化学実験室の安全管理 - chem.tsukuba.ac.jp ·...

２．化学実験室の安全管理（講師：中本）

３．化学物質の管理（講師：長友）

４．実験系廃棄物の管理（講師：山村）

５．化学物質の危険性・有害性の調査法（講師：百武）

1. 安全に実験を行うための心構え、基本的注意事項

2. 混ぜるな危険！

3. 取扱要注意化学物質　? 事故例、対処法?

4. 安全な服装、消火器について

5. 参考図書、　web site

平成22年度化学物質取扱者のための安全衛生講習会

１．化学物質による健康障害の防止（講師：野本）

重大な事故

軽微な事故

ヒヤリとしたが大事には至らなかった事故

1

29

300

::

ハインリッヒの法則　　　ヒヤリハット　事故例


例えば、　　ガラス器具を割った。　　試薬をこぼした。

例えば、切り傷、火傷

例えば、失明や死亡事故

１件の大事故の背景には２９件の小事故があり、さらにその背後に３００件の事故寸前のヒヤリとする出来事が潜んでいる

毎日新聞のコラムから

リスク

ルール違反

危険

境　　　　　　界

多

少

小大

ヒヤリ·

ハット

経験知識想像力+ +

∝

安全

リスクの過小評価

実験者の心構え化学物質の基礎知識

潜在的危険性

∝最先端の科学技術　（？）

不注意不注意知識不足知識不足×× 事故==

安全==

（１）　実験の危険度を想定する。

（２）　無理な実験はしない。

（３）　周到な準備が必要である。

（４）　事故の対策を予め点検。

（５）　後始末をおろそかにしない。

「実験を安全に行うために」化学同人編集部　より抜粋


(経験) + (知識) + (想像力)

深夜（に限らず）単独実験は禁止。

保護メガネ着用。　コンタクトレンズは危険

避難路の確保、消火器の確認

無人の実験室でも事故は起こる。　ラベルなし、古い薬品、卒業生のサンプル

潜在的危険性

安全ç è 危険

２．化学実験室の安全管理




4. 消火器の使い方

5. 参考図書


家庭用塩素系漂白剤　+　酸　　　　　　塩素

次亜塩素酸ナトリウム(Sodium hypoclorite)

NaClO 2 HCl NaCl Cl2 H2O+ ++塩素

3. 混ぜるな危険！「化学実験の安全指針」日本化学会より抜粋

混合あるいは接触することで、元の状態より爆発、発火、有害物質発生などの危険性が高まる２つ以上の物質の組み合わせのこと。

混触危険物質


酸酸

ハロゲン系溶媒エーテル系溶媒

アセトンアセトン

エタノール硫酸

活性炭

NH3 （アンモニア）

DMF

ハロゲン (Cl2, Br2)

LiAlH4

次亜塩素酸塩 (NaClO)　　　シアン化合物 (KCN)

アルカリ金属 (Li, Na, K)

強いルイス酸 (TiCl4, BCl3)

臭素　(Br2)　　

過酸化水素 (H2O2)

過塩素酸あるいは硝酸銀KMnO4

酸化剤（KMnO4 やCrO3）

Hg （水銀）

金属ナトリウム (Na)

アセチレンガス

過酸化ベンゾイル

–

–

–

–

–

–

–

–

–

–

–

–

–

-実験室で実際によく使う試薬を例に-

1

2

3

4

5

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7

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12

13

実験室でよく使う溶媒薬品に　混ぜてはいけないもの爆発

+

-

○

-

-

○

○

○○

○

○

○

○○

○

有害

○

○

○

-

○

○

-

-

-

-

-

-

-

危険性

A

AA

A

C

C

B

A

A

A

B

A

AA

B


次亜塩素酸ナトリウム(Sodium hypoclorite)

NaClO 2 HCl NaCl Cl2 H2O+ ++塩素

シアン化カリウム [青酸カリ](Potassium cyanide)

KCN HCl KCl HCN+ +シアン化水素 [青酸ガス]　（Hydrogen cyanide）

実験室でよく使う溶媒薬品

に　混ぜてはいけないもの

酸　酸　



エタノール

次亜塩素酸塩　　シアン化合物アルカリ金属やアミン強いルイス酸臭素　　　過酸化水素過塩素酸あるいは硝酸銀

爆発+-

○--

○○

有害物質○○○-

○○-

危険性A

AAACCBA

–––––––

酸　酸　



エタノール


爆発+-

○--

○○


○○-

危険性A

AAACCBA

–––––––


ジクロロメタンクロロホルム四塩化炭素　　　　　　　など

CH2Cl2CHCl3CCl4

LiNaK

+短い誘導期をおいて爆発的な反応がおこる。　ハロゲン系溶媒の乾燥にアルカリ金属を用いてはならない。

アルカリ金属ハロゲン系溶媒

アミン塩基性物質nBuLi

激しい反応や爆発が起こることもある。塩基性化合物の抽出にハロゲン系溶媒を用いない方が安全。

爆発発火



酸　酸　



エタノール


爆発+-

○--

○○


○○-

危険性A

AAACCBA

–––––––

OO

OO

OO

O


など

THF

TiCl4BCl3conc.H2SO4CF3SO3H

+激しく発熱する。大スケールの場合は吹きこぼれる恐れがあるので、危険。

THF+強酸　=　開環重合反応

強酸（ルイス酸、プロトン酸）エーテル系溶媒

エーテル

ジイソプロピルエーテル

DME (ジメトキシエタン)

など

1,4-ジオキサン



酸　酸　



エタノール


爆発+-

○--

○○


○○-

危険性A

AAACCBA

–––––––


他にもO

EtOBr Ph Br

ブロモ酢酸エチルベンジルブロミド

O

PhCl

クロロアセトフェノン

> >

+

催涙性

臭素アセトン

OBr2

O

Br HBr+

ブロモアセトン

有害性



酸　酸　



エタノール


爆発+-

○--

○○


○○-

危険性A

AAACCBA

–––––––

3. 混ぜるな危険！実験室でよく使う

溶媒薬品


HO OOH

O O

OO

OO

O

OO

O� � � � � � � � � etc.

過酸化アセトン (acetone peroxide) 爆発性

H2O2 過酸化水素

}濃縮単離　　　しない加熱衝撃を加えない

+

催涙性

臭素アセトン

OBr2

O

Br HBr+

ブロモアセトン

有害性

酸　酸　



エタノール


爆発+-

○--

○○


○○-

危険性A

AAACCBA

–––––––


過塩素酸HClO4

エタノールC2H5OH

+

O

ClOO

O

EtO

ClOO

O

H

過塩素酸エステル

爆発

過塩素酸アンモニウム(Ammonium perchlorate)

NH4ClO4

過塩素酸カリウム(Potassium perchlorate)

KClO4

硝酸銀

AgNO3

硝酸

HNO3++

エタノール

C2H5OH

雷酸銀

Ag-O-N=C:爆発

OH








5. 参考図書

３類：自然発火性物質　　　禁水性物質４類：引火性液体

１類：酸化性物質５類：自己反応性物質６類：酸化性液体

4. 取扱要注意化学物質

爆発性物質発火性物質有害物質

アルカリ金属アルキルリチウム

(MeLi, nBuLi, tBuLi)金属水素化物

(LiAlH4, KH, CaH2)

　　　　　　還元剤

”毒劇法” で規制。無機物　　As, Hg, Pb, Cd, Be, Tl, Sn有機物　　発がん性、刺激性、腐食性

危険物

有害性爆発発火毒禁水

熱、光、衝撃等により爆発を起こしやすい物質。自己反応性物質。

過酸化物硝酸エステルニトロ化合物

ジアゾ過塩素酸エステル

酸化剤一般

空気や水に触れると発熱、発火する物質。　自然発火性物質、禁水性物質

呼吸、経口、皮膚からの摂取により、人体 (あるいは環境

に) 重大な害を及ぼす物質

H2O2 Li, Na, K メチル化剤 = 発がん性　CH3I, Me2SO4, FSO3Me

-O-O--O-NO2-NO2-N=N-C-OClO3

消防法毒劇法


爆発性物質爆発H2O2 過酸化水素　：　

30~35% の水溶液が市販されている。安価で、反応後の副生成物が水だけなので、優れた酸化剤として使われているが、爆発事故の報告も多い。蒸留によって９５％まで濃縮できるが、６０％以上のものは大変危険である。

bp. 63 °C /23 mmHg

有機化学実験の事故・危険—事例に学ぶ身の守り方— (丸善) P12

O

OH3C CH3

O

+O

OH3COH30% H2O2

濃縮時に爆発

消防法危険物　６類


過酸化物爆発-O-O-

過酸化物の検出方法

過酸化物の除去方法以下のいずれかの方法

1. 10% KI 溶液1 ml を新しく調製し、希硫酸を加え酸性にする。2. テストする溶液を1~2 ml 加え、振り混ぜる。3. 過酸化物が存在すれば I2 が生じ、黄色から褐色を呈する。　

(a) 硫酸で酸性にしたFeSO4水溶液と振り混ぜたのち水洗する。(b) NaHSO3 (亜硫酸水素ナトリウム) あるいはNa2S2O3 (チオ硫酸ナトリウム) 水溶液と　　　振り混ぜ、ついでNaOH水溶液、水で洗う。(c) 固体の塩化銅 (CuCl) を加えて、しばらく還流する。(d) 活性アルミナを通す。

亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗う。

有機化学実験のてびき[1] 物質取扱法と分離精製法　(化学同人) p48　より抜粋

ヨウ化カリウムを加える。

穏やかな還元剤

過酸化物ができている可能性がある場合

赤くなれば

分子量が小さいもの程、危険性は大きい。

濃縮単離　　　しない加熱衝撃を加えない

}


禁水性物質発火禁水

Li < Na < K < Na-K合金

アルカリ金属の反応性は

mp. 　　180 °C 　98 °C 　　64 °C 　　室温で液体

リチウム　: 密度 0.53 有機溶媒には沈まない。

w様々な形状で市販されている。表面積の大きいもの程、反応性大。rod < wire ~ ribbon < granules < (turnings) < dispersion (powder)

w金属リチウムは窒素や二酸化炭素中でも燃焼する。w粉末状のものは窒素と室温で速やかに反応する。

w融解したリチウムはガラスとも反応するので、ガラス容器で180°C以上に加熱してはならない。

消防法危険物第３類

6 Li + N2 2 Li3N

柱状　　ひも　　　リボン　　　　粒　　　　　削り状　　　　　粉

5. アルカリ金属の反応性の違い, 廃棄処理方法

禁水性物質発火禁水

Li < Na < K ~ Na-K合金

アルカリ金属の反応性は

mp. 　　180 °C 　98 °C 　　64 °C 　室温で液体

消防法危険物でいう第３類

安全な廃棄処理法

カリウム

ナトリウム

リチウム

KH

LiAlH4

NaH

CaH2

基本は少量ずつ

— トルエン中、tBuOH あるいは冷却したiPrOH

— 冷却したエタノール(+液体窒素）

— メタノール

— アルコール　　（水は不可）

— エーテル中、0 °Cで酢酸エチルを加える。

— トルエン-水

— 大量の氷

禁水性物質を処理するときは

MeOH > EtOH > iPrOH > tBuOHアルコールとの反応はアルカリ金属と水の接触による火災事故は、合成系実験室で最もよく起こる事故の一つ。

「学生のための化学実験安全ガイド」　東京化学同人(2003) p22 より　これだけは覚えて

おいてほしいこと


有害物質有害性毒

メチル化剤　CH3I, Me2SO4, FSO3Me

強力なメチル化剤　は　発がん性　であることが多い。　

CH3IH3C O S O

O

O

CH3 CF3 S O

O

O

CH3F S O

O

O

CH3

CH3

OCH3H3C

BF4

FSO3Meフルオロ硫酸メチル[Magic Methyl ©]

Me2SO4

硫酸ジメチルDimethyl sulfate

MeIヨウ化メチルmethyl iodide

MeOTfメチルトリフラートmethyl trifrate

Me3OBF4トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート

Methyloxonium tetrafluoroborate

有機化学実験の事故・危険—事例に学ぶ身の守り方— (丸善) P276

1976年、アメリカ

AUGUST 3, 2009 | vol 87, #31 | p29-34AUGUST 3, 2009 | vol 87, #31 | p29-34





4. 安全な服装、消火器について

5. 参考図書

防爆シールド

シールド付ヘルメット

耐火性グローブ

耐火性白衣

5. 消火器の種類　　使い方「実験を安全に行うために」化学同人編集部 p123

火災の大きさに応じて使い分けるが、目安としてCO2 消火器粉末消火器泡消火器

CO2 消火器粉末消火器

5. 消火器の種類　　使い方

避難口（扉）を背にして、炎でなく火元をねらう。事故当事者は気が動転している場合が多いので、可能ならば、周りの冷静な人が対処する方が良い。

初めて大きな炎を目の前にするとかなり恐い。






5. 参考図書

5. 参考図書

学生のための化学実験安全ガイド徂徠道夫　山成数明　山本仁　鈴木孝義　

山本景祚　斎藤一弥　高橋成人

￥ 1,470 　東京化学同人(2003/03)

化学実験の安全指針日本化学会

￥ 2,730丸善; 第4版版 (1999/03)

実験を安全に行うために化学同人編集部

￥ 840化学同人第7版版 (2006/03)

筑波大学付属図書館で借りられます。

5. 参考図書

実験室の笑える?笑えない!事故実例集田中陵二 , 松本英之￥ 1,575講談社 (2001/05)

有機化学実験の事故・危険—事例に学ぶ身の守り方鈴木　仁美￥ 3,465丸善 (2004/05）

取り扱い注意試薬ラボガイド東京化成工業

￥ 3,364講談社 (1988/10)

筑波大学付属図書館で借りられます。

その他○危険化学物質の取扱いと安全管理　米国国立科学研究審議会, 村上悠紀雄　三共出版 (1985/05)○実験室の事故例と対策　小林義隆　大日本図書 (1982/09)

図書館にありません。(2007-3-1)

失敗知識データベースhttp://shippai.jst.go.jp/失敗知識データベース

http://shippai.jst.go.jp/

筑波大学安全衛生マニュアルhttp://anzeneisei.sec.tsukuba.ac.jp/

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筑波大学環境安全管理室のトップページにリンクがあります。

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最後のまとめ

自分の身は自分で守る。

経験

知識想像力安全

事故をゼロにできないが、怪我することなく安全に実験を行うことは可能である。

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