五四 三 結び EC法と障害者の機会の平等 障害者と平等 - 明治大学 · 2012. 9....

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Meiji University Title Author(s) �,Citation �, 5: 1-18 URL http://hdl.handle.net/10291/7880 Rights Issue Date 1996-09-10 Text version publisher Type Departmental Bulletin Paper DOI https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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Meiji University

 

Title 障害者と平等

Author(s) 穐山,守夫

Citation 法学研究論集, 5: 1-18

URL http://hdl.handle.net/10291/7880

Rights

Issue Date 1996-09-10

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Type Departmental Bulletin Paper

DOI

                           https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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法学研究論集第5号96・9

障害者と平等

目次

一二三五四序機

会の平等

法・判例と障害者の機会の平等

ーアメリカの判例・法と障害者の機会の平等

2イギリス法と障害者の機会の平等

EC法と障害者の機会の平等

結び

 障害者例えば目の不自由な人にとって日本社会は、その人の不屈の精

神力ではどうすることもできない危険で理不尽な社会である。東京視力

障害者の生活と権利を守る会の調査では全盲の人三人に二人は駅のホー

ムから転落した経験を持つ。かかる危険を避けるための根本的な解決策

は落ちないための装置を付けることだが、早急にそのようなことが、現

実には財政の問題等で困難であれば、次善の策として命綱の点字ブロッ

クを障害者とよく相談して適切に敷くこと、駅員をきちんと配備して万

一の場合に備えることが考えられる。だが合理化により駅員の削減は進

む一方である。更に合理化が進み目の見えない人には使えない液晶式の

自動券売機まで開発された。また自動改札は駅の改札事務の合理化に貢

献するが、目の見えない人にとっては出口と入口が区別できない不便な

 一 1一

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ものである。このような例からも窺えるように、日本の社会は健常者を

前提に作られたため、障害者に大きなハンディキャップを負わせてき

た。 

                      ハ  

 そこで障害者をとりまく障壁のないバリアフリー社会の形成が課題と

なる。この形成のためには住宅(建物)や交通機関等をバリアフリー化

する必要がある。住宅のバリアフリi化は、①障害のある人が動けるよ

うに床等の段差をなくすこと②通路やトイレ・風呂に手すりをつけるこ

と③車椅子が使えるように通路やトイレを広げることである。これより

も緊急性のあるのは公共性のある交通機関等のバリアフリー化である。

JRの駅で駅員等が車椅子を抱えて昇降を手伝っているのを見かける

が、このような状況はできる限り障害者の尊厳の維持の観点から速やか

に改善されることが要請される。この改善策として駅に障害者用のエレ

ベーターを造ることが考えられる。新設の駅にはそれらを造る予定があ

るそうだが、その取り組みは遅れている。バスの場合も障害者にとって

その昇降は大変だ。それから役場や公民館などの公共施設、レストラン

などの民間施設も段差だらけで障害者にとって不便である。このような

バリアフリー化は障害者が自立して働くための前提条件である。この物

理的なバリアフリi化がたとえ達成されたとしても、日本の場合、障害

ゆえに就職試験の機会等を奪れたりする例が諸外国に比べて余りに多

い。そこで障害者の就職の機会の平等を図る障害者雇用促進法が昭和三

十五年に制定された。本法の政令は民間企業(常用労働者六十三人以上

                                

の規模)の障害者雇用率を一.六%と決めている。また障害者基本法は

障害者の雇用の促進等をうたっている。

 しかし、平成六年六月の時点で障害者の雇用率は一・四四%であり、

雇用未達成企業の割合は四十九・六%にのぼる。その原因として①企業

が障害者の適職を「湯茶業務」「コピー業務」「庭園管理」等に極めて狭

く限定していること②障害者がその能力を発揮して働けるように企業設

備が一般には改善されていないこと④障害者の自力移動ないし自力出勤

を容易化する交通機関の改善や都市構造の改良が極めて不十分なこと等

をあげうる。

 このような状況は、障害者の就職等の機会の平等を著しく損なうし、

ひいては障害者の自立を困難にし障害者を個人として尊重しないことに

なる。そこで、その機会の平等を担保することにより障害者の人間とし

ての尊厳を確保する必要がある。本稿は、このような状況を打破する指

針とするために欧米の障害者の平等化の現実ないし方向性を明らかにし

ようとするものである。まず障害者の平等の前提問題として機会の平等

について検討する。次にそれを踏まえてアメリカとイギリスにおける障

害者の平等の問題を判例ないし立法を素材にして考察する。第三に、こ

の問題のEU(EC)における展開をみる。最後に結びとして本問題に

関する一応の解決策を提示する。

二 機会の平等

 機会の平等は、個々人のニーズに基づいて万人を平等に取り扱うこと

を意味する。もちろん各人の個々のニーズは年齢・性別・人種・身体

的・精神的状況・社会的地位等により異なる。したがって、機会の平等

一2一

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は万人を形式的に同様に扱うことではなく、各人の差異を考慮した実質

           ゑ

的な平等(出発点の平等)である。特に雇用における機会の平等は個人

の自立・個人の尊厳にとって重要である。この点で雇用における人種差

別や性差別の不当性は、一般的に承認されている。この点をイギリスに

ついてみると、性差別禁止法は、一九七五年に立法されているし、人種

差別を禁止する人種関係法は一九七六年に立法化された。

                         ハユ

 これらの法は、イギリスにおける性差別や人種差別を禁止し、女性や

                       ハら 

黒人等のマイノリティの機会の平等を目指すものである。これらの法に

より法的には女性や黒人等のマイノリティの雇用等における機会の平等

は確保されることになった。

 しかし、同性愛者に対する雇用差別等は今だに禁止されていないし、

           

障害者に対する差別もアメリカを除くと禁止されていない。後者の点を

イギリスについてみると、障害者に対する雇用差別は障害者の高水準の

失業によって実証される。またつい最近まで障害者は健常者と教育・雇

用等の分野で社会的に隔離(分離)されていた。このことは社会がこの

分野に障害者を受け入れることができないことを認めていたこと(偏見)

の反映である。この状況を打破し健常者と障害者を統合するための施策

がなされたが、財源不足と政策決定者の誤った観念(偏見)により障害

者の雇用等における機会の平等は極めて限定的にしか達成できなかっ

た。例えば一九八一年の教育法は特殊教育を必要とする児童を健常者が

通学する普通の学校に統合しようとした。しかし、かえってその統合は

後退した。その理由は主として障害を有する児童に対する社会的偏見が

根強かった点にあったと考えれるし、部分的にはその統合を担う地方の

機関がその統合をなすのに必要な財源等を有しなかった点にあると思わ

れる。

 では偏見とはなにか。偏見とは偏った一面的判断である。正確な判断

は事実に基づき慎重になされるが、偏見は事実ではなく感情に基づき拙

速になされる。この偏見はステレオタイプと結合する。ステレオタイプ

とは細部や事実を十分検討しないで物事を一般化することである。この

ステレオタイプは、偏見によって形成され、かつ強化される。歴史上偏

見は、一般的には、社会的・政治的・経済的支配的集団からそれ以外の

集団に向けられてきた。例えば女性・人種的マイノリティ・同性愛者・

障害者は男性・人種的マジョリティ・異性愛者・健常者から偏見を受け

     ワソ

がちであった.

 かかる偏見により女性等は雇用等において不公平に取り扱われるとい

う不利益(差別)を受ける。この差別には、直接的なものと間接的なも

のとがある。直接的な差別は明らかな差別の形態である。今日このよう

な差別は余りみられなくなった。これに対して間接的差別はより明らか

でないとらえにくい差別である。例えば雇用政策や雇用慣行等が形式的

には諸集団を平等に扱うが、黒人等の集団がより充足しずらい採用条件

           ゑ

等を設定する場合である。

 このような差別は平等の観点から解消する必要があるから、その試み

                    (9)

がなされた。この点をイギリスについてみると、その試みとして人種間

の平等を図る人種関係法と男女平等を目指す性差別禁止法をあげうる。

両法は国レベルにおいて立法によって黒人等の人種的マイノリティや女

性の雇用等における機会の不平等を解消しようとする。更に今日、年

一3一

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齢・障害・エイズ・同性愛を理由とする差別は不当と認識されるように

なり、かかる差別を解消する企業等による機会の平等政策が次第に実施

されるようなってきた。

 このように機会の平等を推進することにより職場等における公正さを

担保すれば、被差別者の不利益を減少させ、その者の人間としての尊厳

                               り 

を確保することになるが、それのみならず企業に経済的利益を与える。

差別や偏見があると、差別を受ける者等はその能力を発揮できないから、

企業は全従業員の能力の発揮による業績の向上を図ることができない。

採用・訓練・昇進における機会の平等は、従業員の仕事への動機付けを

高める。それは生産性の向上につながり企業の利益となるのである。か

っては企業等における機会の平等化政策は企業等の運営から分離された

ものとみられ、またその政策はマイノリティ集団等の一部集団にしか利

益を与えないとみられがちであった。しかし、この政策は従業員等の士

気・動機づけを高め、企業に利益をもたらすものであるから、企業の基

                               し

本的事業政策とみられるし、また全従業員等に利益を与えるものである。

三 法・判例と障害者の機会の平等

 ー アメリカの判例・法と障害者の機会の平等

 障害者の法的平等の達成の嗜矢は障害をもつ児童を公立学校から分離

するのを防ぐ努力にみられる。かっては、強制出席法の下でさえそのよ

うな児童を分離すべきだという社会通念が定着していた。例えば一九一

九年のウィスコン州の州最高裁でさえ脳性麻痺の少年の分離を認めてい

 に 

た。なぜなら、脳性麻痺の少年は教師及び児童を意気消沈させる効果や

好ましくない効果をうむからである。

 しかし、一九七〇年代初頭になると、かかる分離の慣行は、違憲と認

                            ほ 

められるようになる。すなわち、遅進児ペンシルベニア協会事件及びミ

   と

ル事件において、分離政策は精神薄弱児童の平等権を侵害するとされた。

しかし、これらの判例は、全国レベルではなくその裁判所の管轄権内に

おいて統合教育を要請するものにすぎなかった。

 全国レベルでの統合教育の要請は、一九七五年の全障害児童教育法

(現在の障害教育法)成立によって充足された。この法律によって障害

をもつ全児童が無償の相当な公教育を受ける資格を持つに至った。また

当該法律は障害を持つ学生の分離を少なくしたり、なくすことを要請し

た。 

全障害児童教育法の成立より少し前である一九七三年に人種差別や性

差別を禁止する公民権法を模範にしてリハビリ法が連邦議会で可決され

た。本法は、連邦の財政援助を受けた組織による障害者差別を禁止する

ことによりアメリカにおける障害者の機会の平等を図ろうとするもので

ある。この法は一九六四年の公民権法第四篇=章の修正教育条項の後

      め 

に挿入された。公民権法第五〇四節はハンディキャップを負った者の権

利を保護するために制定された最初の連邦法である。本法はハンディキ

                      め 

ヤップに基づく差別をなくそうとするものである。もっとも当該五〇四

節はハンディキャップを負った者の一定の組織による差別を部分的に解

          ぜ

消するものにすぎない。すなわちこの第五〇四節は連邦の財政援助を受

けている組織がハンディキャップを有するがそれ以外の点では資格のあ

一4一

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る者をハンディキャップのみを理由にして差別することを禁止する。し

かし第五〇四節はその目的等を明確に規定しなかったため、かかる組織

の義務は不明確であった。また適用領域が限定され、さらにその法の施

行に対して連邦議会は指針を与えなかった。これらのことから、その法

         ぜ

の実効性は害された.

 そこで、一九七四年に法改正がなされ、雇用のみならず輸送・住宅供

給・公共医療等における障害者差別も禁止され、障害者保護の範囲が拡

        . (20)

大されることとなった。また厚生教育福祉省規則は法執行の問題を多少

解決した。

 この改正と規則の制定は大学にも障害者の取り扱いに対する一定のガ

イドラインを与えたが、そのガイドラインは明確ではないので、どうい

う、大学の障害者の取り扱いが禁止される差別に該当するかが問題とな

った。そこで一九七三年のディビス事件(Q。o信9①器8;Oo目ヨロ三け《

    こ

タO匿色では、不明確な「他のすべての点では資格がある」という文言

が問題となった。またサウスイースタン大学の政策の当否が問題となっ

た。 

本件において、ディビス(女性)は重大な聴覚障害を有するため、読

唇術に依存していたが、サウスイースタン大学の看護部(校)を受験し

た。しかし、その障害のため合格できなかった。そこで、彼女は障害を

理由とする差別があったとして、サウスイースタン大学を訴えた。

 この事件で合衆国最高裁は、「他のすべての点では資格がある」者と

いう文言を解釈し、そのような者はハンデイキャップにもかかわらず計

画が求める要件をすべて充足し得る者であるとした。そして、本件の場

合ディビスのために便宜を与えることは大学の看護計画の「実質的変更」

をもたらすから、そのような便宜を与える必要がないとした。また大学

が看護婦に正常な役割を果たさせるようにする大学の一切の学生訓練目

的を大学の正当なアカデミックな政策とみた。

 かかる最高裁の立場は、大学に障害者の扱いにつき広範な裁量権を認

めるものであり、大学が障害者に便宜を図ってより障害者に不利でない

他の手段を考慮したという証拠を提出しなくても、大学の決定は合理的

なものだとみなされる。この立場からすると、「他のすべての点では資

格がある」者は、便宜を与えられなくても計画の要請をみたしうる者と

いうことになるが、これを額面どおり受け取ると、第五〇四節が規定す

                      露V

る合理的便宜の要請は抽象的で無意味なものとなろ・先

                             露)

 ところが、一九八五年のコート事件(一)匿ωぎ≧o×9。巳興質079①)に

おいて最高裁は組織がその計画で障害者のために合理的な便宜を図る必

要があるとして、「他のすべての点では資格がある」者の定義を修正し

その範囲を拡大した。

 一九八七年のエアライン事件(Q。oゴoo一bdo母ユohZ⇔ωω窪Oo葺蔓

   ハち

〈°〉島昌⑦)において、最高裁は、合理的な便宜を障害者に提供するかど

うかを決定する場合に、=疋の組織の政策決定者の判断は尊重されるべ

きだとし、またハンディキャップを負う者のために便宜を図ると、それ

がその組織の計画に本質的な変更をもたらしたり、その組織に不当な財

政負担を負わせたりする場合に、そのことを証明すれば便宜を図る必要

がないとした。

                       (25)

 一九八八年のスチュアート事件(Ud「oヨ雪タω8≦旦を扱った第五控

一5一

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訴裁判所は、障害者に合理的便宜を提供した上で、,障害者が「他のすべ

ての点では資格がある」者に該当するかを判定すべきだとしたが、その

合理的便宜は組織の計画を犠牲することなしに障害者のこーズに応える

ものである必要があるとした。この控訴裁判所は、合理的便宜を図る要

件として組織の計画を犠牲にしないことをあげているので、この点では

エアライン事件最高裁の立場とほぼ同様の立場に立脚するものと思われ

る。この要件を強調すると、合理的便宜を図らなくてもよい場合が多く

なり、障害者の機会の平等は担保されない。

 そこでエアライン事件最高裁の立場に立脚しながら、それに=疋の制

限を課し、障害者の機会の平等をより図ろうとするのが、一九九一年の

                         (26)

ワイン事件(專昌昌①質月魯ω¢巳く①「ωξωoゴo巳oh竃Φ巳oぎΦ)控訴審判決

である。この判例は障害者の機会の平等を一歩前進させる重要なものな

ので、少し詳細に検討する。

 事実関係をみると、ワインは失読症の学生であるが、一九八三年にタ

フト大学医学部(校)に入学した。ワインの医学部進学テストの点数及

び大学の成績では一般選考手続では入学は認められないが、タフト大学

医学部はアファーマテイブ・アクション政策により彼の入学を認めた。

ワインは第一学年の終わりまでに十五コースのうち八コースを履修でき

なかった。学則は五コース履修できなかった学生は退学処分にすると規

定していたが、学部長はその規定に反して特別に第一学年を再履修する

ことを認めた。これに対して、学生評価進学委員会等は学則に基づくワ

インの退学を勧告した。そこでこの問題を検討するためタフト大学医学

部(校)は神経心理学者にワインの神経心理鑑定をしてもらったが、そ

の学者は多項選択式のテストはワインにとって不利であると判定した。

タフト大学医学部はこの判定を尊重した。

 そこで、ワインは第一学年で履修できなかった八コースを再履修する

ことになったが、そのうちニコースを再び落とした。その後ワインはこ

の落第したニコースの追試験を受けたが、そのうち一コースに落第した。

このため学生評価進学委員会等はまたワインの退学を勧告した。この勧

告に今度は学部長が応じたので、タフト大学医学部(校)はワインを退

学処分にした。

 タフト大学医学部は連邦から財政援助を受けているから、その教育計

画においてリハビリ法によりワインに対して他の学生と同様に教育の機

会の平等を提供する義務を負う。それなのにこの義務に違反してワイン

を退学処分にしたとして、ワインは公民権侵害を扱う合衆国の教育部局

にタフト大学医学部(校)の公民権侵害を訴えた。これに対して、当該

部局はその訴えをしりぞけた。そこでワインは裁判所にタフト大学医学

部のハンディキャップに基づくワインに対する差別の救済を求めた。し

かし地方裁判所はワインの訴えを認めず、タフト大学医学部勝訴の略式

裁判をした。そこで、ワインは第一控訴裁判所に控訴した。

 これに対して、第一控訴裁判所は、コート事件最高裁判決の枠組を用

いながらも、それに限定を加え、その限定された枠組を用いてタフト大

学医学部がリハビリ法上の法的義務を果たしたかを検討した。

 裁判所は、この検討をするために次のような基準を定立した。すなわ

ち「他のすべての点では資格がある」者に該当するかを判定する場合、

合理的な便宜を提供した上で判定する必要がある。そして、教育組織は

一6一

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どのような合理的便宜が提供し得るかを専門的・学問的に判断しなけれ

ばならないが、この判断は尊重される。もっとも、教育組織が合理的な

便宜を提供できないと判断した場合、争いのない事実を記録した文書を

提出して次のことを証明しなければならない。教育組織の当該問題を担

当する者が①他の選び得る手段、その実行可能性、それを利用する場合

の費用やアカデミックな計画に対する影響を顧慮したこと②その利用し

得る他の選び得る手段がアカデミックな水準を低下させたり、実質的に

組織の教育計画の変更をしたりすると合理的に結論付けたこと。この基

準によるとタフト大学医学部は多項選択式試験以外のテストはアカデミ

ックな水準を低下させたり、授業計画の実質的変更をもたらす場合には、

多項選択式試験を用いたとても、アカデミックな決定は尊重され、リハ

ビリ法に違反しないことになる。

 しかし、裁判所は当該基準を適用して、タフト大学医学部がその義務

を履行しなかったと判断した。裁判所は神経心理学者の鑑定結果とワイ

ンの履修状況に鑑み、ワインは十分に学業を成就する能力を有すると考

えた。そこで、ワインが的確に対応できない現行の多項選択式試験以外

の学力判定手段を提供する便宜をワインのために図るべきであるが、そ

れが実質的にタフト大学医学部の教育計画の変更をもたらすものである

ことの立証責任をタフト大学医学部に課した。

 その立証をするために、タフト大学医学部の学部長は他のテストを用

いなかったことを正当化するために、多項選択式試験を利用した理由を

述べた宣誓供述書のみを提出した。その宣誓供述書にはこう記されてい

る。医学部のテスト手続を決定することに責任のある医学教育に従事す

る者の専門的見地から、多項式選択式試験は実質的に重要であると判断

した。また複雑な資料たる文書を読解し分析する能力は、現代医学にお

いてその安全で責任ある医療行為のために必要である。それから、医者

は医学雑誌を読み最近の診断や医療行為の発展を速やかに理解する必要

があると。しかし裁判所はその宣誓供述書だけでは不十分であると判断

した。なぜなら、当該宣誓供述書はタフト大学医学部が他の選び得るテ

ストを検討したと述べていないし、また多項選択式試験特有の性質に言

及していないし、それからワインに合理的な便宜を図ることができるか

どうかに関する情報を提供しなかったからである。かかる不十分な証拠

の提出だけでは、裁判所は多項選択式試験が真に学生の理解をテストす

る最良の方法であるか、それともその能力を測定する便宜的な手段であ

るかを審理できなかった。そこで第一控訴裁判所はワインの学力の判定

に多項選択式試験を用いれば足りるかという問題に対する第一審裁判所

の略式裁判を破棄し、更に事実審理をさせるために第一審に差し戻した。

 かかる多数意見に対して、少数意見は大学のアカデミックな事項に関

する決定に敬意を払い、多項選択式試験を学力判定手段として最良であ

ると判断した。しかしこの立場はあまりにも大学の自由を一方的に尊重

し、ワインの機会の平等を軽視するものものであり、妥当でない。

 本件においては、ワインの機会の平等とタフト大学医学部の学問の自

       (27)

由(大学の自治)が対立しているから、等価値的な比較考量によりその

調整を図ることが課題となる。一方において障害者であるワインの機会

の平等を達成すべきあるし、他方においてタフト大学医学部の学問の自

由(大学の自治)も尊重すべきである。障害者であるワインが将来誇り

一7一

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をもって自立して生きていくためには、医学部で教育を受けることは極

めて重要である。それなのにタフト大学医学部が障害者であるワインを

退学処分にする場合にはその処分によってワインが受ける不利益を十分

に考慮すべきである。その処分によってワインは、教育の機会を奪われ、

その後の人生において社会的に成功することは困難となる。この不利益

を顧慮するならば多項選択式試験の代替措置が取れるならば、それを取

りワインの教育の機会を担保する必要がある。もっとも、そのような便

宜を図ると、タフト大学医学部にとってその教育計画の基本的変更等が

必要であり、実質的障害があるといえる場合には、タフト大学医学部の

学問の自由(大学の自治)を制約すぎるから、その措置を取る必要がな

い。本件において、教育計画の基本的変更等をせずに、ワインの学力を

正当に評価し得る他の選び得る手段があったといえる。例えば多項選択

式試験の代わりに論文試験や口頭試問を実施すること等が考えられる。

このような代替手段を取る実質的障害がないにもかかわらず、ワインに

対して退学という不利益な処分をすることはワインの機会の平等をあま

りに損なうものであり合理的でない。

 これらの判例の展開からリハビリ法の問題点は解消されたとまではい

えないが、連邦の財政援助を受けて行なわれる活動は広範な領域にわた

るから、リハビリ法は障害者差別に対する救済に大きな役割を果たす。

 しかし、かかる法による障害者差別禁止が一応有効だとしても、法が

差別を禁止した領域外に未だ多くの差別が存在する。そこで、かかる差

別に対抗するために障害を理由とする差別は不快な差別であり裁判上違

憲であると主張された。

 セルバン・リビングセンター事件(Ω蔓o{Ωoげ犀ヨo≦Ωoげ匡∋o=≦昌σq

  (28∀

OΦ三9では、この文脈で精神薄弱者差別問題の違憲性が問題となった。

最高裁は精神薄弱者が疑わしい区分又はそれに準ずるものであるかを検

討した。最高裁は特別の司法的救済を求めうる恵まれない集団であるか

を判定する一応の基準は、①不快な差別の歴史②当該集団の特性の不変

性③政治的無力や選挙権の剥脱である。この基準に照らして精神薄弱者

がこの集団に含まれるかを検討した。①については、実質的な差別があ

ったとした。そして五名の最高裁判事は精神薄弱者に対する虐待の歴史

をグロテスクなものであるとみた。②については問題としなかった。③

については、次のように判断した。精神薄弱者の利益となる障害者教育

法等の多くの連邦法や州法が制定されてきた点からして、精神薄弱者が

自分たちに立法者の目を向けさせる能力を有しているという意味で政治

的に無力ではないとした。この点からして高められた審査は必要ではな

いとする。更に①②③以外の点すなわち精神薄弱者を健常者と区別する

目的の正当性を検討し、その一応の正当性を肯定した。この点からも合

理性の基準より高められた基準を用いるのは賢明でないとした。この先

例により精神薄弱者等の障害者を不利に扱う法は合理性の基準が適用さ

れ、合憲と推定されるため、そのような法を違憲とする主張は非現実的

なものとなった。

 以上から、障害者のための法の整備は不十分であり、それを埋め合わ

せる憲法訴訟による救済も閉じられた。そこでこの状況を打破するため

に障害を持つアメリカ人法が一九九〇年に連邦議会によって制定され

た。

一8一

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  ㈲障害をもつアメリ力人法

           (29)

 障害をもつアメリカ人法は、}九九〇年七月二六日に連邦議会によっ

て制定された。本法の目的は民間企業に一定の基準を遵守させることに

よって障害者に対する差別を排除することにある。当該連邦法は一九七

         (30)

三年制定のリハビリ法を参考にしたので、リハビリ法が定立した定義等

を多く採用した。したがって、前述したリハビリ法に関する判例の解釈

は、障害をもつアメリカ人法の解釈にとっても有益である。障害をもつ

アメリカ人法第一篇は一九九二年七月二六日に施行された。それは、本

年又は前年に二〇週労働日以上の期間二十五人以上の従業員を使用する

使用者(企業)にスロープ、車いすトイレの設置などを企業の負担で整

えるよう義務付け、かかる「必要な配慮」をしないと、使用者(企業)

は障害者差別をしたとみなされる。一九九四年七月二六日に本法は、そ

の適用範囲を拡大し、本年又は前年に二〇週労働日以上の期間十五人以

上の従業員を使用する使用者(企業)にも適用されるようになった。本

法は州・地方公共団体にも適用されるが、合衆国・合衆国所有の国営企

業には適用されない。又インディアン民族・真性の私的な会員をメンバ

ーとする私的クラブにも適用されない。この連邦法は、障害者の機会の

                               (31)

平等を図る重要な法律である。そこで、以下において、アメリカの文献

を参考にしながら、障害をもつアメリカ人法の背景及びその内容をおお

まかに述べたうえで、その内容の問題点等を少し詳細に検討する。

 一九八九年の上院の労働・人的資源委員会の障害者差別に関する報告

  

は、次のように述べている。①歴史的に障害者は差別され孤立してい

た。かかる差別と孤立は今だにアメリカ社会に広範に根付いている。②

この差別は、今でも、私的セクターにおける雇用・公的な性質を有する

私的収容施設・公共サービス・輸送・遠距離通信のような重要な領域に

おいてみられる。③現行の連邦法や州法はこれらの領域において障害者

が直面する差別に対処するのに不十分である。④障害者は集団として社

会経済的にまた職業的・教育的に劣悪な地位におかれている。⑤障害者

に対する差別は、障害者が健常者と平等に競争する機会を奪うので、障

害者を合衆国・州・地方自治体・私的セクターに依存させたり、その生

産性を低下させたりする。そのため、これらの公的・私的組織は障害者

                              (鰹

に何百万ドルの支出をせざるをえないと。またルイス・ハリス・ボウル

によると、一九八九年において、十六歳から六十歳までの障害を持つア

メリカ人のうち、三分の二は全く就業していない。これら者のうち六十

六%は就業意欲を持ちながら、失業状態にある。また企業のトップにあ

る経営者や管理職の者等の三分の二は障害者に対する雇用差別を認めて

い舷と・それから・ドメイビ・シは次のようにまず障害者に対する雇

用差別を指摘する。すなわち、①使用者が雇用における障害者の機会の

平等を奪うような基準を用いたり、職務の不可欠の機能を遂行する能力

ではなく障害自体を重視する採用形態を用いたりする。②使用者が障害

者のために提供できる便宜を提供しない。③障害者が業績・安全性・保

険費用・出勤の点で問題があるというステレオタイプ的観念に基づい

て、使用者が障害者の採用を拒否する。④障害者と共同して働く者がそ

の共同を拒む。⑤使用者が障害者を採用したとしても、その者を将来有

望な仕事に付けさせない。⑥障害者は健常者と異なり、その能力を十分

に活用されないし、昇進の機会もない。次に精神病者に対する差別を解

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消することの重要性を指摘する。そして精神病者のなかには、チャーチ

ル・リンカーン・ミケランジェロ・ニュートン・ゴッホのような天性の

才能の持ち主がいるから、彼らを差別せずその社会参加を促進すること

は、彼らの社会生活における平等を確保するのみならず文明をより曲豆か

         (35)

なものにもするとい・鬼

 このような障害者に対する差別を克服するため、障害をもつアメリカ

人法は障害者の社会参加の妨害となっている四つの障壁を取り除こうと

している。すなわち、①雇用差別を解消し②公共的性質を有する私的収

容施設を利用し得るようにし③障害者が利用しやすいように公共輸送機

関の施設を新設したり改造したり④障害者が利用しやすいように遠距離

通信装置を改造しようとしている。

 障害者に対する雇用差別をなくすことは、障害者の自立にとって不可

欠である。障害者が公共的性質を有する私的収容施設を健常者と同様に

利用し得るようにすることは、障害者の孤立化を回避しその社会参加を

確保するものである。ここにいう公共的性質を有する私的収容施設とは、

一定の法規制を受ける商業的施設または現代生活を過ごしやすくする私

的施設である。その例としてレストラン・ホテル・病院・薬局・博物

館・公園・私立学校等をあげ得る。純然たる私的クラブや宗教組織は含

まれない。公共的性質を有する私的収容施設は、障害者に対する障壁の

除去を求められるが、それは当該施設が「容易に成し遂げ得るものであ

り、余り困難なく又は余り費用をかけなくても実現できる場合」に限定

  (36V

される。障害をもつアメリカ人法は公共的性質を有する私的収容施設を

新たに設置する場合には、障害者が利用し得るものでなければならない

とする。例えば、新築の建物が三店舗以上の店舗を収容し、一フロアー

が三〇〇〇スクエアフィート(一スクエアフィートは一〇〇平方フィー

ト)以上である場合には、エレベ…ターを設置することが義務付けられ

る。またショッピングセンター・車両乗り入れ禁止の商店街・ヘルスケ

アをするオフィイスの場合、エレベーターを設置することが義務付けら

れる。

 特にアメリカ社会においては、輸送機関を利用できなければ生活がで

きない。しかし、輸送機関はすべてのアメリカ人が利用しようとすれば

直ちに利用できるわけではない。障害者は車両や駅の構造等から輸送機

関を利用するのが困難であった。障害者が輸送機関を利用できなければ、

雇用差別から解放されて就職できたとしても、会社等に定刻に出勤し、

健薯と同様に霧を遂行することは極めて困難であるし・また公共的ト

                                 ヨ

性質を有する私的収容施設を利用して生活を送ることは難しい。したが

って、障害をもつアメリカ人法は障害者が利用しやすいように公共輸送

機関の施設を新設したり改造したりすることを輸送機関に義務付けるの

  (37)

である.

 電話が普及し、電話によるコミュニケーションが仕事上・社会生活上

不可欠になっている。したがって、現代人が現代社会においてその職務

等を円滑に遂行するためには電話を容易に利用し得る必要がある。とこ

ろが、聴覚障害者等は標準タイプの電話を利用できないため、それは聴

覚障害者等が社会生活を送る上で大きな障害であった。そこで障害をも

つアメリカ人法は聴覚障害者用の遠距離通信サービス等の確立を求めて

いる。

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 しかし、かかる障害をもつアメリカ人法が定める義務を履行するには、

費用がかかる。そこで、これらの義務のうち一部については、税法上の

優遇がなされる。すなわち、障害者にとって大きな障害となっている建

物や輸送における障壁を除去するのにかかった費用につき一五〇〇〇ド

ルまで税の控除が認められる。また一定の小企業(総収入が一〇〇万ド

ル以下又は従業員が三十人未満の企業)は、障害をもつアメリカ人法が

定める義務を履行するために支出した一定の費用(二五〇ドルから一〇

二五〇ドルまでの範囲で支出した費用のうち最高五〇%まで)の税額の

控除が認められる。

 このように税法上のバックアップを受けた障害をもつアメリカ人法

は、障害者の機会の平等を図るものであり社会正義にかなうものであ

る。 

そこで、障害をもつアメリカ人法の内容をより明らかにするために、

以下においては本法が規定する重要概念をみていく。

 まず「障害」という概念についてみると、本法は障害を次のように規

定する。①障害とは、身体的・精神的障害であり、障害者の「主要な生

活活動」のうち一つ以上を「実質的に制限する」ものである。②そのよ

                         (38)

うな障害の経歴又はそのような障害があるとみられるこも

 ここにいう「主要な生活活動」とは、自分の世話をしたり、手仕事を

したり、歩いたり、見たり、聞いたり、話したり、学んだり、労働した

           (39)

りするような活動等である。また「実質的に制限する」とは、障害が主

                            ハな

要な生活活動を行なう時間・方法等をかなり制限する場合である。かか

る制限に該当するかどうか決定する場合に三つの要因が考慮される。そ

の要因とは①障害の性質・程度②障害の期間等③永久又は長期の障害か

         (41)

ら生じる影響等である。そして使用者が「実質的に制限する」かどうか

決定する場合に、医学上の手段等を考慮して三つの要因を検討すべきで

                          (42)

ある。特にHIVは、「実質的に制限する」事由とされている。しかし、

手足の負傷・足くび等を挫くこと・虫垂炎・インフルエンザ・肥満等は

「主要な生活活動」にほとんど影響を与えないので、「実質的に制限する」

           (43>

事由ではないとされている。

 以上をふまえて、主要な生活活動である「労働の実質的な制約」とい

う実質制限事由をみるに、障害者が特定の職務を遂行できないのではな

く、健常者と比べて種々の分野ないし広範囲の分野で職務を遂行する能

力において劣る場合には、「実質的に制限する」事由とされる。障害者

が「労働の実質的な制約」を受けているかを判定する場合、次の要因を

考慮する。①障害の性質・程度②障害を有する期間等③障害による恒久

的ないし長期の影響等④障害者が通勤し得る合理的な地理的地域⑤障害

者が障害を理由に資格がないとされてきた仕事。障害者が、その地理的

地域内において、訓練・知識・技術・能力のレベルにおいて健常者と異

ならないのに障害に基づき資格がないされる仕事の数や種類。⑥障害者

が、その地理的地域内において、訓練・知識・技術・能力のレベルにお

                               (包

いて健常者と異なるため障害に基づき資格がないされる仕事の数や種類

これらの要因を考慮して「労働の実質的な制約」事由を判定する場合、

労働が障害者の自立にとって不可欠である点に鑑み、できるだけ限定的

に「実質的に制限する」事由を認めるべきである。

 次に、法は「不当な辛苦」を企業に強いない「合理的な便宜」の提供

一11一

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を企業に義務付けるが、その具体的内容が明らかでないのでそれを検討

する。法は障害を持つが資格のある者に対する差別を禁止する。本法に

よると、企業が障害者の不便を解消する便宜を図ると、それが企業の事

業に「不当な辛苦」を強いることを証明しなければ、障害を持つ求職者

や従業員で資格のある者の身体的・精神的障害に対して「合理的な便宜」

                    (45)

を図らないことは、「差別」にあたるとされる。この「合理的な便宜」

の提供により労働環境や慣行を変え、障害者の機会の平等を享有し得る

     ぜ

ことになる。法は当該「合理的な便宜」を次の三つのカテゴリーに分け

る。第一は、採用プロセスにおいて障害者の機会の平等を確保する「合

理的な便宜」である。第二は、従業員が、企業内の望ましい地位におい

て、その地位の不可欠の機能を果たせるようにする「合理的な便宜」で

ある。第三は、障害を持つ従業員が健常者たる従業員が享有する雇用上

の利益等と同様な利益等を享有できるようにする「合理的な便宜」であ

る。このような「合理的な便宜」を図ることを企業は義務付けられるが、

企業に過大な負担を負わせることを避けるため、企業が「合理的な便宜」

を提供することが「不当な辛苦」を蒙ることを証明すれば、そのような

         (47)

便宜を図る必要はない。

 この「不当な辛苦」は一般に便宜を提供することから企業が蒙る相当

                         (48)

な困難ないし企業が負担する相当な費用と定義付けられる。これに該当

するかは、次の要因を考慮して決定される。①税額の控除ないし外部の

資金提供を受けられるかを考慮した上での要求される便宜の性質及び純

費用。②合理的便宜を提供する企業の全財政的資源、従業員数、費用と

資源への影響③適用企業の全財政的資源、従業員数からみた適用企業の

規模の大きさ、その施設の数・種類・配置④適用企業の労働者の構成・

構造・機能をも考慮したその企業の事業の種類、適用企業の問題の施設

の地理的懸隔・管理上または物理上の関係⑤他の従業員がその職務を遂

行する能力への影響や企業がビジネスを行なう能力を考慮した上での企

            (49)

業の事業への便宜提供の影饗

 次に、「異なる影響」についてみるに、法は画一的に適用される基準

又は政策が障害者又はその集団に異なった影響を与える場合でも、その

基準または政策が職務に関連し業務の必要に基づき、またその職務の遂

行が合理的な便宜を提供しても達成されないときには、その基準又は政

          む

策は認められるとする。同様に使用者が異なる結果をもたらす採用基準

を用いる場合、その基準が職務に関連しまたビズネスの必要に基づくこ

                む

とを証明しなければならないとする。確かに企業の正当な利益を考慮す

れば、かかる基準等を用いることを認める必要があろう。しかし、障害

者に健常者とは「異なる影響」を与える基準等は障害者の差別につなが

る恐れが大きいから、この基準等の使用は慎重であるべきである。

 次に「職務の不可欠の機能」を検討する。障害者が塒定の職務ないし

仕事の資格があるといえるためには、少なくとも合理的な便宜を提供さ

れた場合には生産水準を低下させないで当該「職務の不可欠の機能」を

果たす必要がある。何が「職務の不可欠の機能」であるかは、次のよう

な要因を考慮してその機能を果たさなければその職務を遂行できないか

を一切の関連証拠を用いて個別・具体的に判断すべきである。その要因

とは①当該職務上の地位が特定の機能を果たすため当該地位が特定の機

能を遂行するために設けられているか②当該職務機能を遂行するために

一12一

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使用し得る他の従業員の数・その従業員に当該職務機能を遂行させ得る

こと③当該職務機能を遂行するために要求される専門性・技術の程度で

 (52)

ある。

                 ホミ

 この概念は、クレイが指摘するように障害者の雇用における機会の平

等の達成を制約する。法は障害者が実際仕事ができるのに障害者の雇用

の機会を奪うのは許さないという前提に立つから、障害者がその機会を

得るためにはこの要件を充足する必要がある。しかし、この要件を充足

することを妨げる身体的・精神的障害のため当該要件の充足は容易では

ない場合が少なくない。たとえ充足されたとしても、仕事の重要でない

部分に限定される恐れが大きいので、この要件を厳格に解すると、障害

者は自己の能力を発揮し得る職場を十分に確保し得ない。したがって障

害者の雇用における機会の平等を達成しその自己実現を図るためには、

この要件は緩和する必要がある。

 以上みてきたように、本法は企業の利益を配慮しながらも障害者の機

会の平等を図る画期的な連邦法といえよう。

                  ミ

 2 イギリス法と障害者の機会の平等

 イギリスにおける障害者の雇用の促進を図る法律として一九四四年の

障害者雇用法と一九五八年の障害者雇用法をあげる得る。両法は障害者

に多くの利益をもたらす障害者登録制を導入した。この制度により一定

の企業は登録した障害者しか雇用できない。それから両法は割当制を導

入した。この制度の下では二〇人以上を従業員を使用する企業は=疋の

割合(全従業員の三%)を登録障害者から雇用する必要がある。この割

合を達成できなくても、罰則の適用を受けないが、使用者は登録障害者

以外の者を雇用することを禁止される。また使用者は正当な理由がなけ

れば登録障害者たる従業員を解雇できない。また雇用計画において障害

者のために一定の仕事を留保する必要がある。駐車場係や乗客用の電動

リフト係の仕事は登録障害者のために留保されてきた。

 一九七〇年には慢性的病者及び障害者法が成立した。本法は各地方機

関が各地方の社会に居住する障害者の異なる二ーズに応えることにより

障害者の生活の向上を図ろうとするものである。本法は一九七六年に改

正され、その改正法によると、新築又は改築の職場の建築物は、障害を

持つ従業員が利用できるものであることまた障害者用の駐車場や衛生施

設の設置を企業に義務付ける。

 一九八五年の会社法は、登録障害者のみならず未登録障害者の労働者

にも適用される。本法は、平均二五〇人以上の従業員を使用する企業に

適用される。当該企業の取締役は会社の年報で次の三つの点に関する雇

用政策について報告しなければならない。すなわち第一に障害者の採用

において採られてきた障害者の平等に十分配慮した政策。もっともその

政策は障害者の能力・才能を十分に顧慮したものである必要がある。第

二に職務中に障害を蒙った従業員に対して採られた措置。すなわち障害

を蒙った者に対する訓練・リハビリ・他の職務の割り当てのために採ら

れた措置。第三に障害を有する従業員の職歴の向上や昇進のため採られ

た手段。

 一九八一年には障害者法が制定された。本法は障害者が移動しやすい

ようにする手段を初めて採用した。本法は一定の企業の施設や公共的建

一13一

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物の構造を障害者が利用しやすいようにした建築基準に従ったものにし

なければならないとした。例えば、障害者が車椅子で建物を利用できる

ように段差をなくしたり、玄関口を広げたり、車椅子用リフト・巻揚

機・階段リフトを設置したりすることが義務付けれる。もっとも、この

ように障害者の移動の妨げになる障壁(バリア)をなくすために、使用

者が建物の構造を改造等する場合には補助金が受けられる。この補助金

の給付により使用者の負担は軽減され、使用者の利害と障害者の機会の

平等の確保とが調整される。

 一九九二年には障害者の利益を考慮した三つの法律が制定された。第

一は高等教育法である。本法は六学年制の大学等において評議会は二十

五歳までの学習困難な学生のために適当なコースを設定しなければなら

ないとしたり、職業コース又は研究コースに進める自活コースやコミュ

ニケーション技術コースを設けたりしなければならないとした。第二は

競争及びサービス法である。本法の下において社会サービスによる電話

代の援助を受ける障害者は、保証金を払う必要がなくなった。これによ

り当該障害者はこの点で経済的負担を免れることになった。第三は教育

(学校)法である。本法は学校の試験結果を比較するために成績対比一

覧表制を導入した。この制度は障害者等の特別のニーズを考慮し得る女

王陛下の視察団の権限を強化した。この強化により、障害者の成績はよ

り適正に評価されるであろう。

 このように一応障害者の機会の平等は一応図られているが、アメリカ

と比較すると不十分である。そこで障害者に女性や人種的マイノリティ

の場合と同様な保護を与える差別禁止法案が一九九二年に提出されてい

る。本法案は障害者が直面する偏見に基づく差別を違法とするものであ

る。この法案が可決されれば、イギリスはアメリカに続き障害者の市民

的権利を保護することになろう。

 なお、同じ頃、障害をもつ者の雇用促進を目指す計画(十ポイント計

画)が首相の支持の下に始まった。障害者の三分の一しか雇用されてい

ない状況を改善するために始められたのである。六十歳以下の障害者は

約二百万人にのぼるとされているが、多数の障害者は失業している。そ

の失業は彼らが労働能力を有しないからではなく、使用者の障害者に対

する偏見と差別による。そこでこの計画は障害者が企業になし得る貢献

を使用者にもっと知ってもらうことにより、その偏見と差別をなくし障

害をもつ者の雇用促進を図ろうとする。そして、この計画は障害を持つ

労働者が企業に対してなし得る貢献の可能性を十分に高めるために、使

用者がその労働者にする援助が重要であるとする。この援助により障害

者は適当な職場を確保し得ることになる。この計画は五十を超える上位

の大企業に支持され、障害者の雇用促進に貢献している。

            (55)

EC法と障害者の機会の平等

 ECには、長期の身体障害者や精神障害者たるEC市民が約三千万人

いる。そこでECは障害を持つ労働者のために他の恵まれない諸集団に

対してよりも種々の配慮をした。しかし、多くの障害を持つ労働者は障

害者に対する偏見と差別のため能力があったとしても就職できず失業し

ている。このような状況は社会正義に反するだけでなく、能力ある障害

一14一

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者を利用しないという点で経済的にも損失である。

 そこで一九九〇年七月、ヨーロッパ委員会は構成国を通じて機会の平

等に大きな影響与えるホライゾン計画を実施することを決定した。この

ホライゾン計画は障害を持つ労働者等の雇用差別を受けてきた者の雇用

機会の改善を目指すものである。この改善を図る手段は、次のようなも

のである。①職業訓練・相談②技術的リハビリ援助③職業訓練センター

の増設④障害を持つ労働者が適当な輸送機関を利用し職場に通勤し得る

ように、その利用可能性や移動可能性を図る施設を確立すること。

 更に障害者のためのアクション計画たるヘリオス(開かれた社会にお

いて独立して生きる障害者)計画が一九九二年から一九九六年にかけて

実施されることになった。この計画はECのアクション計画であるが、

その実施の主要な責任は構成国にある。当該計画の実施手段として次の

ようなものがある。①職業訓練センターの新設・増設②良い雇用慣行の

発展を鼓舞し、障害を持つ労働者の地位を改善するため、使用者と構成

国との情報交換を促進すること③障害者の移動の障壁のない建物の築造

や改造の費用に対する財政援助④就職できる障害者の数を増やすこと。

一般に障害者がより仕事に就けるように障害者を援助すること。例えば

障害者を利用し得る輸送や障害者のための特別ローンを提供すること。

 このヘリオス計画のもとで創設されたハンディネットはEC全体に障

害者のための医学的援助及びその移動の障壁の除去等に関する情報を提

供する制度である。

 障害者にとって容易に移動できることや輸送機関を利用できることは

社会参加や仕事にとって不可欠なことである。そこでECは労働する場

合の易動性及び輸送に関する指令を出した。この指令を受け入れた構成

国はこれを具体化した新法を制定するか既存の法をこの指令に従うよう

に改正する必要がある。イギリスにおいては、一九九一年に内閣はこの

指令を受け入れた。そこで、内閣は障害を持つ労働者のために公共輸送

や特別輸送について最低基準を設定した。これにより障害者は輸送にお

ける障壁が除去されその移動が容易になった。

   (56)

五 結び

 以上述べてきたように、障害者の機会の平等を図る法は、特にアメリ

カにおいては教育・輸送機関並びに情報伝達手段及び公共的建物等の利

用の面で障害者の平等を一応促進する。しかし、そのような法は、健常

者の観点から想定された障害者のこiズを充足しようとするものであ

り、必ずしも障害者の真のこiズを権利として満たすものとはいえない。

この真のこiズを充足する立法をするためには、障害者が立法に参加す

る必要がある。また法が制定されても、当該法を遵守させる権限を有す

る機関によって法の実施が確保されなければ、その実効化を図ることは

できない。したがってそのような機関の整備がなされるべきである。こ

のように法の立法・実施の改善を図っても、いまだ障害者の平等にとっ

て不十分である。障害者の平等を草の根のレベルで保障するためには、

特に企業等が、障害者に対する偏見を持たずに障害者雇用の意義と利点

を考慮して、他律的ではなく、「自主的」に障害者の平等を図る具体的

政策を推進する必要があろう。更に社会全体の障害者に対する慈善的意

一15一

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識を変革し、障害者の生活改善要求を障害者の権利として認める必要が

ある。そうすることによって障害者は健常者の社会に統合され、他人に

全面的依存せずに尊厳のある独立の生活を送ることができるようになろ

、つ。

(1)バリアフリーとは、障害者が生活するうえで行動の妨げになる障壁を

  取り去った障害者にやさしい生活空間のあり方をいう。バリアフリi

  具体的には住宅(建物)や交通機関などで障害者等の移動の妨げにな

  る障壁(バリア)をなくす(ブリi)ことが考えられる。一九六〇年

  頃から欧米では、障害者等との関連で従来のまちづくりの欠陥が指摘

  されるようなった。とくに米国ではベトナム戦争の傷病帰還兵が大き

  な社会問題になった。こうしてバリアフリーという言葉が出てきたが、

  一九七四年に国際連合「障害者生活環境専門家会議」によって建築上

  障壁のない設計(バリアフリ…デザイン)についての報書書がまとめ

  られて、これ以降この用語が建築学会に登場し定着するようになった

  といわれている。

   このようにバリアフリーを意図した住宅やまちづくりが求められて

  いるが、本来バリアフリーは物理的に障害がないばかりか、障害者等

  が社会参加するする上で精神的にも「障壁」がないことも意図してい

  るといわれる。

(2)障害者基本法は心身障害者基本法が一九九三年十一月に改正され成立

  した。この改正では基本理念にノーマライゼーションの考え方が導入

  された。この考え方は障害者を特別視せず普通の人と同じように受け

  入れ必要な処置をしていくという考え方である。もともとスウェーデ

  ンで精神障害者への対応から始まった考え方であるが、現在では社会

 福祉一般の基本的な理念として国際的にも定着化している。しかし日

 本では定着化していないので、その定着化を図る点からも本法はこの

 考え方を国際的潮流にそって導入したのである。そして本法は障害者

  があらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとした。更に

  国および地方公共団体に障害者施策に関する計画の策定の義務付け、

  雇用の促進、公共施設の利用などについて国および地方公共団体の講

  ずべき措置や事業者の努力義務に関する規定などが加えられた。

(3)Ωo<帥ヨ凶Q。巴o二誤①9①oQohOoヨ8ヨ畠勾巴ω凶冨ユ(一㊤。。ご葛心器髭゜

(4)人種差別を禁止するために一九六五年に第一次人種関係法が制定され

  た。この法はレストランやホテルのような公共の場所における人種差

  別のみを禁止するにすぎないものである。更に一九六八年に第二次人

  種関係法が制定された。当該法律は雇用・住宅供給・サービスにおけ

  る差別を禁止するものであるが、その執行手続は不十分なものであっ

  た。従って、両法は有効に人種差別を禁止するものでなかった。これ

  に対して一九六八年に施行された第三次人種関係法は、雇用・訓練・

  財とサービスの供給における差別を違法とした。そして一九六八年の

  第二次人種関係法とは異なり、執行手続を整備し、人種差別を受けた

  者は直接民事裁判所または労働審判委員会に救済を求めることを可能

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(27)最高裁は、大学(法人)の学問の自由を肯定も否定もしていないが、

  その自由は修正一条のコロラリーとして認められる(07二。。

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  政策の中核的な要素であると証言したが(ω①昌韓①Oo∋ヨ葺①①

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