鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8 溶融還元製鉄法開 …

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430 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8 溶融還元製鉄法開発の現況 北川 融* Present Status of the Development of Smelting Reduction Technologies Toru KITAGAWA Synopsis : Summary of DIOS collaboration study with the background of the future status of Japanese steel industry is described . The feasibility study of the DIOS process indicates that it can be better applied as an alternative to the blast furnace system with capital, operational and environ- mental benefits. The features of smelting reduction furnace allow to be combined with other direct reduction process in the Duplex-DIOS system to expand the applicability of the technologies. The feature of the Duplex-DIOS, the combination of DIOS-SRF and Rotary Hearth Furnace, is briefly described. Several other emerging smelting technologies, HIsmelt, AusIron, ROMELT, AISI process and CCF or CleanSMelt, are briefly introduced. The comparison of DIOS technology with those processes even emphasizes the strength of the scope of the DIOS development and technology. The present status of COREX process is also described as an example of further development of the original process. Key words : ironmaking; smelting reduction; DIOS; HIsmelt; AusIron; ROMELT; AISI process; CCF; CleanSMelt; COREX; FINEX. 1. は じめ に 現 在 世 界 の 粗 鋼 生 産 量 の60%強に 相 当 す る銑 鉄 は 高 炉 法 によ り製造 されてい る。こ の高炉法 は数100年の歴 史が り,長 の技術 革新 の結 果,最 は高 炉1基 日産 1 万t以上 もの銑鉄 を長期 にわた り安定 的に大 量生産 す る完 成度の高いプロセスとなった。 しか し,高 炉 に 装 入 す る 諸 原 料 は原 理 的 に塊 状 で あ る必 要 が あ り,山 元 で主 と して 生 産 され る粉 状 の 鉄 鉱 石 は その ままでは使用できず,あ らかじめ前処理段階で焼結鉱,な い しは焼成 ペ レ ッ トに した上 で装入 され る。 また,石 炭 は コークス炉で乾留 しいわゆる冶金用コークスにす る必要が あ り,そ の た め世界 の埋 蔵 量 の10%程度 しか ない粘結 炭 が 数 十 銘 柄 調 合 して使 用 され る 。 この よ う に,高 炉 法 は 高 炉 本 体 の ほ か に,原 料 の 前 処 理 工 程 と して 焼 結 機 な い しは ペ レ ッ ト製 造設備,コ ー クス炉 ,お よ び これ らの 附帯 設 備 の ほ か,高 炉 に 供 給 す る空 気 を予 熱 す る熱 風 炉 が必 要 で あ る。 さ らに これ らの 前 処 理 設 備 で は 鉄 鉱 石 な い しは石 炭 が い っ た ん,1200~1400℃ 程度 に加 熱 され た後,粒 度 をそ ろ え るた め に室 温 まで 冷 却 され る こ とに な り,種 々 の 省 エ ネ ル ギ ー対 策 は 図 られ て い る もの の,高 炉 法 全 体 と して は 必 ず し もエ ネル ギ ー効 率 が高 い と は い え な い 。 1,基 で年 間300万t以 上 の 銑 鉄 を生 産 す る高 炉 は 高 さが約 100m,内 容 積 が5,000m3程 も あ る大 型 設 備 で あ る 。 し た が っ て,設 備 の 更 新 に は 膨 大 な 費 用(日 産1万tク ラス の 高 炉 で 数 百 億 円,こ れ に付 随 す る コ ー ク ス炉 の更 新 に も同 程 度 の 費 用)を 必 要 とす る 。 また,全 世 界 的 に は 高炉 法 に 不 可 欠 な コ ー ク ス炉 お よび 焼 結 機,ペ レ ッ ト焼 成 設 備 の操 業 に関 す る環 境 対 策 に厳 しい取 組 み が 要 求 され,そ の 上 将 来,コ ー クス 用 原 料 炭 の 資 源 不 足 が懸 念 され る折 り,高 炉 法 を取 り巻 く環境 は厳 しくな りつつ あ る。一方,代 替鉄源 と して の 直 接 還 元 鉄(DRI)や 鉄屑には地域性が強いことか ら,高 炉 に よ ら な い石 炭 ベ ー スの 新 製 鉄技 術 開 発 の ニ ー ズ は高い。 日本 で は,1965年 か らわ ず か10年間 に7箇所 もの大 型 臨 海 製 鉄 所 が相 次 い で新 設 され た。 同時 に建 設 され た コ ー ク ス 炉 は,補 修 技 術 の 開 発,高 炉 へ の 微 粉 炭 吹 込 み(PCI) によるコークス炉への負荷軽減(コ ークス比の低下)等 の 延 命 策 に か か わ らず21世紀 初 頭 に は 相 次 い で 寿 命 を迎 え る 。Fig.1に は将来 のPCI量の 拡大 に よる コーク ス比 の低 減,コ ー ク ス 炉 寿 命 を40年と し た場 合 の 高 炉 向 け 塊 コ ー ク ス供 給 能 力 の推 移,な らび に これ らか ら推 定 した 高 炉 溶 銑 生 産 可 能 量,お よび 粗 鋼 生 産 可 能 量 を算 出 した結 果 を示 す 。図示 した石 炭原単位 は過去10年間の低減推移1)を回帰 して推 定 した もの で あ る。 ま た,高 炉 に装 入 可 能 な塊 コー ク ス の 全 コ ー ク ス生 産 量 に対 す る比 率 は 同様 に実 績 か ら約 83%で一定 とした。粗鋼生産可能量は粗鋼生産量に占める 電 気 炉 鋼 比 率 は30%として 算 出 した 。 こ の 図 か ら2010年 に は国 内 で 生 産 可 能 な コ ー ク ス量 で まか な う こ との で き る 高 炉 溶 銑 年 産 量 は,62,500千tで あ り,電 気 炉 鋼 を 含 め た 成 14 年 3月 26 成 14 年 5月 9 日受 理 (Received on Mar. 26,2002;Accepted on May 9, 2002) * NKK プ トエ 部 (Plant Engineering Division , NKK Corp.,2-1 Suehiro-cho Tsurumi-ku Yokohama 234-8611) 1 2

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レ ビ ユ ー鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8

溶融還元製鉄法開発の現況

北川 融*

Present Status of the Development of Smelting Reduction Technologies

Toru KITAGAWA

Synopsis : Summary of DIOS collaboration study with the background of the future status of Japanese steel industry is described . The feasibility study

of the DIOS process indicates that it can be better applied as an alternative to the blast furnace system with capital, operational and environ-

mental benefits. The features of smelting reduction furnace allow to be combined with other direct reduction process in the Duplex-DIOS

system to expand the applicability of the technologies. The feature of the Duplex-DIOS, the combination of DIOS-SRF and Rotary

Hearth Furnace, is briefly described. Several other emerging smelting technologies, HIsmelt, AusIron, ROMELT, AISI process and CCF or

CleanSMelt, are briefly introduced. The comparison of DIOS technology with those processes even emphasizes the strength of the scope

of the DIOS development and technology. The present status of COREX process is also described as an example of further development of

the original process.

Key words : ironmaking; smelting reduction; DIOS; HIsmelt; AusIron; ROMELT; AISI process; CCF; CleanSMelt; COREX; FINEX.

1. は じめ に

現在世界の粗鋼生産量の60%強 に相当す る銑鉄は高炉

法により製造 されている。こ の高炉法は数100年 の歴史が

あ り,長 年の技術革新の結果,最 近では高炉1基 で 日産 1

万t以 上 もの銑鉄 を長期 にわた り安定的に大量生産する完

成度の高いプロセスとなった。

しか し,高 炉に装入する諸原料は原理的に塊状である必

要があり,山 元で主 として生産 される粉状の鉄鉱石はその

ままでは使用できず,あ らかじめ前処理段階で焼結鉱,な

い しは焼成ペレッ トに した上で装入 される。また,石 炭は

コークス炉で乾留 しいわゆる冶金用コークスにす る必要が

あり,そ のため世界の埋蔵量の10%程 度 しか ない粘結炭

が数十銘柄調合 して使用 される。このように,高 炉法は高

炉本体のほかに,原 料の前処理工程として焼結機ない しは

ペレット製造設備,コ ークス炉 ,お よびこれらの附帯設備

のほか,高 炉に供給する空気を予熱する熱風炉が必要であ

る。さらにこれらの前処理設備では鉄鉱石ない しは石炭が

いったん,1200~1400℃ 程度に加熱 された後,粒 度をそろ

えるために室温 まで冷却 されることになり,種 々の省エネ

ルギー対策は図られているものの,高 炉法全体としては必

ず しもエネルギー効率が高いとはいえない。

1,基で年間300万t以 上の銑鉄 を生産する高炉は高 さが約

100m,内 容積が5,000m3程 もある大型設備で ある。 した

がって,設 備の更新には膨大な費用(日 産1万tク ラスの

高炉で数百億円,こ れに付随するコークス炉の更新にも同

程度の費用)を 必要とする。また,全 世界的には高炉法に

不可欠なコークス炉および焼結機,ペ レット焼成設備の操

業に関する環境対策に厳 しい取組みが要求 され,そ の上将

来,コ ークス用原料炭の資源不足が懸念される折 り,高 炉

法を取 り巻 く環境は厳 しくなりつつある。一方,代 替鉄源

としての直接還元鉄(DRI)や 鉄屑には地域性が強いことか

ら,高 炉によらない石炭ベースの新製鉄技術開発のニーズ

は高い。

日本では,1965年 か らわずか10年 間に7箇 所 もの大型

臨海製鉄所が相次いで新設された。同時に建設されたコー

クス炉は,補 修技術の開発,高 炉への微粉炭吹込み(PCI)

によるコークス炉への負荷軽減(コ ークス比の低下)等 の

延命策にかかわらず21世 紀初頭には相次いで寿命を迎 え

る。Fig.1に は将来のPCI量 の拡大によるコークス比の低

減,コ ークス炉寿命 を40年 とした場合の高炉向け塊コー

クス供給能力の推移,な らびにこれ らから推定 した高炉溶

銑生産可能量,お よび粗鋼生産可能量を算出した結果を示

す。図示 した石炭原単位は過去10年 間の低減推移1)を回帰

して推定 したものである。また,高 炉に装入可能な塊 コー

クスの全コークス生産量に対する比率は同様に実績から約

83%で 一定 とした。粗鋼生産可能量は粗鋼生産量に占める

電気炉鋼比率は30%と して算出 した。この図から2010年

には国内で生産可能なコークス量でまかなうことのできる

高炉溶銑年産量は,62,500千tで あり,電 気炉鋼を含めた

平 成 14 年 3 月 26 日受 付 平 成 14 年 5 月 9 日受 理 (Received on Mar. 26,2002;Accepted on May 9, 2002)

* NKK プ ラ ン トエ ンジ ニ ア リン グ本 部 (Plant Engineering Division , NKK Corp.,2-1 Suehiro-cho Tsurumi-ku Yokohama 234-8611)

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溶融還元製鉄法開発の現況 43 1

粗鋼年産可能量は87,400千tと 推定 されるものの,そ の後

5年 以内にPCI量 が225か ら256kg/tへ の増量が達成 され,

その結果コークス比が315kg/tか ら289kg/tに 軽減 したとし

ても高炉溶銑生産可能量は年間22,000千t,粗 鋼生産可能

量は31,000千t弱 の レベルに急減す ることが推定 され る。

この間の粗鋼製造可能量の減少をコークスの過大な輸入に

依存することなく食い止めるため現在新コークス製造法 と

してSCOPE-21の 開発が行われてはいるが,既 存 コークス

炉の改修 を前提 とす ると業界全体で2,500~3,500億 円 もの

工事費用が必要になるものと考えられる。

このような状況 を背景にコークス炉によらず,生 産量の

調整が容易で,原 燃料選択の自由度が高い高炉代替製鉄法

に関す る検 討が大手鉄鋼会社 によ り1987年 に行われ,

DIOS (Direct Iron Ore Smelting Reduction Process)の 開発が

1988年 から8年 間の国家 プロジェク トとして行われた2)。

このプロジェク トは石炭利用総合センターと日本鉄鋼連盟

の共同研究の形で行われ,日 本鉄鋼連盟傘下の製鉄八社

(川崎製鉄,神 戸製鋼所,合 同製鉄,新 日本製鐵,住 友金

属工業,中 山製鋼所,日 新製鋼,NKK)が 参画 した°

DIOSプ ロジェク トはすでに中間報告3)されているので,

ここでは1997年 に実施 された実証試験を含め,プ ロジェ

クト全体の総括 を中心として紹介 し,あ わせて他の鉄浴型

溶融還元法開発の概要を紹介する。

2. 溶 融 還 元 法 の 特 徴

高炉では鉄鉱石とコークスを炉の上部から交互に層状に

装入する.炉 下部からは1200℃ 程度の高温空気 を吹 き込

んでコークスを燃や し,そ の結果発生 した還元ガスを層状

の原料の間を通すことで鉄鉱石を還元 し約6~8時 間かけ

て銑鉄 を製造している。

これに対 し,鉄 浴型溶融還元法は1,500℃ 程度の溶銑 な

いし溶融スラグに鉄鉱石を添加することで ,鉄 鉱石 を溶融

状態で溶銑中の溶解炭素によって瞬時に還元 し,溶 銑を製

造す るプロセスである。還元に必要な炭素は石炭で補い,

また必要な熱量(具 体的には鉱石,副 原料のスラグへの溶

解熱や溶解 したウスタイ ト(FeO)のFeへ の還元反応熱 な

ど)は,石 炭ないしは還元反応の結果 として発生する一酸

化炭素 を燃料とし,酸 素で燃やすことでまかなっている。

したがって,一 酸化炭素を酸素で炭酸ガスまで完全燃焼 さ

せる割合(二 次燃焼率)と,二 次燃焼の結果発生 したエネ

ルギーの溶融還元反応への利用効率(着 熱効率)が 高い程,

必要な石炭量を低減することが可能である。また,溶 融還

元炉(smelting reduction furnace,SRF)か らの発生ガスを利

用 して予備還元炉(pre-reduction furnace,PRF)で 鉄鉱石 を

予熱,予 備還元 した上で溶融還元炉に鉄鉱石を装入するこ

とで,全 体の熱効率を向上させている。

溶融状態で鉄鉱石を還元するという溶融還元法の原理か

ら,

(a ) 鉄鉱石は銘柄を問わず,ま た石炭 も燃料 として使用

されている安価で埋蔵量の多い一般炭を使用でき,

(b ) 焼結 機,コ ー クス炉 とい った原料 の塊 成化 工程

(コークス炉,焼 結機)が 不要で,

(c ) 巨大な装置を必要とせず,

(d ) 設備の運転開始および停止が容易で生産弾力性が拡

大 し,

(e ) エネルギー発生量の制御 も容易である。

という様々な魅力ある特徴が出て くる。このように高炉法

の弱点を補 う溶融還元法の開発が1980年 以降,諸 外国に

おいても活発に展開されてきた。

3. DIOS開 発 の 概 要

3・1 共同研究プロジェク ト

DIOSは1988年 度 か ら最初の3年 間は要素研究 と して,

予備還元炉,溶 融還元炉および これらの直結上の主要諸課

題につ き試験研究2)を実施 し,開 発すべきプロセスの骨子

およびスケールアップ特性 を明 らか し,高 炉法を凌駕する

諸 目標達成の見通 しを得 た。要素研究の成果 に基づ き,

NKK京 浜製鉄所にパイロッ トプラン トを建設 し,1993年

10月 か ら1996年1月 まで合計10キ ャンペーンの実証的試

験操業を実施 した。試験 と並行 し原燃料の備蓄 ・搬送,溶

銑予備処理,ス ラグ処理,並 びに発生ガスの製鉄所内での

燃料 としての利用など,DIOS実 用化に必要な諸条件につ

いて検討 を行い,DIOSを 高炉代替プロセスとして導入す

るための条件を明確 にした。

試験結果をベースに,国 内の大型高炉の代替 を前提とし

た商用設備の概念設計 と経済性評価を行い,1996年3月 に

すべての研究 を終了 した。共同研究の終了後,日 本鉄鋼連

盟内にDIOS推 進委員会が設置 され,研 究成果の維持 ・管

理と商用化をめざした活動が展開されている。その一環と

Fig . 1. Estimated domestic production capacities of lump coke for blast furnace, hot metal and crude steel in

early 21st century.

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43 2 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8

(a)

(b)

して,1997年 商用設備の耐用性の実証試験 がNKKに より

実施 され,商 用設備の諸元が実証 された。

3・2 DIOSパ イロッ トプラン ト試験

3・2・1 設備概要4)

DIOSパ イロ ットプラン トのプロセスフローおよび溶融

還元炉の写真 をFig.2に 示す。パ イロッ トプラン トは鉄鉱

石の予熱炉(PRF-1),予 備還元炉(PRF-2)お よび溶融還元

炉の基本3設 備と原料搬送設備,出 銑津設備,ガ ス改質装

置および全系圧力調整装置 を含むガス処理設備で構成 さ

れ,設 備能力は日産500tで ある。試 験操業 によって生産

された溶銑は京浜製鉄所の転炉にて鋼に精錬 し,発 生ガス

は発電所に発電用燃料として供給 した。

溶融還元炉は,上 吹き酸素ランスおよび撹拝用の窒素底

吹 込 み 羽 口 を有 して い る。 溶 融 還 元炉 の 炉 底 近 傍 に は 出 銑

澤 孔 を設 け,生 産 され た 溶 銑 と ス ラグ を定 常 操 業 中 に排 出

す る。 ま た ス ラ グ浴 か ら 上部 ガ ス空 間 に か けて 水 冷 銅 パ ネ

ル の 設 置 が 可能 で あ る 。 発 生 ガ ス 中 の ダ ス トは ホ ッ トサ イ

ク ロ ン に よ っ て 捕 集 し,全 量 を熱 間 で溶 融 還 元 炉 に鉄 鉱 石

と と もに 再 装 人 した 。 炉 体 は300kPa未 満 の 加 圧 条 件 で 操

業 され,こ の 圧 力 に よ り予 備 還 元 炉 系 に溶 融 還 元 炉 か らの

発生 ガ ス を導 入 す る。

PRF-1お よ びPRF-2は と も に,粒 度 分 布 の 広 い 鉄 鉱 石 を

直 接 使 用 可能 な バ ブ リン グ 型 流 動 層 炉 で あ り,代 表 的 操 業

温 度 は そ れ ぞ れ,600℃ お よ び800℃ で あ る。PRF-2で 鉱

石 は 粒 径 約0.3mmを 境 に 粗 粒 と 微 粒 と に 分 級 され,そ れ

ぞれ,溶 融 還 元炉 の 炉 頂 か ら重 力 装 入 な い しは 投 射 に よ っ

て 装 入 され る。PRF-2炉 内 か ら短 時 間 で 飛 散 す る微 粒 鉱 石

を炉 内 に 戻 し,還 元 時 間 を延 長 す る た め にPRF-2に は 循 環

機 能 を有 して い る。PRF-1お よ びPRF-2に は 各 々 サ イ ク ロ

ン お よ び 鉱 石 搬 送 設 備 が 付 帯 して お り,高 温 鉱 石 を PRF-1

か らPRF-2さ らに はSRFへ 自動 的 に搬 送,装 人 され る 。

3・2・ 2 使 用 原 燃 料

パ イ ロ ッ トプ ラ ン トで 使 用 した 鉄 鉱 石 と 石炭 を粒 度 分 布

と と も に,Fig.3に 一 例 と して 示 す 。 鉄 鉱 石 は シ ン タ ー

フ ィー ドと呼 称 され る最 大 粒 径8mmの 粉 鉱 石 で,高 炉 法

で は 焼 結 鉱 に 処 理 され る もの を 直接 使 用 した。 一方,石 炭

は 一 般 に燃 料 と して使 用 され る,非 微 粘 結 炭 で あ り,揮 発

分(VM)量 の 異 な っ た銘 柄 を試 験 し,最 高値 は43%で あ る。

Fig.4にDIOSに 使 用 可 能 な石 炭 種 を高 炉 用 石 炭 種 と比 較 し

て 示 す 。 亜 炭(lignite),褐 炭(brown coal)を 除 き,ほ と ん

ど の炭 種 が使 用 可能 で あ る。 た だ し,固 定 炭 素 量 が相 対 的

に低 い 石 炭 は,酸 素,石 炭 の 原 単位 が増 大 す る ため,経 済

的 に 成 り 立 つ か ど う か は これ らの 価 格 並 び に 発 生 エ ネル

ギ ーの 評価 に 依 存 す る こ と に な る。 した が って,亜 炭 お よ

び 褐 炭 は特 段 の 事前 処 理 な い しは経 済 的 事情 が な い 限 り,

Fig . 2. DIOS pilot plant. (a) Process flow of DIOS pilot plant. (b) Smelting reduction furnace of DIOS pilot plant.

Fig . 3. Typical size distributions and appearances of iron are and coal for DIOS process.

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溶融還元製鉄法開発の現況 43 3

経済的なプロセス構築は難 しく,Fig.4で はDIOSで の対象

銘柄からははず している。

3・2・3 パ イロッ トプラント試験操業の概要

試験操業 はTable 1に 示す ごとく,耐 火物で構築 した溶

融還元炉炉体を用いて5キ ャンペーン5)を実施 した後,炉

体の二次燃焼部位に水冷パネルを取 り付けた水冷炉体で5

キャンペーンの合計10キ ャンペーン,総 計71ヒ ー ト実施

した。

耐火物炉体での試験では高生産 ・長期間安定操業の基本

操業技術を確立 した。また,各 種鉱石,石 炭銘柄を使用 し

た場合の操業特性の把握などが行われた。炉体水冷試験 に

おいては,水 冷関連設備技術の確立と,炉 体放散熱に及ぼ

す操業諸因子の影響評価,お よび炉体水冷条件でのプロセ

ス全体のエネルギーバランス評価 を行った。

3・2・ 4 溶融還元炉の開発成果

鉄鉱石の還元には膨大な反応熱を必要 とする。したがっ

て,溶 融還元炉の銑鉄生産速度は,熱 供給速度に支配され

ることになる。熱供給速度の向上のため,上 吹 き酸素ラン

スの構造の最適化6)と原燃料装入量の的確な制御による炉

内現象の制御により二次燃焼率を向上 させた。またスラグ

内に酸素ジェットを構成することで二次燃焼熱を効率よく

スラグ相に伝熱 させ,ス ラグ浴 を酸素ジェッ トおよび炉底

か らの吹込み窒素の撹拝作用7)により酸化鉄の還元反応部

位に熱を供給することを具現化 した。すなわち,酸 化鉄の

還元領域と還元の結果発生する一酸化炭素 を酸素で二次燃

焼する酸化領域 とを区分 しつつ伝熱の上では両者を緊密な

関係に維持することを両立 させている。DIOSの 溶融還元

炉 を特徴付ける炉内現象をFig.5に,定 常操業状況にある

溶融還元炉炉内の温度分布,お よびサンプリングの結果を

Fig.6に 示す。

Fig.6か ら炉内のスラグは上下二層に分かれており, 下

部スラグ層は鉄浴 とほぼ同温度であり,二 次燃焼を行って

い る上部ス ラグ層 はそれよりも150~200℃ 高 く,二 次燃

焼熱は上部スラグ層から下部スラグ層に向けて伝熱 してい

る事が明 らかである。サンプリングの結果からは,下 部ス

ラグ層は底吹 き撹拝ガスの作用で発生 した多量の粒鉄 を含

んでお り密度が高いこと,ま た上部スラグ層は泡立った状

況にあることが示 されている。

一方,下 部スラグ層 と上部スラグ層の密度を推定すると

それぞれ,1g/cm3お よび0.3g/cm3程 度であ り,チ ャー粒

子の見かけ密度を0.8g/cm3と 考えるとチャー粒子は上部ス

ラグ層に沈んだ状況,す なわち下部スラグ層内に分布する

ことが想定可能である。このように下部スラグ層には,多

量の粒鉄および石炭から生 じたチャーが含まれており,温

度分布からみて もこの部分で酸化鉄の還元反応が主体的に

進行 していることを示唆 している。

酸素 ジェッ トがこの下部スラグ層に到達すると粒鉄中の

溶解炭素ない しはチャー粒子 と反応するほか,二 次燃焼の

結果発生 した炭酸ガスとの反応 によって一酸化炭素が発生

(二次燃焼の逆反応)す る。 したがって,二 次燃焼率 を向

上 させ るためには,酸 素ジェッ トの軌跡 を制御 し,下 部ス

ラグ層 との干渉を抑制することが重要である。一方,着 熱

効率は底吹き撹絆強度の増大に したがって向上するが,あ

る限界 を超 えた撹絆は二次燃焼率を低下させるため熱効率

の観点では最適値が存在す る。この現象は,過 大な底吹 き

撹拝によって粒鉄の発生量が増大 し,二 次燃焼によって生

成 した炭酸ガスが高炭素粒鉄によって一酸化炭素に還元 さ

Fig . 4. Applicable coal grade for DIOS process. A: anthracite, LB: low volatile matter bituminous

coal, MB: medium volatile matter bituminous coal, HB: high volatile matter bituminous coal, SB: sub-bituminous coal, BC: brown coal, L: lignite

Table 1. Major technical subjects for each operational campaign of DIOS pilot plant.

Campaign numbers headed by R or W denote those carried out with lining structure of refractory or of water-cooled, respectively.

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43 4 鉄 と鋼 Tetsu-to -Hagane Vol. 88(2002) No. 8

れた結果であると理解される。溶融還元炉の密閉 ・加圧操

業は微細な装入原燃料の飛散量 を最小限に抑えることを可

能とし,炉 内で反応,消 費 した炭素,酸 素 などのバ ランス

を精度よく把握 し,制 御することを可能 とした。この結果,

炭材の炉内存在量,ス ラグのFoaming高 さなどの炉内現象

を適切に制御することが可能 とな り,熱 効率と操業安定性

の向上に寄与 している。

効率が驚異的に高い方法としてよく知 られている浸漬燃

焼技術8)を具現化 したDIOS溶 融還元炉の二次燃焼 ・着熱

機構では高温度の二次燃焼領域がスラグ層内に限定 されて

いることから放熱面積が小 さく,こ の部分に設置 されてい

る水冷パネルへの放熱量も少ない。結果 として溶融還元炉

内の燃焼および還元反応が起 きているスラグ表面以下の部

分で熱バ ランスを取 ることで算出される燃焼着熱効率は

85%以 上に達 している。

Fig.7に 溶融還元炉の直結操業で得 られた酸素の供給速

度(送 酸速度)と 生産速度の関係 を代表的炭種 ごとに示す。

還元反応 に必要な熱量は上吹 き酸素による燃焼により供給

され るため,溶 銑の生産速度は,鉄 鉱石の予熱温度と予備

還元率,二 次燃焼率,お よび着熱効率が一定の条件では,

上吹 き送酸の供給速度に依存することになる。

3・2・5 予備還元炉の開発成果

予熱 ・予備還元炉には最大径8mmの シンターフィー ド

が装入 される。通常,流 動層炉で処理 される粉体としては

粒度範囲が広 く,か つ比重が大きいため,分 散盤のノズル

径,開 孔比,炉 内の鉱石滞留量に対応 したガス流量など安

定流動化の条件 を決めることが重要な課題であった9)。こ

れらに関する事前の研究成果に基づ きパ イロットプラント

の設備仕様 と運転方案が決定され,所 定の溶融還元炉から

の発生 ガス量 において安定 した還元率 が得 られるととも

に,還 元鉱石の系内における安定化 した物流が達成 された。

予備還元炉で分級 された微粒と粗粒の平均還元率は,Fig.

8に 示す ように温度依存性が顕著に認め られ,780℃ で約

27%に 達している。

還元に伴って鉱石粒子は微細化10)し,還 元率27%程 度で

は約85%が 粒子径0.3mm未 満 となるが,こ の微細な鉱石

の溶融還元炉への移送 と装入も充分な精度で自動運転が可

能であった。

3・2・6 石炭原単位

Fig.9に パイロットプラン トで得 られた溶銑生産速度 と

石炭原単位の実績値を示す。

この図から溶銑生産速度が増大すると生産 される単位溶

銑量あたりの炉体の放散熱が相対的に小さくなるため,石

炭原単位が減少することになる。石 炭の種類による差異 も

明瞭であり,揮 発分が低い石炭を使用した場合は二次燃焼

率が高 く,し たがって石炭原単位が低 くなる。

3・3 試験結果総括

DIOSパ イロッ トプラン ト全試験操業の総括を, Table 2

に示す。 この間,15日 間連続操業および炉体水冷のもと

での設備能力の上限である日産500tを 上回 る生産速度で

の3日 間の操業の実施等,操 業安定性の実証並びに商用設

備の設計並びにプロセスの経済性評価のためのベースデー

タが採取 された。

3・4 商用設備概念設計と経済性評価

パイロットプラント試験データに基づき,高 炉代替プロ

セスとしてのDIOS商 用設備の概念設計 と経済性評価を実Fig . 5. Schematic configuration of DIOS SRF.

Fig . 6. Temperature distribution and result of sampling during steady state operation of DIOS SRF.

1 6

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溶融還元製鉄法開発の現況 43 5

施 し, 高 炉 法 と比 較 した 。DIOS商 用 設 備1基 あ た りの 生

産規 模 は 日産3,000tと 設 定 した 。 した が っ て,日 産 6,000t

お よび9,000t規 模 の 場 合 に は そ れ ぞ れ,2基 お よ び3基 の

設備 が必 要 に な る。

3・4・1 検 討 の 前 提 条 件

(1) 立地: 国 内臨 海 グ リ ー ン フ ィー ル ド

(2) 設備 構 成 : 溶 融 還 元 炉,予 熱 炉 お よ び 予備 還 元 炉 の 組

合 わ せ

(3) 設備規模 : 日産3,000t, 6,000t, および 9,000t

(4) 原燃料

鉱石 : 全鉄分 63% の シンターフィー ド(国 内での平

均品位)

石炭 : 揮発分31.2%, 固定炭素59.4% の非微粘結炭

(国内での一般炭の平均品位)

副原料 : 石灰石, 生 ドロマイ ト

(5) プロセス評価の範囲 : 原料岸壁から溶銑の転炉装入ま

(6) 高炉法の条件 : 将来の技術の進展 を考慮 した先進的高

炉を想定

3・4・2 検討結果

(1 ) 設備 レイアウ ト

概念設計 された 日産9,000t規 模のDIOSの レイアウ トを

高炉法 と比較 してFig.10に 示す。DIOSは 設備が3基 必要で

あるが,高 炉法に比較 して原燃料銘柄が削減可能であるた

めに原料ヤー ドの縮小が可能であるほか,コ ークス工場,

コークス炉副産物回収工場並びに焼結工場の省略により,

必要な敷地面積は高炉法の約1/3程 度となる。

(2 ) コス ト比較

DIOS商 用設備の石炭原単位は730~750kg/tと 推定 され,Fig . 7. Change in hot metal production rate with oxygen

blowing rate in DIOS SRF.

Fig . 8. Change in average pre-reduction degree of iron are in DIOS pre-reduction furnace.

Fig. 9. Observed coal consumption rate as a function of hot metal productivity in DIOS pilot plant.

Table 2. Summary of DIOS technologies and features.

PCR : post combustion rate, HTE : heat transfer efficiency

1 7

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43 6 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol.88 (2002) No. 8

日産6,000t規 模では高炉法 と比較 して,設 備コス トで 35%,

製造コス トで19%の 削減が可能である。

(3 ) エネルギ ー収支

日産6,000t規 模 における高炉法とDISOの 製銑部門のエ

ネルギー収支を比較 してFig.11に 示す。DIOSは 回収エネ

ルギーの自己消費が少な く,全 消費 と下工程供給エ ネル

ギーの差である純消費も高炉法より3~4%節 減可能な省エ

ネ型製鉄法である。Fig.11は 石炭の揮発分が31.2%の 場合

であり,低 揮発分炭をベースとすれば揮発分の低下に応 じ

て石炭原単位並びに余剰エネルギー量の削減が可能であ

る。IISIの技術委員会での整理II)ではDIOSの 熱効率は開

発を終 えたプロセスの中で最 も高い評価 が与 えられてい

る。

(4 ) 環境適合性

DIOS は石炭の揮発分が有効に利用で き,ま た原燃料の

前処理段階を大幅に省略可能であることから高炉法より炭

酸ガス排出量 を4~5%削 減可能である。また,窒 素ない し

は硫黄酸化物が発生ガスから検出されず,環 境改善にも有

効なプロセスである。DIOSか らの硫黄(SOx)な いしは窒

素酸化物(NOx)の 排出量 を高炉法および他の高炉代替製鉄

プロセス12-14)と比較 してFig.12に 示 す。(Fig.12は 対数グ

ラフのためDIOSの 排出量には有限値 を与えた。)

3・5 DIOS の実用化

以上に述べたようにDIOSは,経 済性,環 境適合性にお

いて長年にわたり改善,開 発が加 えられた高炉法を凌駕 し

うる製鉄法である。日本国内においては粗鋼生産量の伸び

は近年飽和 してきており,す でに償却の済んだ設備が生産

余力を持っている状況にある。一 方,全 世界的にみると鉄

鋼需要の伸びは今後 も見込まれており,少 額の投資で鉄鋼

生産の可能なDIOSへ の期待 は大 きい。国内において実用

化の期が熟す るまで技術 を継承,温 存 してゆくためには,

海外への技術移転をも含めた商用化の努力が必要である。

ミニ ミルを含めた国内外の多様なニーズと立地条件に対

応するためNKKはDIOSの 共同研究成果に基づ き,Fig.13

に示す商用設備諸型式のエンジニアリングを実施 し実用化

Fig . 10. Comparison of layout of DIOS commercial plant

of three million tons annum with those of blast furnace process.

Fig . 11. Comparison of energy balance of DIOS commer-cial plant with that of blast furnace process.

Fig . 12. Comparison of SOx and NOx emissions of DIOS with those of several ironmaking technologies.

Fig . 13. Commercial versions of DIOS engineered by NKK and their features.

1 8

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溶融還元製鉄法開発の現況 437

活動 を行 って い る。Single Stage Processは 一 段 法 で エ ネ ル

ギ ー併 産 型 プ ロ セ ス,Standard Processは い わ ゆ る二 段 法 で,

予備 還 元 炉1基 に溶 融 還 元 炉 を組 合 わ せ た プ ロ セ ス で あ

り,生 産 規 模 並 び に特 性 は す で に3・4節 ま で に 紹 介 した も

の に準 じ,一 貫 製 鉄 所 の 下 工 程 を 含 め た エ ネ ル ギ ーバ ラ ン

ス の 取 る こ と の で き る 型 式 の プ ロ セ ス で あ る。 Duplex-

DIOS15)は 鉱 石 の 予 備 還 元 率 を 向 上 させ る こ と を 目 的 に 回

転炉 床 炉16-18)(rotary hearth furnace, RHF)等 の 既 存 の 固 体 還

元 技術 を予 備 還 元段 階 と して 溶 融 還 元 炉 と組 合 わせ た 型 式

で,溶 融 還 元 炉1基 あ た りの 生 産 能 力 を大 幅 に 拡 大 させ る

こ とが で きる 。

RHFと 組 合 わ せ たDuplex-DIOSの プ ロ セ ス フ ロ ー を Fig.

14に 示 す 。Standard processが 粒 径 約8mm未 満 の シ ン タ ー

フ ィー ドを主 原 料 に す るの に 対 してDuplex-DIOSで は 粒 径

が お お よ そ0.2mm未 満 の 粉 鉱 石,い わ ゆ る ペ レ ッ ト

フ ィー ドを粉 石 炭 お よ び 少 量 の バ イ ン ダ ー と と も に 混 合,

造粒 して 炭 材 内装 粒(green ball)と し,こ れ をRHFで 焼 成

し,予 備 還 元 率50~70%程 度 の 高 温 予 備 還 元 ペ ッ レ トに し

た 上 で 溶 融 還 元 炉 に 装 入 し,溶 銑 を 得 る も の で あ る 。

Standard processと 比 較 し,予 備 還 元 率 が 高 い た め,溶 融

還 元 炉 の 生 産 性 が 向 上 し,石 炭,酸 素 な どの 消 費 原 単 位 を

低 く抑 え る こ とが 可 能 で あ る上,溶 融 還 元 炉 の 発 生 ガ ス は

RHFに 燃 料 と して 供 給 さ れ る た め,余 剰 エ ネ ル ギ ー 量 も

低 く抑 え る こ とが 可 能 で あ る。 生 産 プ ロ セ ス が 単 純 で,下

工 程 エ ネ ル ギ ー消 費 の 少 な い ミニ ミル に 最 適 な プ ロ セ ス と

い え る。

Fig.15にDuplex-DIOSの 生 産 性 を鉄 鉱 石 の 予 備 還 元 率 に

対 して 示 す 。 この 図 で,DIOS-2,000,DIOS-3,000と 表 記 し

て い る も の は夫 々,Standard DIOSで 低 揮 発 分 炭 を 用 い た

場 合,日 産2,000tお よ び3,000tの 得 られ る規 模 の 溶 融 還 元

炉 の 生 産 性 と予 備 還 元 率 の 関 係 を示 して い る 。RHFの 生

産 性 はIron Dynamics社 に設 置 され た 設 備 に 相 当 す る も の

を破 線 で表 示 し,Submerged Arc炉(SAF)と の 組 合 わ せ に

Fig . 14. Flow of Duplex-DIOS process. Fig . 15. Productivity of Duplex-DIOS.

Fig . 16. Commercial Duplex-DIOS plant of 1.5 million tons annum.

19

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43 8 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8

よる年産50万tの プロセス19)と比較 している。RHFの 生産

性は製品ペ ッレッ トの還元率の低下 とともに向上 し,溶 融

還元炉 との交点がDuplex-DIOSの 生産性である。溶銑の生

産性はStandard型 の約50%増 であり,溶 融還元炉1基 との

組合わせで,年 産100万tな い しは150万tと なり,設 備投

資に伴 う固定費 を含めた溶銑製造原価 は大幅 に低下す

る15)。Fig.16にIron Dynamics社 の ものより小型のRHFを 2

基溶融還元炉に組合 わせた,年 産150万tの 商用設備の概

念 を示す。

4. 溶 融 還 元 プ ロセ ス の諸 外 国 で の 開 発 動 向

溶融還元法の研究 は,1970年 代 から世界各国で本格的

に開始 され,1980年 代後半には,複 数企業の協力あるい

は国家プロジェク トによる大型のパイロットプラン トを用

いた研究開発プロジェク トが相次いで開始 された。米国の

AISIプ ロセス,豪 州のHIsmelt, AusIron,欧 州の ROMELT,

CCFが それである。

シャフ ト炉型予備還元炉 を構想 したAISIプ ロセスが塊

原料ベースのプロセスである以外はいずれも「一 般炭 と粉

鉄鉱石を直接使用する]共 通点 を有 している。これらの内

で予備還元炉 と溶融還元炉を定常的に直結 して操業 し,全

系プロセスの開発を実施 したのはDIOSの みであり,他 の

プロジェク トでは,溶 融還元炉ない しは予備還元炉の単独

の要素試験が行われている段階である。

4・1 Hlsmelt

HIsmeltは ドイツのKloecknerが 開発 した製鋼転炉の熱付

加技術(K-OBMプ ロセス)を ベースに考案 されたプロセ

スで,1980年 初頭か らCRA(現 , Rio Tinto)と Kloeckner

との共同開発 と して開始 された。21世 紀 までに 500,000

T/Yearの 商用設備 を西オース トラリア州に建設 し,商 用価

値の低い高燐鉱石を製錬 して冷銑にし,付 加価値 を上げる

ことを目標に開発が推進 されて きた13)。

当初,水 平円筒型の溶融還元炉 とこれに直結 した流動層

型予備還元炉の全系試験設備 による開発が行われていた

が,1997年 か らは,内 径2.7mの 竪型炉の単体 に変更 し,

溶融還元炉単体の開発が行われた20)。二次燃焼は炉の上部

空間において熱風炉で発生 させた1200℃ 程度の加熱酸素

富化空気(酸 素富化率 は30%未 満)に よ り行い,二 次燃

焼率は60~80%を 目標 としている。粉状の鉱石 と石炭をあ

らか じめ混合 しておき,ス ラグ浴に浸漬 した水冷ノズルに

より鉄浴に向けて投射することにより鉄浴内で鉄鉱石を還

元,浸 炭 させるとしている。水冷ノズルによる材料の投射

は炉の上部空間に多量のスラグスプラッシュを発生 させ,

これを伝熱媒体として炉上部の二次燃焼帯か ら燃焼熱を浴

に伝熱する作用ももたらす。生産 した溶銑は炉底近傍 に接

続 された前炉 を経由 し,サ イフォン式で出銑 され,ス ラグ

は別途設 けた出澤孔か ら間歇的 に排出 され る。炉 は200

kPaの 加 圧 下 で 運 転 され て い る 。 開 発 は 溶 融 還 元 炉 技 術 に

特 化 さ れ て お り,商 用 設 備 で は サ ス ペ ン シ ョ ン プ レ ヒ ー

ター あ る い はLurgiの 開 発 し たCircoferを 鉱 石 の 予 熱 あ る い

は 予 備 還 元 設 備 と して組 合 わ せ る構 想21)で あ る が,炉 内二

次 燃 焼 率 が高 い た め に発 生 ガ スの 還 元 力 が 低 く,予 備 還 元

炉 を連 結 す る か,発 生 ガ ス を熱 風 炉 の燃 料 と して 利 用 す る

場 合 に は 天 然 ガ ス を 添 加 す る か 脱 炭 酸 設 備 が 附 加 され

る20)。

2000年,Nucorで 年 産60万t規 模 の 実 証 プ ラ ン ト建 設 に

向 け て 経 済 性 評 価 の 実 施 契 約 が行 わ れ た が,結 果 と して,

西 オ ー ス トラ リ ア州 のKwinanaに 年 産80万t規 模 の プ ラ ン

トを2004年 央 に 建 設 す る こ と を 目標 に 現 在,環 境 影 響 評

価 な ど の 準 備 が進 め られ て い る22)。生 産 され た 冷銑 は 国 内

外 に販 売 され る予 定 と の こ と で あ る。Fig.17に 商 用1号 機

と して 計 画 され て い る 設 備 の フ ロ ー 図22)を示 す 。

4・ 2 Auslron

AusIronは1970年 代 にDr.J.FloydがCSIRO在 籍 中 に 発 明

した 鋼 製 上 吹 二 重 管 ラ ンス(Sirosmelt Lance)を 用 い た非 鉄

製 錬 プ ロ セ ス の 鉄 へ の応 用 プ ロ セ ス で あ る23)。元 々 の方 式

で あ るAusmeltで は ラ ン ス外 管 に 空 気 を 流 して 冷 却 す る こ

と で ラ ン ス を ス ラ グ 固着 層 で 保 護 す る こ と に よ り,ス ラグ

中 に浸 漬 す る こ と を可 能 と して お り,用 途 に よ り内管 か ら

は 固体 な い し気 体 燃 料 あ るい は 粉 原 料 を装 入 して い る。 す

で に 中 国,イ ン ド,ド イ ツ,ペ ル ー,日 本,韓 国 等 に お い

て 銅,ニ ッ ケル,亜 鉛,鉛 な ど非 鉄 金 属 の製 錬 に 応 用 され

て い る 。

AusIronの 開 発 は1990年 代 の パ イ ロ ッ トプ ラ ン ト試 験 か

ら始 ま り,南 オ ー ス トラ リア に 産 出 す る一 般 炭 と鉱 石 を原

料 に し た 年 産250万tの 冷 銑 の 生 産 と 発 電 事 業 を 行 う,

South Australian Steel and Energy (SASE) Project24)の 中 核 プ

ロ セ ス と してSASE Pty.社 が 推 進 して い る 。 南 オ ー ス トラ

リア 州 政 府 お よび オ ー ス トラ リア連 邦 政 府 の 補 助 金 を得 て

Fig . 17. HIsmelt commercial plant planned to install at Kwinana.

2 0

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溶融還元製鉄法開発の現況 43 9

2000年 末から南オース トラリアのWhyallaに おいて2t/h規

模の実証試験炉を稼動 させている25)。ちなみにこの試験研

究には,後 述のCCFの 開発 を行ったCORUSが 技術支援 し

ている25)。

実証設備には空冷ランスにかえて水冷二重管ランスを2

本使用 し,外 管からは酸素富化空気を炉の上部空間に二次

燃焼用 として供給 し炉内発生 ガスを完全燃焼 させている。

内管か らは燃料用粉石炭を酸素富化空気 とともにスラグ内

に投射 して燃焼するとともに多量のスラグスプラシュを炉

上部二次燃焼帯に生成 させ,燃 焼熱を浴に伝 える伝熱媒体

としている。石炭はあらか じめ筋い分けし,筋 下を燃料用

に,筋 上を還元用 として鉄鉱石 とともに炉頂から重力装入

している。溶 融還元反応は炉周辺部のスラグ浴表面に浮遊

している炭材表面において進行す るとしている。基本的に

溶融還元炉単独プロセスであり,炉 内を吸引ファン(IDF)

で排気し炉内を微減圧にして操業 している。商用設備では

廃熱ボイラーにより発生 ガス顕熱を回収するする方式であ

る。

2003年 末 までに南オース トラリアにおいて商用設備を

稼動 させる予定 とのことである。商用設備の概要を Fig. 18

に示す。商用設備は実証設備と同様に2本 ランスを採用 し

ており,炉 床は耐火物,炉 の中~上部は水冷構造となって

いる26)。

4・3 ROMELT

ROMELTはCuお よびNi硫 化物の製錬用 に考案 された

Vanyukov プロセスをベースに1979年 Moscow Inst.of Steel

and Alloy(MISA)のDr. V. A. Romenetsに より考案 されたプ

ロセスで,1985年,Novolipeski冶 金 コンビナー トの転炉

工場に炉床面積20m2,連 続操業ベースで最大18t/h規 模の

半商用設備が建設 され,1997年 までに47キ ャンペーンの

試験 を行った27)。プロセスはFig.19に 示す ように溶融還元

炉単段であり,水 平箱型の溶融還元炉に多量のスラグを貯

留し,上 下二段に配置 した複数羽口から酸素富化空気をス

ラグ浴内に,酸 素を炉の空間部に吹込み完全に二次燃焼 さ

せている。下 段 ノズルからの吹込みガスを酸素のみとした

場 合 に比 べ て 空 気 を混 合 す る こ と で ス ラ グ浴 の 撹 絆 が 強 化

され る た め に石 炭 原 単 位 が 改 善 され,酸 素 濃 度50~60%が

最 適 で あ る と して い る 。 発 生 ガ ス はIDFで 排 気 し,溶 融 還

元 炉 は微 減 圧 下 で 運 転 され る。 装 入 物 は す べ て 炉 上 部 か ら

重 力 投 入 され る。炉 内 で 生 成 した 溶 銑 とス ラ グ は そ れ ぞ れ

別 に サ イ フ ォ ン式 で 連 続 的 に 排 出 す る 構 造 と な っ て い

る28)。 発 生 ガ ス顕 熱 は廃 熱 回 収 ボ イ ラ ー に て 回 収,発 電 に

用 い られ る。こ れ ま で に,ICF Kaiser International,新 日本

製 鐵 に技 術 供 与 され た.

1997年 イ ン ドの 国 営 鉱 山 開 発 会 社(National Mineral De-

velopment Corp.)がBailadila鉱 山 の 尾 鉱(red mud)を 製 錬 す

る た め,ラ イ セ ン ス を 取 得,同 時 にROMELTの 開 発 母 体

で あ る,MISAとSteel Authority of India Ltd. (SAIL)と の 間

で,ROMELT-SAIL Ltd.を 設 立 し,商 用 設 備 建 設 の 検 討 が

開 始 され た 。2001年,Dantewara地 区Goodemに 年 産30万 t

規 模 の 設 備 建 設 に 着 手 し2003年 初 頭 に 完 成 の 予 定 と 報 じ

られ て い る が29),建 設 地 を変 更 し,計 画 が1年 遅 延 との 情

報 も あ る30)。

4・ 4 AISIプ ロ セ ス

米 国 鉄 鋼 協 会(AISI)は エ ネ ル ギ ー 省(DOE)の 補 助 金 を

得 て,"AISI-DOE Direct Steelmaking Program"の 名 称 の 直

接 製 鋼 プ ロ セ ス 開 発 プ ロ ジ ェ ク トを1988年 か ら 開始 し た 。

こ の構 想 で は鉄 鉱 石 ペ レ ッ トを シ ャ フ ト型 予 備 還 元 炉 に て

ウ ス タ イ ト(FeO)ま で 還 元 した 後,鉄 浴 型 溶 融 還 元 炉 に 装

入 して 溶 銑 を製 造 し,こ の 溶 銑 を連 続 製 鋼 炉 で脱 硫,脱 炭

して 溶 鋼 とす る こ と を 目標 と した 。 予 備 還 元 炉 で ウ ス タ イ

トペ レ ッ トを 得 る研 究 は メ キ シ コ のHYLSAに て 日産30t

規 模 の シ ャ フ ト型 直 接 還 元 鉄 試 験 設 備 を 用 い て 実 施 さ れ

た 。 こ の 試験 で 生 産 され た ウス タ イ トペ レ ッ トを原 料 に し

て1990年 か ら は15t容 量 の 転 炉 型 溶 融 還 元 炉 単 独 の パ イ

ロ ッ トプ ラ ン トを 用 い,4.2t/h程 度 の 溶 銑 製 造 試 験31)が ,

1993年 に は 日産10tの プ ロ トタ イ プ 設 備 に よ る 試 験 が 行 わ

れ た32)。一 方,1991年 に 中 間 に 堰 を設 け た 横 型 精 錬 炉 に

よ る向 流 式 精 錬 方 式 の脱 硫 ・脱 炭 試 験 も行 わ れ た が, 1994

Fig . 18. Configuration of commercial AusIron smelter. Fig . 19. Configuration of ROMELT process.

2 1

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44 0 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8

年,開 発 を溶 融 還 元 に絞 り,製 鉄 所 か らの 酸 化 鉄 廃 棄 物 の

溶 融 還 元 炉 に よ る処 理 に 変 更 し,1995年DOEか らの 補 助

が得 られ ず 開発 が 中断 され た。

4・ 5 CCFお よ びCleanSMelt

CCF (Cyclone Converter Furnace)お よ びCleanSMeltは 粉

鉱 石 を溶 融 還 元 炉 の 炉 口 に 直 結 したMelting Cycloneと 称 す

る特 殊 な 円 筒 型 炉 を介 して 装 入 す る方 式 で あ る 。Melting

Cycloneに サ イ ドラ ン ス か ら酸 素 を接 線 方 向 に 吹 き込 む こ

とに よ っ て溶 融 還 元 炉 の 発 生 ガ ス を燃 焼 させ る と と もに 旋

回 ガ ス 流 を発 生 させ,同 様 に 吹 き込 ん だ 粉 鉱 石(<2mm)を

20か ら25%程 度 に 予 備 還 元 す る と と も に 溶 解 す る33)。 し

た が って,溶 融 還 元 炉 本 体 に鉄 鉱 石 は溶 融 状 態 で 装 入 され

る こ と に な る 。 この プ ロ セ ス は元 々Hoogovensの 発 案 に 端

を 発 す る もの で あ り,開 発 の 初 期 段 階 の1989年 か ら 1992

年 まで はBritish Steel Corp., Hoogovens(と も に現 Corus),

Centro Sviluppo Materiali (CSM)が 欧 州 鉄 鋼 委 員 会 (ECSC)

の 補 助 金 を得 て共 同 開 発 して い た が,そ れ 以 降 Hoogovens/

BSCとCSMは そ れ ぞ れCCF, ClenSMeltの 名 称 で 別 個 に

ECSCの 補 助 を得 て 開 発 した 。

HoogovensとBSCはMelting Cyclone単 体(内 径 2m, 20

t/h規 模)の 開 発 を,Ijmuiden製 鉄 所 で 実 施 し,溶 融 還 元

炉 本 体 に 関 して はAISIよ り技 術 供 与 を 受 け て 年 産 50~70

万tの 実 証 プ ラ ン トの 商 用 化 活 動 を行 っ た が 結 実 せ ず,開

発 が 中断 され て い る34)。

一 方,CSMは1995年,Ilva(現Riva)Taranto製 鉄 所 に

5t/hの パ イ ロ ッ トプ ラ ン トを稼 動 させ,CleanSMeltの 名 称

で 開 発35)が 行 わ れ た 。CleanSMeltの パ イ ロ ッ トプ ラ ン トの

フ ロ ー 図 をFig.20に 示 す 。 こ の 図 に は操 業 に 関 す る 諸 数 値

が 付 記 され て い る が,石 炭 な い し鉱 石 品位 な ど は 開示 され

て い な い 。CCFと は異 な り,CleanSMeltで は,鉱 石 と酸 素

が 別 個 にMelting Cycloneに 装 入 され,ま た 溶 融 還 元 炉 本 体

に は上 下 二段 の 横 吹 き ラ ン ス が 設 置 され て お り,下 段 ラ ン

スか らは石 炭 と酸 素 が,上 段 ラ ン ス か らは 酸 素 の み が 供 給

され る。 この 部 分 で の 目標 二 次 燃 焼 率 は30~40%で あ り,

Melting Cycloneで 最 終 的 に 決 ま る二 次 燃 焼 率 は80%と して

い る。 溶 融 還 元 炉 本 体 は400kPaで 操 業 され て い る。

4・ 6 COREX

COREXは 現 在,唯 一 商 用 化(南 ア,ISCOR社:日 産

1000t,韓 国,POSCO社,イ ン ド,Jindal社 な ど:日 産

2000t)さ れ て い る一 般 炭 を 用 い た 高 炉 以 外 の 製 銑 法 で あ

る 。 溶 解 ・ガ ス 化 炉 に 装 入 され た 一 般 炭 は 酸 素 に よ り燃

焼 ・分 解 され,還 元 ガ ス と し て シ ャ フ ト炉 に 導 入 され る。

シ ャ フ ト炉 内 で は塊 鉱 石 な い し は鉱 石 ペ レ ッ トを金 属 化 率

約95%ま で 還 元 し,こ れ を溶 解 ・ガ ス 化 炉 で 溶 解 す る プ

ロ セ ス で あ る 。POSCOで の 日 産1,000tか ら2,000tへ の ス

ケ ール ア ップの 段 階 で,溶 解 ・ガ ス化 炉 を安 定 に操 業 す る

た め に は,粉 炭 が 使 用 で きな い 上,10%程 度 の コ ー ク ス を

要 す る こ と,ま た還 元 ガ ス量 確 保 の た め 石 炭 は揮 発 分 の 最

適 値 が 存 在 す る こ と な ど が 判 明 し,石 炭 の 品 位 に 関 す る制

約 が 露 呈 した36)。現 在 は石 炭 種 の 選 択 とシ ャ フ ト炉 で の 金

属 化 率 の 安 定 化 な どの 対 策 に よ り,3~5%程 度 に コー ク ス

所 要 量 を低 減 して い る 由報 告 され て い る37)。鉱 石 の 還 元 は

シ ャ フ ト炉 で ほ と ん ど完 了 させ る こ とか ら還 元 に 必 要 な ガ

ス 量 が 多 く,溶 解 ・ガ ス 化 炉 の 石 炭 原 単 位 も高 い 。 し た

が っ て,系 外 へ の 発 生 エ ネル ギ ー 量 も必 然 的 に 高 く な り,

Jindal Vijayanagar Steel社 で は 日 産2,000t容 量 の COREX 2

基 か らの 発 生 ガ ス か ら130MWの 発 電 設 備2基 を稼 動 させ

て い る38)。 ま た,南 ア フ リ カ のSaldanha Steel社 に お い て

は 直 接 還 元 鉄 製 造 プ ロ セ ス(MIDREX)を 併 設 し,日 産

2,500t程 度 のDRIを 生 産 して い る39)。

POSCOに お い て は 鉱 石 粒 度 の 制 約 を 解 消 す る た め シ ャ

フ ト炉 の 代 わ り に3段 の 気 泡 流 動 層 を用 い るFINEXの 開

発36)が 行 わ れ て お り,現 在 日産2,000tのCOREXか らの 発

生 ガ ス を 分 流 させ る形 で 日産150t規 模 の パ イ ロ ッ ト流 動

層 炉 の 試 験 を 実 施 して い る 。2003年 ま で にCOREX本 体 と

直 結 し,年 産60万 規 模 にす る計 画 で あ り,そ の 後2010年

に 改 修 時 期 を迎 え る ポ ハ ンの 第1,2高 炉 をFINEXに 置 き

換 え る ほ か海 外 へ の 技 術 移 転 を推 進 す る予 定 で あ る と して

Fig . 20. CleanSMelt pilot plant at Taranto.

Fig . 21. Comparison of FINEX process with COREX

process.

2 2

Page 12: 鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8 溶融還元製鉄法開 …

溶融還元製鉄法開発の現況 441

いる40)。Fig.21にCOREXとFINEXを 対比 して示す。

COREXは 溶解 ・ガス化炉の熱余裕の制約から装入 され

る原料の予備還元率は90%以 上 とする必要があり溶融還

元される割合はわずかである。一般に溶融還元法として整

理 されてはいるが,原 理的には溶融還元法 とは異なり,む

しろ直接還元-溶 解の連結プロセスと分類することが妥当

である。

5. 各 種 溶 融 還 元 プ ロセ ス の 比 較

各種溶融還元プロセスで中心的役割を果たす溶融還元炉

の技術的特長を二次燃焼 ・着熱技術,原 燃料装入技術 と必

要な原燃料性状などを中心に比較 し,Table 3に 示す。

5・1 二次燃焼および着熱技術

DIOSで は2・3・4に 示 したように上部の泡立ちスラグ層

内に純酸素 を導入 し,ス ラグ内で二次燃焼することで二

次燃焼熱 をいったんスラグに伝熱 させ,炉 底か ら吹込み

ガスおよび酸素ジェットの撹拝作用によって還元反応場

所である下部の鎮静ス ラグ層への伝熱 を促進 している。

CleanSMeltもDIOSと 同様に上段 ノズルか ら泡立 ちスラグ

層内に酸素を導入 して二次燃焼 させているが,下 段 ノズル

からは高鎮静スラグ内に酸素とともに粉炭を装入して石炭

のガス化 を行い,AusIronと 類似 した状況 を作 っている。

還元反応領域は鎮静スラグ層,泡 立ちスラグ層の両方であ

るとしている。

一 方,ROMELT,HIsmelt,お よ びAusIronで は 炉 の 上 部 空

間 に 酸 素(ROMELT)な い し空 気 を吹 込 み,二 次 燃 焼 を

行 っ て い る。こ れ らの プ ロセ ス に お い て 二 次 燃 焼 熱 の ス ラ

グ 浴 へ の 伝 熱 は二 次 燃 焼 空 間 部 に ス ラグ ス プ ラ ッ シ ュ を巻

き上 げ て これ を伝 熱 媒 体 とす る こ とを 特 徴 と して い る。 多

量 の 空 気 を 吹 き込 む た め,炉 の 熱 バ ラ ン ス 改 善 の 観 点 か

ら い ず れ も酸 素 富 化 を 行 っ て い る 。HIsmeltで は さ ら に

空 気 を 熱 風 炉 で1200℃ 程 度 に 予 熱 して お り,こ の た め,

HIsmeltの 熱 風 中 の 酸 素 レ ベ ル は30%程 度 が 上 限 と な る 。

こ れ ら の プ ロ セ ス で の 二 次 燃 焼 率 は70%以 上 と 高 く,

HIsmeltを 除 き廃 熱 ボ イ ラ ー に よ り発 生 ガ ス の 顕 熱 回 収 を

行 って い る。

公 表 され て い る 鉱 石100%に お け る操 業 デ ー タ を も と に

単 位 浴 面 積 あ た りの 生 産 性(DIOSとHIsmeltの 場 合 に は 鉄

浴 と ス ラグ浴 で 断 面 積 が 異 な っ て い る た め これ らの 平 均 値

を浴 面 積 と した 。)を 推 定 す る と,DIOSが2.3t/m2hで あ る

の に 対 してROMELTで は0.9t/m2h,HIsmeltで は0.7t/m2h

と計 算 さ れ る。DIOSの 場 合 に は 鉱 石 の 予 熱 ・予 備 還 元 の

効 果,約29%を 反 映 した 数 値 で あ り,こ の 影 響 を 除 く と

冷 鉱 石 基 準 で は約1.6t/m2hで あ る。 生 産 規 模 の ほぼ 等 しい

ROMELTと 比 較 す る と,約1.8倍DIOSの 生 産 性 は 高 い こ

と に な る 。DIOSの この 数 値 は 熱 効 率 上 不 利 な 高 揮 発 分 炭

をベ ー ス と し た 二 次 燃 焼 率45%で の 値 あ り,ROMELTの

二 次 燃 焼 率 が70%以 上 で の 数 値 で あ る こ と を勘 案 す る と

DIOSの 溶 融 還 元 炉 に お け る二 次 燃 焼,着 熱 技 術 の 優 位 性

Table 3. Comparison of emerging in-bath smelting technologies.

2 3

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44 2 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol. 88 (2002) No. 8

を理解することができる。すなち,ROMELT, HIsmelt お

よびAusIronの ように炉の上部空間において二次燃焼 させ

る方法では水冷構造の炉体への放散熱が大 きく,ス ラグ内

の限定 した領域で二次燃焼 しているDIOSに 比較 して熱効

率上は不利であると考 えられる。

5・2 原燃料の装入技術 と原燃料性状対応性

炉の操業圧力が常圧 よりも低いROMELTお よび AusIron

では炉頂に開口部 を設けることが可能なために原燃料装入

装置が簡便となり,粒 度並びに水分含有量に関す る制約は

少ない。ただ し,炉 内圧が低いことに加 えて発生ガス量が

多いために炉内ガス流速が相対的に高 くな り,装 入物の炉

外への飛散の観点から粒度の下限値に制約を生ず るものと

考えられる。さらに,HIsmeltを 含め二次燃焼の伝熱媒体

としてスラグスプラッシュを炉の上部空間に発生 させてお

り,ス ラグの一部が飛散 し発生ガスダク トなどに付着する

問題 も懸念 される。

HIsmelt およびCleanSMeltで は原燃料 はすべて炉腹か ら

吹 き込 まれ るために粒度制約が あるが,HIsmeltで は -6

mmと 小粒状原燃料 まで吹 き込む ことを可能 としている。

DIOSで は鉱石,石 炭共 に受 け入れままの粒度(粒 径が石

炭は50mm未 満,鉱 石は8mm未 満)で の使用を可能 とし

ている。石炭は30mm以 下の粒度の ものを乾燥の上,重 力

装入 している。鉱石 は予備還元の段階で約0.3mm未 満の

粉状が主体となるため,サ イクロンダス トとともに炉頂か

ら投射 される。鉱石,石 炭共に炉内ガス流速を加圧操業に

よって低下 させており,歩 留 りよく装入する技術が確立 さ

れている。

5・3 商用設備へのスケールアップ

上吹 き ランスが1本 の方式 であ る,DIOS, HIsmelt,

CleanSMeltの 溶融還元炉は径の拡大,す なわち二次元的に

ス ケ ール ア ップ され る。 サ イ ドラ ン スで 操 業 す る

ROMELTと 複数の上吹 きランスを採用 している AusIron の

炉は長手方向,す なわち一次元的にスケールアップ される。

「二次元的にスケール アップす る型式は1本 ランスか ら供

給 されるガス流の到達距離の観点か ら一次元的スケール

アップの型式に比較 して,限 界がある。」との指摘がある。

前者は程度の差はあるものの加圧型の溶融還元炉であり,

後者は微減圧で操業 される型式であるため,炉 壁にかかる

内圧を考えた場合には妥当な方向といえる。 しかし,耐 火

物で構成 される炉下部の熱膨張 ・収縮に伴 う構造安定性の

観点か らは必ず しも一元的スケールアップに利があるとは

いえない。高炉が数十年かけて大型化 されてきたように,

商用化 された後の開発課題であろう。

6. ま とめ

(1 ) DIOSは コークス炉並びに焼結機 を必要 としない

製鉄法として,1988年 か ら8年 間の共同研究により,溶 融

還元炉 と予熱 ・予備還元炉 との組合わせによる全系プロセ

スの開発に世界で初めて成功するほか,実 用上の諸課題が

解決 された。

(2 ) 高炉代替プロセスとして新規 に建設することを想

定 した場合を想定 した検討の結果は経済的に高炉法を凌駕

し,か つ地球環境にも優 しいプロセスであると評価するこ

とができる。

(3 ) DIOSの 中核 をなす,溶 融還元炉 を他の還元プロ

セス,例 えば回転炉床炉を予備還元設備として組合わせる

ことにより著 しく生産性が向上し,溶 銑製造原価が低下す

る上,適 用の可能性が拡大す る。

(4 ) 国内においては2010年 までに溶銑の一部は DIOS

によって生産 されるとの予測はあるものの,現 在はすでに

償却の済んだ設備が生産余力を持っている状況である。し

たがって,DIOS推 進委員会の活動は海外における実用化

に焦点を置 き,各 国か らの活発な引き合いに対応 してい

る。

(5 ) HIsmelt およびROMELTは それぞれ西オース トラ

リア州とインドにおいてここ数年以内に実用化すべく環境

影響評価など,建 設準備段階に入っている。

(6 ) AusIronは 同様に ここ数年以内に南オース トラリ

ア州において電力併産プロジェク トとして実用化すべく小

型ではあるが実証試験ベースでの開発が行われている。

(7 ) COREX は韓国,南 アフ リカおよび インドにおい

て年産60万 トン規模の商用設備,計4基 が稼動 している。

(8 ) 韓国のPOSCOに おいては鉱石の還元 に流動層炉

を採用す ることで粉鉱石の使用 を可能 とした FINEX が

COREX の商用設備を用いて開発中であり,2003年 までに

年産60万t規 模で実用化 される予定であり,2010年 までに

改修時期 を迎えるポハ ンの高炉を代替する計画である。

文 献

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