医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013...

7
リウマチ医療連携の向上に向けて ラポール 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードするチーム医療 川崎医科大学附属病院(岡山県) 特 集

Transcript of 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013...

Page 1: 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る

リウマチ医療連携の向上に向けて ラポール

医師と多職種の信頼関係を基盤に看護師がリードするチーム医療川崎医科大学附属病院(岡山県)

特 集

Page 2: 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る

2 RApport | January | 2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞ったり感情の交流を行える関係が成立している状態を表す臨床心理学用語でもあります。=ラポール

(Rapport)

医師と多職種の信頼関係を基盤に看護師がリードするチーム医療川崎医科大学附属病院(岡山県)

関節リウマチ(以下、RA)診療に携わるスタッフには、生物学的製剤の登場とその種類の広がりによって、患者へのより高度な説明力が求められるようになっている。それを実現するためには多職種が効果的・効率的に職務を分担し、チームとして患者に接する体制が不可欠だ。川崎医科大学附属病院では、臓器・機能別センター制を導入することで

リウマチ・膠原病科と皮膚科や整形外科との一体的な診療を可能にしている。多科・多職種の院内連携の核となっているのは看護師だ。

院内連携をスムーズにする 臓器・機能別センター制外来

川崎医科大学は1970年6月、岡山県倉敷市に開学し、1973年に附属病院を開院した。病院運営方針の大きな特徴は、臨床重視のスタンスにある。同院で提供される医療は、一般的な大学病院の医療とはまったく異なると、同大学リウマチ・膠原病学教授であり、同院リウマチ・膠原病科部長の守田吉孝先生は語る。

「患者さんのためを第一に考え、救急や地域医療に注力すると同時に、臨床医を育てることを重視しています」(守田先生)。そうした病院方針は、診療体制にも反映されている。同院では、2010年に臓器・機能別センター制に完全移行した(図1)。リウマチ・膠原病科は「皮膚・運動器センター」に位置づけられている。そして、同センター内には整形外科と皮膚科もある。RAと密接に関連するこの2つの科

を同じセンター内に配置したことは患者メリットを優先したからであることは明白だ。また、センター化のメリットは、多職種、特に看護師が科別の縦割りで職務を分断することなく、横断的に機能する点にもある。リウマチ・膠原病科と整形外科や皮膚科との連携が非常にスムーズに行われていることを守田先生は高く評価している。そして、その院内連携を支えている看護師の働きこそが、同院の最大の特徴だという。「皮膚・運動器センターには8人の看護師が在籍していますが、各科の外来に配置されているわけではありません。外来の診療は医師だけでも十分担うことができます。看護師は診察室の外で、彼女たちにしかできない仕事をしています」(守田先生)。例えば、患者に対する生物学的製剤の説明は、基本的にすべて看護師が担う。その説明に際し、患者の家庭環境や経済状況などを把握した結果、別の生物学的製剤の使用を医師に提案することもあるという。

RA診療の実践に最も適した 臨床現場を築いた看護師の尽力

もう1つ、同院のRA診療の質を高めているのが、通院治療センターの存在だ(写真1)。抗がん剤を中心とした外来化学療法を提供して

特 集

川崎医科大学のセンター分類図1

院内横断的な連携により患者メリットの高い医療が実践しやすいとされる臓器・機能別センター制を導入。

皮膚・運動器センター

リウマチ・膠原病科/整形外科/皮膚科/形成外科・美容外科

腎尿路・血液・糖尿病センター

腎臓内科/泌尿器科/血液内科/糖尿病・代謝・内分泌内科

診療科

総合診療科/臨床腫瘍科/救急科/心療科/リハビリテーション科/麻酔・集中治療科/放射線科/健康診断センター

女性医療センター

産婦人科/乳腺甲状腺外科

感覚器センター

眼科/耳鼻咽喉科/歯科・口腔外科

脳神経センター

神経内科/脳卒中科/脳神経外科

消化器センター

食道・胃腸内科/肝・胆・膵内科/消化器外科

小児医療センター

小児科/新生児科/小児外科

循環器・呼吸器センター

循環器内科/呼吸器内科/心臓血管外科/呼吸器外科

Page 3: 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る

RApport | January | 2013 3

いる場であるが、近年、生物学的製剤を投与する患者が増加している。専任の医師と看護師が配置されているため、患者への説明もEBM(Evidence-Based Medicine)に基づき説得力がある。部門としては切り離されていながらも、安心して患者を預けることができるという。「私は岡山大学で長く勤務し、関連病院や診療所でもRA診療に携わってきましたが、なかでも当院は、RA診療の実践の理想に近い臨床現場になっていると感じます」(守田先生)。しかし、そのような環境は、最初から築かれていたわけではない。守田先生が同院に赴任した8年前は、現在のようにRA患者が多く集まってくるような素地はほとんどなかったという。生物学的製剤が登場し、普及するなかで、その活用に理想的な臨床現場の構築を推進し、院内連携の核となってきたのは、外来看護副師長の西村瑞穂さんだと守田先生は語る。「当院のリウマチ・膠原病科ではかなりの数の生物学的製剤を使用していますが、それを支えているのは看

護師たちであり、その先駆けとなり、現在もそのけん引役となっているのは紛れもなく西村さんです」(守田先生)。

看護師中心のチーム医療で 患者の納得を得られる説明を

RA患者の生物学的製剤の選択については、患者の納得が得られないために進んでいないという指摘もある。しかし、同院では説明した患者が生物学的製剤の選択に納得しないケースはほとんどないという。それが同院で生物学的製剤の使用症例が増え続けている理由でもある。「患者さんは不安なので、自分の選択に自信がもてません。大事なのは多方面からの言葉です。医師や看護師の説明に加え、他の患者さんの経験談を提供することで、不安が軽減します。正しい情報を提供しようとする姿勢が、患者さんに安心感を与えるのです」(守田先生)。どれほど適切と思われる医療でもリスクはある。何か問題が生じた時に重要なことは、そこに納得が伴っているかどうかだ。

このように、西村看護師をはじめとした看護師たちを絶対的に信頼しているだけに、薬剤の切り替えなどを提案された時には、その意見を尊重するように心がけているという。一方、西村看護師もまた、守田先生への信頼は厚く、感謝の気持ちも大きい。「私たちが出会った時期、タイミングがよかったことも確かです。生物学的製剤の登場により、リウマチ専門医は看護師の手を借りて医療を実践する必要に迫られた側面はあるでしょう。ただ、単なる必要だけでなく、守田先生は私たちを信頼してくれます。医師だけで医療をしようとするのではなく、看護師や薬剤師を巻き込んでくれます。診療の前面に看護師の存在を押し出し、患者さんに対しても看護師を信頼していると伝えてくださるので、患者さんとの話もスムーズに進みます」(西村看護師)。

医師と多職種の信頼関係を基盤に看護師がリードするチーム医療

守田 吉孝(もりた・よしたか) 先生

1991年岡山大学医学部卒業後、同大学医学部第3内科入局。1998年米国Michigan大学リウマチ科留学、2002年岡山大学医学部腎・免疫・内分泌代謝内科助手。2004年川崎医科大学へ移籍、同大学リウマチ・膠原病学講師を経て、2012年同大学リウマチ・膠原病学教授・同大学附属病院リウマチ・膠原病科部長に就任、現在に至る。日本リウマチ学会評議員、岡山膠原病研究会世話人、岡山リウマチ研究会世話人、OKAYAMAリウマチネットワーク世話人。

通院治療センター写真1

ベッド14床、リクライニングチェア6台。中庭に面したチェアは角度が調節でき、人気が高いという。専任スタッフが配置され、各科スタッフからの信頼も厚い。家族が付き添える個室も完備されている。

Page 4: 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る

4 RApport | January | 2013

特 集

それまでのRA診療は、治らない患者を診続けるというある種の「不毛さ」を抱かせるものでもあった。それだけに寛解を目指せる疾患となったことで、リウマチ専門医たちのスタンスがポジティブに変化した部分もあるのではないかと西村看護師は推測する。そして、看護師の意見をくみ取ろうとする医師の態度によって、看護師たちも「頑張ってみよう」とモチベーションを高めることができている。「実際に患者さんから病状がよくなったということを聞けば、自分たちの仕事のやりがいも感じられるようになります。生物学的製剤はそれを可能にしてくれます」(西村看護師)。

生物学的製剤の普及が 院内チーム医療の進展の契機に

同院におけるRA診療の院内連携・チーム医療の質を高めているファクターとして、通院治療センターの存在があることを、守田先生同様に西村看護師も認める。「外来化学療法などについては全面的に任せることができるだけに、各科の医師は自分たちの診療に専念することができ、それが当院のよさにつながっていると思います」(西村看護師)。このように各科のスタッフから全幅の信頼を寄せられている通院治療センターのスタッフも、同院におけるチーム医療の変化を実感している。同センター薬剤師の槇枝大貴先生は、その転機として、やはり生物学的製剤の登場が1つのトピックになったと振り返る。「RA患者さんが通院治療センターで治療を受けるようになり、その数は5年で3倍から4倍に増えました。もちろん、生物学的製剤の適応が増えたからです。それによって医師や看護師と密に連携をとることが不可欠となり、チームでの対応が基本となっていきました」(槇枝薬剤師)。

薬剤師にとってもチーム医療の進化は望ましい。通院治療センターにおいても、個別の細かい指導をすべて薬剤師が行うのではなく、投与管理を安全に行うために必要な情報を看護師と共有し、医療安全の確保と適正な治

療の提供を心がけているという。「看護師も作成に携わった、患者さんが自ら記入する“リウマチノート”を役立てています。このノートによって、医療スタッフが情報を共有して連携することが可能です。同時に、薬剤師が不十分な部分を看護師がフォローしてくれているとも感じています」(槇枝薬剤師)。

患者情報を電子カルテで共有 患者の満足を重視した問診

通院治療センターでは、希望する患者にはオリエンテーションを実施している。これを担当するのは、通院治療センターの看護師だ。同センターを担当する外来看護主任の笹本奈美さんは、オリエンテーション導入の背景を次のように振り返った。「4年ほど前ですが、がんで入院していた患者さんが退院後に初めて通院治療センターで外来化学療法を受ける時に、不安を訴えました。その後、このことについて研究してみると、治療環境が変わることによる精神的な不安が大きいことがわかり、オリエンテーションの導入を決めました」(笹本看護師)。通院治療センターの見学は、可能な範囲で入院中に行っている。RA患者の場合は、生物学的製剤導入の説明時に外来看護師がオリエンテーションの希望を聞く。希望した患者を同センターに案内し、同センターの看護師が通院治療の流れや設備について説明する。「現在、生物学的製剤を導入する外来RA患者さんのほとんどが、当センターのオリエンテーションを利用してくださっています」(笹本看護師)。

西村 瑞穂 (にしむら・みずほ)看護師

川崎医科大学附属病院 外来看護副師長日本リウマチ財団 登録リウマチケア看護師

川崎医科大学附属病院

Page 5: 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る

RApport | January | 2013 5

医師と多職種の信頼関係を基盤に看護師がリードするチーム医療

院内横断的な連携においては、情報共有の手法にも工夫がある。問診を行った外来看護師と通院治療センターの看護師が記録を共有できるように、電子カルテの機能を利用したフォーマットを作成した。こうした情報共有において、外来看護スタッフの問診内容の繊細さに驚かされることが多いと笹本看護師は語る。患者の日常生活や経済状況から、結婚や妊娠の意思などに踏み込まれている場合も珍しくないという。「妊娠を希望する女性の患者さんの場合なら、それを考慮した薬剤選択が重要となりますから、とても貴重な情報です」(笹本看護師)。例えば、皮下注射の患者であれば、医師からアダリムマブとエタネルセプトのどちらがよいかを患者さんと相談して決めてほしいと言われることもある。メトトレキサート併用の有無はもちろんのこと、家庭環境、患者や家族の気持ち、通院方法、経済的な問題なども考慮しなければならない。適切に判断するためには、看護師にとって重要な問診内容だ。「何よりも患者さんの満足度を重視したいと考えています」(西村看護師)。

条件としては適していても、痛みなどの理由から、皮下注射を希望しない患者もいる。押しつけることが望ましいはずはない。患者が納得して治療を受けるために必要な、最大限の配慮を常に心がけている。このような考え方に基づいているだけに、現在は、問診項目をあえてリスト化していないという。「リスト化すれば、それしか聞かなくなります。患者さんの状態や個別性に配慮して質問できる看護師を育てたいと考えています」(西村看護師)。

医師と多職種の対等な信頼関係 院内チーム医療の先駆け

こうした同院のRA診療におけるチーム医療は、院内各部門におけるチーム医療の先駆けとも位置づけられている。「RAの治療において、長期に薬を継続するためには、患者さんの治療に対する参加意識やモチベーションの維持が重要になります。その方法の1つとして、医療者同士が情報を共有し患者さんやご家族をサポートしたいと思っていることを、患者さんに伝えることが重要だと考えるよ

うになりました。各職種が協力し合っていることが伝わると患者さんも安心できるようです」(笹本看護師)。生物学的製剤の登場以降、このような信頼関係の醸成が進展し、それを基盤としてチーム医療が進化を続けているようだ。こうした信頼関係に基づくチーム医療を進展させたのは、医師が他の職種を対等に扱うようになったことが大きく作用していることを看護師や薬剤師たちは感じている。「外部で講演や情報交換などをして感じるのは、やはりヒエラルキー構造から離れられないことで、チーム医療が機能していない現場が多々あるということです」(西村看護師)。その一方で、一部の医師たちは、確実に意識を変化させていると指摘するのは、薬剤師の槇枝先生だ。「特に若手の先生方の間には、それぞれの専門職に仕事を任せる文化・意識が醸成されているのではないでしょうか。通院治療センターでは、薬剤師と看護師と医師の対等な関係をしっかりと築き上げてきました(図2)。患者さんに関する情報共有も同様です。医師が他職種を受け

笹本 奈美 (ささもと・なみ)看護師

川崎医科大学附属病院  外来看護主任日本看護協会 がん化学療法看護認定看護師

通院治療センターにおける組織体制図2

従来のヒエラルキー型体制から、マトリクス型体制へ移行することで、各職種の強みを生かしたチーム医療が実践できる。

ヒエラルキー型 マトリクス型

医師

メディカルスタッフ

患者A

医師

看護師

薬剤師

患者B 患者C

Page 6: 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る

6 RApport | January | 2013

入れるほど、チーム医療は進展するのでしょう。だからこそ、RAチームが、当院の先駆けとして機能していると感じます」(槇枝薬剤師)。

継続的な人材育成のために RAケアカンファレンスを開催

こうした同院のRA診療を進化させてきたのは、チーム医療の中心としてけん引役を務めてきた西村看護師とその役回りを認め、サポートしてきた守田先生だ。現状のシステム

が、この2人に強く依存していることは厳然たる事実でもある。それだけに、人が入れ替わっても院内連携やチーム医療が機能する体制が求められる。今秋、西村看護師はようやくその実現に向けた取り組みに踏み出した。RAのケアカンファレンス「木曜オリハルコン同好会」の開催だ。「ケアカンファレンスの構想はずっと温めていたのですが、中途半端に始めて、継続できなくなってしまえば、取り組みが途絶えてしまうと思い、長く続くものを築くために時間をかけて準備しました」(西村看護師)。命名にも思い入れがある。ずっと続けていく意思の固さを、名前で表現したいと考えていた。その際、尊敬するアーティストの「オリハルコン」という曲名が浮かんだ。幻の大陸アトランティスに存在したといわれる、伝説の金属のことである。開催日を印象づけるため、名前の頭を「木曜」とした。「形式としても研究会ではなく、サークル活動的に取り組みたかったので『同好会』としました」(笹本看護師)。「木曜オリハルコン同好会」は

11月8日に第1回を開催(写真2)。皮膚科の医師に講義を依頼したのは、皮膚科との連携を大事にしたかったからだ。第2回では、院内感染対策室の医師の講義が実施された。リウマチ科のスタッフが感染に関心をもっていることを示したかったという。

患者向けの情報発信として 冊子やホームページを利用

後進を育てることを大きな目標に院内でケアカンファレンスを開催した西村看護師だが、後に続く人材を内外に育てたいという思いは守田先生も強い。外部の人材も対象としたケアカンファレンスの開催を西村看護師に求める一方で、地域の薬剤師向けの講演を積極的に開催するほか、西村看護師にはより遠方の地域でも講演などを行うよう促している。「西村さんは自分がいなくても機能する体制作りに取り組み、看護教育、スタッフ教育を進めています。全国の病院にも個人に依存して優れた医療を実践している病院はあり、当院もまだそういう部分はあるかもしれませんが、後進たちを教育することにより、着実に変わってもいます。西村さんは、その重要性を強く認識しているのです」(守田先生)。リウマチ・膠原病科としてはチーム医療の推進における重要なテーマとして、「誰が診ても同じ質」であるためのスタッフ教育を挙げる。「若い医師の勤務年数に適したモチベーションを維持できるような教育、臨床を体系化して定着させたいですね」(守田先生)。なお、そうした情報発信は、医療

槇枝 大貴 (まきえだ・だいき)薬剤師

川崎医科大学附属病院 薬剤部(通院治療センター)日本病院薬剤師会 がん薬物療法認定薬剤師

特 集

「木曜オリハルコン同好会」の案内チラシと開催風景写真2

第1回「冬到来!! 皮膚筋炎を診る3つのポイント」には、看護師13名、医師10名が参加。

Page 7: 医師と多職種の信頼関係を基盤に 看護師がリードす … RApport |January|2013 端と端をつなぎ合わせるという意のフランス語で、相互を信頼し合い、安心して自由に振る

RApport | January | 2013 7

従事者向けだけでなく、患者向けにも行われている。RAの治療薬である生物学的製剤を使用する患者の声を紹介する冊子は、デザイン性にもこだわって作成した。「看護師はみなさんおしゃれだし、RA患者さんにも女性は多いのですから、患者さんが興味をもち、手に取り、さらに元気になってくれるような冊子を作りたいと考えました」(守田先生)。また、ホームページを、患者の声

などを発信し情報を共有できる、貴重なツールだと考えた。同大学では、各教室に1名の「研究補助員」を雇うことを認めている。守田先生はその採用にあたって、「ホームページを作る能力をもっている人」を求めた。そして、リウマチ・膠原病科のオリジナルホームページを立ち上げると情報発信を強化した(図3)。そのなかの1つが、「患者さんの声」(図4)である。

RA診療は偏在が大きいだけに、

情報を得る機会がない患者は何も知らない。だからこそ、適正な治療によって病状がよくなった人は、何の情報も持たない他の患者に伝えたい気持ちも強い。そこで、守田先生自ら、編集のサポートを約束し、患者さんに体験談を書いてもらっている。最初は呼びかけたが、次第に主体的に送られてくるようになり、現在は80人以上の「声」が掲載されている。

患者と向き合う医師と 将来を見据える医療スタッフ

このように守田先生は、患者との関係において、同ホームページ上などで交流する時間も重視している。「このようなやり方が継続できるのも、信頼できる仲間がいるからです。一緒にやっている医師、看護師、研究補助員のみなさんと同じ方向を向いているという実感があります」(守田先生)。さまざまな苦労をしてきたからこそ、そういう風に考えるようになれたとこれまでの経緯を振り返る。一方で、自院のRA診療におけるチーム医療の取り組みを他施設の参考にしてもらいたいとも願う。「看護師を単なる介助する立場のスタッフと決めつけることなく、看護師の本来の業務を全うしてもらうことで、診療や病院経営に大きなメリットをもたらすことも可能だということを理解してもらいたいですね」(守田先生)。特に医師の立場から、看護師とどのように接してきたかを広くメッセージとして発信していこうと守田先生は考えている。

川崎医科大学附属病院 リウマチ・膠原病科のホームページ

患者さんの声(抜粋)

図3

図4

医師と多職種の信頼関係を基盤に看護師がリードするチーム医療

患者への情報提供ツールとして活用するため、頻繁に内容を更新している。

(http://www.kawasaki-m.ac.jp/rheumatology/)

「患者さんのフェアな声を、患者さんから患者さんへのメッセージとして広く届けることで、何かに生かしてもらいたい」と守田先生は願っている。

病名:関節リウマチ治療薬:リウマトレックス 8 mg /週、プレドニゾロン 2 mg /日アクテムラ (4週に1回点滴)

2008年1月、突然、肩の痛みから始まった私のリウマチ。次第に肘、首、手

首、手足の指の腫れと痛み。いったい私の身体の中で何が起こっているの

か、不安で一杯でした。

2009年7月、アクテムラの点滴治療を始めました。

この痛みがなくなるのであれば、どんな治療でも受けたいという思いと、もし

効果がなかったら、という不安の中でした。

2010年9月現在、アクテムラの点滴は15回目となりました。あの時の痛みは

うそのように和らぎ、「貴方、いつも元気ね!」と周りの人に言われています。

仕事も一時は辞めようかと考えていましたが、先生方がホームページを開設

され、“決してひとりではありません”の言葉にも励まされ、今ではもう少し頑

張れるかなと思っています。� (※一部抜粋)