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  • 1 特 許 法

    法(昭和三四年四月一三日

  • 3 特 許 法

    沿

    記】

    〇専

    明治四年四月七日太政官布告第一七五号専売略規則ヲ以テ公布)

    〇専売略規則廃止

    明治五年三月二九日太政官布告第一〇五号専売略規則廃止ヲ以テ公布)

    〇専売特許条例

    明治一八年四月一八日太政官布告第七号専売特許条例ヲ以テ公布、同年七月一日ヨリ施行)

    明治二〇年四月一八日勅令第八号ヲ以テ同条例中改正)

    〇特

    明治二一年一二月一八日勅令第八四号特許条例ヲ以テ公布、同二二年二月一日ヨリ施行)

    〇特

    明治三二年三月一日法律第三六号特許法ヲ以テ公布、同年七月一日ヨリ施行)

    〇特

    明治四二年四月二日法律第二三号特許法改正法律ヲ以テ公布、同年勅令第二九三号ニ依リ同

    年一一月一日ヨリ施行)

    〇特

    大正一〇年四月三〇日法律第九六号特許法改正法律ヲ以テ公布、同年勅令第四五九号ニ依リ

    同一一年一月一一日ヨリ施行)

    昭和四年四月二日法律第四七号ヲ以テ同法中改正、同年勅令第二八九号ニ依リ同年一〇月一

    日ヨリ施行)

    昭和一三年三月八日法律第三号ヲ以テ同法中改正、同年勅令第五二一号ニ依リ同年八月一日

    ヨリ施行)

    昭和一三年三月八日法律第五号ヲ以テ同法中改正、同年勅令第四〇〇号ニ依リ同年六月六日

    ヨリ施行)

    昭和二二年九月八日法律第一〇五号を以て同法中改正、即日施行)

  • 4特 許 法

    昭和二二年一二月二二日法律第二二三号を以て同法中改正、同二三年一月一日より施行)

    昭和二三年七月一五日法律第一七二号を以て同法中改正、即日施行)

    昭和二四年五月二四日法律第一〇三号を以て同法中改正、同年五月二五日から施行)

    昭和二四年八月一六日政令第三〇九号をもつて同法中改正、同年九月一日から施行)

    昭和二六年三月六日法律第九号をもつて同法中改正、即日施行)

    昭和二七年四月二八日法律第一〇一号をもつて同法中改正、同年四月二八日から施行)

    昭和三四年四月一一日法律第一一五号をもつて同法中改正、即日施行)

    〇特

    昭和三四年四月一三日法律第一二一号特許法改正法律をもつて公布、同三五年四月一日から

    施行)

    昭和三七年五月一六日法律第一四〇号をもつて同法中改正、同年一〇月一日より施行)

    昭和三七年九月一五日法律第一六一号をもつて同法中改正、同年一〇月一日から施行)

    昭和三九年七月四日法律第一四八号をもつて同法中改正、同四〇年一月一日から施行)

    昭和四〇年五月二四日法律第八一号をもつて同法中改正、同年八月二一日から施行)

    昭和四一年六月三〇日法律第九八号をもつて同法中改正、同年七月一日から施行)

    昭和四一年七月一日法律第一一一号をもつて、同法中改正、同年一二月三一日から施行)

    昭和四五年五月二二日法律第九一号をもつて同法中改正、同四六年一月一日から施行)

    昭和四六年四月六日法律第四二号をもつて同法中改正、同年七月一日から施行)

    昭和四六年六月一日法律第九六号をもつて同法中改正、即日施行)

    昭和四八年四月一二日法律第一〇号をもつて同法中改正、即日施行)

  • 5 特 許 法

    昭和五〇年六月二五日法律第四六号をもつて同法中改正、特許料及び手数料の改正規定は即

    日施行、パリ条約に関係した改正規定は同年一〇月一日から施行、その他は同五一年一月一

    日から施行)

    昭和五三年四月二四日法律第二七号をもつて同法中改正、手数料の改正規定は即日施行、特

    許料の改正規定は同年五月一日から施行)

    昭和五三年四月二六日法律第三〇号附則をもつて同法中改正、同年一〇月一日から施行)

    昭和五六年五月一九日法律第四五号をもつて同法中改正、同年六月一日から施行)

    昭和五七年八月二四日法律第八三号附則をもつて同法中改正、同年一〇月一日から施行)

    昭和五八年一二月二日法律七八号をもつて同法中改正、同五九年七月一日から施行)

    昭和五九年五月一日法律第二三号をもつて同法中改正、同年八月一日から施行)

    昭和五九年五月一日法律第二四号附則をもつて同法中改正、同年七月一日から施行)

    昭和六〇年五月二八日法律第四一号をもつて同法中改正、同年一一月一日から施行)

    昭和六二年五月二五日法律第二七号をもつて同法中改正、優先権証明書の提出期限、無効審

    判の除斥期間の廃止、手数料等の改正及び審判請求の取下時期に関係した改定規定は同年六

    月一日から施行、国際出願の翻訳文の提出期限に関係した改正規定は同年一二月八日から施

    行、その他は同六三年一月一日から施行)

    昭和六三年一二月一三日法律第九一〇号附則をもつて同法中改正、同六四年一月一日から施

    行)平

    成二年六月一三日法律第三〇号附則をもつて同法中改正、同年一二月一日から施行)

  • 6特 許 法

    平成五年四月二三日法律第二六号をもつて同法中改正、手数料等の改正規定は同年七月一日

    から施行、その他は同六年一月一日から施行)

    平成五年一一月一二日法律第八九号をもつて同法中改正、同六年一〇月一日から施行)

    平成六年一二月一四日法律第一一六号をもつて同法中改正、同七年七月一日から施行、特許

    異議の申立てに関係した改正規定は同八年一月一日から施行)

    平成七年五月一二日法律第九一号附則をもつて同法中改正、同年六月一日から施行)

    平成八年六月一二日法律第六八号をもつて同法中改正、同九年四月一日から施行、現金納付

    制度導入に関係した改正規定は同八年一〇月一日から施行)

    平成八年六月二六日法律第一一〇号をもつて同法中改正、代理権の証明等の改正規定は同一

    〇年四月一日から施行、その他は同一〇年一月一日から施行)

    平成一〇年五月六日法律第五一号をもつて同法中改正、特許料の引下げに関係した改正規定

    は同年六月一日から施行、国と国以外の者との共有に係る特許権等の特許料等の改正規定は

    同一一年四月一日から施行、その他は同一一年一月一日から施行)

    平成一一年五月一四日法律第四一号をもつて同法中改正、特許料の引下げ及び裁判所と特許

    庁との情報の交換に関係した改正規定は同年六月一日から施行、出願審査の請求期間の短縮

    等の改正規定は同一三年一〇月一日施行、その他は同一二年一月一日から施行)

    平成一一年五月一四日法律第四三号をもつて同法中改正、同一三年四月一日から施行)

    平成一一年一二月八日法律第一五一号をもつて同法中改正、同一二年四月一日から施行)

    平成一一年一二月二二日法律第一六〇号をもつて同法中改正、同一三年一月六日から施行)

  • 7 特 許 法

    平成一一年一二月二二日法律第二二〇号をもつて同法中改正、同一三年一月六日から施行)

    平成一三年七月四日法律第九六号附則をもつて同法中改正、同一三年一二月一日から施行)

    平成一四年四月一七日法律第二四号をもつて同法中改正、発明の実施行為の改正、先行技術

    文献開示規定、国際特許出願の国内書面提出期間廷長、国際特許出願の翻訳文提出期限延長

    については同年九月一日から施行、間接侵害に関係した改正規定については同一五年一月一

    日から、その他については同一五年七月一日から施行)

    平成一四年七月三一日法律第一〇〇号をもつて同法中改正、同一五年四月一日から施行)

    平成一五年五月二三日法律第四七号をもつて同法中改正、特許料の引下げ等、特許出願の取

    下げ等あつた時に出願審査の請求の手数料の一部を返還する制度の導入、特許料等の減免措

    置の見直しに関係した改正規定については同一六年四月一日から、その他の改正規定につい

    ては、同一六年一月一日から施行)

    平成一五年五月三〇日法律第六一号をもつて同法中改正、同一七年四月一日から施行)

    平成一五年七月一六日法律第一〇八号をもつて同法中改正、同一六年四月一日から施行)

    平成一六年六月二日法律第七六号をもつて同法中改正、同一七年一月一日から施行)

    平成一六年六月四日法律第七九号をもつて同法中改正、見込額への加算による特許料返還に

    ついては同日から、指定機関制度の見直し及び独立行政法人工業所有権総合情報館の業務拡

    大については、同年一〇月一日から、その他の改正規定については、同一七年四月一日から

    施行)

    平成一六年六月九日法律第八四号附則をもつて同法中改正、同一七年四月一日から施行)

  • 8特 許 法

    平成一六年六月一八日法律第一二〇号をもつて同法中改正、同一七年四月一日から施行)

    平成一六年一二月一日法律第一四七号をもつて同法中改正、同一七年四月一日から施行)

    平成一七年六月二九日法律第七五号をもつて同法中改正、同一七年二月一日から施行)

    平成一七年一〇月二一日法律第一〇二号をもつて同法中改正、同一九年一〇月一日から施

    行)平

    成一八年六月七日法律第五五号をもつて同法中改正、罰則の見直しに関係した改正規定は

    同一九年一月一日から、その他の改正規定は同一九年四月一日から施行)

    平成一八年一二月一五日法律第一〇九号をもつて同法中改正、同一九年九月三〇日から施

    行)平

    成二〇年四月一八日法律第一六号をもつて同法中改正、特許料等の引下げに関係した改正

    規定は平成二〇年六月一日から、料金納付に係る口座振替制度の導入に関係した改正規定は

    平成二一年一月一日から、その他の改正規定については平成二一年四月一日から施行)

    平成二三年六月八日法律第六三号をもつて同法中改正、同二四年四月一日から施行)

    平成二四年五月八日法律第三〇号をもつて同法中改正、同二四年一〇月一日から施行)

    平成二六年五月一四日法律第三六号をもつて同法中改正、附則第九条の改正規定は公布の

    日、地域団体商標の改正規定は同年八月一日、意匠法等の改正規定の一部は同二七年五月一

    三日、その他の改正規定は同二七年四月一日から施行)

    平成二六年六月一三日法律第六九号をもつて同法中改正、同二八年四月一日から施行)

    平成二七年七月一〇日法律第五五号をもつて同法中改正、同二八年四月一日から施行)

  • 9 特 許 法

    平成二八年五月二七日法律第五一号をもつて同法中改正、同二九年五月三〇日から施行)

    平成二八年一二月一六日法律第一〇八号及び同三〇年七月六日法律第七〇号をもつて同法中

    改正、同三〇年一二月三〇日から施行)

    平成二九年六月二日法律第四五号をもつて同法中改正、令和二年四月一日施行)

    平成三〇年五月三〇日法律第三三号をもつて同法中改正、発明の新規性喪失の例外期間の延

    長に関係した改正規定は同三〇年六月九日から施行、中小企業者等に対する特許料の減免又

    は猶予及び出願審査の請求の手数料の減免に関係した改正規定は同三一年四月一日から施行、

    その他の改正規定については令和元年七月一日から施行)

    令和元年五月一七日法律第三号をもつて同法中改正、損害の額の推定等に関係した改正規定

    は同二年四月一日から施行、査証制度に関係した改正規定は公布の日から起算して一年六月

    を超えない範囲内において政令で定める日から施行)

  • 11 特 許 法

    第一章

    総則(第一条―第二八条)

    一三

    第二章

    特許及び特許出願(第二九条―第四六条の二)

    八四

    第三章

    審査(第四七条―第六三条)

    二〇五

    第三章の二

    出願公開(第六四条―第六五条)

    二三四

    第四章

    特許権

    二四六

    第一節

    特許権(第六六条―第九九条)

    二四六

    第二節

    権利侵害(第一〇〇条―第一〇六条)

    三三〇

    第三節

    特許料(第一〇七条―第一一二条の三)

    三八九

    第五章

    特許異議の申立て(第一一三条―第一二〇条の八)

    四一七

    第六章

    審判(第一二一条―第一七〇条)

    四三九

    第七章

    再審(第一七一条―第一七七条)

    五六三

    第八章

    訴訟(第一七八条―第一八四条の二)

    五七九

    第九章

    特許協力条約に基づく国際出願に係る特例(第一八四条の三―第一八四条の二〇)

    五九七

    第一〇章

    雑則(第一八五条―第一九五条の四)

    六五四

    第一一章

    罰則(第一九六条―第二〇四条)

    六九三

  • 12特 許 法

    附則

    七一〇

  • 13 特 許 法

    第一章

    (目的)

    第一条

    この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを

    目的とする。

    〔旧法との関係〕

    該当条文なし

    〔趣

    旨〕

    本条は、この法律の目的(ひいては特許制度の目的)を示したものである。したがっ

    て、この法律の他の条文はすべて

    本条に規定する目的に帰一してくるものであり、各条文の解釈にあたっても本条の趣旨が参照されるべきことはいうま

    でもない。

    この法律の目的は、条文にも示されているように発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することにあるが、その理

    解を一層容易ならしめるため、特許制度の仕組みについて簡単に説明すると、次のようなことになる。すなわち、特許

    制度は、新しい技術を公開した者に対し、その代償として一定の期間、一定の条件の下に特許権という独占的な権利を

    付与し、他方、第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与える(特許権の存続期間中においては権利者の許

    諾を得ることにより、また存続期間の経過後においては全く自由に)ものである。このように権利を付与された者と、その権

    利の制約を受ける第三者の利用との間に調和を求めつつ技術の進歩を図り、産業の発達に寄与していくものにほかなら

  • 14特 許 法

    ない。(

    定義)

    第二条

    この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

    この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

    この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

    物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡し

    をいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しく

    は輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為(改正、平六法律一一六、平一四

    法律二四、平一八法律五五)

    方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為(改正、平一四法律二四)

    物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡

    等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(改正、平六法律一一六、平一四法律二四、平一八法律五五)

    この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることがで

    きるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する

    情報であつてプログラムに準ずるものをいう。(本項追加、平一四法律二四)

    〔旧法との関係〕

    三五条

    〔趣

    旨〕

  • 15 特 許 法

    法律に用いられる主要な用語の意義をあらかじめ明確に定めておくことは法律をわかりやすくし、解釈上の疑義を少

    なくする上で極めて重要なことである。戦後に制定された法律においてはこのことに着目し、一カ条特別に定義に関す

    る条項を設けて、あるいは法文中随所で必要に応じ、そこで用いられる用語の定義をすることを慣例としている。本条

    の規定もこのような趣旨から設けられたものである。このうち、一項の発明の定義は最も重要なものであるがそれだけ

    にいろいろ問題のあるところである(後述)。二項の特許発明の定義については別段説明を要しないであろう。

    三項の「実施」については、旧法では「製作、使用、販売、拡布」という用語を使っていたが、その内容をより明確

    にするため昭和三四年の改正で「生産し使用し譲渡し貸し渡し譲渡若しくは貸渡のために展示し又は輸入する行為」と

    改められた。なお、旧法において、輸入は一二九条の罰則において規定されており、三五条においては規定されていな

    かったが、発明の実施の一つと考え、ここに規定された。

    また、譲渡若しくは貸渡しの申出は、TRIPS協定二八条で特許により与えられる排他的権利として販売の申出が

    規定されたことを受けて、平成六年の一部改正により追加されたものである。この「申出」は、発明に係る物を譲渡又

    は貸渡しのために展示する行為だけでなく、カタログによる勧誘やパンフレットの配布などを含む行為であるため、本

    項において従来の展示を含むものとして規定された。

    平成一四年の一部改正では、三項一号において、「物(プログラム等を含む。以下同じ。)」と定義することにより、

    以降の条文において「物」に「プログラム等」が含まれることが明確化された。また、改正前の三項では、ネットワー

    クを通じたプログラム等の提供行為が発明の実施に含まれることが明確でなかったため、従来の「譲渡」、「貸渡し」に

    加え「(プログラム等の)電気通信回線を通じた提供」を加え、この点の明確化が図られた。そして、譲渡及び貸渡し

    に、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含めた行為をまとめて「譲渡等」と呼ぶこと

    とされた。ここで「電気通信回線を通じた提供」が含まれる場合を、「物」が「プログラム等」である場合に限っ

    たの

  • 16特 許 法

    は、「物」が有体物である場合には、その電気通信回線を通じた提供自体が観念できないからである。なお、平成一四

    年の一部改正に伴い、三項二号及び三号にも若干の文言上の修正が加えられた。

    平成一八年の一部改正において、発明の「実施」行為に「輸出」を追加した。これは、経済のグローバル化の進展に

    より、我が国の産業財産権侵害品が国境を越えて取引される事例が増大する等模倣品問題の国際化・深刻化に鑑み、国

    内の製造や譲渡の段階では差止めができない場合であっても、輸出者が判明した場合には、権利者が「輸出」の段階で

    差止め等の措置を講じることを可能とするためである。なお、輸出行為自体は、国内で行われる行為であり、我が国の

    工業所有権の効力を直接的に海外における譲渡等の行為に対して及ぼすものではないため、属地主義には反しない。

    四項は、平成一四年の一部改正において新設されたものであり、「プログラム等」の定義を規定するものである。

    〔字句の解釈〕

    〈発明〉発明の定義をすることの難しさは、各国の特許法学者が指摘しているところであるが、その定義の内容如

    何が特許法における基本問題に係るものであることも争い得ない事実である。各国の特許法においては別段の定義を

    設けず、学説判例によってその内容を明らかにしているもののようであるが、現行法においては、今後も学説判例に

    ゆだねざるを得ない面も少なくないが、幾分でも法文上明瞭なものとして争いを少なくしようという趣旨から、この

    ような定義を設けた。

    〈自然法則を利用した〉欧文文字、数字、記号を適当に組み合わせて電報用の暗号を作成する方法については、自

    然法則を利用していないので特許法にいう発明とはいい難いという趣旨の判決がある。

    〈創作〉二九条一項各号及び二項に規定する発明の新規性及び進歩性との関係が問題になるが、本条にいう創作は

    発明時を基準として考えられるものであり、しかも主観的に新しいと意識したものという程度の軽い意味であること

    をもって足るものと考えられる。これに対し二九条の新規性及び進歩性の問題は特許出願時を基準として判断される

  • 17 特 許 法

    問題であり、しかも客観的なものでなければならない。

    〈高度のもの〉このような語が用いられたのは主として実用新案法における考案との関係からである。すなわち、

    現行法においては実用新案法における考案も発明と同様自然法則を利用した技術的思想の創作であるとしているが、

    発明は考案に含まれる部分のうち技術水準の低い裾の部分は包含しないという趣旨である。ただ、これは特許要件と

    しての進歩性を示すものではない。

    〈電気通信回線〉有線であるか無線であるかを問わない。光ファイバによる通信網も含まれる。ただし、「回線」に

    ついては、両方向からの通信を伝送するための無線又は有線と解されており、一方向にしか情報を送信できない放送

    網は「電気通信回線」には含まれない。しかし、このことをもって、放送網を通じたプログラム等の提供があった場

    合にこれが発明の実施に含まれないことを意味するものではない。平成一四年の一部改正前の「譲渡、貸渡し」とい

    う規定であっても、プログラム等の情報財をCD―ROM等の記録媒体を介さずに提供する行為は包含されると整理

    されていたところ、同改正は、特に双方向のネットワークを通じた提供行為が含まれることを明確にするためのもの

    である。したがって、放送については、明確化はされていないものの従来どおり「譲渡、貸渡し」に含まれると解釈

    される。

    〈プログラム等〉プログラムの定義は、情報処理の促進に関する法律(昭和四五年法律第九〇号)におけるものと同

    じであり、プログラムの定義としては法律上最も一般的なものである。

    〈電子計算機による処理の用に供する情報〉電子化などの手法により直ちにコンピュ

    タによる処理に用いること

    が可能な状態にされた情報を意味する。本に書かれた情報や人間の知識としての情報など、そのままではコンピュー

    タにより処理することのできない情報は含まれない。

    〈プログラムに準ずるもの〉コンピュータに対する直接の指令ではないためプログラムとは呼べないが、コンピュ

  • 18特 許 法

    ータの処理を規定するものという点でプログラムに類似する性質を有するものを意味する。

    (期間の計算)

    第三条

    この法律又はこの法律に基く命令の規定による期間の計算は、次の規定による。

    期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

    期間を定めるのに月又は年をもつてしたときは、暦に従う。月又は年の始から期間を起算しないときは、そ

    の期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月に応当する

    日がないときは、その月の末日に満了する。

    特許出願、請求その他特許に関する手続(以下単に「手続」という。)についての期間の末日が行政機関の休

    日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第一条〔行政機関の休日〕第一項各号に掲げる日に当たるとき

    は、その日の翌日をもつてその期間の末日とする。(改正、昭四八法律一〇、昭六三法律九一)

    〔旧法との関係〕

    一三条

    〔趣

    旨〕

    本条は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定による法定期間又は指定期間の計算について定めたものである。

    本条の規定がない場合は、一般法としての民法第一編第六章の規定(期間)が適用されるわけであり、本条は民法一三

    八条にいうところの「特別の定めがある場合」として設けられている。二項については、民法とはかなり相違してい

    る。まず、民法の規定による場合は期間の満了は手続をすべき期間についてのみならず、権利の存続期間等についても

    休日の翌日ということになるが、本条二項の規定による場合は、手続についての期間のみが休日の翌日に満了すること

    実意商

  • 19 特 許 法

    とされており、したがって、特許権の存続期間等については、たとえその末日が休日であってもその日に満了する。ま

    た、民法の規定においては休日であっても取引をなす慣習がある場合はその日に満了することとしているが、本条二項

    は休日を特定し、その休日に該当すれば取引をなす慣習の有無とは関係なく、その休日の翌日に満了するものとしてい

    る。なお、期間の末日が日曜日でその翌日が休日の場合はさらにその休日の翌日をもって期間の末日とすることはいう

    までもない。

    〔字句の解釈〕

    〈応当する日〉たとえば、四月一八日から三月という場合には起算日が四月一九日であれば(初日を算入しない場

    合)七月一九日が最後の月の応当する日である。

    〈行政機関の休日に関する法律第一条第一項各号に掲げる日〉行政機関の休日であり、行政機関の執務を原則とし

    て行わない日として規定された日である。

    土曜日及び日曜日

    行政機関の休日に関する法律が施行され、行政機関において土曜閉庁方式が導入され、昭和六四年一月から毎月

    第二及び第四土曜日が閉庁日とされたことに伴い、特許庁においても従来の閉庁日に加え、毎月第二及び第四土曜

    日にも窓口で事務を行わないこととなったため、当該日を休日として扱うこととした。

    さらに、同法の一部を改正する法律(平成四年法律第二八号)の施行に伴い、平成四年五月からすべての土曜日が

    閉庁日とされたことにより、特許庁においてもすべての土曜日は窓口で事務を行わないこととなったため、当該日

    を休日として扱うこととした。

    国民の祝日に関する法律(昭和二三年法律第一七八号)に規定する休日

    国民の祝日に関する法律第三条にいう休日であり、国民の祝日(国民の祝日が日曜日にあたるときはその翌日)並び

  • 20特 許 法

    にその前日及び翌日が国民の祝日である日である。国民の祝日は同法第二条にいうものであり、元日(一月一日)、

    成人の日(一月の第二月曜日)、建国記念の日(政令で定める日)、天皇誕生日(二月二三日)、春分の日(春分日)、昭和

    の日(四月二九日)、憲法記念日(五月三日)、みどりの日(五月四日)、こどもの日(五月五日)、海の日(七月の第三月

    曜日)、山の日(八月一一日)、敬老の日(九月の第三月曜日)、秋分の日(秋分日)、スポーツの日(一〇月の第二月曜日)、

    文化の日(一一月三日)、勤労感謝の日(一一月二三日)である。

    一二月二九日から翌年の一月三日までの日

    いわゆる年末年始の休日にあたる日であり、旧法と異なり期間の末日が上記の日に該当したときは日曜日等と同

    様翌日を期間の末日とすることとした。これは年末年始は官公庁は休日であり、出願人等はこれらの日には手続等

    をすることができないものと思いがちであるので、その日をもって期間が満了しないこととしたものである。

    (期間の延長等)

    第四条

    特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、第四十六条の二第一項第

    三号〔実用新案登録に基づく特許出願〕、第百八条第一項〔特許料の納付期限〕、第百二十一条第一項〔拒絶査定不服審

    判〕又は第百七十三条第一項〔再審の請求期間〕に規定する期間を延長することができる。(改正、昭四五法律九一、

    昭六〇法律四一、昭六二法律二七、平五法律二六、平六法律一一六、平一六法律七九)

    〔旧法との関係〕

    二三条

    〔趣

    旨〕

    本条は、特許庁に対して手続をする者が遠隔又は交通不便の地にある者である場合の法定期間の延長について定めた

    実意商

  • 21 特 許 法

    ものであり、その延長の権限を有する者は、特許庁長官である。旧法においては「法定期間」とのみ規定して具体的に

    どの法定期間について延長が認められるかについては解釈によっていたわけであるが、現行法においてはこの点を明確

    にする意味において具体的に条文を掲げ延長の対象となり得る法定期間を示した。

    四六条の二第一項三号は第三者による実用新案技術評価の請求があった旨の最初の通知後において実用新案登録に基

    づく特許出願をすることができる期間、一〇八条一項は特許料の納付期限、一二一条一項は審判を請求することができ

    る期間、一七三条一項は再審を請求することができる期間である。

    また、本条とは別に、訴えを提起する場合の出訴期間については、一七八条五項に同様な趣旨の規定を設けている。

    なお、本条に掲げた法定期間のほかにも現行法においては、補正をすることができる時又は期間、出願審査の請求の

    期間等いくつかの法定期間が設けられているが、これらの期間については、次のような理由により延長を認めないこと

    とした。

    補正をすることができる時又は期間

    一七条の二第一項四号

    審判請求時に補正をすることができる時(審判請求と同時)

    拒絶査定を受けた後審判を請求することができる期間(三月)について延長することができることとしているの

    で、必要があれば、その方で調整すればよい。

    一七条の三

    要約書について補正をすることができる期間(出願日から一年四月)

    この期間は、出願の公開(出願から一年六月)との関係もあって延長することは適当でないし、優先権の主張を

    伴う出願の場合であっても少なくとも四月間はあるので十分である。

    出願審査の請求をすることができる期間

    四八条の三第一項

    出願審査の請求をすることができる期間(出願日から三年)

  • 22特 許 法

    長期間であり、延長の必要はない。

    四八条の三第二項

    三年経過後出願の分割、変更をした場合に出願審査の請求をすることができる期間(三〇

    日)

    出願の分割、変更をする場合は同時に出願審査の請求をするのが通常であり、判断の期間としては三〇日あれ

    ば十分である。

    なお、昭和六〇年の一部改正において、補正却下後の新出願制度が廃止され、五三条四項から六項までが削除された

    ことに伴い、本条中の、補正却下の決定後新たな特許出願をすることができる期間の延長に関する部分が削除された。

    また、平成五年の一部改正において、補正却下不服審判及び訂正審判における請求公告が廃止されたことに伴い、本

    文中の該当箇所が削除された。

    さらに、平成六年の一部改正前は、審判に関する法定期間の延長(審判段階でされた特許異議申立ての申立書について補

    正をすることができる期間の延長)については審判長の権限とし、その旨を二項において規定していた。しかしながら、

    平成六年の一部改正において、特許前の異議申立制度が廃止されたことに伴い、二項は削除され、一項からも該当箇所

    が削除された。

    平成一六年の一部改正においては、実用新案登録に基づく特許出願制度(四六条の二)が導入されたが、四六条の二

    第一項三号の法定期間についても延長を認めない理由はないことから、本条の期間の延長の対象とすることとした。

    〔字句の解釈〕

    〈遠隔又は交通不便の地〉旧法の取扱いとしては遠隔又は交通不便の地としては外国の地、伊豆諸島・小笠原諸島

    (東京都)、舳倉島(石川県)、南西諸島(鹿児島県)、沖縄周辺諸島、北海道周辺諸島があげられる。

    なお、旧法においては外国又は遠隔若しくは交通不便の地となっているが、現行法においては、外国はすべて遠隔

  • 23 特 許 法

    の地でよむことにした。

    〈延長〉法定期間の経過前に延長の処分のあることが必要で、期間の経過後においては本条は適用されない。

    (同前)

    第五条

    特許庁長官、審判長又は審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によ

    り又は職権で、その期間を延長することができる。

    審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することが

    できる。(改正、平六法律一一六)

    第一項の規定による期間の延長(経済産業省令で定める期間に係るものに限る。)は、その期間が経過した後

    であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、請求することができる。(本項追加、平二七法律五五)

    〔旧法との関係〕

    施規一五条

    〔趣

    旨〕

    前条が法定期間の延長について規定するものであるのに対し、本条は指定期間の延長及び指定期日の変更について規

    定したものである。前条の場合は延長の権限を有するのは特許庁長官であるが、本条の場合は特許庁長官のほか、審判

    長及び審査官も自己の指定した期間又は期日については、延長又は変更の権限を有する。

    なお、平成六年の一部改正において、特許前の異議申立制度が廃止されたことに伴い、一五一条を準用していた旧五

    九条が削除されたため、二項の期日の変更の権限を有する者から審査官を削除した。

    三項は、指定期間の経過後であっても、一定期間内に限り、その延長を請求することができる旨を規定したものであ

    実意商

  • 24特 許 法

    る。この規定は、ユーザーフレンドリー

    な手続の導入等を目的とした特許法条約(以下「PLT」という。)に整合した

    制度とすべく、平成二七年の一部改正において新たに導入したものである。PLT一一条(期間に関する救済)⑴

    は、特許出願又は特許権について指定期間内にその手続をすることができなかった場合に、当該指定期間の経過後であ

    っても、出願人からの請求によりその指定期間を延長することを認める旨、及び同条⑶ではその例外を規定している。

    また、これら指定期間を経過した後にその延長を請求することができる期間及び例外に係る事項については、特許法条

    約に基づく規則(以下「PLT規則」という。)において規定されているところ(PLT一二規則⑵⒝及び⑸)、我が国におい

    ては、条約の下位規則で定められている事項は、従来から省令で規定してきた(特許協力条約に基づく国際出願等に関する

    法律施行規則二七条の二及び二七条の三等)ことに鑑み、本項についても、「経済産業省令で定める期間に係るもの」ある

    いは「経済産業省令で定める期間」と規定することとした。

    〔字句の解釈〕

    〈期間の指定〉この法律において「相当の期間を指定して」と規定しているものが、ここにいう期間の指定に該当

    する。具体的には、一七条三項、二三条一項、三九条六項、五〇条、八四条、一三三条一項、一三四条一項、一四九

    条二項、一五〇条五項、一六五条等である。

    〈期日の指定〉一四五条三項及び一五一条において準用する民事訴訟法九三条一項に規定するものがある。

    〔参

    考〕

    〈特許法条約〉特許法条約は、各国の特許制度の手続面の簡素化及び調和を図ることを目的として締結され、平成一七

    年四月二八日に発効した。本条約は、二七カ条の規定並びに細則を定めた特許法条約に基づく規則及び同規則の一部

    であるモデル国際様式から成る。本条約の主な内容は、出願日の認定要件、出願手続等の簡素化及び容易化、期間に

    関する救済、相当な注意を払ったこと又は故意でないことが官庁により認定された場合の権利の回復、優先権の主張

  • 25 特 許 法

    の訂正又は追加及び優先権の回復、代理の義務付けの例外、権利移転等の登録等である。本条約には、特許法に特有

    の項目以外の規定も含まれており、平成二七年の一部改正においては、制度利用者の利便性の向上の観点から、それ

    らの規定に基づく手続の簡素化等の改正を実用新案法及び商標法等の関連部分にも均霑させた。

    令和元年六月現在、本条約の加盟国は四一カ国である。我が国において本条約の効力が発生したのは平成二八年六

    月一一日である。

    (法人でない社団等の手続をする能力)

    第六条

    法人でない社団又は財団であつて、代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において次に掲げる手

    続をすることができる。

    出願審査の請求をすること。(本号追加、昭四五法律九一)

    特許異議の申立てをすること(本号追加、平二六法律三六)

    特許無効審判又は延長登録無効審判を請求すること。(改正、昭五三法律三〇、昭六二法律二七、平五法律二六、

    平六法律一一六、平一五法律四七、平二六法律三六)

    第百七十一条第一項〔再審の請求〕の規定により特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決に対する再

    審を請求すること。(改正、昭三七法律一六一、昭五三法律三〇、昭六二法律二七、平五法律二六、平六法律一一六、平

    一五法律四七、平二六法律三六)

    法人でない社団又は財団であつて、代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において特許無効審判又は

    延長登録無効審判の確定審決に対する再審を請求されることができる。(改正、昭五三法律三〇、昭六二法律二七、

    平五法律二六、平六法律一一六、平一五法律四七)

    意商

  • 26特 許 法

    (改正、平一五法律四七)

    〔旧法との関係〕

    該当条文なし

    〔趣

    旨〕

    民法、会社法をはじめその他の実体法は団体に法人格を認めるについては相当の手続を強制し、しかもこの法人格を

    有する者にのみ権利能力を認めていこうとしている。しかし、社会には種々な団体が発生存在し実体法による制限の枠

    外において社会的活動を営み取引界にも登場している事実も見逃し得ない。こうした事実に着目して民事訴訟法におい

    ては法人でない社団又は財団であって代表者又は管理人の定めのあるものについては当事者能力を認めている(二九条)

    が、これと同様な考え方から、特許法においても、一定の手続に限って法人格のない社団又は財団についても能力を認

    めようとするのが本条の規定である。本条において、無効審判を請求される場合や、訂正審判を請求する場合について

    は規定されていないのは、法人格のない団体は権利能力がなく、特許権者となり得ないということに基づく。

    また、一項四号の場合は再審のうち一七一条一項の規定によるもののみを規定し一七二条一項の規定によるものを規

    定しなかったのは、法人格なき社団はもともと権利能力がないものであるから審決によって権利を害されるということ

    はなく、利益ということについても同様であると考えたからである。

    なお、昭和四五年の一部改正で一項一号を追加した。この改正で新設した審査請求制度は、第三者の出願審査の請求

    をも認めている(四八条の三第一項)。これは第三者であってもその出願の審査結果について利害関係を有する場合があ

    り、その結論を早く得たいというケースもあるからである。

    すなわち、この第三者の出願審査の請求は、特許異議申立てと同様の意味を持つものと考えられるので特許異議の申

    立てと同様法人格のない社団又は財団にも出願審査の請求をすることを認めたわけである。

  • 27 特 許 法

    また、昭和六二年の一部改正において特許権の存続期間の延長登録の無効の審判が新設され、一二五条の二第一項の

    規定が新設されたので、これを本条一項三号及び四号並びに二項に追加した。

    平成五年の一部改正においては、訂正審判における請求公告及び訂正無効審判が廃止されたことに伴い、本条中の該

    当箇所を削除した。

    平成六年の一部改正においては、外国語特許出願固有の理由に基づく特許の無効の審判(昭和五三年の一部改正におい

    て本条に追加)が廃止されたことに伴い、本条中の該当箇所を削除した。

    平成一五年の一部改正においては、特許異議申立制度が廃止されたことに伴い、該当箇所を削除した。また、一二三

    条一項の審判及び一二五条の二第一項の審判を、特許無効審判及び延長登録無効審判と規定する修正を行った。趣旨に

    ついては一二一条を参照のこと。

    平成二六年の一部改正においては、特許異議申立制度が創設されたことに伴い、一項二号を追加した。

    〔字句の解釈〕

    〈社団〉一定の目的をもって組織された自然人の団体で、その団体自身が個々の構成員から独立した単一体として

    の存在を有するもの。

    〈財団〉個人の帰属をはなれて、一定の目的のために管理される財産の集合をいう。たとえば、社会事業のために

    募集された寄附財産のごとくである。

    〈代表者又は管理人〉その団体の活動機関のことで、その機関の名称が必ずしも代表者又は管理人というものであ

    ることを要しない。「定めがある」というのは団体の定款等で定めていることをいう。

    (未成年者、成年被後見人等の手続をする能力)実意商

  • 28特 許 法

    第七条

    未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、手続をすることができない。ただし、未成年

    者が独立して法律行為をすることができるときは、この限りでない。

    被保佐人が手続をするには、保佐人の同意を得なければならない。

    法定代理人が手続をするには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。

    被保佐人又は法定代理人が、その特許権に係る特許異議の申立て又は相手方が請求した審判若しくは再審につ

    いて手続をするときは、前二項の規定は、適用しない。(改正、平六法律一一六、平一五法律四七、平二六法律三六)

    (改正、平一一法律一五一)

    〔旧法との関係〕

    該当条文なし

    〔趣

    旨〕

    本条は、未成年者、成年被後見人等が手続をすることについての制限を規定したものである。未成年者でも成年被後

    見人でも特許権者又は実施権者となり得ることから考えて、当然自己の名において手続をせざるを得ない場合があるわ

    けであるが、実際の手続を代理人によらないで自らすることは、事実上難しいと思われる場合が少なくない。そこで自

    己の利益を手続の過程において十分に主張し防衛することができないこれらの者を保護するために本条の規定が設けら

    れたのである。これと同様な考え方から民法においては行為能力の制度、民事訴訟法においては訴訟能力の制度が設け

    られている。本条はその性質から考えて民事訴訟の訴訟能力の規定とほぼ同様な内容を規定した。

    なお、平成六年の一部改正において、準禁治産者(現在は被保佐人)又は法定代理人が、その特許権に係る特許異議の

    申立てについて手続をするときは、審判又は再審と同様に二項及び三項の規定は適用しない旨を四項に追加した。

    また、平成一五年の一部改正において、特許異議申立制度が廃止されたことに伴い、該当箇所を削除したが、平成二

  • 29 特 許 法

    六年の一部改正において、特許異議申立制度が創設されたことに伴い、被保佐人等の特許権に対して特許異議の申立て

    がなされた場合、当該被保佐人等は保佐人等の同意を得ることなく手続を可能とすることを規定した。

    〔字句の解釈〕

    〈未成年者〉民法五条の規定による未成年者は法定代理人の同意を得れば法律行為をすることができるものとされ

    ているが、特許法上の手続については、すべて法定代理人によらなければすることができない。ただし、未成年者が

    独立して法律行為をすることができるとき、例えば、婚姻をしたときなどは、自らすることができる。

    〈成年被後見人〉民法九条の規定によれば、成年被後見人の行為は取り消すことができるとされているが、本条違

    反の場合においては、成年被後見人の行為は無効である。平成一一年の民法の一部改正において「日用品の購入その

    他日常生活に関する行為」については制限されることとなったが、実質的な変更はない。

    〈法定代理人〉何人が法定代理人であるかは民法その他の法令に従うわけであるが、通常未成年者については親権

    者又は後見人、成年被後見人については成年後見人である。

    〈被保佐人〉民法一三条一項は被保佐人が行為をするに当たって保佐人の同意を要する場合を規定しているが、本

    条二項はこれと同趣旨の規定である。なお、保佐人の同意権は一連の手続(民法一三条一項各号所定の行為)に対して

    包括的に与えられるもので、その中の個々の手続について与えたり除外したりすることはできない。

    〈後見監督人〉民法八四八条から八五二条までが後見監督人(未成年、成年)について規定している。遺言で指定す

    る場合と、家庭裁判所が被後見人、その親族若しくは後見人の請求によって、又は職権で選任する場合とがある。

  • 30特 許 法

    補助・保佐・後見の制度の概要

    補助開始の審判

    保佐開始の審判

    後見開始の審判

    (判断能力)

    精神上の障害(認知症・知的障

    害・精神障害等)により事理を

    弁識する能力が不十分な者

    精神上の障害により

    事理を弁識する能力

    が著しく不十分な者

    精神上の障害により

    事理を弁識する能力

    を欠く常況にある者

    開始の

    手続

    本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長

    機関の

    名称

    被補助人

    被保佐人

    成年被後見人

    成年後見人

    補助監督人

    保佐監督人

    成年後見監督人

    同意権

    ・取消権

    申立の範囲内で家庭裁判所が定

    める「特定の法律行為」

    民法13条1項各号所定

    の行為

    日常生活に関する

    行為以外の行為

    補助開始の審判

    +同意権付与の審判

    +本人の同意

    保佐開始の審判

    後見開始の審判

    本人・補助人

    本人・保佐人

    本人・成年後見人

    代理権

    申立の範囲内で家庭裁判所が定

    める「特定の法律行為」

    財産に関するすべ

    ての法律行為

    補助開始の審判

    +代理権付与の審判

    +本人の同意

    保佐開始の審判

    +代理権付与の審判

    +本人の同意

    後見開始の審判

    身上配慮義務

    本人の意思を尊重し、かつその心身の状態および生活の状況に配慮する

    義務

  • 31 特 許 法

    (在外者の特許管理人)

    第八条

    日本国内に住所又は居所(法人にあつては、営業所)を有しない者(以下「在外者」という。)は、政令

    で定める場合を除き、その者の特許に関する代理人であつて日本国内に住所又は居所を有するもの(以下「特許

    管理人」という。)によらなければ、手続をし、又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政

    庁がした処分を不服として訴えを提起することができない。(改正、平八法律六八)

    特許管理人は、一切の手続及びこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服とす

    る訴訟について本人を代理する。ただし、在外者が特許管理人の代理権の範囲を制限したときは、この限りでな

    い。(改正、平八法律六八)

    〔旧法との関係〕

    一六条

    〔趣

    旨〕

    本条は、在外者の代理人に関する規定である。このうち、一項は、在外者は日本国内に住所又は居所を有する代理人

    によるのでなければ手続をすることができず、またこの法律に基づいて行政庁がした処分を不服として訴えを提起する

    ことができない旨を定めたものである。もし、このような規定をおかないときは、特許庁が在外者に手続をする場合も

    直接その者に対してせざるを得ず、到底その煩にたえ得ない。また、在外者という場合は、日本国民である場合と外国

    人である場合とを問わないので、日本国内に住所も居所も有しない日本人についても代理人が強制される。

    なお、昭和六〇年の一部改正において、一項の規定にかかわらず、在外者である国際特許出願人は、所定の期間内に

    限り特許管理人によらないで手続をすることができる特例が設けられた(一八四条の一一参照)。

    実意商

  • 32特 許 法

    さらに、平成八年の一部改正において、特許管理人の選任等についての登録の第三者対抗要件に関する第三項を削除

    したことに伴い、本項中より、在外者が特許管理人によらなくても手続をすることができる場合として掲げていた「第

    三項の登録を申請する場合」を削除した。

    政令で定める場合については、特許法施行令第一条各号で規定している。

    二項は、一項の規定によって選任された代理人の権限に関する規定である。旧法においては、在外者の代理人の権限

    として「手続並民事訴訟、私訴及告訴」をすることを認めていたが、このうち私訴については旧刑事訴訟法に基づくも

    ので、旧法においても事実上廃止されていたものである。また民事訴訟の一部(例えば、侵害訴訟)及び告訴について

    は、特許法上の問題ではなく民事訴訟法又は刑事訴訟法の問題であるので、現行法では特許出願その他特許に関する手

    続のほかはこの法律に基づいて行政庁がした処分を不服として提起する訴訟に限り権限を有することとしたのである。

    ここでいう「一切の手続」には、特許出願の取下げ、審判請求の取下げ等のいわゆる不利益行為も含む(旧法の場合は

    不利益行為については特別の授権がなければ代理権を有しないという解釈が有力であった)。

    なお、商標法条約四条⑶⒞には「委任状は、代理人の権限を特定の行為に限定することができる。」と規定されてい

    ることに加え、近年における送達方法の発達及び特許庁の事務処理の機械化の進展等により在外者と直接連絡を取るこ

    とが容易となってきていることをも勘案して、平成八年の一部改正においては、特許法においても、本項にただし書を

    追加して、在外者も内国人と同様に特許管理人の代理権の範囲を制限できることとした。

    〔字句の解釈〕

    〈住所〉各人の生活の本拠をもって住所とする(民法二二条)。

    〈居所〉住所のように生活の本拠ではないが多少の時間的継続をもっ

    て人が住んでいる場所をいう。なお、住所が

    知れない場合又は日本に住所を有しない者については居所をもって住所とみなすこととされている(民法二三条)。

  • 33 特 許 法

    〈特許管理人〉本条の代理人は通常の委任による代理人と異なり包括的な権限を有する。こうした事実に着目して、

    特許管理人という特別の名称を付したのである。

    〔参

    考〕

    〈特許管理人についての登録制度の廃止〉商標法条約では、代理に関して同条約に定める要件以外の要件を課すことを

    禁止しており(商標法条約四条⑹)、平成八年の一部改正においては、商標法だけでなく、特許法においても特許管理

    人についての登録制度を廃止することとし、特許管理人の選任等についての登録の第三者対抗要件について規定して

    いた三項を削除することとした。

    (代理権の範囲)

    第九条

    日本国内に住所又は居所(法人にあつては、営業所)を有する者であつて手続をするものの委任による代

    理人は、特別の授権を得なければ、特許出願の変更、放棄若しくは取下げ、特許権の存続期間の延長登録の出願

    の取下げ、請求、申請若しくは申立ての取下げ、第四十一条第一項〔特許出願等に基づく優先権主張〕の優先権の

    主張若しくはその取下げ、第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願、出願公開の請

    求、拒絶査定不服審判の請求、特許権の放棄又は復代理人の選任をすることができない。(改正、昭三七法律一六

    一、昭六〇法律四一、昭六二法律二七、平五法律二六、平八法律六八、平一一法律四一、平一五法律四七、平一六法律七九)

    〔旧法との関係〕

    該当条文なし

    〔趣

    旨〕

    本条は、日本国内に住所又は居所を有する者の委任による代理人の権限について規定したものである。在外者の代理

    実意商

  • 34特 許 法

    人にあっては前条に規定するように、在外者が代理権の範囲を制限しない場合には一切の手続について代理権を有する

    わけであるが、本条の場合は民法一〇三条又は民事訴訟法五五条二項の場合と同様不利益行為について特別の授権がな

    い限り代理権を有しないという考え方で規定されている。旧法には本条のような規定はなく民法一〇三条の解釈によっ

    て運用していたわけであるが、具体的手続が代理権の範囲内であるかどうかについて明瞭でない場合も少なくないの

    で、現行法においては具体的に手続の条文をあげ特別の授権を要する場合を規定したのである。

    昭和六〇年の一部改正において特許出願等に基づく優先権制度が導入されたが、優先権の主張又はその取下げは、そ

    の基礎とされた先の出願のみなし取下げ又は優先権の利益の喪失という効果をもたらすので、これらの行為についても

    特別の授権を要することとした。

    昭和六二年の一部改正においては、特許権の存続期間の延長登録の制度が導入されたが、延長登録の出願の取下げも

    不利益行為に相当するため、当該行為についても特別の授権を要することとした。

    また、平成五年の一部改正では、補正却下不服審判が廃止されたことに伴い、本条中の該当箇所が削除され、また、

    改正前の四二条の二が四一条へ移動されたことに伴い、本条中の該当箇所が改正された。

    平成八年の一部改正においては、商標法条約が「委任状は、代理人の権限を特定の行為に限定することができる。」

    と規定し、「出願の取下げ」又は「登録の放棄」をその例示として挙げていること(四条⑶⒞)、また、同条約は、委任

    による代理人の代理権の範囲は「登録後にも及ぶ」旨の明記があればその代理権は登録後にも及ぶとの考え方に立って

    いることから(同条⑶⒝)、我が国も、商標法だけでなく特許法においても、これと平仄を合わせた取扱いをすることを

    前提として、代理権の権限に関し、登録後においても特別授権がなければ行えない不利益な行為として「特許権の放

    棄」を追加することとした。

    さらに、平成一一年の一部改正においては、出願公開の請求が、通常は出願日から一年六月を経過するまで秘密の状

  • 35 特 許 法

    態を保たれる出願の内容をそれ以前に公表するものであり、出願人に不利益を生じる場合もあり得ることから、当該行

    為についても特別の授権を要することとした。

    平成一五年の一部改正において、一二一条一項の審判を拒絶査定不服審判と規定する修正を行った。趣旨については

    一二一条を参照されたい。

    平成一六年の一部改正により実用新案登録に基づく特許出願制度が導入されたところ、実用新案登録に基づく特許出

    願がされた後は、基礎とした実用新案登録について、実用新案技術評価の請求をすることができない(実用新案法一二

    条三項)。したがって、実用新案登録に基づく特許出願は、もとの実用新案権者にとっ

    ての不利益行為に該当するもの

    であるから、特別の授権を要することとした。

    第一〇条

    削除(削除、平八法律一一〇)

    〔参

    考〕

    〈「書面による代理権の証明」の法律事項から省令事項への移行〉本条は代理権の証明方法を規定したものであり、書

    面を唯一の証明手段としている。証明手段として書面を採用することは、手続における付随的、技術的な事項である

    から、手続の細目であると考えられる。大正一〇年法、明治四二年法においては、「書面による代理権の証明」は手

    続の細目として取り扱われ省令事項となっていたが、昭和三四年法において、民事訴訟法の規定に合わせ、旧特許法

    一〇条のように法律事項とされた。しかし、平成八年の民事訴訟法の改正に伴い、「書面による代理権の証明」は手

    続の細目であるとして、法律事項から削除され、最高裁判所規則に移されたが、過去の経緯等を考慮すると、特許法

    においても同様に、本条を削除し、あらためて特許法施行規則に「書面による代理権の証明」についての規定を設け

  • 36特 許 法

    ることとした。

    (代理権の不消滅)

    第一一条

    手続をする者の委任による代理人の代理権は、本人の死亡若しくは本人である法人の合併による消滅、

    本人である受託者の信託に関する任務の終了又は法定代理人の死亡若しくはその代理権の変更若しくは消滅によ

    つては、消滅しない。(改正、平一八法律一〇九)

    〔旧法との関係〕

    一七条ノ二

    〔趣

    旨〕

    本条は、民法一一一条に規定する代理権の消滅理由の例外を規定したものである。民法においては委任は個人的な信

    頼関係を基調として考えられており、これを妨げる事情が発生すれば委任関係も消滅するものとしているのである。し

    たがって、本人の死亡等によって代理権もまた消滅するものと考えている。ところが手続の面においては、民法の原則

    によって代理権を消滅せしめることが却って本人の保護にならない場合が少なくない。たとえば、一定の期間内にすべ

    き手続について代理人がしたところ、その前に本人が死亡していて代理権が消滅しており、当該手続は無効となる場合

    などである。一方、本条のように委任による代理人がある場合に本人の死亡等により代理権は消滅しないものとして

    も、委任の目的範囲は当初から明確であることから考えて、相続人その他の者が不測の損害を蒙るとは思われない。こ

    れが民法の特則として本条が設けられている理由である。本条は委任による代理人についてのみ適用されるわけである

    が、その理由は法定代理人は本人との特殊な人的関係において結ばれているものであるからである。

    〔字句の解釈〕

    実意商

  • 37 特 許 法

    〈法人の合併による消滅〉設立合併の場合又は吸収合併の場合のいずれでもよい。

    〈法定代理人の代理権の変更〉法定代理人の代理権の一部が消滅した場合などをいう。たとえば、民法八三五条の

    規定による管理権の喪失。

    (代理人の個別代理)

    第一二条

    手続をする者の代理人が二人以上あるときは、特許庁に対しては、各人が本人を代理する。

    〔旧法との関係〕

    一八条

    〔趣

    旨〕

    本条は、手続をする者の代理人が二人以上あるときは、特許庁に対しては各人が本人を代理する権限を有する旨を定

    めたものである。したがって、出願人、請求人等が特許庁に対して手続をする場合二人以上の代理人のうち一人がすれ

    ば本人がしたと同じような効果が生ずるわけであるが、逆に特許庁からする手続についても二人以上の代理人のうちの

    一人に対してすれば本人に対してしたと同じような効果を生ずることになる。

    民事訴訟法五六条一項は本条と同趣旨の規定をしているが、同法はさらに二項として「当事者が前項の規定と異なる

    定めをしても、その効力を生じない」と規定し一項の規定が強行規定であることを明らかにしている。特許法において

    はこの二項のような規定は設けられていないが、本条は民事訴訟法の場合と同様強行規定と解すべきものである。した

    がって、本人が二人以上の代理人の共同代理によっ

    てのみ代理されるべき旨の定めをしても手続上無効である。ただ

    し、このような定めも本人と代理人との間の内部関係としての意義を有することはいうまでもない。

    実意商

  • 38特 許 法

    (代理人の改任等)

    第一三条

    特許庁長官又は審判長は、手続をする者がその手続をするのに適当でないと認めるときは、代理人によ

    り手続をすべきことを命ずることができる。

    特許庁長官又は審判長は、手続をする者の代理人がその手続をするのに適当でないと認めるときは、その改任

    を命ずることができる。

    特許庁長官又は審判長は、前二項の場合において、弁理士を代理人とすべきことを命ずることができる。

    特許庁長官又は審判長は、第一項又は第二項の規定による命令をした後に第一項の手続をする者又は第二項の

    代理人が特許庁に対してした手続を却下することができる。(改正、平八法律六八)

    〔旧法との関係〕

    一九条

    〔趣

    旨〕

    本条一項は、手続をする者が手続をするのに適当でない場合に代理人によっ

    てすべきことを命ずることができる旨

    を、二項は代理人が手続をするのに適当でない場合は別の代理人によってすべきことを命ずることができる旨を規定し

    たものである。さらにこれらの場合に弁理士としての業を営んでいる者を代理人とすべきことを命ずることができる旨

    を規定したのが三項である。四項は一項又は二項の命令に違反した場合の制裁規定である。この四項の却下処分は裁量

    行為である。したがって、当該事項が同じようなことの繰返しというようなものではなく、かつ、本人にも不利益が及

    ばないような場合は、有効なものとして取り扱うことは差し支えないのである。

    なお、平成八年の一部改正において「無効」を「却下」に改めたが、これは一八条において「無効」を「却下」に改

    実意商

  • 39 特 許 法

    めたことと同趣旨である。

    (複数当事者の相互代表)

    第一四条

    二人以上が共同して手続をしたときは、特許出願の変更、放棄及び取下げ、特許権の存続期間の延長登

    録の出願の取下げ、請求、申請又は申立ての取下げ、第四十一条第一項〔特許出願等に基づく優先権主張〕の優先

    権の主張及びその取下げ、出願公開の請求並びに拒絶査定不服審判の請求以外の手続については、各人が全員を

    代表するものとする。ただし、代表者を定めて特許庁に届け出たときは、この限りでない。(改正、昭三七法律一

    六一、昭六〇法律四一、昭六二法律二七、平五法律二六、平一一法律四一、平一五法律四七)

    〔旧法との関係〕

    二一条

    〔趣

    旨〕

    本条は、二人以上の者が共同して特許出願、審判請求等の手続をした後は、全員の不利益になるような手続を除い

    て、その後の手続について各人が全員を代表すべき旨を定めたものである。特許出願、審判請求等の手続自体について

    は、別に三八条、一三二条等の規定がある。旧法の解釈においても、各人が互いに代表するのは利益行為についてのみ

    であって、いわゆる不利益行為については代表しないものとされていたが、この場合の不利益行為とは、具体的にどの

    手続とどの手続を指すかは必ずしも明瞭ではなかった。現行法においては、この点九条に規定する代理人の権限の場合

    と同様、代表する権限のない手続を具体的に明示したのである。ただし書は、特に代表者を定めて特許庁に届け出たと

    きは、その代表者のみが他を代表して、その他の者は代表する権限のない旨を規定したものである。この場合の代表者

    は必ずしも一人であることを要せず、二人以上であっても差し支えない。ただし書にいう代表者は、民事訴訟法三〇条

    実意商

  • 40特 許 法

    一項の選定当事者に類似するものである。

    なお、平成五年の一部改正において、補正却下不服審判が廃止されたことに伴い、本条中の該当箇所が削除され、ま

    た、改正前の四二条の二が四一条へ移動されたことに伴い、本条中の該当箇所が改正された。

    さらに、平成一一年の一部改正においては、出願公開の請求が、通常は出願日から一年六月を経過するまで秘密の状

    態を保たれる出願の内容をそれ以前に公表するものであり、出願人の全員に不利益を生じる場合もあり得ることから、

    代表する権限のない手続として当該行為を追加することとした。

    〔字句の解釈〕

    〈各人が全員を代表する〉一二条に規定する代理人の個別代理の場合に類似するものである。すなわち、明細書の補正

    や出願審査の請求をする場合などは共同出願人の一人がすれば有効であり、また特許庁からする手続についても共同

    出願人のうち一人に対してすれば全員に対してしたと同じような効果を生ずることになる。

    なお、平成一五年の一部改正において、一二一条一項の審判を拒絶査定不服審判と規定する修正を行った。趣旨に

    ついては一二一条を参照のこと。

    (在外者の裁判籍)

    第一五条

    在外者の特許権その他特許に関する権利については、特許管理人があるときはその住所又は居所をもつ

    て、特許管理人がないときは特許庁の所在地をもつて民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第五条第四号の財産

    の所在地とみなす。(改正、平八法律一一〇)

    〔旧法との関係〕

    二二条

    実意商

  • 41 特 許 法

    〔趣

    旨〕

    本条は、日本国内に住所も居所も有しない者の特許権等について訴えを提起する場合の裁判籍を規定したものであ

    る。この条文に関連するものとして民事訴訟法五条四号は「日本国内に住所(法人にあっては、事務所又は営業所。以下こ

    の号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え」は、「請求若しくはその担保の目的又は差

    し押さえることができる被告の財産の所在地」を管轄する裁判所に提起することができる旨を規定しているが、特許権

    については、その権利者が日本国内に住所も居所も有していない事例は極めて多く、しかも無体財産権であるところか

    ら財産の所在地というものがない。したがって、本条のような規定が民事訴訟法五条四号の規定のほかに必要なわけで

    ある。

    なお、本条は平成八年の民事訴訟法の改正に伴い改正されたが、これは、引用する民事訴訟法の条番号を変更したも

    のであり、実質的な内容変更を伴うものではない。

    〔字句の解釈〕

    〈在外者〉日本国内に住所も居所も有しない者をいう(八条)。

    〈特許権その他特許に関する権利〉旧法は特許権についてのみ規定しているが、専用実施権、通常実施権さらには

    これらを目的とする質権についても同様に考えるべきもので、これらを排除すべき理由もないのでこのように改め

    た。(

    手続をする能力がない場合の追認)

    第一六条

    未成年者(独立して法律行為をすることができる者を除く。)又は成年被後見人がした手続は、法定代

    理人(本人が手続をする能力を取得したときは、本人)が追認することができる。(改正、平一一法律一五一)

    実意商

  • 42特 許 法

    代理権がない者がした手続は、手続をする能力がある本人又は法定代理人が追認することができる。

    被保佐人が保佐人の同意を得ないでした手続は、被保佐人が保佐人の同意を得て追認することができる。(改

    正、平一一法律一五一)

    後見監督人がある場合において法定代理人がその同意を得ないでした手続は、後見監督人の同意を得た法定代

    理人又は手続をする能力を取得した本人が追認することができる。

    〔旧法との関係〕

    該当条文なし

    〔趣

    旨〕

    本条は、手続をする能力のない者がした手続の追認について規定したものであり、七条の規定と対応するものという

    ことができる。七条は未成年者、成年被後見人等の手続をする能力について規定しており、同条に違反してされた手続

    は無効であるが、本条はその瑕疵の補完の方法として追認の手続を定めたものである。本条の規定に基づいて追認され

    た場合は、前にされた手続は追認のときから有効になるのではなく、前の瑕疵ある手続がされた時にさかのぼって有効

    になるのである。本条の追認は、追認権者の側から自発的にすることができることはいうまでもないが、次条三項又は

    一三三条二項の規定により特許庁長官又は審判長は、手続が七条に違反してされているときは相当の期間を指定してそ

    の手続の補正をすべきことを命ずることができることになっている。

    本条の規定による追認は、一八条又は一三三条の規定による却下処分があった後はすることができず、また、追認を

    するには過去の手続を一体としてしなければならず、その中のある行為のみを追認して他の行為は追認しないというよ

    うな選択は許されない。

    〔字句の解釈〕

  • 43 特 許 法

    〈追認〉民事訴訟法三四条二項の場合と同様未成年者、無権代理人等が手続をした時にさかのぼっ

    て有効となるも

    のであり、追認の時から有効となるのではない。

    〈未成年者、成年被後見人、法定代理人、被保佐人、後見監督人〉七条参照

    (手続の補正)

    第一七条

    手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、次

    条から第十七条の五までの規定により補正をすることができる場合を除き、願書に添付した明細書、特許請求の

    範囲、図面若しくは要約書、第四十一条第四項〔特許出願等に基づく優先権主張〕若しくは第四十三条第一項

    (第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項にお

    いて準用する場合を含む。)〔パリ条約による優先権主張の手続〕に規定する書面又は第百二十条の五第二項〔意

    見書の提出等〕若しくは第百三十四条の二第一項〔特許無効審判における訂正の請求〕の訂正若しくは訂正審判の

    請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面について補正をすることができない。(改正、昭

    四五法律九一、昭五〇法律四六、昭六〇法律四一、平二法律三〇、平五法律二六、平六法律一一六、平一四法律二四、平一五

    法律四七、平二六法律三六)

    第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人は、前項本文の規定にかかわらず、同条第一項の外国語書面

    及び外国語要約書面について補正をすることができない。(本項追加、平五法律二六、改正、平六法律一一六)

    特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。

    手続が第七条第一項から第三項まで〔手続能力〕又は第九条〔代理権の範囲〕の規定に違反しているとき。

    意商

  • 44特 許 法

    手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反しているとき。

    手続について第百九十五条第一項から第三項まで〔手数料〕の規定により納付すべき手数料を納付しないと

    き。

    (改正、昭四五法律九一、昭五九法律二三、平五法律二六、平八法律六八)

    手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには、次条第二項に規定する場合を除き、手続補正書を提出しな

    ければならない。(改正、平五法律二六、平六法律一一六)

    〔旧法との関係〕

    施規一一条

    〔趣

    旨〕

    本条は、手続の補正について規定したものである。手続の円滑迅速な進行を図るためには、はじめから完全な内容の

    書類を提出することが最も望ましいのであるが、実際問題として当初から完全なものを望み得ない場合も少なくないの

    で、昭和三四年制定の現行法は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合には補正をすることができることと

    し、出願公告決定後においては一定の制限(旧六四条)の下に補正を認めることとしていた(また、出願公告決定前におい

    てもその補正が不適法なものであるときは五三条等の規定が適用された)。

    しかしながら、昭和四五年の一部改正において、審査請求制度を採用したことに伴い、原則として補正ができる期間