = 1.1113x - 252.38

0

20

40

60

80

100

290 295 300 305

PV

/T

絶対温度[K]

PV/T=k(一定)

y = 0.2684x - 1.4931

0

10

20

30

40

0 50 100

体積

[ml

]

摂氏温度[℃]

y = 0.274x - 1.0213

0

10

20

30

40

0 50 100

体積

[ml

]

摂氏温度[℃]

牛乳

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・ボイルの法則

一定温度の下で一定質量の体積Ⅴは圧力Pに反比例する。

Ⅴ=k/P(k:定数)

・シャルルの法則

一定圧力の下で一定質量の体積Vは絶対温度T(摂氏温度+273)に比例する。

V=kT(k:定数)

・ボイル・シャルルの法則

一定質量の気体の体積Vは圧力Pに反比例し、絶対温度Tに比例する。

PV/T=k(一定)

・気体の溶解度

1013hPa の下で、水 1ml に溶解しうる気体の体積[ml]を標準状態(0℃、1013hPa)に換算した

値で示される。一般に、水の温度が低いほど、その溶解量は増加する。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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3333 コロイド溶液コロイド溶液コロイド溶液コロイド溶液の凝集に関する研究の凝集に関する研究の凝集に関する研究の凝集に関する研究

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

私達は、化学の授業でコロイドについて知り関心を持った。代表的なコロイド溶液としては牛乳

など身近にあるものも多い。コロイドは凝集剤を用いて沈殿させることができることを知った私た

ちは市販の凝集剤を用いて、様々な凝集実験を試みた。

2222....研究内容研究内容研究内容研究内容

実験 1 凝集剤による凝集効果の検証

コロイド溶液(牛乳、泥水、絵具)に各種の凝集剤を加えその効果を検証した。泥水は鬼瓦用の

粘土、なめ土を一定量蒸留水に入れて作成した。その結果、有機凝集剤と無機凝集剤を組み合わ

せた場合が最も良い結果が得られた。また、泥水は問題なく凝集した。絵具は最初不十分だった

が、溶かす量を小さくしたところ沈殿させることができた。しかし、牛乳は十分に沈殿せさるこ

とができなかった。

使用した凝集剤

無機凝集剤:ポリ塩化アルミニウム(大明化学工業のタイパック)

ポリ硫酸第二鉄(多木化学工業のダンパワー)

有機凝集剤:多木化学工業のタキフロック

以上の凝集剤を組み合わせて使用

実験 2 牛乳の凝集

牛乳について調べたところ、タンパク質を主成分とするカゼイン、もしくは脂肪球のどちらか

が凝集せずに残っている可能性があることがわかった。酸を加えることにより凝固分離すること

ができたため凝集せずに残っていたのはタンパク質のカゼインだということがわかった。私たち

は加える酸として数種の市販の清涼飲料水を使用した。実験では pH が小さいものが最も効果が大

きかった。

実験 3 牛乳の凝集 その 2

実験 2でタンパク質の酸凝固のみで粒子が凝集したのかどうかの検証実験を行った。

その結果、凝集剤を入れなかった場合、凝固した粒子が浮遊し沈殿にいたらなかったため、凝集

には凝集剤が必要であると分かった。

実験 4 身近な様々なコロイドの凝集

凝集剤の効果を確認した私たちは、身近にある様々な溶液の凝集沈殿を試み、成功させた。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

(1) 有機凝集剤はそれのみではコロイド溶液に対して十分に凝集効果を発揮できない。無機凝集剤

と組み合わせることにより効果的に凝集させることができる。

(2) 無機凝集剤を用いなくても、粒子を凝固させることができれば有機凝集剤により凝集沈殿させ

ることができる。

(3) タンパク質の酸凝固について、pHが小さい程効果が大きい。ただし、凝固にかかる時間以外

には、用いた酸の違いによる大きな変化は見られなかった。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・コロイド溶液

1nm から 100nm 程度の大きさを持つコロイド粒子が溶媒中に分散した溶液。ろ紙は通過でき

るが、セロハンのような半透膜は通過できない。放置しても様々な理由により、コロイド粒子

が沈殿することはない。

・凝集

粒子状の物が集まって塊上になること。コロイド粒子が多数集まり大きな粒子になるときも

使用する。(電解質を用いて凝集を行う場合を特に凝析、塩析という)

・有機凝集剤

有機化合物からなる凝集剤。各種の排水処理に広く使用されている。ある程度の大きさにな

った粒子を凝集しフロックを形成する。今回の実験では多木化学工業のタキフロックを使用。

負の電荷を持ったイオンからなる有機凝集剤をアニオン系凝集剤という。

タキフロックは第四級アンモニウム塩のアニオン系高分子化合物であるため次のような構造

を含む化合物と考えられる。

・無機凝集剤

無機化合物による凝集剤。分散するコロイド粒子を纏め、小さい塊を作る。今回の実験では

大明化学工業のタイパック(ポリ塩化アルミニウム)と多木化学工業のダンパワー(ポリ硫酸第

二鉄)を使用。

・フロック

凝集によって生成する小さな塊。

・カゼイン、脂肪球

これらのコロイド粒子の分散により、牛乳は白く見える。カゼインはタンパク質とカルシウ

ムの複合体。直径数 nm から数百 nmと非常に小さい粒子。脂肪球に関しては市販の牛乳はホモ

ジナイズという脂肪球を細かく分散化させる操作を行っている為、放置しておいても凝集しな

い。直径 0.1~10µm。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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4444 光に対するクズの反応光に対するクズの反応光に対するクズの反応光に対するクズの反応

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

本校のグラウンド東端、栖吉川沿いの土手にはたくさんのクズが生えている。クズ(Pueraria

lobata)はマメ科クズ属の多年草で日本各地に広く分布している。また生命力の強い植物として海

外では外来生物として危険視されることもある。クズについて調べているうちに、クズは「強い光

を避けるために調位運動を行う」ということが分かり、それがクズの生命力の強さの要因なのでは

ないかと考えた。また調位運動を行うことから、クズは光受容体を持つのではないかと考えた。そ

こで光に対するクズの反応について観察することとした。

2222.研究の内容.研究の内容.研究の内容.研究の内容

実験 1

クズが行う光を避ける調位運動を確認する。図のように木製の枠にスクリーンを張ってそこに

クズの葉の影を映し、紙の下から一定の時間間隔で写真を撮った。葉が太陽から受ける光の量が

減っているということは映った影の面積が小さくなるということである。このとき太陽の位置の

変化に伴い影が伸縮してそのままでは正しい面積を求めることができないので、ピンポン球の影

をスクリーンに同時に映すことで影の面積の変化を補正できるようにした。葉の影の面積とピン

ポン玉の影の面積の比を画像処理ソフトで求めることで 1 日の中での葉の運動を観察した。

結果 1

実験を行った日は、午前中少し曇ったことを除けばほぼ 1日中直射日光が差しており、太陽光

の強さは正午ころが最も強かった。写真の分析の結果、正午から午後 2時にかけて最も葉の影の

面積が小さくなった一方、朝夕は影の面積が大きくなった。

実験 2

クズが光受容体を持つか波長に注目して調べる。バーミキュライトに種子から育てたクズを植

え、赤(波長:625nm)と青(470nm)の光をそれぞれ横から当てた。それを恒温器に入れて、一定の

間隔で写真を撮影した。

結果 2

写真の分析の結果、赤色光に対して屈曲しなかったが、青色光には反応し光の来る方向に茎全

体が曲がっていることが確認できた。さらに葉が青色光の来る方向に向いていた。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

(1) 実験 1の結果から、太陽光が強い時は葉が太陽から背くように運動し、あまり強くない時は太

陽の方を向くように運動しているということがわかった。光合成によってより多くのエネルギ

ーを蓄えるためには太陽光線に正対してできるだけたくさんの光を吸収することが必要であ

るが、光が強い時は逆に太陽光線を避けるという特徴が確認された。今回の実験で、調位運動

を自作の器具で数値的に観察する方法を打ち立てることができた。ただし、調位運動が起こる

波長の条件やその意義に関しては詳しく調べることができなかった。今後は光の色や、温度を

変えての実験などによりさらに検証の必要がある。

(2) 実験 2の結果から、青色光にクズが反応することがわかった。青色光の来る方向に茎全体が屈

曲し、葉もそちらに向いていたことから、クズの個体には青色光に反応する受容体が存在して

いると推測される。今後、他の波長の光に対する受容体が存在するか、またはクズの個体のど

の部分に受容体が存在するのか、葉や茎の一部を切り取った個体を用いてさらに実験を行いた

い。また実験 1 に関連して、光をさらに強くした場合に光を避けようとする運動が起こるかど

うか検証したい。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・調位運動

様々な植物(特にマメ科の植物)が行う太陽光の強さによって植物が葉の角度を変える運動。

太陽光を避けようとする運動と太陽光を受けようとする運動がある。この調位運動には水の利

用効率を高める効果、葉温上昇を防止する効果、あるいは光合成の阻害を防止する効果がある

ということが予想されている。

・光受容体

光を受け取る物質。植物では赤色光に反応するフィトクロム、青色光に反応するフォトトロ

ピンやクリプトクロムが代表的である。

・バーミキュライト

栄養分の入っていない土。

・恒温器

内部を一定温度に保つ機器。

【図】【図】【図】【図】

・実験 1で用いた片方が伸縮可能な脚を持つスクリーン

【【【【メモメモメモメモ】】】】

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5555 淡水生シジミの水質浄化作用について淡水生シジミの水質浄化作用について淡水生シジミの水質浄化作用について淡水生シジミの水質浄化作用について

1111.研究の目的.研究の目的.研究の目的.研究の目的

私たちは水質浄化に興味があり、特に生物を用いた方法に着目して研究を進めることにした。

淡水生シジミ(以下、シジミとする)に水質浄化作用があることについては、既に知られている。

論文を調べていくと、周りの自然環境がシジミの浄化能力に影響を及ぼすことがわかった。

しかし、その環境要因のうちの何が影響したのかは、その論文中で示されていなかった。また別の

論文から他の二枚貝では、懸濁物質の粒径によって浄化効果に差がみられることがわかった。

そこで私たちは、長岡市内の水田の用水路で採集したシジミを用いて、その浄化作用が効率よく

はたらく条件を明らかにすることを目的として研究を始めた。

2222.研究内容.研究内容.研究内容.研究内容

実験 1

調べた論文中で「夏にシジミの浄化能力が高まる」と述べられていたことから、私たちは夏の

川の平均水温に近い、水温 20℃付近で最も効率よく浄化されるという仮説をたてた。

シジミの浄化能力が水温によってどのように変化するのかを調べるために、酵母菌で濁らせた

水の中にシジミを入れ、水温 5℃、10℃、20℃、30℃の環境下で濁りがとれる様子をインターバ

ルレコーダーで撮影した。その動画を白黒加工し、水の色を DigitalColor Meter で数値化して、

一定時間経過後の様子を比較した。

結果 1

シジミが水中にいない場合、酵母菌が沈殿するのにはおよそ 13 時間かかり、水の濁りも完全に

は消えない。シジミがいる場合の実験開始から 7 時間後の濁り具合を比較してみると、水温

5℃、30℃のときは濁りが残っていたが、10℃、20℃のときは十分に濁りが消えていた。10℃、20℃

のときに一定時間経過後の様子を比べると、大きな差はみられなかった。

実験 2

シジミの浄化能力では、粒径が一定値より小さい物質を浄化できないという仮説をたてた。

そこで、重力沈降法によって土を粒径 1.0μm以下、5.0μm 以下、10μm以下の 3 種類に分類し、

それぞれの土で濁らせた水の中にシジミを入れ、その水がシジミによって浄化される様子をカメ

ラで撮影して、実験 1 の方法と同様に比較した。

それぞれ実験開始時と比べて色の差が一定値までひらいた時点で、シジミの浄化能力が働いた

ものとみなした。

また、粒径約5.5μmのトナーと粒径約1.0μmの牛乳を薄めた液を用いて同様の実験を行った。

結果 2

粒径5.0μm以下の土、10μm以下の土、トナーではシジミによって浄化される様子がみられた。

1.0μm以下の土、牛乳を薄めた液では色の変化がみられなかったが、どちらにおいてもシジミ

を入れた懸濁液において細長い塊が確認された。しかしそれがシジミから排出されたものなのか

は今回の実験ではわからなかった。

3333.研究のまとめ.研究のまとめ.研究のまとめ.研究のまとめ

シジミの水質浄化能力は 10℃~20℃の環境下で高まる。よって水温に左右されていることが明

らかになった。しかし水温 10℃と 20℃の間には差がみられなかったため、「夏にシジミの浄化能

力が高まる」ことに水温の変化は大きく関係していないことがわかった。

また、懸濁物質の粒径によって浄化効果に違いがあり、少なくとも粒径 5.0μm より大きい物質

は浄化されることがわかった。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・淡水生シジミ

淡水域に生息しているシジミのこと。

たマシジミ(Corbicula leana

この 2 種には外形による判別方法があるものの、判別が難しい個体も存在する。採集したシ

ジミを殻の色によって判別したところ、マシジミとタイワンシジミ

とがわかった。この2種類は

私たちはこの 2種類を区別せずに用いた。

・インターバルレコーダー

一定時間ごとに撮影した写真を

今回の実験ではキングジム社のインターバルレコーダー「レコロ」

・DigitalColor Meter

パソコン画面上で選んだピクセルの色の

今回の実験では動画や写真を白黒加工したため、

値が 0に近いほど色は黒に近く、

・重力沈降法

自然重力を用いて、粒子の沈降速度から粒子径を測定する方法。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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淡水域に生息しているシジミのこと。今回の実験では、長岡商業高校の近くの用水路で獲れ

Corbicula leana)とタイワンシジミ(Corbicula fluminea)の

種には外形による判別方法があるものの、判別が難しい個体も存在する。採集したシ

ジミを殻の色によって判別したところ、マシジミとタイワンシジミ(濃色型

種類はDNAの違いによって区別することが難しいとする論

種類を区別せずに用いた。

写真をつなぎあわせて動画として保存できる機械。

今回の実験ではキングジム社のインターバルレコーダー「レコロ」IR7

パソコン画面上で選んだピクセルの色の RGB 値を表示できるソフト。

今回の実験では動画や写真を白黒加工したため、0〜255 の間で 1つの値をとる。

に近いほど色は黒に近く、255 に近いほど白に近い。

自然重力を用いて、粒子の沈降速度から粒子径を測定する方法。

水の流れ

今回の実験では、長岡商業高校の近くの用水路で獲れ

の 2種類を指す。

種には外形による判別方法があるものの、判別が難しい個体も存在する。採集したシ

濃色型)が混在しているこ

の違いによって区別することが難しいとする論文もあるため、

つなぎあわせて動画として保存できる機械。

7を使用した。

つの値をとる。

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6666 プラナリアの光走性プラナリアの光走性プラナリアの光走性プラナリアの光走性

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

一般的にプラナリアには負の光走性があると言われている。しかしながら、ある論文において餌

を用いた学習によってプラナリアに正の光走性を条件付け出来ると示唆された。プラナリアの光走

性に興味を持った私たちは、まず予備実験としてプラナリアは負の光走性を確かに持っているのか、

また正の光走性を条件付けすることは可能かを実験した。その結果プラナリアには負の光走性があ

り、学習によってその走性を抑えることは可能であるが、一定期間経過後に元の負の光走性が確認

された。したがってすべての個体は負の光走性を持つことがわかった。また実験の最中に本研究に

用いていた双眼種プラナリアの中に過剰眼個体を発見し、これも通常の双眼個体と同じように負の

光走性を伴った行動を見せていた。眼異常個体であるにも関わらず個体の行動に特異な点がないこ

とを不思議に思い、目の異常と光走性の関連性について研究した。

2222....研究の内容研究の内容研究の内容研究の内容

実験 1

2 つの 18 ㎝四方のプラスチック容器に明所(約 200 ルクス)と暗所(約 20 ルクス)を作り、一方の

容器には明所に餌として鳥レバーをおき、もう一方には暗所に餌を置いた。それぞれの容器に一日

一回 8匹ずつプラナリアをいれ一週間餌付けによる条件付けを行った。明所において餌付けをした

個体(以下明所個体)は餌がない状態でも明所に滞在する頻度が高く、暗所において餌付けした個体

(以下暗所個体)は滞在する頻度が低かった。一週間後に同様の試行をしたところ、明所個体の明所

に滞在する頻度が減少し、暗所個体は大きな変化はなかった。したがってプラナリアは負の光走性

を確かに有し、それを抑える学習は可能であるが、一定期間経過後に元の走性に戻ったと推測され

た。

実験 2

針金を用いて双眼種プラナリアの左目もしくは右目の色素塊を摘出し、人工的に片目しか持って

いない眼異常個体(以下単眼個体)を左右 8匹ずつ作成した。シャーレの中にスライドガラスを用い

てT字路を作り、単眼個体と通常の双眼種プラナリア(以下双眼個体)を曲がり角の直前に入れた。

正面から光を当て、T字路を左右に曲がった回数を各個体 16 回計測した。両個体において個体によ

り左右の比率は一定ではなかった。また、実験最中にT字路を引き返し光と逆の方向に向かう行動

を観察できた。したがってプラナリアは目が無い方向を暗闇であると判断しないと推測された。ま

た片目でも双眼個体と同じく正確に光の方向を判断する何かしらの方法を持っていると推測された。

もうひとつの仮説としてプラナリアは光の有無しか感じることができず、暗所で動きが無くなるた

めに片目だけで事が足りるのではないかと考えられるが、実験 1において暗所と明所でプラナリア

の動きに有意な差は無かったためにこの仮説は適当でないと思われる。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

(1) プラナリアは確かに負の光走性を持っていた。

(2) 負の光走性を抑える学習は可能であったが、一定期間経過後に元の走性に戻った。

(3) 眼異常の有無にかかわらず負の光走性を見せた。

(4) プラナリアは目が無い方向を暗闇であると判断しなかった。

(5) 単眼個体は片目だけで光の方向を判断する何かしらの方法を持っていると推測される。

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- 13 -

【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・プラナリア

動物界扁形動物門渦虫綱の総称である。今回の実験では三岐腸目淡水生三岐腸亜目ドゲシア

科ナミウズムシ属ナミウズムシ(Dugesia japonica)もしくは三岐腸目淡水生三岐腸亜目ドゲシ

ア科アメリカナミウズムシ属アメリカツノウズムシ(Girerdia dorotocephala)とみられる個体

を用いた。著しい再生能力を持ち広く再生の実験に用いられる。また原始的な脳を持ち、有性

個体(雌雄同体)と無性個体がある。

綺麗な河川や湧水に生息し、肉食である。目は像を結ばず光を感じるのみの杯状眼であり、

光に対して負の走行性がある。

・過剰眼・単眼個体

今回用いたプラナリアには通常一対の眼があるが、稀に眼が三個以上ある個体である過剰眼

個体や眼が一個ないしは一対の眼のうち、1 つの色素塊が欠損した単眼個体が自然環境下にも

存在する。

・負の光走性

対象生物に光を当てた際に光がないところに移動する性質。

・色素塊

杯状眼の色素細胞を含む感光部。視細胞の感光部が色素細胞に包まれた構造で構成されてい

る。

・摘出

外科的方法で対象組織を取り除くこと。なお、今回実験の対象に用いたプラナリアは痛覚が

無いということが通説である。したがって色素塊摘出は倫理的問題に相当しない。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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0.25mm 以下 0.25 ㎜~0.50 ㎜ 0.50 ㎜~1.00 ㎜

7777 土のひび割れに関する研究土のひび割れに関する研究土のひび割れに関する研究土のひび割れに関する研究

1111.研究の目的.研究の目的.研究の目的.研究の目的

土のひび割れは田んぼや家のプランターなどでみることができる。本実験では、土が乾燥する際

にひびが入るという性質に着目し、その特徴を明らかにすることを目的として、研究を始めた。

2222.研究内容.研究内容.研究内容.研究内容

実験で使用する土は、長岡市内で採取した赤土を用いた。採取した赤土を、ふるいを用いて粒度

ごとに 0.25mm 以下、0.25mm~0.50mm、0.50mm~1.00mm の 3 種類にふり分けた。そのふり分けた赤

土を用いて、以下の実験を行った。

実験 1―1

〔実験方法〕ふるい分けた 3 種類の赤土に水を加えてよく混ぜ、赤土の厚さが 1cm になるようにコン

テナに流し込み、約 1 週間乾燥させて、乾燥後のそれぞれのひび割れの様子を観察した。

〔結果と考察〕0.25mm 以下の粒子は一番乾燥する速度が速く、またひびも一番大きく深く入った。

0.50 ㎜~1.00 ㎜の粒子ではなかなか乾燥せず、ひび割れもほとんど見ることができなかった。粒

度が小さいほどひび割れが深く大きく入ったのは、粒度が小さいほど粒子の表面が速く乾燥し、水

が抜けにくいコンテナ底面側の赤土との収縮の差が大きくなったためだと考えた。

実験 1―2

〔実験方法〕実験 1-1と同様のコンテナに左か

ら順に 0.25mm 以下、0.25mm~0.50mm、0.50mm

~1.00mmの粒子をそれぞれ300gずつ流し込み、

同じ状況下で乾燥させた。

〔結果と考察〕まず 0.25mm 以下の粒子と 0.25mm

~0.50mm の粒子との境目からひびが入り始め

た。その後 0.25mm 以下の粒子がほとんど乾燥

しきってから 0.25mm~0.50mm の粒子がひび割

れ始めた。この実験から、粒度が小さいほど乾

燥速度が速いことが明らかになった。

実験 1―3

〔実験方法〕ひび割れが一番顕著にみられた 0.25mm 以下の赤土のみを用いた。ガラス板の上に水を

加えた赤土を敷き、ほぼ同じ大きさの石を横一列に 4 つ埋め込んで乾燥させた。

〔結果と考察〕乾燥させると、まず石の周りからひびが入り始め、石を中心に放射状にひび割れがみ

られた。これは、石を埋め込んだことにより石の周りの粒子を外側に押す力がかかり、その方向に

ひび割れが起きやすくなったため、放射状に割れたのだと考えた。

実験 2

〔実験方法〕ひびの入った部分と入らなかった部分の赤土をそれぞれ採取し、含まれている鉱物の同

定を行い、含有比率を比較した。

〔結果と考察〕赤土からは、赤鉄鉱、磁鉄鉱、黒雲母、石英、長石が確認できた。また、含有比率に

大きな違いは見られなかった。

3333.実験のまとめ.実験のまとめ.実験のまとめ.実験のまとめ

(1) 土のひび割れの大きさや深さや乾燥速度は、粒度が小さいほど顕著であり、粒度が大きいほど

控えめだということが分かった。

(2) 土のひびが入った所と入らなかった所では土を構成する鉱物に差がないことが分かった。

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- 15 -

【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・粒度

粒子の大きさのこと

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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8888 一般化三並べの発展的研究一般化三並べの発展的研究一般化三並べの発展的研究一般化三並べの発展的研究

1111.研究の概要.研究の概要.研究の概要.研究の概要

最初に、用語解説を参照されたい。一般化三並べというテーマを耳にしたことがある方は少ない

であろうが、「○×ゲーム」・「五目並べ」といったゲームは知っているだろう。このテーマは難しい

数学の知識は全く必要とせず、前述のように有名なゲームにも深く関わっている一方で、未解明な

事項、未調査な事項も存在する。今回の研究では未調査な事項についての研究をした。

前半では私たち以外の方による既存の研究を解説し、後半では私たちによる研究と今後の展望を

説明する。

2222.既存の研究.既存の研究.既存の研究.既存の研究

【図 4】に示したように、ほぼすべての形についての勝ち型か負け型かの判定は済んでいる。(未

解明は同図右下の snaky と呼ばれる形のみである。)その判定方法を以下に示す。

勝ち型であることの判定方法

基本的に、後手の考えられる手を全てしらみつぶしに考慮し、全てにおいて先手が勝利する事を

示す。よって、目指す形が大きければ大きいほど考察量は爆発的に増大する。

負け型であることの判定方法

「畳敷き戦略」と呼ばれる、勝負がつかない事を証明する際に非常に有効な方法がある。

後手は【図 5】のように盤面を 2 マスずつの畳に分けて、常に先手が置いた畳のもう一方のマス

に置くという戦略をとる。すると、先手は 1枚も畳を取れないことになる。【図 5】の左の形は畳を

1 枚も含まずに盤面には置けないので、先手はその形を作れない。よって、この形は負け型である。

3333.私たちによる研究.私たちによる研究.私たちによる研究.私たちによる研究

今までの研究では【図 4】のような形が研究されてきたが、私たちは【図 6】のような、目指す形

が縦・横だけでは繋がっていない形を考察した。

判明した事

・今までの研究対象の形と比較して、同じ大きさでも目指す形の種類が多い。

・【図 7】に示したように、既存の形と同一であるとみなせる形もある。

・畳敷き戦略が通用する形は非常に少ない。

・大きさが 4 以下の形は 1 種を除き全てが勝ち型である。

・大きさが 5 の形は 8 種だけ勝ち型であることの証明ができた。(【図 6】参照)

・大きさが 5 の形は 12種だけ負け型であることの証明ができた。(【図 6】参照)

・ダブルリーチの種類の多さなどからその形の作り易さを数値化し、その数値は目指す形の持つ対

称性に依ることを示した。

予想した事(未解明)

・目指す形が線対称である、またその対称軸が多いほど負け型になりやすい。

・大きさが 5 である形はその形に 1つでも対称軸を含むと負け型である。

・snaky は負け型である。

4444.今後の展望.今後の展望.今後の展望.今後の展望

・前述の「予想した事」を証明する。

・大きさが 6 以上の形も考える。

・勝ち型、負け型であることの効率的な判定方法を確立する。

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- 17 -

←【図 1】 ↑【図 2】 ↑【図 3】 【図 5】→

↓【図 4】

↑【図 7】 ←【図 6】

同じ形と同じ形と同じ形と同じ形と

みなせるみなせるみなせるみなせる

【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・一般化三並べ

「三並べ」とは、いわゆる「○×ゲーム」のことである。3×3の盤面で 2人の対戦者が交互

に○と×を書き、自分の記号を縦・横・斜めのいずれかで 1列揃えることを目指すゲームであ

る。本研究の課題「一般化三並べ」は、それを一般化したものにあたる。

本研究では○と×を使わず、先手を黒、後手を白として扱う。さらに、盤面は無限に大きく、

先手・後手とも自分が勝つように最善の手を尽くすものとする。

「三並べ」(つまり○×ゲーム)では、【図 1】の形のどちらかを自分の色で作れば勝ちである

(ただし回転・反転した形を作っても良い)。「一般化三並べ」では、この目指すべき形を別のも

のにしたゲームを考える。例えば、【図 2】の形を目指すと約束したらそのゲームのうちは先手・

後手は両者ともその形を作ることを目標とし、作れたら勝ちとなる。

・勝ち型・負け方

実は、普通のルールでの○×ゲームでは両者が最善の手を尽くせば勝負はつかない。このよ

うに、どちらが勝つ事も出来ないゲームを「負け型」のゲームと呼ぶ。

しかし、○×ゲームの盤面の大きさを 4×4以上に拡張すると、そのゲームは先手に必勝パタ

ーンが存在する。(先手は 2 手目を【図 3】の②におくとダブルリーチになる。)このように、

先手必勝のゲームを「勝ち型」のゲームと呼ぶ。

また、完全に後手は先手よりも不利なので、明らかに後手が勝つことはなく、後手は常に先

手を防ぐ事に徹する。

本研究のテーマは、一般化三並べはどのようなときに勝ち型、負け型になるのかを調べる事

である。

●②

大きさ1大きさ1大きさ1大きさ1 大きさ2大きさ2大きさ2大きさ2 大きさ3大きさ3大きさ3大きさ3 大きさ4大きさ4大きさ4大きさ4

大きさ5大きさ5大きさ5大きさ5

他:負け型(6種)他:負け型(6種)他:負け型(6種)他:負け型(6種)

大きさ6大きさ6大きさ6大きさ6

他:負け型(29種)他:負け型(29種)他:負け型(29種)他:負け型(29種)

snaky(未解明)snaky(未解明)snaky(未解明)snaky(未解明)

大きさ7以上:全てが負け型大きさ7以上:全てが負け型大きさ7以上:全てが負け型大きさ7以上:全てが負け型 :勝ち型 :負け型

目標の形

大きさが5の私たちが新たに考察した形(全82種)大きさが5の私たちが新たに考察した形(全82種)大きさが5の私たちが新たに考察した形(全82種)大きさが5の私たちが新たに考察した形(全82種)

他他他他 勝ち型(2種)勝ち型(2種)勝ち型(2種)勝ち型(2種)

負け型(8種)負け型(8種)負け型(8種)負け型(8種)

未解明(62種)未解明(62種)未解明(62種)未解明(62種)

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- 18 -

9999 サイコロから求める誕生日の確率サイコロから求める誕生日の確率サイコロから求める誕生日の確率サイコロから求める誕生日の確率

1111.研究の目的.研究の目的.研究の目的.研究の目的

同じクラスの中に同じ誕生日のペアが 1組以上存在する確率は約 89%、同じクラスの中に自分と

同じ誕生日の人が 1人以上存在する確率は約 10%という記事を本で見て、想像以上に高い確率だっ

たので、誕生日というテーマに興味を持った。そして 365 日の各日付の誕生日の人が同じ人数存在

するためにはどれだけの人数が必要になるのか疑問に思った。身近に存在するサイコロを利用して、

その人数を求めることを目標に研究を始めた。

2222.研究内容.研究内容.研究内容.研究内容

コイン、正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体のサイコロを振り、出た目の回数を計測し、

それぞれのサイコロでそれぞれの目について本来の収束回数の誤差 10%以内に収まるためにはどれ

だけの試行が必要か求めた。また、コインを除く各サイコロにおいて収束回数が一番多かったもの

と一番少なかったものを除いて平均をとった。この作業を 2回繰り返し、平均を求め、それらをそ

れぞれのサイコロの収束回数と定義して研究を行った。

求めたそれぞれのサイコロの収束回数から確率において乗法的関数の定義が成り立つか考察し比

例の関係性など多くのアプローチから誕生日の全日数である 365 日に人数が等しく分配されるため

にはどれくらいの人数が必要になるのか求める。

3333.研究のま.研究のま.研究のま.研究のまとめとめとめとめ

(1) Excel で乱数を発生させることのできる rand 関数はある値を元に、それに対応する乱数列を発

生させ、規則的な数列を繰り返すだけなので本研究には適当ではない。

(2) 確率において乗法的関数の定義が成り立つと予想される。

(3) 乗法的関数が成り立つとさまざまな事象が成り立つと推測され、発展性があると考えられる。

(4) 今回は二回のみデータで、自分たちが決めた定義の中では乗法的関数が成り立った。しかし、

定義を変えデータをより正確にしたときもこれが成り立つか今後研究を進めていく必要がある。

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  目 1 2 3 4

収束回数 100 100 500 200

  目 1 2 3 4

収束回数 100 200 200 400

1 2 3 4

100回 27 25 30 18

確率 27% 25% 30% 18%

200回 51 48 55 46

確率 25.50% 24% 27.50% 23%

300回 72 68 92 68

確率 24% 22.67% 30.67% 22.67%

400回 94 90 113 103

確率 23.50% 22.50% 29% 25.75%

500回 122 116 133 129

確率 24.4 23.2 26.6 25.8

600回 142 139 156 163

確率 23.66667 23.16667 26 27.16666667

700回 178 165 182 175

確率 25.42857 23.57143 26 25

1 2 3 4

100回 27 29 21 23

確率 27 29 21 23

200回 55 51 54 40

確率 27.5 25.5 27 20

300回 74 78 82 66

確率 24.66666667 26 27.33333 22

400回 101 103 104 92

確率 25.25 25.75 26 23

500回 129 126 129 116

確率 25.8 25.2 25.8 23.2

600回 154 146 157 143

確率 25.66666667 24.33333 26.16667 23.83333

【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・rand 関数

0 から 1の間で乱数を繰り返す。

ワークシートが再計算されるたびに出力される乱数が変化。

・乗法的関数

ここでは乗法的関数の 2つの例を紹介します。

コインの収束回数つまり二面体の収束回数が 10回、4面体の収束回数が 175 回、6面体の収束

回数が 375 回、8 面体の収束回数が 1492 回、12面体の収束回数が 3363 回です。

10(2 の収束回数)×175(4 面体の収束回数)≒1492(8 面体の収束回数)

10(2 の収束回数)×425(6 面体の収束回数)≒4180(12 面体の収束回数)

(例) 4 面体の場合

*グレーに塗られたところは自分たちで決めた収束の範囲に収まっていないもの

~収束を求める~

(100+200)/2=150・・・① (200+200)/2=200・・・②

①と②の平均を求める

(150+200)/2=175

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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10101010 ビスケットの割れ方を調べるビスケットの割れ方を調べるビスケットの割れ方を調べるビスケットの割れ方を調べる

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

課題研究をするにあたって、私たちはまずものの壊れ方について考えようと思い立ち、先生に相

談したところ、身近で安価なビスケットを例に取り上げることを勧められたので、ビスケット自体

に興味を持ち、そしてビスケットの割れ方を題材にして、課題研究に取り組んでいくことを決めた。

2222....研究内容研究内容研究内容研究内容

一定の条件でビスケットを割ることができるよう、実験装置を作った。(装置は用語解説を参照)

実験 1

初めに釘を用いてビスケットに衝撃を加えてみた。釘の先端部分を当てて衝撃を加えたところ

ビスケットは割れず、釘の上部を当てて衝撃を加えたところビスケットが割れたことから、ビス

ケットの割れ方には衝撃を加える面積が関係しているのではないかと考え実験を行った。

力を加える面積とビスケットの割れ数の関係について、面積が大きいほど割れ数が多くなると

いう仮説を立てた。それを調べるために断面積の異なる 3 種類の木の棒を用意し、ビスケットに

当てる面積を変化させてビスケットを割る実験を行った。鉄球の質量と鉄球を落とす高さは一定

に、棒をビスケットの中心に当たるようにして、棒 1 種類につき 200 枚を装置で割り、割れ数を

調べた。

棒が当たった中心部は細かい破片となったが、全体としては中心から放射状に割れた 2~5の大

きさの破片となった。(用語解説の写真を参照)

実験 2

実験 1の結果から、衝撃を加える面積が変化したことによりビスケットに加わる圧力が変化し、

割れ数に影響しているのではないかと考えた。それを調べるために質量の異なる 3 種類の鉄球を

用意し、衝撃を加える面積と鉄球を落とす高さを一定に、装置で 1 種類につき 100 枚を割り、割

れ数を調べた。

実験 3

参考文献より、ビスケットに衝撃を加えたときビスケットに元から入っていたヒビが成長し亀

裂となって割れると知り、ビスケットに意図的に傷を入れてから衝撃を加えれば割れ方をコント

ロールできるのではないかと考えた。

それを検証するために中心から放射状に 4 等分、5 等分、6等分に分割する溝(深さはビスケッ

トの厚 1/3)を彫ったビスケットを、装置を使って衝撃を加える面積、かかる力を一定に 1種類に

つき 100 枚ずつ割った。

直径 8mm の木の棒を使用して実験を行ったところ、実験 1 では見られなかった 5 枚割れ、6 枚

割れが一部みられた。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

(1) 棒の面積を大きくすると、割れ数が大きくなる確率が大きくなる。

(2) 棒が細いうちは、5枚割れは生じない。

(3) 3 枚割れの場合でも、全体の 50%となる大きな破片は生じない。

(4) 4 枚割れのときはほぼ均等な破片に割れるが、3枚割れでは破片の大きさの分布が、棒の太さに

よって違いがあった。

(5) 誘導することで、鉄球と棒の条件では割れない数に割ることができる。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・装置

・ビスケット

かーさんケット(写真右)を使用する。

採用理由は、業務用スーパーで安価に売っていたこと

大量生産されて、均一な材質であると推測したため。

・割れ数

ビスケットが放射状に割れた

きな)破片の数。

・%割れ数

ビスケット全体の質量に対して破片の質量が占める割合。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

45% 35%

20%

- 21 -

を使用する。

採用理由は、業務用スーパーで安価に売っていたことと、

大量生産されて、均一な材質であると推測したため。

ビスケットが放射状に割れた(大

ト全体の質量に対して破片の質量が占める割合。

電磁石を使用し、ビスケット

置いた木の棒に鉄球を落とす。

この装置によって実験を行う。

電磁石

鉄球

木の棒

ビスケット

ビスケットの上に

落とす。

実験を行う。

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- 22 -

11111111 ウーブレックのダイラタンシーに関する研究ウーブレックのダイラタンシーに関する研究ウーブレックのダイラタンシーに関する研究ウーブレックのダイラタンシーに関する研究

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

ウーブレック(片栗粉と水を混合した流体)に急激な力を加えると固体のように振舞う「ダイラタ

ンシー」という現象は、今では広く知られている。私たちはその現象に興味を持ち、調べていく中

で、この現象の原理の説明は未だに曖昧であると知った。そこで、その原理を究明しようと考え、

どのような条件でダイラタンシーが強く現れるのかを調べることを目的に研究を行った。

2222....研究内容研究内容研究内容研究内容

実験 1

ダイラタンシーの強さを定量化するために、ダイラタント流体の特性とされる剪断粘度増加を

用いようと考えた。実際の回転式粘度計を参考にして、ウーブレックからの剪断応力の変化の様

子から、見かけの粘度変化を調べることのできる装置Ⅰを作成した。

まず、比較対象として、ニュートン流体であるグリセリンの粘度変化を調べた。ほとんど粘度

が一定という結果が得られたことから、およそ適正な測定ができると考えてよいと判断した。

次に、ウーブレックの粘度変化を調べた。速度に応じて粘度が増加すると予想していたが、実

際には粘度の増加は確認できなかった。また、速度がある大きさを超えると粘度が小さくなるこ

とが確認できた。しかし、剪断粘度増加が起こらない以上、この方法ではダイラタンシーの強さ

を定量化できないと判断した。

実験 2

剪断方向の応力よりも、垂直方向(圧縮・引張方向)の応力の方が、ウーブレックの性質に寄与

するところが大きいとする研究結果があると知り、動きに対するウーブレックからの抗力(剪断・

垂直の両方向の応力)でダイラタンシーの強さを評価しようと考えた。作成した装置Ⅱを用いて、

円柱を流体に差し入れて動かしたときの、円柱にはたらくウーブレックからの抗力を測定した。

円柱を動かすためにかける力のかけ方によって抗力は大きく異なり、単純に速度だけでは定ま

らないことが分かった。この方法でもダイラタンシーの強さは定量化できなかった。

実験 3

片栗粉とエタノール水溶液を混合した流体は、通常のウーブレックと比べてダイラタンシーが

弱いという研究結果を知った。そこで、実験 1 および 2でダイラタンシーの強さの定量化はでき

なかったものの、片栗粉とエタノール水溶液を混合した流体のさまざまな動きに対する挙動を通

常のウーブレックと比較することにした。また、装置Ⅱを用いて抗力の計測も行った。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

(1) 作成した装置Ⅰを用いて、流体の見かけの粘度を計測できた。

(2) ウーブレックの粘度は、剪断速度による増加はせず、加えて、剪断速度がある大きさを超える

と小さくなる。

(3) ウーブレックの抗力は、力のかけ方によって大きな差があった。また、抗力と速度との関係は

見出せなかった。

(4) ダイラタンシーの強さの定量化はできなかった。そのため、計画していた実験の多くは行えな

かった。

(5) 片栗粉とエタノール水溶液を混合した流体は、通常のウーブレックと挙動が大きく異なった。

ダイラタンシーは見られるものの、力が加わって固まったものは脆く、再び流動化するのに時

間がかかった。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・ウーブレック

片栗粉と水を混合した流体。液

れ、急激な変形に対しては固体のように振る舞い、ゆっくりとした変形に対しては液体のよう

に振舞うという性質がある。

・粘度

流体の粘りの度合い。流体の抗力などにかかわる。

・剪断応力

平行な二平面がすれ違うとき、間に挟まれる粘性のある物体から受ける単位面積当たりの力。

物体の粘度をη、二平面の相対速度を

・ニュートン流体

粘度が一定である流体。ニュートン流体でないものは

・ダイラタンシー

非ニュートン流体の一つ、

激な外力が加わると、流動性が失われ、体積が膨張する。また、それによって粘度が増加する

とされる。

・回転式粘度計

剪断速度を無段階で変えながら粘度変化を測定することが可能な粘度計。本研究で作製した

装置Ⅰでは剪断速度を段階的にしか変えることができない。

装置Ⅰ

1:ボールベアリング

2:水糸(円筒に巻きつけてある

3:水の蒸発を防ぐためのプラスチック製の板

4:プラスチック製の円筒と薄い円盤

5:流体を入れるビーカー

6:距離センサのための反射板

(錘を載せるのにも利用

7:距離センサ

装置Ⅱ

1:プラスチック製の円筒(穴は塞いである

2:てこの支点

3:力センサ

4:距離センサのための反射板

5:距離センサ

6:流体を入れる容器

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片栗粉と水を混合した流体。液面を走る実験で知られている。ダイラタント流体の一つとさ

急激な変形に対しては固体のように振る舞い、ゆっくりとした変形に対しては液体のよう

に振舞うという性質がある。

流体の粘りの度合い。流体の抗力などにかかわる。

平行な二平面がすれ違うとき、間に挟まれる粘性のある物体から受ける単位面積当たりの力。

、二平面の相対速度を U、間隔を h とすると、次の式で表される。

τ = η�

ニュートン流体でないものは非ニュートン流体という。

一つ、ダイラタント流体が持つ性質。液体を含んだ粉末固体粒子

流動性が失われ、体積が膨張する。また、それによって粘度が増加する

剪断速度を無段階で変えながら粘度変化を測定することが可能な粘度計。本研究で作製した

装置Ⅰでは剪断速度を段階的にしか変えることができない。

円筒に巻きつけてある)

水の蒸発を防ぐためのプラスチック製の板

プラスチック製の円筒と薄い円盤

反射板

錘を載せるのにも利用)

穴は塞いである)

反射板

走る実験で知られている。ダイラタント流体の一つとさ

急激な変形に対しては固体のように振る舞い、ゆっくりとした変形に対しては液体のよう

平行な二平面がすれ違うとき、間に挟まれる粘性のある物体から受ける単位面積当たりの力。

とすると、次の式で表される。

非ニュートン流体という。

液体を含んだ粉末固体粒子系に急

流動性が失われ、体積が膨張する。また、それによって粘度が増加する

剪断速度を無段階で変えながら粘度変化を測定することが可能な粘度計。本研究で作製した

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11112222 水切り水切り水切り水切りの条件の条件の条件の条件

1111.研究の目的.研究の目的.研究の目的.研究の目的

水切りとは、水面に向かって切るように石を投げ、石を水面で反射させながらできるだけ遠方ま

で届かせようとする遊びである。そのコツについては、「薄い石を選ぶと跳ねやすい」「速ければ速

いほど跳ねやすい」等々経験則として言及されているに過ぎない。本研究の目的は、どのような条

件の下で水切りが起こるのかについて調べることである。その上で、そもそもなぜ水切りは起こる

のかという疑問に対し物理的な説明を試みたい。

2222.研究内容.研究内容.研究内容.研究内容

① 概要

・加工性の観点から石の代わりに木材を用いて投射物を作成した。形状は円柱型とした(以下、木

片と表記)。発射装置はゴムを使って木片を発射するものを自作した。

・光ゲートセンサを用いて発射された木片の速さを測定し、木片の速さと水切りの成否を記録し

た。なお、各実験において発射装置の水面までの高さ、水深は統一した。その上で、入射角度、

木片の形状、水流の有無など水切り現象に影響を与えると予想される条件を変えつつ計測を繰

り返し、それらの結果を比較し考察を加えた。

② 実験Ⅰ(入射角度について)

・木片の入射角度を 10°、15°、20°、25°の 4段階に変化させて、それぞれ 100 回程度計測を

行い、入射角度と水切りの成否について調べた。

③ 実験Ⅱ(木片の形状について)

・木片の厚さを厚(1.8㎝)中(1.2㎝)薄(0.6㎝)の3種類、木片の円板面の直径を大(φ6.0㎝)中(φ

5.0 ㎝)小(φ4.0 ㎝)の 3種類、計 9 種類の木片を用意した(実験 I で使用したのは、厚さ中・直

径中の木片)。入射角度は 10°、15°、20°の 3段階とした。速さは 11~15m/s となるように

し、それぞれ 50 回程度計測を行い、木片の形状と水切りの成否について調べた。

④ 実験Ⅲ(水流による影響について)

・河川には水の流れが存在する。そこで、水流が水切りの成否に与える影響について調べた。ホ

ースを用いて水流を発生させた。水流は木片を打ち出す向きに統一した。入射角度は 10°、15°、

20°とし、各々の角度について、水流なしの際に最も跳ねた木片を用いて実験を行った。また、

④のみ、跳ねた木片の脱出速度の計測も行って、水流がないときの記録と比較した。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

実験Ⅰ:全ての入射角度で、9~11m/s で最も成功率が高かった。また、入射角度が増すごとに、成

功する場合の石の速さが狭い範囲に集中する様子が見られた。10°、15°、20°の順に成

功率は下がり、入射角度が 25°の時は、50回目まで 1 回も跳ねなかった。

実験Ⅱ:厚さに関して、10°では中、厚、薄の順に、15°、20°では厚、中、薄の順に成功率は低

下した。また、15°、20°では薄い木片は一回も跳ねることはなかった。大きさに関して

は顕著な規則性は見出せなかった。

実験Ⅲ:水流が無い場合に比べ、成功率は低下した。水流がない場合、脱出速度は入射速度の 60%

に低下したのに対し、水流がある場合、脱出速度は入射速度の 75%に低下した。

4444.今後の展望.今後の展望.今後の展望.今後の展望

予想と反する結果が多かった。更に追実験を行い、結果の信頼性を高めたい。得られた結果から、

研究の出発点である、なぜ水切りは起こるのかという疑問に対する物理的な説明を試みたい。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・水切り

本研究では、木片が下図のように水面を完全に離れたとき、「水切りが起きた」と呼ぶことに

する。

・入射角度

入射角度は下図のように定義する。

・木片

(厚さ:左から薄・中・厚)

(直径:左から大・中・小)

・実験装置

入射角度

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13131313 麦茶の泡沫に関する研究麦茶の泡沫に関する研究麦茶の泡沫に関する研究麦茶の泡沫に関する研究

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

ペットボトルに入った麦茶をかばんに入れて運んだり、ボトルに麦茶を注いだりなど、日常生活

の中で麦茶が泡立っていることがある。麦茶の泡は生じたあと消えずに残り、観察してみると、そ

の時々で性質の違う泡が立っていることに興味を持った。そこで、麦茶の泡沫のでき方に着目し、

条件によって生じる泡沫の違いを調べると共に、最終的に泡沫の立ちやすい条件を明らかにするこ

とを目標に研究を始めた。

2222....研究内容研究内容研究内容研究内容

ビュレットを垂直に固定して麦茶を注ぐ装置を作製した。※用語解説参照

実験 1 注ぐ高さと泡沫の量の関係

ペットボトルの麦茶を用意した。注ぐ高さを 20cm・30cm・40cm・50cm と変えて生じる泡沫の

量を測定したところ、注ぐ高さと泡沫の量の間に関係性が見られ、注ぐ高さが高いほど生じる泡

沫の量は少なかった。

実験 2 麦茶の古さと泡沫の量の関係

ペットボトルの未開封の麦茶と開封後約 10日経過した麦茶を用意した。注いだ時に生じる泡沫

の量をそれぞれ測定したところ、未開封の麦茶の方が開封後約 10日の麦茶よりもできる泡沫の量

が多かった。

実験 3 ペットボトル麦茶とパック麦茶の泡沫の違い

ペットボトルの麦茶とパックの麦茶(水出し)を用意した。注いだ時に生じる泡沫の量をそれぞ

れ測定したところ、ペットボトルの麦茶の方がパックの麦茶よりも泡沫の量が多かった。

実験 4-1 麦茶の濃さと泡沫の量の関係 (水出し)

パックの麦茶を使い、通常の 2/3 倍・1倍・2 倍・3倍・4 倍の個数いれて作った 5種類の麦茶

(水出し)を用意した。注いだときに生じる泡沫の量をそれぞれ測定したところ、入れたパックの

個数が多いほど泡沫の量が多かった。

実験 4-2 麦茶の濃さと泡沫の量の関係(煮出し)

実験 4-1 を煮出しの麦茶を用いて行ったところ、水出しの時と同様の結果が得られた。

実験 5 麦茶の温度と泡沫の量の関係

ペットボトルの麦茶を 5℃以下に冷却し保ったもの、常温のもの、45℃以上に加熱し保ったも

のを用意した。注いだときに生じる泡沫の量をそれぞれ測定したところ、麦茶の温度が高くなる

ほど泡沫の量が多かった。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

(1) 麦茶を注ぐ高さが高いと、生じる泡沫の量が少なくなる。

(2) ペットボトルの麦茶は、開封からの時間が長いと、品質が変化して生じる泡沫の量が少なくな

る。

(3) パックの麦茶よりもペットボトルの麦茶の方が多くの泡沫が生じる。

(4) パックの麦茶では、入れるパックの個数が多くなるほど、生じる泡沫の量が多くなる。

(5) 麦茶の温度が高くなると、生じる泡沫の量が多くなる。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・ペットボトルの麦茶

「axialα 麦茶(清涼飲料水

原材料名:六条大麦(カナダ産

・パックの麦茶

「大三茶舗 麦茶(ティーバッグ

原材料名:大麦(福井県産)

・装置

50ml ビュレットをシリコン製のベルトで鉛直になるように固定したもので麦茶を注ぎ

メスシリンダーで受ける。注ぐときはビュレットの注ぎ口を全開にする。すべての実験で

麦茶は 25ml になるように調整した。

・水出し

水道水にティーバッグを入れ

・煮出し

沸騰させたお湯にティーバッグを入れ

ること。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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清涼飲料水)」を使用した。

カナダ産)、乳化剤

ティーバッグ)」を使用した。

をシリコン製のベルトで鉛直になるように固定したもので麦茶を注ぎ

メスシリンダーで受ける。注ぐときはビュレットの注ぎ口を全開にする。すべての実験で

になるように調整した。

水道水にティーバッグを入れ、約 1 時間放置して麦茶を作ること。

沸騰させたお湯にティーバッグを入れ、3~5分煮た後にティーバッグを取り出して

をシリコン製のベルトで鉛直になるように固定したもので麦茶を注ぎ、50ml

メスシリンダーで受ける。注ぐときはビュレットの注ぎ口を全開にする。すべての実験で、注ぐ

分煮た後にティーバッグを取り出して、麦茶を作

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14141414 クラドニ図形の規則性に関する研究クラドニ図形の規則性に関する研究クラドニ図形の規則性に関する研究クラドニ図形の規則性に関する研究

1111.研究の目的.研究の目的.研究の目的.研究の目的

1 年生の物理の授業で、波の実験で鉄板を振動させて上に載せたコルク粉が様々な形になるという

ものを見たときに、もっと様々な形が作れるのではないだろうかと考えた。調べていくと、クラドニ

図形というものがあった。クラドニ図形には様々な形があることを知った。そこで、私たちはただ形

を作るだけではなく、規則性があるのではないのかと考えた。そして、様々な条件に変えることによ

って、規則性があるのではないか、という点に焦点を当てて実験を進めていくことにした。

2222.研究内容.研究内容.研究内容.研究内容

準備

正方形のアクリル板を用意する。次に、スピーカーをアクリル板の中心に取り付け、アクリル

板の上に粒子を乗せる。そして、スピーカーから音を出し、アクリル板を振動させ、動いた粒子

の形を観測した。

実験 1

周波数を変えたときどのような変化が起こるのかを観測したところ周波数を大きくするほど模

様の形が複雑になった。

実験 2

粒の大きさを変えて実験を行ったところ、それらによる変化は見られなかった。ただし節に粒

子が集まることによって形が形成されるので動きやすい小さな粒子のほうが、現れる形の節が細

かく、高い周波数ときにも綺麗な模様を観測することが出来る。

実験 3

アクリル板の端に粘土をつけ、振動させないようにすることで固定端の板を用意することがで

きた。この時粘土で押さえていない板の大きさは自由端の板と同じ大きさにする。固定端の板で

観測された形の二倍の周波数を自由端の板で振動させたとき、中心の模様が同じになるというこ

とが観測された。

実験 4

アクリル板の大きさが同じで、厚さのみを変えたものを用意し、規則性が見られるか実験を行

った。同じ形を観測するとき周波数は厚さに比例することが分かった。

実験 5

アクリル板の材質と厚さが同じで、大きさのみを変えたものを用意し、規則性が見られるか実

験を行った。同じ形を観測するとき周波数は面積に反比例することがわかった。

3333.研究のまとめ.研究のまとめ.研究のまとめ.研究のまとめ

(1) アクリル板の定常波の節に粒子がたまることによって形ができるので、周波数を大きくしたと

き、波長が短くなることによって、波数が多くなり節のできる数が多くなる。その結果、細か

く複雑な模様を観測することが出来る。

(2) アクリル板の厚さや面積を変えても形の移り変わり方はかわらない。

(3) アクリル板の端を固定端から自由端に変えた時では、板の端の節と腹が逆になる。そのため、

アクリル板に二倍の振動数を与えることによりアクリル板の中心で、同じ模様を観測すること

が出来る。

(4) アクリル板の条件を変えて、同じ形を観測したとき、周波数は厚さに比例し面積には反比例す

る。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・クラドニ図形

18 世紀のドイツの物理学者、エルンスト・クラドニによって発見された、音を可視化した図

・周波数

単位時間当たりの振動の回数

・自由端

媒質(振動している物質)の端が自由に変位できるようになっている状態

・固定端

媒質の端が固定されており、波が到達しても変位できないようになっている状態

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】

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15151515 羽ばたき飛行機に関する研究羽ばたき飛行機に関する研究羽ばたき飛行機に関する研究羽ばたき飛行機に関する研究

1111....研究の目的研究の目的研究の目的研究の目的

鳥類は、翼を羽ばたかせて空を飛んでいる。その飛行性能は優れており、上昇・滑空・空中停止・

旋回など、様々な飛行をする。人類は航空機を開発して空を飛べるようになったが、鳥のように自

由に空を飛ぶことはできない。現在、航空機は翼に生ずる揚力を利用して飛行していて、その翼に

は「固定翼」と、「回転翼」がある。それとは異なり、鳥は翼が羽ばたき運動をしている。そこで「パ

タパタ飛行機」というキットを用いて、飛行性能の高い羽ばたき飛行機を作ることを目的に研究を

行った。

2222....研究内容研究内容研究内容研究内容

動力は変えず、翼や尾翼の形や材質を変えて飛行性能を改良しようと試みた。

(「PP おもりなし」、「PE」等は用語解説を参照)

実験 1

同じ種類の羽ばたき飛行機作成キットを用いて、4 種類の飛行機を作製し、力センサーを用い

て推進力を測定した。また、推進力のみを測るために発射台を用いた。推進力の散布図を見たと

ころ、「PP」、「PPおもりなし」はばらつきが大きく、「PE」、「PE 改」はばらつきが小さかった。そ

の結果、推進力の上位 25%の平均値は、「PP」>「PPおもりなし」>「PE改」>「PE」となった。

下位 75%の平均値は、「PPおもりなし」>「PP」>「PE改」>「PE」となった。

実験 2

実験 1 で用いた 4つの飛行機が飛んでいる様子を撮影し、それぞれの飛行速度と 1秒当たりの

羽ばたき速度、振り上げと振り下ろしにかかる時間を比較した。結果は、飛行速度は「PP おもり

なし」が最大で、次いで「PE改」、「PP」、「PE」の順になった。羽ばたき速度は、「PE改」が最大

で、次いで「PP」と「PPおもりなし」が同値で、「PE」が最も小さかった。振りあげと振り下ろ

しにかかる時間の比較の結果、「PE 改」は振り下ろしのほうが少し早く、「PE」は振り上げのほう

が少し早かった。「PP」は振り下ろしのほうが早く、差が大きかった。

実験 3

各飛行機の飛んでいた時間を計測し、その平均を比較した。その結果、「PP」、「PP おもりなし」、

「PE」の 3機は、大きな差が見られなかったが、「PE 改」は他よりはるかに長く飛んでいた。

実験 4

実験 3 より羽ばたきの速度が大きくなると飛行中の上下動が大きくなる。尾翼の大きさを変え

ることで上下動を小さくできると推測した。そこで、「PP おもりなし」の尾翼の大きさを変えて、

飛行時間と飛行姿勢にどのような影響が出るかを調べた。その結果、尾翼を大きくすると飛行時

間は長くなった。

3333....研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ研究のまとめ

自分たちで作った飛行機で、推進力と飛行速度の向上はできなかったが、飛行時間を長くするこ

とが出来た。

(1) 翼のしなりを大きくすると推進力が上がり、飛行速度、羽ばたき速度も上がる。

(2) 推進力にばらつきが出たのは振り上げと振り下ろしの速度の差による。

(3) 尾翼を大きくするにつれて上向きに飛ぶ。それに伴い飛行時間も延びる。

(4) 尾翼の大きさを変えると飛行姿勢に大きな差が生じる。尾翼が小さいと、発射後に大きく降下

する。尾翼を大きくすると、上下動が小さくなる。

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【用語解説】【用語解説】【用語解説】【用語解説】

・PP おもりなし

市販された作成キット(「パタパタ飛行機」、池田工業社)のまま作った飛行機。ポリプロピレ

ンの平坦な羽をつけたもの。

・PP

以下のようにキットを改良したので、「PP おもりなし」におもりをつけて質量を改良型と同

じにした飛行機。

・PE

発泡スチロールの骨組みにポリエチレンのシートを張った羽をつけた飛行機。流線型の羽に

すれば空気抵抗が小さくなり、揚力が大きくなるという予想を確かめるために作成した。

・PE改

ストローの骨組みにポリエチレンを張り、少し切れ込みを入れた羽をつけた飛行機。しなり

が大きくなると、揚力も大きくなるという予想を確かめるために作成した。

・尾翼の大きさ

尾翼は二等辺三角形で、もともとの長さを 4としたとき、それぞれの底辺の長さの比が

2:3:5:6 となるようにした。

【メモ】【メモ】【メモ】【メモ】