1) 難病の主な症状 ①呼吸障吸障障害害 病 ...½žp25.pdf ·...

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①呼 ①呼 ①呼 ①呼吸障害 呼吸筋の萎縮等による換気機能の低下などで呼吸障害をきたす。呼吸障害については、 「呼吸障害出現期」、「気管カニューレ装着期」、「人工呼吸器装着期」に分かれてそれぞれ に適切な対応が必要である。 経過 状態 導入 対応 呼吸障害出現期 呼吸障害出現期 呼吸障害出現期 呼吸障害出現期 ・労作時の呼吸苦 ・眠りが浅くよく目が覚める ・咳払いが小さい ・全身倦怠感 ・腹式または、 胸式のみの呼吸になる ・呼吸苦の自覚 ・頻脈 ・顔面蒼白 ・苦悶様顔貌 ・発語不能 ・意識障害 ぼんやり、 うとうと、昏睡 ・歩行困難 ・頸部保持困難 ・早朝の頭痛 ・痰の喀出困難 ・声が小さくなる PaCo2 NIPPV 気管 気管 気管 気管カニューレ装着期 カニューレ装着期 カニューレ装着期 カニューレ装着期 人工呼吸器装着期 人工呼吸器装着期 人工呼吸器装着期 人工呼吸器装着期 呼吸器機能障害 呼吸器機能障害 呼吸器機能障害 呼吸器機能障害 ・1級:呼吸困難が強いため、歩行がほとんどできない 動脈血O2 分圧 50Torr以下の状態 ・3級:動脈血O2 分圧 5060 Torr ・4級:動脈血O2 分圧 6070 Torr 呼吸器感染症 呼吸器感染症 呼吸器感染症 呼吸器感染症 予防 予防 予防 予防 口腔 口腔 口腔 口腔 ケアが ケアが ケアが ケアが 重要 重要 重要 重要 感染 感染 感染 感染 兆候 兆候 兆候 兆候 早期 早期 早期 早期 把握 把握 把握 把握 病状の進行に伴うケアのポイント 総論 1) 難病の主な症状

Transcript of 1) 難病の主な症状 ①呼吸障吸障障害害 病 ...½žp25.pdf ·...

①呼①呼①呼①呼 吸吸吸吸 障障障障 害害害害

呼吸筋の萎縮等による換気機能の低下などで呼吸障害をきたす。呼吸障害については、

「呼吸障害出現期」、「気管カニューレ装着期」、「人工呼吸器装着期」に分かれてそれぞれ

に適切な対応が必要である。

経 過 状 態 導 入 対 応

軽症

重症

呼吸障害出現の可能性について主治医に確認呼吸リハビリ開始将来の人工呼吸器等装着に関する意思の確認

呼吸障害出現期呼吸障害出現期呼吸障害出現期呼吸障害出現期

・呼吸障害の出現、その進行状況を的確に把握する。呼吸機能の評価が大切であり、肺活量%VCまたは%FVCの定期的評価が必要である。・呼吸障害出現の予測について、医師から療養者・家族に説明されている内容を確認。その上で療養者・家族が的確に対応出来るよう支援する。・今後の気管切開や人工呼吸器に対する医師からの説明内容を確認し、スムーズに移行できるよう支援する。・呼吸が苦しいことによる本人の不安や精神的苦痛を緩和する。

・労作時の呼吸苦

・眠りが浅くよく目が覚める

・咳払いが小さい

・全身倦怠感

・腹式または、

胸式のみの呼吸になる

・呼吸苦の自覚

・頻脈

・顔面蒼白

・苦悶様顔貌

・発語不能

・意識障害

ぼんやり、

うとうと、昏睡

・歩行困難

・頸部保持困難

・早朝の頭痛

・痰の喀出困難

・声が小さくなる

PaCo2の上昇によりNIPPVの導入について検討気管切開TPPV人工呼吸器装着

気管気管気管気管カニューレ装着期カニューレ装着期カニューレ装着期カニューレ装着期・気管切開は、気管切開口で気道が外界と接しているので、吸引等は無菌操作を徹底する。・器具、機材による事故予防に留意。・緊急時の対応を確認する。人工呼吸器装着期人工呼吸器装着期人工呼吸器装着期人工呼吸器装着期・人工呼吸器は生命維持装置のひとつであり、事故がおきた場合は死に直結するため、日々の充分な呼吸器ケアや気管カニューレの管理、回路など部品の扱いは正確に行う。・業者と連携し器具の点検、交換、不測の事態等のサポート体制を確立しておく。

※※※※呼吸器機能障害呼吸器機能障害呼吸器機能障害呼吸器機能障害

・1級:呼吸困難が強いため、歩行がほとんどできない

動脈血O2 分圧 50Torr以下の状態

・3級:動脈血O2 分圧 50~60 Torr

・4級:動脈血O2 分圧 60~70 Torr

呼吸器感染症

呼吸器感染症

呼吸器感染症

呼吸器感染症のの のの予防

予防

予防

予防

口腔

口腔

口腔

口腔ケアが

ケアが

ケアが

ケアが重要

重要

重要

重要

感染

感染

感染

感染のの のの兆候

兆候

兆候

兆候をを をを早期

早期

早期

早期にに にに把握

把握

把握

把握

病状の進行に伴うケアのポイント

Ⅰ 総論

1) 難病の主な症状

吸引器準備

-1-

生命の維持に関係する重要な障害である。筋・神経疾患では、呼吸筋萎縮等による換気能低

下で起こることが多く、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、筋ジストロフィー、

重症筋無力症などで起こりやすい。

呼吸呼吸呼吸呼吸障害の初期障害の初期障害の初期障害の初期症状症状症状症状

■声が小さくなる、言葉が途切れる

■咳が小さい、痰がきれない

■食事量が減る

■胸腹式呼吸が、胸式や腹式呼吸に変わる

■夜間睡眠中に呼吸症状が始まることが多い

日中の観察と同時に、夜間の観察・問診が重要

多系統萎縮症では、いびきに注意(声帯麻痺の恐れ)

初期の段階

■訪問診療、訪問看護による呼吸状態の評価

ALSでは、動脈血に二酸化炭素が先にたまる。

つまり、高炭酸ガス血症と正常~低酸素血症を呈する。

■器械を使った呼吸状態の評価

酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)の導入 等

(障害者総合支援法:日常生活用具給付・貸与)

■訪問リハビリによる呼吸筋のリハビリ、排痰法とその指導

カフアシストの使用(主治医の判断)

■吸引器、ネブライザー(吸入器)の貸与(障害者総合支援法)

パルスオキシメーター画像

患者さんの呼吸管理を非侵襲的に

行える

カフアシスト画像

在宅、人工呼吸器使用の神経難病・筋疾患

で保険適応(H22年度~)-2-

カフアシストカフアシストカフアシストカフアシスト::::非侵襲的に排痰の補助を行うことで、気道内吸引による気道への負担を軽減させる。また、排痰がしっかり行えるので、感染による肺炎などの肺合併症の予防につながる。原理:気道に陽圧をかけて肺に空気をたくさん入れた後に、陰圧で吸引するように息を吐き出させることで、咳の介助をして、気道内分泌物を除去するのを助ける。目的:肺にたまった痰を排出する。肺炎や無気肺を予防する。※導入するためには主治医の判断と処方が必要。また、適切に使用するため練習も必要である。進行期段階

■多系統萎縮症による声帯麻痺には、気管切開、鼻マスクによる人工呼吸器 (特にCPAP)

が一部の患者さんで有用

■ALSでは、人工呼吸器(NPPV、TPPV)の導入について、患者・家族・医療ケア提供者と

一緒に継続的に決定していくことが重要 (常に患者さんの気持ちは流動的)

ALSにおけるNPPV導入ALSにおけるNPPV導入ALSにおけるNPPV導入ALSにおけるNPPV導入時期時期時期時期

■ %VC(肺活量)の値にかかわらず、

動作時の呼吸困難、全身倦怠感、

早朝の頭痛の訴えなどがある場合

は、安静時の血液ガス所見やSpO2

の異常がなくても、すぐにNPPVを

開始する。

ALSにおけるNPPVの利点とALSにおけるNPPVの利点とALSにおけるNPPVの利点とALSにおけるNPPVの利点と限界限界限界限界

■ この機器は、嚥下障害が軽く、呼吸障害が先行して障害される患者に適応がある。

TPPVに比べ、非侵襲性であり、ゆっくりした進行の場合、長期にわたって使用でき、会話

経口摂取も可能で、呼吸苦を緩和し、ADLを改善できる場合がある。

■ 去痰困難がある場合は、誤嚥性肺炎のリスクがある。また、導入は、入院して行われる

場合が多く、マスクや機器の管理が必要である。

■ 球麻痺が悪化した場合には、かえって苦しくなる。呼吸障害が進行した場合、NPPVの使

用で二酸化炭素の貯留がなくなることでかえって呼吸苦をきたすこともある。

人工呼吸器を希望されなかった場合人工呼吸器を希望されなかった場合人工呼吸器を希望されなかった場合人工呼吸器を希望されなかった場合

苦痛緩和の方法についての情報提供:

緩和ケア、在宅酸素療法、医療用麻薬使用の方法について、在宅や病院での導入につい

て、患者・家族・地域主治医と確認する。 -3-

呼吸筋麻痺の症状呼吸筋麻痺の症状呼吸筋麻痺の症状呼吸筋麻痺の症状

・咳払いができない ・痰をきれない ・小声になる ・胸の動きが悪くなる

・奇異呼吸(左右非対称 胸部と腹部の動きが同調せず、夜間息苦しく目が覚める)

ALSの呼吸障害ALSの呼吸障害ALSの呼吸障害ALSの呼吸障害

・ALSは、肺・気道を駆動する運動ニューロンが障害され、喚起不全(Ⅱ型呼吸不

全)を呈する

・低酸素血症になる前に炭酸ガスを捨てられなくなる、高二酸化炭素血症を呈する

→初期には早期の頭痛、頭重感を呈する

→高度の二酸化炭素蓄積でCO2ナルコーシスとなり、意識障害(ぼんやり、傾眠、

意味不明瞭な言動、見当識障害)、顔面紅潮、頭痛、めまい、発汗、振戦を呈する

・呼吸筋群(最大の呼吸筋は横隔膜)を支配する運動ニューロンが変性・消失し、横

隔膜、肋間筋、腹筋等の動きが悪くなる

→徐々に肺が膨らまなくなる(拘束性呼吸障害)

・球麻痺、声帯麻痺で気道が狭くなる(閉塞性呼吸障害)

呼吸不全呼吸不全呼吸不全呼吸不全

→ 肺炎や急性呼吸

不全に多い

→ ※慢性呼吸不全や

その急性憎悪、神経

筋疾患難病の呼吸

不全に多い

※慢性呼吸不全とは、上記呼吸不全の状態が少なくとも1か月以上持続するもの出典:ナースフルhttps://nurseful.jp/nursefulshikkanbetsu/pulmonology/section_3_01/#first_text

-4-

分泌物(唾液・痰)への対症方法分泌物(唾液・痰)への対症方法分泌物(唾液・痰)への対症方法分泌物(唾液・痰)への対症方法

■十分な水分補給や加湿:粘稠痰に対して

■薬物療法:粘液溶解薬・抗コリン薬など

■唾液貯留に対して

□抗コリン薬、硫酸アトロピン、カタプレス、スコポラミン軟膏

□ボトックスの耳下腺注入、鼓室神経切除、放射線照射

■体位変換・タッピング

□日中はできるだけ車いすで過ごす

□ベッドの場合、ギャッジアップ・体位変換マットの利用

□介護者(家族)の労力負担軽減への考慮も必要

■吸引

□口腔・鼻腔吸引

□気管内吸引

□低圧持続吸引

□バギングとの併用

□カフアシスト(MAC)の使用

■TPPV(侵襲的人工換気)患者:加湿状態に要注意

呼吸リハビリテーション呼吸リハビリテーション呼吸リハビリテーション呼吸リハビリテーション

■体位ドレナージ

■肺や胸郭のコンプライアンスの維持

■胸郭・肩甲骨のROM(関節可動域)維持

■最大吸気容量(MIC)維持

□息こらえ、舌咽頭呼吸:神経難病では困難

□バギング

□NPPVを利用

■咳嗽介助

□用手的:中枢気道の喀出・吸痰ができること

スクウィージング、スプリンギング、MIC維持と併用

□機械的介助咳(MAC) カフアシスト

呼吸障害への対応について

状態(症状)別対応状態(症状)別対応状態(症状)別対応状態(症状)別対応

■閉塞性呼吸障害閉塞性呼吸障害閉塞性呼吸障害閉塞性呼吸障害

□CPAP・BiPAP

□気管切開

■中枢性呼吸障害中枢性呼吸障害中枢性呼吸障害中枢性呼吸障害

□侵襲的(気管切開下)人工換気(TPPV)

■呼吸筋麻痺呼吸筋麻痺呼吸筋麻痺呼吸筋麻痺

□非侵襲的人工換気(NPPV・BiPAP)

□侵襲的人工換気(TPPV)

■人工呼吸療法を選択しない場合人工呼吸療法を選択しない場合人工呼吸療法を選択しない場合人工呼吸療法を選択しない場合

□低酸素に酸素療法

□呼吸苦にモルヒネ

□精神的な不安やパニック等にトランキライザーの投与-5-

神経疾患の呼吸障害と症状神経疾患の呼吸障害と症状神経疾患の呼吸障害と症状神経疾患の呼吸障害と症状

■呼吸筋麻痺(ALS・球脊髄性萎縮症・脊髄性筋萎縮症■呼吸筋麻痺(ALS・球脊髄性萎縮症・脊髄性筋萎縮症■呼吸筋麻痺(ALS・球脊髄性萎縮症・脊髄性筋萎縮症■呼吸筋麻痺(ALS・球脊髄性萎縮症・脊髄性筋萎縮症 など)など)など)など)

□強い咳ができない → 弱い咳もできない

□大きな声が出ない→続けてしゃべれない→声が出なくなる

□呼吸筋から始まる場合、労作時の呼吸困難→安静時の呼吸困難

□動ける場合、労作時の呼吸困難→安静時の呼吸困難

□呼吸困難のため摂食できない

□夜間の中途覚醒・不眠

□CO2ナルコーシス:特に睡眠後の頭痛、意識の混濁→意識消失→呼吸停止

■声帯麻痺による閉塞性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)■声帯麻痺による閉塞性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)■声帯麻痺による閉塞性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)■声帯麻痺による閉塞性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)

□著明ないびき・吸気時の気道狭窄音

■中枢性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)■中枢性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)■中枢性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)■中枢性呼吸障害(多系統萎縮症・パーキンソン関連疾患など)

□チェーンストークス呼吸・無呼吸・低呼吸

慢性進行性神経疾患の呼吸障害慢性進行性神経疾患の呼吸障害慢性進行性神経疾患の呼吸障害慢性進行性神経疾患の呼吸障害

■潜在性に進行潜在性に進行潜在性に進行潜在性に進行

□呼吸困難を自覚しないことが多い (ALSでは2~3割 筋ジストロフィーでは大部分)

■睡眠中の呼吸停止の危険性睡眠中の呼吸停止の危険性睡眠中の呼吸停止の危険性睡眠中の呼吸停止の危険性

□呼吸筋麻痺:睡眠中の急速な高炭酸ガス血症による呼吸抑制

□声帯麻痺:声帯麻痺による狭窄に加え逆説睡眠(REM)期の筋弛緩によって

咽頭壁が落ち込み気道を閉塞

■気道クリアランスの低下気道クリアランスの低下気道クリアランスの低下気道クリアランスの低下:分泌物・痰を喀出できず急性呼吸不全に陥る危険性

□侵襲的人工換気(IV)を行うと離脱困難になることが多い

■高濃度の酸素投与高濃度の酸素投与高濃度の酸素投与高濃度の酸素投与

□動脈中炭酸ガスの上昇→呼吸中枢の抑制→呼吸停止

□終末期の苦痛緩和を重視する場合は躊躇すべきではない

-6-

疾患の進行により日常生活機能が低下しそれらへの対応や支援が重要である。その時々

の機能低下に合わせた補助具・機器の導入など様々な工夫が必要となる。また、関節や筋

肉の拘縮予防、疼痛緩和等をはかるため各種リハビリテーションが必要となる。

経 過 状 態 導 入 対 応

軽症

重症

・重いものが持てない

・走りにくい

・握力低下

・歩行時足が

引っかかる

手指の巧緻性の低下

・衣服の着脱困難

・食事摂取が困難

・身体障害者

手帳の申請

・介護保険の

申請

・座位保持不可能

・歩行困難

・頸部保持困難

・入浴時シャワーチェア・介護用ベッド・車いす・杖・手すり、段差の解消:住宅改修・自助具の工夫(例:リーチャー、スプリングバランサーなどの利用・介護用マット・障害に応じた車いす(例:フルリクライニング、呼吸器搭載可能な車いすのオーダーメイド)・リフト

②運②運②運②運 動動動動 障障障障 害害害害

住宅住宅住宅住宅改修改修改修改修

手すり・段差解消・昇降機・リ

フトなど

((((介護保険・障害福祉介護保険・障害福祉介護保険・障害福祉介護保険・障害福祉))))

電動ベッド・ベッド柵・マット電動ベッド・ベッド柵・マット電動ベッド・ベッド柵・マット電動ベッド・ベッド柵・マット

上肢の機能があれば、自分

で好きな位置に合わすことが

できる。

ポータブルスプリングポータブルスプリングポータブルスプリングポータブルスプリング

バランサーバランサーバランサーバランサー

わずかな力でも自身の腕を動

かすことのできる装具

(介護保険・障害福祉(介護保険・障害福祉(介護保険・障害福祉(介護保険・障害福祉))))

車いす車いす車いす車いす

本人の障害に合わせ、リクライ

ニングや、呼吸器の搭載可能

な電動車いすなどのオーダー

が必要である。

(障害福祉)(障害福祉)(障害福祉)(障害福祉)

ポータブルトイレポータブルトイレポータブルトイレポータブルトイレ

ウオッシャブル機能付きのもの

もある。

自動採尿器自動採尿器自動採尿器自動採尿器

(介護保険・障害福祉(介護保険・障害福祉(介護保険・障害福祉(介護保険・障害福祉))))

・訪問看護・訪問看護・訪問看護・訪問看護

(医療保険・介護保険)(医療保険・介護保険)(医療保険・介護保険)(医療保険・介護保険)

・訪問リハビリ・訪問リハビリ・訪問リハビリ・訪問リハビリ(介護保険)(介護保険)(介護保険)(介護保険)

・訪問介護・訪問介護・訪問介護・訪問介護(介護保険)(介護保険)(介護保険)(介護保険)

・重度訪問介護・重度訪問介護・重度訪問介護・重度訪問介護(障害福祉)(障害福祉)(障害福祉)(障害福祉)

病状の進行に伴うケアのポイント

-7-

疾患によって違いはあるが、障害の進行に伴い、日常生活が部分的な介助から全面的な介

助へとなっていく。障害や機能低下にあわせて補助具や機器の導入など、様々な工夫が必要と

なる。

関節や筋肉の拘縮予防をはかるためリハビリテーションも必要。

運動障害の運動障害の運動障害の運動障害の症状症状症状症状

<初 期>

■重いものが持てない ■走りにくい ■握力低下

■歩行時に足がひっかかる ■階段が上れない ■衣服の着脱が困難

■よく転倒する

<進行期>

■四肢まひ ■歩行が困難 ■頸部保持困難

■座位保持が不可能 ■転倒しても立ち上がれない(介助を要する)

四肢・体幹運動障害の進行に四肢・体幹運動障害の進行に四肢・体幹運動障害の進行に四肢・体幹運動障害の進行に対して対して対して対して

現在残っている運動機能の維持、廃用性筋萎縮や関節拘縮予防を主目的にし、過度の

運動や疲労蓄積はさける。

■通所リハビリ、訪問リハビリ(介護保険、医療保険)

■移動補助具の導入

杖、歩行器、車いす、リクライニング車いす、介助型車いす、電動車いす

(介護保険、障害者総合支援法)

■体を支える機能のあるクッション、座位保持装置

(介護保険、障害者総合支援法)

リクライニングの車いす

病状の進行や、変化に合わせた対応が必要病状の進行や、変化に合わせた対応が必要病状の進行や、変化に合わせた対応が必要病状の進行や、変化に合わせた対応が必要

■ポータブルトイレの導入

■特殊尿器:電動で吸引するタイプもある

■シャワーチェアの導入

■リフトなどの移乗介助器、体位変換器

■自宅の改造:状態にあわせてかえていく(手すり、玄関から外にでるアプローチなど)

■リクライニング・ベッドの導入

■適切な時期に身体障害者手帳や介護保険の導入をすすめる

ページめくり機ページめくり機ページめくり機ページめくり機 リクライニング車いすリクライニング車いすリクライニング車いすリクライニング車いす

-8-

あご操作マウスあご操作マウスあご操作マウスあご操作マウス milletmilletmilletmilletあごでコンピューターの操作ができる補助具いろいろ

わずかな力でも自身の腕を動かすことのできる装具

スプリングバランサースプリングバランサースプリングバランサースプリングバランサー

-9-

③コミュニケーション障害③コミュニケーション障害③コミュニケーション障害③コミュニケーション障害

神経・筋疾患の場合、発声・発語の機能に障害がおこり、話し言葉としての意思伝達が出来ない状

態になることがある。

また、病気によっては四肢の運動機能障害も加わり、筆談も不可能になり、意思の伝達手段を失う

場合がある。言語聴覚士(ST)による言語リハビリや、作業療法士(OT)による指導、病気の早い段

階から必要に応じてコミュニケーションを助ける機器類を活用するなどはとても効果的である。

経 過 状 態 導 入 対 応

軽症

重症

・呂律がまわり

にくい

・発音不明瞭

・聞き取り困難

・発語不可能

筆筆筆筆 談談談談文字盤文字盤文字盤文字盤

文字盤文字盤文字盤文字盤50音や数字等を記入した文字板を指でさして意志を表示する。発泡スチロールや厚手の紙で簡単に手作りできる。透明透明透明透明文字盤文字盤文字盤文字盤透明プラスチック板に50音や数字等を記入した文字盤を使い、アイコンタクトで目線のあった文字を拾い、つづっていく。<価格>2,300円*フリーソフトで文字盤のダウンロードが可能、プラスチック板(100円程度)に印刷することで簡単に手作りできる。

・会話がゆっくり

・長文が困難

トーキングエイドトーキングエイドトーキングエイドトーキングエイド

レッツチャットレッツチャットレッツチャットレッツチャット

意思伝達装置意思伝達装置意思伝達装置意思伝達装置

トーキングエイドトーキングエイドトーキングエイドトーキングエイド50音文字盤のキーを押して文字を打ち込む。<価格>100,000円レッツチャットレッツチャットレッツチャットレッツチャット本人の障害にあったスイッチを使い、文字を打ち込む。専用スタンドがある。<価格>120,000円意思伝達意思伝達意思伝達意思伝達装置装置装置装置パソコンを使って、本人にあったスイッチを使い、文字を打ち込む。<価格>480,000円※身体障害福祉制度では補装具に該当心語り心語り心語り心語り患者の脳の血流量から「はい」「いいえ」といった本人の考えを把握する新しいシステム。心語心語心語心語りりりり

言語療法言語療法言語療法言語療法構音障害・摂食嚥下障害に対し言語聴覚士(ST)によるリハビリを受けることも効果的

病状の進行に伴うケアのポイント

-10-

神経・筋疾患の場合、発声・発語の機能に障害がおこり、話し言葉としての意思伝達ができ

ない状態になることがある。また、四肢や体幹、表情などの運動機能障害も加わり、筆談も不

可能となり、意思の伝達手段を失う場合がある。

必要に応じてコミュニケーションを助ける機器類を活用することはとても効果がある。

疾患別の構音障害の疾患別の構音障害の疾患別の構音障害の疾患別の構音障害の特徴特徴特徴特徴

■筋萎縮性側索筋萎縮性側索筋萎縮性側索筋萎縮性側索硬化症硬化症硬化症硬化症

舌や口唇が動きにくくなる。声がでにくくなる、

続けて長く話せなくなる

■多系統萎縮症多系統萎縮症多系統萎縮症多系統萎縮症

舌や口唇の動きのコントロールが゙難しくなる

発音が不明瞭、声の大きさの調整が難しくなる

■パーキンソン病パーキンソン病パーキンソン病パーキンソン病

口唇や舌の筋肉が固く動かしにくくなる

声が小さくなる、発音速度が速くなる

コミュニケーションコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーション障害の障害の障害の障害の進行への対応進行への対応進行への対応進行への対応

■ 言葉によるコミュニケーションが可能な時期から、本人・家族・医師・支援関係スタッフなど

が将来を見据えて他のコミュニケーション手段の活用について十分に話し合った上で導入し、

早い時期から習熟していくことが重要。

■ 疾患や、障害部位により適応するコミュニケーション機器が変わってきます。機器の選定やスイッ

チ類の調整、家族の使い心地等については、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士・訪問看

護師等が専門的な評価を行う必要がある。

透明文字盤

入力

心語り心語り心語り心語り脳内の血液量の変化を測定することにより、Yes/Noを伝達する装置。全くコミュニケーションをとることができないトータリーロックドイン状態(TLS: Totally Locked-in State)の患者さん向けに開発された。「Yes」と答えたい場合は、脳を活性化させて脳血液量を増加させ、「No」と回答したい場合は、呼吸を数えるなどをして脳活動を落ち着かせる。パソコン画面や音声で意思が表示される。

こコミュニケーション

支援の目的は、機器

を使うことが目的で

はなく、機器の利用

を通じて利用する人

の活動を維持、拡大

するために用いる。

透明文字盤透明文字盤透明文字盤透明文字盤 携帯用会話携帯用会話携帯用会話携帯用会話装置装置装置装置

トーキングエイド、レッツチャットトーキングエイド、レッツチャットトーキングエイド、レッツチャットトーキングエイド、レッツチャット

意思伝達意思伝達意思伝達意思伝達装置装置装置装置 伝伝伝伝の心の心の心の心

重度障害者用意思伝達装置重度障害者用意思伝達装置重度障害者用意思伝達装置重度障害者用意思伝達装置マイトビーマイトビーマイトビーマイトビー視線入力視線入力視線入力視線入力ハーティーラダーハーティーラダーハーティーラダーハーティーラダー

-11-

ジェリービーンスイッチツイストジェリービーンスイッチツイストジェリービーンスイッチツイストジェリービーンスイッチツイスト

(接点式入力装置接点式入力装置接点式入力装置接点式入力装置)

ピエゾニューマティックセンサスイッチピエゾニューマティックセンサスイッチピエゾニューマティックセンサスイッチピエゾニューマティックセンサスイッチ

PPSPPSPPSPPSスイッチスイッチスイッチスイッチ (圧電素子式入力装置圧電素子式入力装置圧電素子式入力装置圧電素子式入力装置)

ブレスマイクスイッチブレスマイクスイッチブレスマイクスイッチブレスマイクスイッチ

(呼気式入力装置呼気式入力装置呼気式入力装置呼気式入力装置)

EOGEOGEOGEOGセンサースイッチセンサースイッチセンサースイッチセンサースイッチ

(電位差入力装置電位差入力装置電位差入力装置電位差入力装置)

ファイバースイッチファイバースイッチファイバースイッチファイバースイッチ

(光電式入力装置光電式入力装置光電式入力装置光電式入力装置)

ピンタッチスイッチセットピンタッチスイッチセットピンタッチスイッチセットピンタッチスイッチセット

(電式(電式(電式(電式入力入力入力入力装置)装置)装置)装置)

ピンタッチスイッチピンタッチスイッチピンタッチスイッチピンタッチスイッチ

の使用例の使用例の使用例の使用例

スイッチスイッチスイッチスイッチ

いろいろいろいろいろいろいろいろ

まばたきセンサースイッチまばたきセンサースイッチまばたきセンサースイッチまばたきセンサースイッチ

(光電式入力装置光電式入力装置光電式入力装置光電式入力装置)

大きいテープでピエゾセンサを固定することで、広い範囲の動きを検知できます

-12-

④嚥④嚥④嚥④嚥 下下下下 障障障障 害害害害

神経・筋疾患では、嚥下機能に障害がおこりやすいため、経口での栄養摂取が不十分であったり、

誤嚥性肺炎をおこしやすくなったりする。また、病気によっては四肢の運動機能障害も加わり、摂食し

にくくなるため低栄養に陥ることもある。

言語聴覚士(ST)による言語リハビリや指導を受けるなど、病気の早い段階から必要に応じて対応

することが必要である。

経 過 状 態 導 入 対 応

軽症

重症

・よだれ・流れ込み

・いつまでも口内に食べ物が残る・食事後、声がゴロゴロに変わる・体重減少・熱が出る(誤嚥性肺炎を繰り返す)・脱水・低栄養

・嚥下機能の評価・嚥下機能の評価・嚥下機能の評価・嚥下機能の評価や、摂食嚥下リハや、摂食嚥下リハや、摂食嚥下リハや、摂食嚥下リハビリの開始ビリの開始ビリの開始ビリの開始・口腔ケア・口腔ケア・口腔ケア・口腔ケア・・・・食事形態の工夫食事形態の工夫食事形態の工夫食事形態の工夫(軟菜、きざみ、(軟菜、きざみ、(軟菜、きざみ、(軟菜、きざみ、ととととろろろろみつけなど)みつけなど)みつけなど)みつけなど)・一口量のコント・一口量のコント・一口量のコント・一口量のコントロールロールロールロール・体位の工夫・体位の工夫・体位の工夫・体位の工夫

経口摂取の支援経口摂取の支援経口摂取の支援経口摂取の支援

(食事形態の選択)(食事形態の選択)(食事形態の選択)(食事形態の選択)普通食↓一口カット食↓きざみ食(パサパサ→しっとり)↓やわらか食(半固形食)↓ミキサー食・ゼリー食・トロミ↓流動食

食後の口腔ケアの励行食後の口腔ケアの励行食後の口腔ケアの励行食後の口腔ケアの励行

食事時に・むせる・時間がかかる・飲み込みにくさを自覚する栄養評価栄養評価栄養評価栄養評価胃瘻等経管栄胃瘻等経管栄胃瘻等経管栄胃瘻等経管栄養と経口摂取養と経口摂取養と経口摂取養と経口摂取の併用の併用の併用の併用

摂食嚥下リハビリ摂食嚥下リハビリ摂食嚥下リハビリ摂食嚥下リハビリ摂食嚥下障害に対し言語聴覚士(ST)によるリハビリを受けることも効果的

経管栄養経管栄養経管栄養経管栄養経管栄養経管栄養経管栄養経管栄養経鼻カテーテル・胃瘻唾液の低圧持続吸引唾液の低圧持続吸引唾液の低圧持続吸引唾液の低圧持続吸引

<高度の嚥下障害>

気管切開・気管喉頭分離術、喉頭気管切開・気管喉頭分離術、喉頭気管切開・気管喉頭分離術、喉頭気管切開・気管喉頭分離術、喉頭

摘出術の検討摘出術の検討摘出術の検討摘出術の検討(気道を確保し、誤嚥を防ぐ手術)低圧持続吸引器

病状の進行に伴うケアのポイント

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食べ物などが飲み込めなくなると、栄養がとれず栄養障害による体力低下や脱水をひきおこす。ま

た、誤嚥により窒息や誤嚥性肺炎を起こしやすくなる。筋萎縮性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン

病などでみられる。

誤嚥誤嚥誤嚥誤嚥とはとはとはとは????

食物が食道ではなく気道に入ること

(摂食・嚥下障害>誤嚥)

・食物の誤嚥

・唾液・胃食道逆流液の誤嚥

・silent aspiration(不顕性誤嚥)

→ムセなし誤嚥

*誤飲・・・食物以外の異物が気道に入ること

■嚥下時の体位の工夫

■口腔ケア

■嚥下関連器官の運動・筋力強化

■食事形態の工夫(大きさ、固さ、トロミをつける、キザミ、ミジン食への変更)

■経管栄養の導入(経鼻経管、胃ろうの検討)

経口食と併用しながら、栄養不良や脱水をきたさないように、早めに導入。

■気管切開、気管喉頭分離術、喉頭摘出術等の検討(気道を確保し、誤嚥を防ぐ手術法)

■高度の嚥下障害には、唾液の低圧持続吸引を行う

嚥下障害の嚥下障害の嚥下障害の嚥下障害の特徴<食事の場面から>特徴<食事の場面から>特徴<食事の場面から>特徴<食事の場面から>

・丸呑みする

・いつまでも口をモグモグさせている

・食事時間が長い

・むせる、 ふき出す

・鼻やのどに逆流する

・嚥下後、口やのどに残る (感じがする)

・嚥下後、声が(ゴロゴロに)変わる

・固形物をのどに詰める

・食事後、痰が出る・増える

嚥下障害の嚥下障害の嚥下障害の嚥下障害の特徴<食事場面以外から>特徴<食事場面以外から>特徴<食事場面以外から>特徴<食事場面以外から>

・かすれ声

・不明瞭な発音 鼻に抜けた発音(開鼻声)

・よだれが出る

・痰がからみやすい

・咳払いが多くなった

・体力が低下してきた

・体重減少

・時々熱が出る

言語療法士や栄養士や歯科衛生士のアドバイスを受けておこなう

前前前前

*誤嚥 食物が食物が食物が食物が誤って気管に入る誤って気管に入ること。こと。こと。こと。

気管気管気管気管

食道食道食道食道

食物

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摂食摂食摂食摂食・嚥下運動の・嚥下運動の・嚥下運動の・嚥下運動の成り立ち成り立ち成り立ち成り立ち➀食物が口に入る前に何をどのくらい、どのように食べるかを決めて行動する。(見当をつける)②食物を口に入れて噛み砕き、舌でまとめて咽頭へ送りやすい形にし、食物を口腔から咽頭の方向へ移送させる。③反射運動により咽頭から食道へ食物を移送させ、蠕動(ぜんどう)運動により食道から胃へ移送させる。※気道と食道は前後に隣り合わせにある。嚥下にかかわる器官の中でわかりにくいものに、 喉頭蓋谷(こうとうがいこく)と梨状窩(りじょうか)がある。喉喉喉喉頭蓋頭蓋頭蓋頭蓋谷:谷:谷:谷: 喉頭蓋(こうとうがい)は、嚥下運動と共に下向きに倒れ、食物が食道に送られる時に気道に蓋をする役目をする(図1の(4)(5))。この動きは普通1秒以内でおこる。通常、喉頭蓋は上を向いており、舌根(ぜっこん)との間に谷間ができる。これの谷間を喉頭蓋谷という。梨状窩:梨状窩:梨状窩:梨状窩:食道の入り口にある左右の袋状の溝のことで、奥舌から喉頭蓋谷に達した食物は左右に分かれてこの梨状窩を通過し、食道に入る。この喉頭蓋谷や、梨状窩の運動この喉頭蓋谷や、梨状窩の運動この喉頭蓋谷や、梨状窩の運動この喉頭蓋谷や、梨状窩の運動が円滑でなかったり、食物の通り道に障害物があって通過しが円滑でなかったり、食物の通り道に障害物があって通過しが円滑でなかったり、食物の通り道に障害物があって通過しが円滑でなかったり、食物の通り道に障害物があって通過し

にくいことを摂食・嚥下障害とにくいことを摂食・嚥下障害とにくいことを摂食・嚥下障害とにくいことを摂食・嚥下障害という。いう。いう。いう。

出典 藤島一郎:脳卒中の摂食・嚥下障害,第2版,医歯薬出版,東京.2005;P19~29

図図図図1111 摂食・嚥下運動摂食・嚥下運動摂食・嚥下運動摂食・嚥下運動

人体の解剖学的構造から呼吸と嚥下は中咽頭まで同部位を用いており、通常、巧みな機序で食物を認識すると喉頭蓋が閉じるが、なんらかの原因で、両者が交差し、誤って気道内に異物が侵入する(誤嚥)や喉頭侵入による気道閉塞(窒息)が最も危険な状態である。栄養障害同様、嚥下障害にも、疾患による特徴がみられる。どの過程の障がいかを評価し、原因に応じた摂食嚥下リハビリテーションの適応を見極め安全に実施する役割が求められている。

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飲み込みやすい飲み込みやすい飲み込みやすい飲み込みやすい食形態食形態食形態食形態

1.食材1.食材1.食材1.食材の密度<大きさ・硬さ>が均一であることの密度<大きさ・硬さ>が均一であることの密度<大きさ・硬さ>が均一であることの密度<大きさ・硬さ>が均一であること・食材の大きさや硬さが均一でないと、噛み砕いたり、飲み込みやすい塊(かたまり)にまとめることが難しくなる。調理に用いる食材は、大きさを揃えて、同じ軟らかさになるまで炊き込む。・十分に炊いても軟らかくなりにくい場合は、ミキサーやフードカッターでミキシングしたり、すり鉢ですりつぶしたり、裏ごしを行うことにより、密度を均一にすることができる。2.適度2.適度2.適度2.適度な粘度と凝集性<まとまり>があることな粘度と凝集性<まとまり>があることな粘度と凝集性<まとまり>があることな粘度と凝集性<まとまり>があること・咀嚼(そしゃく)したときに口の中でバラバラになったり、のどを通過するときにバラバラになる食品は、上手に飲み込むことが困難となる。いわゆる単なる「キザミ食」は、嚥下障害のある方には危険である。片栗粉のあんや増粘剤、ゼラチン、粘りやトロミのある食材(山芋、マヨネーズなど)を利用して、まとまりのある形態に仕上げる。3.飲み込む3.飲み込む3.飲み込む3.飲み込む時に変形し、すべりが良いこと時に変形し、すべりが良いこと時に変形し、すべりが良いこと時に変形し、すべりが良いこと・のどを通過するときに変形しにくいものは、飲み込みにくくなる。変形しやすい軟らかさに調理することと、スムーズにのどを通過できるようなすべりの良い形態に仕上げることが必要。ゼラチンゼリーやプリン、ババロアのような形態が最適。4.口腔4.口腔4.口腔4.口腔粘膜やのどへの付着性が低いこと粘膜やのどへの付着性が低いこと粘膜やのどへの付着性が低いこと粘膜やのどへの付着性が低いこと・トマトの皮やワカメ、味付けのり、おもち、水飴類やホクホクの焼き芋など、口の中やのどにくっつきやすいものは、嚥下機能が低下している場合、飲み込むことが非常に困難。適度な水分や脂肪分、トロミを加えてくっつきにくい形態に仕上げる。それでも飲み込みにくい食材は、使用を控える。トロミは付けすぎると付着性が増すため注意が必要。

・最も深刻なのは食物が気道に入ること。

・むせない誤嚥も多く、自覚症状がないため気づくのが遅れる。むせる誤嚥より肺炎を引き起こす

確率が高い。(むせない誤嚥:誤嚥患者さんの3~5割を占める)

・誤嚥は嚥下運動前・中・後の3つのパターンに分類される(図2)。

・誤嚥の中では喉頭蓋谷や梨状窩への貯留物が食後や臥床時に気道に流入する「C.嚥下運動

後の誤嚥」が最も多い。

図図図図2222 誤嚥の誤嚥の誤嚥の誤嚥の分類分類分類分類 (*誤嚥は嚥下運動前・中・後の3つのパターンに分類される)

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2.2.2.2.リクライニング姿勢リクライニング姿勢リクライニング姿勢リクライニング姿勢

・「首のすわりが悪い」、「頭部が後ろにそっている」、「あごが胸に付くまで下

を向いている」などのときは、のどの動きを制限してしまう。

・下図のように頸部が安定した姿勢を工夫する。

・座位からリクライニング位にして、60度、30度など仰臥位頸部前屈の姿勢を

とると良い。

1.安定1.安定1.安定1.安定した座位した座位した座位した座位

・足底が床につく

・骨盤が曲がっていない

・体幹がまっすぐ

誤嚥しにくい食べ方の工夫

誤嚥防止のための体位をのせる

誤嚥の図 30303030°°°°~60~60~60~60°°°°あごを引く 枕などのあて物をして

頸部を前屈させる

挙上角度は

30°~60°

<逆流予防><逆流予防><逆流予防><逆流予防>

・食後は真横にしない

-胃食道からの逆流を予防する-

・食後最低30分は臥床禁止

・逆流の危険性がある人

(酸っぱいものがこみ上げてくる、 嘔吐しや

すいなど)は、2時間臥床禁止

<一口量><一口量><一口量><一口量>

・飲みこみきれなかった食塊は誤嚥しやすい

・1回の嚥下で飲み込める量を確認する

◎一口量の一口量の一口量の一口量のコントロールが必要コントロールが必要コントロールが必要コントロールが必要

・適切な一口量の検討

・小さくて浅いスプーンの使用

<嚥下しにくい食品><嚥下しにくい食品><嚥下しにくい食品><嚥下しにくい食品>

1.水分(水、お茶、味噌汁、ジュース など)

2.酸味の強いもの(酢の物、柑橘類 など)

3.パサつくもの(焼き魚、ゆで卵、カステラ、ふかし芋 など)

4.うまくかめないもの(かまぼこ、こんにゃく、いか など)

5.のどに貼りつくもの(餅、焼きのり、わかめ など)

6.粒の残るもの(ピーナッツ、大豆、ごま など)

7.繊維の強いもの(ごぼう、ふき など)-17-

普通食

一口大カット食

やわらか食

(半固形)

きざみ食

(パサパサ→しっとり)

ミキサー食・ゼリー食

(トロミ)

写真

写真

写真

写真

*液体でむせる場合は増粘(トロミ)剤を使用する

食事形態の工夫

個人個人の食べにくさ・飲み込みにくさにより食事形態を変えていく個人個人の食べにくさ・飲み込みにくさにより食事形態を変えていく個人個人の食べにくさ・飲み込みにくさにより食事形態を変えていく個人個人の食べにくさ・飲み込みにくさにより食事形態を変えていく軽

症重

*むせ込み、体重減少、誤嚥性肺炎を繰り返す等の症状がある場合は、

経口摂取にこだわらず、胃ろう等造設の検討が必要-18-

嚥下体操

耳下腺への刺激 顎下腺への刺激 舌下腺への刺激

人差し指から小指までの

4本の指を頬にあてて、

上の奥歯のあたりを

うしろから前へ向かって

まわします。

(10回)

親指をあごの骨の内側、

柔らかい部分にあて、

耳の下からあごの下まで

5箇所くらいを順番に

押します。

(各5回づつ)

両手の親指をそろえて

あごの真下から舌を突き

上げるように、ゆっくり

ぐーっと押します。

(10回)出典 医療法人ひいらぎ会 ひいらぎ歯科医院:http://www.fukuchi-dc.com/category/1713265.html-19-

口腔ケアの流れ

嚥下障害に関連する問題点と対症方法

平成24年度奈良県難病医療従事者研修会 難波玲子先生資料を引用

嚥下障害嚥下障害よだれよだれ不快不快・低圧持続吸引・抗うつ薬・低圧持続吸引・抗うつ薬

流れ込み流れ込み呼吸困難呼吸困難・仰臥位を避ける・吸引・輪状甲状間膜穿刺・気管切開・仰臥位を避ける・吸引・輪状甲状間膜穿刺・気管切開むせるむせる肺炎・窒息肺炎・窒息・抗生剤・窒息物を除去・気管切開・抗生剤・窒息物を除去・気管切開

飲食困難飲食困難脱水・やせ脱水・やせ・食事の工夫・経管栄養(胃瘻・経鼻)・補液・食事の工夫・経管栄養(胃瘻・経鼻)・補液呼吸筋麻痺呼吸筋麻痺呼吸筋麻痺呼吸筋麻痺

胸郭可動性胸郭可動性胸郭可動性胸郭可動性低下低下低下低下

臥臥臥臥 褥褥褥褥

分泌物貯留分泌物貯留分泌物貯留分泌物貯留

咳嗽力の低下咳嗽力の低下咳嗽力の低下咳嗽力の低下

肺炎肺炎肺炎肺炎

無無無無気気気気肺肺肺肺

微小微小微小微小無無無無気気気気肺肺肺肺

呼吸呼吸呼吸呼吸困難困難困難困難

痰痰痰痰によるによるによるによる窒息窒息窒息窒息

急急急急性呼吸性呼吸性呼吸性呼吸不全不全不全不全

口腔内の不潔・ 気管切開

気道クリアランスの低下

<療養<療養<療養<療養者者者者のののの準備準備準備準備>>>>姿勢の調整・安全・安楽な体位・誤嚥予防・開口しやすい(人工呼吸器装着者)・カフ圧の調整ブラッシング

舌や粘膜の清潔

流す

吸引する

含嗽

自力で喀出

ふきとる

口腔リハビリテーション

口腔内の観察

全身状態の観察人工呼吸器等・医療機器の確認

球症状球症状球症状球症状

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吸引器に接続するチューブつきの歯ブラシ舌ブラシ出典 テルモ http://www.terumo.co.jp/consumer/products/healthcare/oralcare/index.html

監修:阿部仁子 日本大学歯学部摂食機能療法学講座助教指導:戸原玄 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野准教授

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■胃瘻の造設時期胃瘻の造設時期胃瘻の造設時期胃瘻の造設時期

*むせ、食事量の減少、食思不振などの嚥下障害の自覚的・他覚的症状の

出現

*急激な体重減少

(通常体重の10%以上の減少または、BMI 18.5を切ったとき)

*嚥下機能評価(嚥下造影・嚥下内視鏡検査等)で異常所見がある場合

*NIPPV導入時など

◎努力性肺活量(%FVC)が50%以下になる前の造設が望ましい

呼吸筋麻痺がある場合の呼吸筋麻痺がある場合の呼吸筋麻痺がある場合の呼吸筋麻痺がある場合の

PEG(PEG(PEG(PEG(経皮的内視鏡胃瘻造設術経皮的内視鏡胃瘻造設術経皮的内視鏡胃瘻造設術経皮的内視鏡胃瘻造設術)の問題点)の問題点)の問題点)の問題点

■術後に急性呼吸不全を招くおそれがある

□痛みと筋断裂により、呼気筋である腹筋の動きが制限されるため

■造設時期:%FVCが50%以下になる前に行う

□50%未満:人工呼吸器を準備して行う。

□30%未満:人工呼吸器を装着していない場合は禁忌

*NPPV使用中の場合は、胃カメラの通る穴を開けたマスクの使用で

リスクは減少する

胃瘻について

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⑤自律神経不全(障害)⑤自律神経不全(障害)⑤自律神経不全(障害)⑤自律神経不全(障害)

○パーキンソン病の自律神経障害○パーキンソン病の自律神経障害○パーキンソン病の自律神経障害○パーキンソン病の自律神経障害

病変分布病変分布病変分布病変分布:

・視床下部、橋青斑核、延髄迷走神経背側核、脊髄中間外側核、末梢神経節、食道・胃

腸管神経叢におよぶ神経細胞が脱落する。

・レビー小体が出現する。

・脳と交感神経節より遠位部の節後性交感神経節後性心臓交感神経障害をMIBG心筋

シンチグラフィで評価すると、パーキンソン病のみMIBGの集積が低下する。

○多系統萎縮症の自律神経障害○多系統萎縮症の自律神経障害○多系統萎縮症の自律神経障害○多系統萎縮症の自律神経障害

病変分布病変分布病変分布病変分布:

・橋青斑核、延髄迷走神経背側核、脊髄中間外側核、仙髄Onuf核、交感神経節の

神経変性がおこる。

自律神経自律神経自律神経自律神経症状:生命予後症状:生命予後症状:生命予後症状:生命予後・生活の質に関わる・生活の質に関わる・生活の質に関わる・生活の質に関わる症候症候症候症候

心・循環器系:心・循環器系:心・循環器系:心・循環器系: 起立性・食後性・運動後・排尿・排便後の低血圧

低血圧→脳循環自動調節能障害→認知機能低下

呼吸器系:呼吸器系:呼吸器系:呼吸器系: 睡眠時無呼吸・いびき、低酸素下換気応答障害

(窒息・誤嚥性肺炎・突然死)

消化器系:消化器系:消化器系:消化器系: 胃排出能障害(薬効発現の遅延、wearing-off)、胃不全麻痺

骨盤骨盤骨盤骨盤臓器系臓器系臓器系臓器系:::: 神経因性膀胱(尿閉・尿失禁・過活動膀胱)、イレウス・便秘

便失禁・下痢、勃起障害(ED)

皮膚系:皮膚系:皮膚系:皮膚系: 体幹の皮膚温上昇、うつ熱・発汗低下・発汗亢進、冷え・ほてり

その他:その他:その他:その他: 口渇

自律神経系は全身の臓器に分布しているため、何らかの病変により障害を受けると、生命

予後・生活の質に関わる症候が現れる。

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◆自律神経は、眼、心臓、血管、呼吸器、消化器、皮膚、泌尿、生殖器に至るまで

全身に分布。中枢神経からの指令を各効果器官に対して交感神経・副交感神経

が伝え(支配し)生命維持を司っている。

◆循環、生殖、涙液・汗の分泌など、平滑筋運動と腺の分泌を支配する神経系で

意志とは無関係に調節する。

◆血圧、心拍数、体温、体重、消化、代謝、体液および電解質バランス、発汗、排

尿、排便、性反応、その他に影響する。

◎自律神経の中枢:視床下部、脳幹(中脳・橋・延髄)◎

自律神経自律神経自律神経自律神経

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排尿・排便障害の排尿・排便障害の排尿・排便障害の排尿・排便障害の症状症状症状症状

■1回の尿量が少ない

■尿がもれる

■尿意頻回、何回もトイレにいく

■残尿がある

■尿がでない

■下腹部の膨満、痛み

■便秘

■薬物治療 コリン薬・コリン作動薬

■可能ならば間歇的自己導尿、最終的にはバルーンカテーテルの留置

■下剤、浣腸の適宜使用

⑦起立性⑦起立性⑦起立性⑦起立性低血圧低血圧低血圧低血圧

自立神経障害のひとつ。多系統委縮症、パーキンソン病でよくおこる症状。急な起立や座位

をとることで血圧低下をおこしたりする場合がある。また、失神やめまいによる転倒の危険や

循環不全による突然死の危険がある。血圧調節障害の場合は、食後性低血圧や臥位高血圧

にも注意が必要である。

血圧調節障害の血圧調節障害の血圧調節障害の血圧調節障害の症状症状症状症状

■臥位と座位の血圧の変動を確認

(起立で最高血圧30mmHg< 最低血圧15mmHg<低下)

■めまい、立ちくらみなどの自覚症状の有無

■体動時、食事中の表情や顔色、冷や汗が出るなどの変化の有無

血圧調節障害に血圧調節障害に血圧調節障害に血圧調節障害に対して対して対して対して

■食後性低血圧:座位や起立位、食後にぼーっとしている場合には、声かけ、血圧測定、

迅速な臥位への移行が重要

■薬剤の使用(臥位時に高血圧にならないよう注意)

■弾性ストッキング、夜間のベッドの頭側を5~10度拳上

■生活指導:急激な起立をさける、食後、入浴後の臥位休息、座位での排尿習慣など

排尿排尿排尿排尿・・・・排便排便排便排便障害に障害に障害に障害に対対対対してのケアしてのケアしてのケアしてのケア

■便・尿意のある人: 集尿器・差し込み便器・一般の尿器

■意思伝達困難による失禁:膀胱留置(バルン)カテーテル

特殊尿器(ヒューマニー・スカットクリーン) 定時での尿器挿入

■排尿困難:カテーテル 自己導尿 膀胱ろう

■便秘:緩下剤・浣腸 腹部マッサージ 体位変換

⑥排泄障害⑥排泄障害⑥排泄障害⑥排泄障害

排尿・排便障害に対して

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