5.43条ただし書許可-3-72- 5.43条ただし書許可 1)制度の概要 43条ただし書許可とは、無接道敷地に対して、ある一定の条件を満たしたものに
から だの しく み - 塩野義製薬Lesson6咳はどうして出るの…?(1) から...
Transcript of から だの しく み - 塩野義製薬Lesson6咳はどうして出るの…?(1) から...
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
か ら だ の しく み
施設名
FMX-C-0015(V01)審:6564772018年7月作成PI
禁無断転載 2009 2018 SHIONOGI◯C ◯C
著 者:とうご小児科(松阪市) 院長 藤後 幸博監 修:千葉大学医学部代謝生理学研究室 名誉教授 福田 康一郎 元三重大学医学部解剖学講座 助教授 大橋 剛 地方独立行政法人桑名市総合医療センター 理事長 竹田 寛 地方独立行政法人桑名市総合医療センター 副理事長 白石 泰三
Lesson 1~3で気管,気管支,肺の構造と機能,そして,Lesson 4,5 では
呼吸のしくみについて勉強してきました。
ところで,気管支や肺の病気というと,お母さんたちはどんな病気を思い浮かべ
ますか?気管支炎,肺炎,気管支喘息,などなどではないでしょうか。そして,
これらの病気に共通する症状は何でしょうか…?そう,それは「咳」と「タン」
ですね。
咳もタンも日常何気なく使っている言葉ですが,「なぜ咳は出るの」,「タンって何
なの」ということになるとどうですか,少し答えに困ってしまいませんか。
そこで今回は「咳」について,いったい全体どのようなしくみが働いて咳が出る
のかを考えてみることにしましょう。お手元に Lesson 1~5 を置いて,参照し
ながらお読みください。
お母さんたちへ
今から 230 年も昔の江戸時代,オランダ語で書かれた一冊の解剖
学の本「ターヘル・アナトミア」が,杉田玄白という人によって翻
訳され「解体新書」という名で出版されました。
それは,当時の医師たちが,人間の「からだのしくみ」がよくわ
からないことには,人間のからだに起こる様々なできごと(病気も
もちろんそのひとつです)についても正しく理解することができな
いことに気付いたからなのです。以来今日まで,医学部の学生が医
学を学ぶにあたって,まず最初に勉強するのは解剖学なのです。
病気の子どもを看病するお母さんたちにとってもそれは同じこと
で, 病気を正しく理解するためには, なによりもまず「からだのしく
み」について,そのおおよそのことだけでも知っておくことが大切で
あり必要なことなのです。この小冊子は,そのような目的をかなえて
いただくために書かれた,ちょっぴり本格的な解剖・生理学の本です。
江戸時代の人たちが「ターヘル・アナトミア」という本を,未知
を知る感動と驚きの中で読み解いていったように,お母さんたちに
もこの小冊子を読み解いていただくことができたならば,それは,
この本の完成にたずさわった人たちみんなの喜びでもあります。
2 0 0 8. 5 著者
かい たい しん しょ
タ ー ヘ ル ア ナ ト ミ ア
お 母 さ ん の た め のか ら だ の し く み
き かん し
ぜん そく
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
Lesson 1~3で気管,気管支,肺の構造と機能,そして,Lesson 4,5 では
呼吸のしくみについて勉強してきました。
ところで,気管支や肺の病気というと,お母さんたちはどんな病気を思い浮かべ
ますか?気管支炎,肺炎,気管支喘息,などなどではないでしょうか。そして,
これらの病気に共通する症状は何でしょうか…?そう,それは「咳」と「タン」
ですね。
咳もタンも日常何気なく使っている言葉ですが,「なぜ咳は出るの」,「タンって何
なの」ということになるとどうですか,少し答えに困ってしまいませんか。
そこで今回は「咳」について,いったい全体どのようなしくみが働いて咳が出る
のかを考えてみることにしましょう。お手元に Lesson 1~5 を置いて,参照し
ながらお読みください。
お母さんたちへ
今から 230 年も昔の江戸時代,オランダ語で書かれた一冊の解剖
学の本「ターヘル・アナトミア」が,杉田玄白という人によって翻
訳され「解体新書」という名で出版されました。
それは,当時の医師たちが,人間の「からだのしくみ」がよくわ
からないことには,人間のからだに起こる様々なできごと(病気も
もちろんそのひとつです)についても正しく理解することができな
いことに気付いたからなのです。以来今日まで,医学部の学生が医
学を学ぶにあたって,まず最初に勉強するのは解剖学なのです。
病気の子どもを看病するお母さんたちにとってもそれは同じこと
で, 病気を正しく理解するためには, なによりもまず「からだのしく
み」について,そのおおよそのことだけでも知っておくことが大切で
あり必要なことなのです。この小冊子は,そのような目的をかなえて
いただくために書かれた,ちょっぴり本格的な解剖・生理学の本です。
江戸時代の人たちが「ターヘル・アナトミア」という本を,未知
を知る感動と驚きの中で読み解いていったように,お母さんたちに
もこの小冊子を読み解いていただくことができたならば,それは,
この本の完成にたずさわった人たちみんなの喜びでもあります。
2 0 0 8. 5 著者
かい たい しん しょ
タ ー ヘ ル ア ナ ト ミ ア
お 母 さ ん の た め のか ら だ の し く み
き かん し
ぜん そく
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
食べ物,飲み物
気
管食
道
“むせる”という言葉を知っていますか?
「そんなに急いで食べるとむせちゃうわよ!」などといったりします。それでは,
“むせる”とはいったいどんなことなのか,医学的に考えてみましょう。
その前に少し復習をしておきましょう。Lesson 1の2~4ページを開いてみて
ください。
私たちは,空気を吸ったり食べ物を食べたりします。空気や食べ物はのどを通っ
て,空気は気管に,食べ物や飲み物は食道に入ります。ということは,のどには
空気が通る気管という穴(のど 気管 気管支 肺)と,食べ物が通る食道とい
う(のど→食道→胃→腸)2つの穴があいているということになります。
では,どうして飲み込んだ食べ物や飲み物は,空気の通り道である気管の方の穴
に入らずに,食道の穴に正しく入っていけるのでしょうか。それは,気管の入り
口のところには「喉頭蓋」という蓋が付いているからなのです。この蓋は,私た
ちが口からものを食べたり飲んだりすると反射的にパタンと閉まり,気管の入り
口に蓋をしてしまいます。そのため,食べた物や飲んだ物は,誤って気管に入る
ことなく,食道の方へと入っていくのです。空気を吸うときにはこの蓋が開くの
で,吸った空気は気管の方へと入っていくのです。
復習が済んだところで本題に戻り,なぜ“むせる”ということが起こるのかを考
えてみましょう。
とても急いで食べたり飲んだりして,急に食べ物や飲み物がのどに入ってくる
と,喉頭蓋が気管に蓋をするのが間に合わなくなり,本来は空気の通り道である
気管の方に,食べ物や飲み物が入り込みそうになります。すると私たちの体は,
「これはヤバイ,気管に食べ物や飲み物が入り込んだら,空気の通り道がふさが
れてしまって気管に空気が入らなくなってしまう」と感じ,激しく咳をして気管
の方に入りかけたものを外に放り出そうとするのです。この激しい咳・咳き込み
のことを“むせる”というのです。
→← →← →←
こう とうがい ふた
● ●
● ●
のどの奥の2つの穴
奥のの穴
舌
声帯
喉頭
咽頭
気管
空気が通る穴(空気の通り道)
食べ物が通る穴(食べ物の通り道)
食道
喉頭蓋
・・
==
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
食べ物,飲み物
気
管食
道
“むせる”という言葉を知っていますか?
「そんなに急いで食べるとむせちゃうわよ!」などといったりします。それでは,
“むせる”とはいったいどんなことなのか,医学的に考えてみましょう。
その前に少し復習をしておきましょう。Lesson 1の2~4ページを開いてみて
ください。
私たちは,空気を吸ったり食べ物を食べたりします。空気や食べ物はのどを通っ
て,空気は気管に,食べ物や飲み物は食道に入ります。ということは,のどには
空気が通る気管という穴(のど 気管 気管支 肺)と,食べ物が通る食道とい
う(のど→食道→胃→腸)2つの穴があいているということになります。
では,どうして飲み込んだ食べ物や飲み物は,空気の通り道である気管の方の穴
に入らずに,食道の穴に正しく入っていけるのでしょうか。それは,気管の入り
口のところには「喉頭蓋」という蓋が付いているからなのです。この蓋は,私た
ちが口からものを食べたり飲んだりすると反射的にパタンと閉まり,気管の入り
口に蓋をしてしまいます。そのため,食べた物や飲んだ物は,誤って気管に入る
ことなく,食道の方へと入っていくのです。空気を吸うときにはこの蓋が開くの
で,吸った空気は気管の方へと入っていくのです。
復習が済んだところで本題に戻り,なぜ“むせる”ということが起こるのかを考
えてみましょう。
とても急いで食べたり飲んだりして,急に食べ物や飲み物がのどに入ってくる
と,喉頭蓋が気管に蓋をするのが間に合わなくなり,本来は空気の通り道である
気管の方に,食べ物や飲み物が入り込みそうになります。すると私たちの体は,
「これはヤバイ,気管に食べ物や飲み物が入り込んだら,空気の通り道がふさが
れてしまって気管に空気が入らなくなってしまう」と感じ,激しく咳をして気管
の方に入りかけたものを外に放り出そうとするのです。この激しい咳・咳き込み
のことを“むせる”というのです。
→← →← →←
こう とうがい ふた
● ●
● ●
のどの奥の2つの穴
奥のの穴
舌
声帯
喉頭
咽頭
気管
空気が通る穴(空気の通り道)
食べ物が通る穴(食べ物の通り道)
食道
喉頭蓋
・・
==
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
肋 骨
胸 骨
脊 椎
外肋間筋
副鼻腔
鼻
咽 頭
喉 頭
胸 膜
横隔膜
胃・食道
気管・気管支
外耳道・鼓膜
内肋間筋
●外肋間筋は息を吸うときに働きます。●内肋間筋は息を吐くときに働きます。
センサー
延髄の咳中枢
求心神経
背骨(脊椎)
大 脳
小 脳
延 髄
ししますが,指令を受けた呼吸筋が,Lesson 4,5 で勉強した息を吐くときの
しくみとよく似た働きをして咳が出るのです。ですから,咳が出るということと,
息を吐くということはとても似通っているのです。
それでは次に,いったい全体どのような“しくみ”が働いて,“むせる”,すなわ
ち“咳が出る”のでしょうか?今度はこのことについて,少し詳しく考えてみま
しょう。
■センサーについて
Lesson 1~3で勉強したように,気管や気管支は,私たちが生きていくために
必要な空気(酸素)を肺(肺胞)に送り届けるためのパイプです(Lesson 2,
5ページ)。ですから,いかなる事情があったとしても,そのパイプのどこかに何
かが詰まってしまったらこれは大変です。パイプの中を空気が流れなくなってし
まい,せっかく鼻や口から吸い込んだ空気(酸素)が肺(肺胞)に届かなくなっ
てしまいます。その結果,私たちは空気(酸素)を肺(肺胞)から体内に取り込
めなくなり(Lesson 3,7~8 ページ),生きていくことができなくなってしま
うのです。そのため,それらのパイプの空気が流れる側(内側)の壁面には,パイ
プを詰まらせるような何か異変(異常事態)が起こったときに,その異変に感づ
いて(医学の言葉では“刺激されて”といいます)働くセンサーが付いているの
です。このセンサーは,気管や気管支以外にも,のどの入り口(咽頭といいます),
のどの奥(喉頭といいます),鼻の穴(鼻腔といいます)や耳の穴(外耳道といい
ます),ちょっと意外なところでは胃の入り口や食道などにも付いています。
そして,これらいろいろなところに付いているセンサーが,何かの異変(異常事
態)を感知する(刺激される)と,「大変,何かあったぞ」という知らせ(情報)が,
Lesson 4でお話しした脳の中の延髄というところにある“呼吸中枢※”の,さ
らにその中のどこかに間借りしているらしい咳のコンピューター「咳中枢」に,
求心神経※という神経によって伝えられます。すると,その知らせを受けた「咳
中枢」から指令が出て,遠心神経※という神経によって肺の周りにある呼吸筋
(Lesson 5)にその指令が伝えられます。すると,Lesson 7 でまた詳しくお話
はい ほう
いん とう
こう とう び くう がい じ どう
せきちゅうすう
きゅうしん
えんしん
こきゅうちゅうすう
咳を出すために,異常を感じるセンサーが
あるところ
咳の出るしくみ
Lesson 4,5 も読んでね。
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
肋 骨
胸 骨
脊 椎
外肋間筋
副鼻腔
鼻
咽 頭
喉 頭
胸 膜
横隔膜
胃・食道
気管・気管支
外耳道・鼓膜
内肋間筋
●外肋間筋は息を吸うときに働きます。●内肋間筋は息を吐くときに働きます。
センサー
延髄の咳中枢
求心神経
背骨(脊椎)
大 脳
小 脳
延 髄
ししますが,指令を受けた呼吸筋が,Lesson 4,5 で勉強した息を吐くときの
しくみとよく似た働きをして咳が出るのです。ですから,咳が出るということと,
息を吐くということはとても似通っているのです。
それでは次に,いったい全体どのような“しくみ”が働いて,“むせる”,すなわ
ち“咳が出る”のでしょうか?今度はこのことについて,少し詳しく考えてみま
しょう。
■センサーについて
Lesson 1~3で勉強したように,気管や気管支は,私たちが生きていくために
必要な空気(酸素)を肺(肺胞)に送り届けるためのパイプです(Lesson 2,
5ページ)。ですから,いかなる事情があったとしても,そのパイプのどこかに何
かが詰まってしまったらこれは大変です。パイプの中を空気が流れなくなってし
まい,せっかく鼻や口から吸い込んだ空気(酸素)が肺(肺胞)に届かなくなっ
てしまいます。その結果,私たちは空気(酸素)を肺(肺胞)から体内に取り込
めなくなり(Lesson 3,7~8 ページ),生きていくことができなくなってしま
うのです。そのため,それらのパイプの空気が流れる側(内側)の壁面には,パイ
プを詰まらせるような何か異変(異常事態)が起こったときに,その異変に感づ
いて(医学の言葉では“刺激されて”といいます)働くセンサーが付いているの
です。このセンサーは,気管や気管支以外にも,のどの入り口(咽頭といいます),
のどの奥(喉頭といいます),鼻の穴(鼻腔といいます)や耳の穴(外耳道といい
ます),ちょっと意外なところでは胃の入り口や食道などにも付いています。
そして,これらいろいろなところに付いているセンサーが,何かの異変(異常事
態)を感知する(刺激される)と,「大変,何かあったぞ」という知らせ(情報)が,
Lesson 4でお話しした脳の中の延髄というところにある“呼吸中枢※”の,さ
らにその中のどこかに間借りしているらしい咳のコンピューター「咳中枢」に,
求心神経※という神経によって伝えられます。すると,その知らせを受けた「咳
中枢」から指令が出て,遠心神経※という神経によって肺の周りにある呼吸筋
(Lesson 5)にその指令が伝えられます。すると,Lesson 7 でまた詳しくお話
はい ほう
いん とう
こう とう び くう がい じ どう
せきちゅうすう
きゅうしん
えんしん
こきゅうちゅうすう
咳を出すために,異常を感じるセンサーが
あるところ
咳の出るしくみ
Lesson 4,5 も読んでね。
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
遠心神経求心神経
気管支の始まり
気 管
気 管
肺 胞
肺 胞
気管支
幹
桜の花
枝
センサーがキャッチする刺激の中で一番多いのは,肺炎や気管支炎や気管支喘息
のときに,気管や気管支などのパイプの中(内側)に生じる“タン※”などの異
物による刺激ですが,バイ菌などでのどが赤くただれたり,タバコの煙や有毒ガ
スなどでのどが刺激を受けたり,耳そうじで耳の穴をコチョコチョされたりした
ときもこのセンサーが働き咳が出ます※。
たと
■2つのセンサー
センサーの話に入る前に,ここでまた少し,空気の通り道について復習しておき
ましょう。Lesson1の5~9ページのところで,鼻と口で吸った空気が肺(肺
胞)に届くまでの通り道を桜の木に喩えてお話ししました。根っこのところが鼻
や口とすれば,気管は幹,枝分かれしていく大,中,小の枝は気管支,そして一
番先っぽの細い枝のところにぶらさがるようにして咲いている花が肺胞で,その
肺胞が3億個(片側の肺だけで)も集まったものが肺である,というようなお話
をしました。
そこで,センサーについてですが,センサーには2つのタイプがあり,その1つ
はのど(咽頭や喉頭)や気管など,空気の通り道(気道といいます)の中でも入
り口の広いところ,桜の木でいえば根っこに近いところや幹のところにあるセン
サーです。そしていま1つは気管支のような空気の通り道の中でも狭いところ,
桜の木でいえば多数に枝分かれしたそれら枝のところにあるセンサーです。
※「中枢」というのは,わかりやすくいえば
人間の体の中のコンピューターのことで,
脳や脊髄にあります。体のあちこちで起こ
るさまざまな異変は,そのことに感づいた
最寄りのセンサーから求心神経を介して中
枢に向け「どないしたらよろしおま」とお
伺いが出されます。すると,中枢はその
情報をもとに,その時点で私たちの体がど
のようにするのが一番よいかを瞬時に判断
し,中枢から遠く離れている実行役の器官
(例えば筋肉)に,遠心神経という神経を
介して「こないにしなはれ」と指示を出す
のです。すなわち,中枢はいってみれば
人間の体の司令塔の役目を担っているとい
えます。
※求心神経や遠心神経の「心」という字は,
「心=芯=中 央=中 枢」という意味です。
従って,求心神経とは中枢に指示を求める
神経ということであり,遠心神経とは中枢
から遠く離れたところにある器官に指示を
与える神経ということなのです。
※タンについては Lesson 7 でお話しします。
※耳そうじのときに出るくしゃみも,しくみ
的には咳と同じなのです。
●● ● ● き どう
しん
● ●
● ●
ことばの説明
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
遠心神経求心神経
気管支の始まり
気 管
気 管
肺 胞
肺 胞
気管支
幹
桜の花
枝
センサーがキャッチする刺激の中で一番多いのは,肺炎や気管支炎や気管支喘息
のときに,気管や気管支などのパイプの中(内側)に生じる“タン※”などの異
物による刺激ですが,バイ菌などでのどが赤くただれたり,タバコの煙や有毒ガ
スなどでのどが刺激を受けたり,耳そうじで耳の穴をコチョコチョされたりした
ときもこのセンサーが働き咳が出ます※。
たと
■2つのセンサー
センサーの話に入る前に,ここでまた少し,空気の通り道について復習しておき
ましょう。Lesson1の5~9ページのところで,鼻と口で吸った空気が肺(肺
胞)に届くまでの通り道を桜の木に喩えてお話ししました。根っこのところが鼻
や口とすれば,気管は幹,枝分かれしていく大,中,小の枝は気管支,そして一
番先っぽの細い枝のところにぶらさがるようにして咲いている花が肺胞で,その
肺胞が3億個(片側の肺だけで)も集まったものが肺である,というようなお話
をしました。
そこで,センサーについてですが,センサーには2つのタイプがあり,その1つ
はのど(咽頭や喉頭)や気管など,空気の通り道(気道といいます)の中でも入
り口の広いところ,桜の木でいえば根っこに近いところや幹のところにあるセン
サーです。そしていま1つは気管支のような空気の通り道の中でも狭いところ,
桜の木でいえば多数に枝分かれしたそれら枝のところにあるセンサーです。
※「中枢」というのは,わかりやすくいえば
人間の体の中のコンピューターのことで,
脳や脊髄にあります。体のあちこちで起こ
るさまざまな異変は,そのことに感づいた
最寄りのセンサーから求心神経を介して中
枢に向け「どないしたらよろしおま」とお
伺いが出されます。すると,中枢はその
情報をもとに,その時点で私たちの体がど
のようにするのが一番よいかを瞬時に判断
し,中枢から遠く離れている実行役の器官
(例えば筋肉)に,遠心神経という神経を
介して「こないにしなはれ」と指示を出す
のです。すなわち,中枢はいってみれば
人間の体の司令塔の役目を担っているとい
えます。
※求心神経や遠心神経の「心」という字は,
「心=芯=中 央=中 枢」という意味です。
従って,求心神経とは中枢に指示を求める
神経ということであり,遠心神経とは中枢
から遠く離れたところにある器官に指示を
与える神経ということなのです。
※タンについては Lesson 7 でお話しします。
※耳そうじのときに出るくしゃみも,しくみ
的には咳と同じなのです。
●● ● ● き どう
しん
● ●
● ●
ことばの説明
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
❶新幹線超特急のA線維(神経) ─超特急で脳に刺激を伝えます─
● ●
● ●
● ●
のどや気管にあるセンサーは,異物の侵入などの異変に気付くと,すばやく咳中
枢に報告して咳を出させて異物を取り除こうとします。なぜなら,のどや気管は
桜の木でいえば根っこに近いところや幹に相当するところです。ですから,もし
ここに異物が詰まったら「さあ大変」,空気の流れがその最初の入り口のところで
止められてしまいます。そうすれば,私たちはすぐさま息ができなくなって窒息
してしまいます。おもちがのどに詰まるのがこれです。
そこでここには,咳中枢にすばやく,そのような異変が起きたことを知らせる
「A 線維」と呼ばれる神経が分布しています。そして,この A 線維の最先端には,
空気の通り道(気道)に起こるいろいろな異変を感づいてというかその異変に
よって刺激されて働く“irritant receptor※”と名付けられたセンサーが付いて
います。このセンサーが感知した異変は,脳(延髄)にある咳中枢に,先ほどお
話しした“A 線維”と呼ばれるすぐれものの神経(求心神経)によって超スピー
ド(12~30m/ 秒)で伝えられ,折り返し中枢からは遠心神経を介して呼吸筋
に指示が出て咳が出るのです。先にお話しした,あわてて食べて“むせる”のもこ
のセンサーが働くからなのです(5~6 ページも見てね)。
さらに,この“よろず刺激 うけたまわり所”センサー(irritant receptor)が感知
するのはタンなどの異物だけでなく,その他のいろいろな異変にも反応します。
前にも少しお話ししましたが,例えば,バイ菌
でのどが赤くただれたとき(咽頭炎・のどか
ぜ)やタバコの煙にむせたときなどに咳が出る
のは,のどのただれや煙の侵入をこのセンサー
が感知して,その知らせが A 線維によって咳
中枢に伝えられるからなのです。
せき
よ ろ ず 刺 激 う け た ま わ り 所
イリタント レセプター
咳の中枢
咳のスイッ
チ
※irritant receptor は “RARs”ともいいます。
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
❶新幹線超特急のA線維(神経) ─超特急で脳に刺激を伝えます─
● ●
● ●
● ●
のどや気管にあるセンサーは,異物の侵入などの異変に気付くと,すばやく咳中
枢に報告して咳を出させて異物を取り除こうとします。なぜなら,のどや気管は
桜の木でいえば根っこに近いところや幹に相当するところです。ですから,もし
ここに異物が詰まったら「さあ大変」,空気の流れがその最初の入り口のところで
止められてしまいます。そうすれば,私たちはすぐさま息ができなくなって窒息
してしまいます。おもちがのどに詰まるのがこれです。
そこでここには,咳中枢にすばやく,そのような異変が起きたことを知らせる
「A 線維」と呼ばれる神経が分布しています。そして,この A 線維の最先端には,
空気の通り道(気道)に起こるいろいろな異変を感づいてというかその異変に
よって刺激されて働く“irritant receptor※”と名付けられたセンサーが付いて
います。このセンサーが感知した異変は,脳(延髄)にある咳中枢に,先ほどお
話しした“A 線維”と呼ばれるすぐれものの神経(求心神経)によって超スピー
ド(12~30m/ 秒)で伝えられ,折り返し中枢からは遠心神経を介して呼吸筋
に指示が出て咳が出るのです。先にお話しした,あわてて食べて“むせる”のもこ
のセンサーが働くからなのです(5~6 ページも見てね)。
さらに,この“よろず刺激 うけたまわり所”センサー(irritant receptor)が感知
するのはタンなどの異物だけでなく,その他のいろいろな異変にも反応します。
前にも少しお話ししましたが,例えば,バイ菌
でのどが赤くただれたとき(咽頭炎・のどか
ぜ)やタバコの煙にむせたときなどに咳が出る
のは,のどのただれや煙の侵入をこのセンサー
が感知して,その知らせが A 線維によって咳
中枢に伝えられるからなのです。
せき
よ ろ ず 刺 激 う け た ま わ り 所
イリタント レセプター
咳の中枢
咳のスイッ
チ
※irritant receptor は “RARs”ともいいます。
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
C線維 C線維 A線維
気管支腺から粘液が出る管
杯細胞
線毛(繊毛)
気管支の断面図
基底膜
粘膜固有層
線毛(繊毛)上皮細胞
粘膜筋板(平滑筋の層)
漿液細胞
粘液細胞
粘膜下組織
粘 液
漿 液気管支腺(主に粘液を分泌)
外来異物(バイ菌やダニ・ホコリなど)外外外化学物質
刺激
刺激
タン
タン
タン
ホコリバイ菌
ダニ
粘液粘液
※ 作用はよくわかっていません。
※ ※
大拡
※※
ちょっと詳しく
❷ラッセル車(除雪作業車)のようなC線維(神経) ─じっくりと異物を除去します─
気管支のような狭い気道には A 線維のほかに C 線維という求心神経も分布してい
るのですが,そのスピードは遅く(0.9 ~ 2.3m/ 秒),即座に咳中枢に異変を伝え
るという仕事には向いていません。
けれど,この C 線維という名の神経,これがまたなかなかのすぐれもので,バイ
菌(ウイルスや細菌)やダニ・ホコリさらには有毒ガスなどの異物が,気管支の
粘膜にくっついて悪さをしている─すなわち,異変を起こす─と,C 線維末端の
センサーがまずそれに気づいて,そこ(C 線維末端)から“ある種の化学物質”
を放出します。この化学物質が A 線維の“irritant receptor”を刺激し,その刺
激が A 線維経由で咳中枢に伝えられます。その結果,咳中枢からの指令で咳が出
て,気管支内の異物が取り除かれます。さらにそれだけではなく,C線維の働きで
すごいのは,バイ菌(ウイルスや細菌)やダニ・ホコリなどが気管支の粘膜に
くっついてそこにいつまでも居座って悪さを続けていると,先ほどお話ししたC
線維から放出された化学物質が,今度は気管支粘膜(Lesson 2,12 ページ)を
刺激して気管支粘膜( 杯 細胞や気管支腺)から粘液を出させ,それらの異物を粘
液でからめ取ってしまうのです。この粘液でからめとられた異物(バイ菌やダ
ニ・ホコリなど)のことを“タン”といいます。
こうしてできたタンは,①私たちの体の中にいる掃除専門の細胞(何でも貪り食べ
るから「貪食細胞」と名付けられています)に食べられてしまうか,②異物とし
て,先にお話しした A 線維が咳中枢に連絡,その結果咳が出て咳と一緒に体外に
出されてしまうか,のどちらかによって除去されてしまいます。
すなわち,C 線維は,外から気管支内に入り込んで居座りを続ける物質を,少し
時間はかかりますが除去する働きもするのです。ですから,A 線維が新幹線なら,
C線維は積もった雪を取り除くラッセル車のように思えましたのでそのように名
付けてみましたがいかがでしょうか。
以上,お話ししてきたように,気管支内の異物は,
A 線維だけではなく C 線維も加わり,A・C 両神経
線維の連携プレイによって取り除かれるわけです。
どんしょくさい ぼう
イリタント レセプター
むさぼ
咳中枢へ↓
咳中枢へ↓
咳中枢へ↓
さかずき
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
C線維 C線維 A線維
気管支腺から粘液が出る管
杯細胞
線毛(繊毛)
気管支の断面図
基底膜
粘膜固有層
線毛(繊毛)上皮細胞
粘膜筋板(平滑筋の層)
漿液細胞
粘液細胞
粘膜下組織
粘 液
漿 液気管支腺(主に粘液を分泌)
外来異物(バイ菌やダニ・ホコリなど)外外外化学物質
刺激
刺激
タン
タン
タン
ホコリバイ菌
ダニ
粘液粘液
※ 作用はよくわかっていません。
※ ※
大拡
※※
ちょっと詳しく
❷ラッセル車(除雪作業車)のようなC線維(神経) ─じっくりと異物を除去します─
気管支のような狭い気道には A 線維のほかに C 線維という求心神経も分布してい
るのですが,そのスピードは遅く(0.9 ~ 2.3m/ 秒),即座に咳中枢に異変を伝え
るという仕事には向いていません。
けれど,この C 線維という名の神経,これがまたなかなかのすぐれもので,バイ
菌(ウイルスや細菌)やダニ・ホコリさらには有毒ガスなどの異物が,気管支の
粘膜にくっついて悪さをしている─すなわち,異変を起こす─と,C 線維末端の
センサーがまずそれに気づいて,そこ(C 線維末端)から“ある種の化学物質”
を放出します。この化学物質が A 線維の“irritant receptor”を刺激し,その刺
激が A 線維経由で咳中枢に伝えられます。その結果,咳中枢からの指令で咳が出
て,気管支内の異物が取り除かれます。さらにそれだけではなく,C線維の働きで
すごいのは,バイ菌(ウイルスや細菌)やダニ・ホコリなどが気管支の粘膜に
くっついてそこにいつまでも居座って悪さを続けていると,先ほどお話ししたC
線維から放出された化学物質が,今度は気管支粘膜(Lesson 2,12 ページ)を
刺激して気管支粘膜( 杯 細胞や気管支腺)から粘液を出させ,それらの異物を粘
液でからめ取ってしまうのです。この粘液でからめとられた異物(バイ菌やダ
ニ・ホコリなど)のことを“タン”といいます。
こうしてできたタンは,①私たちの体の中にいる掃除専門の細胞(何でも貪り食べ
るから「貪食細胞」と名付けられています)に食べられてしまうか,②異物とし
て,先にお話しした A 線維が咳中枢に連絡,その結果咳が出て咳と一緒に体外に
出されてしまうか,のどちらかによって除去されてしまいます。
すなわち,C 線維は,外から気管支内に入り込んで居座りを続ける物質を,少し
時間はかかりますが除去する働きもするのです。ですから,A 線維が新幹線なら,
C線維は積もった雪を取り除くラッセル車のように思えましたのでそのように名
付けてみましたがいかがでしょうか。
以上,お話ししてきたように,気管支内の異物は,
A 線維だけではなく C 線維も加わり,A・C 両神経
線維の連携プレイによって取り除かれるわけです。
どんしょくさい ぼう
イリタント レセプター
むさぼ
咳中枢へ↓
咳中枢へ↓
咳中枢へ↓
さかずき
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
咳についてのお話“その1”として,咳が
出る寸前のところまでのお話をしました。
空気の通り道(気道)に,何か空気の流れ
をじゃまするような異変(例えば“タン”)
が生じると,私たちの気道にはその異変を
刺激として感知するセンサーが付いていて,
そのことを脳(脳の中の延髄)にある咳の
コンピューター「咳中枢」に伝えるのです。
今回は,ここまでのお話をしたわけですが,
次回は,いよいよコンピューター(咳中枢)
の指令を受けて“ゴホン”と咳が出る,そ
の実際のしくみについてお話しすることに
いたします。
なお,ひとつお断りしておかねばならない
ことは百日咳のときの咳で,このときは百
日咳菌が出す毒素が,直接“咳中枢”に作
用して咳が出るのです。
咳ひとつとっても,そのしくみについて考
えてみると,体のしくみのすばらしさに驚
かされます。次回も楽しみにしていてくだ
さい。きっと目から鱗のお話ができると思
います。
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
咳についてのお話“その1”として,咳が
出る寸前のところまでのお話をしました。
空気の通り道(気道)に,何か空気の流れ
をじゃまするような異変(例えば“タン”)
が生じると,私たちの気道にはその異変を
刺激として感知するセンサーが付いていて,
そのことを脳(脳の中の延髄)にある咳の
コンピューター「咳中枢」に伝えるのです。
今回は,ここまでのお話をしたわけですが,
次回は,いよいよコンピューター(咳中枢)
の指令を受けて“ゴホン”と咳が出る,そ
の実際のしくみについてお話しすることに
いたします。
なお,ひとつお断りしておかねばならない
ことは百日咳のときの咳で,このときは百
日咳菌が出す毒素が,直接“咳中枢”に作
用して咳が出るのです。
咳ひとつとっても,そのしくみについて考
えてみると,体のしくみのすばらしさに驚
かされます。次回も楽しみにしていてくだ
さい。きっと目から鱗のお話ができると思
います。
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
Lesson6咳はどうして出るの…?(1)Lesson6
か ら だ の しく み
施設名
FMX-C-0015(V01)審:6564772018年7月作成PI
禁無断転載 2009 2018 SHIONOGI◯C ◯C
著 者:とうご小児科(松阪市) 院長 藤後 幸博監 修:千葉大学医学部代謝生理学研究室 名誉教授 福田 康一郎 元三重大学医学部解剖学講座 助教授 大橋 剛 地方独立行政法人桑名市総合医療センター 理事長 竹田 寛 地方独立行政法人桑名市総合医療センター 副理事長 白石 泰三