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44.617.5

「ミク リッツ 」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例

岡山醫科大學津田外科教室(主任津田教授)

川 崎 祐 宣

[昭 和8年8月14日 受 稿]

Aus der chirurgischen Klinik der Medizinischen Fakultat Okayama Japan

(Direktor: Prof. Dr. Seiji Tuda).

Uber 2 Falle der sog. Mikuliczschen Krankheit.

Von

Dr. Sukenobu Kawasaki.

Eingegangen am 14. August 1933.

Neuerdings habe ich 2 Falle der sog. Mikuliczschen Krankheit gesehen, die von

verschiedenen Ursachen hervorgerufen waren.

Im ersten Falle handelte es sich um einen kraftigen 51 jahrigen Mann. Das Leiden

verlief seit ca. 1 Jahr ganz langsam. Als subjektive Beschwerden klagte er uber etwas

Schwergefuhl im oberen Augenlide, Trockenheit der Mundhohle, ubler Geruch des

Exspiriums, Steigerung des Geschlechtstriebes. Objektiv konstatierte man beiderseitig

einen bohnengrossen Trauendrusentumor und eine huhnereigrosse Anschwellung der

submaxillaren Speicheldrusen. Die Oberflache des Tumors war hockerig und knorpel-

hart. Im Blutbild wurde relative Lymphozytose festgestellt. Histologisch ergab ein

chronisches, entzundliches Granulationsgewebe, worin Rundzelleninfiltration, Binde-

gewebswucherung und regressive Veranderung des Parenchyms sichtbar waren. DieUrsache des Leidens konnte ich nicht klarstellen. Als Therapie wandte ich nach der

Exstirpation des Tumors, Rontgenbestrahlung und innerlich Jodkalium an und konnte

das Leiden innerhalb eines halben Jahres zur Heilung bringen.

Im zweiten Fall handelte es sich um einen 45 jahrigen Mann. Das Leiden verlief

innerhalb 2 Wochen sehr schnell. Er klagte uber leichte Trockenheit der Mundhohle

und uber Spannungsgefuhl im Bereiche des Tumors. Objektiv konstatierte man sym-

metrische Anschwellung der Tranen, Ohrspeichel- und Submaxillarspeicheldrusen, die

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「ミク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例 803

kleiner als die im ersten Falle war. Der Tumor war weich und glatt, Im Blutbild

zeigte Vermehrung der Lymphozyten und besonders der eosinophilen Leukozyten. Die

Wassermann'sche Reaktion war positiv. Durch innerliche Arsentherapie, Rontgenbe-

strahlung und antiluetische Kur wurde der Tumor in 4 Wochen sehr schnell verkleinert.

Als die Ursache des Leidens kann man daher syphilis annehmen. (Autoreferat.)

内 容 目 次

第1章 緒 言

第2章 症 例

第3章 文獻概要及 ビ考察

第1節 分類 及ビ原因

第2節 腫瘍 ノ肉眼的竝ニ顯微鏡的所見

第3節 臨牀的事項

第4章 總括及ビ結論

主要文獻

第1章 緒 言

「ミク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)

ナル疾患 ハ,1892年Mikuliczガ,涙 腺及 ビ

唾 液 腺 ノ對 稱性腫 脹 ヲ呈 シ且 獨特 ノ症状 ヲ有

スル未 ダ嘗 テ發表 セ ラ レザ リシ1疾 患 アル ヲ

發表 シテ以來,同樣 ノ報 告 ヲナ ス者漸 ク多 キ

ヲ加 フル ニ至 リ,爾 來 該疾患 ヲ稱 シテ 「ミク

リッツ」氏病 ト呼 ブニ至 レ リ.Mikuliczハ,初,

本疾 患 ハ涙腺 及 ビ唾液 腺 ノ ミニ來 ル トコロノ

對 稱性 無痛性 慢性 腫脹 ニ シテ,他 ノ臓 器 竝 ニ

血 液 ニハ變 化 ナク,其 ノ經 過及 ビ豫 後 モ至 ツ

テ良好 ナル モ ノ トセ リ.且 氏 ハ其 ノ原 因 トシ

テ,細 菌 或 ハ寄 生蟲 ノ侵 入 ニ因 ル モノ ト想像

セ リ.然 ル ニ報告 例 ノ増加 ニ從 ヒ,其 ノ症状,

原 因,病 理,經 過 及 ビ豫後 等必 シモ相 一致 セ

ザル モ ノ現 ル.例 ヘ バ,症状 トシテハ定 型 的

腫 脹 ニ至 ラズ シテ單 ニ涙腺 ノ ミ或 ハ唾 液腺 ノ

ミノ對 稱的 腫脹 ヲ來 スモ ノ ア リ,或 ハ之等 腺

腫 脹 ニ加 フル ニ血液 ノ變 化,脾 臓 腫,肝 臓 腫,

淋 巴腺 腫等 ヲ伴 フモ ノ ア リ,又 内分泌 機能 障

碍 ヲ認 ムル コ トナ ドア リ.原 因 ニ關 シテ ハ,

全 ク不 明 ノモノ,結 核説,黴 毒 説,内 分 泌 異

常 説,白 血 病説,假 性 白血病 説,腫 瘍 説,淋

毒 説,僂 麻 質斯 説,先 天的 異常 説等 ア リテ未

ダ一定 セル説 ノ確 定 ヲ見 ズ.病 理組 織學 的 ニ,

慢 性 炎症 トナ スモ ノ ア リ,或 ハ腫瘍 ナ リ トシ,

或 ハ 白血 病,假 性 白血 病 ノ際 ノ部 分的 症状 ニ

過 ギ ズ ト主 張 スル モ ノ ア リ.經 過 及 ビ豫 後 ニ

關 シテハMikuliczノ 言 ヘル ガ如 ク良 好 ナ ル

モ ノ大部 分 ヲ占 ム ルモ尚 ホ急性 ニ經 過 シ ヲ不

幸 ノ轉 歸 ヲ トルモ ノ尠 カ ラズ.

斯 クノ如 ク,等 シク「ミク リッツ」氏病 トシ

テ報告 セ ラ レタ ル モ ノ ト雖 モ,其 ノ病 型 ハ多

種 多樣 ニ シテ嚴 密 ナ ル意味 ニ ニ於 ケル獨 立 的

疾患 トナ ス能 ハ ザル モノ ア リ.Heinekeハ 「涙

腺 及 ビ唾 液腺 ノ對 稱 腫脹 ハ必 シモ該 腺 ニ特 有

ナ ル疾患 ニ非 ズ シテ.寧 ロ種 々ノ疾 患 ノ際 ニ

起 リ得 ル所 ノ症 候群(Symptomenkomplex)

トナ スヲ至 當 ナ ラ ン」 ト主 張 セ シガ,近 來「ミ

ク リッツ」 氏 症候 群(Mikuliczche Sympto-

menkomplex)ナ ル名稱 ノ下 ニ總括 スル ヲ妥

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804 川 崎 祐 宣

當 トナ ス ノ説 多 キニ至 レリ.

而 シテ本疾 患ハ 尚 ホ比 較的 稀有 ナ ル モ ノ ト

言 フベ ク,1905年Brannハ 文獻 中 ヨ リ30例

テ得 テ之 ニ自家症 例1例 ヲ追 加セ リ.1924年

阿 部 氏 ハ 本邦及 ビ泰 西 ノ文獻 ヲ渉獵 シテ156

例ヲ 總括セ リ.然 ルニ 本邦 ニ於 テハ 本疾 患 ノ

報 告 ハ未 ダ 僅 ニ 十數 例 ニ過 ギザル ガ如 シ.余

ハ津 田外科 教 室 ニ於 テ,偶 々本 疾 患 ノ2例 ニ

遭 遇 シ,何 レモ短 時 日ノ間 ニ治癒 セ シメ得 タ

ルヲ以 テ.茲 ニ追 加報 告 シ,併 セテ本 疾患 ノ

分 類,原 因,顯 微 鏡 的所 見,症状 及 ビ治療 等

ニ關 シテ從 來 ノ諸 家 ノ説 ヲ探 索研 究 シ,先 輩

諸 彦 ノ御 教 示 ヲ仰 ガ ン トス.

第2章 症 例

第1症 例

患 者. 竹 ○ 武○ 51歳 男 無 職

初 診. 昭 和6年7月21日

主 訴. 上眼 瞼 及 ビ顎下 部 ノ對 稱性 無痛 性腫 脹

家 族歴. 雨 系 ノ祖 父母 ハ高 齢 ニ逹 シテ 老衰 死.

父 ハ73歳 ニテ 健 在.母 ハ34歳 頃産 褥 熱 ニテ死 亡.

同 胞5人,患 者ハ長 男 ニ シテ他 ハ健 存 ス.現 在 ノ

偶 配 者ハ48歳 ニテ健 康 ナ リ.子 女 ナ シ.結 核 及 ビ

腫 瘍等 ノ遺 傳 ヲ認 メズ.

既 往症. 患 者ハ生 來壮 健 ニ シテ,22歳 ノ折腸

窒 扶 斯 ニ罹 患 セ シ 時 ノ外 醫 療 ヲ受 ケ タル ヲ憶 ヘ

ズ.22歳 ニ シテ 初婚,10年 後離 別,36歳 ノ折再

婚,10年 後再 ビ離 婚,現 在 ノ妻 トハ48歳 ニテ結

婚 セ リ.青 年 期 ヨ リ性 慾異 常 ノタ メニ苦 シム.性

病 ハ25歳 頃淋疾 ニ犯 サ レ シガ,特 別 ノ治療 ヲ受 ケ

ズ シテ間 モ ナ ク治癒 セ リト.黴 毒 ハ極 力否 定 ス.

少 量 ノ飲 酒 ヲナス モ喫 煙 セズ.

現 病症. 昨 年8月 中旬,隣 人 ニ依リ兩 側上 眼

瞼 腫 脹セ ル ヲ注意 セラレ,初 メテ該 腫 脹 ニ氣 付

キ タリ.醫 師 ヲ訪 ネ タル ニ全 身 ニ異常 ナ ク尿 ニ モ

變 化 ヲ認 メザ リキ.上 眼瞼 ノ腫 脹 ハ極 メテ徐 々 ニ

増 大 シ來 リ現 在 大 ニ達 セ リ.同 年10月 頃偶 然 兩側

顎 下部 ニ鳩 卵 大 ノ硬 キ腫 瘍 ヲ觸 知 シ タル モ,上 眼

瞼腫 瘍 ト同樣 壓 痛竝 ニ自覺 症状 ハ缺 如 セ リ.之 等

腫 脹 ハ漸 次増 大 シ來 リ同年 末頃 ヨ リ輕 度 ノ上眼 瞼

重 感,ロ 腔 内乾燥 感 及 ビ呼 吸惡 嗅 ヲ伴 フ ニ至 ル.

今 年1月 頃微 カナル嗄 聲 ヲ訴 ヘ シコ トア リ.性 慾

ハ元 來強勢 ナ リシ モ近 來殊 ニ著 シク昂 進 セ リ ト.

約40日 前,某 醫 師 ニ依 リ淋巴 腺 結核 ナ ル診斷 ノ下

ニテ.左 側 顎下部 腫 瘍 ノ剔 出手術 ヲ受 ケ タ リ.

全 身所 見. 體 格 強壮,身 長中 等,營 養 可良,

寫 眞A

「ミク リッツ」氏 病 第1例 竹 ○ 武○ ,51年,〓

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「ミ ク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例 805

貧 血 ヲ認 メズ.呼 吸 脉搏 正常,肺 臓 心臓 及 ビ腹 部

諸 臓器 ニ異 常 ヲ認 メズ,脊 柱 正常,膝 蓋腱 反射竝

ニ 「アヒ レ ス」腱 反 射 ハ共 ニ著 シク昂進 セ リ.「 バ

ビ ンス キー」 氏反 應 ハ陰 性 ナ リ.其 ノ他 全身 所見

トシテ認 ム ベ キ變 化 ナ シ.

局 所所 見.(寫 眞A参 照)右 側顎 下部 ハ著 シク

腫脹 シ.觸 診 スル ニ超 鶏 卵 大 ノ腫 瘍 ヲ認 ム.其 ノ

表 面ハ 凹 凸 ヲ呈 シ,軟 骨樣 硬 度 ヲ有 ス.壓 痛 ヲ訴

ヘズ.腫 瘍 ハ基 底 トハ癒 着 セ ルガ如 キ モ.左 右 上

下 ニ向 ツテハ僅 ニ移 動 性 ヲ殘 セ リ.腫 瘍 ト皮 膚 ト

ノ癒 着 ヲ認 メズ.皮 膚 ノ性状 ハ正常 ナ リ.左 側 顎

下 部 ニ約6cmノ 手術 性瘢 痕 ア リ,該 瘢 痕 ヲ中心

トシテ稍 々腫 脹 スル ヲ認 ム.觸 診 ス ル ニ小鶏 卵 大

ノ腫 瘍 ア リ,其 ノ性状 ハ右 側顎 下部腫 瘍 ト全 ク同

樣 ナ リ.頤 下 部 ノ腫 脹 ヲ認 メズ.頸 部淋巴 腺及 ビ

甲状 腺 ニ異常 ヲ證 明 セズ.前 舌 腺 及 ビロ蓋 腺 ハ正

常 ナ リ.咽 頭 竝 ニ喉頭 ニモ變 化 ヲ認 メズ.左 側 耳

朶 ノ前下部 ニ小指頭 大ノ硬 キ結節 アリ.皮 膚 トハ

移動性 ヲ保 ツモ基底 トハ固着ス.右 側耳下腺部 ハ

正常 ナ リ.兩 側上眼瞼 ハ扁平性 ニ腫脹 シ,輕 度 ノ

眼瞼下垂ヲ伴 フ.指 診 スル ニ兩側上眼瞼 ノ上外部

ニ偏 シテ蠶豆大 ノ腫 瘍ヲ觸 知ス.該 腫瘍ハ上眼窩

縁下 ヨリ突出 シ來 レルガ如 クンテ.左 右ニ對 シテ

ハ移動性 ヲ僅ニ認ム.皮 膚 トノ癒着 ナシ.其 ノ他

ノ性状ハ顎下部腫瘍 ト同樣ナ リ.結 膜 及ビ瞳孔ニ

異常ナク,眼 球運動 モ正常ナ リ.輕 度 ノ角膜實質

炎 アル外,紅 彩.水 晶體,前 房,硝 子體及 ビ眼底

ニ變化ヲ認 メズ.眼 壓及 ビ眼球突出度モ正常ナ リ.

視力ハ左眼0.9D.,右 眼1.0D.ナ リ.其 ノ他 全身

ノ淋巴腺腫脹,肝 臓及ビ脾臓 ノ肥大 ヲ證明セズ.

診斷.「 ミクリッツ氏」病

入院. 昭和6年7月23日

血液檢査.入 院後時 ヲ隔テテ3囘 血液檢 査ヲ

施行ス.其 ノ所見 ハ次表 ニ掲 グルガ如 シ.

血 液 ノ村田 氏 反應 ハ再 三繰 返 スモ陰性 ニ終 ル.

「ツベ ル ク リン」反 應 モ陰性 ナ リ.

植物性神經系統 ノ機能状 態檢査.「 ア ドレナ

リン」.「ア トロ ビ ン」及 ビ 「ビロ カル ビ ン」ノ皮 下

註射 ニ依 ル薬 物 的檢 査 方 法 ヲ用 フ.共 ノ結 果 ハ 次

表 ノ如 シ.

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806 川 崎 祐 宣

「ア ド レナ リ ン」 試 驗0.5cc(0.1%)

「ア トロ ビ ン」 試 驗0.5cc(0.1%)

「ビ ロ カ ル ビ ン」 試 驗0.5cc(1.0%)

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「ミ ク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例 807

即 チ「ア ド レナ リン」及 ビ「ビ ロカ ルビ ン」ニ對 シ

テハ強 反 應 ヲ示 シ,「 ア トロ ビ ン」ニ對 シテハ 反應

微弱 タリ.即 チPetren及 ビThorlingノ 所 謂 全

植物 神經 系統 ノ刺戟 性 異常 亢進状 態 ニアル モ ノナ

リ.

胸 部「レ ントゲ ン」線檢 査ニ依 レバ僅 ニ心臓 肥大

ヲ認 ム ル外,肺 臓,肋 膜 及 ビ縦 隔寶 ニ變 化 ヲ證 明

セ ズ.

治療 ノ1目 的 トシ又 各種檢 査 ニ資 セ ンガ タメ右

側 顎 下部腫 瘍 ノ全剔 出 ヲ行 フ.腫 瘍 ハ超 鷄卵 大 ニ

シテ周 圍組 織 トノ癒 着 ナ ク,其 ノ表 面 ハ凹 凸 ヲ呈

シ大小 數箇 ノ腺 葉 ヨ リナ ルガ如 ク,軟骨樣 硬 度 ヲ

有 シ,割 面 ハ充 實性 ニ シテ帶 紅 灰 白色 ヲ呈 ス.

組 織學 的檢 査.剔 出 標本 ノ數 箇所 ヲ トリ 「フ

オ ル マ リ ン」固定,「 バ ラ フイ ン」包埋,「 ヘマ トキ

シ リ ン.エ オ ジン」染 色 ニ ヨ リ組 織 標本 ヲ作 リ檢 セ

リ.先 ヅ弱擴 大 ニテ檢 スル ニ(第1圖 参照)正 常

ノ際 構 造ハ 全 ク消失 シ,縦 横 ニ交 錯 セル幅 廣 キ結

締 織 繊維束 ニ ヨ リテ多 數 ノ區劃 ニ分野 セ ラ レ,其

ノ區劃 内ハ「ヘマ トキ シ リン」ニテ染色 セ ル圓形 細

胞 ノ集 團 ニ シテ,「 エ オジ ン」 ニヨリテ赤 染 セ ル結

締織 索 條 トハ明 カ ニ區 別 セ ラル.此 圓形細 胞 集團

ノ外 層 ニ近 タ巨 大細胞 樣 ノ細胞 ヲ見 ル.腺 被膜 ノ

肥厚 ハ一般的 ニ ハ認 メザル モ,腺 門 及 ビ其 ノ附 近

ニ於 テハ 被膜 肥厚 シ,血 管 ニ富 ミ管腔 ハ充 盈 セ リ.

コノ腺 門 ヨ リ硝 子樣變 性 ヲナ セ ル結締織 索 條腺 内

ニ向 ツテ侵 入 シ,此 中 ニハ出 血 ヲ認 ム.被 膜下 層

ニハ幅 廣 キ圓形 細胞 浸 潤 ア リ.結 締織性 中 隔 ハ縦

走 セ ル繊 維束 ヨ リナ リ,長 紡錘 形 ノ細胞 ヲ有 スル

モ.繊 維 紋理 少 ク シテ,平 等 ニ「エ オ ジ ン」ニテ染

色 セル基 質 内ニ テハ卵 圓 形 ノ細 胞 トナ リ,核 モ又

透 明 圓形 トナ レ リ.カ カ ル部 ニ於 テハ圓形 細 胞,

「エ ォ ジ ン」嗜 好細 胞等 ノ浸潤 大 ナ リ.一 般 ニ血 管

ニ乏 シ.強 擴 大 ニテ檢 スル ニ(第2圖 及 ビ第3圖

参 照).圓 形細 胞 ノ集 團 ハ淋 巴細 胞 ヨ リナ リ.其

ノ間 ニ圓 形 ノ稍 々透 明 ナル 大 ナル核 ヲ有 スル多 面

體 ノ「レチ ク ルム」細胞 ヲ混 ジ,所 謂 淋巴臚 胞 ヲ形

成 セ リ.然 レ ドモ臚 胞 ノ中 心 ニハ胚中 樞 ナ シ.多

ク ノ淋 巴臚胞 ニ於 ケル「レチ クル ム」細 胞 ハ淋 巴細

胞 ニ比 シテ 少 數 ナル モ,處 ニヨ リテハ 之 ト匹 敵 ス

ル所 ア リ.臚 胞 内 ノ處 々 ニ結 締織 繊維 ノ遺殘 ア リ.

此淋 巴臚 胞 ノ周 圍 ハ明劃 ニ境 セ ラ レズ シテ次 第 ニ

環状 ニ之 ヲ取 圍 メル鬆疎 ナ ル結締 織層 ニ移行 シ,

其 ノ結 締織 繊維 間隙 内 ニハ細胞 ノ増殖 著 明 ニ シテ

淋 巴細 胞 ノ外 ニ「ブラ スマ」細胞.「 エ ォ ジ ン」嗜 好

性細 胞,大 小組 織球.造 結 締 織細胞 等混 在セ リ.

又 此部 ニ弱 擴 大 ニテ巨 大 細胞 ト見 ヘ シハ 腺細 胞 ノ

遺殘 ニ シテ,其 ノ胞 巣状 構 造 ヲ保 ッモ,各 腺細 胞

ハ 萎縮 ニ陷 リ,原 形 質 ハ甚 ダ乏 シ ク.核 モ輪廓 不

鮮 明 トナ リ唯核 ノ ミ集 合 セ リ ト思 ハ ルル所 ア リ.

小 排 泄管 ハ處 々保 存 セ ラ レル ヲ認 ム.尚 ホ巨 大細

胞 中 ニハ稀 ニ結 締織 細 胞 ヨ リ由來 セ ル モ ノ ト思 ハ

ル ルモ ノナ キニ シモ ア ラズ.

尚 ホ新鮮 ナ ル組織 ノ一 部 ヲ トリ,種 々 ノ方 怯 ニ

依 リ培 養 ヲ試 ミタルモ細 菌培 養 ニ成 功 セ ズ.新 鮮

組 織 ノ「ニム ル ジオ ン」ヲ作 リ家 兎 ニ注 射 セ シ モ,

何 等 變化 ヲ來 サ ズ.組 織 標 本 ノ結核 菌 染色 及 ビ他

ノ細 菌 染色 ヲ繰 返 セ シ モ悉 ク陰 性 ニ終 ル.

治 療 法. (1) 沃 度 加里 ノ經口 的 投與.(2) 左

側 眼 瞼 部及 ビ左 側顎 下部 ノ「レン トゲ ン」線 照 射,

(3) 右 側顎 下部腫 瘍 ノ全 剔 出 ノ3方 法 ヲ併 用 ス.

沃 度 加里 ハ1日 量1.0gヨ リ始 メ,漸 次増 量 シテ

2箇 月後 ニハ1日 量7.0gヲ 與 フ.「 レン トゲ ン」線

照 射 量 ハ左側 顎 下部腫 瘍 ニ對 シテ ハ1囘 量60.0%

(H.E.D.)ト シ,左 側 上眼 瞼 部腫 瘍 ニ對 シテハ1

囘 量40.0%(H.E.D.)ト シ,共 ニ2週 間 ヲ隔 テテ

3囘 照射 ヲ行 フ,其 ノ他,呼 吸惡 嗅 及 ビロ腔 内乾

燥ニ 對 シテ ハ含 嗽 ヲナ サ シメ,全 身療 法 トシテ種

種 ノ強 壮劑 及 ビ消 化劑 ヲ配 セ リ.

經 過 及 ビ豫 後. 本 患者 ノ經過 及 ビ豫 後 ヲ觀 察

117

808 川 崎 祐 宣

ス ル ニ,全 剔 出 ヲ行 ヒ タル右 側顎 下部 ハ術 後1週

目ニ拔 絲,小 ナ ル瘢痕 ヲ殘 シテ 治癒 シ,爾 來6箇

月 ヲ經 ルモ再 發 ノ傾 向 ヲ認 メズ.「 レン トゲ ン」線

照 射 ヲ行 ヘ ル左 側眼 瞼 部竝 ニ左 側 顎下部 腫 瘍 ハ,

照 射後2乃 至3日 目 ニ輕度 ノ腫 脹 ヲ來 セ ル モ,6

日目頃 ヨリ 漸 次縮 小 ス ル ニ至 ル.而 シテ3箇 月 後

ニハ辛 ジテ觸 知 シ得 ル程 度 トナ リ,6箇 月後 ニハ

全 ク消 失 セ リ.「 レン トゲ ン」線照 射 ヲ行 ハザ ル右

側 上眼 瞼 部腫 瘍 及 ビ左 側 耳下 腺部 腫瘍 ハ,1箇 月

後 ニ於 テモ殆 ド同大 ニ シテ,3箇 月 後 ニハ著 シク

縮 小 シ,6箇 月 後 ニハ僅 ニ觸 ル ル ノ ミ トナ レ リ.

尚 ホ呼 吸惡 嗅,口 腔 内乾 燥及 ビ上眼 瞼 ノ重感 等 ノ

自覺 症状 モ漸次 減退 シ,3箇 月後 ニハ 殆 ド正常 ニ

復 歸 セ リ.

第2症 例

患 者. 渡 ○○ 太 ○ 45歳 男 農

初診. 昭 和2年5月3日

主 訴. 上眼 瞼 及 ビ顎 下部 ノ對稱 性 無痛 性腫 脹

家 族歴. 兩 系 ノ祖 父 母ハ 既 ニ死亡 シ,其 ノ内

父系 ノ祖 父 ガ胃 癌 ニテ死亡 セ ル外 死因 及 ビ死 亡年

齢 等 不明 ナ リ.父 母 ハ健在 ナ リ.同 胞11人 ニ シテ,

内5人 ハ出 産 後間 モナ ク死 亡 シ其 ノ原 因ハ 不明 ナ

リ.他 ハ健 存 ス.患 者ハ 健康 ナ ル婦人 トノ間 ニ4

子 ヲ擧 ゲ,皆状 健 ナ リ.家 族 的 ニ祖 父 ガ胃癌 ニテ

死亡 セ シ外.他 ニ癌腫 及 ビ結 核 等 ノ遺 傅 ヲ認 メズ.

既往 症. 患者 ハ生 來状 健 ナ リシモ,15歳 頃約

1週 間 持 續 セ ル上腹 部疼 痛 ヲ訴 ヘ シコ トア リ,爾

來25歳 頃迄 毎 年2乃 至3囘 同 樣 ノ疼 痛 發作 ア リ

シ モ,何 レ ノ發 作時 ニ於 テ モ發 熱,嘔 吐,下 痢,

黄疸 等 ヲ伴 ハザ リキ.25歳 ヨ リ43歳 マ デハ至 極

状健 ナ リキ.45歳 ノ春,右 季 肋 下 部 ニ劇 痛 ヲ訴 ヘ,

悪 感,戰 慄,發 熱,嘔 吐,黄 疸 等 ヲ伴 ヒ,醫 師 ニ

依 リ膽 石 症 ト診斷 サ レ,内 科 的治療 ヲ受 ケ,1箇

月 後ニ ハ治 癒 マリ ト.約2箇 月 前,上 腹壁 ニ鳩 卵

大 ノ腫 瘍 ヲ生 ジ,漸 次 増大 シ鵞 卵大 トナ リ,4月

6日 津田外 科 ニテ上 腹壁 膿瘍 ナル診斷 ノ下 ニテ切

開 手 術 ヲ受 ケ,2週 後 ニ ハ殆 ド泊癒 セ リ.性 病 ハ

否定 ス.酒,煙 草 ハ共 ニ少 々嗜 ム.

現 在症. 腹 壁膿 瘍 ニテ 當科 ニ於 テ切開 手 術 ヲ

ウケ,術 後2週 目 ニハ 殆 ド泊癒 セ シガ,其 ノ頃 ヨ

リ,兩 側顎 下部,兩 側耳 下腺 部及 ビ兩側 眼瞼 ノ漸

亥腫 脹 シ來 レル ヲ氣付 キ タ リ.而 シテ該腫 脹 ハ比

較 的 急速 ニ増 大 シテ現 在 大 ニ達 セ リト.

全 身所見. 體 格 身長 共 ニ中等 度 ニシテ.營 養

佳 良 ナ リ,顔 貌稍 々憔 悴 ス,眼 結膜 ニ異常 ヲ認 メ

ズ.舌 ハ 濕潤 ニ シテ苔 被 ナ シ,咽 頭 及 ビ ロ蓋 ニ變

化 ヲ認 メズ.呼 吸 及 ビ脉搏 ハ正常 ニ シテ心 臓 及 ビ

肺臓 ニ著 變 ナ シ.上 腹部 ニ小 ナ ル手 術性 瘢痕 ア リ

(當 科 ニ於 テ膿 瘍 ノ切開 ヲナ セ ルモ ノ).四 肢 ノ腱

反射 ハ年 常 ナ リ.

寫 眞B

「ミク リッツ」氏 病 第2例 渡○ ○ 太○,45年,〓

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「 ミ ク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例 809

局所 所 見.(寫 眞B参 照)兩 側 上眼 瞼 ハ殊 ニ上

外 方 ニ於 テ對稱 的 ニ膨隆 シ,觸 診 ス ル ニ蠶 豆 大 ノ

腫 瘍 ヲ認 ム.皮 膚 ト ノ癒 着 ハナ ク,基 底 ニ固着 ス.

表面 ハ平 滑 ニシテ.硬 度 ハ彈力 性柔 軟 ナ リ.壓 痛

ハ缺 如 セ リ.耳 下腺 部 ニ於 テ モ兩 側性鳩 卵 大 ノ腫

瘍 ヲ觸 知 ス.皮 膚 トハ 移 動性 ヲ有 スル モ,基 底 ト

ハ 僅 ニ移動 スル ノミナ リ.壓 痛 ナ ク.硬 度 ハ眼 瞼

ノ夫 レト同 樣 ナ リ.顎 下 部 ニ於 テハ左右 共 ニ鷄 卵

大 ニシテ.性状 ハ總 テ耳 下腺腫 瘍 ト同 樣 ナ リ.之

等他覺症状著 シキニ關 ラズ,患 者自身 ハ僅 ニ緊張

感 及ビロ腔内乾燥感 ヲ覺ユルノミニシテ何等自覺

症状 ヲ訴 ヘズ.前 舌腺,舌 下腺,ロ 蓋腺 ニ異常ヲ

證明セズ.頸 部及 ビ身體他部 ノ淋巴腺腫脹ヲ認メ

ズ.肝 臓 ハ右側乳腺 ニ於テ肋骨弓下3横 指 ノ高サ

ニテ觸知スルモ,脾 臓 ヲ觸 レズ.尿 及ビ糞 便ニ異

常 ナシ.血 液 ノ村田氏反應ハ強陽性ナ リ.3囘 ニ

亙 リテ血液檢査 ヲ行ヒ シガ,結 果ハ次表 ニ示 スガ

如 シ.

診斷. 「ミク リッツ」氏病

泊療 及 ビ經過. 砒 素劑 ノ内服 ト,「サル バル サ

ン」 及 ビ水 銀軟 膏 ニ依 ル驅微 療 法 ヲ開 始 シテ經過

ヲ觀 察 セ ルニ,3週 後 ニハ腫 傷 ハ著 シク縮 小 ス ル

ヲ認 ム.3週 後 更 ニ1囘 量50.0%(H.E.D.)ノ

「レン トゲ ン」線 照射 ヲ併用 セル ニ何 レノ效 力著 シ

ヵ リシモ ノナ ル カ,4週 後 ニハ 外 觀上殆 ド腫脹 ヲ

認 メ得ザル程度 トナ レリ.而 シテ引續 キ泊療 ヲ繼

續 スベク患者ニ注意セシモ,腫 脹 ノ全 ク消失セシ

タメカ,再 ビ來院 セズ.全 快 ヲ確メ得ザルハ遺憾

ナ リ.

尚ホ治療開始前 ニ耳下腺及 ビ顎下腺 ノ試驗的 切

除 ヲ行 ヒ顯鏡セシモ,特 別 ナル變化 ヲ認ムル能 ハ

ズ.

第3章 文獻概要及ビ考察

第1節 分 類 及 ビ原 因

抑 モ 「ミク リッツ」氏病 ナ ル疾 患 ハ1982年

ニMikuliczニ 依 リ發表 セラ レテ ヨ リ世 人 ノ

注 意 ヲ喚起 スル トコ ロ トナ リ,爾 來之 ニ等 シ

キ或 ハ類似 ノ疾 患 ニ氏 ノ名 ヲ冠 シテ呼 ブニ至

リシモ ノナル ガ,今 日稱 ヘ ラル ル ガ如 キ所謂

119

810 川 崎 祐 宣

「ミク リッッ」氏症 候群(Mikuliczsche Sym-

ptomenkomplex)ナ ル名稱 ノ下 ニ包括 セ ラ

レ得 ル廣義 ノ該疾患 ハ既 ニMikulicz以 前 ニ,

Horner (1866), Korn (1869), Gallasch

(1874)及 ビ其 ノ他 ニ依 リ報 告 セ ラ レタルモ ノ

ナ リ.

初Mikuliczハ,本 疾患 ハ涙 腺 及 ビ唾 液 腺 ニ

限 局 シテ現 レル1獨 立 疾 患 ニ シテ何等 全身 症

状ヲ呈 セズ トナ セ リ.氏 ハ淋 巴組織 ガ,一 般

ニ,傳 染性徴 生 物 ニ對 シテ顯 著 ニ シテ且 急 速

ナ ル反應 ヲ起 ス點 ヨ リ想 像 シテ,本 疾患 ハ傳

染 性 或 ハ寄 生性 物質 ニ因 リ起 ルモ ノナ ラン ト

考 ヘタ リ.而 シテ氏 ハ恐 ラク先 ヅ眼結 膜嚢 ヨ

リ涙 腺 ニ傳 染 シ,次 イ デ涙 管 ヲ經 テ ロ腔 ニ達

シ,二 次 的 ニ唾 液腺 ヲ犯 スモ ノナ ラン トセ リ.

然 ル ニ爾 後 ノ諸報 告 中 ニハ症状,經 過,病 理

等 ノ相 一致 セザル モ ノ多 ク現 レ,從 ッテ之 ガ

分 類 及 ビ原 因 ニ就 キテモ諸 家 ノ見 解必 ズ シモ

一 致 セズ シテ諸説 紛 々タ リ.

分類. 1905年Brunnハ 淋巴性假性白血病竝

ニ骨髄形成不全性重症貧血ヲ伴ヘル本疾患 ノ1例

ヲ經驗 シ,且氏 ノ渉獵シ得 タル30例 ニ就キテ臨牀

的觀察ヲ遂ゲ,次 ノ如キ分類 ヲ試ミタリ.

A. 血液 ニ變 化ヲ來サザルモノ.

a. 淋巴腺腫 及ビ脾臓腫 ヲ伴ハザルモノ.

1. 涙腺及ビ唾液腺 ノ對稱性腫脹.

2. 涙腺 ノミノ對稱性腫脹.

3. 唾液腺 ノミノ對稱性腫脹.

b. 淋巴腺腫及 ビ脾臓腫ヲ伴ヘルモ ノ.

1. 涙腺及 ビ唾液腺 ノ對稱性腫脹.

2. 同 上ノ變化 ニ皮膚浸潤ヲ伴ヘルモノ.

B. 血液 ニ變化 ヲ認 メルモノ.

a. 淋巴性假性白血病竝 ニ骨髄形成 不全 ノ存

ス ル重症 貧 血 ヲ伴 フモ ノ.

b. 白血 病 ヲ伴 フモ ノ.

Brunnノ 分 類法 ハ臨 牀 上便 利 ニシテ,其 ノ後 之

ニ 倣 フ者 多カ リシ モ,實 際 上其 ノ何 レニ所 屬 セ シ

ム ベ キカ困 難 ナ ル コ ト少 カ ラズ.1910年Igershei-

merハ 本疾 患 ノ44例 ヲ總 括 シ,其 ノ原 因的 方面 ヲ

探索 シテ原 因的 ニ次 ノ如 キ分 類 ヲナセ リ.

A. 原 因不 明 ナル淋 巴腺 組 織 増殖.

B. 結核 ニ關 係 ア リ ト考 ヘ ヲル ル モノ.

C. 黴 毒 及 ビ其 ノ他 ニ關 係 ア リ ト考 ヘ ヲル ルモ

ノ.

1911年Thysenハ 病 理組 織 學的 見地 ヨ リシテ,

本疾 患ハ淋 巴 腺腫 ニ外 ナ ヲズ ト説 キ.且 之 ヲ4種

ニ分 類 セ リ.

A. 單 純性 限局 注淋 巴腺 腫.

B. 假 性白 血病 性 淋巴腺 腫 及 ビ淋 巴肉 芽腫.

C. 白血 病性 淋巴 腺 腫.

D. 淋 巴肉 腫.

1924年 阿部 氏 ハ156例 ノ統計 的 觀 察 ヲナ シ,臨

牀的 ニ次 ノ如 ク分 類 スル ヲ妥 當 トセ リ.

A. 涙 腺及 ビ唾 液腺 ノ對 稱 性腫 脹.

B. 淋 巴 腺或 ハ脾 臓 ノ腫 脹 ヲ伴 ヘル對 稱性 腫 脹.

C. 白血 病性 對稱 性 腫脹.

1927年Schaffer and Jacobsenハ 細別 シテ

A. 「ミ クリッツ」氏病.

1. 家 族的 ニ現 レル モ ノ.

2. 本來 ノ「ミク リッツ」氏病.

B. 「ミク リッツ」氏症 候 群.

1. 白 血病性 ノモ ノ.

2. 結 核性 ノモ ノ.

3. 黴 毒佐 ノモ ノ.

4. 淋 巴肉芽 腫 性 ノ モ ノ.

5. 中 毒性 ノモ ノ.

6. 痛 風性 ノモ ノ.

7. Febris Uveo-parotiden subohronica

120

「ミク リッツ」氏病(Mikuliczsche Krankheit)2例 811

ニ分テ リ.最 近Loos (1930)ハ 病理組織學的分

類ヲ試 ミタリ.

A. 唾液腺及ビ涙腺内淋巴組織 ノ肥大.

1. 限局性淋巴腺腫(本 來 ノ「ミクリッツ」氏

病).

2. 淋巴性竝ニ骨髄性白血病性腫脹.

B. 特種性慢性炎症及 ビ非特種性慢性炎症.

C. 内分泌障碍ニョル唾液腺及ビ涙腺 ノ肥大.

D. 唾液腺及 ビ涙腺 ノ腫瘍.

而 シテ氏ハ(B)ノ 特種性慢性炎症ニア リテハ結

核,黴 毒及 ビ淋巴肉芽腫ガ大 ナル原因的役割 ヲ演

ズルモノ トナシ,(C)ニ アリテハ内分泌機能障碍

ノ存 スル場合 ニ起 ルトナセ リ.

斯 ク ノ如 ク本疾 患 ノ分 類 ガ複雜 ニ シテ諸 家

ニ依 リ異 ルハ,實 ニ本 疾患 ノ臨 牀的 症状,病

理 組織 學的所 見及 ビ病 原等 ノ多種 多樣 ナル ニ

因 ル モノ ニ シテ,「 ミク リッツ」氏症 候群 ナル

名稱 ノ下 ニ總 括 セラルル モ所 以 ナ キニ ア ラザ

ル ナ リ.而 シテ何 レノ分類 法 ニ從 フベ キカハ

暫 ク置 キ,假 リニSchaffer and Jacobsenノ

臨牀 的分類 法 ニ從 ヘバ,余 ノ第1症 例 ハ,家 族

的 ニ何 等遺 傳 的素因 ヲ認 メズ,白 血病,結 核,

黴 毒及 ビ肉腫等ハ 共 ニ否 定 シ得,中 毒 性或 ハ

痛 風性 ノモ ノ ニ非 ザル ハ明 カナ リ,又 熱 性疾

患 ニモ ア ラズ.即 チ本來 ノ「ミク リッツ」氏病

ト言 フベ シ.第2症 例 ハ血 液 ノ黴毒 反 應強 陽

性 ナ リシ點 ト驅 黴療 法 ノ著效 ヲ呈 セ シ點 ヨ リ

シテ,他 ニ原 因 ヲ求 メ得 ザ ル ヲ以 テ,黴 毒 ト

因果 關係 ヲ有 スル モ ノナ ラ ン.次 ニLoosノ

病 理組織 學的 分類 法ヲ 借 ランカ,余 ノ第1症

例 ハ淋 巴細 胞 浸潤,結 締 織増 殖 及ビ 腺物 質 ノ

退 行變 性 ヲ主 トスル慢性 炎症 ナル ヲ以 テ,B

ノ慢 性 炎症ニ 屬 セ シムベ キモ ノナ リ.而 シテ

淋 巴臚胞 形成 巨 大細 胞出 現等 一見結 核 ヲ想 ハ

シムル モ,臚 胞形 成 ハ結核 以 外 ニ原 因 スル コ

ト屡 々 ア リ且 巨大細 胞 ノ大 多數 ハ腺物 質 ノ遺

殘 ナル コ ト明 ニ シテ,所 謂Langerhanssche

Riesenzellenト 呼 ブガ如 キ定型 的細 胞 ハ認 ム

ル能 ハズ,又 乾酪 變 性 ニ陷 レル病 竈 モ見 ズ,

組 織 標 本 ノ結 核菌 染 色竝 ニ動 物 實驗 モ陰 性 ニ

終 レ リ.之 等 ノ點 ヨ リ結 核 ニハ非 ザ ルベ シ.

又Paltauf及 ビSternbergノ 淋 巴 肉芽腫 ニ

類 似 スル トコロアル モ,定 型的 巨 大細 胞 ハ缺

如 シ,「 エ オ ジン」嗜好細 胞,「 ブ ラスマ」細 胞

等 ハ淋 巴細 胞 ニ比 シ甚 ダ少 ナ シ,且 經 過 ノ緩

漫 ニ シテ豫後 ノ良 好 ナ ル點 ヨ リ觀 ルモ,之 ハ

否定 スル ヲ得.黴 毒 ニ非 ラザル ハ,血 清學 的

檢 査 及 ビ既往 症 ヨ リ明 カナ リ.即 チ非 特種 性

ノ原 因 ニ ヨル慢性 肉芽 性炎 症 ニ屬 セ シムベ キ

モノナ ラン.第2症 例 ニ ア リテハ組織 學 的 ニ

何等根 據 ヲ得 ル能 ハザ リキ.

原因. 「ミクリッツ」氏病 ノ原因ニ關スル諸説

中,古 クヨリ論議セラレ,一 般 ノ興味 ヲ惹キタル

ハ(1)結 核説ナ リ.結 核説ニ加擔 スル諸家 ニ

Plitt, Napp, Kroisheimer, Meller, Fleisoher,菅

沼,大 野,zeidler及 ビHeine等 ア リ.Plitt (1905)

及 ビNapp(1907)ハ 本疾患 ノ組織中 ニ結核菌 ヲ證

明シ,且 定型的乾酪變性及 ビ定型的結核結節 ヲ認

メタ リ.Fleischer (1910)ハ 本疾患 ノ4例 ニ於テ

結核菌染色ニハ成功 セザ リシモ,病 理組織學的 ニ

檢索 シテ上皮樣細胞,結 核樣結節,巨 大細胞竝 ニ

乾酪變性等ヲ證明シ,且 身體他部 ノ結核 合併或ハ

家族歴等 ョリシテ本疾患 ノ原因ヲ結核性 ト主張セ

リ.菅 沼(1912)ハ 細菌染色ハ陰性ニ終 リタルモ,

動物試驗ニ成功 シ,且 組織學的 ニ定型的結核 ヲ認

メタ リト.Heine (1926)ハ 本疾患 ノ3例 ニ紅彩結

121

812 川 崎 祐 宜

核 ヲ合 併 シ,1例 ハ唾 液 腺腫 ノ周 圍 ニ淋 巴 腺結核

ヲ伴 ヘル ヲ報告 シ,Zeidler (1927)モ 又顯 微 鏡的 ニ

定 型的 上皮 樣細 胞,淋 巴臚 胞 及 ビ結 締織 増 殖 ヲ認

メ,共 ニ結 核 説 ニ賛 セ リ.(2)黴 毒 ニ關 係 ア リ ト

主 張セ シハNeumann, Osler, Guttmann, Lintz,

Mohr, Nugel等 ナ リ.Neumann(1894)ハ 第2期

或 ハ第3期 黴毒 患者6例 ニ.念 性或 ハ亞 急性 ニ發

現 セ ル本疾 患 ヲ認 メ,驅 黴療 法ニ 依 リ著 效 ヲ修 メ

得 タリ ト,Osler(1898)ハ 水銀劑 及 ビ沃度加 里 ヲ

用 ヒ テ,Guttmann(1907)ハ 大 量 ノ沃度 加里 ヲ與

ヘテ.共 ニ腫 瘍 ヲ消 失 セ シメ得 タ リ ト.Mohr(1913)

ハ睾 丸炎,肝 臓腫 及 ビ骨膜 炎 ヲ伴 ヘル本 疾 患3例

ニ於 テ,「 サ ルバ ルサ ン」療 法 ヲ試 ミ驚 クベキ效果

ヲ認 メ タ リ.氏 ハ,涙 腺 及 ビ唾 液腺 ノ對 稱 性腫脹

ヲ認 メ タル場 合 ニハ,先 ヅ第1ニ 黴 毒 ヲ考 慮 スベ

キナ リ トマ デ極言 セ リ.Nagel (1916)モ 又4症 例

ニ黴 毒 ヲ證明 シ驅 黴療 法 ヲ行 ヘル ニ,顯 著 ナル治

癒 傾向 ヲ示 セ リト.(3)家 族 的ニ 同一 家 系 内ニ 數

名 ヲ認 メタ リ ト報 告 セ ル學 者 ニLufolley (1894),

Qninke (1906), Frenkel (1907), Ieri (1912),

Hochschild (1920)等 ア リ.就 中Quinke及 ビHo-

chschildノ 報 告 ハ注 意 ニ價 ス.Quinkeハ 父 ヨ リ

孫 ニ至 ル3代 ニ亙 リテ,耳 下腺 ノ對稱 性腫 脹 ヲ來

セ ル者10名 ア リ シヲ報告 シ,Hochschildハ7人

ノ家族 ニ本疾 患 ヲ認 メ.且 氏 ノ例ニ ア リテハ,年

2乃 至3囘 急 劇 ニ耳 下腺ノ 腫 脹 ヲ來 シ 約1週 間 持

續 ス ル ヲ常 トセ リ ト.(4)白 血 病或 ハ假 性 白血

病 ノ際 ニ,其 ノ分 症 ト シテ涙 腺及 ビ唾液 腺 ノ對 稱

性 腫脹 ヲ來 ス ハ既 ニGallasch (1874)ニ 依 リ報 告

セ ラ レシ トコ ロニ シテ,其 ノ後Kummel (1897).

Haeckel (1903), Walleufang (1904), Brunn (1905)

Meller (1906), Thysen (1911)及 ビ其ノ 他 ニ ヨ リ

報 告 セ ラ レ,本 疾 患 ノ或 モ ノハ 白血 病或 ハ假性 白

血 病 ノ際ニ 分 症 トシテ來 ル コ トハ,最 早 疑 フヲ要

セ ズ.而 シテ殆 ド全 部淋 巴 性白 血病 ナルハ 興味 ニ

價 ス.(5)近 時 内分 泌 學 ノ發 達 ニ伴 ヒ,本 疾 患

ト内分 泌機能 障 碍 トノ間 ニ因 果關 係ア リ ト説 ク報

告 者 漸 ク増加 スル ニ至 レ リ.一 般 ニ唾 液 腺 殊ニ 耳

下腺 ノ腫 脹 ハ,種 々 ノ内分 泌 機 能障 碍 ノ際ニ 併 發

ス ル コ トアルハ早 ク ヨ リ成 書 ノ教 フル所 タリ,例

ヘ バ甲状 腺疾 患,腦 下垂 體 疾 患,膵 臓 腫,副 腎 肥

大.粘 液浮腫 及 ビ生 殖 器障 碍等 ノ存 ス ル場 合ニ 腺

腫 脹 ヲ來 ス コ トア リ.Berthon (1912)ハ 唾液 腺 ノ

對 稱 性腫 脹 ヲ來 セ ル5例 ニ於 テ生殖 器 及 ビ甲状 腺

ニ障 碍 アル ヲ認 メ,之 ヲ内 分泌 機能 障 碍 ニ因 ル モ

ノナ ラ ントセ リ,而 シテ氏 ハ唾 液腺 腫脹 ハ生殖 器

及 ビ甲状 腺 ノ機能 障 碍 ニ對 シテ代 償 的 ニ作 用 ス ル

ニ因 ル モ ノナ ル カ,或 ハ之 等 内分 泌腺 ノ異 常分 泌

ノ結 果生 ズ ル中 毒性物 質 ニ因 ル モ ノナ ラ ン ト主 張

セ リ.Mohr (1913)ハ 甲状 腺,胸 腺 及 ビ腦 下垂 體

等 ノ障 碍 ヲ伴ヘ ル本疾 患 ヲ10例 擧 ゲ,尚 ホ夫 等 ノ

中 ニハ生 殖器 障碍 ヲモ認 メタ リト.Nagel (1916)

ハ 内分 泌 性肥滿 症 ヲ伴 ヘル淋 巴體 質 患者ニ 本 疾 患

ヲ經驗 セ リ.Baumstark (1917)ハ 粘 液浮 腫性 疾 患

ニ遭 遇 シ甲状 腺 ノ移 植 ヲ行 ヒ タル ニ,間 モナ ク シ

ヲ 本疾 患 ト同 樣 ナル症状 ヲ呈 ス ルニ至 レル例 ヲ報

告 セ リ.Hammerli (1920)ハ 甲状 腺腫,副 腎 肥大

及 ビ睾 丸 ノ萎縮 ヲ伴 ヘル本疾 患 ヲ經驗 シ,組 織 學

的檢索 ヲ行 ヒ タルニ,唯 腺實質ノ 肥大ヲ證明 シタ

ル ノミニシテ,何 等炎症性變 化ヲ認 メザ リキ.氏

ハ唾液腺 モ又狭義 ニ於ケル内分泌機能 ヲ有 スルモ

ノナラント想像 セリ.Rommer (1927)ハ 粘液浮腫

性疾患 ニ甲状腺移植 ヲ行 ヒタルニ,爾 來月經時 ニ

規則的ニ唾液腺腫脹 ヲ繰返セル1例 ト,他 ノ1例

ハ甲状 線腫切除後ニ起 レル甲状腺機能 不全症ニ對

シテ甲状腺製 劑ヲ投與セシニ,服 藥ノ度毎 ニ數日

後唾液腺 ノ腫脹 ヲ生 ゼリト.氏 ハ臨牀的觀察竝 ニ

藥物學的檢査ニ依 リ.唾 液分泌 ハ病的状態 ニ陷レ

ル植物性神經系統 ノ影響 ヲ蒙 ムルヲ認メ タリトイ

フ.Ullmann (1928)モ 月經時 ニ耳下腺 ノ對稱性腫

122

「 ミ ク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例 813

脹 ヲ來 セ ル例 ヲ報 告 セ リ.(6)一 般 ニ涙腺 及 ビ唾

液 腺 ノ片 側性 腫瘍(Geschwulst)ハ 左 程少 キ モ ノ

ニ非 ラザ レドモ,之 ガ對稱的 ニ現 レ,「ミクリッツ」

氏病 トシテ報告セラレ タルハ稀ナ リ.Hofmeister

(1905)及 ビAlsberg (1901)ハ 脂肪腫 ヲ,Eagenbach

(1908)ハ 淋巴管腫ヲ對側性 ニ認 メタリ ト.Thysen

及ビSchaffer and Jacobsenハ 淋巴肉腫ナ リシ例

ヲ報 告セリ.其 ノ他 原因 トシテ,淋 疾及ビ僂麻質

斯等擧 ゲラ レタルモ一般 ノ顧ル トコロ トナラズ.

飜 ツテ余 ノ症例 ニ就 キテ考 案 ス ルニ,第1

症 例 ニ於 テ ハ,家 族歴,既 往症 及 ビ現 在症 ニ

結 核 ヲ認 メズ,細 菌學 的諸 檢 査竝 ニ組織 學的

檢 索 ニ於 テ モ結核 ニ非 ザル ハ既述 セ リ.黴 毒

モ既往症,現 在症 及 ビ血清 學 的檢査 ノ結 果之

ヲ否定 スル コ トテ得.Quinke等 ニ依 リ報告

セ ラ レタルガ如 キ遺傳 關係 モ認 ムル コ ト能 ハ

ズ.又 白血 病性,假 性白血病 性腫 瘍(Gesch-

wulst)性,淋 毒性 或 ハ僂麻 質斯 性 ニ ア ラザ ル

コ トモ明 カナ リ.本 疾 患 ト内 分泌腺 機能 障碍

トノ關係 ニ就 キテ ハ,上 述 ノ如 ク近來 特 ニ論

議 セ ラルル ニ至 レルガ,唾 液腺 ガ内分泌 ヲ營

ムヤ否 ヤハ今 日尚 ホ明 カナ ラザル モ,内 分泌

系 統 ト密接 ナル關係 ニ アルハ,上 述 セル諸 家

ノ報告 ニ徴 シテ明 カナ リ.此 點 ヨ リ觀 ルニ余

ノ第1症 例 ニ於 クル植物 性神 經系 統 ノ刺戟性

異 常亢 進状 態 ビ性慾 異 常等 ハ,内 分泌 機能障

碍 ト關聯 アル カ ノ如 ク想 ハ ルル モHammerli

及 ビLoos一 派 ニ依 レバ,内 分泌 障碍 ニ因 レ

ル本疾患 ノ組織 學 的變 化 ハ單 ニ腺 實質 ノ肥 大

ニ過 ギズ ト云 ヘバ,余 ノ症例 ハ組 織學 的見 地

ヨ リ,内 分 泌異 常 ニ因 ル モノ ニ非 ザ ルベ シ.

第2症 例 ハ,顯 微 鏡 的 ニ根 據 ヲ有 セズ,且 比

較 的 急性 ニ現 レタ ル ヲ以 テ,護 謨 腫 トナ スハ

不當 ナ レ ドモ,村 田氏 反應 強陽 性 ナ リシ點 ト,

驅 黴 療 法 ノ著 效 ヲ呈 セ シ點 トヨ リシテ,他 ニ

原 因 ヲ求 メ得 ザル ヲ以 テ,先 ヅ黴毒ヲ 其 ノ原

因 トナ ス テ至 當 ト見做 スベ シ.而 シテ余 ノ第

2症 例 ノ如 ク,比 較 的急 性 ニ現 レ,驅 黴療 法

ノ效 力顯 著 ナ リシ例ハ,既 ニNeumannニ 依

リテ モ報 告 セ ラ レタ リ.

第2節 腫 瘍 ノ肉 眼 的 竝 ニ 顯 微 鏡 的

所 見

腫 瘍 ノ肉眼 的 所見 ヲ一括 セ ンニ,其 ノ外觀

ハ大體 ニ於 テ正 常 ノ腺樣 形 態 ヲ保 ツモ ノ多 ケ

レ ドモ,尨 大 ナ ル大 キサ ニ達 スル モ ノ ア リ.

一般 ニ莢 膜 ノ變 化 ハ尠 ク,周圍 トノ癒 着 ハ認

メザ ル モ,甚 シキ癒着 ヲ來 ス コ トア リ.腫 瘍

斷面 ハ,肉 眼的 ニ殆 ド變 化 ヲ認 メ得 ザ ル程 度

ノ モノ ヨ リ,黄 紅 色 テ帶 ビタ ル瀰 漫 性豚 脂樣

組織 ニ變 化 セル モノア リ.結 締織 束 ノ増 大 モ

肉眼 的 ニ之 ヲ認 ムル コ ト屡 々ア リ.

次 ニ顯微鏡的所 見ニ關スル記載 ヲ觀ルニ,Mi-

kuliczハ,主 トシテ小圓形細胞 ノ浸潤 ニシテ其 ノ

間ニ大細胞 ノ散在スルヲ認 メタリ.而 シテ之等圓

形細胞ハ集團ヲナ シ其 ノ間 ヲ結締織走 リテ網眼 ヲ

形成 シ.腺 細胞ハ或 ハ點々 トシテ或ハ聚落状 ニ小

圓形細胞 中ニ散在 セ リト記述セ リ.Tietze (1896)

ハ腺 細胞 ハ殆 ド全 ク消失 シ無數 ノ圓形細胞 ヨリナ

レル淋巴腺 樣組織 ト變化セル内ニ,巨 大細胞,「エ

オ ジン」嗜好性細胞 ヲ認メ且淋巴臚胞 樣細胞群 ヲ

モ認 メタ リト.Arnold及 ビBecker (1872)ハ 菲

薄ナル網状 結締織中ニ淋巴細胞 ノ侵潤ヲ來 シ,且

處々ニ淋 巴臚胞樣構造及 ビ高度 ノ結締織増殖 ヲ認

メタリWallenfang (1904)ハ 著 シキ結締織増 殖ヲ

來 シ,該 結締織束 ニヨリ形成サ レタル網眼ハ退行

性變 化ニ陷 リ,不 規則 ニ配列 セル殘存腺物質 ト淋

123

814 川 崎 祐 宣

巴臚 胞 内 ニヨ ク見 ヲ レル ガ如 キ淋 巴球 樣 細胞 トニ

ヨ リテ 充 滿サ レ,ソ レ等細 胞 群 中 ニハ巨 大細 胞及

ビ 「ブ ラス マ」細胞 ノ混在 スル ヲ認 メ タ リ.尚 ホ淋

巴細胞 及 ビ「ブラ ス マ」細 胞 中 ニハ核 分裂 ノ行ハ レ

ツツア ルモ ノア リキ ト.爾 來組 織學 的檢 索 ニ關 ス

ル數 多 ノ報告 ア リト雖 モ,之 等 ヲ總括 ス ル ニ次 ノ

3大 變 化 ニ大別 スル コ トヲ得.(1) 圓形細 胞 浸潤,

(2) 結 締織 増 殖.(3) 腺實 質 ノ退行 性變 化之 ナ

リ.而 シテ圓 形細 胞 ノ大多 數 ハ小 淋 巴球 ニ シテ,

少 數 ノ大淋 巴 球 ヲ混 ズ.コ ノ外,「 エ ォ ジ ン」嗜

好 性細 胞 増多竝 ニ巨 大細 胞 ヲ認 メタルハKummel

(1897), Gallasch (1874), Haeckel (1903), Meller

(1906), Minelli (1506).木 下氏(1917),阿 部 氏

(1924), Smith and Bump (1928)等 ナ リ.「ブ ラス

マ」細胞 増加 ヲ認 メ タ リ トナ ス諸家 ニWallenfang

ノ外Thysen (1910), Kummel, Smith a. Bump,

木 下 氏,阿 部 氏,中 村 氏(1925)等 ア リ.Minelli,

Brunn及 ビThysen等ニ 依 レバ,疾 病初 期ニ 於 テ

ハ 先 ヅ淋 巴球 ハ 腺門 部 ニ増 加 シ,殊ニ 排 泄 管及 ビ

血管 ノ周 圍 ニ著 明 ナ リ ト.疾 病 ノ進 ムニ從 ヒ,漸

次 小 葉 内ニ 浸 潤 シ,爲 メニ腺 物 質 ハ壓縮 サ レ或 ハ

消 失 シ,遂ニ ハ淋巴 組織ニ 置 換 セ ラ ルル ニ至 ル.

敍上 ノ變 化 ハ斯 ク シテ腺 全體ニ 及 ビ腺 全體 ハ全 ク

淋巴 組 織樣 物質 ト變 化 ス ト.而 シテ甚 シキハ前 述

ノArnold, Becker及 ビTietzeノ 例ニ 於 ケル ガ如

ク,腺 物質 ハ痕 跡 ス ラモ發 見 ス ル能 ハザ ルニ 至 ル

モ ノア リ.Hirsch (1898), Plitt (1905), Meller,

Minelli, Fleischer (1910),菅 沼 氏(1912),木 下,

中村 氏 等 ハ主 トシテ之 等 淋巴細 胞 ヨ リ形 成 サレ タ

ル臚 胞 ヲ認 メ タ リ.尚 ホ結 核 樣變 化 ヲ來 タセ ル組

織 學 的 所見ニ 就 キテ ハ既ニ 述 ベタ リ.結 締 織 ノ増

殖 ハ輕 度 ニ留 マ ルモ ノアル モ,其 ノ著 シキ増殖 ハ

Hirsch, Hueckel. Minelli, Thysen, Kummel,木

下氏,中 村氏,WaUenfang, Smith and Bump及 ビ

其 ノ他 ノ報 告ニ 於 テ見 ル.而 シテ時ニ ハ 胼胝體 樣

ノ幅廣 キ結締織中隔 ヲ形成 シ,爲 メニ殘存腺物質

及 ビ新生組織ハ全ク壓縮 サレタルガ如 キ觀ヲ呈ス

ルモ ノア リ.Hirschハ 淋巴球 浸潤 ト結締織増殖 ニ

ヨリ置キ換ヘ ラレタル腺組織ガ宛 モ肝臓硬變 ト類

似 セルヲ以テ,之 ヲ涙腺及ビ唾液腺 ノ硬變 ト呼 ベ

リ.

余 ノ第2症 例ニ於テハ組織學的ニ變 化ヲ認 ムル

能 ハザ リシモ,第1症 例ニ於テハ,正 常 ノ腺構造

ハ全 ク失ハレ,著 シク増殖セル結締織繊維束 ハ縦

横ニ交錯 シテ網眼 ヲ形成 シ,其 ノ網眼内ハ主 トシ

テ淋巴細胞及 ビ「レチクルム」細 胞ヨ リナ レル所謂

淋巴臚胞 ヲ作 レリ.著 シク増殖セル結締織繊維間

隙内ニハ淋巴球,「 ブラスマ」細胞,「 エオジン」嗜

好性細胞及 ビ造結締織 細胞等 ノ浸潤大ナ リ.淋 巴

臚胞 ヨリ結締織層ニ移行スル部ニ巨大細胞樣細胞

ヲ認ムルモ,其 ノ大多數 ハ退行變性ニ陷 レル腺細

胞 ノ核 ノ集 合ニ因 ルモノナ リ.

之 ヲ要 スル ニ余 ノ症 例 ノ顯 微鏡 的所 見 ハ,

圓形 細胞 浸潤(主 トシテ淋 巴球)結 締 織 増殖 及

ビ腺 實質 ノ退行 變 性 ヲ主 トスル慢 性炎 症 ニ シ

テ,「 ミク リッツ」氏病 ノ顯 微鏡 的變 化 トシテ

從 來 多數 ノ先輩 諸 家 ニ依 リ記載 サ レタ ル所 見

ト一致 スル モ ノナ リ.

第3節 臨 牀 的 事 項

年齢 及 ビ性. 本疾 患 ハ總 ユ ル年齡 ヲ通 ジ

テ ミラルル モ,概 シテ中年 者 ノ罹患 率大 ナ リ.

例 ヘバNagelハ40歳 前 後 ニ多 シ ト言 ヒ,

Howard(1909)ハ41例 ノ統 計 ニ於 テ,最 少

年者 ハ5年5箇 月,最 高齡 者 ハ70歳 ニ シテ

平均 年齡 ハ33年 トセ リ.之 等 ヲ性 別ニ 觀 察

スル ニ,男 女 略 ボ同數 ナ リ.

症状. 本疾患 ノ症状 トシテMikuliczガ

初 メデ發表 セ シガ如 キ定 型的 症状 ノ外ニ,尚

124

「ミク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例 815

ホ多 種多 樣 ノ症状 ヲ呈 ス ルハ既 ニ述 ベ タ リ.

而 シテ個 々 ノ病 型 ニ就 キテ詳述 スルハ餘 リー

煩雜 ナル ヲ以 テ.茲ニ 綜 括的 ニ其 ノ大 要 ヲ述

ベ ン トス.一 般症状 ハ犯 サ レザル ヲ通例 トス

ル モ,時 ニ全身 倦 怠及 ビ發 熱ヲ 伴 フ コ トア リ.

白血病 性或 ハ假性 白血病 性 ノモ ノニ ア リテ ハ

原 疾 患特 有 ノ症状 ヲ現 スモ ノナ リ.自 覺症状

トシテ眼結 膜 ノ乾燥 感,上 眼 瞼 ノ重 感,流 涎,

口腔 内乾燥,嚥 下 困難 或 ハ食 慾不 振 等 ヲ訴 フ

ル コ トアル モ,何 レモ輕微 ニ シテ且徐 々 ニ現

レル ヲ以 テ放 置 スル コ ト多 ク,隣 人ニ腫 脹 ヲ

注 意 セ ラ レテ初 メテ醫 師 ヲ訪 レル場 合 少 カ ラ

ズ.他 覺症状 トシテ,先 ヅ涙 腺 ニ於 テハ上眼

瞼 ノ外上 方 ニ輕度 ノ腫腸 トシテ現 レ,次 第 ニ

増 大 シ眼 瞼下垂 或 ハ稀 ニ眼球 突出 ヲ來 ス コ ト

ア リ.眼 球 突出 ハ輕 微 ニ留 マル ヲ常 トスル モ

Anold und Becker及 ビ中村 氏 ノ例 ニ見 ルガ

如 キハ著 シク突 出 セ リ.觸 診 スル ニ,外 上 眼

窩 骨縁 ニ沿 ヒテ腫瘍 ヲ認 ム.一 般 ニ豆大 ヨ リ

指頭 大 ニ止 ル ヲ常 トスル モ,驚 クベ キ大 サ ニ

達 スル コ トア リ.表 面 ハ多 少 ノ凹 凸 ア リ,軟

骨 樣 硬度 ヲ有 ス.皮 膚 或 ハ結 膜 トノ癒着 ハ稀

ナ リ(白 血病 性或 ハ假 性 白血病 性 ノ モノ ニテ

ハ比 較 的屡 々認 メ ラル).壓 痛 ヲ訴 ヘ ズ 耳 下

腺 ニ ア リテハ,耳 下腺部 ニ相 當 シテ彈 力性軟

骨樣 硬度 ヲ呈 スル腫瘍 トシテ觸 知 セ ラル.多

ク ハ指 頭 大 ヨ リ鷄 卵大 ナル モ,鷄 卵 大 ヲ超 ユ

ル コ トア リ.表 面 ハ凹 凸 ニ富 ミ,壓 痛 ヲ訴 フ

ル ハ稀 ナ リ,皮 膚 ヘ ノ浸潤 ハ,涙 腺 腫瘍 ト同

ジク稀 ナ ル モ,Haeckel, Brunn,木 下(1917)

岡 田(1928)氏 等 ノ例 ノ如 ク之 ヲ認 ムル コ ト

ア リ.顎 下 腺,舌 下 腺 ノ腫瘍 ノ性状 ハ前者 ト

略 ボ同 樣 ナ リ.口 蓋 腺 及 ピ前 舌腺 ノ腫脹 ハ稀

ニ シテ且輕 度 ニ過 ギザル モ,Kummelノ 例 ノ

如 ク高度 ニ達 スル コ トア リ.次 ニ,之 等 諸 腺

ノ犯 サ ルル頻 度 ハ,耳 下 腺,涙 腺,顎 下 腺 ノ

順 序 ニ シテ,口 蓋 腺 及 ピ前 舌 腺 ハ前 者 ニ比 シ

テ極 メテ尠 シ.其 ノ他,淋 巴腺 腫,脾 腫 及 ビ

内分 泌機 能障 碍 等 ノ特 種症状 ニ就 キテ ハ既述

セ リ.血 液所 見 ニ關 シテハ,Mikuliczノ 言 ヒ

シ如 ク全 ク變 化 ナ キ モ ノ多 ケ レ ドモ,白 血病

性 ノ モ ノハ 勿論,シ カ ラザ ル モ ノ ト雖 モ屡 々

變 化 ヲ認 ムル コ トア リ.即 チ白血 球増 多,比

較 的淋 巴球 増 多,比 較 的 淋 巴球減 少及 ピ 「エ

オ ジ ン」 嗜好 性細 胞増 多等 ナ リ.

經 過及 ビ豫 後.一 般 ニ本疾患 ハ慢 性 ノ經

過 ヲ トリ豫 後良好 ナル ヲ常 トスル モ,經 過速

カ ニ シテ,不 幸 ノ歸 轉 ヲ トル モ ノ尠 カ ラズ.

例 ヘバ,慢 性 ノ經 過 ヲ トレル モ ノテ擧 ゲ レバ

Anold u. Beckerノ 例 ハ23年 以來 ト言 ヒ,

木下 氏 ハ13年 來,Tietze (1896)ハ10年 來,

Kummelハ8年 來,Snell (1893)ハ5年 來 ナ

リシ例 ヲ報 告 セ リ.之 ニ反 シテ急 性 ノ經 過 ヲ

トリ鬼籍 ニ入 リシ例 ヲ擧 ゲ レバ,Thursfield

(1914)ノ 例 ハ發 病後1箇 月 ニテ死 亡 シ,岡 田

氏(1928)ハ2箇 月後,Schaffer and Jacobsen

ハ4例 ニ於 テ2乃 至8箇 月,Haeckel及 ピ

Brunnハ 夫 々1箇 年 以 内 ニ死 亡 セ ル例 ヲ經

驗 セ リ ト.斯 ク ノ如 ク豫 後 ノ不 良 ナル ハ,一

般 ニ原疾 患或 ハ合 併 症 ニ原 因 ス ルモ ノナ リ.

治 療. 古 ク ヨ リ最 モ屡 々用 ヒラ レタ ルハ

沃度 劑 及砒 素劑 ノ内服 ナ リ.而 シテ其效 力ハ

黴毒 性 ノモ ノニ對 シテノ ミナ ラズ,他 ニ原 因

ア リ ト思 ハル ル モノ ニ對 シテ モ效 果 アルハ 一

般 ノ認 ムル所 ナ リ.Ranzi (1906)及 ビPfeiffel

(1906)ガ 「レン トゲ ン」照射療 法 ヲ行 ヒテ驚 ク

125

816 川 崎 祐 宣

ベ キ成績 ヲ收 メテ ヨリ,「 レン トゲ ン」治療 法

ハ本 疾患 ノ治 療法 ノ首 位 ヲ占 ムル ニ至 レリ.

其他 原 因的療 法 トシテ,結 核 性 ノモ ノニ全 身

療 法及 ビ他 ノ種 々ナル療 法 ガ試 ミラ レ,黴 毒

性 ノモ ノニ對 スル驅 黴療 法 ハ既 ニ述 ベ タ リ.

最後 ニ余 ノ症 例 ノ臨 牀的 方面 ヲ顧 ミル ニ,

兩 症例 共 ニ強状 ナ ル男 性 ニ シテ,第1症 例 ニ

ア リテ ハ,極 メテ徐 々 ニ現 レ,初 メ自覺 症状

全 ク缺 如 シタ ル ヲ以 テ,隣 人 ニ注意 サ ルル迄

ハ家 人 モ氣附 カザ リキ.其 ノ後 腫脹 ノ増 大 ト

共 ニ,上眼 瞼 ノ重 感,口 腔 内乾燥 感 及 ピ呼吸 惡

嗅等 輕微 ナル 自覺 症状 ヲ訴 ヘ シノ ミー シテ,

全 身症状 ニモ認 ムベ キ變 化 ナ シ.他 覺 的 ニハ

涙 腺 腫瘍 ハ蠶 豆大,顎 下腺 腫瘍 ハ鷄卵 大 ニ シ

テ,軟 骨樣 硬 度 ヲ有 シ表面 ハ凹凸 ヲ呈 ス.耳

下 腺 ハ左側 ニ於 テ ノ ミ小指 頭 大 ノ硬 結 トシテ

觸 レシノ ミナ リ.眼 球 突 出及 ビ皮膚 浸潤 等 ヲ

認 メズ,即 チ臨牀上 定 型 的 「ミク リッツ」氏 病

トイ フベ キナ リ.第2症 例 ニ ア リテハ,比 較

的 急 性 ニ現 レ,腫 瘍 ノ硬度 ハ稍 々彈 力性 柔軟

ニ シテ表 面 ノ平 滑 ナル點 等 ヲ除 ケバ,自 覺及

ピ他覺 症状 ハ殆 ド第1症 例 ト同樣 ナ リ.血 液

檢 査 ノ結 果,兩 症 例 共35%内 外 ノ比 較 的淋

巴球 増 多 ト,第1症 例 ニテ ハ約7%,第2症

例 ニテ ハ約25%ノ,「 エ オ ジン」嗜好性 細胞

増 多 ヲ證 明 セ シガ,「 エ オ ジン」嗜 好細 胞 ノ血

行 内増 加 ハ,寄 生蟲 病,重 症皮膚 病,喘 息患

者,悪 性腫瘍 及 ピ其 ノ他2-3疾 患 ノ際 ニ見

ラ レル モノナ ルガ,其 ノ出現 機轉 及 ビ意義 ニ

就 キテハ今 日未 ダ確 説 ナ ク,本 疾 患 ニ於 テ モ,

Pfeiffer,木 下,阿 部,小 野,中 村 氏等 ニ依 リ

増 加 ヲ認 メ ラ レ論議 サ レタル モ,他 疾 患 ノ場

合 ト同樣 今後 ノ研 究 ニ俟 ツベ キモ ノナ リ.經

過 ビ豫 後 ニ關 シテハ,余 ノ第1症 例 ハ經過 緩

漫 ナ リシモ,第2症 例 ハ比 較 的急 性 ニ經過 セ

リ,而 シテ共 ニ良 好 ノ轉歸 ヲ トレリ.既 ニ述

ベ タ ルガ如 ク,本 疾患 ハ慢 性 ノ經 過 ヲ トリ,

豫 後 モ良好 ナ ル ヲ通例 トス ル モ,之 ガ原疾 患

及 ビ合 併症 ノ如 何 ニ依 リテ ハ不 幸 ノ轉 歸 ヲ ト

ル モ ノモ尠 カ ラズ.依 ツテ吾 々ハ其 ノ原 因 ヲ

探 究 シ原 因的 治療 ヲ行 ヒ,且 合 併 症 ヲ未然 ニ

防 ガザ ルベ カ ラズ.治 療法 トシテ余 ノ第1症

例 ニ於 テハ試 ミニ右側 顎下 部 腫瘍 全剔 出,左

側 上 眼瞼部 及 ピ左 側顎 下部 ノ「ン レ トゲ ン」線

照射,竝 ニ沃 度 加里 ノ經 口的投 與 ヲ併 用 セ シ

ニ,全 剔 出 及 ビ「レン トゲ ン」線 照 射 ヲ行 ヘル

モ ノ最 モ效 果顯 著 ナ ル モ,單 ニ沃 度加 里 ノ ミ

ノ服 用 ニテ モ腫瘍 ハ徐 々 ニ縮 小 シ,6箇 月後

ニ ハ殆 ド消 失 セ リ.第2症 例 ニ於 テナ黴 毒

反應強 陽性 ナ リ シヲ以 テ,水 銀軟 膏塗 擦 及 ピ

「サ ル ヴ アルサ ン」注射 及 ピ砒 素劑 ノ内服 ニ依

リ著 シク腫 脹 ノ減退 ヲ來 シ,更 ニ 「レン トゲ

ン」 線 照射療 法 ヲ併 用 シテ著 效 ヲ收 ム.即 チ

原 因 ノ明 カナル モ ノニ對 シテ ハ,先 ヅ原 因 的

療 法 ヲ試 ミ,更 ニ 「レン トゲ ン」 線 照射 ヲ行

ヒ,原 因 不明 ノモ ノ ト雖 モ,「 レン トゲ ン」線

照射,及 ビ沃度 劑 或 ハ砒素劑 ノ服 用 ヲ併 用 セ

バ,相 當 ノ好 成績 ヲ擧 ゲ得 ルモ ノ ト信 ズ.

第4章 總括 及 ビ結論

余 ハ各 々異 ナ レル原 因 ニ ヨル所 謂「ミク リッ

ツ」氏病 ノ2例 ヲ經驗 セ リ.

第1症 例 ハ51歳 ノ身體 強状 ナル男 性 ニ シ

テ,約1年 前 ヨリ起 始 シ慢 性 ノ經 過 ヲ トリ,

126

「 ミ ク リッツ」氏 病(Mikuliczsche Krankheit)2例 817

自覺 的 ニ輕度 ノ上 眼 瞼重 感,口 腔 内乾燥,呼

氣惡 嗅 及 ビ性 慾亢 進 ヲ訴 へ,他 覺 的 ニ蠶 豆大

ノ涙 腺腫瘍,鷄 卵 大 ノ顎下 唾液 腺腫 瘍 ヲ對稱

性 ニ認 メ,該 腫瘍 表 面 ハ凹凸 二富 ミ,軟 骨樣

硬度 ヲ呈 セ リ.血 液 像 ニ此 較 的淋 巴球増 多症

ア リ.組 織 學的 檢索 ノ結 果 ハ,圓 形 細 胞浸潤,

結 締織 増殖 及 ビ腺物質 ノ退行 性變 化 ヲ主 トス

ル慢 性 肉芽 性炎症 ニ シテ,之 ガ原 因 ヲ探 究 セ

シモ發 見 スル能 ハズ.治 療法 トシテ種 瘍 ノ全

別出,「 レン トゲ ン」線 照射,沃 度 加里 服用

ナ ドヲ併 用 シテ約6箇 月ニ シテ治癒 セ シメタ

リ.

第2症 例 ハ45歳 ノ男 性 ニ シテ,比 較 的急

性 ニ約2週 前 ヨ リ發 病 シ,極 メテ輕 微 ノ口腔

内乾燥 感 及 ピ腫脹部 緊 張 感 ヲ訴 フル ノ ミニ シ

テ,他 覺 的 ニハ涙 腺,耳 下腺 及 ピ顎下 腺 ノ對

稱 性腫脹 ヲ認 ムル モ,第1症 例 ニ比較 シテ小

サ ク,硬 度 ハ柔軟 ニ シテ表 面 ハ平滑 ナ リ.血

液像 トシテ ハ淋 巴球 及 ピ特 ニ「エオ ジ ン」嗜 好

細 胞増 多症 ア リ.血 清 學的 ニ黴 毒 ヲ證 明 セ リ.

砒素劑 ノ内服,水 銀 軟膏 塗擦,「 サル ヴルサ

ン」注射 及 ビ「レン トゲ ン」線 照 射 ヲ行 ヒテ急

速 ニ約4週 ニ シテ縮 小 セ リ.之 ガ原 因 ハ恐 ラ

ク黴 毒 ニ因 ル モ ノナ ラ ン.

稿 ヲ終 ルニ際 シ,御 指導御校閲 ノ勞 ヲ賜 リタ

ル恩師津田教授ニ對 シ深甚 ノ謝意 ヲ表 シ,又,

御助力ヲ賜 リシ西 山助教授 ニ衷心感謝 ス.

主 要 文 獻

1) Alsberg, Mun. med. Wschr. S. 1834, 1900.

u. S. 516, 1901. 2) Arnold u. Becker, cit.

Thysen, 3) 阿 部,日 眼,28卷,963頁. 4)

Baumstark, Mun. med. Wschr. S. 840, 1917. 5)

Brunn. Beitrag. z. klin. Chir. Bd. 45, S. 225, 1905.

6) Berthon. cit. Hammerli. 7) Frenkel, cit.

Loos. 8) Fleischer, klin. Mbl. f. Augenheilk, S.

290. 1910. 9) Fleischer, klin. Mbl. f. Augen-

heilk. S. 398, 1902. 10) Gallasch, Jahrbuch. f.

Kinderheilk. Bd. 7, S. 82, 1874. 11) Guttmann,

Berl. klin. Wschr. Nr. 36, S. 1141, 1907. 12)

Haward, cit. Smith and Bump. 13) Hofmeister,

cit. Loos. 14) Hammerli, Dtsch. Arch. f. klin.

Med. Bd. 133, S. 111, 1920. 15) Hagenbach,

Dtsch. Zeitschr. f Chir. Bd. 93, S. 478, 1908. 16)

Hochschild, Jahrbuch. f. Kinderheilk. Bd. 42, S.

360, 1920. 17) Haeckel, Archiv. klin. Chir. Bd.

69, S. 191, 1903. 18) Heine, Arch. Augenheilk.

Bd. 97, S. 101, 1926. 19) Heineke, Dtsch. Ohir.

Lief. 33, S. 514, 1913. 20) Horner, klin. Mbl.

f. Augenheilk. Bd. 4, S. 257, 1866. 21) Hirsch,

Mitteil. Grenzgeb. Med. n. Chir. Bd. 3, S. 331,

1898. 22) 稻 田,菊 地,近 世 醫 學,第8卷,145頁.

23) Igersheimer u. Pollet. Archiv. f. Ophth.

(Graffe) Bd. 74, S. 411, 1910. 24) 木 下(益),岡

醫 雜,第331卷,661頁.25) 兼 子,軍 醫 雜,第

164號,122頁. 26) 木 下,中 眼,23卷,94頁.

27) Kummel, Mitteil. Grenzgeb. Med. u. Chir.

Bd. 2, S. 111, 1897. 28) Kroisheimer, klin. Mbl.

f. Augenheilk. Bd. 45, S. 118, 1907. 29) Loos,

Archiv. f. klin. Cihir. Bd. 159, S. 553, 1930. 30)

Mikulicz, cit. Fleischer u. Thysen u. Heineke u.

Rrunn. 31) Minelli, Virchows Archiv. Bd. 185,

S. 117, 1906. 32) Muller, Jahresb. f. Ophth.

Bd. 23, S. 187, 1892. 33) 盛,南 滿 醫,第9囘

總 演 抄. 34) Meller, klin. Mbl. f. Augenheilk

127

818 川 崎 祐 宣

Bd. 44, S. 177, 1906. 35) Mohr, Zeitschr. f.

Geburtsh. Bd. 74, S. 409, 1913. 36) 中 村,中 眼,

第17卷,483頁,593頁,681頁. 37) Napp, Zeit-

schr. f. Augenheilk. Bd. 17, S. 513, 1907. 38)

Nagel, Zeitschrif. f. klin. Med. Bd. 83, S. 358, 1916.

39) Neumann, cit. Nagel. 40) 鍋 島,中 眼,

第24卷,149頁. 41) 大 野,日 眼,第23卷,649頁.

42) 小 野,日 内 醫,第10卷,642頁. 43) Osler,

Amer. Journ. of Med. Scienc. Bd. CXV. P. 27. 1898.

44) Pfeiffer, Beitrag. klin. Chir. Bd. 50, S. 245,

1906. 45) Plitt, klin. Mbl. f. Augenheilk. Bd.

45, 1905. (Beilageheft S. 40). 46) Quinke, Munch.

med. Wschr. Nr. 1. S. 47, 1906. 47) Rommer,

klin. Wschr. 23. S. 1118, 1927. 48) Ranzi,

Munch. med. Wschr. S. 2101, 1905. 49) Schaffer

a. Jacobsen. Amer. Jour. Dis. Child. Bd. 34, S. 327,

1927. 50) Smith a. Bump, Amer. Surg. vol. 88,

P. 91, 1928. 51) Snell, Lancet, vol. 2. P. 51,

1893. 52) 菅 沼,日 眼,第16卷,548頁. 53)

Tietze, Beitrag. z. klin. Ohir. heft. 3, 1896. 54)

Thysen, Virchows Arch, Bd. 201, S. 252, 1910.

55) Thysen, Beitrag. z. Path. Anat. 50, S. 487,

1911. 56) Ullmann, klin. Wschr. 7, S. 280,

1928. 51) 上 野,中 眼.第19卷,614頁. 58)

Wallenfang, Virchows arohiv. Bd. 176. S. 90, 1904.

59) Zeidler, Cit. Fleischer. 60) Wagenmann,

klin. Mbl. f. Augenheilk. Bd. 78, S. 815, 1927. 61)

藤 井,中 眼,第23卷,93頁. 62) 片 山,日 外,

第9囘,第5號,411頁. 63) 岡 田.グ レ ン ツ ゲ

ビ ー ト,第2年,第12號.

附 圖 説 明

第1圖 右 顎下腺 剔出 標本.縦 横 ニ交 錯 セ ル結 締

織 繊維ニヨ リ區分 セ ラ レ,其 ノ中 ニ淋 巴

臚胞 ヲ圍 ム.

(Zeiss, Ok. 5, Obj. 5, K.L. 18cm)

第2圖 第1圖 ノ強 擴大 ニ シテ,淋 巴臚 胞 及 ビ コ

レニ 隣 接 セル結 締繊 索 條内 細胞 浸潤.

(zeiss, Ok. 7, Obj. 20, K.L, 27cm)

第3圖 第1圖 ノ強 擴 大 ニ シテ,結 締 織 中隔 及 ビ

圓 形細 胞集 團ノ 中 ニ巨 大細 胞(主 トシテ

萎縮 セル腺細 胞 及 ビ排 泄管)ヲ 認 ム.

(Zeiss, Ok. 5, Obj. 20,K.L. 18cm)

128

川 崎 論 文 附 圖

第1圖

第2圖 第3圖