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対数をとると 基礎マクロ経済学 2011年度夏学期 補助教材(塩路)

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対数をとると

基礎マクロ経済学

2011年度夏学期

補助教材(塩路)

対数

• zを「底」とする対数– Y=logz(X)

– その意味は、「XはzのY乗である」ということ

• ここでは「自然対数」(natural logarithm)を主に取り上げたい。– 不思議な数「e」を底とする対数

– eの定義:

– 自然対数をln(X)と書くことが多い。

– 近似式:ln(1+a)=a

– また、ln(X)の微分は1/X

( )1/

0lim 1 s

ss

→+

対数を取ると図が見やすくなる

• 成長している変数のグラフ化

– Xtという変数が毎期aの率で成長しているとする

– このとき、Xt=(1+a)t・X0である。

– 両辺の対数をとると、

• lnXt = [ln(1+a)]・t + lnX0

• 近似的にはlnXt = a・t + lnX0

対数をとらずにそのままグラフ化した場合(A国は毎期5%、B国は20%で成長)

0

5

10

15

20

25

30

35

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

A国B国

対数をとってグラフ化した場合(A国は毎期5%、B国は20%で成長)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

A国B国

参考:エクセルの「対数目盛」機能を使った場合(A国は毎期5%、B国は20%で成長)

1

10

100

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

A国B国

続き

• 成長しながら循環している変数のグラフ化

– Ytという変数は先に見たXtという変数の周りで循環的な動きをしている。

– 偶数年:Yt=(1+b)・Xt

– 奇数年:Yt=(1+b)-1・Xt

– 両辺の対数をとると、

• 偶数年:lnYt = ln(1+b) + lnXt

• 奇数年:lnYt = - ln(1+b) + lnXt

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 10 20 30

対数をとらない場合

X Y

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 10 20 30

対数をとった場合

X Y

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1904 1909 1914 1919 1924 1929 1934 1939 1944 1949 1954 1959 1964 1969 1974 1979 1984 1989 1994 1999 2004

企業物価指数(戦前基準)の推移1934-36年平均を100とする

-1

0

1

2

3

4

5

6

7

1904 1909 1914 1919 1924 1929 1934 1939 1944 1949 1954 1959 1964 1969 1974 1979 1984 1989 1994 1999 2004

企業物価指数(戦前基準)の推移、対数をとった場合1934-36年平均を100とする

さらに

• ln(X/Y)=ln(X)-ln(Y)

よって、2変数の比が一定である時、両者の対数値の差は一定。

対数をとらずにそのままグラフ化した場合(変数Yは変数Xの常に2倍、両者とも毎期20%で成長)

0

10

20

30

40

50

60

70

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

変数X

変数Y

対数をとってグラフ化した場合(変数Yは変数Xの常に2倍、両者とも毎期20%で成長)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

変数X変数Y

対数差分をとることの意味

• 通常の意味での「成長率」または「増加率」

ΔXt/Xt

• 「対数差分」ないし「対数階差」

ΔlnXt

• 次にみるように、対数差分は通常の意味での成長率の近似と解釈できる。

• 成長率の計算

– Xtという変数は時間tと共にその値が変わっていくものだとする。

– そのt期からt+1期にかけての成長率をaとすると、a=ΔXt/Xt=(Xt+1-Xt)/Xt

– 言い換えると、Xt+1/Xt=1+a

– 両辺の対数をとると、

• lnXt+1 -lnXt=ln(1+a)=a(近似的に)

– よって成長率は対数差分によって近似される!

ちなみに(主に理系出身者向け?)

• しかし別の見方もできる。

• 時間が連続である時、変数Xtのt時点での「瞬時的成長率」は(dXt/dt)/Xt

• これはdlnXt/dtに等しい(合成関数の微分の公式を用いる)

• 「対数差分」ΔlnXt=lnXt+1-lnXtはこの瞬時的成長率を時間について積分したものである。

• そう考えてみると、「対数差分」こそが正しい成長率の定義だ、ということも可能である。

つづき

• 事実、経済学者が書いた実証分析に関する論文で、「成長率」は普通は「対数差分」を指す。

• これに対し、役所やマスコミが「成長率」という時には通常の意味での成長率を指している。

0

100000

200000

300000

400000

500000

600000

1955/ 1-3.

1960/ 1-3.

1965/ 1-3.

1970/ 1-3.

1975/ 1-3.

1980/ 1-3.

1985/ 1-3.

1990/ 1-3.

1995/ 1-3.

2000/ 1-3.

2005/ 1-3.

日本の実質GDP、原データ

10.5

11

11.5

12

12.5

13

13.5

1955/ 1-3.

1960/ 1-3.

1965/ 1-3.

1970/ 1-3.

1975/ 1-3.

1980/ 1-3.

1985/ 1-3.

1990/ 1-3.

1995/ 1-3.

2000/ 1-3.

2005/ 1-3.

日本の実質GDP、対数

-0.04

-0.02

0

0.02

0.04

0.06

0.08

1955/ 1-3.

1960/ 1-3.

1965/ 1-3.

1970/ 1-3.

1975/ 1-3.

1980/ 1-3.

1985/ 1-3.

1990/ 1-3.

1995/ 1-3.

2000/ 1- 3.

2005/ 1- 3.

日本の実質GDP、通常の意味での成長率VS対数差分

成長率 対数差分