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中学校 保健体育科 第2学年 「球技 バレーボール」 テーマ 「一人一人がゲームの様相や個人の姿を自覚し、課題意識を連続して仲 間と共に高め合うバレーボールの授業」 授業改善 の視点 ①身に付けさせたい基礎・基本の学習内容を明確にし、課題意識を連続 させるための指導計画や学習カード等の工夫改善 ②ゲーム記録をもとに、ゲームの様相・個人の姿がイメージできる必然 性のある課題提示の工夫改善 ③より意欲をもって仲間と取り組むための学習集団の育成 学習状況の把握と結果の分析 (1)学習状況の把握の方法 【評価規準】 関心・意欲・態度 運動についての 思考・判断 運動についての 知識・理解 ・バレーボールの学 習に関心をもち、 楽しさを味わえる ように進んで取り 組もうとする。 ・練習やゲームの中 で、仲間と教え合 い、励まし合って 意欲的に取り組も うとする。 ・施設や用具の取り 扱い方、安全面に ついて心がけなが ら練習に取り組ん でいる。 ・グループの課題を データをもとにし て分析し、グルー プのよさや課題、 自分の課題をもっ て練習に取り組ん でいる。 ・3段攻撃を意図し た1本目、2本目 のボールコントロ ールができる。 ・3段攻撃をするた めに、1-5のレ シーブ隊形から、 ボールに絶えず体 を向けてカバーし 合い球すじを整え ることができる。 ・バレーボールのル ールや特性、上達 のための学習の進 め方を理解してい る。 【把握の方法】 単元に入る前のバレーボールについての意識調査 バレーボールに対する意識についてアンケート調査を行う。 昨年度までの単元での学習状況 昨年度、第1学年におけるバレーボールの授業の学習状況について、昨年までの 実態から振り返る。 評価規準をもとに現在の生徒の姿からとらえた「運動技能」の把握 評価規準をもとにして、学習カード、練習に取り組む姿の観察などから、生徒の 運動技能を把握する。 (2)学習状況の結果と分析 【結果】

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事 例 中学校 保健体育科 第2学年 「球技 バレーボール」

テーマ 「一人一人がゲームの様相や個人の姿を自覚し、課題意識を連続して仲

間と共に高め合うバレーボールの授業」

授業改善

の視点

①身に付けさせたい基礎・基本の学習内容を明確にし、課題意識を連続

させるための指導計画や学習カード等の工夫改善

②ゲーム記録をもとに、ゲームの様相・個人の姿がイメージできる必然

性のある課題提示の工夫改善

③より意欲をもって仲間と取り組むための学習集団の育成

1 学習状況の把握と結果の分析

(1)学習状況の把握の方法

【評価規準】

運 動 へ の

関心・意欲・態度

運動についての

思考・判断

運 動 の

技 能

運動についての

知識・理解

・バレーボールの学

習に関心をもち、

楽しさを味わえる

ように進んで取り

組もうとする。

・練習やゲームの中

で、仲間と教え合

い、励まし合って

意欲的に取り組も

うとする。

・施設や用具の取り

扱い方、安全面に

ついて心がけなが

ら練習に取り組ん

でいる。

・グループの課題を

データをもとにし

て分析し、グルー

プのよさや課題、

自分の課題をもっ

て練習に取り組ん

でいる。

・3段攻撃を意図し

た1本目、2本目

のボールコントロ

ールができる。

・3段攻撃をするた

めに、1-5のレ

シーブ隊形から、

ボールに絶えず体

を向けてカバーし

合い球すじを整え

ることができる。

・バレーボールのル

ールや特性、上達

のための学習の進

め方を理解してい

る。

【把握の方法】

単元に入る前のバレーボールについての意識調査

バレーボールに対する意識についてアンケート調査を行う。

昨 年 度 ま で の 単 元 で の 学 習 状 況

昨年度、第1学年におけるバレーボールの授業の学習状況について、昨年までの

実態から振り返る。

評 価 規 準 を も と に 現 在 の 生 徒 の 姿 か ら と ら え た 「 運 動 技 能 」 の 把 握

評価規準をもとにして、学習カード、練習に取り組む姿の観察などから、生徒の

運動技能を把握する。

(2)学習状況の結果と分析

【結果】

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単元に入る前のバレーボールについての意識調査

バレーボールの学習に入る前に、アンケ

ート調査を行った。

(調査対象:第2学年男子43名)

①これまでに部活動やクラブ、少年団

などでバレーボールを経験したこと

がありますか。

経験あり・・・10名

経験なし・・・33名

②バレーボールが好きですか。

とても好き・・・13名

好 き・・・25名

嫌 い・・・ 4名

大 嫌 い・・・ 1名

そ の 理 由 は 何 で す か 。

○ 好 き な 理 由

・ み ん な で 必 死 に な っ て つ な

い で 点 を と る と こ ろ が 好 き だ か ら 。

・ 相 手 の ス パ イ ク を レ シ ー ブ で き た と き や 、 ス パ イ ク を 決 め た と き

に う れ し い か ら 。

・ 仲 間 と 協 力 し て 創 り あ げ る 種 目 だ か ら 。

○ 嫌 い な 理 由

・ チ ー ム プ レ ー は ( ミ ス す る と 、 迷 惑 を か け て し ま い ) 嫌 い だ か

ら 。 ・ ボ ー ル が 当 た る と 痛 く て 怖 い か ら 。

・ ボ ー ル 操 作 が う ま く い か ず 苦 手 だ か ら 。

③ 昨 年 度 の バ レ ー ボ ー ル の 授 業 に

つ い て 、 ど ん な 印 象 を も っ て い

ま す か 。

楽 し か っ た ・ ・ ・ 2 1 名

ど ち ら で も な い ・ ・ ・ 1 7 名

楽 し く な か っ た ・ ・ ・ 5 名

そ の 理 由 は 何 で す か 。

○ 楽 し か っ た 理 由

・ バ レ ー を や る の が 初 め て だ っ た か ら 。

・ 初 め て だ っ た け ど 、 ラ リ ー が 続 い て お も し ろ か っ た か ら 。

バレーボールの経験

経験あり23%

経験なし

77%

経験あり

経験なし

昨年度のバレーボールの授業について

楽しくなかった12%

どちらでもない40%

楽しかった48%

楽しかったどちらでもない楽しくなかった

バレーボールが好きか

大嫌い2%

好き59%

嫌い9%

とても好き30%

とても好き

好き

嫌い

大嫌い

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・ み ん な で 声 を 出 し 合 い 、 勝 つ た め に 力 を 合 わ せ て 楽 し く ゲ ー ム が

で き た か ら 。 ・ 自 分 が 失 敗 し て も 、 仲 間 が カ バ ー し て く れ た り 、 協 力 で き た り し

た か ら 。

・ 円 陣 パ ス を 1 0 0 回 以 上 続 け る こ と が で き た か ら 。

・ 球 技 は 苦 手 だ け ど 、 自 分 も ボ ー ル に 触 れ る こ と が で き る か ら 。

・ 自 分 の 実 力 が 少 し ず つ 上 が っ て い く の が 実 感 で き た か ら 。

○ 楽 し く な か っ た 理 由

・ バ レ ー を す る の が 初 め て で 、 う ま く ボ ー ル が 操 作 で き な か っ た か

ら 。 ・ 練 習 ば か り で 、 試 合 が あ ま り で き な か っ た か ら 。

・ ボ ー ル を 返 す の が や っ と で ス パ イ ク ま で ボ ー ル が つ な が ら ず 、 思

う よ う に 打 て な か っ た か ら 。

・ 初 め て だ っ た の で 、 全 然 パ ス が つ な が ら な か っ た か ら 。

・ ア ン ダ ー ハ ン ド パ ス や オ ー バ ー ハ ン ド パ ス で 、 ボ ー ル を 操 作 す る

こ と が で き な か っ た か ら 。

④今年度のバレーボールへの期待度はどうですか。

楽 し み・・・33名

どちらでもない・・・ 9名

楽 し み で な い・・・ 1名

そ の 理 由 は 何 で す か 。

○ 楽 し み な 理 由

・ 1 年 生 の と き よ り ボ ー ル

を つ な げ て ゲ ー ム を し た

い か ら 。 ・ 去 年 よ り 、 ど れ く ら い う

ま く な っ て い る か を 知 る こ と が 楽 し み だ か ら 。

・ 今 回 は ス パ イ ク が 去 年 よ り た く さ ん 打 て る と 思 っ た か ら 。

・ 1 年 生 の と き 、 み ん な で ボ ー ル を つ な げ た お も し ろ さ を 実 感 し 、

2 年 生 で も さ ら に 3 段 攻 撃 ま で 高 め た い と 思 っ た か ら 。

・ 3 段 攻 撃 に つ な が る よ う な ゲ ー ム が た く さ ん で き る と 思 っ た か

ら 。

○ 楽 し み で な い 理 由

・ 3 段 攻 撃 で ス パ イ ク な ど の レ シ ー ブ が 怖 い か ら

・ レ シ ー ブ や ト ス が う ま く で き な い か ら 。

・ 他 種 目 の 方 が 得 意 だ か ら 。

今年度のバレーボールへの期待度

楽しみでない2%

楽しみ77%

どちらでもない21%

楽しみ

どちらでもない

楽しみでない

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昨 年 度 ま で の 単 元 で の 学 習 状 況

昨年度、第1学年でのバレーボールの学習において、「基底技能の習得」と「3

本以内で落とさないで返すゲーム」を目指して学習を進めてきた。カバーの動きを

理解して、つないで返すゲームの様相に徐々に高まっていったが、オーバーハンド

パスよりもアンダーハンドパスを多用する姿が多く見られ、ボールのコントロール

ミスから失点してしまうケースが多かった。より安定した3本返球につなげるため

に、正確なボール操作の習熟度を高めていかなくてはいけない状況であった。

さらに、ゲームを通しての連けい動作の練習では、学習カードをもとに練習に取

り組んだが、よりグループの課題、個人の課題に合った具体的な練習方法をイメー

ジできなかったため、課題点とずれた練習を選択してしまうことがあった。

また、スパイクを意図的に打とうとする姿が、後半になって見えはじめたもの

の、状況判断ができず、やみくもに打ってしまう場面が多く見られた。

評 価 規 準 を も と に 生 徒 の 姿 か ら と ら え た 「 運 動 技 能 」 の 把 握

( 昨 年 度 の 2 年 生 の ゲ ー ム の 様 相 ・ 個 人 の 姿 か ら )

基底技能の習熟の場面では、経験者にとっては単調になってしまうことがあるか

もしれないが、小学校でのバレーボールの経験がほとんどない現状では、ボール操

作に関わる練習を、きちんと位置付けることが必要であると考える。

また、ボールの落下点に入れないで、手先だけでボールを操作しようとする姿も

多く見られることから、対人パスなど細かいステップを必要とする基本練習を単元

前半で確実に位置付けていくことが大切であると考える。

【分析】

・アンケートの結果より、これまでに部活動やクラブ、少年団などでバレーボールを

経験した生徒が全体の25%程度であるのに、バレーボールが「好き」と答えた

生徒が90%にも達するということで、バレーボールの授業に対する関心がかな

り高かった。これは、連日行われていたテレビなどのワールドカップの影響もあ

って、高いレベルのバレーボールに憧れをもち、強いスパイクの格好よさだけに

とらわれることなく、強くて速い攻撃や、ボールを必死に拾い続ける粘り強さ、

ラリーが何度も繰り返されるバレーボールの醍醐味に触れる機会が多かったこと

が関心の高さに表れていたと考える。

・また、昨年度のバレーボールの授業では、グループによっては円陣パスで100回

以上を記録したところもあり、そうしたグループはボールをつなぐ楽しさを味わ

えた。さらに、リーグ戦などのゲームで勝てた喜びが、そのまま「楽しかった」

という印象につながっていると考えられる。反対に、基底技能がなかなか身に付

かず、うまくボールコントロールができなかったり、恐怖心から失敗して、仲間

に迷惑をかけないかと不安を感じていたりして、よい思いをもてなかった生徒も

いた。また、基本練習に時間をかけてきたことで、バレー部の生徒などは、早く

ゲームがやりたいという気持ちから、繰り返されるパス練習に、やや意欲を低下

させていたところも見受けられる。生徒にとってはそのほとんどが今年度のバレ

ーボールの授業に期待をし、意欲をみせているが、基本的なボール操作の技能向

上を目指すためには、確実に毎時間ボール操作に関わるドリル練習を組み入れ、

さらにグループでの相互援助活動を充実させていく必要がある。

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・今の自分たちのゲームの様相・個人の姿を客観的に見て、どこにつまずきがあるの

か、課題が何なのか、明確にイメージできていないため、その克服のための的確

な練習方法が見付け出せず、つまずきを克服していかないことがあった。そこ

で、「本時これだけは身に付けたい」という具体的な姿を明らかにし、様々な練

習方法を提示しながら、生徒がよりイメージがしやすく、さらには必然性のある

課題提示を行っていく必要がある。

2 分析に基づく授業改善

(1)授業改善の方針

今までの授業において、生徒が自分たちのゲームの様相・個人の姿を判断、分析し

て練習方法を選んだり、個々の技能を判断したりして、より自分たちの実態に即した

練習を仲間にアドバイスするという授業よりは、教師が技術ポイントを示し、抽出練

習を提示する形態の授業の方が多かった。生徒一人一人の課題は、主に学習カードの

振り返りを頼りにして生み出されることが多いので、「今日は、自分たちのグループは

○○○という課題があるので、□□□の練習をしたい」といった必然性をもたせるこ

とが、主体的な判断力を生徒に身に付けさせることにつながると考えた。

目指す姿を明確にイメージし、仲間と共に課題に応じた練習方法を、ゲームの様

相・個人の姿から判断しながら主体的に練習に取り組んだり、自分たちで戦術を考え

てゲームに臨んだりする姿の実現こそが、求めていく授業の姿であると考えた。

そこで、以下の授業改善の視点をもって実践を行った。

①身に付けたい基礎・基本の学習内容を明確にし、課題意識を連続させるための

指導計画や学習資料等の工夫改善

②ゲーム記録をもとに、ゲームの様相・個人の姿がイメージできる必然性のある課

題提示の工夫改善

③より意欲をもって仲間と取り組むための学習集団の育成

(2)改善の具体的方途と実践

①身に付けたい基礎・基本の学習内容を明確にし、課題意識を連続させるための指導計

画や学習資料等の工夫改善

・毎時間の指導の重点の位置付け

毎時間の身に付けたい基礎・基本の学習内容が、より具体的になるよう、次ペー

ジの例1、2の単元指導計画のように「本時のこれだけは」と称して項目を立て、

毎時間の評価規準をもとに、特に技能的な部分が色濃く出るように新たな単元指

導計画を作成した。

・ミニマグネットシートによるグループ課題の交流

グループの課題意識の交流によって、さらなる意欲化を図るために、ミニマグネ

ットシートを各グループに配付し、前時のゲームの様相・個人の姿の振り返りか

ら導き出したグループのめあてを掲示した。授業前に記入しておくので、各グル

ープのめあてが課題に合っているかどうか確認しながら、よりグループ課題が明

確になるようにした。

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例1:単元指導計画の工夫改善

従前の単元指導計画簡易版 改善した単元指導計画簡易版

学習内容 学習活動 教師の指導 教師の指導 本時のこれだけは

計画会

基底技能

抽出練習

とゲーム

リーグ戦

反省会

運動・集

・・・・

・・・・

・・・・

・・・・

運動・集団

・・・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・

運動・集団

・・・・・

・・・・

・・・・

・・・・

【評価規準】

「関心・意欲・態度」

○・・・・・・・・・・

「知識・理解」

○・・・・・・・・・・

オーバー、アンダーの向上

「思考・判断」

○・・・・・・・・・・

「技能」

カバーの動きの向上

球すじの安定

3段攻撃の意図

「技能」

○・・・・・・・・・・

3段攻撃の向上

「思考・判断」

○・・・・・・・・・・

グループ課題からの分析

「関心・意欲・態度」

○・・・・・・・・・・

「知識・理解」

○・・・・・・・・・・

例2:バレーボール(第2学年 男子)の改善した単元指導計画

単元指導計画 単元のねらい 技 能:ボールに絶えず体を向けてカバーし合いながら球すじを整え、安定した3段攻撃で攻め合うゲームができる。

態 度:うまくできない仲間に対してリーダーを中心に、練習やゲームの中でパスの技術やカバーの動きを示範して見せたり、手を取って教え合ったり、励まし合ったり

グループの勝利を目指して取り組もうとしている。

学び方:練習やゲームを通して、データをもとにグループのよさや課題点、一人一人の課題を明確にして、練習やゲームに生かそうとする。

学 習 内 容 学 習 活 動 教 師 の 指 導 本時のこれだけは運動の側面 集団の側面 運動の側面・集団の側面 運動の側面 集団の側面 評価規準

画1

【計画会】

・単元を通した学習計画を

理解し、単元の見通しを

もつことができる。

・めざす仲間の姿を確認

し、仲間同士による関わ

り合いを理解する

・教師の話を聞いて、単元の見通しをもつ。・グループ編制 7人ずつ、6グループ・役割分担 L:班の成果を出したり、まとまりを強くするために班員を

リードする。PO:グループや個人の成果を観察し、データを分析して班会

で問題点を指摘する。MO:グループの決まりが守られているのか観察し、班会で問

題点を指摘する。・きまり:めざす仲間になるための決まりを決める。

・個人ノートを使って、この単元の学習課題や見通し、学習の仕方を説明する。

・めざす姿について具体的なイメージをもたせる。

・学習カードの使い方やルールを説明する。

・めざす仲間の姿がイメージできるよう

に、きまりについて具体的に話す。

・バレーボールは、チームワークが勝敗

に大きく影響することを説明する。

「関心・意欲・態度」

バレーボールの学習に関心を持

さを味わえるように進んで取り組

する。

「知識・理解」

バレーボールのルールや特性、上

めの学習の進め方を理解している

■ルールを理解し、基本的なパスができ

【基底練習】○直上(キャッチ)オーバーハンドパス○対人パス(オーバーハンドパス・アンダーハンドパス)2

【基底練習】

・ボール操作を身に付ける。

・オーバーハンドパス

・アンダーハンドパス

・ネット越しの1対1

・ネット越しの3対3

・自分の役割を意識して、

そろって学習すること

ができる仲間になる。 ①ボールを相手の正面に投げる。投げ手:ペアで片方が手投げで相手の正面にボールを投げる。

②ボールを左右前後に振って投げる。

「思考・判断」施設や用具の取り扱い方、安全面

て心がけながら練習に取り組んで「技能」オーバーハンドパス、アンダーハ

スを落下点に入って体の正面でと上げることができる。■正面でとらえ、高く上げてパスができ

【抽出練習とゲーム】・3本以内で落とさないで返すゲームができる。・ボールの下に素早く入る・ボールにへそを向け、囲むように動く・ボールの高さ、上げる方向を意識する(相手コートに向かって)

「関心・意欲・態度」

練習やゲームの中で、仲間と教

励まし合って意欲的に取り組もう

「技能」

ボールの方向にへそを向け、カバ

識して、囲むように動くことがで

■常にボールに正対し、落とさないよう

動きを意識してボールを返すことができ

【抽出練習とゲーム】・3段攻撃を意図したゲームができる。・1本目を前衛に山ボールであげる

・2本目を整えて、パスアタックでねらって返す

・セッターを固定して球すじを整える

【抽出練習とゲーム】・3段攻撃を安定させたゲームができる。・球すじを安定させる・スイッチプレー

・うまくできない仲間に対

して、POやMOを中心に

して、練習やゲームの中

で、パスの技術やカバー

の動きを示範して見せ

たり、手を取って教えた

り、「どんまい」「おしい

よ」と励ましたりするこ

とができる仲間になる。

・一人一人が役割を果たして学習できる仲間になる。

「技能」

3 段攻撃を意図した1本目、2 本ールコントロールができる。(1本ールで前衛中央に、2本目はスパイてるよう整えて上げる)「思考・判断」グループの課題を、データをも

分析し、グループのよさや課題点、課題をもって練習に取り組んでい「技能」1-5のレシーブ隊形から、球す

えて3段攻撃で攻め合うゲームが■ポジションによる役割を理解し、球す

て、3段攻撃を意図したプレーができる

??

?

【リーグ戦】

・リーグ戦勝利のために、

球すじを整えて、安定し

た3段攻撃で攻め合う

ゲームができる。

・グループの勝利のために、教え励まし合ったり、真剣に要求したり、応えたりすることができる仲間になる。

○ネット越しの1対1○ ○

○ ○

○ ○

○移動円陣パス

○1本目を前衛中央に

返す練習

▲ ◎

○スパイク練習①ボール投げ

スイングの練習

②壁打ち

腕の振り下ろし、打点の確認

③ネット打ち

ネットを意識して打つ

④走りこんでスパイク練習

徐々に助走をつけて打つ

○ネット越しの3対3○ ○

○○

○ ○

・1本で返せないボールは、相手

コートに向けて落とさないよ

うにつなぐ。

○コート内でのカバーの練習

○2本目をネット際で平行に

上げる練習 (トス練習)

◎●

■※《発 展》

トスが上がったボールを、パス

アタックでねらって返す練習

【リーグ戦】

・25点2セットラリーポイント

・審判や記録のつけ方を確認する

・自分たちの班の課題を練習する

・練習方法を具体的に説明し、理

解しやすくする。

・ボールを正面でとる動き、落下

地点に入る動きが身に付くまで

繰り返し練習させる。

・なかなかうまくできない生徒に

ついて、アドバイスをする。

・ボールを落とさないためには、

カバーの動きももちろん大事だ

が、「○○さん」「はい」「カバー」

などの声が大切だということを

説明する。

・1本で相手コートに返せないと

きは、相手コートへ向けて、落

とさないでつなぐように説明す

る。

・移動円陣パスでは、ボールを触

らない人の動き、体の向きを徹

底させる。まずは、キャッチを

して確認する。

・コート内でのカバーの練習では、

レシーブをする人にへそを向け

て囲み、相手コートに向かって

ボールをつないでいくように示

範をして説明する。

・トス練習やスパイク練習では、

セッター役が安定したトスを上

げ、確実にスパイクできるよう

体の向きや入り方なども丁寧に

指導していく。

・リーグ戦に向けて、個人の技能

から要求することや、ポジショ

ンの配置を考え確認させる。

・自分の分担に従って、準備や片付けを

行うように声を掛ける。

・リーダーやPOがグループ会で指示が

しっかり出せるように、授業の最初に

集めるなどして、指導をする。

・リーダー、MOを中心にして声を出し、

素早く集合できているグループを紹

介し、認める。

・リーダーやPOを中心に教え合いがで

きているグループを紹介し、認める。

・教え合いなどが少ないグループに入

り、アドバイスの仕方を示し、活動を

促す。

・MOを中心として、「どんまい」「ナイ

スプレー」などと声を出し、ムードを

高めるように話す。

・得点が入ったときや、ファインプレー

が出たときは、喜びを表して、グルー

プの雰囲気を高めるように話す。

「技能」ボールに絶えず体を向けてカバながら球すじを整え、安定した3段攻撃ことができる。「知識・理解」ゲームの運営やルール、

法を理解している。

■勝利目指して戦術を考えた練習ができ

?

【反省会】

・球すじを整えて、安定し

た3段攻撃で攻め合うゲ

ームができたかどうか振

り返る。

・めざす仲間の姿になれた

かどうか振り返る。

L :司会・進行・総括をする

・学習課題に迫れたかどうか振り返る。 PO:班、個の成果をみんなに

提示する

・グループ活動全体を振り返る。 MO:きまりの守りぶりを提示

する

・学習課題にうまく迫れた班のリ

ーダーにバレーボールで学んだ

ことを語らせる。

・次単元の意欲化を図る。

・めざす仲間になるために価値ある姿を

示した個人や班を紹介し、その背景に

ある心情を価値づける。

「関心・意欲・態度」

グループでこれまでの学習の振

をしようとする。

■グループの高まりを認め合い、お互い

発見できる

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②ゲーム記録をもとに、ゲームの様相・個人の姿がイメージできる必然性のある課題提

示の工夫改善

ゲームの様相を客観的に把握するために、バレーボールでは「返球率」、「3本返

球率」、「3段攻撃率」などといったデータがよく活用される。コート2面使用で、

6グループ編制の場合は、各コートで1グループが審判や記録係として位置付くが、

4グループの場合やコート3面使用で6グループ編制の場合は、試合に出場しない

生徒しか残らないので、欠席者が多いときや、メンバー構成が6人ぎりぎりのとこ

ろでは記録をなかなかとることができないのが現状である。

「ゲーム記録」を確実にとる場合は、最低1グループにアナウンサーと記録者の

ペアで2名の係が必要になってくることからも、現実的に難しい場合が多い。だ

からといってただ単にゲームを行っていても、勝敗を中心とした感覚的な様相が

わかるだけにとどまってしまい、具体的に自分たちのグループのよさや課題が見

えてこない。ゲーム記録は、そうした様相を理解するためには、やはり必要なも

のであるといえる。

そこで、各グループ1名の生徒で記録がとりやすく、グループの様相が見えてく

るようなデータのとり方ができないものだろうかと考えた。

バレーボールの単元を通して「返球率」、学習内容の高まりに応じて「セッター

返球率」、および「3段攻撃数」という3つに絞ってデータをとっていくことにし

た。

「3段攻撃数(率)」については、今回は初歩的な3段攻撃を意図した様相から指

導しているため、失敗しても3段攻撃の形になっていたらカウントすることにし

た。

例1:従来のゲーム記録

回数 1 2 3 結果 回数 1 2 3 結果

1 36

2 37

3 38

4 39

5 40

6 41

7 42

8 43

9 44

10 45

11 46

12 47

13 48

14 49

15 50

16 51

17 52

18 53

19 54

20 55

21 56

22 57

23 58

24 59

25 60

26 61

27 62

28 63

29 64

30 65

31 66

32 67

33 68

34 69

35 70

サーブ サーブ

★記録者

回数 1 2 3 結果

71

72

73

74

75 %

76

77

78

79

80

81 %

82

83

84

85

86

87 例 1 2 3 結果

88 1 2 ○

89 2 2 ×

90 3 5 4 6×

91 4 5 3 5 8s○ ○

92 5 3 → 1 4 ○

93 6 3 → 2 4 8× ×

94 7 1 4× ×

95

96

97

98

99

100

101

102

103

104

105

サーブ

★返球率=返球成功数/飛来数

※記入例

サーブ

★3段攻撃率=スパイク数/飛来数

※サーブは飛来数には入れません。

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飛来数1本目がセッターに返った数

3段攻撃数 返球数

① ② ③ ④

回 回 回 回

本時の

データ

自チーム得点 相手チーム得点

④÷①×100

②÷①×100

③÷①×100

月 日 ( ) 第 時 ゲーム記録者

年 組 G ( )G VS ( )G

☆勝利のための次時の重点課題は?

勝 ち ・ 負 け

■グループ成績☆勝因・敗因はどこにあったのだろう?試 合 結 果

☆ 返球率

☆ セッター返球率

☆ 3段攻撃率

右のようなゲーム記録を基に、第4時 例2:新たに改善したゲーム記録

より「返球率」を記録し、第7時から3

段攻撃を意図した段階に入ることから、

前時の第6時より「1本目のセッター返

球率」「3段攻撃数(率)」を記録していっ

た。

ゲーム中は、「正」の字で記録していく

ため、途中でゲームに出場していた生徒

が交代しても、特に大きな問題もなく記

録することができた。

ゲーム終了後は、直ちに集計ができる

よう計算機をグループに1個ずつ用意し、

スムーズにグループ反省会が行えるよう

にした。

また、点数、データをもとに勝敗の原

因がどこにあるのか、次の時間はどんな

練習に重点を置くべきなのかが記録でき

るようにした。

毎時間のデータの推移と勝敗は以下のとお

りであった。

時 第4時 第5時 第6時 第7時 第8時 第9時

返球率 59.5% 82.4% 73.5% 63.2% 88.9% 70.7%セッター返球率 20.5% 31.6% 33.3% 15.0%

3段攻撃数 6 5 4 16返球率 47.6% 52.2% 68.3% 75.7% 75.7% 54.7%セッター返球率 14.7% ー 24.3% 28.1%

3段攻撃数 4 ー 5 11返球率 60.0% 45.0% 50.0% 56.2% 54.3% 44.0%セッター返球率 22.5% 21.8% 21.1% 27.1%

3段攻撃数 13 6 8 5返球率 57.1% 43.3% 48.9% 75.8% 73.9% 61.3%セッター返球率 4.4% 6.9% 8.7% 13.4%

3段攻撃数 2 2 3 3返球率 44.4% 46.9% 76.4% 82.6% 62.0% 68.0%セッター返球率 17.6% 17.4% 26.0% 29.0%

3段攻撃数 10 9 12 12返球率 56.5% 54.5% 65.6% 79.4% 56.0% 48.5%セッター返球率 28.1% 32.3% 14.0% 11.4%

3段攻撃数 5 9 12 5

5G

6G

1G

2G

3G

4G

こうした推移表をもとに、データから考えられること、グループの実態が表れ

ているところをピックアップしながら課題提示を行い、練習メニューを提示して

いく。

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また、より必然をもって課題に向かうために、ゲームの様相や個人の姿に応じた

練習方法など、生徒が自分たちで判断できるように提示した。

【第6時の場合】3本以内で落とさないで返すゲーム (カバーの動き) ○「1Gは、なぜ一気に返球率がアップしたのだろう」

・みんなの足が常に動いていて、囲む意識が高かった。

・「構えて」の声で低く構えて、1本目のボールをネット近くに高く上げていた。

・A男さんが、あきらめないでボールの真下に入り込んでいた。

→練習メニューの提示

・移動円陣パス ・投げ入れからのカバー練習 ・追いかけレシーブ

【第7時の場合】3段攻撃を意図したゲーム (1本目を山ボールで)

○「5Gは、なぜ一気に返球率がアップしたのだろう」

・追いかけレシーブで練習して、つながるようになった。

・ねらわれやすいところを重点に、投げ入れの練習をして1本目を確実に上げ

た。 ・パスの苦手なB男さんを、囲むようにみんなでカバーした。

○「3Gは、22.5%も1本目がセッターに返り、3段攻撃は13回もできたの

だろう」

・1本目が確実にネット近くに上がるように、1-5 のレシーブ隊形を意識して動けていた。

・1本目が高くネット近くに上がったので、セッター

役がボールを整えやすくなりトスがうまく上がった。

→練習メニューの提示

・ 1本目を前衛中央に上げるレシーブ練習

・追いかけレシーブ

・ トス練習

2本目をネット際で平行に上げる練習

・スパイク練習 ①投げ上げから

②アタッカーのパスをトスして

【第8時の場合】3段攻撃を意図したゲーム(2本目を整えてパスアタックで)

○「5Gは82.6%、6Gは79.4%の返球率、3段攻撃数が9回ずつで勝利

した要因を探ろう」

・1本目が上げられなかったときは、確実に相手コートに返し、1 本目がネット近

くに高く上がったときには、パスアタックやスパイクで攻撃できた。

・サーブレシーブが乱れても、つないで相手コートの奥に返すことができた。

→練習メニューの提示

・スパイク練習 ①投げ上げから

②アタッカーのパスをトスして

③投げ入れからサーブレシーブ→トス

・サーブ練習

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第10時、第11時については、総合練習という形でグループの現状を判断して、

グループで練習内容、方法を選択して取り組んだ。

③より意欲をもって仲間と取り組むための学習集団の育成

まず、リーダーが1時間の授業の流れを理解し、グループに的確に指示を出しな

がら授業に取り組むことができるように、グループファイルを作成し、1時間の流

れを事前に配付した。(※資料4 参照)

学習の流れ

時間 活 動 内 容 リーダー PO MO

準備体操

5分

○素早く着替えて集合し、アリーナ3周(ネット準備のときは、アリーナ2周)○ゼッケンを着けて準備体操後、G計画会※体育係はホワイトボードと時計準備○G課題、個人課題の確認とG練習

・移動の呼びかけ・真っ先に行動・G計画会の司会・G課題の確認

・集合の呼びかけ・個人課題の確認・ボード記入※ファイル持参

・集合の呼びかけ・G会の姿勢指示・MOカードで確認

全体会 7分

○前時の姿・様相の振り返り○全体課題の確認

・集合の呼びかけ・聞く姿勢の指示

・整列の呼びかけ・整列のサポート

・整列の呼びかけ・聞く姿勢の徹底・態度の観察

前半練習

12分

○全体課題を受けて、G課題を意識しながら練習を進める・心のこもった教え合い・リーダーを中心にまとまった練習

・練習の具体的な指示とリード・Gの仲間を個々にサポート

・技能面でのアドバイス・特に大切にしたい仲間への教え合い

・練習に取り組む姿勢を観察・態度面の注意・率先して声だし

中間反省会

3分

○前半練習の課題点を確認し、後半練習(練習ゲーム)のめあてをもつ

・集合の呼びかけ・聞く姿勢の指示

・整列の呼びかけ・整列のサポート・技能面の指摘

・整列の呼びかけ・聞く姿勢の徹底・態度の観察

(前半部分のみ)

【第9時の場合】3段攻撃を意図したゲーム (セッター固定で球すじを安定)

○「返球率は安定してきたけれど、3段攻撃数をより安定させるにはどうすればよ

いのだろう」

・スイッチプレーで、セッター役を決めている

グループは、3段攻撃数が安定していた。

・アタッカーが、前衛に必ず一人は位置付くよう

なローテーションのグループは、3段攻撃が安 定していた。

→練習メニューの提示

☆セッターを固定する

・投げ入れからの3段攻撃練習

投げ入れからサーブレシーブ→

トス→スパイク

(例図:練習メニューの具体図)

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リーダー・PO・MOがそれぞれ何をしなくてはならないかを明確にすること

で、見通しをもって行動できるようにした。

また、1時間の授業に意欲的に取り組むための「5つのこだわり」を生徒に提

示し、常に体育の授業でこだわってほしい願いを示した。

《体育科授業 5つのこだわり》

3 授業改善後の成果

(1)身に付けたい基礎・基本の学習内容を明確にし、課題意識を連続させるための指

導計画や学習資料等の工夫改善

前時までのゲームの様相・個人の姿を明らかにし、その課題点を次の時間にどのよ

うに解決させていけばよいのか、そのためにどんな練習を行えばよいのかといったつ

ながりの中での課題提示によって、意識が途切れることなく意欲的にかつ主体的に次

の課題に向かう生徒が増えた。

また、具体的な練習方法の提示によって、自分たちで振り返った課題点を補うた

めによりよい練習を選択して、練習に取り組む生徒が増えた。

■バレーボールの単元終了後の生徒の感想より

・パスがつながるように、自分はなるべく高くボールを上げるように意識しな

がら練習できた。

・レシーブで、ボールをうまく操作できるようになったと感じています。やわ

らかい球はもちろん、強い球でも、届かないところに飛んできた球でも、積

極的に取りに行って、次につながるようにできるだけ真ん中に高いボールを

返すことができたからです。

・相手のサーブで、自分のところにボールが来たときは、セッターに返せるよ

うになった。

毎回の具体的な姿の想起によって、感想文の下線部のようにイメージをもって練習

したこと、具体的に意識したことが成果として表れた。課題意識を連続させた練習の

中で、身に付けた技能を実感して味わうことができたと考える。

「本時のこれだけは」を設定したことで、教師側もゲームの中などで適切な励まし、

①素早い集合、大きな返事

集合、整列の声をかけた時は、大きな声で返事をし、ダッシュで集合

する。

また、指示されたり、名前を呼ばれたりした時は、大きな声で返事を

する。

②時間いっぱい仲間とともに運動に取り組む。

集中して練習に取り組み、仲間とともに効率よく練習する。

③自分の役割を責任もって果たす。

全員が一つの役割を持ち、その役割を責任をもって果たす。

④基礎・基本の定着を図る5分間練習

基礎的な技術を身に付けるために、個人やペア、グループで5分間練

習に取り組み、基礎・基本の定着を図る。

⑤グループの課題点や弱点をみつけ、練習方法を工夫する。

ゲーム記録や前時の様相から、課題を見付け、主体的に練習を工夫す

る。

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ポイントの指示などが明確になっていたため、同じような状況の中で、生徒同士が教

え合ったり、声をかけ合ったりするポイントがわかり、グループ内のアドバイスがよ

り活発になってきた。

また、ミニマグネットシートにグループ課題を記入して、全体会で交流すること

より、計画会で自分たちが本時どんな練習に取り組んだらよいのかが明確になったた

め、グループでの相互援助活動が活発に行われ、意欲的に取り組む生徒が増えてきた。

さらには、そうした「教え合い」の場が広がることで、仲間同士の温かさや集団

しての凝集度が高まった。

■ミニマグネットシートによる第6時のグループ課題の一例

※カバーの動きについて

(2)ゲーム記録をもとに、ゲームの様相・個人の姿がイメージできる必然性のある課

題提示の工夫改善

新たな形式のゲーム記録表を用いて練習ゲームに取り組んだが、毎時間のゲームデ

ータをもとに向上がみられたときはその要因を探り、低くなったときには、その原因

がどこにあるのか、改善すべき点はどこなのかをグループで突き詰めてきた。

ゲーム記録をもとにしたゲームの様相がイメージできる課題提示により、毎時間の

分析から、徐々に自分たちで提示された練習メニューから選択して取り組んだり、独

自に「特訓コーナー」として、うまくできない部分を取り出して練習したりする姿が

見られるようになってきた。

■単元終了後、データを活用した授業についての生徒の感想より

・返球率などのデータでは、何が原因で、何がよかったのかを理解することが

できた。次のゲームに勝つためのポイントを探って、次のプレー、ゲームに

生かせたので、敗因を自分のグループでは何だったのかを知ることができて

とても役に立った。

・「今日はどうして負けたのだろう」という時に、データ表を見ると、最初のこ

ろは返球率が低くて、あまり相手に返していなくて、「次は、円陣パスを練習

しよう」とか、後半になると、セッター返球率や3段攻撃率が低くて、「次は

セッターに返そう」とか「3段攻撃の練習をしよう」など、次は何の練習を

したり、試合中に何を意識したりすればよいかわかった。

(次ページへ続く)

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・データをとったことにより、特に返球率を見て、自分たちの成長がよくわか

ったし、セッター返球率や3段攻撃率などを見ると、今度はどこを頑張れば

よいかがわかる。やはり、セッター返球数や3段攻撃数が低いときには、返

球率もちょっと悪かった。データをとることによって、次への課題をすぐ考

えることができた。一発で返すのではなく、仲間と協力して、セッターにき

ちんと返すとか、3段攻撃につなげてボールを返す方が、より強力な球を打

ち込めることがわかった。

・自分たちには、何が足らなかったのかが分かるし、課題に対してどのような

作戦をとるのか、また、試合中に仲間への呼びかけなどもしやすくなると思

うから役に立つと思うし、自分たちにもそういうことが役に立ったと思いま

す。

・まず、データをとったことによって、課題点を明確にあらわすことができて

よかったと思います。課題点が分かったら、それを直せばよいので、3段攻

撃が課題だったら、その練習を徹底的に取り組むことができて、効率のよい

練習をすることができたので、上達することができました。

生徒の感想の中にもあるように、ゲームのデータ提示がグループの課題点を明確に

するために有効に働き、効率よく自分たちの課題に見合った練習に、より意欲的に取

り組むことができた。

連続した必然性のある課題意識をもってゲームに向かう中で、今どんなゲームの様

相・個人の姿を自分たちは目指しているのか、そのために自分が頑張ることは何かが

理解できていたため、戦術面だけにとどまらず、集団面での仲間への働きかけにまで

高い意識をもって取り組むことができていた。

また、教師側もその意識をグループごとに把握できていたため、適切なアドバイス

がその場その場でうまく機能した。

(3)より意欲をもって仲間と取り組むための学習集団の育成

「5つのこだわり」を意識して授業に臨み、リーダーを位置付けてそれぞれの役割

を確実に果たすことができたことで、それぞれのこだわりに関わって生徒は単元終了

後に以下のような感想をもった。

①素早い集合、大きな返事

・リーダーがいつもグループを引っ張ってくれたので、みんなでそろってキ

ビキビ・テキパキ行動できた。

・「ヤル気を示すあいさつ」を心がけていたので、気合いも入り、真剣に取り

組もうとする気になった。

→できないときは常にやり直しをし、できたときはきちんと認めたことで、リ

ーダーの指示にしたがって素早い動きができるようになってきた。

②時間いっぱい仲間とともに運動に取り組む

・チームが一丸となって協力して練習に取り組めた。昼休みに自主的にみんな

で集まって練習するくらい熱中できたのがグループの財産だ。

→グループの凝集度が高まるにつれ、自分たちで声をかけ合って時間いっぱい

運動に取り組む姿が見られた。

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③自分の役割を責任をもって果たす

・声かけをたくさんした。プレーでは、ほとんど何もできないので、せめて声

かけはしようと頑張った。声かけによって味方のテンションが上がるといい

なと思ったから。また、うまくはできないけれど、ボールから逃げるという

ことは絶対にしなかった。

→一人一役で役割を決めてその役割の内容を具体的に示し、確実に見届けてき

たことで、それぞれが自分の決められた役割を果たすことができた。また、

自分の役割だけでなく、自分のできる範囲でグループに貢献しようとする姿

が見られるようになってきた。

④基礎・基本の定着を図る5分間練習

・毎回直上パスを練習してきたけれど、だんだん回数が続けてできるようにな

ってきたことがうれしかった。ゲームで強いスパイクを前よりレシーブでき

るようになった。

→直上パスのドリル練習を中心に、前時までのボール操作の既習技術を反復練

習するために、授業のはじめに練習を組み入れたことで、ボール操作の技能

向上に役立ったことを実感できた。

⑤グループの課題点や弱点をみつけ、練習方法を工夫する

・ゲーム記録を毎時間反省に使ってきたけれど、自分たちの今の課題がよく分

かったので、「今日は対人パスで強く打って返し合おう」といった練習方法

をグループで話し合うことができた。

→ゲーム記録をもとに、グループの課題をどのように分析するとよいのかを、

リーダーに指導したり、抽出したグループのデータから、どのようにゲーム

の様相を見出していくとよいのかを示したりしたことで、自分たちで工夫し

て練習に取り組む姿が見られるようになってきた。

リーダーを中心に、意欲的に自分たちの力で考え、練習に取り組んできたことで、

集団面の高まりを多くの生徒が感じとることができた。リーグ戦では、白熱した展開

のなかで一球への集中力、一つ一つのプレーへの真剣味が随所に表れていた。

課題意識をもって練習に取り組むには、グループの凝集度の高まりが必要不可欠

となる。相互援助活動の高まりから、なかなかうまく技能が高まらなくて、ともすれ

ば消極的になりがちな生徒も、「せめて声かけはしようと頑張った。」と記している。

さらには、「ボールから逃げるということは絶対にしなかった。」と、自分のグループ

への貢献に力強く語れるようになったことも、大きな成長であると考える。こうした

温かさ、力強さのある集団の成長も、徹してこだわった成果であると考える。