四 模倣品の国際流通にかかる実態調査

１．調査実施要領

（１）調査背景・目的

上述のとおり、税関での模倣品差し止め情報は、いわば「点」での情報であり、これを

差し止めた場合、当該模倣品の流出は防止できるものの、同模倣品を製造、輸出した業者

まではたどりつかないことが多く、結果的に、悪質な業者がこれを繰り返し、引き続き、

模倣品ベアリングの海外への流出が止まらないのが現状である。「点」での模倣品の差し止

め情報から、上流業者、及び、その輸出の特徴を的確に把握して、「線」の情報を把握、分

析することにより、初めて、効果的な模倣対策が取れるようになる。

そこで、実際の案件を通じて、模倣品ベアリングの差止情報から、どのように上流業者

等の情報につなげていくかをシュミレーションした上、権利者が有効な対策が取れる基盤

情報を提供できるようにすることを目指す。

（２）調査手順

具体的に、以下のステップを経て、調査を実施した。

①上海 IPG ベアリング WG メンバーより、以下の条件に該当する模倣品ベアリングの差止案

件に係る知的財産権侵害状況通知書、及び、入手している場合には、処罰決定書を収集

する。

・差止実施税関：上海税関、寧波税関、を中心とした中国各地の税関

※特に、上記両税関は、ベアリングの模倣品に関する差止件数が多い。

・対象製品：BB、 NRB、 TRB、 SRB、 CRB 等

・対象期間：2011 年 1 月 1 日～2012 年 7 月末日

②WG メンバーより提出されたデータを分析し、上流調査可能性がある輸出業者を絞り込み、

悪質と思われる３社を選定し、その実態、及び、その上流工場の実態について詳細調査

を実施する。

なお、本来的には、悪質と思われる輸出業者については、全て調査の対象とし、かかる

輸出業者に模倣品を提供する模倣品製造業者とあわせて、適切な対応をとるべきものであ

39 模倣品の国際流通にかかる実態調査

るが、本件においては、本委託事業の終期等との兼ね合いから、調査対象数を限定する必

要があったため、調査対象を限定することとした。したがって、本件で調査対象となるの

は、模倣品の輸出業者の実態の一部であり、引き続き、これらの全体像の実態を把握し、

類型化、分析した上、効果的な対応を検討する必要があると考えられる。

２．調査対象輸出業者の選定

（１）調査対象候補 10 業者の選定

＜基準＞

・差止めを受けた数量が比較的多い

・税関により複数回の差止めを受けた業者である

・輸出業者自ら模倣品を製造している可能性がある

・簡易調査（電話確認、インターネット等）の結果、輸出業者が、実態を有する可能性が

高いことが判明

・差止を受けた数量が比較的多い

輸出数量（点） 輸出業者名

210,000 宁波市慈●有限公司

150,000 宁波市●溪有限公司

97,280 福建华●有限公司

94,765 武汉市科●●责任公司

67,640 沈阳深●有限公司

35,000 邢台欧●●有限公司

30,100 南昌炜●●有限公司

28,275 慈溪维●●有限公司

20,960 厦门市诚●●有限公司

20,014 杭州坤●●有限公司

15,542 厦门昂●●公司

13,500 上海贝●●公司

模倣品の国際流通にかかる実態調査 40

・税関により複数回の差止めを受けた業者である

被差止回数 輸出業者名

3 回 湖南●●有限公司

3 回 深圳市●●●尔贸易有限公司

3 回 杭州●●物资有限公司

3 回 惠州市艾●●●贸易有限公司

2 回 嘉兴中博●●有限公司

2 回 济南旭●●轴承商贸有限公司

2 回 宁波市慈●●股份有限公司

2 回 厦门昂●●有限公司

2 回 厦门市诚●●口有限公司

2 回 天津盛●●国際貿易有限公司

2 回 上海●●业发展有限公司

2 回 青岛海●●国际贸易有限公司

2 回 无锡新●●国际贸易有限公司

2 回 天津腾●●国际贸易有限公司

・輸出業者自ら模倣品を製造している可能性がある

模倣品製造の可

能性 輸出業者名

有 済南莱●●軸承進出口有限公司

有 杭州坤●●传动机械有限公司

有 苏州艾●●轴承有限公司

有 慈溪维●●配件有限公司

41 模倣品の国際流通にかかる実態調査

有 石家庄市●●达机械有限公司

有 ●●纳上机械有限公司

有 青岛泰●●有限公司

有 厦门昂●●机械有限公司

有 无锡科●●五金有限公司

・簡易調査（電話聞取調査、インターネット調査等）の結果、上流業者を特定する可能性

があると判断される

上流業者特定可

能性 輸出業者名

有 武漢市●●佳機電進出口有限公司

有 湖南麦●●進出口有限公司

有 済南●●沃軸承進出口有限公司

有 上海貝●●進出口有限公司

有 天津盛●●博国際貿易有限公司

有 厦門●●諾機械有限公司

有 厦門市誠●●進出口有限公司

有 深圳市愛●●貿易有限公司

有 無錫科●●軸承五金有限公司

有 蘇州艾●●軸承有限公司

WG メンバーより受領した通関差止情報の中から、以上の基準により下記 10 業者を選定し

た。原則として、各基準に該当する業者について、簡易調査（電話聞取調査、インターネ

ット調査等）を実施し、上流業者特定の可能性に乏しい業者を除外し、残った業者を調査

対象輸出業者の候補とすることとした。

模倣品の国際流通にかかる実態調査 42

＜調査対象輸出業者候補 10 業者＞

通し

番号 輸出業者名

輸出数

量

被差止

回数

模倣品

製造の

可能性

上 流 業

者 特 定

可能性

1 武漢市●●佳機電進出口有限公

司 ○ ○

2 湖南麦●●進出口有限公司 ○ ○

3 済南●●沃軸承進出口有限公司 ○ ○

4 上海貝●●進出口有限公司 ○ ○

5 天津盛●●博国際貿易有限公司 ○ ○

6 厦門●●諾機械有限公司 ○ ○ ○

7 厦門市誠●●進出口有限公司 ○ ○ ○

8 深圳市愛●●貿易有限公司 ○ ○

9 無錫科●●軸承五金有限公司 ○ ○

10 蘇州艾●●軸承有限公司 ○ ○

43 模倣品の国際流通にかかる実態調査

① - 【輸出業者】武漢市科●●進出口有限公司

住所 湖北省武漢市●●

代表者 徐●●

従業員数 15 名

面積 200 ㎡

販売規模 5,000 万元/年間（輸出金額）

主要使用税関 上海市上海税関、上海市外港税関、杭州税関、寧波税関等

主要輸出国・地域 インド、パキスタン

差止を受けた数量 約 75,000～95,000 個

輸出差止を受けた

回数 3 回

製造元 浙江省鎮江市「●●有限公司」

・対象業者外観

・サンプルパッケージ ・現場責任者名刺

模倣品の国際流通にかかる実態調査 44

【製造業者】鎮江科●●製造有限公司

住所 江蘇省鎮江市丹徒区●●

代表者 朱●●

従業員数 25 名

面積 3,000 ㎡

製造規模 5,000 万元/年間

特記事項 無

・対象業者外観 ・サンプル

・サンプル ・現場責任者名刺

製造元

45 模倣品の国際流通にかかる実態調査

② - 【輸出業者】湖南麦●●進出口有限公司

住所 湖南省長沙市●●

代表者 瀋●●

従業員数 3 名

面積 40 ㎡

販売規模 年間貿易額約 1億ドル

主要使用税関 上海市上海税関、上海市外港税関、杭州税関、寧波税関等

主要輸出国・地域 パキスタン

差止を受けた数量 約 700～4,000 個

輸出差止を受けた

回数 3 回

製造元 浙江省鎮江市「鎮江華●●軸承有限公司」

・対象業者外観

・対象業者内部 ・現場責任者名刺

模倣品の国際流通にかかる実態調査 46

【製造業者】鎮江華●●軸承有限公司

住所 江蘇省鎮江市丹徒区●●

代表者 周●●

従業員数 20 名

面積 3,000 ㎡

製造規模

・生産数量：約 250 万点／年

・売上：1000 万元以上／年

※輸出売上：約 1000 万／年

特記事項 無

・対象業者外観

・現場責任者名刺

製造元

47 模倣品の国際流通にかかる実態調査

③ - 【輸出業者】済南莱●●進出口有限公司

住所 山東省済南市済洛路●●

代表者 趙●●

従業員数 11 名

面積 60 ㎡

販売規模 2,000 万元/年間（輸出金額）

主要使用税関 山東省青島市黄島税関、天津税関等

主要輸出国・地域 フィリピン

差止を受けた数量 1,050 個

輸出差止を受けた

回数 1 回

製造元 山東省聊城市「聊城精●●軸承廠」

・対象業者外観 ・現場責任者名刺

・サンプル ・サンプル

模倣品の国際流通にかかる実態調査 48

【製造業者】聊城精●●軸承廠

住所 山東省聊城市煙店●●

代表者 趙●●

従業員数 不明

面積 3,000 ㎡

製造規模 不明

特記事項 輸出業者である「済南莱●●軸承進出口有限公司」と同一経営者

である旨自称

・対象業者外観 ・対象業者内部

・対象業者内部 ・現場責任者名刺

製造元

49 模倣品の国際流通にかかる実態調査

④ - 【輸出業者】上海貝●●進出口有限公司

住所 上海市漕宝路●●

代表者 杜●●

従業員数 15 名

面積 250 ㎡

販売規模 不明

主要使用税関 上海市上海税関、上海市外港税関

主要輸出国・地域 エストニア

差止を受けた数量 13,500 個

輸出差止を受けた

回数 1 回

製造元 上海市「上海金●●有限公司」

※但し、判決文に基づく情報である。

・対象業者外観

・対象業者外観 ・現場責任者名刺

模倣品の国際流通にかかる実態調査 50

【製造業者】上海金●●有限公司 ※上流情報を取得したが訪問調査は未実施

住所 不明

代表者 不明

従業員数 不明

面積 不明

製造規模 不明

特記事項

・模倣品の輸出経験あり

・差止処分により対象製品の輸出を停止

・輸出業者が模倣行為の主体（模倣品発注者は輸出業者）

※但し、これらの情報は、輸出業者からの聞取調査結果

製造元

51 模倣品の国際流通にかかる実態調査

⑤ - 【輸出業者】天津盛●●有限公司

住所 天津市河東区●●

代表者 李●●

従業員数 6 名

面積 120 ㎡

販売規模 年間売上約 1000 万元、輸出額約 500 万元

主要使用税関 天津新港税関

主要輸出国・地域 イラン

差止を受けた数量 120～2,000 個

輸出差止を受けた

回数 2 回

製造元 大連市「大連浩●●軸承製造有限公司」

・対象業者外観

・現場責任者名刺

模倣品の国際流通にかかる実態調査 52

【製造業者】大連浩●●軸承製造公司 ※上流情報を取得したが訪問調査は未実施

住所 不明

代表者 不明

従業員数 不明

面積 不明

製造規模 不明

特記事項

・模倣品輸出経験あるが、現在は、模倣品の取扱いなし

・常連客には模倣品提供可能

・輸出業者が模倣行為の主体（模倣品発注者は輸出業者）

※但し、これらの情報は、輸出業者からの聞取調査結果

製造元

53 模倣品の国際流通にかかる実態調査

⑥ - 【輸出業者】厦門昂●●有限公司

住所 福建省厦門市●●

代表者 周●●

従業員数 10 名

面積 200 ㎡

販売規模 5,000 万元/年間

主要使用税関 上海外港税関

主要輸出国・地域 イラン

差止を受けた数量 約 10,000～15,000 個

輸出差止を受けた

回数 2 回

製造元 浙江省台州市「台州科●●公司」

・対象業者外観 ・対象業者のサンプル展示室

・対象業者のサンプル ・現場責任者名刺

模倣品の国際流通にかかる実態調査 54

【製造業者】台州科●●有限公司 ※上流情報を取得したが訪問調査は未実施

住所 不明

代表者 不明

従業員数 不明

面積 不明

製造規模 不明

特記事項 ・浙江省所在の提携工場を有する

※但し、同情報は、輸出業者からの聞取調査結果

製造元

55 模倣品の国際流通にかかる実態調査

⑦ - 【輸出業者】厦門市誠●●有限公司

住所 福建省アモイ市●●

代表者 康●●

従業員数 12 名

面積 500 ㎡

販売規模 不明

主要使用税関 上海税関、上海洋山税関

主要輸出国・地域 チリ

差止を受けた数量 約 1,000～20,000 個

輸出差止を受けた

回数 3 回

製造元 浙江省寧波市「寧波微●●有限公司」

・対象業者外観

・対象業者外観 ・現場責任者名刺

模倣品の国際流通にかかる実態調査 56

【製造業者】寧波微●●有限公司 ※上流情報を取得したが訪問調査は未実施

住所 不明

代表者 不明

従業員数 不明

面積 不明

製造規模 不明

特記事項

・通常、模倣品を取り扱わない

・主として「厦門市●●有限公司」からの委託で対象製品を輸出

※但し、同情報は、輸出業者からの聞取調査結果

製造元

57 模倣品の国際流通にかかる実態調査

⑧ - 【輸出業者】深圳市愛●●有限公司

住所 広東省深圳市宝●●

代表者 胡●●

従業員数 不明

面積 不明

販売規模 不明

主要使用税関 天津新港税関、天津税関

主要輸出国・地域 コスタリカ

差止を受けた数量 約 1,500～4,000 個

輸出差止を受けた

回数 3 回

製造元 不明

・対象業者外観

※工商登録上の住所地／同地に対象業者不存在

製造元

不明

（上流情報取得に至っていない）

模倣品の国際流通にかかる実態調査 58

⑨ - 【輸出業者】無錫科●●有限公司

住所

江蘇省無錫市●●

江蘇省無錫市●●

※但し、上記住所地にあった輸出業者「無錫●●有限公司」は、

現在は存在せず、同業者は、現在「上海●●有限公司」として

事業を継続

代表者 葛●●

従業員数 不明

面積 不明

販売規模 不明

主要使用税関 上海税関

主要輸出国・地域 ベトナム

差止を受けた数量 49 個

輸出差止を受けた

回数 1

製造元 不明

・対象業者外観 ・現場責任者名刺

※工商登録上の住所地／同地に対象業者不存在

不明

（上流情報取得に至っていない）

製造元

59 模倣品の国際流通にかかる実態調査

⑩ - 【輸出業者】蘇州艾●●軸承有限公司 ※所在不明につき訪問調査未実施

住所 不明

代表者 不明

従業員数 不明

面積 不明

販売規模 不明

主要使用税関 上海税関、上海外港税関

主要輸出国・地域 タイ

差止を受けた数量 約 200～2,000 個

輸出差止を受けた

回数 2 回

製造元 不明

（上流情報取得に至っていない）

製造元

不明

模倣品の国際流通にかかる実態調査 60

（２）調査対象輸出業者 3 業者の選定

上記 10 業者を調査したところ、以下の 3業者につき、上流業者情報が掴め、かつ、同上

流業者の調査が可能であったため、これら 3業者を調査対象とした。

1 武漢市科●●有限公司

2 湖南麦●●有限公司

3 済南莱●●有限公司

３．実態調査結果

（１）各輸出業者の上流業者

上記 3業者の上流業者を調査した結果、以下の通り、上流業者が判明した。

輸出業者 上流業者

1 武漢市科●●有限公司 鎮江科●●有限公司

2 湖南麦●●有限公司 鎮江華●●有限公司

3 済南莱●●有限公司 聊城精●●有限公司

鎮江科●●有限公司

【製造業者】

↓

1 武漢市科●●有限公司

【輸出業者】

↓

上海市上海税関、上海市外港税関

↓

パキスタン

61 模倣品の国際流通にかかる実態調査

鎮江華●●有限公司

【製造業者】

↓

2 湖南麦●●有限公司

【輸出業者】

↓

上海市上海税関、上海市外港税関

↓

パキスタン

聊城精●●廠

【製造業者】

↓

3 済南莱●●有限公司

【輸出業者】

↓

山東省青島市黄島税関

↓

フィリピン

なお、前述のとおり、本件においては、本委託事業の終期等との兼ね合いから、調査対

象数を限定する必要があったため、調査対象を限定することとしたものであるが、最終的

に調査対象とした 3 業者以外にも、上流業者情報を掴んでいたものの、同業者の訪問調査

の実施に至っていない等の業者もあり、引き続き、これらも含めた、輸出業者、及びこれ

の上流業者の実態を把握し、類型化、分析する等した上、効果的な対応を検討することも

有益であると考えられる。

模倣品の国際流通にかかる実態調査 62

（２）輸出実態調査結果概要

①ケース１： 1- 【輸出業者】武漢市科佳機電進出口有限公司

本ケースは、税関より受領した「知的財産権侵害状況通知書」記載の輸出業者名を契機

に、同業者及び同業者を通じて模倣品の輸出を試みた模倣品製造業者の所在を突き止める

ことに成功した事例である。

【調査過程】

10 月 20 日～28 日 「知的財産権侵害状況通知書」記載の輸出業者名称から、ネッ

ト・電話等を用いて、ヒアリング調査等を実施

11 月 3 日 上記調査で得た輸出業者所在地に対して訪問調査を実施し、製

造業者情報を取得

11 月 5 日 製造業者について、ネット、電話等を用いて、ヒアリング調査

等を実施

11 月 7 日 上記調査で得た対象製造業者所在地に対して訪問調査を実施

し、以下のネットワークを解明

調査により、模倣品製造から輸出までの、製造、販売、流通過程が判明した。

63 模倣品の国際流通にかかる実態調査

【関係図】

製造業者 輸出業者

出荷港 模倣品の流れ

武漢市

上海

税関

慈溪市

鎮江市

倉庫

杭州／寧波

税関

模倣品の国際流通にかかる実態調査 64

発注

製造業者

「無錫正●●有限公司」

（江蘇省無錫市）

模倣品

輸出業者

「武漢科●●有限公司」

（湖北省・武漢市）

製造業者

「鎮江科●●有限公司」

（江蘇省・鎮江市）

模倣品 発注

同一業者

10 社ほどの製造業者

「不明」

（浙江省慈渓市）

発注

模倣品

世界各国

（ドイツ、UAE、リトアニア等）

中国税関 （上海税関、杭州税関、寧波税関等）

65 模倣品の国際流通にかかる実態調査

差止税関「上海税関」

輸出業者「武漢科●●有限公司」

模倣品の国際流通にかかる実態調査 66

製造業者「鎮江科●●有限公司」

67 模倣品の国際流通にかかる実態調査

調査の結果、本ケースにおいては、以下のようなネットワークにて、模倣品を製造、販

売、輸出していることが判明した。

製造業者は、輸出業者から、模倣品製造の注文を受けて持穂品を製造する完全受注生

産体制を取っている

製造業者は発注に応じて、平素より生産しているノーブランド製品に権利者商標を付

して模倣品を製造

完全受注生産体制のため、対象製造業者は、通常、模倣品在庫を有していない

製造業者は、通常、権利者からの授権を前提に OEM 生産を行っているが、対価の金額

次第で模倣品生産も行う

輸出業者と対象製造業者が実質的に同一経営主体によるものであるため、生産から出

荷まで迅速に実施に対応

【模倣品輸出までの流れ】

模倣品の国際流通にかかる実態調査 68

②ケース２： 2- 【輸出業者】●●有限公司

本ケースは、税関より受領した「知的財産権侵害状況通知書」記載の輸出業者名を契機

に、同業者より模倣品の発注を受けてこれを製造した模倣品製造業者の所在を突き止める

ことに成功した事例である。

【調査過程】

10 月 20 日～28 日

税関より受領した「知的財産権侵害状況通知書」記載の対象輸

出業者名称から、ネット・電話等を用いて、ヒアリング調査等

を実施

11 月 19 日 上記調査で得た輸出業者所在地に対して訪問調査を実施し、製

造業者情報を取得

11 月 21 日 製造業者について、ネット、電話等を用いて、ヒアリング調査

等を実施

11 月 24 日 上記調査で得た対象製造業者所在地に対して訪問調査を実施

し、以下のネットワークを解明

調査により、模倣品製造から輸出までの、製造、販売、流通過程が判明した。

69 模倣品の国際流通にかかる実態調査

製造業者 輸出業者

出荷港模倣品の流れ

長沙市

上海

税関

慈溪市

鎮江市

倉庫

杭州／寧波

税関

模倣品の国際流通にかかる実態調査 70

【関係図】

販売業者

武漢華●●有限公司

（湖南省・武漢市）

輸出業者

湖南麦●●有限公司

（湖南省・長沙市）

製造業者

「鎮江華●●有限公司」

（江蘇省・鎮江市)

製造業者

「慈溪恒●●有限公司」

（浙江省・慈溪市)

製造業者

「不明」

（不明)

発注 発注 発注

模倣品 模倣品 模倣品 模倣品

発注

世界各国

中国税関 （上海税関、杭州税関、寧波税関等）

71 模倣品の国際流通にかかる実態調査

差止税関「上海税関」

輸出業者「湖南麦●●有限公司」

模倣品の国際流通にかかる実態調査 72

製造業者「鎮江華●●有限公司」

73 模倣品の国際流通にかかる実態調査

調査の結果、本ケースにおいては、以下のようなネットワークにて、模倣品を製造、販

売、輸出していることが判明した。

輸出業者が発注内容に応じて製造業者を選定・発注

製造業者は、輸出業者からの注文を受けて模倣品を製造する完全受注生産体制

製造業者は発注に応じて、平素より生産しているノーブランド製品に権利者商標を付

して模倣品を製造

製造業者は、完全受注生産体制のため、通常、模倣品在庫を有していない

製造業者は、通常、権利者からの授権を前提に OEM 生産を行っているが、対価の金額

次第で模倣品生産も行う

【模倣品輸出までの流れ】

模倣品の国際流通にかかる実態調査 74

③ケース３： 3- 【輸出業者】済南莱●●有限公司

本ケースは、税関より受領した「知的財産権侵害状況通知書」記載の輸出業者名を契機

に、同業者及び同業者を通じて模倣品の輸出を試みた模倣品製造業者の所在を突き止める

ことに成功した事例である。

【調査過程】

10 月 20 日～28 日 「知的財産権侵害状況通知書」記載の対象輸出業者名称から、ネ

ット・電話等を用いて、ヒアリング調査等を実施

11 月 12 日 上記調査で得た対象輸出業者所在地に対して訪問調査実施し、対

象製造業者情報を取得

11 月 13 日 対象製造業者について、ネット、電話等を用いて、ヒアリング調

査等を実施

11 月 15 日 上記調査で得た対象製造業者所在地に対して訪問調査を実施し、

下記ネットワーク全体像を解明

調査により、模倣品製造から輸出までの、製造、販売、流通過程が判明した。

75 模倣品の国際流通にかかる実態調査

製造業者 輸出業者

出荷港 模倣品の流れ

済南市

聊城市 青島

税関

倉庫

天津

税関

模倣品の国際流通にかかる実態調査 76

【関係図】

輸出業者

「済南莱●●有限公司」

（山東省済南市）

製造業者

「聊城精●●廠」

（山東省聊城市）

模倣品 発注

模倣品製造業者

「不明」

（山東省聊城市） 発注

模倣品

世界各国

（東南アジア、南アメリカ、中東等）

同一業者

中国税関 （天津税関、青島税関等）

77 模倣品の国際流通にかかる実態調査

差止税関「青島税関」

輸出業者「済南莱●有限公司」

模倣品の国際流通にかかる実態調査 78

製造業者「聊城精●●廠」

79 模倣品の国際流通にかかる実態調査

模倣品の国際流通にかかる実態調査 80

調査の結果、本ケースにおいては、以下のようなネットワークにて、模倣品を製造、販

売、輸出していることが判明した。

製造業者は、輸出業者から、模倣品製造の注文を受けて模倣品を製造する完全受注生

産体制を取っている

完全受注生産体制のため、対象製造業者は、通常、模倣品在庫を有していない

製造業者は発注に応じて、平素より生産しているノーブランド製品に権利者商標を付

して模倣品を製造

輸出業者と対象製造業者が実質的に同一経営主体によるものであるため、生産から出

荷まで迅速に実施に対応

【模倣品の輸出までの流れ】

81 模倣品の国際流通にかかる実態調査