10 11 福山黒酢 - honbamon.com€¦ · 鹿児島の壷造り黒酢福山の地味と壷が醸す...

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鹿児島県 鹿40 鹿鹿30 10 20 7鹿児島県の福山町一帯で生産 錦江湾の奥深く。三方を丘に囲まれ、 もう一方は南向きで海に面している。 平均気温約 18℃と温暖で、微生物の 天敵である霜もほとんど降りない。 福山で黒酢が産業として発展したの は、こうした土地柄のほか、江戸期 に貿易港として栄えていたことも関 係している。 米麹と蒸米、地下水のみで 仕込み発酵熟成させる 野天に並べた壷に、米麹と蒸 米、地下水のみを仕込み、発 酵熟成させるという独特の製 造方法は、先人の知恵とはい え驚きです。製造工程や品質 について自主基準を作り、各 研究機関と共同で黒酢の機能 性についても、科学的に解明 するために取り組んでいる姿 勢も評価できます。 商品情報 左から、福山酢醸造の「玄米酢」(700ml)、重久 盛一酢醸造場の「玄米黒酢」(900ml)、坂元醸造 の「坂元のくろず」(1000ml)、福山こめ酢の「福 山黒酢」(700ml)、宇都醸造の「くろ酢」(700ml)。 壷酢は「血液さらさら」「肥満解消」「動脈硬化予防」 など、さまざまな健康機能が解明されている。 審査専門委員 食品科学広報センター 代表取締役 正木 英子 鹿揚げたての鶏唐や野菜を黒酢 (三杯酢)に漬けこんだ南蛮 漬け。アミノ酸が豊富な黒酢 はほのかな甘みがあり、実に 美味。金柑煮や黒酢しょうが もまろやかで箸が進む。料理 には 2 年ほど熟成させた黒酢 が向くそう。 写真上/桜島をみはるかす壷畑にて。重久 盛一酢醸造場の重久さん。 写真右/仕込み期の米麹のあまずっぱい匂 いを嗅ぐと、福山の人々は春や秋の到来を 知る。藏元さんがそう教えてくれた。 左から、仕込んで半年、1 年、3年。ときが たつほどに色は濃く、味わいはまろやかに。 坂元醸造では 2、3 年熟成ものも販売。鹿 児島ではふだんから料理に黒酢を愛用。て んぷらや刺身は酢醤油で食すという。 1本の壷のなかで、麹菌が米 を糖分に変える糖化、酵母が 糖分を酒にするアルコール発 酵、酢酸菌が酒を酢酸にする 酢酸発酵が進む。 鹿児島県天然つぼづくり 米酢協議会 会長 坂元昭宏 関連団体 宇都醸造 鹿児島県霧島市福山町福山 1490-1 0995 - 55 - 3366 坂元醸造 鹿児島県鹿児島市上之園町 21-15 099 - 258 -1777 重久盛一酢醸造場 鹿児島県霧島市福山町福山 2246 -1 0995 - 55 - 2441 伊達醸造 鹿児島県霧島市福山町福山 3621-1 ☎0995 - 55 - 2016 長命ヘルシン酢醸造 鹿児島県霧島市隼人町野久美田 670-2 0995 - 43 -1507 福山こめ酢 鹿児島県霧島市福山町福山 4115-1 0995 - 55 - 3051 福山酢醸造 鹿児島県鹿児島市西田 3-16-3 099 - 256 - 2515 17※審査専門委員在任期間 平成 17 年度~平成 20 年度 鹿児島の壷造り黒酢 名称の由来/福山の天然米酢はできあがると黒っぽく色づ くことから、1975年に「黒酢」と命名された。広島県に同じ地 名があることから、誤解を避けて「鹿児島の壷造り黒酢」に。 製法の特徴/野外の壷で、半年の発酵と半年以上の熟成を経 てつくられる、世界でも類がないめずらしい製法。 原材料の特徴/鹿児島産を中心とする国内産の玄米(籾をは ずし、丸玄米に近いかたち)を使用。輸入米は使わない。 品質と安全性/製品の基準はJAS規格に準じるほか、独自の 規格基準を設け、独自の設備で微生物検査まで行なっている。 業界とりまとめ団体/鹿児島県天然つぼづくり米酢協議会 (鹿児島県鹿児島市上之園町21-15 坂元醸造内) 本場の本物 認定 ココが 特徴 本場の本物 10 11 本場の本物

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Page 1: 10 11 福山黒酢 - honbamon.com€¦ · 鹿児島の壷造り黒酢福山の地味と壷が醸す 温暖な気候と清澄な水と壷に抱かれて熟成する 揚げたての鶏唐や野菜を黒酢

鹿 児 島 県

 

5万2千本以上の壷が整然とな

らぶ壷畑から、たおやかな鹿児島

湾をみおろした。清涼なお酢の香

が鼻腔をくすぐる。実に気持ちが

いい。

 

ここは壷造り黒酢の老舗、坂元

醸造の壷畑である。姶良カルデラ

の東端に位置する福山町では約2

00年前から露天にさらした薩摩

焼の壷のなかで、自然のめぐみだ

けを糧に黒酢がつくられてきた。

 

醸造に用いられるこの壷は、胴

径40㎝ほどで、肩に4つのかわい

らしい耳がついている。通気性に

富むことから、黒酢づくりには

うってつけだという。

 

黒酢の仕込みは、この陶器の壷

に米麹や蒸し米、そしてカルデラ

の火山灰層が磨きあげた清浄な伏

流水を入れ、〝振り麹〞と呼ばれる

乾いた米麹を浮かべて行なう。す

ると、それから半年ほどで、壷の

なかでは糖化やアルコール発酵、

酢酸発酵が重なりあうように進む

のだそうだ。

 

壷畑を眺めているうち、職人が

ひとつひとつ壷のふたを開け中の

状態をチェックしたり、竹の枝を

つっこんだりしていることに気が

ついた。坂元醸造の藏元忠明醸造

技師長に聞くと、「仕込んでから

2〜3カ月はベテランの職人が壷

の蓋を開き、黒酢の顔色を毎日み

てまわります。匂いをかぎ、耳を

澄まし、味見し、触れることもあ

る。そうして発酵状態を追いかけ

ているわけです」

 

発酵が終わり、若酢となっても

気は抜けない。さらに半年間、酢

こんにゃくができないようにかき

まぜながら、黒酢の熟成を待つの

だ。気の遠くなる作業である。坂

元醸造からさほど離れていない重

久盛一酢醸造場の重久郁夫さん

も、「壷によって、味や香り、色、

酸度にばらつきがあります。野菜

黒酢を謳う商品は数あれど

日本では福山壷酢こそ元祖

 

鹿児島市内の坂元醸造本社へ向

かった。同社会長で、鹿児島県天

然つぼづくり米酢協議会の会長も

務める坂元昭夫さんに会うためだ。

 

坂元さんの先代は第二次大戦前

後、米が統制品となり、多くの醸

造場が転業をしいられるなか、薩

摩芋を原料に黒酢を醸しつづけ、

伝統の製法を守り抜いた人物。坂

元さん自身も黒酢の名づけ親であ

り(約30年前は天然米酢と呼ばれ

た)、壷酢の高い健康機能が科学的

に解明されるきっかけをつくった

立役者だ。近年の日本の黒酢史は

坂元家とともにあるといっていい。

 

そんな坂元さんに黒酢のこれか

らを聞いてみたかった。

「壷造りは1年以上もかかるため、

大量生産は難しい。ですが、毎年

10%ずつ壷を増やしていきたいと

考えています。戦前、20軒以上あっ

た醸造場はいまや7軒(会員企業)。

ところが壷の本数をみるとうちだ

けで5万2000本。戦前は1軒

1000本程度でしたから、確実

に増えています。ひと口に黒酢と

いっても最近はさまざまな商品が

出回っていますが、福山こそが本

場。このことを日本、そして世界

へ発信していきたいですね」

と同じ。品質を一定にするには攪

拌が欠かせないのです」と話す。

なるほど、ようやく職人が手にし

ていた竹の枝の正体がわかった。

 

藏元さんからひとつ興味深い話

を聞かせてもらった。寒暖差の少

ない温暖な福山の壷畑には、昔か

ら黒酢づくりに必要な微生物が棲

みついており、一般の醸造工場の

ように微生物を添加したり、醸造

タンクをとりかえたりする必要が

ないというのだ。そのメカニズム

は最新の醸造学でも解明されてい

ないそうだが、壷をのぞけば、そ

こにあまずっぱい香りの琥珀色の

液体がたしかにつまっている。「本

当の職人は、人間でなく畑」とい

う藏元さんの言葉に深く頷いてし

まった。

 

もっとも、雨の日も風の日も変

わらず、わが子のように壷を見守

る職人たちの愛情は、壷酢のなに

よりの隠し味になっているにちが

いないのだが。

鹿児島県の福山町一帯で生産錦江湾の奥深く。三方を丘に囲まれ、もう一方は南向きで海に面している。平均気温約 18℃と温暖で、微生物の天敵である霜もほとんど降りない。福山で黒酢が産業として発展したのは、こうした土地柄のほか、江戸期に貿易港として栄えていたことも関係している。

米麹と蒸米、地下水のみで仕込み発酵熟成させる

野天に並べた壷に、米麹と蒸米、地下水のみを仕込み、発酵熟成させるという独特の製造方法は、先人の知恵とはいえ驚きです。製造工程や品質について自主基準を作り、各研究機関と共同で黒酢の機能性についても、科学的に解明するために取り組んでいる姿勢も評価できます。

商品情報左から、福山酢醸造の「玄米酢」(700ml)、重久盛一酢醸造場の「玄米黒酢」(900ml)、坂元醸造の「坂元のくろず」(1000ml)、福山こめ酢の「福山黒酢」(700ml)、宇都醸造の「くろ酢」(700ml)。壷酢は「血液さらさら」「肥満解消」「動脈硬化予防」など、さまざまな健康機能が解明されている。

審査専門委員食品科学広報センター代表取締役

正木 英子 氏

福山の地味と壷が醸す

鹿児島の壷造り黒酢

温暖な気候と清澄な水と壷に抱かれて熟成する

揚げたての鶏唐や野菜を黒酢(三杯酢)に漬けこんだ南蛮漬け。アミノ酸が豊富な黒酢はほのかな甘みがあり、実に美味。金柑煮や黒酢しょうがもまろやかで箸が進む。料理には 2 年ほど熟成させた黒酢が向くそう。

写真上/桜島をみはるかす壷畑にて。重久盛一酢醸造場の重久さん。

写真右/仕込み期の米麹のあまずっぱい匂いを嗅ぐと、福山の人々は春や秋の到来を知る。藏元さんがそう教えてくれた。

左から、仕込んで半年、1年、3年。ときがたつほどに色は濃く、味わいはまろやかに。坂元醸造では 2、3 年熟成ものも販売。鹿児島ではふだんから料理に黒酢を愛用。てんぷらや刺身は酢醤油で食すという。

1本の壷のなかで、麹菌が米を糖分に変える糖化、酵母が糖分を酒にするアルコール発酵、酢酸菌が酒を酢酸にする酢酸発酵が進む。

鹿児島県天然つぼづくり米酢協議会 会長

坂元昭宏 氏

関連団体宇都醸造 鹿児島県霧島市福山町福山 1490-1☎0995-55 -3366坂元醸造 鹿児島県鹿児島市上之園町 21-15☎099-258 -1777重久盛一酢醸造場 鹿児島県霧島市福山町福山2246 -1 ☎0995-55 -2441伊達醸造 鹿児島県霧島市福山町福山 3621-1☎0995-55 -2016

長命ヘルシン酢醸造 鹿児島県霧島市隼人町野久美田670-2 ☎0995 - 43 -1507福山こめ酢 鹿児島県霧島市福山町福山 4115-1☎0995-55-3051福山酢醸造 鹿児島県鹿児島市西田 3-16-3☎099-256-2515

平成

17年度 

本場の本物認定品(Ⅰ種)

※審査専門委員在任期間 平成17年度~平成20年度

鹿児島の壷造り黒酢名称の由来/福山の天然米酢はできあがると黒っぽく色づくことから、1975 年に「黒酢」と命名された。広島県に同じ地名があることから、誤解を避けて「鹿児島の壷造り黒酢」に。

製法の特徴/野外の壷で、半年の発酵と半年以上の熟成を経てつくられる、世界でも類がないめずらしい製法。

原材料の特徴/鹿児島産を中心とする国内産の玄米(籾をはずし、丸玄米に近いかたち)を使用。輸入米は使わない。

品質と安全性/製品の基準はJAS 規格に準じるほか、独自の規格基準を設け、独自の設備で微生物検査まで行なっている。

業界とりまとめ団体/鹿児島県天然つぼづくり米酢協議会(鹿児島県鹿児島市上之園町21-15 坂元醸造内)

本場の本物

認定

ココが特徴

本場の本物 1011 本場の本物