第1回...

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1 2016.4.15 訂正 p.12 4. 図,表」4 行目「の下,表の場合は表の下である.」の「下」を「上」に訂正 第1回 デジタル回路の基礎 1. 実験目的 論理回路(Logic circuit)はブール代数を使って論理演算を行う電気回路である.基本的な論理演算を 論理ゲート(Logic gate),または単にゲートとも呼ぶ.基本的な論理ゲートとして AND(論理積)OR(理和)NOT(否定・インバータ)NAND(否定積)NOR(否定和)ゲートなどがある.これらを組み合わ せて,計算機の論理演算回路が実現されている.本実験の目的は,電子回路の構成要素であるロジック IC(Integrated Circuit)とスイッチ, LED (Light Emitting Diode),クロック回路の動作を確認すること, また NAND ゲートのみで論理回路の構成ができることを学ぶことである. 2 実験準備 2.1 使用器具 ・ブレッドボード(サンハヤト社製 IC トレーナー CT-311R,単三型 Eneloop 電池×4 取付済) ・ロジック IC(ブレッドボードに取付済,図 10 参照) ・ジャンプワイヤー(黒,赤,黄,青,白,各 6 本計 30 本,IC トレーナーケース内に同梱) 2.2 ブレッドボード ブレッドボードとは,電子部品やジャンプワイヤーを差し込むだけで(半田付け不要で)電子回路を 組むことが出来る,実験や試作回路のための基板である.ブレッドボードの差込穴は基盤の裏側で内部 結線されており,図 1 に示すように縦方向は ABCDE,および FGHIJ がつながっている.例えば 74LS00 IC 1 番ピンは E11 に差し込まれているので,A11,B11,C11,D11 のどの穴にジャンプワイヤーを差 し込んでも 1 番ピンに接続できる.また,ブレッドボードの上辺と底辺には赤と青の 2 本の線が描かれ ていて,それらのラインに沿う差込穴が横方向につながっていることを示している.赤ラインは電源(Vcc, +5V)として,青ラインはグランド(GND, 0V)として使用する.本実験では,あらかじめジャンプワイヤ ーで電源出力端子から赤ラインの差込穴へ,GND 端子から青ラインの差込穴へそれぞれ配線してある. 2 IC トレーナーの各部名称を示す. 1 ブレッドボードの内部結線

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2016.4.15 訂正 p.12 「4. 図,表」4行目「の下,表の場合は表の下である.」の「下」を「上」に訂正

第1回 デジタル回路の基礎 1. 実験目的 論理回路(Logic circuit)はブール代数を使って論理演算を行う電気回路である.基本的な論理演算を

論理ゲート(Logic gate),または単にゲートとも呼ぶ.基本的な論理ゲートとして AND(論理積),OR(論理和),NOT(否定・インバータ),NAND(否定積),NOR(否定和)ゲートなどがある.これらを組み合わせて,計算機の論理演算回路が実現されている.本実験の目的は,電子回路の構成要素であるロジック

IC(Integrated Circuit)とスイッチ,LED (Light Emitting Diode),クロック回路の動作を確認すること,また NANDゲートのみで論理回路の構成ができることを学ぶことである.

2 実験準備

2.1 使用器具 ・ブレッドボード(サンハヤト社製 ICトレーナー CT-311R,単三型 Eneloop電池×4取付済) ・ロジック IC(ブレッドボードに取付済,図 10参照) ・ジャンプワイヤー(黒,赤,黄,青,白,各 6本計 30本,ICトレーナーケース内に同梱)

2.2 ブレッドボード

ブレッドボードとは,電子部品やジャンプワイヤーを差し込むだけで(半田付け不要で)電子回路を

組むことが出来る,実験や試作回路のための基板である.ブレッドボードの差込穴は基盤の裏側で内部

結線されており,図 1に示すように縦方向は ABCDE,および FGHIJがつながっている.例えば 74LS00の ICの 1番ピンは E11に差し込まれているので,A11,B11,C11,D11のどの穴にジャンプワイヤーを差し込んでも 1 番ピンに接続できる.また,ブレッドボードの上辺と底辺には赤と青の 2 本の線が描かれていて,それらのラインに沿う差込穴が横方向につながっていることを示している.赤ラインは電源(Vcc, +5V)として,青ラインはグランド(GND, 0V)として使用する.本実験では,あらかじめジャンプワイヤーで電源出力端子から赤ラインの差込穴へ,GND 端子から青ラインの差込穴へそれぞれ配線してある.図 2に ICトレーナーの各部名称を示す.

図 1 ブレッドボードの内部結線

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図 2 ICトレーナー各部の名称

2.3 ロジック IC

ロジック ICとは論理回路を ICで実現したものである.本実験で使用するロジック ICは型式が 74で始まる「74シリーズ」と呼ばれる ICである.図 3は 74LS00,図 4はそのピン配置である.ピンの番号順は図 4 のように半円形のへこみ(Notch)を左にして,左下のピンから反時計方向である.また 14 番ピンを電源(Vcc,+5V)に,7番ピンをグランド(GND, 0V)に接続することで ICが動作する.

図 3 74LS00の写真 図 4 74LS00のピン配置

次の図 5〜図 9 に代表的なロジック IC を説明する.左の図はロジック IC 内部のゲートとピン番号で

ある.右の表はその内部のゲートの真理値表である.H・L は 1・0,真・偽,True・False といった真

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理値に対応している.なお本実験で使用するロジック ICはすべて正論理(⇔負論理)で動作するものとし,信号線の意味が Hで有効となり,Lで無効となる.

74LS00 Quad 2-input NAND Gates(2入力の NANDゲート×4)

図 5.74LS00のピン配置図(左)と真理値表(右)

74LS02 Quad 2-input NOR Gates(2入力の NORゲート×4)

図 6.74LS02のピン配置図(左)と真理値表(右)

74LS04 Hex Inverting Gates(NOTゲート×6)

図 7.74LS04のピン配置図(左)と真理値表(右)

74LS08 Quad 2-input AND Gates(2入力の ANDゲート×4)

図 8.74LS08のピン配置図(左)と真理値表(右)

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74LS32 Quad 2-input OR Gates(2入力の ORゲート×4)

図 9.74LS32のピン配置図(左)と真理値表(右)

本実験で使用するブレッドボードには,74LS00(NAND), 74LS04(NOT), 74LS08(AND), 74LS32(OR),

74LS02(NOR)が図 10のように差し込まれている.各 ICの 1番ピンは,E11, E21, E31, E41, E51に差し込んである.

図 10 ブレッドボード上のロジック ICの配置図 3 【実験 1】デジタル回路の基礎

デジタル回路を設計するための基本的な装置と配線を確認する実験である.配線するときは ICトレーナーの電源を OFF にすること.これは配線中にショートさせないためである. 3.1 データスイッチ

データスイッチはトグル型のスイッチであり,下向きに倒すと OFF,上向きに倒すと ONとなる.スイッチと LEDでデータの入力と確認を実験する.デジタル回路は 1本線で 2つの状態(ON/OFF)を送る.10本線では 10個の ON/OFF信号が送ることができる. ① 図 11を参考に,ジャンプワイヤーを 10本用意して D0-I0,D1-I1, …,D9-I9を結線する. ② ICトレーナーの電源を入れ,データスイッチを任意に ON/OFFする. ③ トグルスイッチに対応した LEDが点灯/消灯することを確認しなさい.

74LS00 (NAND)

74LS04 (NOT)

74LS08 (AND)

74LS32 (OR)

74LS02 (NOR)

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図 11 データスイッチと LEDの動作確認

3.2 インバータ回路 インバータ回路は NOT(否定)回路である.NOTゲートのロジック IC74LS04(図 13)を使って実現する. ① [電源線の配線] 図 12を参考に GND-A27,Vcc-J21を接続する. ② [信号線の配線] 図 12を参考に D0(SW0)-D21,I0(LED0)-D22を接続する. ③ ICトレーナーの電源を入れ,データスイッチ SW0を操作する. ④ SW0を上に倒すと(ONにすると)LEDが消灯すること,下に倒すと(OFFにすると)点灯することを確認する.

図 13 74LS04の回路図 図 12 インバータ回路の実体配線図

+5V Vcc(直流電源)ライン 横方向の穴はつながっている

GND(グランド)ライン 横方向の穴はつながっている

GND-A27

Vcc-J21

D0-D21 I0-D22

Vcc

GND

SW0 LED

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3.3 7セグメント LEDとデコーダー 7セグメント LEDは電卓や電光掲示板などで見かける表示器である.2進数 4桁表記で 10進数を表現する方法を BCD (Binary Coded Decimal)と呼ぶが,その BCD を 7 セグメントLEDの表現に復号化(Decode)する回路がデコーダーである.デコーダーの ICは 74LS47である.例えば 0101(2)は 5(10)なので,7セグメント LEDには 5が表示される.ちなみにデコーダーの論理回路を変えれば,例えばアルファベットの表示も理論上可能である(デコーダー設計

の実験は別日に行う).今回は IC トレーナーに実装された 7 セグメント LED とデコーダー(74LS47)の動作を行う. ① 図 14を参考に,電源 Vcc(+5V)を右側の 7セグメント LEDの+5V IN に接続する. ② 図 14を参考に,データスイッチと 7セグメント LEDの入力を接続する.D0-‘A’,D1-‘B’,

D2-‘C’,D3-‘D’ ③ IC トレーナーの電源を ON にし,データスイッチで BCD を 0000(2)から

1111(2)まで入力し,7セグメント LEDの表示を記録する.右図に示すように7箇所(A~G)の LEDの点灯/消灯が分かるように記録すること.

図 14 7セグメント LED回路の実体配線図と, その表示(右上)

3.4 パルス発生スイッチ パルス発生スイッチは押している間だけ ONになるスイッチである.このスイッチは今後の実験のフリップフロップ回路で使用するが,今回はその動作の確認にとどめる. ① DA-I0,DB-I1となるように結線する. ② ICトレーナーの電源を ONにし,パルス発生スイッチ DA, DBを任意に押す. ③ LEDの点灯/消灯を確認しなさい.

電源 Vccに接続

右の+5V INに接続

‘D’, ’C’, ’B’, ‘A’に接続

74LS47

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3.5 クロック回路 クロックとはパルス発振回路のことである.コンピュータの計算やメモリの動作はクロック

のタイミングで行われる.ICトレーナー上には 1Hz(1秒周期)と 1kHz(1ミリ秒周期)のクロック回路が実装されている.クロック回路は今後の実験のフリップフロップ回路で使用するが,

今回はその動作の確認に留める. ① Vccとクロック(CK)の+5V IN を接続する. ② クロック出力端子と LED端子を接続する.CK-I0 ③ ICトレーナーの電源を入れ,クロックの Hz切り替えスイッチを 1Hz側に倒す. ④ LED0が 1秒周期で点滅することを確認する.なお 1kHz側に倒すと点灯しているように見えるが,1000分の 1秒(1ミリ秒)周期で点滅している.

4 【実験 2】NANDによる論理回路の設計

NAND ゲートを組み合わせて使うとどんな論理回路でも構成できるので”万能ゲート”と呼ばれている.同じゲートだけで回路を設計すれば回路面積を小さくしてコストダウンをはかることができ

る.この実験では NOT回路,AND 回路,OR 回路,XOR 回路について NAND ゲートのみを用いて論理回路を組み,動作を確認する. 4.1 NAND回路

NAND(否定論理積)の論理式は A NAND B = A ∙ B・・・・・・・・・・・・・・・・・(式 1)

と表される.NANDのMIL記号は図 15のように書ける. 図 15 NAND回路 NANDゲートのロジック ICは LS7400である.まずは 74LS00が NANDの真理値表通りに動作することを確認する実験を行う. ① [電源線の配線] 図 16を参考に,A17-GND,J11-Vccを接続する. ② [信号線の配線] D11- D1(SW1),D12-D0(SW0),D13-I0(LED0)を接続する. ③ SW0, SW1 を操作して,NAND ゲートの真理値表の通り動作するか確認する.表 1 は

NAND の真理値表と NAND 回路の動作を記録する表である.SW が ON/OFF,LED がON/OFFのように実験ノートに記録すること.

A B A ∙ B!!!!!!

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図 16 74LS00(NANDゲート)の実体配線図

表 1 NANDゲートの動作確認 NANDの真理値表(理論値) NAND回路の動作(実験値)

入力 出力 入力 出力 A B A ∙ B SW1 SW0 LED0 0 0 1 0 1 1 1 0 1 1 1 0

以下に説明する,NOT回路,AND回路,OR回路,XOR回路を NANDゲートのみで構成しその動作を確認する実験を行いなさい.結果は表 1 のようにまとめ,実験ノートに記録すること.また作成した回路をデジタルカメラ(携帯電話・スマートフォンも可)で図 16の構図で撮影しなさい.

4.2 NOT回路

NOT(否定)の論理式は, A = A ∙ A ・・・・・・・・・・・・・・・・・(式 2) と書けるから,NAND の 2 入力を短絡して A を入力すればAが得られる.この論理回路を論理回路図で表すと図 17のように書ける.

図 17 NANDゲートによる NOT回路

A A!

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4.3 AND回路 AND(論理積)の論理式は,

A ∙ B = A ∙ B = A ∙ B ∙ A ∙ B ・・・・・・・・・・(式 3) と書ける.論理回路図で表すと図 18のようになる.

図 18 NANDゲートによる AND回路 4.4 OR回路

OR(論理和)の論理式は,

A + B = A + B = A ∙ B = A ∙ A ∙ B ∙ B ・・・・・・(式 4) と書ける.論理回路図で表すと図 19のようになる.

図 19NANDゲートによる OR回路 4.5 XOR回路 XOR(排他的論理和)の論理式は, ・・・・・・(式 5) と書ける.式 5にはA ∙ B が 2つあるが,一つの NANDゲートを共有することで合計 4つの NANDゲートで XORを組むことができる.論理回路図で表すと図 20のようになる.

図 20 NANDゲートによる XOR回路

A B A・B

A B

A+B

A B

A○+B

))(())((

))(())((

)()(

)()(

BAABBA

BAABBA

BAAABBBA

BABA

BABA

BABABA

⋅⋅⋅⋅⋅=

+⋅⋅⋅+=

⋅+⋅⋅⋅+⋅=

⋅⋅⋅=

⋅+⋅=

⋅+⋅=⊕

   

   

   

   

   

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5 レポート報告事項 実験目的,実験方法,結果,考察,結論のように章立てし,①②を報告すること. ① 実験 1 7セグメント LEDとデコーダー ② 実験 2 NANDゲートによる NOT回路,AND回路,OR回路,XOR回路

6 発展課題

実験1,実験2が終了した者は,以下の発展課題を任意で行ってもよい.時間の都合で,途中まで

でも可. 【実験 3】NORによる論理回路の設計 NANDゲートと同じく,NORゲートのみを組み合わせて使うとどんな論理回路でも構成できることが知られている.NOT回路,AND回路,OR回路,XOR回路について NORゲートのみを用いて論理回路を組み,動作を確認する.回路の実現方法も自分で考えてみること. NOT回路:使用する NORゲート1つ AND回路:使用する NORゲート3つ OR回路:使用する NORゲート2つ XOR回路:使用する NORゲート5つ(NORゲートは4つしかないので実現は不可能.回路だけ示して,実現する際にはいずれか1つの NORを ORと NOTの組み合わせで代用すること.) (ヒント) NOT回路:NANDゲートによる NOT回路の構成を参考にすること. OR回路:NORのMIL記号を以下の図 21のように ORのあと否定,と解釈できることを利用. =

図 21: NORゲートの解釈 AND回路:ド・モルガンの法則A + B = 𝐴 ⋅ 𝐵    を利用する.MIL記号で書くと図 22のようになる. =

図 22: NORゲートの別の解釈 XOR回路:真理値表を書くと,値が 0になるところはA ⋅ BとA ⋅ 𝐵である.従ってA⊕ B = A ⋅ B + A ⋅ 𝐵と書け,NORゲートの2つの入力にA ⋅ BとA ⋅ 𝐵を与えればいい.それぞれについて,上記の AND回路に対するヒントをもとに構成する.

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付録 1 実験ノートの書き方 実験に臨むにあたり実験ノートを用意すること.実験ノートを書くことはレポートの作成に役立つだ

けではなく,実験に失敗したときの分析が容易になる.したがって,もう一度同じ条件で実験できるく

らいの情報を記す必要がある.具体的には,以下の項目を必要に応じて記録する. ・実験タイトル ・実験日時と場所(実験内容によっては天候,気温,湿度も記録する) ・共同実験者や実験協力者の氏名 ・使用機器名,型式,メーカー名,他の実験者も同時に同じ機器を使っているなら固体を識別でき

る管理番号やシリアルナンバーも記録する. ・機器の配線図や設定値,計測器の精度 ・実験手順 ・実験結果 ・実験中に生じた事象,気がついたこと

実験の開始前に書ける内容は事前に実験ノートに書いておくことも,実験内容の予習として,また限

られた実験時間を有効に使うために効果的である.ただし,事前に記入した内容が実験中に変更になっ

た場合は,必ず実験ノートにも変更内容を記載する必要がある.下記は実験ノートの記入例である.

付録の図1 実験ノートの記入例

以上(付録1)

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付録 2 実験レポートの書き方 1 事実を書く

実験レポートとは,実験の内容と成果を他の人に知らせるための文書である.実際に行った方法

と実験結果を客観的に正確に書く必要がある.実験は,時には予想しない結果や仮説を支持しない

結果になることがあるが,ウソの内容を書いてはいけない.実験に失敗してもなぜ失敗したかを考

察して今後の課題を書けば評価される.

2 章立てをする,ページ番号をつける 実験の目的,実験方法,結果,考察,結論の順で項目ごとに書き,それぞれの章に章番号を付け

る.実験が複数ある場合は章を分けて書くが読み手に全体の流れが分かるように工夫すること.ま

た,全てのページの下部中央にページ番号をつける.

3 時制の表記を統一する 実験目的,方法は現在形で書く.実験結果は事実なので過去形で書く.考察は現在形で書く.そ

れ以外の部分についても適切な時制を使うようにすること.

4 図,表 図,表には通し番号と適切な表題をつけること.図表の番号と表題を書く位置は,図の場合は図

の下,表の場合は表の上である.また本文中にも必ず全ての図,表の説明を書くこと.「結果は図 xxに示す」だけでは読み手に説明しているとは言えない.図 xxに何が示されているのかを図の見方とともに説明することが必要である.さらに,考察ではそのデータをどの様に解釈するのかを説明し,

科学的な意味付けをする.必要に応じて統計処理を施し有意性を検証する. 5 測定精度,有効数字に留意する

実験時には測定機器の測定精度(測定分解能,測定誤差)を調べ,その精度まで記録しておく.レポート作成時にはその精度まで報告する.例えばある測定レンジにおいて 0.001 ミリボルト(mV)まで測定できるデジタルマルチメーターで 1.500mVと表示されたら,1.5mVとせず,小数第二位,三位の 00まで記録する必要がある. 次に有効数字とは,位取りの“0”を除いた意味のある数値である.0.00165kmと 165cmの有効数字は 3 桁,165.0cm の有効数字は 4 桁である.なお計算を施した場合,その結果の有効数字はもとの数字のうち精度の悪い方に合わせる.例えば 1.3×2.12=2.756 の場合,有効な桁数は 4 桁ではなく 2 桁である.したがって 2.8 とすべきである.このように電卓や表計算ソフトウェアが表示する数字がそのまま有効数字にならないことに留意すること.

6 考察に何を書くべきか 実験レポートの要は考察である.考察は実験データや既知の事実に基づいた推論である.考察で

は,理論との比較,観察された事実の科学的な意味づけ,実験からわかったこと,気がついたこと

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を書く.実験がうまくいかなかった場合には,失敗の原因を分析して書く.実験の感想や反省は不

要である.

7 結論だけ読んでもレポートの概要がわかるように書く. 結論とはレポートのまとめである.結論だけ読んでも概要がわかるように,実験の目的や内容を

簡潔に書き,結果として何がわかったかを書く.また今後の課題も書く.

以上(付録2) 以下,参考画像

NOT回路(NANDゲート 1個) AND回路(NANDゲート 2個)

OR回路(NANDゲート 3個) XOR回路(NANDゲート 4個)