仕 事における居場所概念の ... - 慶應SFC学会 · 慶應義塾大学湘南藤沢学会...

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事における居場所概念の構築と 尺度の作成 SFC-SWP 2015-008 AUTUMN 2015年度 秋学期 慶應義塾大学湘南藤沢学会 氏家 慶 介 環境情報学部 4年 秋山 美紀 研究会

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事における居場所概念の構築と尺度の作成   

SFC-SWP 2015-008

AUTUMN2015年度 秋学期

研究会優秀論文

慶應義塾大学湘南藤沢学会

氏家 慶介 環境情報学部 4年

秋山 美紀 研究会

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慶應義塾大学卒業論文

仕事における居場所概念の構築と尺度の作成

平成 28年 1月 21日

慶應義塾大学環境情報学部 4年

氏家慶介

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-Abstract-

「居場所」の研究は児童・生徒を対象には行われているものの,仕事における「居場所」に

ついての実証的な研究は見当たらない。しかしながら,昨今の自己責任型のキャリア開発の必

要性や人間関係を初めとするストレスの増加から,労働者にとっても「居場所」の問題は重要

であると考えられる。そこで本研究では,「仕事における居場所」概念を明らかにし,「仕事に

おける居場所感」を測定できる尺度の開発を目指した。

KJ 法で抽出された概念をもとに作成した質問紙を用いて,労働者 331 名を対象に調査を行っ

たところ,「仕事に対する当事者意識」「仕事における関係性」「仕事での自己効力感」の 3つの

因子が「仕事における居場所感」の構成要素として抽出された。また,重回帰分析の結果から,

「仕事に対する当事者意識」が他の因子よりも「仕事における居場所感」の強い要素であるこ

とが示唆された。また,「性別」「年齢」「勤続年数」「転職回数」「職種」「職位」と「仕事にお

ける居場所感」との関連を検討したところ,「仕事に対する当事者意識」と「仕事における関係

性」は「職位」によって,「仕事での自己効力感」は「性別」「年齢」「勤続年数」「職位」によ

って,それぞれ統計的に有意な差が見られた。

社内・社外のソーシャルサポートの有無によって「仕事における居場所感」に差があるかを

検討したところ,ソーシャルサポートが低いほど「仕事における居場所感」が低いことが明ら

かになった。また,仕事に理解がある相談相手が,職場や職場外,社外といった様々な立場に

いる労働者ほど「仕事における居場所感」を感じやすい傾向が示された。

-Keyword-

仕事における居場所,当事者意識,関係性,自己効力感,ソーシャルサポート

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<目次>

1.背景と目的........................................................................................................4

2.KJ法による仕事における居場所概念の構築 ...................................................6 目的 ............................................................................................................................ 6 方法 ............................................................................................................................ 6

結果 ............................................................................................................................ 7

3.「仕事における居場所感」尺度の開発 ..........................................................10 目的 .......................................................................................................................... 10

方法 .......................................................................................................................... 10 結果 .......................................................................................................................... 12 考察 .......................................................................................................................... 15

4.「仕事における居場所感」尺度の下位尺度と個別属性との関連...................16 目的 .......................................................................................................................... 16 方法 .......................................................................................................................... 16

結果 .......................................................................................................................... 17 考察 .......................................................................................................................... 24

5.ソーシャルサポートと「仕事における居場所感」の関係の検討...................26 目的 .......................................................................................................................... 26 方法 .......................................................................................................................... 26 結果 .......................................................................................................................... 28

考察 .......................................................................................................................... 34

6.総括と今後の課題...........................................................................................35

7.謝辞 ...............................................................................................................37

参考文献 ............................................................................................................38

付録資料 第 2章質問紙.....................................................................................39

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<表目次>

表 1:有効回答者の属性(56名) ........................................................................................................................6

表 2:有効回答者の属性(331名) ....................................................................................................................10

表 3:仕事における居場所感尺度 因子分析結果(promax回転後)...............................................................13

表 4:重回帰分析結果.....................................................................................................................................14

表 5:個別属性の相関行列 .............................................................................................................................17

表 6:「仕事における居場所感」下位尺度と性別の関連...............................................................................18

表 7:性別と他の属性との関連 ....................................................................................................................18

表 8:仕事における居場所感尺度の下位尺度と個別属性の分散分析結果(年齢)............................................19

表 9:仕事における居場所感尺度の下位尺度と個別属性の分散分析結果(勤続年数).....................................20

表 10:仕事における居場所感尺度の下位尺度と個別属性の分散分析結果(転職回数)...................................21

表 11:仕事における居場所感尺度の下位尺度と個別属性の分散分析結果(職種) ..........................................21

表 12:仕事における居場所感尺度の下位尺度と個別属性の分散分析結果(職位)..........................................23

表 13:「社内ソーシャルサポート」グルーピング結果 ..............................................................................29

表 14:「社外ソーシャルサポート」グルーピング結果 ..............................................................................30

表 15:仕事における居場所感下位尺度と社内ソーサルサポートの分散分析 ..............................................32

表 16:仕事における居場所感下位尺度と社外ソーサルサポートの分散分析 ..............................................33

<図目次>

図 1:KJ法「仕事を通して居場所があると感じる時」 ..................................................................................8

図 2:KJ法「仕事を通して居場所がないと感じる時」 ..................................................................................8

図 3:KJ法「仕事を通して感じられる居場所とは」......................................................................................9

図 4:ソーシャルサポート ウォード法によるクラスタ分析結果 ................................................................28

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1.背景と目的

「居場所」の概念は,小・中学生の不登校の子どもたちの増加により注目を集め,1980 年代

後半から,臨床心理学,発達心理学,教育学の分野で研究がされてきた (杉本,2009)。文部科

学省は 1992 年に「登校拒否(不登校)問題について-児童生徒の『心の居場所』づくりを目指

して-」という報告を出し,不登校の子どもたちの一つの目標として「心の居場所づくり」を挙

げ,以来わが国においては心理的側面から居場所の研究が盛んに行われるようになった。

「居場所があるとどのくらい感じているのか」を測る尺度の作成も広く行われている。たと

えば杉本・庄司 (2006)は,小・中・高校生 859 名を対象にした調査より,「被受容感」「精神的

安定」「行動の自由」「思考・ 内省」「自己肯定感」「他者からの自由」の 6つの下位尺度から構

成される「居場所の心理的機能を測定する」尺度を作成している。そして則定(2007)は,中・

高・大学生,専門学生の計 931 名を対象にした調査より,「本来感」「役割感」「被受容感」「安

心感」の 4つの下位尺度からなる「心理的居場所感尺度」を作成している。また,中島ら(2007)

は既存の居場所に関する研究の整理から,居場所の定義は「自分の存在を確認できる場所」に

集約できるとしている。

居場所の研究における対象者は,初めは小・中学生であったが,社会の変化に合わせて,高

校生・大学生,高齢者,障がい者,母親など多様な拡がりを見せている(原田ら 2014;白瀬ら 2015;

柴田ら 2011;鬼塚 2012)。しかしながら,産業組織分野,つまり働く人を対象にした「居場所」

の実証的研究は見当たらない。

ここで近年の労働者の置かれている状況を考えてみる。厚生労働省職業能力開発局(2007)の

報告では,「職業生涯が長くなる傾向にある一方,激しい環境変化による企業寿命の短縮,技術

や職務の変化等に伴う離転職の可能性の増大など,働く者個人が自ら職業キャリアの方向づけ

を迫られる機会が拡大している。」と述べられている。つまり,組織にぶらさがる受け身の姿勢

では変化に対応できず,一人ひとりが主体的に自律してキャリアを築いてくことが変化の激し

い現代社会において求められていることがわかる。

加えて,2016 年 4 月に改定が施行される職業能力開発促進法では,基本理念に「労働者は職

業生活設計を行い,その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるもの

とすること」と定められ「自発的な職業能力の開発」は法律の側面からも要請されることにな

った。

また,「仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害」の労災請求件数と支給決定

件数がともに,平成 26 年に過去最多を記録したことが報告されている通り(厚生労働省 2015),

労働者の精神的負荷は年々大きくなりつつある。

さらには,厚生労働省が 5年に 1 度行っている「労働者健康状況調査」(2012)でも,6 割を超

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えた労働者が仕事においてストレスを感じていると報告されている。ストレスの具体的な内容

は人間関係が 41.3%でもっとも多く,ついで仕事の質(33.1%),仕事の量(30.3%)であった。

このような時代背景から,厚生労働省(2010,2014)はキャリア健診,ストレスチェック制度と

いう二つの制度を設けた。前者は,労働者の動機付けをサポートする制度であり,後者は労働

者のストレスへの対処を目的としている。

このキャリア健診とストレスチェック制度は目的こそ違うが,心理尺度を用いて従業員の心

理状態を把握し,その結果を用いてキャリア・コンサルタントや医師などの専門家が対応する

こと,また企業は結果をもとに人事施策上のヒントを得るという点で同じであろう。今後,労

働者を取り巻くさまざまな環境変化を踏まえて,労働者を支援する制度の開発と発展はますま

す重要になっていくのは間違いない。

以上のように,自発的なキャリア形成の必要性,人間関係を始めとするストレスの増大から

産業組織の分野の「居場所」も重要なテーマになっていると考えられる。また,キャリア健診

やストレスチェック制度のアプローチから,「仕事における居場所感」を測定できる尺度の開発

は,労働者本人のキャリア形成の手助けとなる上に,企業においては従業員の居場所感を把握

することによって人事施策上のヒントを得ることができるようになると考える。

そこで本研究では,仕事における居場所の概念を明らかにし,「仕事における居場所感」を測

定することのできる尺度の開発を目指す。また,「性別」「年齢」「勤続年数」「転職回数」「職種」

「職位」「ソーシャルサポートの有無」の違いによって「仕事における居場所感」に差異が生じ

るのか検討する。

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2.KJ法による仕事における居場所概念の構築 目的

産業分野においては,「居場所」に関して実証的に研究した論文が見当たらず,「仕事におけ

る居場所」の構成概念を先行文献から構築することは難しい。そこで本章では,労働者に「仕

事における居場所」に関する質問を自由記述で回答してもらい,「仕事における居場所」を構成

する要素を洗い出し,「仕事における居場所」概念を構築することを目指す。また,その結果か

ら「仕事における居場所感」を測定する尺度の項目を作成する。

方法

調査対象 経営コンサルタントの協力のもと,メーリングリスト,SNS,社会人の集まるサロ

ンの場で調査協力を呼びかけ,日本の労働者 59 名に回答してもらった。そのうち白紙解答の 3

名を除外した 56 名(男性 45 名,女性 11 名,平均年齢 45.9 歳,年齢の標準偏差 12.7 歳)を有効

回答とした。なお,回答者の属性は表 1に記した。

調査内容 則定(2008)のアンケート調査を参考に①「仕事を通して居場所があると感じられる

時を 3つ教えてください。」②「仕事を通して居場所がないと感じられる時を 3つ教えてくださ

い。」③「あなたにとって,仕事を通じて感じられる居場所とはどのようなものですか。自由に

記述してください。」をそれぞれ自由記述形式で尋ねた。なお「仕事」とは「仕事の内容,成果,

給与,職場,同僚との関係,取引先との飲み会など仕事に関すること全て」という説明を記載

した。上記 3つの質問の回答を,解釈可能な最小単位の切片に分解し,KJ 法(川喜田,1967)をそ

れぞれの質問に実施した。

調査手続 WEB による回答または質問紙の配布

調査期日 2015 年 5 月

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結果

「仕事を通して居場所があると感じる時」では 174 個,「仕事を通して居場所がないと感じる

時」では 113 個,「仕事を通して感じられる居場所とは」では 117 個の切片が抽出され,それぞ

れ KJ 法によって分類・整理した。その結果,「仕事を通して居場所があると感じる時」では「関

係性」「仕事に対する当事者意識」「自分の存在価値を感じられる」の上位カテゴリー(図 1),「仕

事を通して居場所がないと感じる時」では「関係性の悪さ」「仕事で当事者意識を持てない」「存

在価値を感じられない」の上位カテゴリー(図 2),「仕事を通して感じられる居場所とは」では

「良い関係性がある場」「仕事に対して当事者意識を持てる場」「存在価値を感じられる場」の

上位カテゴリー(図 3)が抽出された。図 1,図 2,図 3の括弧内の数字は切片の数を表している。

「仕事を通して居場所があると感じる時」「仕事を通して居場所がないと感じる時」「仕事を

通して感じられる居場所とは」の上位カテゴリーは「関係性」「当事者意識」「自己効力感」と

いう点で共通しており,「仕事における居場所」の構成概念は,「仕事に対する当事者意識」「仕

事における関係性」「仕事において自分の存在価値を感じられる」の 3つの因子から成り立つと

いう仮説を得た。

また,3 つの質問の中位カテゴリーを網羅する形で「仕事における居場所」の尺度の候補とな

る項目を作成した。それらの項目を,構成概念の妥当性,抽象度,文の表現の観点から人事の

専門家と追加,削除,修正を行い,計 32 個の項目を「仕事における居場所感」尺度の項目案と

して用意した。項目案について現場の労働者とも話し合い,負の表現の項目には回答に抵抗が

あるとの声があがったので,項目の表現はすべて正の方向のものにした。

次章では,以上の 32 項目を用いて,「仕事における居場所」の構成概念は「仕事に対する当

事者意識」「仕事における関係性」「仕事において自分の存在価値を感じられる」の 3 つの因子

から成り立つという仮説の検証と「仕事における居場所感」尺度の作成を目指す。

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図 1 KJ法「仕事を通して居場所があると感じる時」

図 2 KJ法「仕事を通して居場所がないと感じる時」

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図 3 KJ法「仕事を通して感じられる居場所とは」

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3.「仕事における居場所感」尺度の開発

目的

前章では「仕事における居場所」の構成概念は「仕事に対する当事者意識」「仕事における関

係性」「仕事において自分の存在価値を感じられる」の 3つの因子から成り立つという仮説を得

た。そこで量的調査を労働者に実施し,因子分析で構成概念の妥当性を確かめることによって

仮説の検証を行う。また因子分析の結果より「仕事における居場所感」尺度を開発し,妥当性

と信頼性を検討する。そして,「仕事における居場所感」に対する各因子の重み付けも試みる。

方法

調査対象 複数の経営コンサルタントに企業を紹介してもらい,人事部や管理者に調査協力

を申し入れた。その結果,関東,近畿,中部,九州地方の計 34 社から協力を得た。「仕事にお

ける居場所感」を研究する初の試みとして,仕事の「居場所」の全体像を把握することを最優

先にし,職種や会社規模などで対象者を選定することはしなかった。ただし,質問紙配布段階

で,年齢,性別,職種,職位がばらけるよう協力企業に要請した。その結果,労働者 348 名(回

収率 76%)から回答を得た。そのうち,特定の選択肢が続く回答や,記入漏れがある回答を除外

した 331 名(男性 255 名,女性 76 名) を有効回答とした。属性はそれぞれ表 2に示した。

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調査内容 前章より作成した「仕事における居場所感」を測定する 32 項目からなる尺度を,

「あてはまらない 1」「あまりあてはまらない 2」「どちらとも言えない 3」「ややあてはまる 4」

「あてはまる 5」の 5 件法で尋ねた。また,基準となる尺度が不在のため,「仕事全体を通して,

自分の居場所があると感じる」など直接仕事における居場所感を尋ねる 4 項目を尺度の妥当性

の検証のため用意し,「仕事における居場所感」尺度と同様に 5 件法で尋ねた。また,フェイス

シートとして「性別」「年齢」「勤続年数」「転職回数」「職種」「職位」「従業員規模」「社内ソー

シャルサポートの有無」「社外ソーシャルサポートの有無」を尋ねた。フェイスシートは,人事

の専門家と内容の妥当性を確認した。

調査手続 質問紙または WEB による回答。

調査期日 2015 年 9 月〜10 月

解析方法 直接仕事における居場所感を尋ねた 4 項目の平均値を「仕事における居場所」得

点とし, 尺度の妥当性の検討のため,「仕事における居場所」得点と尺度候補の 32 項目を用い

て相関分析を行った。また,主因子法プロマックス回転による因子分析で構成概念の妥当性を

検討し,「仕事における居場所感」尺度を作成した。得られた下位尺度の信頼性はクロンバック

のαを算出することによって確かめた。

また,「仕事における居場所」得点を従属変数に,「仕事における居場所感」尺度の下位尺度

の因子得点を独立変数に重回帰分析を行い,「仕事における居場所感」に対する各因子の重み付

けを行った。

分析においては,すべてフリーソフト Rを用いた。

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結果

「仕事における居場所感」尺度の作成

まず「仕事における居場所感」尺度が,居場所感を測っているのかどうか構成概念の妥当性を

検討する。直接仕事における居場所感を尋ねた 4 項目の平均値を「仕事における居場所」得点

とし,「仕事における居場所」得点と 32 項目の相関を調べたところ,すべての項目が.40 以上の

正の相関を示し,p値もそれぞれ有意水準.01以下であったので,32項目すべてを分析対象とした。

次に,尺度の因子構造を明らかにするために主因子法による因子分析を行った。予備調査にお

いての想定,また固有値がそれぞれ 1.0 を上回ったことから 3因子を抽出してプロマックス回転

を行った。因子負荷量が.50 未満の項目,また二つ以上の因子に.40 以上の因子負荷量がある項

目を削除することを繰り返した結果,19 項目が抽出された。結果は表 3に示した。

第Ⅰ因子は「仕事にやりがいを感じる」など 7項目からなる。これらは,仕事に対する自分自

身の肯定的な捉え方や,主体性・能動性に関わる項目が多いことから「仕事に対する当事者意識」

と命名した。第Ⅱ因子は「仕事を通じ,さりげない会話ができる相手がいる」など 5項目からな

る。これらは,周囲との関係性についての項目から成り立っていることから,「仕事における関

係性」と命名した。第Ⅲ因子は「仕事中に指導をすることがよくある」など 7 項目からなる。

他者への影響や,自分の能力への自信,お役に立てることなど自己の効力感に関する項目から成

り立つことから「仕事での自己効力感」と命名した。信頼性として,クロンバックのα係数を算

出した結果,第Ⅰ因子は.90,第Ⅱ因子は.87,第Ⅲ因子は.89 となり,各因子とも高い信頼性が示

された。

この結果は第 1 章で得られた,「仕事における居場所感」は「仕事に対する当事者意識」「仕

事における関係性」「仕事において自分の存在価値を感じられる」の 3要因から成り立つという

仮説を支持していると言えるだろう。ただし,「仕事において自分の存在価値を感じられる」要

因として,当初は「承認」と「自己効力感」の二つの要素を考えていたが,因子分析の過程に

おいて「承認」の項目は残らなかったため,第Ⅲ因子を「仕事での自己効力感」と命名した。

また,因子分析において斜交回転を用いたので各因子間の相関係数を算出した。各因子間相

関はそれぞれ.50 以上を上回りある程度の相関が見られた。そのなかでも,第Ⅰ因子と第Ⅱ因子

で.60,第Ⅰ因子と第Ⅲ因子において.68,という比較的高い相関が見られた。因果関係は定かで

はないが,「仕事において良い関係性がある」ことと「仕事に対する当事者意識」を持てること,

また「仕事での自己効力感」を感じられることと「仕事に対する当事者意識」を持てることに

相関があることが示唆された。

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「仕事における居場所感」の因子の重み付け

次に各因子と「仕事における居場所感」の関連性を検討する。「仕事に対する当事者意識」因

子 7項目の平均点を「仕事に対する当事者意識」得点,「仕事における関係性」因子 5項目の平

均点を「仕事における関係性」得点,「仕事での自己効力感」因子 7項目の平均点を「仕事での

自己効力感」得点とし,「仕事における居場所」得点を従属変数に,3 つの因子得点を独立変数に

おいて重回帰分析を行った。その結果は表 4 に示した通りである。AIC より,3 つの因子得点を

従属変数にすることは妥当であること,また VIF より多重共線性は発生していないと判断した。

また,切片が 0 であることを棄却できなかったので,切片なしの重回帰分析を行った。

各因子の重回帰係数の p値は有意水準.001 を下回り,どの因子も「仕事における居場所感」を

測っていることが重回帰分析からも確かめられる。4 つの得点はそれぞれ 1〜5 点でスケールが

同じであるので重回帰係数から独立変数への影響を比べることができる。「仕事に対する当事者

意識」の係数は.48 で,「仕事における関係性」の.27,「仕事での自己効力感」の.25 のおおよ

そ 2 倍である。これは,「仕事に対する当事者意識」は,「仕事における関係性」や「仕事での

自己効力感」よりも,2倍ほど「仕事における居場所感」に対して強い影響を及ぼしていること

がわかる。また「仕事における関係性」の係数と「仕事での自己効力感」の係数は,おおよそ近

い値であることから,「仕事における居場所感」に与える影響は同程度であることがわかる。

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考察

「仕事における居場所感」は「仕事に対する当事者意識」「仕事における関係性」「仕事での

自己効力感」の 3つの因子から構成されていることが今回の研究から明らかになった。

また,「仕事における居場所感」尺度の因子として得られた因子得点を従属変数に,直接居場

所感を測った「仕事における居場所感」得点を結果変数に用いて,重回帰分析を行った。係数

は p <.001 水準で有意な結果を表し,どの因子も「仕事における居場所感」を測っている妥当

性を重回帰分析からも確認したとともに,係数の大きさから各因子の重み付けを行った。その

結果から,「仕事における居場所感」を感じるには,「仕事に対する当事者意識」を持てること

が「仕事における関係性」や「仕事での自己効力感」より 2 倍ほど影響を与えることが示唆さ

れた。

この結果から,どんなに職場に良い関係性があっても,どんなに自分自身に効力感を感じて

いても,仕事に対して当事者意識を持って取り組むことができなければ,なかなか仕事で居場

所を感じることは難しいと言えるだろう。言い換えると,「仕事における関係性」や「仕事での

自己効力感」は,自分自身の保有している資産や資源であると思うが,それを機能させる「仕

事に対する当事者意識」を持ってこそ,「仕事における居場所感」を感じることができるという

ことになる。

ただし,この結果は回答者 331 人を総合的に見たときに,「仕事に対する当事者意識」を持て

ることが重要であると示唆されたまでであって,個人毎に「仕事における居場所感」を感じる

要素は異なるだろう。人事施策や制度では,当事者意識を持てる仕組み,例えば社内公募や社

内応募などを取り入れることは「仕事における居場所感」を感じやすくする上で有効であると

思うが,キャリア・コンサルタントなど個人の視点での支援の際は,個人の違いを考慮に入れ

ることが重要であろう。

児童・生徒・学生を対象とした居場所に関する先行研究では,「受け入れられていること」や,

「安心感」など比較的受け身の要素が居場所を感じる要因として多かったが,仕事においては

「仕事に対する当事者意識」が「仕事における居場所感」に強い影響を与えていることから,

主体性や自律性を発揮してくことが仕事での居場所を感じる上で重要であるという結果になっ

た。ただし,中島ら(2007)が,居場所の定義は「自分の存在を確認できる場所」に集約できる

と述べている通り,環境や年齢の変化によって,居場所を感じられる要素は変化するものの,「自

分の存在を確認できる場所」という点では児童・生徒・学生と労働者も共通していると考えら

れる。仕事に取り組むようになると,価値を受容する側から,価値を創造する側に立場が変わ

り,受け身の姿勢では評価されず,「自分の存在」を確認するのは難しく,より主体的に仕事に

取り組むことが「自分の存在を確認できる」場所を作る重要な要素になるだろう。

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4.「仕事における居場所感」尺度の下位尺度と個別属性との関連

目的

小・中・高校生を対象にした「居場所」研究では小学校,中学校,高校の違いにおける発達

的変化を報告している通り(杉本ら,2006),「仕事における居場所」においても年齢や性別,職

種といった属性の違いによって「仕事における居場所感」に差が生じる可能性が考えられる。

そこで本章では,前章のフェイスシートで尋ねた「性別」「年齢」「勤続年数」「転職回数」「職

種」「職位」の違いによって「仕事における居場所感」に,統計的に有意な差が生じているのか

検討する。

方法

「仕事における居場所感」尺度の下位尺度である,「仕事に対する当事者意識」「仕事におけ

る関係性」「仕事での自己効力感」の因子得点は,属性の違いによって統計的に有意な差がある

のか分析する。データは第 3章で得られたものを用いる。

まず,属性間の関連性として相関行列をもとめた。属性間に強い相関があるか検討し,多重

共線性の有無から,どの属性も分析する上で妥当であるか検討した。

次に属性の違いによって,「仕事における居場所感」尺度の下位尺度において統計的に有意な

差があるか分析した。「性別」は 2群のため t 検定を行い,それ以外の属性に関しては分散分析

を行った。また,分散分析で有意な結果が出た属性に対して Tukey の多重比較(両側検定,有意

水準 p < .05)を行った。「性別」においては交絡因子による影響が考えられたので,フィッシャ

ーの正確確率検定により「性別」の違いによって他の属性の割合に差が生じているかを判断し,

交絡因子による影響を検討した。

分析においては,すべてフリーソフト Rを用いた。

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結果

属性間の関係性

まず,属性間にどのような関連があるかを検討するため,属性毎の相関を調べた。それをま

とめたのが表 5 である。「性別」は男性が 0,女性が 1 のダミー変数であり,「性別」「職種」は

それぞれ名義尺度,「年齢」「勤続年数」「転職回数」「職位」はそれぞれ順序尺度である。

「性別」と弱い負の相関が見られたのは「勤年数」と「職位」であった。この結果から,今

回の調査対象者において,勤続年数が長いほど,また職位が高いほど男性が多い傾向があるこ

とがわかった。また,順序尺度間では,絶対値.30〜.52 のある程度の相関が見られた。

ただし,相関係数.70 を超えるような強い相関関係を示す属性はなかったので,「性別」「年齢」

「勤続年数」「転職回数」「職種」「職位」すべての属性と「仕事における居場所感尺度」の下位

尺度との関連について分析することとした。

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下位尺度の性差の検討

第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」と第Ⅱ因子「仕事における関係性」では,有意な性差

は見られなかったが,第Ⅲ因子の「仕事での自己効力感」のみ男女差が見られ,女性の方が有

意に低いという結果になった(表 6)。ただし,職位などの他の属性が交絡因子として働き,有意

差が生じている可能性があるため,フィッシャーの正確確率検定(表 7)を行った。その結果,「勤

続年数」「職種」「職位」で有意水準 p<.01 のもと有意な差が見られた。「女性」という属性が居

場所感に影響を及ぼしているのではなく,女性の置かれている状況,つまり職位が上がらなか

ったり,職種が偏ったりすることが「仕事における居場所感」において影響を与えていると考

えられる。今回は女性のサンプル数が少なく交絡因子の調整を行わなかったが,今後「仕事に

おける居場所感」の性差を検討する上では交絡因子を調整した上で分析を行う必要があるだろ

う。

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年齢における下位尺度の差異の検討

質問紙で年齢を尋ねる際は,「60 代以上」という選択肢の記載ではなく,「60 代」「70 代以上」

と分けて記載をしていた。しかしながら 70 代が 2 人と少なかったため,60 代と 70 代を合わせ

て「60 代以上」として分析を行った。

「年齢」においては第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」においてのみ,有意な差が見られた(表

8)。多重比較を行ったところ,「10 代〜20 代」が他の年代と比べて有意に「仕事での自己効力

感」が低く,「30 代」が「50 代」と比べて有意に「仕事での自己効力感」が低いという結果が

得られた。表 5より「年齢」と「職位」の相関係数は.34 と低いことから,たとえ,職位があが

らずとも,年齢を重ねることによって後輩に指導する機会や裁量が増え,自身の能力を実感す

る場面が増えた結果「仕事での自己効力感」が高くなったと考えられる。ただし,「60 代以上」

の「仕事のおける自己効力感」の平均値は「50 代」の平均値に比べて低く,ある時期から単に

年齢が上がっても自己効力感は増加する訳ではないことが示唆されている。60 代ではポストオ

フや再雇用といった,職位や裁量が下がる機会がその一つの理由として考えられる。

また,第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」と第Ⅱ因子「仕事における関係性」においては,

統計的に「年齢」による有意な差は生じていないと判断された。これは単に年齢を重ねること

が仕事に対して当事者意識を持てるようなること,また仕事において良好な人間関係を築ける

ことには必ずしも繋がらないことを示唆している。

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勤続年数における下位尺度の差異の検討

分散分析の結果,「勤続年数」においては第Ⅱ因子「仕事における関係性」,第Ⅲ因子「仕事

での自己効力感」で有意差が認められた(表 9)。多重比較の結果,「仕事での自己効力感」にお

いてのみ有意差が認められ,「1〜3 年目」は 5 年以上勤務している労働者より有意に仕事での自

己効力感が低く,「3〜5 年目」は「10〜15 年目」,「20 年以上」より有意に自己効力感が低く,

「5〜10 年目」は「20 年以上」より有意に自己効力感が低い結果になった。これは「年齢」と

同様に,「勤続年数」が長くなるにつれて「仕事での自己効力感」が高くなる傾向を示している。

ただし,勤続年数 10 年以上の群間の比較においては統計的に有意な差が見られず,勤続年数 10

年あたりを境に「仕事での自己効力感」はある一定水準まで達することが示唆された。

第Ⅱ因子「仕事における関係性」では,多重比較では有意な差がある群の組み合わせを得る

ことができなかったが,分散分析では p<.05 水準で有意な結果を得ることができた。これはそ

れぞれの群間を比較しても有意差は得られなかったが,「勤続年数」全体の「仕事における関係

性」に与える効果は有意なものであったと言える。勤続年数 1〜10 年目を一つのまとまりとし

てみると平均値 3.67,勤続年数 10 年以上を一つのまとまりとしてみると平均値 3.98 であり,

この二つの群で t 検定を行ったところ p<.001 水準で有意差が得られた。勤続年数 10 年あたり

を境に,「仕事における関係性」においてもある一定水準に達することが今回の結果から言える

だろう。

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転職回数と職種における下位尺度の差異の検討

「転職回数」と「職種」においてはすべての下位尺度において有意な差が見られなかった(表

10,表 11)。「転職回数」や「職種」の違いによっては,仕事における居場所感に差異は生じない

ことが今回の結果から示唆された。

ただし,今回の調査では群によってサンプル数に偏りがあるため,今後転職回数や職種の効

果をより深く検討するためには,群間におけるサンプル数の違いの改善が求められる。

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職位における下位尺度の差異の検討

質問紙では,「パート・アルバイト」の項目があったが,「パート・アルバイト」を選択した回

答者が 7人と少なかったため,「職位」における分散分析においては除外して分析を行った。ま

た「その他」と答えた 16 人も,「職位」における分析には不適切と判断し,計 23 人を除外した

308 人を分析対象とした。

「職位」においては,分散分析の結果,すべての因子において有意な結果が得られた(表 12)。

多重比較の結果,第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」においては,「契約社員」が「経営者・

役員クラス」より有意に低く,「一般社員」は「主任・係長クラス」「課長クラス」「部長クラス」

「経営者・役員クラス」より有意に低く,「主任・係長クラス」は「経営者・役員クラス」より

有意に低い結果になった。第Ⅱ因子「仕事における関係性」においては,「契約社員」と「一般

社員」が「経営者・役員クラス」よりも有意に低い結果になった。第Ⅲ因子「仕事での自己効

力感」においては,「契約社員」は「課長クラス」「部長クラス」「経営者・役員クラス」より有

意に低く,「一般社員」は「主任・係長クラス」「課長クラス」「部長クラス」「経営者・役員ク

ラス」より有意に低く,「主任・係長クラス」は「部長クラス」「経営者・役員クラス」より有

意に低い結果になった。

第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」では,職位があがるほど当事者意識も上がる結果にな

った。職位の上昇に比例して会社を管理・経営する立場になるので,仕事に対して当事者意識

を持つようになるのは当然の結果であると言えるだろう。「経営者・役員クラス」における「仕

事に対する当事者意識」得点の標準偏差は.47 と低く,ほとんどの「経営者・役員クラス」が当

事者意識に関する項目に高い点数をつけていることが分かる。一方,「契約社員」と「一般社員」

は両者とも他の職位に比べて「仕事に対する当事者意識」の平均値が低い。「一般社員」におい

ては,「契約社員」を除く全ての職位に比べて有意に低い結果となった。「契約社員」「一般社員」

は仕事に対して当事者意識を持つというよりも,まずは与えられた仕事をいかに行うかを問わ

れている時期のため,このような結果になったと考えられる。

第Ⅱ因子「仕事における関係性」では,「契約社員」「一般社員」は「経営者・役員クラス」

と比べて有意に低く,その他の職位に関しては平均値が 3.9 付近で比較的安定している。「契約

社員」の「仕事における関係性」の標準偏差は.94 と他の職種に比べて比較的大きい。サンプル

数は 23 人と少ないが,今回の調査では,「契約社員」の「仕事における関係性」は個人差が大

きく,「契約社員」全体としては低い傾向にあることがわかった。第Ⅱ因子「仕事における関係

性」の職位における分散分析の F値は 3.08 と p<.001 で有意な結果が得られたが,第Ⅰ因子「仕

事に対する当事者意識」の F値 7.32,第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」の F値 23.9 に比べると

低い値になっている。「仕事に対する当事者意識」や「仕事での自己効力感」に比べると,「職

位」による「仕事における関係性」の効果は比較的小さいと言えるだろう。

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第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」でも,職位が上がるにつれて自己効力感が上昇する結果に

なった。とりわけ「経営者・役員クラス」では,平均値が 4.21 と高く,また標準偏差が.32 と

低く,ほとんどの「経営者・役員クラス」が仕事で自己効力感を高く感じていると答えている

ことが分かった。「一般社員」に関しては,「契約社員」を除く全ての職位より有意に低く,「契

約社員」に関しては「一般社員」「主任・係長クラス」を除く全ての職位より有意に低い。「契

約社員」や「一般社員」は指導する部下や後輩も少なく,職場で自己効力感を感じにくいこと

がこの結果からも考えられるだろう。また「主任・係長クラス」も「部長クラス」「経営者・役

員クラス」より有意に「仕事での自己効力感」が低い結果になった。「主任・係長クラス」では

「仕事での自己効力感」は比較的あまり感じられず,「仕事での自己効力感」を感じ始めるのは

「課長クラス」からであることが,この結果から示唆された。

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考察

第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」と第Ⅱ因子「仕事における関係性」では「勤続年数」「職

位」で,第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」では「性別」「年齢」「勤続年数」「職位」で,それぞ

れ有意な差が認められた。また,「転職回数」「職種」においては,すべての因子で有意な差が

認められなかった。

第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」では,「職位」があがるほど「仕事に対する当事者意識」

を持ちやすいという結果になったが,「性別」「年齢」「勤続年数」「転職回数」「職種」の違いに

よっては「仕事に対する当事者意識」を持てるかどうかに,統計的に有意な差は生じないとい

う結果になった。リクルートワークス研究所(2011)は,産業構造の変化に伴い,専門職の割合

が増え,管理職は減少傾向にあり,特に男性の管理職は女性よりも大きく減少することが見込

まれると報告している。また萩原(2011)も,従来のだれもが管理職になれる昇進システムは崩

壊し,「管理職ポストはもはやキャリア展望に大きな影響を与えていないこと,『価値を発揮し

たい』『社会のために次の世代のために』という仕事観や,キャリアに対して主体的であること

のほうが,キャリア展望につながっていることが示された」と報告している通り,管理職にな

れる割合が限られる現代においては,「昇進すること」,つまり外的キャリアの充実の追求を仕

事における第一の価値に置くことは機能しづらくなってきている。本調査では,「職位」が高く

なるほど「仕事に対する当事者意識」を持ちやすいという結果になったが,管理職のポストが

限られる時代においては,「職位」を高めることで「仕事に対する当事者意識」を担保する仕組

みは機能しなくなっていくだろう。「職位」以外の個別属性では,「仕事に対する当事者意識」

の有意な差が認められなかったことから,当事者意識を持って仕事に取り組めるかどうかは属

性による差ではなく,個人の差によるところが大きいことが示唆されている。今後の研究の展

開として,属性にはよらない「仕事に対する当事者意識」を持てるようになるプロセスを解明

していくことが望まれる。

第Ⅱ因子「仕事における関係性」では,「職位」「勤続年数」によって有意な結果が得られた。

ただし,「勤続年数」では多重比較を行ったところ有意な差のある群の組み合わせを得ることが

できず,「勤続年数」の違いによる「仕事における関係性」の差はそこまで大きくは無かった。

また,「職位」での「仕事における関係性」の分散分析の F 値は 3.08 と他の因子に比べると低

く,「職位」による「仕事における関係性」の差も比較的小さいことがわかった。「職位」「勤続

年数」以外のすべての個別属性においては統計的に有意な差が得られなかったことから,「仕事

における関係性」は属性による差はあまり認められず,個人差によるところが大きいことが示

唆された。

第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」では,「性別」においては男性の方が有意に高く,「年齢」「勤

続年数」「職位」では,属性の位があがるほど,「仕事での自己効力感」も高くなる傾向が示さ

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れた。ただし,「性別」においては,「職位」や「職種」による交絡因子による影響が考えられ

るため,女性であることが直接的に「仕事での自己効力感」を持ちにくくしている要因になっ

ていると考えることは安直だろう。「年齢」「勤続年数」「職位」によって「仕事での自己効力感」

に対し有意な差が得られたのは,これらの属性階級があがると,後輩や部下を持ち指導をする

機会が増えることや,仕事に慣れ自身の自己効力を感じる機会が多くなることが要因であると

考えられる。

第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」で有意な差が見られた属性である「年齢」「勤続年数」は,

第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」では差が見られなかった。これは,「年齢」や「勤続年数」

を重ねることによって,自身の効力を感じられるようになっても,「仕事に対する当事者意識」

を持てるようになることに必ずしも結びつかないことを示唆している。つまり,能力や裁量が

なくても,個人のマインドセットなど様々な要因によって「仕事に対する当事者意識」を持つ

ことは可能であるし,逆に言えば,能力や裁量がどんなにあっても「仕事に対する当事者意識」

を持てないことは起こりうると言える。ただし,第Ⅰ因子と第Ⅲ因子の因子間相関は.68 とある

程度の高さを示しているため,「仕事に対する当事者意識」と「仕事での自己効力感」に関係が

ないとは言えない。今後は「当事者意識を持つようになったから,能力や裁量の獲得を目指し

たのか」「能力や裁量があるから,当事者意識を持つようになったのか」などの因果関係を研究

していく必要があるだろう。

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5.ソーシャルサポートと「仕事における居場所感」の関係の検討

目的

職業能力開発促進法の改正に伴い,キャリア・コンサルタントの導入の義務化が決定される

など,個人のキャリア開発を支援する相談員の必要性が叫ばれている。そこで,相談員をはじ

めとする周囲からのソーシャルサポートが「仕事における居場所感」に影響を与えるかどうか

を検討することは,今後の「仕事における居場所」構築支援の施策を考える一助になると考え

る。また,本研究の「仕事における居場所感」はあくまで仕事に限ったものであり,「家族」や

「仕事以外の友人」といった社外の存在の「仕事における居場所」への影響は含まれていない。

しかしながら,ワークライフバランスといった言葉が昨今注目を集めている通り,仕事のみが

個人を形成する訳ではない。よって「家族」や「仕事以外の友人」といった社外の存在が「仕

事における居場所感」へ影響をもたらすのか検討をする必要はあるだろう。

そこで本章では社内,社外におけるソーシャルサポートの有無は,「仕事における居場所感」

尺度の下位尺度に対して,統計的に有意な差は生じるのか明らかにすることを目的とする。

方法

第 2 章で用いた質問紙では,社内のソーシャルサポートを測るために金井(1993)の「ソーシ

ャルサポート」を参考に,「自分のことをよく理解し,相談に乗ったり,アドバイスや励ましを

与えてくれる人が『社内』にどのくらいいますか。あてはまる選択肢すべてに○をつけてくだ

さい。」という項目を設置し,「直属の部下・後輩」「直属の上司・先輩」「同僚」「他部署の部下・

後輩」「他部署の上司・先輩」「社内の相談員(メンターやキャリアカウンセラーなど)」の 6 つ

の選択肢を用意した。「直属の部下・後輩」「直属の上司・先輩」は職場内のソーシャルサポー

トの有無を測り,「他部署の部下・後輩」「他部署の上司・先輩」は同じ会社ではあるが職場が

異なる場合のソーシャルサポートの有無を測定している。回答者の答えやすさに配慮し,スケ

ールでソーシャルサポートを測るのを避け,それぞれのソーシャルサポートにおける有無のみ

を回答してもらう形をとった。選択肢に○をつけたら 1,つけなかったら 0とし,6 つのダミー

変数からなる「社内ソーシャルサポート」を作成した。

また,「社内ソーシャルサポート」と同様に,社外のソーシャルサポートを測るために,「自

分のことをよく理解し,相談に乗ったり,アドバイスや励ましを与えてくれる人が『社外』に

どのくらいいますか。あてはまる選択肢すべてに○をつけてください。」という項目を設置し,

「元部下・後輩」「元上司・先輩」「元同僚」「顧客」「取引先の社員」「家族」「仕事以外の友人」

「社内の相談員(心理士やキャリアカウンセラーなど)」の 8 つの選択肢を用意した。選択肢に

○をつけたら 1,つけなかったら 0とし,8 つのダミー変数からなる「社外ソーシャルサポート」

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を作成した。

「社内ソーシャルサポート」「社外ソーシャルサポート」についてそれぞれウォード法による

クラスタ分析を行い,ソーシャルサポートにおいてどのようなパターンがあるかグループ毎の

傾向をみることで分析する。また,クラスタリングされたグループごとに「仕事における居場

所感」尺度の下位尺度の差異を分散分析によって分析し,ソーシャルサポートの違いによって,

「仕事における居場所感」に差異が生じるのかを検討する。また,分散分析によって,有意な

差が見られたグループにおいては,Tukey の多重比較(両側検定,有意水準 p < .05)を行った。

分析においては,すべてフリーソフト Rを用いた。

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結果

「社内ソーシャルサポート」「社外ソーシャルサポート」のクラスタリング

ウォード法によるクラスタ分析から得られたデンドログラムを図 4 に示した。デンドログラ

ムの結果と,それぞれのグループの N 数が 30 人以上になるようにグルーピングした結果,「社

内ソーシャルサポート」では高さ 5.4 でグルーピングするのが適切であると判断し 8 つのグル

ープを得た。また,「社外ソーシャルサポート」では高さ 6.0 でグルーピングするのが適切であ

ると判断し,6つのグループを得た。

図 4ソーシャルサポート ウォード法によるクラスタ分析結果

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「社内ソーシャルサポート」グルーピング

「社内ソーシャルサポート」をクラスタリングした結果,8 つのグループを得た。「直属の部

下・後輩」「直属の上司・先輩」「同僚」「他部署の部下・後輩」「他部署の上司・先輩」「社内の

相談員」の選択肢に対して○をつけた割合をグループ毎に記載し,パーセンテージ毎にグラデ

ーションを施したのが表 13 である。パーセンテージが低いほど白く,高いほど黒いグラデーシ

ョンになっている。全体では「直属の部下・後輩」が 30.5%,「直属の上司・先輩」が 64%,「同

僚」が 61%,「他部署の部下・後輩」が 18.7%,「他部署の上司・先輩」が 39.3%,「社内の相談員」

が 0.6%の選択率となった。

1 番目のグループは 32 名から成り,「他部署の上司・先輩」の選択率が 100%と高く,その他

の選択肢への選択率が低いことから「①職場外上司高群」と名付けた。2 番目のグループは 46

名から成り,すべての選択肢に対して高い選択率を見せているが,全体と比べて特に「他部署

の部下・後輩」が選択率 100%で高いことから「②職場外部下・後輩高群」と名付けた。3 番目

のグループは 48 名から成り,「直属の上司・先輩」「同僚」の選択率が 100%と高く,その他の選

択肢への選択率が低いことから「③職場内上司・同僚高群」と名付けた。4 番目のグループは

30 名から成り,「直属の部下・後輩」「直属の上司・先輩」「同僚」の職場内に関する選択率が

100%と高く,その他の選択肢への選択率が低いことから「④職場内サポート高群」と名付けた。

5番目のグループは 58 名から成り,「同僚」の選択率が 62.1%であるが,それ以外の選択肢の解

答率は低く,「同僚」の選択率も全体とほぼ同程度であることから,「⑤社内ソーシャルサポー

ト低群」と名付けた。6 番目グループは 33 名から成り,「直属の部下・後輩」の選択率が 100%

と高く,その他の選択肢への選択率が低いことから「⑥職場内部下高群」と名付けた。7番目の

グループは 44 名から成り,「直属の上司・先輩」と「他部署の上司・先輩」の選択率がそれぞ

れ 97.7%と 100%で高く,社内の上司・先輩に関する選択肢に高い選択率を示し,その他の選択

肢は全体と比べて低い選択率を示していることから「⑦社内上司高群」と名付けた。8番目のグ

ループは 40 名から成り,「直属の上司・先輩」の選択率が 100%と高く,その他の選択肢への選

択率が低いことから「⑧職場内上司高群」と名付けた。

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「社外ソーシャルサポート」グルーピング

「社外ソーシャルサポート」をクラスタリングした結果,6 つのグループを得た。「社内ソー

シャルサポート」と同様に,「元上司・先輩」「元部下・後輩」「元同僚」「顧客」「取引先の社員」

「家族」「仕事以外の友人」「社外の相談員」の選択肢に対して○をつけた割合をグループ毎に

記載し,パーセンテージ毎にグラデーションを施したのが表 14 である。パーセンテージが低い

ほど白く,高いほど黒いグラデーションになっている。全体では,「元上司・先輩」が 26.9%,

「元部下・後輩」が 11.5%,「元同僚」が 24.2%,「顧客」が 16%,「取引先の社員」が 15.4%,「家

族」が 59.5%,「仕事以外の友人」が 67.7%,「社外の相談員」が 0.6%の選択率となった。

1 番目のグループは 61 名から成り,「家族」と「仕事以外の友人」の選択率が 100%と高く,

その他の選択肢への選択率が 0%であることから,「①家族・友人高群」と名付けた。2番目のグ

ループは 36 名から成り,「元上司・先輩」の選択率が 100%と高く,その他の選択肢が全体と比

べて同程度か低いパーセンテージを示しているので,「②元上司・先輩高群」と名付けた。3 番

目のグループは 57 名から成り,「顧客」と「取引先の社員」が全体と比べて大きく高く,その

他の選択肢は全体と同程度のパーセンテージを示していることから,「③顧客・取引先高群」と

名付けた。4 番目のグループは 46 名から成り,「仕事以外の友人」の選択率が 100%と高く,そ

の他の選択肢への選択率が 0%であることから,「④仕事以外の友人高群」と名付けた。5番目の

グループは 66 名から成り,「元同僚」が 93.9%の高い選択率を示し,「元上司・先輩」「元部下・

後輩」も全体と比べると高いパーセンテージを示していることから,「⑤元社内高群」と名付け

た。6番目のグループは 65 名から成り,「家族」に関しては全体と同程度の選択率があるものの,

その他の選択肢の選択率が低いことから,「⑥社外ソーシャルサポート低群」と名付けた。

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「社内ソーシャルサポート」グループ毎の下位尺度の差異の検討

「社内ソーシャルサポート」のグループを要因とする分散分析を「仕事における居場所尺度」

の下位尺度毎に行った結果,全ての因子において有意な結果が得られた(表 15)。多重比較の結

果,第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」では,「職場外部下・後輩高群」が「職場外上司高群」

「職場内上司・同僚高群」「社内ソーシャルサポート低群」「職場内上司高群」より有意に高く,

「職場内部下高群」が「職場外上司高群」「社内ソーシャルサポート低群」より有意に高く,「職

場内サポート高群」「社内上司高群」が「社内サポート低群」より有意に高い結果になった。第

Ⅱ因子「仕事における関係性」では,「職場外部下・後輩高群」が「職場外上司高群」「職場内

上司高群」「社内ソーシャルサポート低群」「職場内上司高群」より有意に高く,「職場内サポー

ト高群」「職場内部下高群」「社内上司高群」が「職場外上司高群」「社内ソーシャルサポート低

群」「職場内上司高群」より有意に高く,「職場内上司・同僚高群」が「社内ソーシャルサポー

ト低群」より有意に高い結果になった。第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」では,「職場外部下・

後輩高群」が「職場外上司高群」「職場内上司高群」「社内ソーシャルサポート低群」「社内上司

高群」「職場内上司高群」より有意に高く,「職場内部下高群」が「職場外上司高群」「職場内上

司高群」「社内ソーシャルサポート低群」「職場内上司高群」より有意に高く,「職場内サポート

高群」が「職場内上司・同僚高群」「社内ソーシャルサポート低群」より有意に高い結果になっ

た。

今回の調査では,部下や後輩に相談をできる相手がいると「仕事における居場所感」尺度の

下位尺度の得点は,高くなる傾向にあることが示された。また,その中でも部署を超えた部下・

後輩に相談相手がいることを指す「職場外後輩・部下高群」がどの因子でも一番高い数値を示

した。逆に,「社内ソーシャルサポート低群」はどの因子においても一番低い数値を示し,社内

におけるソーシャルサポートが低いほど,「仕事における居場所感」を感じにくいことが示唆さ

れた。

また,「職場外上司高群」と「職場内上司高群」はどの因子でも比較的低い値を示しているが,

「社内上司高群」は「仕事に対する当事者意識」と「仕事における関係性」で高い値を示して

いる。これは,職場か職場外かどちらか片方のみにしか相談できる上司・先輩がいないと「仕

事における居場所感」を感じにくい傾向にあるが,両方に相談できる上司・先輩がいると「仕

事における居場所感」を感じやすく,特に「仕事に対する当事者意識」と「仕事における関係

性」が高くなることが示唆された。第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」と第Ⅲ因子「仕事で

の自己効力感」の因子間相関は.68 と高いが,「社内上司高群」では「仕事に対する当事者意識」

が高く,「仕事での自己効力感」が低く相関を見せなかった。これは,職位や年齢,勤続年数が

低く,「仕事での自己効力感」を感じづらくても,多様で複数の上司と相談できるほどの信頼関

係を築くことで「仕事に対する当事者意識」を持ちやすくなると言えるだろう。

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「社外ソーシャルサポート」グループ毎の下位尺度の差異の検討

「社外ソーシャルサポート」のグループを要因とする分散分析を「仕事における居場所尺度」

の下位尺度毎に行った結果,全ての因子において有意な結果が得られた(表 16)。多重比較の結

果,第Ⅰ因子「仕事に対する当事者意識」では,「顧客・取引先高群」が「家族・友人高群」「仕

事以外の友人高群」「社外ソーシャルサポート低群」より有意に高い結果になった。第Ⅱ因子「仕

事における関係性」では「顧客・取引先高群」が「家族・友人高群」「仕事以外の友人高群」「社

外ソーシャルサポート低群」より有意に高く,「元上司・先輩高群」が「社内ソーシャルサポー

ト低群」より有意に高い結果になった。第Ⅲ因子「仕事での自己効力感」では,「顧客・取引先

高群」が「家族・友人高群」「仕事以外の友人高群」「社外ソーシャルサポート低群」より有意

に高い結果になった。

今回の調査では,すべての因子に関して「顧客・取引先高群」が高い値を示した。また,「家

族・友人高群」「仕事以外の友人高群」「社外ソーシャルサポート低群」はすべての因子に対し

て低い値を示した。これは,家族や仕事以外の友人に相談相手がいても,「仕事における居場所

感」を感じやすくなる訳ではないが,仕事に関する社外の関係に相談相手がいると「仕事にお

ける居場所感」を感じやすくなることを示唆している。また,統計的に有意な差はでなかった

ものの,元仕事仲間に相談相手がいるグループに比べても「顧客・取引先高群」の「仕事にお

ける居場所感」の方が高い値を示した。これは,過去の仕事よりも,現在の仕事に対して理解

のある相談相手を持つことが「仕事に対する居場所感」を感じやすく要因になっている可能性

があると言えるだろう。

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考察

本調査では,「社内ソーシャルサポート」においては,部下・後輩に相談相手がいると,また

複数で多様な上司に相談相手がいると「仕事における居場所感」を感じやすく,「社外ソーシャ

ルサポート」においては,仕事に関する社外の関係に相談相手がいると「仕事における居場所

感」を感じやすいという結果になった。また,社内・社外に関わらずソーシャルサポートが低

いと「仕事における居場所感」が低い結果になった。

「社内ソーシャルサポート」では,部下・後輩に相談相手がいるほど「仕事において居場所

感」を感じやすいという結果になった。立場的には上である上司や先輩が,社内の部下・後輩

に相談したり,アドバイスを求めたりするのは,立場やプライドが邪魔をし,難しい面もある

と考えられが,そういった立場やプライドを超えて相談相手を持ったり,信頼関係を築くこと

ができるほど「仕事における居場所感」を感じる傾向にあることが今回示唆された。また,職

場内や職場外,複数の上司を相談相手に持つグループは比較的高い「仕事に対する当事者意識」

を示しており,「仕事での自己効力感」を感じづらい年齢,勤続年数,職位が低い労働者が「仕

事に対する当事者意識」を持つためのヒントとなる結果になった。様々な上司に接する機会を

持つことのできるジョブローテーションの仕組みは「仕事に対する当事者意識」を持つという

視点でも効果的であることが示唆されたと考えられる。

「社外ソーシャルサポート」においては,自身の仕事に関してある程度理解のある「顧客」

や「取引先の社員」といった社外の相談相手を持つことによって「仕事における居場所感」を

感じやすくなることが示唆された。「家族」や「仕事以外の友人」は,自身の仕事に関する理解

は乏しく,「仕事における」居場所を持つには良い影響を必ずしも与えるとはいえないだろう。

以上より,自身の仕事に理解を持っている複数かつ様々な立場の相談相手を持つことは,「仕

事における居場所感」を感じる傾向にあることが言える。社内の相談相手を持つことは「仕事

における関係性」を直接的にあげる要因になると思うが,職場や会社を超えたさまざまな立場

の相談相手を持つことは,自身の仕事に関しての新しい見方や気づきを与え,特に「仕事に対

する当事者意識」に正の影響を及ぼし,「仕事における居場所感」を感じやすくなると考えられ

る。また,社内・社外問わずソーシャルサポートが全体的に低いグループは,「仕事における居

場所感」の下位尺度得点はもっとも低く,相談相手を持つことは「仕事における居場所感」を

持つ上で有効であると言えるだろう。

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6.総括と今後の課題

本研究では,「仕事における居場所」概念を明らかにし,「仕事における居場所感」を測るこ

とのできる尺度の開発を目指した。また,属性毎に「仕事における居場所感」に差があるのか

を検討し,「仕事における居場所」概念の構築を目指した。

そもそも産業分野においては,「居場所」に関して実証的に研究した論文が見当たらず,「仕

事における居場所」の構成概念の仮説を先行文献から構築することが困難であった。そこで本

研究では,まず「仕事における居場所」の構成要素を明らかにするために,労働者 56 名に,「仕

事における居場所」に関する質問に自由記述形式で回答してもらい「仕事における居場所」を

構成する要素の洗い出しを目指した。その自由記述の回答を,KJ 法を行うことによって概念化

し,人事・キャリアの専門家と尺度項目の精査を行い,「仕事における居場所感」尺度の候補に

なりうる項目を 34 個作成した。労働者 331 名を対象にした量的調査を踏まえて,因子分析によ

る項目の選定,妥当性と信頼性の検討を経て今回の「仕事における居場所感」尺度の作成まで

にいたった。下位尺度として「仕事に対する当事者意識」「仕事における関係性」「仕事での自

己効力感」の 3 つの因子が得られたが,これは先行研究の「居場所」という概念は「自分の存

在を感じられるところ」に集約できるという考えを踏襲していると言えるだろう。

また,「あなたは仕事において居場所を感じているか」といった直接仕事においての居場所感

を尋ねる項目を 4 項目用意し,その平均点を「仕事における居場所」得点とした。その得点を

結果変数に,従属変数に「仕事における居場所」尺度の下位尺度 3 つの得点を用いて,重回帰

分析を行ったところ,「仕事に対する当事者意識」が他因子よりも「仕事における居場所」での

強い要素であることが示唆された。ただし従属変数,結果変数に両方とも「仕事における居場

所感」を表す得点を使用することは,トートロジーになってしまい方法論的に適切がどうかは

議論の余地が残る。

本研究は,「仕事における居場所感」を実証的に研究する初の試みであるため,「仕事におけ

る居場所感」の全体像を把握することを最優先にし,職種や職位などを特別絞らないで対象者

を選定した。ただし,フェイスシートに「性別」「年齢」「勤続年数」「転職回数」「職種」「職位」

を尋ねることによって,属性の違いにおける「仕事における居場所感」に差異が生じるのかを

検討することとした。すると「勤続年数」「職種」の違いによっては,「仕事における居場所感」

尺度のどの下位尺度にも統計的に有意な差は生じていなかったが,「仕事に対する当事者意識」

と「仕事における関係性」では「職位」,「仕事での自己効力感」においては「性別」「年齢」「勤

続年数」「職位」によって差が見られた。この「仕事に対する当事者意識」は「職位」によって

しか統計的な差は生じていないという結果から,管理職になれる割合が限られる現代において

は,「仕事に対する当事者意識」を持てるかどうかは属性による差ではなく,個人の差によると

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ころが大きいと考えられる。

また,キャリア・コンサルタントの導入の義務化による,キャリアについての相談員の注目

の上昇や,現場で働く方々から「家族の支え」や「友人の支え」といった社外のソーシャルサ

ポートによって「仕事における居場所感」に差異が生じるのか興味があるといった声があがっ

たことを踏まえ,「社内ソーシャルサポート」「社外ソーシャルサポート」によって「仕事にお

ける居場所感」に差が生じるのか検討した。その結果,社外や社内を問わずソーサルサポート

サポートが低いと「仕事における居場所感」も低く,ソーシャルサポートの存在が仕事での「居

場所」に良い影響を及ぼすことが示された。特に,自身の仕事に理解を持っている複数かつ様々

な立場の相談相手を持つことは,「仕事における居場所感」を高める傾向にあることが示唆され

た。今回の調査では,キャリア・コンサルタントやメンターをはじめとした「社内の相談員」

にソーシャルサポートを感じている割合が全体で 0.6%にとどまったが,この数字はキャリア・

コンサルタントという制度自体が社内に無いことや,認知されていないことが原因であると考

えられる。本研究の結果から,仕事に理解のある様々な立場に相談相手を持つことは「仕事に

おける居場所感」を感じる上で有効であることが示唆されたので,労働者一人ひとりの居場所

構築に向けて,社内でキャリア・コンサルタントなどの相談員の養成や,ジョブローテーショ

ンを行い様々な立場の社内の方と接する機会を増やすことは有効であると考える。

今後の課題としては,「仕事における居場所感」尺度の概念構築のきめ細かさの改善であろう。

現場で使用してもらえる尺度を開発するためには,妥当性,信頼性をより示していかなければ

ならないし,対象者のサンプリングもきめ細やかに行う必要がある。ただし本研究は,「仕事に

おける居場所」を捉える一つの枠組みを提示した点では,今後の産業分野の「居場所」の研究

に対して大きな役割を果たしたと考える。今後は今回明らかになったデータをヒントに,イン

タビューによって「仕事における居場所」を持てるようになるプロセスを解明したい。

また,現場からマイナスなイメージの言葉を使った質問紙は回答に抵抗感があり,質問項目

においてはポジティブな表現を使うよう要請があった。そのため,ネガティブな表現の項目は,

逆転させた内容を用いた。しかしながら,「居場所がない状態」と「居場所がある状態」は必ず

しも対になっているとは限ら無い。支援を必要とする人は「居場所がない」状態であり,「居場

所がある」状態を測るよりも「居場所がない状態」を測る尺度の方が,支援の有効性があるか

もしれ無い。

様々な課題や限界が残るが,労働者の仕事における居場所構築支援のヒントに,また産業分

野の「居場所」に関する萌芽的研究に,本研究がなることを期待する。

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7.謝辞

本研究を進めるにあたって,企業の方々に大変お世話になりました。当初は学部生の私には

働く方々を対象にした研究は難しいと考えておりました。しかしながら,皆様が親身にご協力

くださり,またネットワークをご紹介くださったことによって,研究を進めることができまし

た。そして、研究を通してさまざまな経験をさせていただきました。失礼も大変多かったと思

いますが,ここで感謝の気持ちを述べさせていただきます。

そして,格別のご指導をいただきました秋山美紀先生・内山映子先生・武林亨先生,大変お

世話になりました。特に秋山美紀先生には,大学 4 年からの研究会の受け入れ,大学院進学・

ORF への推薦など,私のワガママにもかかわらず,研究をする機会と場を与え続けてくださり大

変感謝致しております。

また,渡辺利夫先生には学部 3 年生のころから,統計手法に関して手厚くご指導いただきま

した。研究会を途中でやめてしまった私に対しても,質問に行けば親身にご相談にのってくだ

さり,また毎回面白いお話も聞かせていただきました。

最後に花田光世先生に感謝を申し上げます。研究会に正式に所属したことはありませんが,

学部 1 年生で研究会の聴講を申し出た以来,今日まで大変お世話になっております。先生の生

きざまから,研究以上に多くのことを学ばせていただいております。

本当に多くの方のご協力があり本研究を進めることができました。感謝したい方をあげると

キリがないのですが,皆様との関わり合いが,私の価値観や哲学を形創ってきたと今ここで感

じております。みなさまへの,心よりの感謝をここに申し上げます。

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参考文献

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厚生労働省労働基準局(2015) 平成 26 年度「過労死等の労災補償状況」

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大学院博士論文

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萩原牧子(2011)管理職ポ スト減少社会の前向きなキャリア ��� -キャリア満足・展望の影響要因の

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リクルートワークス研究所(2011) 成熟期のパラダイムシフト 2020年の「働く」を展望するWorks

Report 2011,23

金井篤子(1993) 働く女性のキャリア・ストレスに関する研究 社会心理学研究,1993,8,21-32

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付録資料 第 2 章質問紙

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Printed in Japan  印刷・製本  ワキプリントピア

著者 氏家慶介

監修 秋山美紀

発行 慶應義塾大学 湘南藤沢学会   〒252-0816 神奈川県藤沢市遠藤5322

   TEL:0466-49-3437

2016年 3 月31日   初版発行

SFC-SWP 2015-008

仕事における居場所概念の構築と尺度の作成

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本論文は研究会において優秀と認められ、出版されたものです。