ファイブヘルツの世界...抗菌剤の日本市場 2 抗菌剤の国内市場規模 約2,000t、約300億円 合成有機系抗菌剤 約80%約1,600t、約240億円 無機系抗菌剤
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1.肺非結核性抗酸菌症の概要
慶應義塾大学医学部呼吸器内科
南宮湖(なむぐん ほう)
第26回 慶應医師会 市民公開講座
「近年、増加する肺非結核性抗酸菌症」
Q. 非結核性抗酸菌(NTM)って何ですか?
抗酸菌の中で、
①「結核菌(結核症)」
②「らい菌(ハンセン病)」
以外の菌のこと
⇒③「非結核性抗酸菌」
(NonTuberlculous Mycobacterium)
結核と違って、人から人へは感染しません。
160種類以上の菌が報告されています。
かつては「非定型抗酸菌」と呼ばれていました。
160種類以上も
あるって言うけど、、
Q. 非結核性抗酸菌(NTM)にはどのような菌がいますか?
【菌名】
① Mycobacterium avium (アビウム)
② Mycobacterium intracellulare (イントラセルラーレ)
⇒①と②をまとめて、「MAC (マック)」と言います。
③ Mycobacterium kansasii (カンサシ)
④ Mycobacterium abscessus (アブセッサス)
肺NTM症の約90%
病気の名前は、具体的に菌名を使って、
「肺MAC症」「肺カンサシ症」「肺NTM症」
と呼びます。
Q. 肺非結核性抗酸菌症の患者さんは増えていますか?
我々の研究グループが中心となり、厚生労働省の研究班(班長:国立感染研究所 阿戸学部長)のプロジェクトとして、肺NTM症に関する全国調査を、7年ぶりに行いました。
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1970 1980 1990 2000 2010
罹患率
(/10万人年)
(年)
肺非結核性抗酸菌症の推移
5.7(2007年)
この7年間で約2.7倍に患者さんが増えました
15.1(2014年)
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(/10万人年)
(年)
結核患者さんと肺非結核性抗酸菌症患者さんの推移
肺NTM症が結核の患者さんの数を超える勢いです。結核
肺NTM症
罹患率
Q. 肺非結核性抗酸菌症はどのような方がかかりやすいですか?
① 中高年でやせ型の女性
• 明らかな肺の病気は認めません。
⇒はっきりとした原因はわかっていません。
② 肺の一部が壊れている方
• 昔、結核にかかったことがある方
• COPD(タバコによって肺が壊れる病気)
③ 薬が原因で免疫が弱まっている方
• 免疫をおさえる薬(ステロイドやリウマチの薬)
Q. 肺非結核性抗酸菌症の症状はどのようなものがありますか?
① 喀痰 約50%
② 空咳 約10%
③ 血痰・喀血 約10%
④ 体重減少
⑤ その他(微熱・食欲低下・息切れなど)
⑥ 無症状 約30%
Q. 肺非結核性抗酸菌症の診断には何の検査が必要ですか?
① 画像検査(レントゲンとCT検査)
② 喀痰検査
2回以上の喀痰検査で菌を確認します。
⇒痰が出にくい方は、食塩水の吸入により
痰を出しやすくします。
⇒それでも出ない方は、気管支鏡検査
(肺のカメラ)を考慮します。
レントゲン CT検査
食塩水の吸入 気管支鏡検査
Q. 肺非結核性抗酸菌症と診断されたら、すぐに治療を開始しますか?
※ 「診断=治療開始」ではありません。
患者さんは重症度により、おおよそ、「軽症」「中等症」「重症」に分けられます。
「軽症」であったり、ご高齢の方の場合は、治療を開始せずに、様子を見ることもあります。
軽症なので、少し様子を見ましょう。
病状が進む場合があるので、定期的に通院してください。
Q. 非結核性抗酸菌はどこにいますか?
水や土(川の水や上水道にも)など、身近なところにいます。
⇒「環境常在菌」と言います。
① 水
お風呂場、シャワーヘッド、ジェットバスなど
② 土
土へ触れる(農作業や園芸)機会が多い人の方が感染しやすいという意見もあります。
⇒ただし、水や土への接触を避けることが、病気の進行を防ぐかどうかはわかっていません。
Q. 病気が良くなったか、悪くなったか、はどのように判断しますか?
一番、重要なことは患者さんの自覚症状です。
それ以外として、
① 喀痰検査
痰から菌がいなくなったかどうか、判断します。
② 画像検査(レントゲンとCT検査)
レントゲンやCT検査の結果が良くなったかどうか、判断します。
③ 採血
体の中の炎症がおさまったかどうか、判断します。
④ その他(肺機能検査など)
Q. 肺非結核性抗酸菌症の画像はどのような特徴がありますか?
①空洞型 ②気管支拡張型
⇒ 実際には、①空洞型と②気管支拡張型が組み合わさっていたり、様々な画像の特徴があります。
CT検査
Q. 肺非結核性抗酸菌症は、どのような病気の経過をたどりますか? 治ることはありますか?
※ 完全に「菌」を体から排除することは難しいと考えられています。
⇒慢性の病気であるため、「完全に治す」ことを絶対的な目標とせずに、病気とうまくつきあっていくことが大切です。
治療をしなくても
あまり進行しない方
治療によって
進行が止まる方
治療を行っても
少しずつ進行してしまう方
A B C
Q. 普段の生活には何に気をつけたらよいですか?
① 自分の病気について把握しましょう
病気の名前、菌の名前、飲んでいる薬の名前(薬手帳)
⇒特に、別の病気で、他の病院に通院される際に重要です。
② 毎日の生活を整えましょう
規則正しい生活・バランスのとれた食事を心がけ、ストレスや疲労をためないようにしましょう。
③ かぜ・インフルエンザ・肺炎に気をつけましょう
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを
受けましょう。
まとめ
•肺非結核性抗酸菌症とは、非結核性抗酸菌(NTM)という菌により、肺に病気が起こっている状態です。
•非結核性抗酸菌(NTM)の中で、MAC(マック)菌が約90%を占めます。
•近年、40歳代から60歳代の女性の方を中心に患者さんの数が増えています。
•結核と異なり、人から人へは感染しません。
•診断には、複数回の菌の検査が重要です。
ご清聴ありがとうございました。
肺非結核性抗酸菌症はまだまだ分かっていないことが多い病気です。
我々、医療従事者も、この病気のことをより深く知りたいという想いは、患者さん・患者さんのご家族と同じです。
我々も、患者さんのため・病気の解明のために、一生懸命、頑張りたいと思います!