1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

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1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害. 第二内科 吉田英昭. 国家試験レベル. 55 歳の女性。 3 ヶ月前から下腿浮腫が出現してきたため来院した。 15 年前から関節リウマチに罹患し、 3 年前から金製剤で治療されている。尿所見:蛋白( 3 +)、糖(ー)、潜血(ー)、尿蛋白 5.5g/ 日。血清生化学所見:総蛋白 5.0g/dL, 尿素窒素 12mg/dL, クレアチニン 0.8mg/dL,  総コレステロール 385mg/dL 。考えられる腎病変はどれか。2つ選べ。 A 膜性腎症 B 腎乳頭壊死 C 腎皮質壊死 D アレルギー性腎炎 - PowerPoint PPT Presentation

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1.腎障害をきたす全身性疾患2.尿細管障害

第二内科吉田英昭

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国家試験レベル 55歳の女性。 3ヶ月前から下腿浮腫が出現してきたため来院した。 15年前から関節リウマチに罹患し、 3年前から金製剤で治療されている。尿所見:蛋白( 3+)、糖(ー)、潜血(ー)、尿蛋白 5.5g/日。血清生化学所見:総蛋白 5.0g/dL, 尿素窒素 12mg/dL, クレアチニン 0.8mg/dL, 総コレステロール 385mg/dL。考えられる腎病変はどれか。2つ選べ。

A 膜性腎症

B 腎乳頭壊死

C 腎皮質壊死

D アレルギー性腎炎

E アミロイド腎症

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国家試験レベル 43歳の男性。発熱と下腿の痛みを伴うしこりのため来院した。 2ヶ月前から夕方に38℃台の発熱、鼻汁および鼻閉が出現し、副鼻腔炎と診断された。 1週間前から両下腿に有痛性の紅斑が出現した。意識は清明。身長 183cm、体重71kg。体温37.8℃。脈拍88/分、整。血圧122/84mmHg。眼瞼結膜に貧血なく、眼球結膜に黄疸はない。胸部、腹部に触診、聴診上異常所見はない。両下腿に径1cmの有痛性結節性紅斑を数個認める。尿所見:蛋白( 2+)、潜血(1+)。血液所見:赤血球423万 /μL, Hb 12.1g/dL, Ht 36%, 白血球10,800/μL, 血小板39万 /μL。血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL, クレアチニン0.7mg/dL, AST 14, ALT 19, LDH 129。免疫学所見:CRP 7.5mg/dL, CH50 60単位(基準30-40)、抗好中球細胞質抗体陽性。胸部レントゲン写真で両肺に多発性の結節影を認める。診断はどれか。

A 悪性リンパ腫

B サルコイドーシス

C 結節性多発動脈炎

D 全身性エリテマトーデス

E Wegener肉芽腫症

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認定内科医試験レベル 45歳の女性。 1年前に非アトピー型喘息を発症し、副鼻腔炎の合併と繰り返す肺浸潤影との既往がある。 1ヶ月前から発熱、体重減少、四肢末梢のしびれと筋力低下および下腿浮腫が出現し、徐々に増悪したため来院した。検査所見:末梢血好酸球 6,790/μL。最も考えられる診断はどれか。 1つ選べ。

A Wegener肉芽腫症

B アレルギー性肉芽腫性血管炎( Churg-Strauss症候群)

C アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

D 急性好酸球性肺炎

E 顕微鏡的多発動脈炎

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腎障害をきたす全身性疾患代謝性疾患

自己免疫疾患

パラプロテイン血症

その他

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代謝性疾患糖尿病

高尿酸血症・痛風

糖原病

脂質代謝異常症

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糖尿病性腎症(病期分類)

Page 8: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

糖尿病性腎症(病期)

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糖尿病性腎症(病期)

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糖尿病性腎症(病理)糖尿病による糸球体硬化症のこと。

びまん性病変、結節性病変 滲出性病変、尿細管間質障害もみられる

10

びまん性病変 結節性病変

滲出性病変

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糖尿病三大合併症の進展

症状がないことが多く、気づいた時にはかなり進んでいる!

早期発見が大事

神経障害

網膜症

腎症

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2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical University

School of Medicine

糖尿病は腎症進展率よりも死亡率が高い( 5097 人の 10 年間追跡結

果)腎症なし(第 1 期)

微量アルブミン尿(第 2 期)

蛋白尿(第 3 期)

腎不全、末期腎不全(第 4 、 5 期)

2.0 %

2.8 %

2.9 %

死亡

1.4 %

3.0 %

4.6 %

19.2 %

UKPDS 64 より改変引用

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糖尿病性腎症の治療1. 血糖コントロール

2. 血圧管理

3. 蛋白制限食( Stage 3 以降)

4. 腎保護薬

stage 2→stage 1 や stage 3→stage 2 へ改善させることができるstage 4 以降でも末期腎不全へ進行を遅らせることが可能

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血糖コントロール空腹時血糖 110 mg/dl 未満

食後血糖 180 mg/dl 未満

HbA1c (JDS 値) 6.5% 未満

米国 DDCT (The Diabetes Control and Complication Trial Research Group), NEJM 1993

欧州 UKPDS33 (UK Prospective Diabetes Study Group), Lancet 1998

日本 Kumamoto Study, Diabetes Res Clin Pract 28, 1995

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(Coppelli: Transplantation, Volume 81(7)15, 2006)

膵移植後の尿蛋白の推移

移植患者

非移植患者

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Fioretto P, et al. NEJM 339: 69, 1998

HbA1c 8.7% HbA1c 5.3% HbA1c 5.5%移植前 移植後 5年 移植後 10年

33歳女性 1型糖尿病 17年

膵臓移植 健康人

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血圧管理アンジオテンシン変換酵素阻害薬( ACEI)またはアンジオテンシン II 受容体拮抗薬( ARB)を使用

日本人 2型糖尿病を対象にした、 RENAAL Study やINNOVATION Studyでは、尿アルブミン減少効果、腎機能低下抑制がみられた

血圧目標値: 130/80 mmHg 未満(合併症なし)、125/75 mmHg 未満(蛋白尿 1g/日以上)

血圧管理以外に、蛋白制限、脂質管理、禁煙などがある

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血圧の適正化は腎機能低下を予防する

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有病率(%)

100

70605040302010

8090

早朝収縮期血圧

110 120 130 140 150 160 170 180 190 200 210

心臓病

脳卒中

腎症

mmHg

Diabetes Care 25; 2218, 2002

170 人の検討

2型糖尿病患者の家庭の早朝収縮期血圧と合併症の関係

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透析になりやすい人100%

0

透析

時間

蛋白尿が少し

蛋白尿がまあまあ多い

蛋白尿がかなり多い

(血圧)低い 高い

蛋白尿 血圧

糖尿病は高血圧と蛋白尿を合併しやすい

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糖尿病性腎症の stage と大規模臨床試験

第 1 期 第 2期

第 3 期 a 第 3 期 b 第 4期

第 5 期

正常アルブミン尿

微量アルブミン

尿

持続性蛋白尿 透析療法

腎症前期 早期腎症 顕性腎症前期

顕性腎症後期

腎不全期 透析療法期

ROADMAP

IRMA 2

Steno-2

ORIENT

IDNT

RENAAL

DETAIL

TRENDY

J-DOIT3

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ACE-I, ARB は糸球体高血圧を改善する

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喫煙者と非喫煙者の糖尿病性腎症発症率

追跡期間(年)0 2 4 6 8

アルブミン尿が検出されない割合

1

0.8

0.6

0.4

0.2

0

非喫煙者

喫煙者

Diabetes Care 30;1286,2007

糖尿病の喫煙者は 2 倍腎症になりやすい!

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高尿酸血症のリスク(腎障害)・血清尿酸値は慢性腎臓病( CKD )の発症や進展と関係する。・一般集団において高尿酸血症は腎不全の危険因子である。

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第 2 版 p42 改変

Tomita M, et al. J Epidemiol 10: 403-409,2000 より作図Iseki K, et al. Hypertension Res 24: 691-697, 2001 より作図

エビデンス 2b 推奨度 A

エビデンス 2b 推奨度 A

<対象>鉄道会社に勤務する労働者 49,413 人( 1975-1982 、日本)<方法> 984 死亡例(平均 5.4 年観察)の死因と血清尿酸値 8.5mg/dL 以上の

関係を解析した。<結果>血清尿酸値 5.0-6.4mg/dL と比べて 8.5mg/dL 以上では腎不全による

死亡の危険度が高かった。

■ 血清尿酸値と腎不全による死亡

血清尿酸値( mg/dL )

腎不全による死亡における

補正相対危険度

(95

%CI

年齢で補正

**:P<0.01Trend Test

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0.3-4.9 5.0-6.4 6.5-8.4 8.5-13.0

<対象> 1997 年と 1999 年に沖縄県総合保健協会の健診データに登録された男女 6,403 人(日本)

<方法> 2 年間に血清クレアチニン値高値となった人のデータを解析した。<結果>男女ともに血清尿酸値は血清クレアチニン上昇と正相関していた。

■ 血清尿酸値と血清クレアチニン値上昇

*:年齢・ BMI 、血圧、総コレステロール値、血清アルブミン値、血糖値、喫煙、   飲酒、運動、蛋白尿、血尿で補正

血清尿酸値( mg/dL )

Student’s t-test血清クレアチニン値上昇における

補正相対危険度

(95

%CI)

男性( SCr 1.4mg/dL≧ への進展)

女性( SCr 1.2mg/dL≧ への進展)

0

2

4

6

8

10

12

<5.0 5.0-5.9 6.0-6.9 7.0-7.9 8.0-

Page 26: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

血清尿酸値は CKD 発症の予測因子となる

辻裕之 他 : 人間ドック . : 23(3): 533, 2008

尿酸値 5.1 未満  5.1 以上 6.1 未満  6.1 以上 7.1 未満  7.1 以上

1

0.9

0.8

0.7

0.6

0.50 2 4 6 8 10 年

開始時の尿酸値による層別: CKD 発症リスク 開始時の尿酸値による層別: CKD 発症リスク

尿酸値グループ

ハザード比( ):年齢調

整後p値

5.1mg/dL 未満5.1-6.0mg/dL6.1-7.0mg/dL7.1mg/dL 以上

1.001.19 ( 1.25 )1.33 ( 1.47 )1.59 ( 1.84 )

0.03230.0007

<0.0001

( 0.006 )(<0.0001 ) (<0.0001 )•血清尿酸値は eGFR に対して、尿素窒素と同程

度の強さの相関。•開始時尿酸値は、高尿酸血症 (7.1mg/dL 以上 ) のみならず、 5.1mg/dL 以上であれば、 5.1mg/dL未満の群と比較して有意に CKD を新規に発症しやすく、開始時血清尿酸値が高値であるほど、CKD 発症に関するリスクが高かった。

累積無イベント生存率

Page 27: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

腎疾患を引き起こす危険因子としての高尿酸血症の重要性

Iseki K. et al.: Am J Kidney Dis.: 44(4): 642, 2004

女性における ESRD の発症に関する Cox解析

多変数ハザード比( 95% CI )

P

高尿酸血症 *年齢( y )収縮期血圧( mmHg )拡張期血圧( mmHg )BMI ( kg/m2 )タンパク尿トータルコレステロール( mg/dL )トリグリセライド( mg/dL )血清クレアチニン( mg/dL )ヘマトクリット( % )空腹時血糖値( mg/dL )

5.770 ( 2.309-14.421 )0.988 ( 0.955-1.023 )1.003 ( 0.974-1.033 )1.012 ( 0.965-1.062 )0.968 ( 0.870-1.077 )3.925 ( 2.900-5.312 )1.005 ( 0.998-1.012 )1.000 ( 0.997-1.003 )1.701 ( 1.245-2.324 )0.966 ( 0.858-1.088 )1.006 ( 0.996-1.015 )

0.0002NSNSNSNS

< 0.0001NSNS

0.0009NSNS

*ベースラインの血清尿酸値: 6.0mg/dL 以上

ベースラインの血清尿酸値による ESRD の累積頻 度(男性、女性)

10

9

8

7

6

5

4

3

2

1

0

10

9

8

7

6

5

4

3

2

1

0

(受診者 1,000 あたり) (受診者 1,000 あたり)男性 女性

血清尿酸値mg/dL

スクリーン症例数

ESRD 発症症例数

< 7.0 ≧7.0

15617 7332

19 34

< 6.0 ≧6.0

21795 3433

19 31

ES

RD

の累積頻度

Page 28: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

高尿酸血症による腎障害発症メカニズム

久留一郎 : 血圧 .: 14: 272, 2007

尿酸 尿酸

URT などの有機酸トランスポータ

MAPキナーゼERK,

p38MARK

NF- k B, AP1

レニン基質産生過剰NOS の抑制 MCP-1

COX-2( TXA

2 )

PDGF

炎症 血管平滑筋細胞増殖

腎内血管病変全身高血圧

糸球体高血圧

腎障害の発症および腎疾患の進展

:細胞内の経路:細胞外の経路UAT :尿酸トランスポーター /

チャネルERK :細胞外シグナル制御キナーゼ NF-k B :核内因子 κBMCP-1 :単球走化性タンパク質 -1

MAPキナーゼ: マイトジェ ン活性化プロテインキナーゼp38 : p38マイトジェ ン活性化プロテインキナーゼAP1 :アクチベータータンパク質 1 NOS : 一酸化窒素合成酵素PDGF :血小板由来増殖因子

Page 29: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

糖原病と腎障害横紋筋融解を発症する筋型糖原病に伴う急性腎不全

肝型糖原病に分類される糖原病 I型( von Gierke病)に伴う腎合併症

Page 30: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

横紋筋融解症の原因主な原因

外傷 Crush syndrome

運動(非生理的) 痙攣重積、過度な運動負荷

筋虚血 動脈閉塞、意識障害などで四肢の圧迫

代謝性(遺伝性) 糖原病、脂肪代謝異常症、ミトコンドリア病、プリン体代謝異常

感染 インフルエンザ A,B、 EBウイルス、 AIDS、レジオネラ、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム

体温異常 悪性高熱、熱中症、低体温、悪性症候群

酸塩基・電解質異常 電解質異常、アシドーシス

薬剤性 高脂血症治療薬(フィブラート、スタチン)

特発性

Page 31: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

先天代謝異常に起因する横紋筋融解症と腎障害の機序

代謝性基礎疾患 筋細胞への ATP 供給破綻

膜の ATP 依存性ポンプの破綻

細胞内への Na, Cl, 水分の流入

浸透圧上昇

細胞内への Caの流入

Lipase, Proteaseの活性化

横紋筋融解症:筋細胞壊死と細胞内物質の逸脱( CK, Myoglobin, ALT, AST, LDH, Purin, Aldolase, K, Pi)

myoglobin NO

Oxidant injury

1.腎血管収縮2. 遠位尿細管閉塞3. 近位尿細管への虚血、毒素 腎不全

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腎硬化症高血圧が持続して腎臓の細動脈が硬化する。

① 悪性腎硬化症急激な血圧上昇(悪性高血圧:最低血圧130mmHg 以上)のために起こる腎臓の細動脈および糸球体病変。壊死性血管炎(壊死性細動脈炎、壊死性糸球体炎)を伴う。内膜が肥厚(玉ねぎ様)。    腎萎縮、蛋白尿を呈する。

② 良性腎硬化症小葉間動脈や輸入細動脈が硬化する。線維性に肥厚し、硝子様物質が沈着する。壊死性血管炎を伴わない。 悪性腎硬化症への進展を避けるた め、降圧療法。

良性腎硬化症

悪性腎硬化症

小葉間動脈

Page 33: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

自己免疫疾患全身性エリテマトーデス( SLE)

関節リウマチ

結節性多発動脈炎( PN)

Wegener肉芽腫症

ANCA関連腎炎

Sjögren症候群

紫斑病性腎炎

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ループス腎炎( LN)多彩な腎病変を呈する

免疫複合体の沈着があっても、臨床的に SLEの診断がされないと LNとは診断できない

代表的な病理像は“ワイヤーループ病変”と“半月体形成”を伴うような活動性の高いび慢性 LN

Page 35: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

LNの腎炎組織分類( ISN/RPS)抜粋

Class I 軽微メサンギウム変化Class II メサンギウム増殖性ループス腎炎Class III 巣状ループス腎炎Class IV び漫性ループス腎炎( LNの代表的組織像)Class V 膜性ループス腎炎Class VI 進行性硬化性ループス腎炎

International Society of Nephrology/Renal Pathology Society (ISN/RPS)

免疫複合体の沈着が必須WHO分類も広く使用されてきた

Page 36: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

LNの予後と治療発症頻度は明らかではないが、約 20%が透析導入される

透析導入されても SLEの治療の継続が必要なことが多い

全経過で LNを発症しない SLEもある

LNを合併した SLEの予後は悪い

治療は SLEの治療が基本、 LNの発症期にはステロイドパルス、免疫抑制剤パルス、ステロイド、免疫抑制薬の維持療法が行われる

Page 37: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

RAでみられる尿異常・腎機能障害

尿異常は 20~40%にみられる(血尿が多い)

蛋白尿は 0.5g/日未満と少量が多い( 80-90%)

GFRは 30-60ml/minと軽度低下であることが多い( 70-80%)

上記は罹病期間や治療薬剤に影響する

Page 38: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

関節リウマチに合併する腎障害(1)

原因病態による分類 病理組織学的所見など

【 1 】関節リウマチ固有の腎障害

  1. メサンギウム増殖性糸球体腎炎

日本では IgA 沈着、欧米は IgM 沈着

  2. 糸球体基底膜のび漫性菲薄化

  3. 続発性アミロイドーシス( AA)

急性期反応蛋白の血清アミロイド A蛋白( SAA)の分解産物の AAが腎臓に沈着予後不良(全身に沈着するから)

【 2 】関節リウマチや他の膠原病に合併 する腎障害

  1.悪性関節リウマチ

  2.Sjögren症候群 間質性腎炎、遠位尿細管性アシドーシス

  3.SLE ループス腎炎

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関節リウマチに合併する腎障害 (2)原因による分類 病理組織学的所見

【 3 】薬剤性腎障害

(1)鎮痛薬

 1.アスピリン 腎乳頭壊死、間質性腎炎

 2.非ステロイド性抗炎症薬( NSAIDs)

急性尿細管壊死、間質性腎炎、微小変化型

 3.選択的 COX-2 阻害薬 膜性腎症、微小変化型、間質性腎炎

(2)抗リウマチ薬

 1.金製剤 膜性腎症

 2. D-ペニシラミン 膜性腎症、微小変化型、薬剤性ループスによる腎炎、 ANCA陽性半月体形成性糸球体腎炎

 3.ブシラミン 膜性腎症、微小変化型、 ANCA陽性半月体形成性糸球体腎炎

 4.ロベンザリット 間質性腎炎( 10-30%)

 5.カルシニューリン阻害薬 内皮細胞障害による血栓性微小血管症( TMA)、尿細管萎縮、間質の線維化

 6. TNF-α 阻害薬 膜性腎症、間質性腎炎、 SLEに伴う腎炎、 ANCA陽性半月体形成性糸球体腎炎

Page 40: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

RAに伴う腎病変の病理組織と頻度海外 (%)( Helin HJ,

1995)

日本 (%)( Nakano M,

1998)

メサンギウム増殖性糸球体腎炎 36 34

アミロイドーシス 30 19

膜性腎症 17 31

巣状糸球体硬化症 4 2

微小変化型 3 13

急性間質性腎炎 1 1

腎硬化症 2 -

糖尿病性腎症 2 -

正常 5 -

Page 41: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

血管径による腎血管炎の分類

大動脈

腎動脈

葉間動脈弓状動脈

小葉間動脈 毛細血管 細静脈 静脈

輸入細動脈

炎症性腹部大動脈瘤高安動脈炎Buerger病側頭動脈炎

古典的多発動脈炎

血管 Behcet病 血管 Behcet病

ANCA関連血管炎 Wegener肉芽腫症  Churg-Strauss症候群 顕微鏡的多発血管炎

原発性クリオグロブリン血管炎川崎病血管炎 リウマトイド血管炎

ループス血管炎Schonlein-Henoch紫斑病

大血管炎 中型血管炎 小型血管炎

一次性血管炎

二次性血管炎

Page 42: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

結節性多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎の比較

結節性多発動脈炎 顕微鏡的多発血管炎

罹患血管 中 ~小型の筋型動脈、時に細動脈 細動脈、毛細血管、細静脈

病理所見 壊死性血管炎、結節形成 壊死性血管炎、白血球破砕性血管炎

主要症候

 発熱 39 ℃台の抗菌薬不応性弛張熱 時に微熱程度のことがある

 腎症 糸球体腎炎(−)、蛋白尿・血尿( ±)

半月体形成、蛋白尿・血尿(+++)

 高血圧 高頻度 まれ

 肺病変 まれ 多い(肺出血、間質性肺炎)

 皮膚病変 潰瘍(下肢) 潰瘍はまれ、有痛性紫斑

  MPO-ANCA 陰性(ごくまれに陽性) 陽性( 50-75%)

 血管造影 小動脈瘤・狭窄 正常

 確定診断 血管造影または生検 生検polyarteritis (PN), microscopic polyangiitis (MPA)

Page 43: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

PNとMPAの治療・予後ステロイド(パルス含む)、免疫抑制薬、血漿交換( PN)

PNは多くの症例が半年以内に死亡し、 1年以内の死亡率が 45%, その後の死亡率は低下。主な死因は呼吸不全、腎不全、心不全、消化管出血。

MPAは半年以内に 30%が死亡、 1年以内の死亡率は 35%,主な死因は感染症、肺出血、腎不全

MPAの予後は限局型>全身型である

Page 44: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

Wegener肉芽腫症三主徴:①上気道(鼻、眼、耳、咽喉頭)②下気道(肺)③腎や皮膚など、の肉芽腫性炎症、原因不明の血管炎

40-60歳代の中高年に多く、性差はない

肉芽腫性変化 C-ANCA(または PR3-ANCA)が 70-80%に陽性P-ANCA(またはMPO-ANCA)が 20-30%に陽性(日本)

Page 45: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

WGの主病変と進展過程耳 眼鼻・副鼻腔壊死性鼻炎

肺肉芽腫症壊死性血管炎

結節性多発動脈炎壊死性血管炎

腎壊死性半月体形成性腎炎

壊死性血管炎

壊死性血管炎

肉芽腫性炎

E

L

K

nasal stage

限局型WG

全身型WG

治療はストロイド、免疫抑制剤

Page 46: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

ANCA関連腎炎抗好中球細胞質抗体( ANCA (anti-neutrophil cytoplasmic

autoantibody))が関与していると考えられる血管炎が原因

診断・治療が遅れると急速進行性腎炎( rapidly progressive glomerulonephritis: RPGN)症候群をきたす予後不良の疾患

MPA, Churg-Strauss syndrome (CSS), WGの 3疾患が含まれる

MPO-ANCAと PR3-ANCA

日本ではMPO-ANCA関連血管炎の頻度が高い(高齢者が多い)

Page 47: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

ANCA関連腎炎の組織像 糸球体毛細血管の壊死

病変が軽度であれば、壊死部は少数の糸球体(巣状)に部分的(分節性)に認められるのみで、巣状・分節性壊死性糸球体腎炎( focal segmental necrotizing glomerulonephritis)と呼ばれる

病変は急性期で高度の場合、糸球体の半分以上に細胞性の管外性増殖を認め壊死性半月体形成性腎炎(necrotizing crescentic glomerulonephritis)

細胞性半月体は慢性化すると線維細胞性、さらに線維性半月体となり、ついには糸球体硬化となる

糸球体のみならず、細動脈や小葉間動脈、弓状動脈にも壊死性血管炎を認めることがある

Churg-Strauss症候群では肉芽腫と好酸球浸潤を認める

WGでは糸球体病変に加え、尿細管・間質に肉芽腫を認める

Page 48: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

RPGN (MPO ANCA関連)72y, M H/B; 159cm / 67.3kgCr/BUN; 3.4mg/dl / 40mg/dl尿蛋白 ; 1.3g/dl尿潜血 ; 50-99/ HPFWBC/ CRP; 6100/ul / 0.74mg/dlMPO-ANCA; 312EU尿 β2MG; 2830ug/l

PAS x400

Page 49: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

ANCA型 RPGNの治療プレドニゾロンのパルス療法を含めた副腎ステロイド

薬、免疫抑制薬(シクロホスファミドなど)、抗血小板薬、抗凝固薬、血漿交換の併用

感染症の合併率が高く、特に高齢者では慎重に

全ての RPGNの腎生存率2年で80%ほど、生命予後は 70-80%(死因の 50%前後が感染症)

Page 50: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

Sjögren症候群の腎病変Sjögren症候群患者の約 30%に腎病変が出現

間質性腎炎(最も多い)、メサンギウム増殖性腎炎、膜性腎炎、半月体形成性腎炎など

臨床的に問題になる場合は多くない

生検が施行された間質性腎炎では、浸潤細胞の大半はCD4陽性 T細胞で本疾患の唾液腺組織に類似

尿細管性アシドーシス(遠位型: type I、近位型:type II)、本症では遠位型が多い

Page 51: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

尿細管性アシドーシス( RTA)

尿 pHが 6.5 以上でありながら、アニオンギャップ正常の高Cl性代謝性アシドーシスを呈する場合は RTAを疑う

遠位型( type I):遠位尿細管での H+分泌が障害され、塩化アンモニウム負荷試験にて尿を酸性化( pH5.5 以下)することができない。集合管におけるH+/K+ ATPaseの欠損も報告され、H+の分泌障害と同時に K+の再吸収障害を生じ、低 K血症を生じる。低 K血症から筋力低下、脱力、麻痺、イレウス、心筋障害などを引き起こす。脱力発作から本症の初発症状であることもある。

近位型( type II):近位尿細管での HCO3-の再吸収障害、

同時にアミノ酸、糖、リン酸の再吸収が障害され、時にFanconi症候群を示す。塩化アンモニウム負荷試験は正常反応。

Page 52: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

腎尿細管性アシドーシスpRTA (II型)

dRTA( I型)

Hyper K dRTA( IV型)

Hybrid RTA( III型)

血漿 HCO3- 8〜 20 mM/L

10〜 15 10〜 15 8〜 15

血清 K 正常か低下 低下 上昇 低下

尿 pH < 5.5 > 5.5 > 5.5 < 5.5

尿 NH4 正常 低下 低下 正常か低下

尿 Ca 正常 増加 増加 正常か低下

尿中クエン酸

正常か増加 低下 正常 正常

アルカリ補充時の %FEHCO3-

> 10〜15%

< 3〜 5 < 5 > 10〜 15

U-B PCO2 > 20 mmHg

< 15 mmHg

< 15 mmHg 10〜 20 mmHg

腎石灰化 ー + + ー /+

Page 53: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

遠位尿細管細胞における水素イオン排泄過程

H+-ATPase

H+-K+ ATPase

Cl-/HCO3-

exchanger

CO2 + H2O

CAII

Cl-

H2CO3

HCO3-

H+

K+

CAII: carbonic anhydrase

Cl-

H+

Cl- channel

管腔側 血管側

Page 54: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

近位尿細管細胞における重炭酸イオン再吸収機序

Na+/H+ exchanger

Na+-K+ ATPase

Na+/HCO3-

cotransporter (kNBC)

CO2 + H2O

CAII

Na+

H2CO3

HCO3-

H+

K+

CAII: carbonic anhydrase

Na+

管腔側 血管側

HCO3-

H+

H2CO3

Na+

CAIV

CO2 + H2O

Page 55: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

強皮症と腎障害強皮症腎クリーゼ

①高血圧性腎クリーゼ:悪性高血圧に類似、腎葉間動脈~小葉間動脈に同心円状の内膜肥厚による狭窄、血栓閉塞、糸球体の虚脱、高レニン血症

②MPO-ANCA陽性腎クリーゼ

③微小血管障害性溶血貧血を呈する腎クリーゼ( TTP様)

治療は ACEI や ARBを中心とした降圧(①)、ステロイドや免疫抑制薬(②、③)、血漿交換(③)

Page 56: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

紫斑病性腎炎Henoch-Schönlein purpura (HSP)に合併した腎炎(HSPN)

組織学的・免疫学的に IgA腎症に類似

病因は感染(溶連菌が多い)、薬剤などが関与していると考えられるが、詳細は不明

小児に多く 2:1で男児に多い

紫斑、腹部症状(腹痛)、関節症状、腎炎が四徴

治療は副腎皮質ステロイドが中心、病状により免疫抑制剤も併用

予後:成人では 13-16%で腎不全に至る(小児は 5%程度)

Page 57: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

パラプロテイン血症多発性骨髄腫

アミロイドーシス

クリオグロブリン血症

Page 58: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

多発性骨髄腫

cast nephropathy

Page 59: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

アミロイドーシス全身の臓器の細胞外に難溶性のアミロイド線維が沈着し、機能障害を引き起こす一連の疾患群

アミロイド線維が糸球体や血管壁に沈着し、ネフローゼや腎機能低下をきたすことを腎アミロイドーシス

免疫細胞性アミロイドーシス( amyloid light chain, ALと amyloid heavy chain, AH)と反応性アミロイドーシス( AA)がある。

腎アミロイドーシスはほとんど ALと AAによる

コンゴレッドでアミロイドは染色される

Page 60: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

アミロイド腎症原疾患(アミロイドーシス)のアミロイド(免疫グロブリンの変性物)が腎に沈着する。「症状」 蛋白尿、ネフローゼ、慢性腎不全「予後」 進行性で予後不良、平均余命は一年。「参考」 慢性糸球体腎炎は腎の萎縮を認めるが、糖尿病性腎症やアミロイド腎症では腎萎縮を認めない。

60

コンゴレッド

腎臓のみに限局するものは予後は悪くないが、心臓など多臓器にわたるものは特に予後不良

Page 61: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

クリオグロブリン血症 寒冷で沈殿し37℃に加温すると再溶解する異常蛋白で、構成成分は免疫グロブリン

健常人にはほとんど存在しない

血管内で沈降物が形成されることによる小血管の血管炎で、免疫複合体型血管炎を呈する

皮膚、関節、神経、腎臓が侵され、症状は多彩

I型クリオグロブリン血症:モノクローナル Ig 自体が寒冷沈殿、Bリンパ球系の悪性腫瘍などが原因

II型クリオグロブリン血症:モノクローナル Igとポリクローナル IgGの混合で、血液疾患や膠原病に合併。最も多い原因はHCV 感染症

III型クリオグロブリン血症:2つのポリクローン性 Igの混合型からなる

Page 62: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

その他溶血性尿毒症症候群

血栓性血小板減少性紫斑病

ウイルス性肝炎

電解質異常

HIV関連腎障害

感染症関連(MRSA腎炎など)

悪性腫瘍と腎障害

薬剤性腎障害

Page 63: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

血栓性微小血管障害症Thrombotic microangiopathy (TMA)は細血管障害性溶血性貧血、破壊性血小板減少、血小板血栓による臓器機能障害(特に腎不全)の3徵からなる「病理学的診断名」

代表的疾患として溶血性尿毒症症候群( hemolytic uremic syndrome: HUS)と血栓性血小板減少性紫斑病( thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP)で、両者は臨床症状のみで鑑別は困難

HUS、 TTPいずれも先天性と後天性がある

Page 64: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

HUS(後天性)HUSの 90%が後天性

57が有名

病原性大腸菌(ベロ毒素産生)

治療は抗菌薬と保存的治療(体液管理、透析、血漿交換を行うこともあるが、効果について一定の評価なし)

Page 65: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

TTP 3徵に発熱、動揺性精神神経障害を加え 5徵

先天性 TTPは ADAMTS13 (a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)遺伝子異常による同酵素活性欠損

後天性 TTPは ADAMTS13 活性低下と ADAMTS13に対する自己抗体陽性で診断できるものと(定型的)、活性は正常であるが 5徵から診断されるもの(非定型的)、がある

先天性のものは定期的に新鮮凍結血漿の投与( ADAMTS13の補充)

後天性のものは、副腎皮質ステロイド(パルス含む)、免疫抑制薬、血漿交換

Page 66: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

ウイルス性肝炎 B型肝炎ウイルス関連腎症→膜性腎症

血中HBs抗原や HBc抗体が陽性などの B型肝炎ウイルスの感染が持続的に認め、いずれの組織像であっても、ウイルス関連抗原が免疫グロブリンや補体成分とも同様の沈着パターンで糸球体に沈着

C型関連ウイルス関連腎症→膜性増殖性糸球体腎炎

通常ネフローゼをきたし、 70%の症例にクリオグロブリン血症、低補体血症、リウマチ因子陽性

両者ともにステロイド、免疫抑制薬は肝炎の悪化をきたす可能性があり、慎重に検討。インターフェロン治療により肝炎ウイルスが消失・減少すれば腎炎も改善する可能性あり。

Page 67: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

HIV関連腎障害 HIV associated nephropathy (HIVAN)

慢性、進行性の腎機能障害、蛋白尿(時にネフローゼ)

病理では、糸球体の虚脱と分節性の硬化( collapsing focal segmental sclerosis)、上皮の過形成、嚢胞状の尿細管拡張

HIV-immune-complex kidney disease (HIVICK)

典型的にはC型肝炎ウイルスなどとの重複感染患者にみられる。免疫反応が原因か

HAARTに伴う腎障害

薬剤性腎障害→間質性腎炎、結晶による結石・閉塞、 Fanconi症候群

Page 68: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

MRSA腎炎腎病理組織所見→糸球体:半月体形成を伴うびまん性

メサンギウム増殖、または管内増殖性糸球体腎炎、 IgAがメサンギウム領域に陽性となり、末梢の係蹄壁に沈着。 IgG や C3が陽性となることも多い

間質:高頻度に間質炎

約 20%が末期腎不全

治療は抗菌薬が基本。感染症がコントロールされ、腎炎が残る場合はステロイドも使用。

Page 69: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

悪性腫瘍と腎障害 腫瘍の直接的機序

腫瘍細胞の腎内への直接浸潤、尿路の閉塞、腎血管系の圧迫

腫瘍の間接的機序

腎石灰化、電解質異常、DIC、尿路感染症

骨髄腫による cast nephropathy

免疫学的異常(paraneoplastic glomerulopathy)

治療誘発性

腫瘍融解症候群

抗がん剤などの薬剤による腎障害

放射線腎症

Page 70: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

尿細管間質性腎病変の分類(WHO)

1. 感染性 A. 急性腎盂腎炎:細菌、真菌、ウイルス

B. 全身感染症に伴う急性尿細管間質性腎炎:A型溶連菌、ジフテリア、トキソプラズマ、ウイルスなど

C. 慢性腎盂腎炎

D. 特殊な腎感染症:結核、梅毒など

2. 薬剤性腎症 A. 急性薬剤性尿細管傷害

B. 薬剤性過敏症

C. 慢性薬剤性尿細管間質性腎炎:非ステロイド性解熱鎮痛薬、リチウムなど

3. 免疫学的尿細管間質性腎炎 A. 全身性エリテマトーデス

B. シェーグレン症候群

その他

4. 閉塞性腎疾患 水腎症

5. 逆流性腎症

6. 乳頭壊死を伴う尿細管間質性腎炎

A. 糖尿病性腎症

B. 解熱鎮痛薬腎症

その他

Page 71: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

7. 重金属性尿細管障害 鉛、水銀、カドミウム、など

8. 急性尿細管壊死 中毒性、虚血、ショック、敗血症、ミオグロブリン血症、など

9. 代謝性尿細管間質性病変 A. 高カルシウム性腎症

B. 痛風腎

C. 低カリウム性腎症

D. 蓚酸腎症

その他

10. 遺伝性尿細管間質性腎症

11. 悪性疾患に伴う腎症 A. ミエローマ腎症

B. マクログロブリン血症

C. クリオグロブリン血症

D. 白血病、リンパ腫の浸潤

12. 血管性尿細管間質病変

13. その他の原因による A. 放射線腎症

B. サルコイドーシス

その他

Page 72: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

急性間質性腎炎急性に間質(尿細管どうしの間)が侵される腎炎のこと。「病因」急性腎盂腎炎、特発性間質性腎炎薬剤性( β ラクタム系、メチシリン)「病理」  間質の浮腫、リンパ球の浸潤。「症状」  突然、原因不明の急性腎不全症状を呈する。    尿細管機能障害(電解質異常、濃縮力障害)「検査」  好酸球増加(血中および尿中)「治療」 重症には、副腎皮質ステロイド。

72

好酸球

Page 73: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

Bartter症候群低 K血症、代謝性アルカローシス、高レニン血症、高アルドステロン血症などを特徴とする尿細管機能障害によって生じる症候群

Gitelman症候群は Bartter症候群の異常に加え、低Mg血症と低 Ca尿症を伴う。

Page 74: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

太いヘンレ上行脚におけるイオンチャネルと輸送体

血液尿 paracellin-1

paracellin-1

Mg2+

Mg2+

Na+

2Cl-

K+

Cl-

K+

Cl-

3Na+

2K+ATPase

ClC-Kb

ClC-Ka

Barttin

NKCC2

ROMK

Type 1

Type 2

Type 3

Type 4

Type 4b(5)

Clチャネルの異常

Kチャネルの異常

Clチャネルの異常

NKCC2はフロセミド(ループ利尿薬)の作用点

Page 75: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

遠位尿細管におけるイオンチャネルと輸送体

血液尿

Mg2+Mg2+

Na+

Cl-

K+Cl-

Cl-

3Na+

2K+ATPase

ClC-Kb

ClC-Ka

Barttin

NCCT

ROMK

Type 3

Type 4

Type 4b(5)

Clチャネルの異常

EcaC

TRPM6

Ca2+

Na+

Gitelman

NCTTはサイアザイド系利尿薬の作用点

Page 76: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

Bartter症候群とGitelman症候群の遺伝子異常

1型 2型 3型 4型 4B(5)型 Gitelman

病因遺伝子

SLC12A1

KCNJ1 CLCNKB BSND CLCNKA and KB

SLC12A3

蛋白 NKCC2 ROMK ClC-Kb Barttin ClC-Ka, CiC-Kb

NCCT

Page 77: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

Bartter症候群・ Gitelman症候群・偽性 Bartter症候群

Bartter症候群 Gitelman症候群

偽性 Bartter症候群

発症 新生児期、幼児期 小児期〜思春期以降 思春期以降の女性に多い

臨床症状 重症 比較的軽症 軽症〜重症

代謝性アルカローシス

あり あり あり

低 K血症 あり あり あり

低 Mg血症 頻度は低い あり 頻度は低い

尿中 Ca排泄 正常〜増加 減少 正常〜増加

随伴症状 腎石灰化、感音性難聴、CLCNKB異常では低 Mg

血症、低 Ca尿症を伴うことがある

テタニー、関節石灰化 習慣性嘔吐、下剤の乱用では尿中 Cl排泄低下

最大水利尿時利尿薬反応性

Furosemideに反応性低下

Thiazide系に反応性低下

Furosemide, Thiazideに正常反応

原因 NKCC2, ROMK, CLCNKB, Barttin, Ca-sensing receptorの遺伝子異常

TSCの遺伝子変異 Furosemide乱用、習慣性嘔吐、下剤乱用などによる

Page 78: 1. 腎障害をきたす全身性疾患 2. 尿細管障害

Liddle症候群 低 K血症、 Na貯留による高血圧、代謝性アルカローシス、血漿レニン

活性とアルドステロンが低値が特徴

腎集合管にあるアミロライド感受性上皮型 Naチャネル( ENaC)の機能亢進性の変異→ ENaCの発現量が増え、管腔側での Na+の取込が増大、基底膜側の Na+/K+-ATPaseが亢進する。その結果、血管側にNa+が取り込まれるとともに、細胞内 K+濃度が上昇するため、管腔側の Kチャネルを通して尿中へ排泄される。この結果、低 K血症と Na増大による低レニン・低アルドステロンの高血圧を呈する。

ENaC

Na+

Na+ K+

K+

K+