± Û[b z /$×^ Ûg C«îÃî§ å«Á «¡îÝb v) - zeze-h.shiga-ec.ed.jp€¦ · Û*f q ·\KZ B...

62

Transcript of ± Û[b z /$×^ Ûg C«îÃî§ å«Á «¡îÝb v) - zeze-h.shiga-ec.ed.jp€¦ · Û*f q ·\KZ B...

1

大学での主体的な学びを導くスーパーサイエンスハイスクールの取組

滋賀県立膳所高等学校長 草野 圭司

平成23年にスーパーサイエンスハイスクール2期目の指定を受け、以来、文部科学省、JST、県教

育委員会、運営指導委員会、大学や研究機関の関係者の皆様のご支援を頂きながら、今年度で2期目5年

間の事業を終えることができました。本校にとって、通算10年目となる今年のSSH本体の取組は、安

定した展開の中で、確実な運営が子どもたちの意欲の向上、能力の伸長を導いているように思います。

私たちは、SSH2期目に取り組むにおいて、次の3つの仮説を設定しました。

①課題の設定・探究・表現といった一連の学習は、自ら深く学ぶ力を育成し、学力の伸長に効果がある。

②大学や研究機関等での先進的な理数教育は、科学的思考力・態度や国際性を育成することに効果がある。

③探究型・参加型の授業の実践は、科学的な思考力・表現力を高め、学びの意欲を引き出すことに効果が

ある。

これらの仮説を、本校の2期目の取組において、果たして実証することができたのでしょうか。

理数科の「課題研究」、「探究S」、普通科の「探究」といった探究的な学習は、指導計画として確立

し、学習活動として成果をあげていると思います。自分で設定した課題を解き明かそうとする積極的な研

究活動は、その取組の中で知識技能を豊かにし、試行錯誤しながら、教科科目の学習内容を活用する力や

根拠を明らかにして判断する力を高めていると思います。

高大連携を中心にした先端の科学を学び、また、その研究の現場で活動した体験は、科学を研究するこ

とに対するあこがれを生み出し、科学的に筋道だてて思考する力を向上させ、高いレベルの研究が英語で

のやり取りの中でより高められることへの自覚とそれに伴う努力を促します。

様々な教科で、探究型・参加型の授業を実践し、自分で考える姿勢を育て、思考の根拠や方法を追求さ

せることによって、客観的で原理に基づく思考をする力を高め、思考の過程を正確に説明する表現力を育

みます。

以上のことから、仮説は実証できたと考えています。つまり、生徒たちは、学ぶ意欲、自ら深く学ぶ力

を獲得し、科学的な思考力や科学的な表現力、科学的に考える姿勢や態度、国際性を、SSHの様々な活

動を通して身に付けてきたということだと思います。

今年度は、2期目の最終年度として本校のこれまでの活動のまとめを導く本当に良い機会を与えていた

だきました。平成27年12月20日、スーパーサイエンスハイスクール冬の情報交換会において、本校

の取組を報告させていただくことができたのです。スーパーサイエンスハイスクールとして、理数能力、

国際的に通用する能力を、より高く身に付けさせるよう努め、そして、先進的な理数教育を、より広く、

より多くの生徒に対して実施し、意欲・学力の向上を図っていること、高大連携、探究的な学習、国際的

なつながりを求める力の育成を軸に事業を推進していること、特に、貴重な高大連携の時間を中心に配慮

していることとして、生徒にとって高大ワンパッケージの学びになるよう進めているということ、そして、

まず本校が強く望んでいるのは、大学に行って、主体的に研究テーマを選び、積極的に活動して、活躍の

できる生徒を育てるということであり、大学入学後も伸びていけるよう、SSH事業を通してそのための

資質を形成したいと考えていることをお話しさせていただきました。

「より広く」ばかりでなく、さらに、「より高く」の部分で、今年度、京都市立堀川高等学校との間で

始めた新事業があります。高校の数学をマスターし、旺盛な数学への探究心を持てあましているかもしれ

ない生徒の存在は、放っておけない課題でした。同じ悩みを持つ近い距離にある学校との「数学交流会」

が実現しました。同じもどかしさを感じている生徒同士の意欲の発露は、これからの理数の大きな発展を

思わせ、実にたのもしいものでした。

本県の理数教育の充実発展のために、志を同じくする連携校4校とともに取り組んでいる「科学技術人

材育成重点枠事業」におきまして、平成28年2月20日、5校32人の生徒全員がグループで取り組ん

できた研究の発表会を実施しました。審査講評をお願いした大学の先生方から「おもしろかった」という

感想を頂きました。生徒たちの研究が、特別なものではなく、日常的なレベルに落ち着いてきていること

を評価されたと思いました。理数系人材の発掘育成、理数教育の充実発展にさらに取り組んでいきたいと

考えます。

最後に、ご指導ご支援を頂いております方々に心から感謝申し上げるとともに、熱い思いで教育にあた

っております本校そして連携校の教職員と、何事にも真剣に取り組み、大きな成果を上げた生徒たちに敬

意を表するものです。

2

目 次

校長先生の巻頭言 ·································································· 1

第1編 SSH本体枠事業報告

SSH研究開発実施報告(要約) ·················································· 5

SSH研究開発の成果と課題 ······················································ 9

1章 学校の概要 ······························································ 12

2章 研究開発の課題と経緯 ···················································· 13

3章 研究開発の内容

1節 事業報告

1.高大連携事業 ······················································ 15

(1)京都大学特別授業 ············································· 15

(2)滋賀医科大学 基礎医学講座 ··································· 19

(3)理数科 京都大学研究室実習 ··································· 21

(4)理数科 滋賀医科大学医学入門講座 ····························· 22

2.探究的取組

(1)理数科 探究S・課題研究 ······································ 23

(2)普通科 探究 ················································· 33

(3)サイエンスキャンプ ··········································· 34

(4)フィールドワーク ············································· 36

(5)数学講演会 ··················································· 37

(6)課外活動 科学系クラブ ········································· 38

(7)膳所・堀川数学交流会 ········································· 39

(8)各種コンテスト・科学オリンピックへの取組 ······················ 40

3.国際化事業

(1)科学英語講座 ················································· 42

(2)科学英語の取組 ··············································· 44

2節 カリキュラム開発

1.探究・探究S ······················································ 45

2.物理・化学・生物 ·················································· 49

3.SS数学・理数SS数学 ············································· 53

4.授業研究 ·························································· 54

5.教材開発 ·························································· 55

6.課題研究の評価 ···················································· 58

4章 事業の評価と課題 ························································ 59

3

第2編 SSH科学技術人材育成重点枠事業報告

重点SSH研究開発実施報告(要約) ··············································· 63

重点SSH研究開発の成果と課題 ·················································· 65

1章 研究開発の内容

1.Shiga Science Project事業 ············································· 66

(1)京都大学および滋賀医科大学などの先生による特別講義 ·············· 67

(2)グループ研究 ·················································· 67

(3)科学英語プログラム ············································· 68

(4)海外(イギリス)研修 ··········································· 68

2.連携校での大学教員による特別授業 ······································· 70

2章 事業の評価と課題 ························································ 71

関係資料

1.事業評価資料

1-1 本校学校評価アンケートの結果 ········································· 72

1-2 主なSSH事業におけるアンケート結果 ································· 73

1-3 重点枠SSH事業におけるアンケート結果 ······························· 75

2.平成27年度教育課程表・学校設定科目一覧 ······································· 76

3.運営組織・運営指導委員会の記録 ················································ 78

4.平成27年度 SSH活動の記録 ················································ 87

5.平成27年度 生徒課題研究発表会・SSH事業報告会 ポスター ······················ 90

6.SSH事業 第2期 ~発展と拡充~ プランシート ······························· 91

7.平成26、27年度「Shiga Science Project」科学技術人材育成重点枠(中核拠点)

プランシート ·································································· 92

4

第1編

SSH本体枠事業報告

5

別紙様式1-1

滋賀県立膳所高等学校 23~27

平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約)

① 研究開発課題

①自ら課題を設定・探究し、発信する能力を育成するプログラムの開発

②国際的な視野に立った科学技術リテラシーを育成するプログラムの開発

③科学的な思考を育む授業を構築するためのプログラムの開発

② 研究開発の概要

科学の発展に寄与する高い意識や能力を持った生徒を伸ばすための高度で先進的な科学教育

を実現する教材・カリキュラムの開発に取り組む。具体的には、生徒自身が課題を設定し、探究・

表現するといった学習を通じて、課題設定能力・課題解決能力・プレゼンテーション能力を育成

するプログラムを開発する。あわせて、言語能力の向上をめざし、日本語や英語で議論できると

ともに、探究した内容を論理的に表現・発信できる能力を育成するためのカリキュラムを開発す

る。さらに生徒の科学的・論理的な思考力の育成を目指し、科学的思考を重視した「考えさせる

授業」の展開を実施し、論理力の向上をはかる授業展開・学習指導法を開発する。

③ 平成27年度実施規模

事業により、以下の4通りの規模がある。

①理数科の生徒全員を対象に実施

②普通科2、3年生理系選択者を対象に実施

③普通科の生徒全員を対象に実施

④全校の生徒を対象に実施

④ 研究開発内容

○研究計画

SSH指定1期目の過去5年間の取組においては、SSH各事業を通じて自然科学に対する生

徒の興味・関心・意欲の向上がみられた。また、高大連携事業においては自然科学方面への進路

意識の向上がみられた。また、海外の研究機関との連携において、語学力とプレゼンテ-ション

能力の向上がみられた。

2期目指定1年目は、高校のレベルを越えた高度な内容の実験・実習の開発に取り組んだ。ま

た、課題研究の指導において、課題探究のスキルだけでなく、自ら課題を発見・設定できる力を

養わせ、設定された課題に対して評価基準を設け、課題設定能力について評価していく方法を研

究する。さらに、探究型・参加型授業の構築のため、教員の授業研修を行い、探究型・参加型授

業の実践を全校的に広め、その効果を教員・生徒によるアンケート等をもとに検証する。

2年目は、1年目の事業を継続し、教材や実験実習の開発、授業研究を引き続き行う。

3年目は、1、2年目の実践を踏まえて、SSH事業の効果を分析し、事業や教材開発、授業

についての改善点を明らかにする。また、評価法の確立に向けて校内研修を実施した。

4年目は、3年目の中間評価の結果を踏まえ、課題研究の評価法を確立し実施するなど、改善

したプログラムを実施し、5年目に向けての修正を行った。

5年目はSSH事業全体の5年間の総括と、今後の課題を明らかにし、発展、充実をはかる。

6

○教育課程上の特例等特記すべき事項(平成27年度)

学校設定科目( )は単位数

・1年生

普通科「探究(1)」、「SS数学Ⅰ(6)」、「SS物理Ⅰ(2)」、「SS生物Ⅰ(3)」

理数科「探究S(2)」、「理数SS数学Ⅰ(6)」

・2年生

普通科「探究(2)」、「SS数学Ⅱ(6)」

「SS物理Ⅱ(3)」、「SS化学Ⅰ(3)」、「SS生物Ⅱ(3)」

理数科「探究S(1)」、「理数SS数学Ⅱ(6)」

・3年生

普通科「SS数学Ⅲ(4)」、「SS物理Ⅱ(4)」、「SS化学Ⅱ(5)」、「SS生物Ⅱ(4)」

理数科「理数SS数学Ⅲ(4)」

○平成27年度の教育課程の内容

・総合的な学習の時間と情報を融合し、普通科については「探究」、理数科については「探究S」

を実施した。

・理科については、「物理基礎」と「物理」を融合した「SS物理Ⅰ、Ⅱ」、「化学基礎」と「化

学」を融合した「SS化学Ⅰ、Ⅱ」、「生物基礎」と「生物」を融合した「SS生物Ⅰ、Ⅱ」を

実施した。

・数学については、数学Ⅰ・Aの内容と数学Ⅱの一部を融合した「SS数学Ⅰ」、数学Ⅱ・Bと

数学Ⅲの一部を融合した「SS数学Ⅱ」、数学Ⅲと発展的な内容を扱う「SS数学Ⅲ」、および

理数数学Ⅰ・Ⅱを再編成した「理数SS数学Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」を実施した。

○具体的な研究事項・活動内容

①理科や数学において学校設定科目を設置し、高度で先進的な内容を取り扱う。

②学校設定科目「探究」「探究S」を設置し、生徒全員に課題設定・探究・発信の場を設定する。

③サイエンスキャンプ、野外実習等、校外学習の内容を充実し、発展的・体験的な内容の学習の

場を設定する。

④理数科に対しては、京都大学・滋賀医科大学での実習等、学習内容の深化をはかる。

⑤京都大学・滋賀医科大学と連携し、特別授業を実施する等、高大連携事業の充実をはかる。

⑥海外科学研修や科学英語講座を実施し、英語でのディスカッション能力やプレゼンテーション

能力を高める。

⑦理数系各種オリンピックへの参加の推進や科学クラブ活動の充実をはかる。

⑧探究型・参加型授業の実践に向けて、授業研究などの研修会を行う。

以上の実践により、生徒がどのように変容したかを検証するため、JSTのアンケートや、事

業ごとにとったアンケートを用いて、SSH事業全体の目標達成度を検証した。

7

⑤ 研究開発の成果と課題

○実施による成果とその評価

平成27年度はSSH指定2期目として、以下の3つの仮説を設定した。

①課題の設定・探究・表現といった一連の学習は、自ら深く学ぶ力を育成し、学力の伸長に効果

がある。

②大学や研究機関等での先進的な理数教育は、科学的な思考力・態度や国際性を育成することに

効果がある。

③探究型・参加型の授業の実践は、科学的な思考力・表現力を高め、学びの意欲を引き出すこと

に効果がある。

このような仮説に対する研究内容として、主に以下のような取組を行った。

①カリキュラム開発

課題の設定・探究・表現といった一連の学習を実施するプログラムとして、「探究」「探究S」

を実施した。どちらも「総合的な学習の時間」と「情報」の目標とねらい、学習成果を融合させ

た学習プログラムである。

「探究S」は理数科の生徒を対象にしたものであり、1年次に情報の基本的スキルと活用法を

身に付け、探究活動に関わるリテラシーを身に付ける指導を行い、2年次に課題研究に取り組ま

せ、グアム大学での英語でのプレゼンテーションや課題研究発表会でのポスター発表を行わせ

た。また、「探究」は普通科の生徒を対象にし、1年次からグループ研究を経験させ、2年次に

探究活動に取り組ませ、理数科と同様にグアム大学で英語でのプレゼンテーションを行わせた。

このように理数科・普通科とも全校の生徒がこの学習に取り組んだ。なお、理数科の課題研究テ

ーマと概要、および普通科の研究テーマは関係資料に掲げた。

また、希望者を対象にした科学英語講座は、1stステージ、2ndステージとも32名を対

象に90分の講座を6回行った。1stステージは、科学に関する様々なテーマについての語彙

や表現を学び、英語で科学的事象についてディスカッションできる力を向上させることを目標と

し、2ndステージは、主にプレゼンテーションの手法に重点を置き、英語での口頭による研究

発表の力を向上させることを目標として実施した。事後のアンケートより、生徒が発表における

英語力に昨年度以上の自信を付けており、また書く力においても伸びを自覚している点で効果が

見られた。

②京都大学・滋賀医科大学との高大連携事業

京都大学・滋賀医科大学との協定に基づき、希望者を対象にした京都大学の特別授業(前期3

コース7回、後期4コース6回)、医学系進学希望者を対象にした滋賀医科大学での基礎医学講

座(8回の講座と1回の実習)を実施した。また、理数科全員を対象に、1年次は滋賀医科大学

での医学入門講座、2年次は京都大学での研究室実習を実施した。

京都大学での授業においては、生徒が最先端の科学に触れる授業を受講し、自然科学への興

味・関心や、将来、自然科学を研究したいとの意欲を高めることができた。また、滋賀医科大学

での授業においては、医学系に進学を希望する生徒が、医学や医師という職業に対する理解を深

めることができた。そして、「京都大学-膳所高校」の協定は、「滋賀県-京都大学」の協定に

発展し、対象11校の中で本校はその京都大学と10校の間の連携事業の企画・実施のための調

整を行う幹事校となっている。

8

③研究授業の実施

探究型・参加型の授業実践のために、県内のすべての高校や中学に参加を呼びかけ、研究授業

と研究協議を行った。その結果、考えさせる授業の構築や教材開発についての教員の意識を高め

るとともに県内中高へ発信することができた。こうした事業の成果については、様々なアンケー

トを通じて検証した。

また、学校評価アンケートによると、「学習指導要領よりも発展的な内容を意識している」「教

科指導力の向上に努めている」「生徒の学習意欲を喚起するような教材研究に取り組んでいる」

という項目で教員の95%以上が肯定的な回答をしている。生徒・保護者に対してのアンケート

でも、90%の生徒が、SSHの取組が学校の柱になっていることについて肯定的な回答をして

いる。また、「学校はSSH事業等を通じて生徒の学習意欲の向上に努めている」という項目に

対し、多くの生徒が肯定的な回答をするなど、SSH事業を核に、学校全体が活性化している様

子が明らかとなった。

以上のことから、仮説は検証されたと考えることができる。

○実施上の課題と今後の取組

今後の課題として、2期10年間のSSHプログラムは本校の生徒の理数系を中心とした学力

育成に高い効果を示しているので、一層の生徒分析を進め事業を継続していく必要がある。また、

生徒のさらなる能力向上のため、数理融合の授業について、原案の確立とアカデミック・ライテ

ィングを導入した論述力の育成を課題とする。

9

別紙様式2-1

滋賀県立膳所高等学校 23~27

平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題

① 研究開発の成果

平成27年度は、SSH指定2期目として、以下のような研究開発課題を設定した。

①自ら課題を設定・探究し、発信する能力を育成するプログラムの開発

②国際的な視野に立った科学技術リテラシーを育成するプログラムの開発

③科学的な思考を育む授業を構築するためのプログラムの開発

こうした、開発課題に基づき、以下のような仮説を設定した。

①課題の設定・探究・表現といった一連の学習は、自ら深く学ぶ力を育成し、学力の伸長に効果があ

る。

②大学や研究機関等での先進的な理数教育は、科学的な思考力・態度や国際性を育成することに効果

がある。

③探究型・参加型の授業の実践は、科学的な思考力・表現力を高め、学びの意欲を引き出すことに効

果がある。

このような仮説に対する取組として、主に以下のような事業を行った。

①カリキュラム開発

課題の設定・探究・表現といった一連の学習を実施するプログラムとして、学校設定科目「探究S」・

「探究」を実施した。どちらも総合的な学習の時間と情報を融合させた学習プログラムである。

「探究S」は理数科の生徒を対象にしており、1年次に情報リテラシーやフィールドワーク、理科

全体に関わる実験・実習のスキル等、探究活動を行うために必要なスキル全般を身に付ける指導を行

い、2年次に、共同研究で課題研究に取り組ませた。課題研究では、課題の設定に重点をおき、生徒

が主体的に取り組むようにし、実際の探究活動、プレゼンテーションに至るまで、教員は支援をする

という立場で、理科と数学の教員が分担して指導を行った。研究の成果は、12月にグアム大学にお

ける英語でのプレゼンテーションや2月の課題研究発表会における英語・日本語によるポスター発表

において発表させた。

また、普通科の生徒を対象にした「探究」は、「探究S」「課題研究」の成果を全校に普及するた

めに総合的な学習の時間と情報を融合させて実施した。実施に際して、「情報」「総合的な学習」の

目標とねらいが十分達成することに留意した。1年次は共同研究を実施し、まとめとしてポスター発

表を行い、2年次には共同研究に取組、グアム大学で英語のパワーポイントを用いたプレゼンテーシ

ョンを全員に行わせ、最終的には個人研究で論文を仕上げた。このように、理数科・普通科とも全校

の生徒が課題設定・探究・表現という学習に取り組んだ。

また、希望者を対象にした科学英語講座では、1stステージは主にプレゼンテーションの手法に

重点を置き、英語での研究発表の力を身に付けさせることを目指したプログラムを実施した。2nd

ステージは科学に関する様々なテーマについての語彙や表現を学び、英語で科学的事象を説明できる

力を身に付けさせることを目指して実施した。

②京都大学・滋賀医科大学との高大連携事業

京都大学・滋賀医科大学との協定に基づき、希望者を対象にした京都大学の特別授業(前期3コー

ス7回、後期4コース6回)、医学系進学希望者を対象にした滋賀医科大学での基礎医学講座(8回

10

の講座と1回の実習)を実施し、また、理数科全員を対象に、1年次は滋賀医科大学での医学入門講

座、2年次は京都大学での一日研究室実習を実施した。

京都大学での授業においては、最先端の科学に触れる授業を受講し、自然科学への興味・関心や、

将来、自然科学を研究したいとの意欲を高めることができた。また、滋賀医科大学での授業において

は、医学系に進学を希望する生徒が、医学や医師という職業に対する理解を深めることができた。

SSH事業の取組に関する学校評価アンケートの結果によると、生徒、保護者、教員がそれぞれ

89.0%、90.6%、91.8%の肯定的意見をもち、他の項目と比較して極めて高い。このよ

うに、保護者、教員とも、SSH事業による教育効果を高く評価しており、全校での取組として充実

したものとなってきている。

2期目指定、平成23年度からの成果をまとめると

①次世代を担うトップ層の科学技術系人材の育成

各種コンテストに多くの生徒が参加し、国際大会において顕著な成績をあげた。

SSH1期目5年次の化学オリンピック銀メダルを契機に、平成23年度(2期目1年次)化学オ

リンピック銀メダル、内閣総理大臣オーストラリア科学奨学生事業参加、情報オリンピック最終選考

生、第1回科学の甲子園総合第2位。平成24年度(2期目2年次)物理オリンピック銀メダル、ま

た、平成25年度(2期目3年次)第3回科学の甲子園総合3位筆記部門1位、平成25、26年度、

数学オリンピック最終選考生等の成果をあげた。この結果は、トップ層の育成だけでなく、多くの生

徒が影響を受けて各種コンテストにチャレンジするというような、国際的に活躍できる科学技術系人

材育成のきっかけとなっている。

②高大連携(京都大学および滋賀医科大学)では、参加希望が年々増加し、それに対応するため、大

学側の協力により、オブザーバー参加制度を設け、高度な学びを体験したい生徒の要望に全て応えた。

事後アンケートから高校の枠を超えた学びに触れ、科学技術を学ぶ意欲が高まり、この事業の目的が

しっかりと達成できたことがうかがえる。

また、2期目では生徒が積極的に大学教員やTAへの質問およびディスカッションをすることが多

くなり、大学教員と共に高校生が取り組む発展的な学びのプログラムを開発できた。

③科学英語講座では「英語で科学を学び」「英語で科学を表現、発表、議論する」2つの力に特化し、

国際的に活躍できる科学技術系人材の育成を図った。

④「探究」の取組として、2年修学旅行の機会を利用し、グアム大学で教員や現地学生に対して、そ

れまでに取り組んできた調査・研究活動の内容を全員が、英語で口頭発表を実施した。

⑤理数科の生徒課題研究発表会を全校生徒対象に行い、あわせてSSH事業報告会を実施することに

より、県内の中学・高校の教員の他、滋賀の教師塾や教員採用予定者の参加を得て、次世代のSSH

事業を支える教員にもSSH課題研究の取組の成果を広く発信した。また、口頭発表の他、ポスター

セッションでは日本語版と英語版を作成し、ネイティブの若手研究者の他、県内の理系のALTにも

アドバイザーとして参加してもらい、英語でのディスカッションができた。

11

② 研究開発の課題

これまでの研究開発内容を深化させるとともに、特に、次の課題に取り組む。

①科学の発展に寄与する高い意識や能力を持った生徒をさらに伸ばすことを目指し、高度で先進的な

科学教育を実戦するために数学と理科が協同して、それぞれの授業内容を生かした授業展開や教材の

開発に取り組む。

②英語で科学を学び、発信できる人材の育成を目指し、日本語や英語で議論し、探究した内容を科学

的・論理的に表現・発信できる能力を伸ばすために開発したカリキュラムを継続し、深化する。

③生徒の科学的・論理的な思考力の育成を目指して開発した探究型・参加型の授業の展開を全校的に

継続し、論理力の向上をはかる授業展開・学習指導法を発信する。

④生徒の課題設定能力、問題解決能力、プレゼンテーション・ディスカッション能力や思考態度、意

識の変容等を測定する評価方法についての研究を継続し、発信する。

また、SSH科学技術人材育成重点枠事業として、本校が2期10年のSSH事業本体枠で開発した

SSHプログラムを滋賀県に発信・普及し、滋賀県の理数系教育の向上と理数系人材の発掘と育成を

図る。

12

1章 学校の概要

1節 学校名、校長名

学校名 滋賀

し が

県立

けんりつ

高等学校

こうとうがっこう

校長名 草野 圭司

2節 所在地、電話番号、FAX番号

所在地 滋賀県大津市膳所二丁目11番1号

電話番号 077-523-2304

FAX番号 077-526-1086

3節 課程・学科・学年別生徒数・学級数及び教職員数

1. 課程・学科・学年別生徒数・学級数(平成28年1月現在)

課程 学科 第1学年 第2学年 第3学年 計

生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数

全日制 普通科 403 10

399

(276) 10

388

(272) 10 1190 30

理数科 41 1 39 1 40 1 120 3

計 444 11 438 11 428 11 1310 33

( )は理系の生徒数

2. 教職員数

校長 副校長 教頭 教諭 養護

教諭

臨時

講師

非常勤

講師

実習

助手 ALT

事務

職員 司書 計

1 1 1 69 2 4 8 3 1 7 1 98

13

2章 研究開発の課題と経緯

1節 研究開発課題

SSH指定1期目の5年間においては、理数系カリキュラム開発、高大連携・接続の拡大・充実、グロ

ーカル(Global+Local 国際的な視野を持ち、地域に根ざして行動する)な視野に立った国際交流の各事

業を行うことによって、生徒の科学に対する意欲・関心を高めるという成果が得られた。SSH2期目に

おいては、これらの成果をもとに次の課題に取り組む。

①科学の発展に寄与する高い意識や能力を持った生徒をさらに伸ばすための、高度で先進的な科学教育

を実現する教材・カリキュラムの開発に取り組む。

②言語能力の向上をめざし、日本語や英語で議論できるとともに、探究した内容を論理的に表現・発信

できる能力を育成するためのカリキュラムを開発する。

③生徒の科学的・論理的な思考力の育成を目指し、知識伝達型の授業から科学的思考を重視した「考え

る授業」の展開を全校的に実施し、論理力の向上をはかる授業展開・学習指導法を開発する。

④生徒の課題設定能力、探究の能力、表現力といった能力や思考態度、意識の変容等を測定する評価方

法についての研究をすすめる。

2節 研究の内容・方法・検証

1.現状の分析と研究の仮説

本校は平成18年度から5年間のSSH事業の指定を受け、生徒の科学に対する知的興味や関心、学習

に対する意欲の向上を目指す有効なプログラムの開発を行った。この5年間で、①SSH事業が学校運営

において重要な位置づけにある。②生徒の科学に対する興味・関心の増大や学習意欲の向上が見られる。

③保護者や中学生のSSH事業に対する関心も高い。④学校の教育課程を見直し、教材開発の契機となっ

た。という成果が得られ、目標は、おおむね達成されたと考えられる。

今後も科学の発展に寄与する高い能力を持った人材を育てるために、文系・理系を問わずに科学的な思

考にもとづき課題を設定し、探究し、発信できる力をもち、自ら学ぶことのできる能力を伸ばすことが求

められる。また、国際的な視野をもって、科学的思考をすることが求められる。そのためには、日常の授

業において、課題探究の場を設定した学習活動を行うことが必要であり、教師の教科指導力の向上を目指

す取組が不可欠となっている。

以上のことから、SSH事業2期目を実施するにあたって、以下のような仮説を設定した。

①課題の設定・探究・表現といった一連の学習は、自ら深く学ぶ力を育成し、学力の伸長に効果がある。

②大学や研究機関等での先進的な理数教育は、科学的思考力・態度や国際性を育成することに効果があ

る。

③探究型・参加型の授業の実践は、科学的な思考力・表現力を高め、学びの意欲を引き出すことに効果

がある。

2.研究内容・検証

SSH事業2期目の仮説を検証するため、次の研究内容を実践する。

①理科や数学において学校設定科目を設置し、高度な内容や先進的な内容を取り扱う。

②理数科課題研究、学校設定科目「探究」「探究S」を設置し、生徒全員に課題設定・探究・発信の学

習の場を設定する。

14

③サイエンスキャンプ、校外学習の内容を充実し、発展的・体験的な内容の学習の場を設定する。

④理数科に対しては、京都大学・滋賀医科大学での実習等、学習内容の拡充をはかる。

⑤京都大学・滋賀医科大学との連携で、特別授業を実施する等、高大連携事業の充実をはかる。

⑥科学英語講座を実施し、英語でのディスカッション能力やプレゼンテーション能力を高める。

⑦理数系各種コンテストへの参加促進や科学クラブ活動の充実をはかる。

⑧探究型・参加型授業の実践に向けて、授業研究などの研修会を行う。

また、検証は、JSTによる生徒・教員・保護者対象のSSH事業に関するアンケートや事業ごとに行

うアンケート等によって行う。

3.必要となる教育課程の特例等

以下の学校設定科目を設置する。

適用範囲 設置教科・科目(単位) 代替教科・科目

1年 普通科 SS数学Ⅰ(6) 数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、

SS物理Ⅰ(2) 物理基礎 物理

SS生物Ⅰ(3) 生物基礎 生物

探究(1) 「総合的な学習の時間」、情報

理数科 理数SS数学Ⅰ(6) 理数数学Ⅰ、理数数学Ⅱ

探究S(2) 「総合的な学習の時間」、情報

2年 普通科 探究(2) 「総合的な学習の時間」、情報

普通科

(理系)

SS数学Ⅱ(6) 数学Ⅱ、数学B、数学Ⅲ

SS化学Ⅰ(3) 化学基礎、化学

SS物理Ⅱ(3) 物理基礎、物理

SS生物Ⅱ(3) 生物基礎、生物

理数科 理数SS数学Ⅱ(6) 理数数学Ⅱ

探究S(1) 「総合的な学習の時間」、情報

3年

普通科

(理系)

SS数学Ⅲ(4) 数学Ⅲ、数学Ⅱ、数学B

SS物理Ⅱ(4) 物理基礎、物理

SS化学Ⅱ(5) 化学基礎、化学

SS生物Ⅱ(4) 生物基礎、生物

理数科 理数SS数学Ⅲ(4) 理数数学Ⅱ

4.教育課程の特例に該当しない教育課程の変更

1年生普通科 「世界史B」 4単位 → 3単位

2年生普通科理系・理数科「日本史B・地理B」選択 4単位 → 3単位

理由:理数系科目への時間数増加のため

措置:3年生普通科理系・理数科に「世界史探究・日本史探究・地理探究」選択3単位を設置

3年生普通科理系 「数学演習」2単位

2年生普通科文系 「数学Ⅱ」 4単位 → 3単位

2年生普通科 「コミュニケーション英語」 4単位 → 3単位

15

3章 研究開発の内容

1節 事業報告

1.高大連携事業

本校の高大連携事業は、13年目を迎えた「京都大学特別授業」と8年目を迎えた「滋賀医科大学特別

授業-基礎医学講座」の2つを柱としており、「膳所高校-京都大学 高大連携に関わる協定書」「膳所

高校-滋賀医科大学 高大連携に関わる協定書」を両大学と締結し、それに基づき実施している。なお、

「膳所高校-京都大学」の協定は、2年前に「滋賀県-京都大学」の協定に発展し、対象11校の中で本

校はその京都大学との連携事業の企画・実施のための調整を行う幹事校となった。

両大学の特別授業とも、高等学校での関連する学習を深化させ、最先端の科学技術に触れさせ、学問の

面白さを伝え、探究の方法を理解する、興味を持った講義については継続的に事後学習に取り組む、とい

う点を意識しての運営を心がけている。各回授業終了後の課題として、生徒は感想文・アンケートを提出

する。

また、理数科の生徒に対しては、1年生全員を対象に、「医学入門講座」として、滋賀医科大学で一日

講義と実習を行い、2年生全員を対象に、「京都大学一日研究室実習」を行っている。

以下に、これら高大連携事業について報告する。

(1)京都大学特別授業

京都大学特別授業は、SSH指定以前より、京都大学と「高大連携に関わる特別事業協定書」を締結し、

実施していた。SSH指定後は、他のプログラムとの有機的結びつきを念頭に検証、改善を進めてきた。

実施は、前期(4月~9月上旬:2年・3年対象)生命科学A、生命科学B、人文・社会科学Aの3コ

ース全7回、後期(9月下旬~1月:1年・2年対象)エネルギー科学と社会環境、生命科学C、地球環

境学、人文・社会科学Bの4コース全6回の計13回である。2年生で前期・後期両方受講した生徒は本

校の特別増単位1単位を認定している。

実施日(主に金曜日)の放課後15:30に本校をバスで出発し、京都大学内の講義室や研究室に行き、

16:30~18:00の90分間特別授業を受講する。授業に際しては、生徒達が体験を通して学ぶこ

とを重視し、可能な限り実験・実習やラボツアーを取り入れていただくよう講師の先生方に依頼している。

また、生徒達には自ら疑問をもって積極的に授業に参加する姿勢を求めており、先生方には授業中はもち

ろん授業後の質問にも丁寧に対応していただいている。

参加生徒には受講毎に、授業アンケートおよび感想文を課し、学習の定着、意欲向上の検証をした。

16

ア.目的

生徒が、京都大学のキャンパスに赴き、先端の研究に触れ、高校教育の枠を越えた学びを経験すること

により、学究的な意欲・関心を喚起し、あわせて大学の教育内容への理解を深め、主体的な進路選択の意

識を高める。

イ.対象生徒

例年、本事業には定員を超える生徒が応募し、抽選により参加者を決定しているが、平成23年度から、

生徒達の高い意欲に応えるため、一人一つの授業のみ受講できるオブザーバー制度を設け、より多くの生

徒が先端の研究に触れ、大学での学びを体験できるよう配慮した。

ウ.内容

前期)生命科学Aコ-ス

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

4月 17日 金 薬の科学 薬学研究科 佐治 英郎 久米 利明

伊藤 美千穂 山下 富義

4月 24日 金 細胞の中をのぞいてみよう 理学研究科 西村 いくこ

5月 8日 金 日本の爬虫類 理学研究科 疋田 努

6月 12日 金 ようこそ染色体美術館へ 放射線生物研究センター 松本 智裕

6月 17日 水 人生の指針を与える現代物理学 国際交流センター 青谷 正妥

9月 4日 金 人工関節と脊椎手術の実際 医学研究科 栗山 新一

9月 11日 金 分子の世界・細胞の世界 生命科学研究科 吉村 成弘 粂田 昌宏

前期)生命科学Bコ-ス

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

4月 17日 金 メダカを用いたゲノム編集-基礎と応用(1) 農学研究科 木下 政人

4月 24日 金 メダカを用いたゲノム編集-基礎と応用(2) 農学研究科 木下 政人

5月 8日 金 癌ってどうゆうもの? 生命科学研究科 垣塚 彰

6月 12日 金 植物系統分類学 理学研究科 田村 実

6月 17日 水 人生の指針を与える現代物理学 国際交流センター 青谷 正妥

9月 4日 金 生き物の時間のはかり方 理学研究科 小山 時隆

9月 11日 金 昆虫の社会を科学する-シロアリたちの不思議の国 農学研究科 松浦 健二

【前期】(2年生・3年生)

生命科学A 15名 生命科学B 15名 人文・社会科学A 15名 計 45名

他にオブザーバー参加の生徒 計 のべ12名

【後期】(1年生・2年生)

エネルギー科学と社会環境 25名 生命科学C 25名

地球環境学 25名 人文・社会科学B 25名 計100名

他にオブザーバー参加の生徒 計 のべ24名

17

前期)人文・社会科学Aコ-ス

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

4月 17日 金 学校とはどのような場所だろうか

-「青い目茶色い目」の実践をとおして学校教育を考える 教育学研究科 山名 淳

4月 24日 金 実習を通して学ぶ臨床心理学 教育学研究科 桑原 知子

5月 8日 金 経済学からみた雇用問題 教育学研究科 久本 憲夫

6月 12日 金 ヒトの心が生まれる道すじ 情報学研究科 明和 政子

6月 17日 水 人生の指針を与える現代物理学 教育学研究科 青谷 正妥

9月 4日 金 ソーシャルメディアとマーケティング 経済学研究科 若林 靖永

9月 7日 月 文章を理解する心理学 教育学研究科 米田 英嗣

後期)エネルギ-科学と社会環境コ-ス

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

10月 2日 金 未来社会を拓くバイオマス エネルギー科学研究科 坂 志朗

11月 6日 金 原子力発電所の地震対策 エネルギー科学研究科 釜江 克宏

11月 13日 金 エネルギー利用と大気環境 エネルギー科学研究科 東野 達

12月 4日 金 資源リサイクルについて エネルギー科学研究科 石原 慶一

1月 8日 金 エネルギーシステム学入門 エネルギー科学研究科 手塚 哲央

1月 22日 金 エネルギーシステムへの拡張現実感技術の応用 エネルギー科学研究科 下田 宏

後期)生命科学Cコ-ス

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

10月 2日 金 複雑系思考-未来適応から未来創成へのパラダイム転換- 基礎物理学研究所 村瀬 雅俊

11月 6日 金 植物のかおりが繋ぐ生き物間の相互作用ネットワーク 生態学研究センター 高林 純示

11月 13日 金 光を感じる植物 理学研究科 長谷 あきら

1月 8日 金 発展途上国における水環境衛生 地球環境学堂 原田 英典

1月 18日 月 貝体新書 総合博物館 大野 照文

1月 22日 金 霊長類の子どもたちの遊びと暮らし 国際高等教育院 田中 真介

後期)地球環境学コ-ス

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

10月 2日 金 気候変動と極端気象

-観測的事実と数値モデル実験- 理学研究科 余田 成男

11月 6日 金 南極の自然 人間・環境学研究科 石川 尚人

11月 13日 金 人工衛星から見る地球の大気 生存権研究所 塩谷 雅人

12月 4日 金 量子力学:電子と光の不思議な世界 人間・環境学研究科 渡辺 雅之

1月 8日 金 グリーンフォトニクスのための無機光機能性材料 人間・環境学研究科 田部 勢津久

1月 22日 金 飲み水の安全と安心 工学研究科 越後 信哉

18

後期)人文・社会科学Bコ-ス

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

10月 2日 金 滋賀の文化遺産-その価値と継承- 工学研究科 山岸 常人

10月 19日 月 地図から見た「世界史」教科書の歴史観 人間・環境学研究科 辻 正博

12月 4日 金 なつかしさの心理学 教育学研究科 楠見 孝

1月 8日 金 ジェンダー論入門 文学研究科 伊藤 公雄

1月 15日 金 情報学の社会への応用 情報学研究科 吉川 正俊

1月 22日 金 グローバル化と法 法学研究科 中西 康

後期)*特別授業

日時 曜 講義題 研究科名 担当教官名(敬称略)

10月 19日 月 世界の食料需給と貿易自由化・環境問題 農学研究科 加賀爪 優

エ.成果と課題

アンケート結果は、関係資料1-2に提示した。アンケートからは、受講生のほぼ全員が本事業に満足

していることがわかる。「学問の奥の深さを感じ取れた」「進路を考える上で参考になった」という項目

にも受講生の9割程度が肯定的回答をしており、京都大学において先端研究の一端に触れ、高校の授業で

は味わえない刺激を受けることで、生徒の科学に対する興味・関心や進路意識が向上するという効果が確

認できた。記述文より、自らが主体的に興味・関心を持って選んだコースについて、授業以上の学習内容

で学びを深められたことは、学力の育成に成果がある。授業後半には、ほぼすべての回で積極的に質問が

見られ、30分から1時間程度教授やTAの院生とディスカッションすることが定着した。このことによ

る教育効果の検証を進めたい。また、ラボツアーを通して、最新の実験機器やそれを活用した方法を学ぶ

意義は大きい。引率した教員の報告書からは、今年度は積極的な受講姿勢の見られた授業が増加したこと

がわかった。2年生を中心に講義中に自ら質問する受講生も増え、その質問内容についても授業を担当し

てくださった先生方から評価いただけることが尐なくなかった。実験・実習やラボツアーでは大学院生の

方々に協力していただくことも多く、受講生たちは気軽に問いかけることで大学での学問をより身近に感

じることができたようである。「研究室の活性化につながる」「高校生の質問によって自分たちの研究の

原点を改めて意識した」という感想を大学側からいただけたことは、高大連携の有効性を示す1つの例と

いえるだろう。

一方で、前述のアンケートでは「自分の興味のある学問分野の本を読む」ことで、学習を読書によって

自ら深化させようした者は4割以下にとどまっている。今年度も授業毎に講師から関連図書を紹介してい

ただき、本校図書館で閲覧・貸出できるようにしたが、特別授業で得た刺激をいかに日頃の能動的な学習

に結び付けるか、さらに工夫を重ねたい。

19

(2)滋賀医科大学 基礎医学講座

京都大学との高大連携事業を充実発展してきたが、本校生徒の進路志望状況、進路状況を見ると医学系

への希望生徒が多く、医科大学との連携特別授業を通じて、生徒の興味・関心を高め、科学を学ぶ意欲を

喚起していくと同時に、医学についての理解を深めた確かな進路選択につなげる必要があると判断した。

そこで、SSH1期目指定の高大連携新規のプログラム開発として研究を進め、平成20年滋賀医科大学

との高大連携事業協定を締結し、2年生の医学科進学希望者を対象に、解剖学・生理学・生化学・社会医

学などの基礎医学の特別講義を4月から11月までの年9回、月曜日の放課後を利用して、滋賀医科大学

の講義室・研究室等で実施している。こうした地域の医科大学の魅力を生徒に発信し、地域医療を支える

有為な人材を育成することは、公立高校としての果たすべき役割の一つであると考える。

ア.目的

・1年次に学習した生物や保健、家庭の人体科学分野の学習をさらに深化させたい生徒の要望に応え、

より高度な知識を習得させる。

・生徒の医学部医学科に対する理解を深め、医師の役割・使命を明確にし、進路選択のミスマッチを避

ける。

・月に1回程度の医学部特別授業を受講することによって、医学科進学への学習意欲の向上と持続を図

り、十分な学力を育成する。

・地元医科大学との連携を深めることにより、生徒たちに県内の医療の実情を認識させ、地域医療の問

題解決のために公立高としての使命を果たす。

イ.対象生徒

2年生 医学科進学希望者 44名

ウ.内容

日時 曜 講義題 講座名 担当教官名(敬称略)

4月 27日 月 形から知るからだのしくみ

-解剖学・組織学- 解剖学 相見 良成

5月 25日 月 脂肪細胞の細胞生理 生理学 尾松 万里子

6月 15日 月 廃棄物から診るからだの状態

-糞便・尿と医化学-

生化学・

分子生物学 上山 久雄

9月 7日 月 ウイルスの話 病理学 井上 寛一

9月 28日 月 医師の使命と働きがい 社会医学 垰田 和史

10月 19日 月 看護師の役割と機能について 臨床看護学 瀧川 薫

11月 2日 月 次世代の外科手術システム 外科学 仲 成幸

11月 16日 月 大腸癌治療の最前線 臨床看護学 遠藤 善裕

20

夏休み一日実習(希望者のみ)

日時 曜 講義題 講座名 担当教官名(敬称略)

8月 26日 水 免疫細胞はどのようにして

多くの病原体を認識するのか 生化学・分子生物学 縣 保年

エ.成果と課題

本講座は医学科進学希望者を対象としており、今年度も生徒は熱心に聴いていた。アンケート結果から

授業の満足度、本講座の目標、医学の面白さの項目は全員が肯定的回答をしている。このことから、プロ

グラムのねらいを参加生徒がしっかりと受け止めていると考えられる。また、本講座がはじまった後に近

年の医学科進学希望者と、医学科合格者が増加していることから、進路選択の観点からも一定の成果を上

げていると考えられる。大学教員からも本講座受講生は医学科入学後も医学への高い学習意欲があり、医

学教育の原点となる高い使命感が育成されているのではないかとの評判も聞かれ、同様の感想が卒業生か

らも聞かれる。

受講をきっかけにして、さらに自ら深い知識を求める行動につながるような継続的指導をすることが課

題である。

21

(3)理数科 京都大学研究室実習

ア.目的

理数科2年生全員を対象に京都大学一日研究室実習を行っている。SSH指定当初より取り組んできた

この事業は、事前学習および事後学習、生徒の意識付け、高等学校での学習内容の応用として無理のない

展開、先端分野への学びの発展と科学探究の態度育成などの視点を中心に、大学側の担当教官との共同作

業で大変バランスの良いプログラムへと改善を加え、理数科カリキュラムの主要な行事となった。今年度

は以下の目標、要項で実施した。

また、参加教員の教材研究および資質向上、課題研究の指導に関わって研究の指導法や科学発表の方法

などへの効果も見られる。

イ.対象生徒

理数科2年生 生徒40名

ウ.内容

日 時 平成27年9月17日(木) 8:30~17:00

[物理系Ⅰ] 目に見えない放射線を測る

京都大学大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 原子核ハドロン物理学研究室

川畑 貴裕 准教授

[物理系Ⅱ] 量子液体「超流動ヘリウム」の実験

京都大学低温物質科学研究センター

松原 明 准教授

[化学系] 有機化学系の実験

京都大学大学院工学研究科 材料化学専攻 機能材料設計学講座

松原 誠二郎 教授

[生物系Ⅰ] 走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope; SPM)を使用したDNA構造の観察等

京都大学大学院生命科学研究科 分子情報解析学

吉村 成弘 准教授 粂田 昌宏 助教

[生物系Ⅱ] くらしに役立つ微生物バイオテクノロジー 応用微生物学に関する講義

京都大学大学院農学研究科 応用生命科学専攻 応用微生物学講座

小川 順 教授

エ.成果と課題

研究室実習に対しては、アンケート結果などから、肯定的な回答が多い。高度な設備や器具を用いた実

験を行うことを通して、先端的な科学研究に触れ、大学教員とゼミ形式で討論を行った。大学での学びや

研究を知ることができ、科学に対する知的探究心と意欲・関心が高まるという効果があった。また、参加

後に理数科生は理数系能力の自己肯定感が向上し、学力が大きく伸びるきっかけとなっている。

22

(4)理数科 滋賀医科大学医学入門講座

ア.目的

理数科1年生40名を対象に、「高校生物」の学習を基礎に生理学・社会医学の講義および実習を実

施し、医学の手法を知ることで、科学的な視野を拡げる。

また、将来医学部とコラボレーションし、研究のできる学際的人材育成に資する。

イ.対象生徒

理数科1年生 生徒40名

ウ.内容

日 時 平成27年9月29日(火) 9:15~17:10

講義Ⅰ 「医学・医療の役割を考える」

社会医学講座 垰田 和史 准教授

講義Ⅱ 「心臓拍動の仕組みと自立神経(交感神経,副交感神経)による調節」

生理学講座 松浦 博 教授

見 学 「ラット心臓の摘出術見学」 (希望者のみ)

実 習 「ラット心臓を用いた心臓拍動の調節に関する実習」

生理学講座 松浦 博 教授、丁 維光 講師、豊田 太 講師、白 佳玉 講師、松原 一樹 講師

瀧川 若 講師、李 徳子 講師

*本実習は滋賀医科大学倫理委員会の承認を受けて実施している。

エ.成果と課題

実習後のアンケート結果によると、医学部に進学を考えている生徒にとっては、進路を考える上で参考

になったという回答が100%に達し、また、医学への進学希望の有無に関わらず、医学という学問につ

いて理解する有益な機会となったと考えられる。理数科の生徒としては自然科学の一分野である医学へ理

解を深め、他学部進学後も科学技術の応用として、医学を常に意識する姿勢を持つ学際的に科学に取り組

む人材育成につながっていくと思われる。

23

2.探究的取組

探究的取組は、学校設定科目「探究」(普通科)、「探究S」(理数科)や、理数科の「課題研究」の中

で行っている。ここでは理数科における1年生の「探究S」、2年生における「課題研究」について述べ

る。普通科「探究」については、カリキュラム開発(p.45~)において述べる。

(1)理数科 探究S・課題研究

ア.目的

問題の解決や探究活動に主体的、創造的、共同的に取り組む態度を育て、自己の在り方や生き方を考

える力を養う。また、主体的な探究活動を通し、自ら課題を見付け、自ら学び自ら考え、主体的に判断

し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成する。

一方、情報および情報技術を活用するための知識と技能を習得させ、情報に関する科学的な見方や考

え方を養うとともに、社会の中で情報および情報技術が果たしている役割や影響を理解し、社会の情報

化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる。

イ.対象生徒

理数科1、2年生

ウ.内容

(ア)1年生の内容「探究S」

1年生の主な内容は以下のとおりである。自然科学の基礎講座として、情報、数学、物理、化学、生物

の基礎的な実験講座を実施した。野外実習や医学入門講座は探究Sの一環として行った。それらについて

は別項で記述した。

主な内容

1学期 1.膳所高校過去の課題研究 -課題研究論文集を用いて

2.統計処理について1

3.統計処理について2

4.生物分野の実験1

5.生物分野の実験2

6.生物分野の実験のまとめ方

7.化学分野の実験1

8.化学分野の実験2

9.化学分野の実験のまとめ方

2学期

10.滋賀医科大学一日実習に向けての事前学習

11~16.滋賀医科大学一日実習

17.滋賀医科大学一日実習まとめ

18.物理分野の実験1

19.物理分野の実験2

20.物理分野の実験のまとめ方

21.班別科学競技会 数理融合物理データの統計的分析1

22.班別科学競技会 数理融合物理データの統計的分析2

24

3学期 23~28.2年生課題研究発表会(口頭発表とポスターセッション)参加フィールドワーク事前学習

29.数学課題研究について

30.数学課題研究について

31.ポスター作成について

32.フィールドワーク事前学習

33.フィールドワーク事前学習

34~39.フィールドワーク

40.フィールドワーク事後学習

41.課題研究テーマ設定

42.課題研究テーマ設定

(イ)2年生の内容 「課題研究」

2年生では、1年間をかけて4人一組のグループ単位で課題研究に取り組ませた。年間を通して月曜日

の6限に課題研究を行い、後期には7限にも行った。研究の時間が不足する場合には、その他の曜日の放

課後を利用した。夏休みには10時間の実習時間を設定し、大学等の外部機関での実験・実習に対応した。

取組の方法は、まず生徒に取組たい分野(物理、化学、生物、地学、数学)を選ばせ、その分野別にグ

ループ分けを行った。その後は生徒たち自身が研究テーマを設定し、研究の方向性を決定した。そのため

研究テーマの設定に1学期を費やす班もあった。今年度の年間指導計画と各班の研究テーマは以下のとお

りである。

なお、課題研究の評価については、p.58 課題研究の評価に記述した。

年間指導計画

学期 付けさせたい能力 内容

1学期 課題設定能力 各班4人がテーマを持ち寄り議論しテーマ設定

テーマについて先行研究を調査し、自分たちの研究手法を考える

7月 課題研究テーマ発表会(プレゼンテーションに挑戦する)

2学期 問題解決能力 11月 中間発表会(夏休みから10月にかけてのことをまとめる)

実験装置の作成、実験を行う

実験結果を考察し、次の方針や実験条件の設定にフィードバックする

このサイクルで研究をすすめてゆく

グアム大学プレゼンテーション予行(聴衆は理数科1年生)

グアム大学プレゼンテーション(英語)

3学期 プレゼンテーション・

ディスカッション能力

科学を英語で表現する能力

研究結果をまとめる

1月25日 課題研究発表審査会(代表3班を選ぶ)

2月18日 課題研究生徒発表会

(日本語・英語ポスター発表全10班、口頭発表代表3班)

3月11日 課題研究論文提出

25

今年度の研究テーマ

・子育てにおけるαオスの役割ー視線の観察からー

Influence Of Alpha Male On Infant-raising From Observing His Looks

・アイスプラントの耐塩性の獲得

Acquisition of salt tolerance of Mesembryanthemum crystallinum

・メダカの追尾行動

Tracking action in Oryzias latipes

・乾燥とおいしさの関係

The Relationship between “umami” and drying

・メトロノームの同期現象

Synchronization Of Metronomes

・ヨットの帄と推進力の関係

Relationship between the sail of the sailboat and the propulsion

・紙の落下運動

The movement of falling paper

・泡が作り出す水流

The Water Flow Made by the Bubble

・折り紙による三次方程式の解法と三角形

A Triangle which Appears in Solving a Cubic Equation with Origami

・陣取りゲームの勝敗を分ける条件

Prisoner’s base game

これらのテーマについて、12月の修学旅行を利用して、グアム大学でパワーポイントを用いた英語に

よるプレゼンテーションを行った。グアム大学での発表については、カリキュラム開発「探究」の項で記

述する。

また、課題研究発表会に向けて、1月25日(月)に校内で課題研究口頭発表審査発表会を開催し、全

班の口頭発表の審査を行い、3グループを代表に選んだ。

2月18日(木)の課題研究発表会では、午前中は大津市民会館小ホールに全10班のポスターセッシ

ョンブースを設け、日本語と英語(各2枚)でポスター発表を行った。大学教員、英語のネイティブな研

究者、県内ALT、若手研究者、他校関係者に審査員として来ていただき、日本語と英語で活発な議論が

なされた。午後の全体会では、大ホールで全校1、2年生生徒を対象に3つの研究について口頭発表を行

った。その後、一か月ほどかけて今年度の研究成果を論文にまとめ、提出させる。

26

4月当初からテーマ設定で迷走してしまう班があることから、研究の進捗を見極めてテーマ発表会を7

月、中間発表会を11月に設けた。生徒達は計画的に教員とディスカッションをし、テーマや実験内容に

ついて決めていくことができた。しかし、それでもなかなか内容が決まらない班もあり、生徒の自主性を

損なわない範囲での指導法について考えることが課題となっている。

「テーマ発表会」

パワーポイントを用いて、各班3分程度で下記のように4枚のスライドを用いて発表を行った。その後

担当の先生と夏休みの活動予定や今後の方針について話し合いをもった。

表紙(研究題目)

①研究分野の背景(すでにわかっている基礎知識)と動機

②1学期にやったこと(調べたこと、実験したこと)

③研究の仮説、実験計画

④今後の展望

「中間発表会」

パワーポイントを用いて、各班 発表6分、質疑応答4分で実施した。

この発表会では「課題設定能力」「問題解決能力」「ディスカッション能力、プレゼンテーション能力」

の各能力を評価するための審査用紙を作成し、4段階で審査を行った。生徒達には各審査員の講評を配布

した。

27

28

29

30

31

32

33

(2)普通科 探究

ア.目的

ものの学び方や考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的、共同的に取り組む態度

を育て、自己の在り方や生き方を考える力を養う。

主体的な探究活動を通し、日常生活や社会とのかかわりの中から自ら課題を見付け、自ら学び自ら考

え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成する。

情報および情報技術を活用するための知識と技能を習得させ、情報に関する科学的な見方や考え方を

養うとともに、社会の中で情報および情報技術が果たしている役割や影響を理解し、社会の情報化の進

展に主体的に対応できる能力と態度を育てる。

イ.対象生徒

普通科 1、2年生

ウ.内容

内容については、カリキュラム開発「探究」の項で詳しく述べる。

34

(3)サイエンスキャンプ

ア.目的

①滋賀県内では見ることのできない海洋生物を観察するとともに、充実した京都大学の附属施設で生

命科学の基礎的な実験を体験し、自然科学への興味・関心や学習への意欲を一層高める。

②豊かな自然の中で環境と人との関わりへの理解を深め、自然を敬愛し大切にする実践的な態度を身

に付ける。

イ.対象生徒

1年生24名 (男子12名 女子12名)

ウ.内容

①実施日 平成27年(2015年)7月21日(火)~24日(金)

②場 所 京都大学フィールド科学教育研究センター海域ステーション瀬戸臨海実験所

③講師陣

京都大学フィールド科学教育研究センター 海域ステーション 瀬戸臨海実験所

久保田 信 准教授(無脊椎動物学・特に腔腸動物の系統分類・生態学)

宮崎 勝己 講 師(無脊椎動物学・特に節足動物の比較形態・発生学)

中野 智之 助 教(海洋生物系統分類学分野)

④実施内容

7月21日(火)

14:00 現地研修① 京都大学白浜水族館の現地解説

16:00 実 習① ウニの形態観察・解剖・器官観察

17:00 実 習② ウニの発生実験:卵採取、受精、発生過程の顕微鏡観察

19:30 現地研修② 夜の水族館の現地解説

20:30 実 習③ ウニの発生実験:経過観察

7月22日(水)

8:30 実 習④ 海洋プランクトンの観察

10:00 実 習⑤ ウニの発生実験:経過観察

13:00 演 習① 番所崎フィールドワーク・磯生物の観察、採集、実地講義

16:00 実 習⑥ 採集した生物の分類・同定・生態講義

19:30 実 習⑦ カサガイ逃避実験

21:00 実 習⑧ ウニの発生実験:経過観察

7月23日(木)

8:30 実 習⑨ ウニの発生実験:経過観察

10:00 実 習⑩ ベニクラゲの実験

13:30 講 義① ベニクラゲの生活史

15:00 講 義② ウミグモの生物学

16:30 講 義③ カサガイの分布

19:30 交流会 サイエンス・カフェ

先生方や大学院生の方より、海洋生物のおもしろさや研究の動機に

ついての講話、および、自然科学全般のロマンを語り合う交流会。

35

7月24日(金)

8:30 まとめの講義 担当していただいた先生方のまとめの講義

各担当講師から、総括的な講義

水族館現地解説 水族館現地解説 ウニ形態観察・解剖

ウニの発生観察・卵採取 ウニ発生過程の観察 カサガイ逃避実験

番所崎フィールドワーク 番所崎フィールドワーク 番所崎フィールドワーク

採集した生物の分類・同定 ウミグモの講義 サイエンスカフェ

エ.成果と課題

①参加生徒

参加生徒は毎年異なるが、当然のことながら意欲の高い生徒が参加している。今年度は、定員 24

名に対し、36名が応募。応募生徒には、サイエンスキャンプの趣旨をしっかり理解させ、参加理由書

等をもとに参加生徒 24名を決定している。

その結果、生徒の体力、気力、集中力はすばらしく、尐しの空き時間でも調べ学習を自発的に行っ

たり、水族館での観察を行ったり、貪欲な学びの姿勢が見られた。教員側も、生徒の実習をサポート

をしながら、該当分野の発展的授業展開のための教材研究を深めることができた。

36

②事前の準備

実習を毎年継続することにより、プログラムの精度や安全、健康への配慮の点で格段に向上してき

ている。

事前の準備にあたって、担当者との打ち合わせでは、当たり前のことを分かり易くではなく、多く

の疑問が湧き尐ない時間でも何をどのように観察したらよいかを主体的かつ合理的に理解できるよう

な指導をお願いし実施した。その結果、普段の学校生活では取り組むことのできない長時間に及ぶ実

験、気になったこと、気づいたことに対して徹底的に実験に取り組む時間が確保できた。

安全、健康面への配慮については、実験所、宿舎およびその周辺の状況が詳細に把握でき、より安

全かつ快適に実習生活が実施できている。屋外の実習について、健康管理、災害発生時への対応も充

分なものになるよう、改善・工夫を施している。

③サイエンスカフェ

3日目の夕食後は、京都大学の教官、大学院生、同宿の研究者ともにサイエンスカフェを実施。実

習だけでは味わえない海洋生物の研究の奥深さや、研究者としての心構えを聴くことができ、有意義

で貴重な時間が設定できている。

④今後の課題

定員が限られるため、意欲が高くても参加できない生徒がいた。また、生物を学習している1年生

全体への還元を行うために、実習で用いた資料の画像処理や保管法を確立していかなければならない。

(4)フィールドワーク 実施後報告書を提出

ア.目的

身近な近畿地区での地震として、阪神淡路大震災で、多くの犠牲を出した兵庫県南部地震の原因とな

った野島断層のトレンチ面を断層保存館で観察し、また震度7揺れの体験や断層近くで被害にあった民家

の様子の見学を通し、地震と防災について科学的・体験的に学ぶ。

あわせて、様々な植生の観察を淡路景観園芸学校で行うとともに、絵島において神戸層群の地層の観察

を行い、生物の多様性や自然に対する歴史的な見方を体験を通じて学ぶ。

イ.対象生徒

理数科1年生 40名

ウ.内容

①実施日 平成28年3月14日(月)

②場 所

絵島 江崎灯台 兵庫県立大学淡路キャンパス 北淡震災記念公園 野島断層保存館

③実習内容

絵島 神戸層群 堆積構造 生痕化石等の観察

江崎灯台 横ずれ断層の観察

兵庫県立大学淡路キャンパス ラウンケルの生活環調査、バイオームの学習

野島断層保存館 野島断層のトレンチ断面の観察

活断層ラボ:断層に関わる学習

37

(5)数学講演会

ア.目的

第一線で活躍中の数学者が、どのように研究を進めているのかを聞

くことで、科学者への憧れや、数学への興味・関心を高めることを

目的する。

イ.対象生徒

理数科1、2年生 および希望者 参加者 合計 78名

ウ.内容

日 時 : 平成28年1月15日(金) 放課後

場 所 : 膳所高校視聴覚室

演 題 : 「いくつのピンポン玉を付けられる?~感覚と証明のギャップ~」

講 師 : 滋賀大学 教育学部 数学教育 専任講師 篠原 雅史

本年度の講演会は数学を応用的な側面から研究されている篠原雅史先生にお越しいただき、研究内

容だけでなく、科学者になるための心得や若手研究者の置かれている状況などを絡めてお話ししてい

ただいた。

エ.成果と課題

今回の講演で生徒達は数学者の取っ付きにくいイメージを払拭したようである。数学という学問を身

近なものに感じ、興味を持った生徒が多数いた。また、「わからないことだから楽しい」という講演者

のメッセージが生徒にとっては新鮮に感じたようである。講演会の後尐し時間をとり、講師の先生と交

流する時間をとった。大学の先生と直に討議する経験は、生徒にとって得難い経験であったようである。

今後の課題としては講演会を放課後に行っているので部活等の制約があるが、参加生徒数をもう尐し増

やしたい。また、アンケートの結果から講演には満足した生徒は多いが、講義内容の難易度については

やや難しかったと感じた生徒が多かったことが分かる。その一方で、難しい中でも研究への憧れを感じ

ることのできたと答える生徒も一定数おり、講演の難易度や内容にはまだまだ検討が必要だと感じた。

生徒の感想(自由記述)よりの抜粋

・とてもおもしろい講演でした。模型や図形など実際に触らせていただきながら説明を受けたので分か

りやすかったです。(多数)

・何となく想像はできても、実際に証明するとなると難しかったです。幾何の分野は好きなのでおもし

ろかったです。

・普段考えないような内容でむずかしく感じましたが、とても分かりやすかったです。

・平面の十円玉の問題と比べピンポン球の問題になったとたんに難しく感じました。が、図形のおもし

ろさを感じることができました。

・数学は格好良くておもしろいので嫌いではありませんが、今日の計算などが生活に応用される場合が

あるのか気になりました。高校生になって初めて自発的に疑問を持つことができました。

生徒に対してのアンケート結果 肯定的な回答(%)

講義内容の難易度は適切か 75.0

講義内容に興味をもてたか 95.0

このような講義にまた参加したいか 96.0

38

(6)課外活動 科学系クラブ

ア.目的

科学に関心のある生徒たちの活動として、身近なところから課題を発見させ、適切な研究テーマを設定

させ、探究活動を行い、成果をまとめ、発表を行う。このような活動を通じて、課題設定能力、課題解決

能力、論理の構成力、プレゼンテーション力等の育成を行う。

イ.対象生徒

物理地学班、化学班、生物班の3つがあり、課外活動として興味・関心のある生徒が任意に入部し、活

動している。

ウ.内容

①滋賀県高等学校文化連盟自然科学部会春季大会参加

平成27年6月5日(金) 近江八幡男女共同参画センター大ホール

各校科学クラブの活動紹介・研究紹介,全国大会の発表リハーサル

②第39回全国高等学校総合文化祭滋賀大会 自然科学部門参加

平成27年7月30日(木)~8月1日(土) 滋賀県東近江市・大津市

口頭発表 物理部門 物理地学班 発表題目 「粉体の物理的性質」

口頭発表 化学班 「B-Z反応における塩化物イオンの影響」

ポスター発表 生物班 「琵琶湖のプランクトンの研究」

巡検 実習船を使った琵琶湖湖上実習(本校生徒は実習の計画・運営)

③日本学生科学賞県展

平成27年10月22日(木)~25日(日) 湖南市市民学習交流センター

最優秀(滋賀県知事賞) 物理地学班 「物体間の摩擦の物理的性質」

④滋賀県高等学校文化連盟自然科学部会秋季大会参加

平成27年10月30日(金) 彦根商工会議所大ホール

発表題目 物理地学班 「物体間の摩擦の物理的性質」

化学班 「B-R反応の反応時間と終点について」

生物班 「琵琶湖のプランクトンに関する研究」

生物班が、平成28年度全国高等学校総合文化祭広島大会へ出場権獲得

⑤日本学生科学賞中央審査

物理地学班 出品

エ.成果と課題

各クラブとも日常的に活発に活動している。生徒自身による活動を重視し、生徒に課題を設定させ、研

究の計画を立てさせ、自主的に探究活動に取り組むことができるように指導している。その結果、科学系

クラブが各種大会へ積極的に参加し、成果をあげている。特に平成27年度は、全国高等学校総合文化祭

が滋賀県での開催であったので、滋賀県の生徒は運営役員として様々な役割を担った。本校でも物理地学

班の生徒が実行委員長を務めるなど、すべての生徒が式典、発表、巡検などで活躍した。この経験を生か

し、今後も益々研究活動や交流活動に積極的に参加できるように、内容のある探究活動を進めることが重

要である。

39

(7)膳所・堀川数学交流会

ア.目的

数学に興味・関心のある生徒たちが、互いに数学的な思考力、洞察力を高め合い、お互いを認め合いな

がら、数学的な考え方を深化させる。

イ.対象生徒

数学に興味・関心を持つ能力の高い生徒

第 1 回 膳所高校13名,堀川高校12名

第 2 回 膳所高校12名,堀川高校 7名

ウ.内容

①第1回数学交流会

平成27年6月20日(土) 膳所高校

生徒発表

堀川高校「離散幾何学入門」

膳所高校「循環小数の循環節の長さ」

膳所高校「数学オリンピック,自作問題演習」

②第2回数学交流会

平成27年11月1日(日) 膳所高校

膳所高校「課題研究(数学班)」生徒発表

堀川高校 (大きな数の体系化)生徒発表

堀川高校 合同課題探求活動「折り紙・作図と方程式」

エ.成果と課題

同じ教育課題を抱える隣接した他SSH高とトップ層の生徒育成のために実施した。概ね、ト

ップ層生徒が高い満足を示す内容となった。実験、実習を主体とした科学交流ではなく、数学能

力向上のための演習形式の交流は数学の他流試合であり、SSH高との切磋琢磨でトップ層の育

成を今後も目指したい。

本校の数学オリンピック本戦を通過した2名の卒業生と3年生が発表者として参加した。堀川

高校からも独自に高度な数学を学んでいる生徒の発表があり非常にレベルの高い交流会となった。

課題として、内容が高度なので、事前に発表内容を参加者へ知らせて学習しておくことが必要で

ある。このことで、さらに深まった議論が期待できる。

40

(8)各種コンテスト・科学オリンピックへの取組

ア.数学オリンピックへの取組

(ア)目的

数学的才能に恵まれた生徒を見出すこと、その才能をより伸ば

すこと

(イ)対象生徒

1、2年生(1年生6名、2年生3名 計9名)

(ウ)内容

7月から数学オリンピック予選への参加を呼びかけて、過去問などの資料を配付した。生徒たちは自

主的に勉強会などを行い、自分たちで問題を作成して解きあうなど、積極的に活動していた。また、1

月になってやっておくべき教材を配付した。

1月11日(月) 13:00~16:00 数学オリンピック予選 (会場:膳所高校)

(エ)成果と課題

Bランク 1名(1年生)

今年度は、本選、予選を通過した卒業生2名を招いて数学勉強会を3回実施した。結果は昨年のよう

にはならなかったが、アンケート結果が示すように、数学オリンピックに参加して、難解な数学の問題

にチャレンジすることに楽しさを見いだしていることは良い結果であった。課題としては、昨年度のよ

うに、生徒達が勉強会を開く機会を増やすことがあげられる。数学オリンピックの過去問を予選から本

選までしっかり復習すれば、さらに高度なレベルで予選から本選に臨むことができると思われる。

生徒に対してのアンケート結果 肯定的な回答(%)

問題にチャレンジしてみておもしろかったか 100

問題の難易度はどうでしたか(難しいと回答したもの) 100

興味深い問題でしたか 88.9

このような試験にまた参加したいか 77.8

イ.科学の甲子園

(ア)目的

「科学好きな高校生が集い、競い合い、活躍できる場」

である科学の甲子園に出場し、全国の高校生と競い、交流

する。

(イ)対象生徒

1年生(8名)

(ウ)内容

県予選に1年生1チーム、2年生1チームが出場し、1

年生チームが予選を通過した。3月18日から茨城県で開

催される第5回大会に出場する(5年連続5回目)。

(エ)成果と課題

1年生チームは第1回科学の甲子園ジュニアで全国優勝した生徒が加わっている。トップレベルの理

数教育を求めて入学した生徒に対して、有効なコンテンツが提供できた。

41

ウ.情報オリンピック

(ア)目的

情報処理の技術を駆使して与えられた課題に対する性能の良いアルゴリズムを設計し、さらに、それを

プログラムとして適切に実装するための数理情報科学の能力を伸ばす。

(イ)対象生徒

1年生1名

(ウ)内容

2015 年 12 月 13 日(日) 13:00 ~ 16:00 ウェブ上オンラ

インで実施された情報オリンピック予選を1名が通過した。

(Aランク 全国63名)し、本選(2016年2月13日 ~

14日)に出場した。

(エ)成果と課題

Aランク 1名(1年生)

参加者が尐ないので、生徒への情報技術の重要性を図書や教室掲示などを利用して伝えていきたい。

42

3.国際化事業

(1)科学英語講座

ア.目的

国際的な視野に立った科学技術リテラシーを身に付け、科学

技術に関する諸問題を英語で議論し、自らの設定した課題につ

いて世界に英語で発信する力を付ける。講座は1stステージ

と2ndステージに分け、1stステージでは科学に関する

様々なテーマについての語彙や表現を学び、英語で科学的事象

を説明できる力を身に付けることを目指す。2ndステージは

主にプレゼンテーションの手法に重点を置き、英語での研究発

表の力を身に付けることを目標とする。

イ.対象生徒

1stステージ:2年生8名、1年生24名 計32名(希望者)

2ndステージ:2年生33名 計33名(希望者)

※各ステージとも2クラスに分けて講座を実施した。

ウ.内容

指導者:ベルリッツ・ジャパン株式会社 英語プログラム講師2名

場 所:膳所高校 視聴覚室、会議室、選択D教室

<1stステージ>

回 講座日 曜 講 座 内 容(各回90分)

2015年

9月24日 木 開講式、オリエンテーション

1 11月11日 水 生物分野(食物連鎖)に関し、ペア活動等を通じて、関連語彙の意味確認と発音練習をす

る。モデルパラグラフを元に、ペアやグループで食物連鎖に関する語句を説明する。

2 12月 9日 水

グループで食物連鎖に関する語句や現象を説明しあう。学習した語彙を含む短いテキスト

を使用して生物に関する現象の理解を深め、自分の言葉で説明できるようにペアやグルー

プで練習する。

3 2016年

1月13日 水

地学分野(地震と火山活動)に関する語彙の意味を確認し、発音練習をする。モデルパラ

グラフを元に、ペアでテキスト中の語句や現象の説明をする。

4 1月20日 水 地震についての語彙を含む短いテキストを使用し、地震のメカニズムについてグループ内

で説明をしあう(地震と津波について自分の言葉で説明や質問)。

5 1月27日 水

物理分野(エネルギーの移動)についてグループで話し合い、様々な場面で利用されるエ

ネルギーについて理解する。関連語句の発音練習とモデルパラグラフのリーディング練習

をおこなう。

6 2月17日 水

エネルギーについての語彙を含む短いテキストを使用し、グループ内でエネルギーの移動

について説明しあう。様々なエネルギーの特性についてペアやグループで説明する練習を

する。

3月11日 金 修了式

43

<2ndステージ>

回 講座日 曜 講 座 内 容(各回90分)

2015年

4月13日 月 開講式

1 4月22日 水 プレゼンテーションの基本(声の使い方、ジェスチャー、話す姿勢の役割)を考え、指

導者が各人のしぐさと姿勢を一人ずつチェックした後、ペア間で自己紹介により平易な

プレゼンを実習。

2 5月13日 水 プレゼンテーションでのジェスチャーと声の使い方について、講師の説明を受けた後ペ

アで練習。プレゼンテーションの仕方を覚える。

3 5月27日 水 練習用のトピックを使ってプレゼンテーションの構成を学んだ後、活動を通して、テキ

ストにある話題を用いて短いスピーチを作成する。

4 6月10日 水 プレゼンテーションの各部分の構成法を学び、グループで簡単な実習を行う。その後、

各人が決めてきた話題に関しプレゼンテーションを行う準備をする。発表原稿を提出し、

次回の講座までに添削してもらう。

5 6月17日 水

各人が設定したテーマ(科学分野)で、ポスターを用いてプレゼンテーションを行う。

指導者からコメントをもらい、スピーチの内容について、話の移り変わりやつなぎ方、

結論の話し方を個人・ペアで練習する。原稿を見ないでアイコンタクト等を意識した発

表ができるように練習する。

6 7月15日 水 順番に4分間でポスターを用いてプレゼンテーションを行い、発表の内容、姿勢、アイ

コンタクトなど学習した事柄について、生徒からの評価と指導者からのコメントをもら

う。

9月25日 金 修了式

エ.成果と課題

<1stステージ>

十分な予備知識がない分野でも、生徒たちは関心を持って意欲的に取り組んでいた。科学的な事柄を題

材としてペアや尐人数のグループで情報交換をし、回を重ねるごとに活動に慣れていった。半数以上の生

徒が自分の英語に自信を持てるようになった。(生徒アンケート資料④)。課題として、英語を話すこと

はできても、他人の英語を聞いて理解する力の向上が必要だと生徒が感じていること、より多くのプレゼ

ンテーション例に触れさせる必要があることなどが挙げられる。また、生徒アンケートでは、「この講座

をきっかけに科学に関した他の英語を読んだりしたか」という問いに対し、「した」と解答した生徒は3

分の1であった。科学英語と触れることができる番組などを紹介したこともあり、昨年よりは増加したが、

さらに啓発していく必要がある。

<2ndステージ>

立ち方や目線などの基本的なことからディスカッションまで、様々なプレゼンテーションの手法を学ぶ

ことにより、大多数の生徒が英語を話す力が向上し、自信を持つようになった。今回は、序論、本文、結

論という発表の型にあてはめた原稿をあらかじめ提出し、講師に添削してもらった。また、模造紙大のポ

スターも作成してプレゼンテーションを行った。受講の満足度は非常に高い(生徒アンケート④)。グア

ム大学でのプレゼンテーション(修学旅行)やイギリス研修における英語でのプレゼンテーションの核と

なって活躍してくれたと思われる。また、昨年度の反省から、今年度は最終日に行った各自のテーマによ

るプレゼンテーションの原稿を提出させることにしたので、大学で行うアカデミック・ライティングの端

緒にもなったと考えられる。課題としては、アンケートの結果から、読む力がついたと答える生徒が尐な

44

いことである。生徒がさらに科学に関心を持ち、科学英語を読む機会を持てるよう、講座終了後も働きか

けていく必要があることが挙げられる。

受講した生徒たちのアンケートには、「科学を英語で学びたい」、「もっと話せるようになりたい」、

「科学論文の書き方をもっと学びたい」、といった前向きな感想が多く見られた。また、この講座を通し

て培われた力は、将来、社会に出たときに役に立つと実感している生徒もいる。このように、この講座は

生徒の学習姿勢に好影響を与え、英語で発表することを通して、将来国際的な場において活躍することを、

より意識させることに役立ったと言える。

(2)科学英語の取組

ア.目的

科学の諸分野に関する諸問題を英語で考えることを通して、これらの問題に関心を深め、自らテーマを

設定して英語で調べ、探究し、表現しようとする態度を養うことを目指す。

イ.対象生徒

1年理数科生徒

ウ.内容

(ア)英語による理科実験

本年度は、本校教員とALTとのチームにより、1年生理数科を対象に、全て英語による生物の実験を

行い、英語のレポートを課した(2学期)。

(イ)ALTによる科学に関する英語の授業

本校勤務のALT(生物専攻)により、1年生理数科を対象に、大学での生物の研究やフィールドワー

ク等について英語で1時間の授業を行い、英語で感想を書かせた。

エ.成果と課題

理科における英語での実験や授業では、生徒は講師の全ての英語が聞き取れなくとも、授業内容をおお

むね理解し、積極的に参加できた。科学を英語で考え探究しようとする姿勢を養うためには、多くの生徒

にプラスの影響を及ぼしたものと感じられる。今後は、理数科だけでなく普通科の生徒も対象とし、系統

的、継続的な取組にできるかが課題であろう。

45

2節 カリキュラム開発

1.探究・探究S(理数科課題研究についてはp.23に記載)

本校理数科は、開設当初より「課題研究」に取り組んできた。当初は2年生においてのみの実施であっ

たが、SSH指定後は、理数科1、2年生に対し「探究S」と位置付けて、課題研究に関する指導を2年

間かけて計画的・組織的に行っている。

SSH1期目は、探究的活動を通じて知的探究心を高め、学習意欲の向上はもとより、研究を通じて進

路についての高い関心を持たせることができ、高い教育効果を得た。1期目後半は、プレゼンテーション

能力の向上を主眼に指導法を確立した。さらに、「探究S」で培った指導法を普通科10クラス400名に

対しても活用するため、普通科「探究」の中に反映させ、その結果は、グアムでの修学旅行プログラムの

中で「グアム大学での英語での発表活動」として普通科・理数科計440名による英語でのプレゼンテー

ションに結びついた。あわせて、理数科2年生では、課題研究の英語での発表会も行なっている。

2期目はさらに、課題設定能力の向上に向けてその取組をさらに深め、そこで培った指導法をさらに普

通科「探究」400名を対象とした指導に反映させることを目標としている。

「探究S」1年次は、課題研究推進のための意義の理解、および動機付けのためのガイダンスを行い、

情報処理の基礎からIT機器の応用までを学習し、実験・実習の基礎技術など基礎的なスキルを習得させ、

課題研究への取組の基礎を固める。2年次には、1年次に行った課題研究に向けての基礎的素養を背景に、

課題発見、課題設定、探究活動、プレゼンテーションという一連の探究過程を体験させ、科学的な思考力・

判断力・表現力の育成をはかる。

そして、平成25年度からは、理数科2年生においては「課題研究」が「探究S」と分かれ、パフォー

マンス評価やポートフォリオを活用した評価など、生徒に付けさせたい能力に関してより定量的な評価が

出来るように取り組んでいる。

理数科1年生や普通科の評価については、成果物による評価と、生徒による相互評価、自己評価によっ

て行った。

ア.目的

探究活動を通して、課題設定能力・問題解決能力の育成を目指すとともに、情報機器や情報通信ネッ

トワークなどを適切に活用して情報を収集、処理、表現するとともに効果的にコミュニケーションを行

う能力を養う。

イ.対象生徒

探究 1、2年生 普通科全員 探究S 1、2年生 理数科全員

ウ.内容

・「これからの学び」や「探究すること」の意義について学ぶ。

・さまざまな思考や議論方法について、体験を通して理解し、実践する。

・クリティカルシンキング、議論を重ねることで課題の本質に迫り合意を目指すことなど

・情報機器および情報通信ネットワークを適切に活用する。

・インターネット等からの適切なデータ収集と処理

表計算ソフトによる処理と表現(スキルの習得)、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトを用

いた結果のまとめと発表(スキルの習得)、メディアリテラシーや情報モラル(著作権、効果的な情

報検索方法、引用の際の注意点等)についての学習、図書館の活用方法について

・探究することの意義を理解し、自分なりの探究方法で実践する(個人探究/グループ探究)。

46

・計画立案(テーマ設定、仮説構築、検証方法の決定)

・探究活動および結果のまとめ、考察

・レポート制作やポスター発表の方法の理解と実践

・発表を正しく評価、批評する力を身に付け、自分にフィードバックできる力を身に付ける。

・グループ探究活動においては、共同作業の意義を理解し、実践する。

・課題を発見し解決していく力や、他者とのコミュニケーションを行う能力を育成する。

・論文を書くための基本的な技術を身に付ける。

・英語によるプレゼンテーションや質疑応答の方法を理解し、実践する。

(ア)1年生

期 月 内 容 学習の目標・留意点等

・4月15日(水)

講話「探究ガイダンス」

講師 山崎 仁嗣(本校教諭)

探究の時間で何を学ぶのか

・4月16日(木)

講話

「これから探究・探究Sを学ぶにあたって」

講師 京都大学大学院 椹木哲夫 教授

・ExcelとWordを使う

・7月13日(月)~14日(火)

夏休みの探究活動計画立案

探究領域、分野、テーマ決定

活動の計画

・8月28日(金)(夏休み)

講話「メディアリテラシー」

講師 龍谷大学理工学部数理情報学科

大西俊弘 准教授

探究活動のまとめ、2学期の活動計画立案

・自ら課題を設定し、その解決のために主体的に探究する

ことの意義

・探究活動を始めるにあたり必要なものの考え方を学ぶ。

情報を鵜呑みにしないこと

自分独自の考え方を持ち、発見すること

事象を様々な視点から考察すること

・情報機器を使うスキルを身に付ける。

・エクセルの操作方法を学び探究活動に活用する。

・班単位で夏休みの探究活動の計画を立てる。

課題の設定、問題解決に向けての計画を立て、課題解決

能力を養う。

・探究活動

・メディアから発信される情報を受信する立場での態度、

姿勢について考えさせ、情報社会での生き方について留

意する点を理解する。情報の表現方法によって、解釈が

大きく変わる事例について知る。

・夏休みに行った探究活動を中心に、各班で成果をまとめ

てデータ化する。

10

11

・小論文輪読会

・9月24日(木)

「夏休み活動の現状報告会」

・10月22日(木)

講話「伝えるということ」

~探究の魅力とは何か。

ポスター制作に向けて~

講師 京都大学総合博物館

塩瀬隆之 准教授

・中間発表会用ミニポスター準備、製作

・2年生の探究活動 中間発表見学

・各自が作成した小論文を、クラス内で輪読

・夏休みに行った探究活動を中心に、各班で成果をまとめ

データ化する。

・探究活動を行っていくうえで必要なこと、探究活動の魅

力、および人に伝わる発表とはどんなものかを学ぶ。

・研究の現状と到達段階をA4ポスターで示す。

・2年生のグアム大学での英語プレゼンテーションの事前

47

12

・中間発表会用ミニポスター製作

・探究活動中間発表会

発表を見学し、プレゼンテーションのやり方を学ぶ。

・これまでの探究活動の成果を、ミニポスターにまとめデ

ィスカッションする。

・2学期から冬休みの活動のまとめ

・SSH課題研究発表会

・発表用ポスター制作

・ポスター発表

・2学期から冬休みの活動をまとめデータ化する。

・理数科の課題研究発表を聞き、プレゼンテーションにつ

いて学ぶ。

・探究活動の成果について班で討論を重ね、論理を構成し、

その内容を一枚のポスターに仕上げる。

・グループ探究活動の成果をまとめたポスターを用いて発

表することで、プレゼンテーション能力を付ける。

・他の班の発表をクリティカルにとらえ、積極的な討論を

行うことで、議論する力を付ける。

(イ)2年生

期 月 内 容 学習の目標・留意点等

≪グループによる探究活動≫

・各自の探究テーマ企画書の提出

・4月10日(金)

オリエンテーション

修学旅行における英語研修への取組について

・グループの決定

・グループ内でのテーマ企画書の検討

・グループテーマの決定

・テーマ発表会

・探究活動

・探究テーマの企画書を書くことで、取組たいことを明確に

する。

・グアム大学での「プレゼンテーション」への取組の流れを

知る。

・テーマ企画書を検討しながら、仮説と検証方法などについ

て理解を深め、グループとして取り組むのにふさわしい「テ

ーマ」を決める。

・各グループの発表をすることで、テーマを明確にするとと

もに、他のグループとの質疑やアドバイスをもとに、自分

たちの取組をよりよいものにする。

・検証手段としてのデータの取り方を検討する。

・夏休みの計画をグループで話し合う。

・夏休みを利用して、研究所などの各種施設へ取材に行く。

また実験を行う。

・夏休みの探究活動レポートを作成する。

10

11

12

・夏休みの探究活動の振り返り

・プレゼンテーションについての一斉授業

講義「わかりやすい研究発表と見やすい資料の作り方」

講師 京都大学大学院エネルギー科学研究科

助教 山末 英嗣 氏

・プレゼンテーションスライドの絵コンテを描く

・プレゼンテーションスライドの作成

発表原稿の作成

・グアム大学での発表のリハーサル

・修学旅行:グアム大学で発表

・夏休み活動報告書をもとに、成果を共有するとともに探究

活動をどう進めるか話し合う。

・プレゼンテーションとは何かを学び、あわせてプレゼンテ

ーションソフトの使い方を学ぶ。

・プレゼンテーションスライドの絵コンテを描くことで、探

究活動の全体像を把握し、ストーリーを作る。

・データの整理で、表計算ソフトの使い方を習得する。

・英語で発表できるように原稿を作成する。

・探究内容を英語で発表する。1年生にも公開する。

・現地の教授や学生に、探究活動の成果についてパワーポイ

ントを用いて英語で発表する。

・グアム大学の教員から評価を受ける。

48

≪個人による探究活動≫

・論文の書き方を学ぶ

・論文の作成、提出

・輪読会

・講話「情報社会と人間」

講師 大津市教育センター 次長

安原 正登 氏

・探究活動のまとめを各個人で行う。

・論文の作成を通じて、構成レイアウト、図表類の適切な配

置、文章表現等、発信者としての論文作成のスキルを修得

する。

・論文の輪読会を行い、他の論文を評価し、また自分の論文

の評価を受ける。

・現代の情報社会とその影響を受ける自分たちの生活に関わ

る問題を学び、これからの情報社会に参画する態度を身に

付ける。

エ.成果と課題

1年生から2年生まで、グループ研究の方法、英語でのプレゼンテーション、論文の作成と、学年ごとに目標

を設定し、探究活動を行わせ、課題設定・探究・プレゼンテーションの能力の育成を行った。

1年生では、探究活動を行う基礎的なスキルとしてエクセルによるデータ分析や提示方法を学び、探究活動

に活用することができた。また、グループごとに、課題を設定させ、解決のための方法を計画させ、探究活

動を行い、成果をポスターで発表させた。これら一連の探究活動を通じて、活動の成果をまとめる論理力、

その論理にもとづいて発表するプレゼンテーション能力、その際にネットワークを活用する情報検索、収集

力といった、情報スキルの習得をさせることができた。さらに、探究活動と並行して講演会形式の一斉授業

を行い、「視点を変えて考えを深める方法」や、「クリティカルシンキング」の講演では、科学的・論理的・

批判的思考の方法を学ばせ、「メディアリテラシー」の講演では情報社会における、情報の受信者としての

態度を学ばせることができた。ポスター発表では、発信者としてのプレゼンテーション能力のみならず、情

報を受信する際に、クリティカルな思考をもとに、議論できる能力を身に付けさせることができた。

2年生では、グループでの探究活動をまとめ、パワーポイントを用い

て英語でのプレゼンテーションをグアム大学の教員、学生の前で行った。

事後のアンケート結果をp.74に示す。88.0%の生徒が有意義な

体験となったと回答しており、探究活動の過程や英語での表現、グルー

プでの共同作業等に意義を見いだしていた。特に、調べ学習に終わらず、

ほとんどのグループが取材や実験など自分たちで何らかのデータをと

った上で考察する活動となっていた。また、動画や実演を交えたプレゼ

ンテーションを行うグループもあり、多様な工夫がみられた。

一方で、原稿を見ないで発表するように指導したが、どうしても不安で原稿を持ってしまう生徒もいた。

グアム大学側からのアドバイスとして、聴衆をみて話すアイ・コンタクトの大切さ、画面を指示する等、

ジェスチャーを交えてのプレゼンテーション、大きな声で、ゆっくりとはっきりした英語で話す心がけ等

を指摘された。生徒にとってはうまく話せないながらも、英語でのプレゼンテーションを行うことは、大

きな体験になったと思われる。

全体を通して、さらに「プレゼンテーション能力」を上げることが課題であり、

・ポスターやパワーポイントの作成の指導を充実させる。

・グアム大学での発表のリハーサルで大学教員の協力を得る。

などを実施することで、克服していきたい。また、論文作成を充実させることを目的にアカデミック・ラ

イティングに取り組み、科学的論述力の育成を図る必要がある。

49

2.物理・化学・生物

学校設定科目として「SS物理Ⅰ、Ⅱ」「SS化学Ⅰ、Ⅱ」「SS生物Ⅰ、Ⅱ」、および理数科科目「理

数物理」「理数化学」「理数生物」を実施している。対象は「SS物理Ⅰ」「SS生物Ⅰ」が普通科1年

生全員、「SS化学Ⅰ」が普通科理系2年生全員、「SS物理Ⅱ」「SS生物Ⅱ」が普通科2年生の選択

者、および3年生の選択者、「SS化学Ⅱ」が普通科理系3年生全員である。

理数科の生徒には、1年生全員に「理数生物」、2年生全員に「理数物理」「理数化学」、3年生全員

に「理数化学」、3年生選択者を対象に「理数物理」「理数生物」を実施する。

いずれも、各科目の基礎と基礎を付さないものの内容を融合し、教材の再構成を行い、効果的な授業展

開を行い、加えて実験実習の充実をはかっている。

また、京都大学等の若手研究者を招き、「ドクター教員」による授業を、各科目で行い、先端科学の成

果に基づいた授業を行っていただいた。以下に、各科目の実践結果と評価を記述する。

(1)SS物理Ⅰ、SS物理Ⅱ、理数物理

ア.目標

自然科学の基礎である物理学について、その基本的な概念や法則、自然現象を探究する方法や考え方を

学び、身の回りの自然現象を実験的、理論的に解明する能力を身に付ける。

イ.対象生徒

1年生 普通科全員 403名(SS物理Ⅰ)

2年生 普通科理系 214名(SS物理Ⅱ)、理数科 40名(理数物理)

3年生 普通科理系 185名(SS物理Ⅱ)、理数科 32名(理数物理)

ウ.内容

「物理基礎」と「物理」の枠組みを外し、それらを融合させる。1 年生では、物理学の基礎となる力学

から学習し、その後、「波動」「熱力学」「電磁気」「原子物理」を学習する。波動では「物理基礎」の

内容とともに、「物理」の「回折」「反射・屈折」などや「光」も現象のみ学習し、詳しい証明や式、演

習は2年生で行う。また「電気」「原子核とエネルギー」については、エネルギーという大きな観点から

学習することを目指し、教科書の内容とともに、ドクター教員による授業で原子核や宇宙といった内容に

ついても学習する。2年生では、「物理」の「円運動」や「単振動」を学習したのち、「単振動」の考え

方を用いて「波動」を深く学習する。3年生では、「物理」の「電磁気学」「原子物理」を中心に学習す

る。このように本校独自の編成を行うことで、SSHの指定を受けた、理工系進学者向けの体系的な物理

カリキュラムの研究開発を試みる。

教材としては、「物理基礎」「物理」の教科書をベースに、適宜、プリント教材などを併用する。

また、学習にあたり物理現象を具体的にイメージしながら基本的概念や法則を理解できるように、可能

な限り生徒実験、演示実験を取り入れるとともに、数学の学習進度に応じ、微分積分を用いた解説を行う

ことで、大学での学びにスムーズに移行できるように考慮する。

50

エ.ドクター教員による授業

①原子核と放射線、宇宙

・1講座当たりの時間数、対象生徒 1年普通科10講座×2=20時間

・担当講師・内容

京都大学理学研究科 花山天文台 野上 大作 准教授

・原子の構造 下種の宇宙線の発見 核反応のエネルギー 放射線の種類と強さ

・太陽エネルギーの大きさ 宇宙における元素合成 宇宙の歴史

②原子核とエネルギー、素粒子、宇宙

・1講座当たりの時間数、対象生徒 3年普通科5講座×2=10時間

3年理数科1講座×2= 2時間

・担当講師・内容

京都大学理学研究科 物理第2教室 原子核ハドロン研究室 川畑 貴裕 准教授

・原子核とエネルギー、素粒子と宇宙

(2)SS化学Ⅰ、SS化学Ⅱ、理数化学

ア.目的

科学的な事物・現象についての観察・実験などを行い、自然に対する関心を高め、探究する能力と態

度を育てるとともに、基本的な概念や原理・法則を理解させ、科学的な自然観を育成する。

イ.対象生徒

2年生 普通科理系 SS化学Ⅰ 277名、理数科 理数化学 39名

3年生 普通科理系 SS化学Ⅱ 274名、理数科 理数化学 40名

ウ.内容

物質を構成する粒子の概念を確立したのち、物質の三態、気体の性質、液体の性質について学ぶ。ま

た、物質の変化について、定性的および定量的な取り扱いができるように、熱化学、酸・塩基、酸化・

還元と学習を進める。その後、それらの理論を用いて、無機化学物質、有機化学物質の性質について学

習する。

より効果的な学習のために従来の化学基礎、化学の内容についてその枠にとらわれない形で進める。

また、実際に自分で実験することは特に大切であると考えられるため、その単元に応じて実験を行う。

エ.ドクター教員による授業

・時間数

3年生普通科理系7クラスおよび理数科1クラス 各2時間 計18時間

・担当講師

京都大学大学院薬学研究科 革新的ナノバイオ創薬研究拠点

博士課程 柳本 真弥 氏 他 博士課程 3名

・内容

第1回 医薬品アスピリンの安定性の評価 <実験>

第2回 実験結果の考察、医薬品の薬理作用について <講義>

51

(3)SS生物Ⅰ、SS生物Ⅱ、理数生物

ア.目標

・生物や生物現象についての授業や実験・観察を通して、自然への関心や探究心を高め、自然や自然現

象に対する豊かな感性を培う。

・生物や生物現象についての基本的な概念や原理・法則を理解し、それに基づく科学的な自然観を養う。

・進学に向けての十分な学力を身に付ける。

イ.対象生徒

1年生 普通科全員 SS生物Ⅰ 400名、理数科 理数生物 40名

2年生 普通科理系 SS生物Ⅱ 63名

3年生 普通科理系 SS生物Ⅱ 89名、理数科 理数生物 9名

ウ.内容

・1年生では、「生物基礎」の内容に生物の「代謝」「遺伝」「進化」を統合させ、発展的な学習を進

める。それと同時に、実験実習を通して、生物的な探究の手法の習得を目指す。

・2年生では、生物の「細胞と分子」「代謝」「遺伝情報の発現」「生殖と発生」の4分野を学習する。

1年生と同様、実験実習を通して生物的な探究の手法の習得を目指す。2年次から化学分野を履修す

ることにより、各分野とも、分子レベルまで深く入り込んで学習する。

・3年生では、「植物の環境応答」「動物の反応と行動」「個体群と生物群集」「生態系」「生物の進

化」「生物の系統」の6分野を学習する。2年次同様、化学を履修していることより、各分野とも、

分子レベルまで深く入り込んで学習する。

・遺伝の分野では各学年ともドクター教員による最先端の内容を網羅した専門的な講義を実施する。

・理数生物では、1年のSS生物Ⅰ、3年のSS生物Ⅱの内容に、さらに最先端の実験実習を取り入れ

て実施している。

エ.ドクター教員による授業

・担当講師、講義内容

京都大学大学院生命科学研究科 助教 粂田 昌宏

1年生 各1時間 遺伝子の本体について

2年生 各1時間 バイオテクノロジーについて

3年生 各1時間 分子生物学の研究方法

大阪歯科大学細菌学講座 助教 円山 由郷

2年生 各1時間 分子レベルでとらえた生物の分類

3年生 各1時間 分子レベルでとらえた生物の分類

滋賀医科大学生化学・分子生物学講座 助教 田中 裕之

1年生 各1時間 生命とグルコース

・実施時数およびクラス

34時間実施

1年生普通科10クラス、理数科1クラス、計11クラス

各クラス2時間実施 計22時間

2年生普通科理系2クラス

各クラス2時間実施 計 4時間

3年生理系3クラス、理数科1クラス、計4クラス

各クラス2時間実施 計 8時間

52

(4)物理・化学・生物における成果と課題

物理、化学、生物分野の内容を体系的に理解させるために、物理基礎・物理、化学基礎・化学、生物基

礎・生物をそれぞれ融合させ、本校生徒の学力実態に即し、体験的でより発展、深化させた授業を展開

した。重複している内容は、融合させた学習を行うことで、より深く考えさせる機会となると同時に、

その分野に関する連続した実験を行い、その実験結果の積み重ねから論理展開を行うことにより、体験

に基づく知識の習得が図れた。また、ドクター教員(博士号取得者等による授業)を実施したことによ

り、高校での学びが大学での学びにどのようにつながっていくのかを知る機会となり、学習意欲を喚起

することに一定の効果があった。

さらに、英語での実験を取り入れるとともに、アメリカの高校・大学で使用されている物理・化学・生

物の教科書を各教室に配本することで、英語の活用と国際化の視点を養うことができた。

今後の課題としては、生徒実験や演示実験をより充実させ、自然現象への興味・関心を高め、学習が単

なる知識習得に陥らないような授業展開のあり方の研究を進めるとともに、レポート等を通じて、科学

を記述で表現する力を養うことが必要である。

53

3.SS数学・理数SS数学

ア.目的

数学における基本的な概念や原理・法則の理解を深め、事象を数学的に考察し処理する能力を高め、数

学的活動を通して創造性の基礎を養う。数学的な見方や考え方のよさを認識し、それらを積極的に活動す

る態度を育てる。

イ.対象生徒

普通科1年生全員 普通科理系2、3年生 理数科全員

ウ.内容

3年間を見通して、高校数学の内容を膳所高校独自に編成し直し、より効果的な履修が可能になるよう

にする。その上で、より高度な内容や発展的な内容にも取り組むようにした。

エ.ドクター教員

・実施時数および対象

全24時間(全7日) 2年生理数科 課題研究数学分野の2班8名

・実施期間 平成27年10月26日(月)~平成28年 2月15日(月)

・担当講師

滋賀大学教育学部 専任講師 長谷川武博 先生

・内容

生徒発表を聞き、それまでの内容について質疑応答 4時間

課題研究の内容について専門家の立場から指導、助言 16時間

課題研究のプレゼンテーションについて専門家の立場から指導、助言 4時間

オ.成果と課題

理数科では1年生から3年生まで、クラスを半分の20人ずつに分け、尐人数で授業を行っている。ま

た、普通科を含め演習を重視し、各定期考査直前の5~8時間程度は生徒が板書した答案を添削する形式

の演習を行っている。

進度では、1年生においては秋までに数学Ⅰ、数学Aの内容を終え、数学Ⅱの内容に進む。このとき、

数学Ⅰの三角比に続いて数学Ⅱの三角関数を学ぶといったカリキュラムにして、この分野の理解を深める

ことができるようにしている。2年生においては、数学Ⅱ、数学Bのあと数学Ⅲの内容に進むが、発展的

な内容として、空間における平面や直線の方程式、テイラー展開やオイラーの公式などを解説した。3年

生においては数学Ⅲの内容を終えた後、発展的な内容として、微分方程式、曲線の長さなども扱った。こ

のように、空間の平面や直線、微分方程式など、大学での数学につながるような発展的な内容を教えるこ

とができ、入試問題にひそむ数学的なものの見方についても考えさせることができた。

また、数学教員の意識も年々深まり、発展的な取組の内容も深化してきている。その結果、課題研究で

数学的分野を選ぶ生徒が増え、数学講演会に参加する生徒も増えてきている。このことから、生徒の中に

もSSH事業が定着してきたと考えられる。

課題研究においては、今年度、数学的分野を選んだ2班の生徒が自ら設定した「折り紙による三次方程

式の解法と三角形」「陣取りゲームの勝敗を分ける条件」というテーマで研究したいと申し出たので、ドク

ター教員として滋賀大学から長谷川先生に来ていただき、議論しながらより深く学び、研究することがで

きた。課題として、普通科の生徒にも数学講演会などで数学への興味・関心を高める必要があるというこ

とがあげられる。

54

4.授業研究

ア.目標

授業研究を通じて、SSH事業でねらいとしている生徒の能動的な学習態度育成のための探究型・参加

型授業の実践と普及を授業研究を通して行い、教師の能力を高め、授業改善に取り組むための契機とする。

県内の高校や中学校の教員にも公開し、教育委員会より指導主事を招いて研究協議を行った。

イ.期間 平成27年11月6日(金)~平成28年2月17日(水)

ウ.場所 本校各HR教室および特別教室

エ.実施科目

(ア)国 語

担 当:教諭 今井 英夫 第1学年 3組 国語総合「現代文」

教諭 筧 哲明 第2学年11組 古典B

教諭 白子 裕理 第2学年 4組 現代文B

教諭 青谷 伸夫 第3学年 1組 現代文B「問題演習」

教諭 福造 裕子 第3学年 2組 古典研究「問題演習」

日 時:11月11日(水)第3限(10:30~11:20)

研究協議:第4限(11:30~12:20)

(イ)数 学

担 当:教諭 村松 佳樹

日 時:11月6日(金)第5限(13:20~14:10)

対 象:第1学年6組 SS数学Ⅰ(M2)「三角関数」

研究協議:第6限(14:20~15:00)

(ウ)理 科

担 当:教諭 池下 克美

日 時:11月20日(金)第3限(10:30~11:20)

対 象:第3学年8組 SS化学ⅡA「金属イオンの分離と確認」

研究協議:第4限(11:30~12:20)

(エ)保健体育

担 当:教諭 城念 久雄

日 時:11月9日(月)第5限(13:20~14:10)

対 象:第2学年10組 保健「過去から学ぶ環境問題」

研究協議:第6限(14:20~15:10)

(オ)外国語

担 当:教諭 村瀬 誠

日 時:2月17日(水)第3限(10:30~11:20)

対 象:第2学年1組 英語表現Ⅱ「スピーキング活動」

研究協議:第4限(11:30~12:20)

オ.結果

県内の全高校に加え、昨年度から中学校に向けても、授業研究への参加を呼び掛けた。その結果、県

内の高校からは59名(国語11、数学11、理科4、保健体育6、外国語37)の参加を得た(昨年

度は70名)。中学校からは21名(国語3、数学2、理科2、体育2、外国語12)の参加であった

(昨年度は21名)。

授業実施後の研究協議では、活発な意見交換が行われ、教育委員会の指導主事からの指導、助言があ

った。教員の授業研究や教材開発を進める機会として定着しつつあると思われる。

55

5.教材開発

新学習指導要領では、言語活動の充実、理数教育の充実などが教育内容の改善事項としてあげられてい

るが、本校では、以前から課題研究や理科の実験・実習を通じて、科学的な思考力や表現力の育成を目指

している。昨年度に引き続き、生徒実験教材の開発を行った。中には英語で記述された実験書をもとにし

たものもある。

以下に、化学、物理、生物各分野で開発した教材について述べる。

ア.物理教材開発

(ア)目的

新学習指導要領導入に伴いSS物理Ⅰは1年次で文系・理系を問

わず全ての生徒に行うこととなった。そこで多くの基礎的な物理実

験の結果を、実験班でのグループディスカッションで考察すること

で問題解決能力を身に付けさせることにした。

(イ)対象生徒

1年生の普通科全10クラス

(ウ)内容

①実験について:1年生生徒実験として、実験1「重力加速度の

測定」(5月下旬)、実験2「摩擦力と抗力の関係」(7月中旬)、

実験3「運動の法則」(9月中旬)、実験4「力学的エネルギー」

(11 月中旬)、実験5「気柱共鳴」(2月中旬)の5回の実験を

行った。

②ディスカッション(各班)について:各実験の時間中において

測定と結果の記録が終わり次第、各班で考察をさせた。自分ひとり

のレポートとしての考察ではなく、授業中に他の実験班に対して自

分たちの考察を発表し、議論することを念頭に考察させた。

③ディスカッション(クラス全体)について:

予め、授業中に教員が各班の考察の状況を確認し、考え

方や結論までの道筋に差異のあるものを 2~3班選び、授業

時間中に発表させた。その内容を板書として残し、クラス

全体として議論させた。最後に、

教員によってまとめを行った。

④その他・実験1「重力加速度の測定」については手書きのグラフだけでなく、エクセルによってグラ

フを作成する授業を別時間で 2時間実施し、その計算処理やグラフも含めて考察させた。

(エ)成果と課題

このディスカッションにより、生徒のレポートにおける考察の内容が向上した。例えば、物理の用語の

正しい使い方や、論理的な考察の組み立てといった点が、昨年度の1年生で同じ実験を行ったときよりも

向上していた。継続的に続けていくことで、2 年生以降の理科での実験、「探究」における研究にも良い

効果をもたらすのではないかと思われる。しかし、授業の進度との兼ね合いから十分にディスカッション

の時間が取れない場合もあった。その時の生徒の様子としては、物理の能力の高い生徒が率先して話すだ

けになってしまっていた。これを解消するために、グループ構成や、ディスカッションの方法について検

討が必要である。

図 1:実験レポート

図 2:ディスカッション時の黒板レイアウト例

56

イ.化学教材開発

(ア)目的

「SS化学Ⅰ・Ⅱ」の特定の単元では、与えられた手順・操作を行うのではなく、生徒自身が実験計画

を立てたり、方法を考えたりする探究的な実験を取り入れている。また、班ごとの実験で得られたデータ

を共有し、そのデータをもとに考察し合う活動を取り入れた実験、英語のプリントに基づく実験、実験に

必要な水溶液の準備調整から行う実験などを継続的に行っている。これらの活動を通じて、探究的学力の

さらなる伸長を目的としている。

(イ)対象生徒

対象生徒は単元内容によって異なるが、3年生理数科1クラス(40名)および、3年生普通科理系の

一部(2クラス、78名)、2年生理数科1クラス(40名)、2年生普通科理系(7クラス、277名)

において実施した。

(ウ)内容

平成27年11月4日(水)3年生理数科

平成27年11月17日(火)・20日(金) 3年生普通科理系

金属イオンの反応をイオン化傾向と結びつけて理解する授業

の後、10 種類の金属イオン(塩)を含む溶液を推定する実験を

計画する授業を行った。20日は研究授業を行い、研究協議で

は「あらかじめ準備しておいた実験を行うのではなく、実験の

やり方自体を生徒に考えさせて行うことは、時間がかかるかも

しれないが、生徒が主体的に活動できるという点でおもしろく

感じました。」などの意見が得られた。

平成28年1月13日(水) 2年生理数科

あらかじめ測定したシクロヘキサンの冷却曲線をデータとし

て与え、グラフより凝固点を求めさせた後、一定量の未知物質

を含むシクロヘキサン溶液の冷却曲線を記入させ、その測定データより未知物質の分子量を求める実験を

行った。上図は生徒が提出したグラフの一例を示す。かき混ぜながら温度測定を行っているため過冷却現

象は確認できないが、純溶媒よりも溶液の温度が下がることを体感できた。なお、未知物質にはナフタレ

ン(理論値 128)を用いたが、生徒実験で得られた値は 110~130 であった。

平成28年1月25日(月)~2月8日(月) 2年生普通科理系

中和滴定によって食用酢のパーセント濃度を測定する実験において、2時間連続の授業を設定し、必要

な水溶液の調整から滴定実験までをすべて行った。

(エ)成果と課題

授業中の様子や授業後の感想では、「自分自身が計画する楽しさ」や「実験の意味を考えながら効率的に

取り組めた」など、生徒自身が積極的に実験に関わっていることが読み取れた。従来は、時間の制約もあ

り、手順等を細かく記載したプリントをもとにした実験を行うことが多かったが、安全面に十分配慮した

上で、生徒自身が考えながら行っていくこのようなスタイルの実験を増やしていきたい。

57

ウ.生物教材開発

英語で行う「アガロースゲル電気泳動法によるDNAサンプル(大腸菌のラムダ・ファージのDNAを

制限酵素によって処理したDNA断片)の分離」実験(2時限連続)。

(ア)目的

DNA制限酵素の働き、DNAの電荷、DNA電気泳動実験の原理を知り、ピペットマン・泳動槽等の

生命科学の基本操作法を習熟する。

本実験を英語で行うことにより、科学英語の能力も啓発する。

(イ)対象生徒

1年生 理数科 対象40名

重点枠SSH連携校 安曇川高校 対象40名

(ウ)内容

京都大学大学院生命科学研究科分子情報解析学粂田昌宏助教監修のもと、「アガロースゲル電気泳動法に

よるDNAサンプル(大腸菌のラムダ・ファージのDNAを制限酵素によって処理したDNA断片)の分

離」実験の英語でのレジュメを作成した。それを用いて、本校配置のALT Nithya Kubendran と共にオ

ールイングリッシュでの実験を行い、英語でのレポート作成を果たした。

(エ)成果と課題

教科書で扱う先端的学習実験の一環として本実験に取り組んでいる。生命科学分野は英語での学習がよ

り重要であるため、特に本実験はALTと共にオールイングリッシュで実施した。用いた英語のレジュメ

には日本語訳の記入をせず、英語のまま理解することを心がけさせた。また、レポートは英語での作成を

義務づけた。今後、人材育成重点枠の連携校においても英語での実験に取り組むため、安曇川高校におい

て先行実施している。

2年目の実施で、実験操作もスムーズに指導でき、実験操作の間に、細菌がウイルスからの防御に制限

酵素を利用している解説を英語で行った。

生徒アンケートによると、英語での実施でも、実験の目的であるDNA制限酵素の働き、DNAの電荷、

DNA電気泳動実験の原理について理解できている。また、生命科学分野を英語で学ぶことの大切さにつ

いても多くの生徒が肯定的にとらえている。さらに、機会があれば英語での実験を増やしてはと多くの生

徒が考えている。ただし、日本語の方がわかりやすいという生徒もおり、理科分野の中でも日本語で理解

を深め、実験を通じて探究的に学習を深化させる分野もあろうし、今回の単元のように、内容において英

語が主流となった分野では積極的に英語を活用した授業を展開する必要があろう。

また、本実験の準備もある程度のノウハウが必要であるので、今年度の本県の実習助手講座を本校が担

当し、本実験の準備や実際の指導のノウハウ等の研修を実施した。県内他校でもこの実験を実施できるバ

ックアップを行い、SSH事業で開発したプログラムの発信、普及に努めたい。

58

6.課題研究の評価

ア.目的

本校理数科は、開設当初より「課題研究」に取り組んできた。「課題設定能力」「問題解決能力」「ディス

カッション・プレゼンテーション能力」を伸ばすことが目標である。平成25年度からは、数値評価が必

要となり、これまでの到達目標をルーブリックという形にまとめ、数値評価することを目的とした。

イ.対象生徒

理数科2年生 39名

ウ.内容

到達目標に対してどの程度到達できているかを数値で評価する。教員だけでなく、生徒にも目標を示し、

到達目標を意識させるようにした。この基準を用いて、レポートのポートフォリオや実験ノートを評価す

るとともに、口頭発表やポスター発表をパフォーマンス評価した。

表 平成27年度 膳所高等学校理数科 課題研究 年間到達目標

目標 項目 A B C

課題設定能力

様々な現象に疑問・

問題意識をもち、課

題を見付け出す

興味・疑問をもったことについてよ

く考え、検証可能な現象を取り出し、

適切な課題を設定することができる

興味・疑問をもったことにつ

いてよく考えているが、検証

可能な現象をうまく取り出

し切れていない

過去の課題研究や文献で扱

われている現象を自分の課

題とする

文献やデータベース

の調査ができる

過去の課題研究や文献、HP だけでな

く、個人の論文まで調べている

過去の課題研究だけでなく、

文献、HPを調べている

主に過去の課題研究のみを

利用している

仮説を考える。研究

方法を考える。

なぜそうなるのか、予備調査の結果

も踏まえて、理論的に深く考えて仮

説をたて、検証方法を考えている

自分で仮説をたてているが、

あまり論理的ではない

過去の課題研究で使われて

いた仮説を利用している

問題解決能力

実験を計画する。実

験装置や実験条件を

考えられる。

適切でオリジナルな実験装置、方法

を考え、論理的に適切な実験条件で

実験できる

実験装置、方法に工夫をして

改良し、適切な実験条件で実

験できる

過去の課題研究で使われて

いた実験装置、方法を用い、

実験条件だけを変えている

実験・観察の手法に

習熟している。

実験装置の扱い、観察方法に習熟し、

正確な測定、観察方法で正確な数値、

観察結果が得られる

実験装置の扱い、観察方法が

適切で、測定、観察結果が正

確に得られている

実験装置の扱い、観察方法を

覚えているが、なぜそうなっ

ているかの理解が弱い

実験結果を考察し分

析する。

得られたデータを適切なグラフ、表

を用いて表し、そこから言えること

を正しく読み取り考察できる

得られたデータをグラフ、表

を用いて表し、そこから言え

ることを読み取り考察でき

得られたデータをグラフ、表

を用いて表し、考察できる

が、言えないことまでも読み

取れたように誤解している

論理的に考え、結論

をまとめる

考察から、言えることを整理し、研

究全体を論理的に矛盾なく結論へ導

くことができる

考察から、言えることを整理

し、論理的に結論へ導くこと

ができる

考察し、考えられることを整

理し、結論を導くことができ

ディスカッション・

プレゼンテーション能力

プレゼンテーション

の技能

(班単位)

スライドを指し、聴衆を見て、原稿

を見ずに大きな声で発表できる

スライドを指し、聴衆を見る

ことを意識しているが、しば

しば原稿を見てしまう

ほとんど原稿を見ての発表

である

スライドのわかりや

すさ

(班単位)

適切で見やすいグラフ、表があり、

全体の流れがわかりやすく、枚数も

適切なスライドが作成出来ている

グラフ、表は適切であるが、

文字のスライドが多いなど、

枚数が多く、流れがつかみに

くい

グラフ、表はかけているが、

文字のスライドが多く、全体

として意味がつかみにくい

要旨

(班単位)

簡潔で、全体の流れが論理的にわか

りやすい要旨である

全体の流れがわかり、研究の

内容が理解できる

全体の流れが整理されてお

らず、研究の内容は理解でき

るが、読みづらい

論文

(班単位)

研究の背景がわかり、実験装置や観

察手法が正確に記述され、得られた

データから適切に考察し、論理的に

矛盾なく結論できている

研究の背景にもふれ、実験装

置や観察手法が正確に記述

され、得られたデータを考察

し、論理的に結論できている

研究の背景や、実験装置や観

察手法が記述され、得られた

データを考察し、結論できて

いる

エ.成果と課題

このルーブリックをもとに、審査発表会の審査用紙や、ポスター発表の審査用紙を作った。その結果得

られた値は、おおむね妥当なものであったと考える。引き続いて、よりわかりやすいものを作成したい。

59

4章 事業の評価と課題

平成27年度は、SSH指定2期目として、以下のような研究開発課題を設定した。

①自ら課題を設定・探究し、発信する能力を育成するプログラムの開発

②国際的な視野に立った科学技術リテラシーを育成するプログラムの開発

③科学的な思考を育む授業を構築するためのプログラムの開発

この開発課題に基づき、以下の仮説を設定した。

①課題の設定・探究・表現といった一連の学習は、自ら深く学ぶ力を育成し、学力の伸長に効果がある。

②大学や研究機関等での先進的な理数教育は、科学的な思考力・態度や国際性を育成することに効果が

ある。

③探究型・参加型の授業の実践は、科学的な思考力・表現力を高め、学びの意欲を引き出すことに効果

がある。

このような仮説に対する取組として、以下の事業を行った。

ア.京都大学・滋賀医科大学との高大連携事業

希望者を対象にした京都大学の特別授業(前期3コース7回、後期4コース6回)、医学系進学希望者

を対象にした滋賀医科大学での基礎医学講座(8回の講座と1回の一日実習、病院見学)を実施した。

京都大学の特別授業は、①「高校で学んでいる内容が大学で学問としてどのように研究されているかを

知る授業」②「最先端技術を学ぶことにより科学を学ぶ楽しさを知る授業」③「テーマの提示を受け、大

学の先生と双方向の議論をすることにより結論に至る、論理展開のできる探究型の授業」を展開し、自然

科学に対する関心や意欲を高めるとともに、能動的な学習の態度育成について、よい機会となった。さら

にラボツアーやミニ実験などで研究者としての一端に触れる体験もできた。

滋賀医科大学での授業は、医学科に進学を希望する生徒が、医学の基礎的知識や医師に対する正しい理

解を深めた。

京都大学特別授業は定員を大幅に越える希望者が集まる高大連携の中核をなす事業となった。そのため、

正規の受講生(全回参加)以外にも、オブザーバー参加(1回のみ)制度を設け、「大学での学びに参加

したい」という全ての受講希望を叶えた。滋賀医科大学との連携授業も当初の協定を大幅に越える希望が

あったが、協定の主旨により、医学科進学希望生すべてを受け入れ実施していただいた。

受講後のアンケートにおいては、「受講して良かった」「学問の奥深さを感じ取ることができた」「進

路を考える上での参考になった」の項目についてほぼ 100 パーセントの生徒が肯定的評価であり、過去に

ない高さであった。また受講後の自身の変化についてのアンケートでも「日々の学習意欲が増した」「授

業を論理の組み立てを意識して聴くようになった」の項目については約 65パーセント、「新聞等で、興味

ある学問に関わる記事が気になるようになった」の項目についても約 80パーセントの結果であり、受講を

通じて生徒が確実に変容していることがわかる。

滋賀医科大学基礎医学講座のアンケートも同様の結果であり、医学教育への理解を深めるとともに、医

学科入学のために高い意欲で今後の学習に取り組むという本事業の目的が達せられていると言える。

生徒の受講態度は極めて良好であり、受講後には先生に質問やディスカッションをする姿も見られ、こ

の特別講義に対して受講生徒全員が積極的に取り組んでいた。また、昨年度より全教員が年間一回以上生

徒引率を行うこととしたので、高大連携事業に参加する生徒の様子を知ることで、SSH事業の成果を認

識し教員として自己の授業改革を進める上での参考とすることにもなり、本校教員がSSH事業に対して

60

さらに意欲的になった。また、滋賀医科大学では、引率教員も医学科教育を知ることで、医学科志望の生

徒に対して適切な進路指導を行うスキルの向上に役立つこととなった。

各講義は受講生が20~25人程度で実施しているが、大学の学問を学びたいという生徒の意欲に充分

に応えるべく、受講者数を増やす工夫が必要である。また、今後は受講生の感想のフィードバックを大学

教員に充分行い、講義内容のさらなる発展を望むとともに、受講後のアンケートでは、興味・関心、学習

意欲の向上にとどまらず、生徒が講義でどのような知識を獲得したかという学習の成果を確認することも

課題として取り組んでいきたい。

イ.探究的取組

理数科の課題研究の実施は、まず各生徒が個々にテーマを主体的に設定する。次に設定したテーマが類

似している4人が1組のグループとなり、グループ内で自己の行いたいテーマPRや研究の見通し、その

研究のおもしろさ等を、徹底的に話し合い、予備実験を通して一つのテーマを設定した。このプロセスに

おいて生徒の「課題設定能力」が育成される。7 月にテーマ発表会を設け、各グループが理科、数学、S

SH担当教員を対象にテーマについて発表し、教員からアドバイスを受けた。この発表会もパフォーマン

ス評価に活用でき、非常に有効であった。

研究がスタートすると実験の方向性の修正や多くの課題に直面し、それをのりこえることや、実験装置

の制作などによって「問題解決能力」が育成された。研究の後半より、研究をまとめる作業に入る中で、

グループ内の生徒と実験と結論の間に論理的矛盾がないかなどについてディスカッションする姿が見られ

た。そして、全員が1月25日の審査発表会のため、口頭発表用のパワーポイントと2月18日の課題研

究発表会でのポスター発表用の英語・日本語でのポスター制作を行った。審査発表会では、課題研究発表

会で壇上発表する代表3グループを選出した。2月18日の発表会当日は2時間半におよぶ英語および日

本語でのポスター発表を実施し、大学教員を審査員として県内科学系ALT、京都大学の留学生などに対

して、英語ポスターを使って英語でのディスカッションを行った。また代表3班の口頭発表は全校生徒の

前で行った。これらのことにより「英語および日本語のプレゼンテーション能力、ディスカッション能力」

が高まったと考えている。審査していただいた運営指導委員をはじめ、例年協力いただいている若手教官

からも、年々研究内容、発表態度、英語力が向上しており、これらの取組は、この「課題設定能力」「問題

解決能力」「ディスカッション・プレゼンテーション能力」を伸長させる効果が高いという評価を得ている。

また、4年前から実験ノートに記録を取り、一年間のレポートをまとめた個人別ポートフォリオを作成さ

せているが、これにより、データを整理し、実験を俯瞰して把握する力に効果があると思われる。ルーブ

リックを用いたパフォーマンス評価を行うことにより、生徒はもちろん指導教員も研究の進捗状況を把握

し、研究の方向性などの修正に生かすことができた。また、このような学習評価に取り組むことで教員の

評価のスキルが向上しているものと思われる。3月にはこの課題研究について論文を作成させている。

次年度の課題として、論文作成においてさらなる能力向上を図るため、1年次よりアカデミック・ライ

ティングに取り組み、科学論述力の素養を身に着けておくことは理数系トップ層育成に重要である。さら

に、パフォーマンス評価については人材育成重点枠の連携校においても共同で研究実施し、評価の精度を

向上させることはもちろん、SSH事業で開発した評価方法を県内高校に広く普及させたい。

61

ウ.カリキュラム開発

探究活動の教育効果の高さに注目し、普通科においては「探究」、理数科においては「探究S」のカリキ

ュラムを開発した。総合的な学習の時間と情報を融合し、両科目のねらいと目標を達成することに留意し、

より発展させる形で実施し、本校生の学力層にふさわしい、高い学習意欲を持ったすべての生徒に有効な

プログラムとなった。グアム大学研修では、2年生438名全員が英語でのプレゼンテーションを実施し、

88%の生徒が自分にとってプラスとなったことを実感した。また、グアム大学の教員からも高い評価を

得た。

エ.国際化事業

希望者対象の科学英語講座では、1stステージは、科学に関する様々なテーマについての語彙や表現

を学び、英語で科学的事象を説明できる力を身に付けることを目指し、2ndステージは主にプレゼンテ

ーションの手法に重点を置き、英語での研究発表の力を身に付けることを目指したプログラムを実施した。

事後のアンケートでは、英語力の自信がついた等、自己の能力の伸長を意識できている回答が80%をこ

えるという成果をあげた。

これ以外の取組として、理科の授業において全て英語での実験に取り組み、生命科学分野など主に英語

で進んでいる研究分野については、高校から取り組む機会を与えた。また、医学生出身のALTによる、

医学を志す生徒への英語でのガイダンス講義は、大学関係者による1年生全員への理科の授業は、英語に

よる科学的思考を促す一助となった。

オ.事業全体の成果

SSH事業に取り組んで10年が経過し、生徒とともに保護者もその教育効果に高い関心をもち、SS

H事業が広く認知、評価されていることが、中学生を対象とした学校説明会のアンケートや入学後の学校

評価アンケートから読み取ることができる。SSH事業全体に対して、PDCAサイクルの確立、特に C:

チェック機能の強化により事業の評価および改善の徹底が図れ、年々プログラム内容が生徒の学力実態に

即した効果をあげるものとなり、生徒の能力向上がみられ、質の高いものへ発展してきた。運営指導委員

会等により、大学教員、県教育委員会の指導・助言をうけることができ、高校-大学とワンパッケージに

よる先端的理数教育、科学技術関係人材の育成という観点から本校SSHの方向が明確になった。それに

伴い進学実績の向上も見られた。先端的理数教育という観点からも、多くのコンテスト等で成果が示され

ているように、SSH事業においてトップ層をさらに伸ばす大きな効果があることがわかった。

今後は、多くのSSH校との連携で、課題研究の教育効果と評価を共有し、改革が進む多様な大学入試

に対応できるSSHプログラムの研究を行い、高大接続に発展させるというさらなる成果が求められてい

る。