市民の森病院 膠原病・リウマチセンターニュース Word -...

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市民の森病院 膠原病・リウマチセンターニュース 第 28 号(2017 年 6 月号[2017/6/12])毎月第 1 月曜発行 促進され、骨に存在するカルシウムが血液の中に溶 け出すことで、血中のカルシウム濃度が上がりま す。普通に考えると、骨吸収を促す副甲状腺ホルモ ンが骨粗しょう症治療薬になることは考えられま せん。しかし、副甲状腺ホルモンの投与方法によっ ては骨密度を上昇させることが分かっています。そ の方法とは、「途切れ途切れ、断続的に PTH を投与 する」という方法です。一時的に投与する方法での み PTH の濃度を上昇させると、その逆に骨の形成が 促進されます。PTHの作用として「骨を作る細胞(骨 芽細胞)を増やす作用」や「骨芽細胞の自然死を抑 える作用」などもあり、この「骨を作る作用」のみ が引き出されたと考えられます。つまり、断続的に 投与することによって「血液中にカルシウムが溶け 出す作用」よりも「骨芽細胞が作られることによっ て、骨形成が促進される作用」の方を引き出すこと を可能としました。 このように、PTH によって骨形成を促進させる骨 粗しょう症治療薬としてテリパラチド(商品名:フ ォルテオ、テリボン)があります。フォルテオは 1 日 1 回自己注射する製剤であり、テリボンは 1 週 間に 1 回病院で皮下注射する製剤と、投与間隔に違 いがあります。なお、骨粗しょう症治療薬であるテ リパラチドは、投与量を多くしたり投与期間を長く したりすると、それに応じて骨肉腫の発生確率が高 くなることがラットを使った実験で明らかになっ リウマチ科に通院中のみなさんは、いかがお過ご しでしょうか?そろそろ梅雨入りで湿気の多い日 が続きます。体調管理には十分注意しましょう。前 号までは、骨粗しょう症治療薬の中でも骨を壊す細 胞の働きを弱めるお薬についてお話をさせて頂き ました。今回は骨を作る細胞の働きを強めるお薬で ある副甲状腺ホルモン(PTH)製剤についてお話を致 します(図 1)。 PTH 製剤 以前の号より述べているように、骨は骨が新しく 作られる過程(骨形成)と骨が壊される過程(骨吸 収)を常に繰り返しています。骨粗しょう症ではこ の骨形成と骨吸収のバランスが崩れており、骨粗し ょう症治療薬はこの骨代謝のバランスを正常な状 態へ近づけるように作用します。前回までは骨吸収 を抑制するお薬をお話ししてきましたが、今回は、 骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを強めて骨形成を 促して骨粗しょう症を治療するお薬、すなわち、骨 形成促進薬である、副甲状腺ホルモン(PTH)製剤 であるテリパラチド(商品名:フォルテオ、テリボ ン)のお話をいたします。 お薬のお話をする前に、まず PTH のお話をします。 ホルモンの中には骨代謝に関わっているホルモン が存在します。このホルモンの一つとして、PTH が あります。PTH が常に分泌されることで、骨吸収が (裏面へ続く) 図 1 骨粗しょう症の治療薬 浦部晶夫 島田和幸 川井眞一編 今日の治療薬 2012 解説と便覧 p435-442 (南江堂), 2012 より改変

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市民の森病院 膠原病・リウマチセンターニュース

第 28 号(2017 年 6 月号[2017/6/12])毎月第 1 月曜発行

促進され、骨に存在するカルシウムが血液の中に溶

け出すことで、血中のカルシウム濃度が上がりま

す。普通に考えると、骨吸収を促す副甲状腺ホルモ

ンが骨粗しょう症治療薬になることは考えられま

せん。しかし、副甲状腺ホルモンの投与方法によっ

ては骨密度を上昇させることが分かっています。そ

の方法とは、「途切れ途切れ、断続的に PTH を投与

する」という方法です。一時的に投与する方法での

み PTH の濃度を上昇させると、その逆に骨の形成が

促進されます。PTH の作用として「骨を作る細胞(骨

芽細胞)を増やす作用」や「骨芽細胞の自然死を抑

える作用」などもあり、この「骨を作る作用」のみ

が引き出されたと考えられます。つまり、断続的に

投与することによって「血液中にカルシウムが溶け

出す作用」よりも「骨芽細胞が作られることによっ

て、骨形成が促進される作用」の方を引き出すこと

を可能としました。

このように、PTH によって骨形成を促進させる骨

粗しょう症治療薬としてテリパラチド(商品名:フ

ォルテオ、テリボン)があります。↑フォルテオは

1 日 1 回自己注射する製剤であり、テリボンは 1 週

間に 1 回病院で皮下注射する製剤と、投与間隔に違

いがあります。なお、骨粗しょう症治療薬であるテ

リパラチドは、投与量を多くしたり投与期間を長く

したりすると、それに応じて骨肉腫の発生確率が高

くなることがラットを使った実験で明らかになっ

リウマチ科に通院中のみなさんは、いかがお過ご

しでしょうか?そろそろ梅雨入りで湿気の多い日

が続きます。体調管理には十分注意しましょう。前

号までは、骨粗しょう症治療薬の中でも骨を壊す細

胞の働きを弱めるお薬についてお話をさせて頂き

ました。今回は骨を作る細胞の働きを強めるお薬で

ある副甲状腺ホルモン(PTH)製剤についてお話を致

します(図 1)。

PTH 製剤 以前の号より述べているように、骨は骨が新しく

作られる過程(骨形成)と骨が壊される過程(骨吸

収)を常に繰り返しています。骨粗しょう症ではこ

の骨形成と骨吸収のバランスが崩れており、骨粗し

ょう症治療薬はこの骨代謝のバランスを正常な状

態へ近づけるように作用します。前回までは骨吸収

を抑制するお薬をお話ししてきましたが、今回は、

骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを強めて骨形成を

促して骨粗しょう症を治療するお薬、すなわち、骨

形成促進薬である、副甲状腺ホルモン(PTH)製剤

であるテリパラチド(商品名:フォルテオ、テリボ

ン)のお話をいたします。

お薬のお話をする前に、まず PTH のお話をします。

ホルモンの中には骨代謝に関わっているホルモン

が存在します。このホルモンの一つとして、PTH が

あります。PTH が常に分泌されることで、骨吸収が

(裏面へ続く)

図 1 骨粗しょう症の治療薬

浦部晶夫 島田和幸 川井眞一編 今日の治療薬 2012 解説と便覧p435-442(南江堂),2012 より改変

付13:30〜)に市民の森病院・検診センター1階で

開催します。講演内容として、①医療ソーシャル

ワーカー今村絵梨香氏より「知って得する社会福

祉制度」、②リウマチケア看護師芦澤麻土香看護師

より「リウマチケア看護師について」③私(日高利

彦)より「最近の関節リウマチの診断と治療」と題

して医療講演を行います。講演終了後には Q&A セ

ッションも実施予定です。

みなさま、お誘い合わせの上、お気軽にご参加

下さい。なお、席に限りがありますので、ご参加

ご希望の方は受付または看護師にお問い合わせ下

さい。

通常のリウマチ教室につきましても、本年度は

開催しますので、こちらも振るって参加頂けると

幸いです。

以上、今回も前回に引き続き、骨粗鬆症の治療

薬についてのお話をさせていただきました。次回

は、新しく使用できるようになった骨粗鬆症の治

療薬であるゾレドロン酸水和物について、お話を

していきたいと思います。また、お知りになりた

いこと、聞いてみたいことがありましたら、いつ

でも御意見頂けると幸いです(御意見箱もご利用

ください)。

また来月、紙面でお目にかかりましょう。

(日高利彦)

ています。そのため、テリパラチド製剤はずっと使

い続ける事の出来る薬ではなく、投与期間が決めら

れている薬です。投与期間について、以前は、フォ

ルテオが 2 年、テリボンが 1 年半でしたが、2017 年

5 月よりテリボンも 2 年投与することが可能になり

ました。

当院医療ソーシャルワーカーの遠藤亮平氏が『南九州リウマチを考える会』で講演しました さる平成 29 年 5 月 20 日(土)、TKP ガーデンシティ

鹿児島中央で第 3 回南九州リウマチを考える会が開

催されました。その中で、当院の医療ソーシャルワ

ーカー遠藤亮平先生が「RA 治療における医療ソーシ

ャルワークの価値-チーム医療の観点から-」という

演題名で講演を行いました。出席された多くの先生

からの多くの反響を頂きました。遠藤氏の今後の更

なる活躍を期待致します。

リウマチ教室(特別編)を開催します 当院では月 1回(第 3月曜日)、リウマチ教室を開

催しています。今回、より多くの患者様、ご家族様

に関節リウマチについての理解を深め、より良い療

養を行っていただきたく、年 2 回リウマチ教室(特

別編)を実施することになりました。本年度は平成

29 年 8 月 19 日(土)と平成 29 年 12 月 16 日(土)

に予定をしました。

平成 29 年 8 月 19 日(土)のリウマチ教室につきま

しては別途案内しておりますが、14:00〜16:00(受

リウマチ教室のご案内 毎月第3月曜(祝日などにより変更の可能性があります)午後2時〜3時に市民の森病院4階図書研修室で実施しております。関心のある方はふるってご参加下さい。【リウマチ教室のスケジュール(2017 年 6 月〜2017 年 8 月)】 H29.6.19 「関節リウマチの治療-NSAIDs,ステロイド薬,抗リウマチ薬-」 医師 日高利彦(第 192 回)「感染症について」 看護師 谷口明日香H29.7.10 「関節リウマチの治療-生物学的製剤-」 医師 日高利彦(第 193 回)「医療制度について」 事務 西村H29.8.21 「関節リウマチの治療-白血球除去療法-」 医師 日高利彦(第 194 回)「リウマチ関連のお薬について」 薬剤師 山川史子

リウマチセンターニュースのバックナンバーの必要な方は当院の職員に気軽にお尋ね下さい。なお、当院のホームページでもバックナンバーを確認出来ます。(http://www.m-zenjin.or.jp/shimin/magazines)

臨床治験のご案内 当院では「関節リウマチ」の患者さんを対象とした、臨床治験を実施しております。治験によって審査基準は異なりますが、基準に合致する場合は、無料で新しい治療を受けることができます。医師にでも看護師にでもいつでも気軽にお問い合わせ下さい。【治験とは】 新しい薬が広く一般の患者さんに使われるようになるには、その薬の安全性と効果を確認することが必要です。治験とは、患者さまに御協力いただき、その薬の安全性と効果を詳しく調べる臨床試験のことです。

*** 2017 年 8 月 19 日(土)に院内リウマチ医療講演会を開催します(第 2 報) *** 当院において、2017 年 8 月 19 日(土)午後に、関節リウマチの患者さんを対象として、リウマチ医療講演

会を予定しております。医師の講演、看護師の講演、医療相談などを行う予定です。参加費は無料です。詳

しくは近々ご案内差し上げます。この会につきましてご要望がありましたら、ご遠慮なく御意見頂ければ幸

いです(ご意見箱を利用して頂いても当院スタッフに直接伝えて頂いても構いません)。