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労働基準法 とは 昭和22年 に制定・ 施行 された労働基準法 は ,憲 27条 2項 「賃金,就 業時 ,休 息その 勤労条件に関する基準は ,法 律で これを定 める」 とい う規定 に直接 根拠を置 くといわれています。一方 ,労 働基準法は ,戦 の工場法 を発祥 とす る労働 における取締法 と しての 側面 も有 しています。 そ もそ も契約 は対等 な立場で締結 され る限 り ,そ 内容 決定は自由である きとす るのが民法 (民 事上のルールを定 めた‐ 般法)の 原則です。 しか し , 使用者 と労働者 との 関係 に限 ってみると ,情 質及 び量や交渉力 において労 使当事者間 に格差が存在す ること ,一 般 に労働者 は労働契約 締結や継続を望 むため 労働契約 内容 について使用者 に対 して強 く主張 しに くいこと等か ら , 契約締結において使用者が有利な立場にあることは否めま せん したが って,労 働基準法は労働者保護を実現するため ,① 国家が,労 働契約 契約内容たる労働条件について最低基準を定 ,そ 向上 を図 ってい くこと とし ,② 使用者 に対す る罰則 を背景 にその 実効性を確保することとしています。 また,①,② を実現す るため ,③ 民法 原則 の一部 に修正 を加え る特別法 (一 般法より適用範囲 の狭 特別な事 柄 につい て定めた 法律 の こと )としての性質 も有 しています6 これ らの 特徴から労働基準法は :賃 金や労働時間等に関する細かい 規定を設 けています し ,労 働契約や解雇,集 団的に労働条件を規律する就業規貝 1に 関し て重要 な通達がた くさん出題 されて います。 いつた特徴的な部分は ,試 対策上の 最重要 ポイ ン トですが,受 験生が苦手 とす る箇所で もあ ります。やみ くもに学習す るのではな く ,常 に 3つの 特徴を頭 に置 きなが ら学習 を進 めると 理解が深 ま ります。 どの 法律科 目にもいえることなのですが,法 の趣 旨を しっか り理解 してか , 日常 学習を進め ,細 かい 部分で立 ち止 まって しまった ら ,必 ず法律 の 旨に立 ち返 ってみ ることを習慣 けるとよいで しょう。

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労 働 基 準 法 とは

昭和22年に制定・施行された労働基準法は,憲法27条 2項の「賃金,就業時

間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める」という規定

に直接の根拠を置くといわれています。一方で,労働基準法は,戦前の工場法

を発祥とする労働における取締法としての側面も有しています。

そもそも契約は対等な立場で締結される限り,その内容の決定は自由である

べきとするのが民法 (民事上のルールを定めた‐般法)の原則です。しかし,

使用者と労働者との関係に限ってみると,情報の質及び量や交渉力において労

使当事者間に格差が存在すること,一般に労働者は労働契約の締結や継続を望

むため労働契約の内容について使用者に対して強く主張しにくいこと等から,

契約締結において使用者が有利な立場にあることは否めません。

したがって,労働基準法は労働者保護を実現するため,①国家が,労働契約

の契約内容たる労働条件について最低基準を定め,その向上を図っていくこと

とし,②使用者に対する罰則を背景にその実効性を確保することとしています。

また,①,②を実現するため,③民法の原則の一部に修正を加える特別法 (一

般法より適用範囲の狭い特別な事柄について定めた法律のこと)と しての性質

も有しています6

これらの特徴から労働基準法は:賃金や労働時間等に関する細かい規定を設

けていますし,労働契約や解雇,集団的に労働条件を規律する就業規貝1に 関し

て重要な通達がたくさん出題されています。こういつた特徴的な部分は,試験

対策上の最重要ポイントですが,受験生が苦手とする箇所でもあります。やみ

くもに学習するのではなく,常に3つ の特徴を頭に置きながら学習を進めると

理解が深まります。

どの法律科目にもいえることなのですが,法律の趣旨をしっかり理解してか

ら, 日常の学習を進め,細かい部分で立ち止まってしまったら,必ず法律の趣

旨に立ち返ってみることを習慣づけるとよいでしょう。

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SECT10N

1-1適用の範囲

1-2適用除外

1-3国及び公共団体についての適用

2-1労働者の定義

2-2使用者の定義

解雇・退職

閂 学習項目とポイント

1/適 用/C□ 適用の範囲

労働基準法の適用単位や事業の種類について学習します。

(□ 適用除外

労働基準法が適用されない者等について学習します。

(□ 国及び公共団体についての適用

国家公務員や地方公務員について,労働基準法の適用の有無などを学習します。

2/定 義/(□ 労働者の定義

労働者の定義,労働基準法の労働者として認められる者・認められない者の具体

例を学習 します。

1□ 使用者の定義

使用者の定義及び使用者に該当する者の具体例について学習 します。併せて,派

遣労働者や出向労働者についての労働基準法の適用の特例についても学習 します。

特に派遣労働者に関 しては,労働基準法の規定のうち,「派遣元」に適用する規定

と,「派遣先」に適用する規定がありますので,注意 しましょう。

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以下同じ。■1

以下同じ。

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※ :数字は,択‐式試験の選択肢の数を示す。

※ :○数字は,選択式試験の空欄の数を示す。

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項 目 条 文 平20 用F21 ヨ「22 ヨ「 23 ヨ「 24 平が W'6適用除外 法116条 1 1

労働者の定義 法 9条 1

使用者の定義 法10条 ① 11賛 11「 ■

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↓ヽ ノ

1.適用事業

労働基準法は,労働者保護の基本法として,労働条件の最低基準を定め

るものであり,原貝Jと して,労働者を使用するすべての事業又は事務所

(こ れらを「事業」と総称する)に適用される。

ただし,法定労働時間の特例,一斉休憩の例外,適用の除外,児童 0年

少者の規定の適用など,事業の種類ごとに区分して適用する場合もあるた

め法別表 1に おいて, 1号から15号 まで15種類の事業を列挙している。な

お,労働基準法の適用は:法別表 1に掲げられている事業に限られるもの

ではない。

2.事 業

(1)事業とは |

「事業」とは,業として継続的に行われるものをいい,営利の目的を

もって行われるか否かは間われない。

(2)適用単位

H l1 3 31

基発168号

「事業」とは,工場,鉱山,事務所,店舗のように一定の場所におい 1回 No l

【参 考】法Bll表 1(法律条文は巻末参照)

工業的業種

農林水産

農林業 畜水産業

非工業的業種

て相関連する組織の下に業として継続的に行われる作業の一体をいい,

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必ず しもいわゆる経営上す体をなす支店,工場等を総合 した全事業を指

すものではない。つまり,一の事業であるか否かは主として同一の場所

で行われているか否かによらて決定されるのが原貝Jであるが,次のよぅ

な例外がある。

① 同一の場所であっても,労働の態様が著しく異ならてぃる部門があ

る場合に,その部門が主たる部門との関連において従事労働者,労務

管理等が明確に区分され,かつ,主たる部門と切り離して法の適用を

定めることが適当と認められるときは,その事業は一つの独立した事

業と考えられる。

② 場所的に分散している事業であっても,出張所,支店等で規模が著

しく小さく,一つの事業という程度の独立性がないもの (例 えば,新

聞社の支社の通信部について, 1名 の記者のみが連絡要員として常駐

しているにすぎない場合など)は,そ のすぐ上位の機構と一括して一

つの事業として取り扱われる。

(3)属地主義

労働基準法は行政取締法規として, 日本国内にある事業にのみ適用が

あるので,国外にある日本の商社,銀行等の支店,出張所等であって事

業としての実態を備えるものにっいては,適用はない。

3。 その他

(1)外国人の適用

日本国内にある外国人は,原則として, 日本人と区別なく法の適用を

受けるので,外国人の経営する会社,外国人労働者等についても,労働

基準法は全面的に適用される。なお;不法就労者に対しても,労働者と

しての実態があれば,労働基準法等の労働保護法規の適用がある。

(0 事業に係る届出等

同一の労働基準監督署管内に2以上の事業場があるときは,各事業場

に係る労働基準法に基づく報告又は届出については,当該企業内の組織

上,各事業場の長より上位の使用者が,‐ とりまとめて当該労働基準監督

署に報告又は届出を行うことは差し支えない。

H l1 3 31

基発168号

S.23.5.20

基発799号

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§1 適用等

1 派遣中の労働者に関 しては,派遣先の使用者が義務を負うことになる規定のうち,事業の種

類によって適用される基準が異なる規定については,派遣先の事業に適用される基準を適用す

る (S6166基発333号 )。

2 外国人の技能実習制度において,技能実習生は入国1年目から在留資格「技能実習」により

在留することとなり,ま た,入国 1年目から労働基準法の労働者として労働基準関係法令の適

用を受けることとなる。なお,入国後一定期間は講習 (座学)を行うことになっているが,雇

用契約に基づかない講習の期間中は,指揮監督や報酬を受けなtヽ ことから労働基準法の労働者

に該当しないため,労働基準関係法令は適用されない (H2228基発0208第 2号 )。

CI憂 1適用除外 て116条)

目団No207,208

① 第 1条から第11条まで,次項,第 117条から第119条まで及び第121条の規定を除き,労働

基準法は,船員法第1条第 1項に規定する船員については,適用しない。

② 労働基準法は,同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については,適用しない。

(1)船員法による船員

船員法 1条 1項に規定する船員にもぃては,原則として,船員法の定め

が適用されるため,労働基準法は適用されない。ただし,総則 (1条, 2

条といった労働憲章的部分等)及び罰則の■部は適用がある。

(2)同居の親族のみを使用する事業 ‐ ‐ ‐ ‐

同居の親族のみを使用する事業について労働基準法を適用しないことと

しているのは,事業主とその同居の親族との関係を■般の労働関係として

取り扱うことは不適当と認められるからである。

なお,同居の親族とともに他人を 1人でも使用していれば,その事業は

適用事業となる。

法116条 1

S5442基発153号

国 h207

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(3)家事使用人

家事使用人に労働基準法が適用されないのは,家事労働は家庭における

私生活と密着 していて,その労働基準を定めることは困難であり,ま た,

監督にもなじまないからである。

例えば,法人に雇い入れられた者であっても,その役員等の家庭におい

て,その家族の指揮命令の下で家事一般に従事する者は,家事使用人であ

り,労働基準法は適用されない。 これに対 して,個人家庭における家事を

事業として請け負う者に雇われて,その指岬命令の下に,当該家事を行う者

は家事使用人には該当しないため,労働基準法が適用される。

※ :家事使用人は労働基準法の適用除外者であるため,家事使用人と雇主との間

に結ばれる家事一般に従事するための契約は,民法上の雇用契約 (雇用は,当

事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し,相手方がこれに対し

てその報酬を与えることを約することによって,その効力を生ずる。)である

|:ぶ:労働基準法が適角きれる労働契約そはなぃ: | ‐ ■ ■

労働基準法は適用されません

H l1 3 31

発基168号

国 2ヽ07,208

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§1 適用等

C同 国及び公共団体についての適用 (112条 )

労働基準法及び労働基準法に基づいて発する命令は,国,都道府県,市町村その他これに準

ずべきものについても適用あるものとする。 1 ‐

実際に1は ,1国家公務員法や地方公務員法が適用されているので,公務員に

対チ乞造角は次のようにならそいる: ‐

(1)国家公務員 《2)を 除 く)

二般職に属する国家公務員については,労働基準法及びこれに基づいて

発せ られる命令 は適用 されない。

(2)特定独立行政法人の職員

1特定独立行政法人の職員は,国家公務員であるが,労働基準法が適用 さ

れる。

※ :特定独立行政法人以外の独立行政法人の職員は,国家公務員で|ま なく,労働

基準法を全面的に適用することとされている。

(3)地方公務員

一般職 に属す る職員 については, 2条 (労働条件の決定),14条 2項及 び

3項 (有期労働契約基準:助言及び指導), 24条 1項 (通貨・直接・仝額払いの原則),

32条の 3か ら32条の 5ま で (フ レックスタイム制, 1年単位の変形労働時間制, 1週

間単位の非定型的変形労働時間制), 37条 3項 (割増賃金の代替休暇), 38条の 2第

2項及び 3項 (事業場外労働に関するみなし労働時間制), 38条 の 3(専門業務型裁

量労働制), 3&条 の 4(企画業務型裁量労働制), 39条 61頁 (年次有給体暇Q計画的付

与), 75条か ら93条まで (災害補償及び就業規則)及び102条 α 仰基準監督官の職

務)の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は適用されな、ヽが, こ

れら以外の規定については適用される。 |

1 地方公務員に関しては,法別表 1第 1号~10号,13号~15号 までに掲げる事業に従事する職

員の場合を除き,労働基準監督機関の職権は,地方公共団体の人事委員会又はその委任を受け

た同委員会の委員 (人事委員会を置かない地方公共団体においては,地方公共団体の長)が行

う (H.1732基発0302005号 )。

H17:32基発0302005

国家公務員

法附則16条

特定独立行政法人の労

寧冒螢裡騨条

H_13 2122

基発93号

地方公務員

法58条 3項