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14 商 業 簿 記 【第117回】 標準時間55分 問題 (25点) 下記の資料にもとづき,次の問に答えなさい。 問1 2006年度(自2006年4月1日至2007年3月31日)の連結貸借対照表と連結損益計算書を完成しなさい。 (   )の中には金額を, の中には連結財務諸表上生じる科目名を記入すること。 問2 連結貸借対照表上の利益剰余金の金額の計算過程を示しなさい。(   )の中に金額を入れるだけで よい。 (解答上の注意) 1 連結上生じる修正については,税効果を考慮することとし,40%の実効税率を適用する。ただし,投 資消去差額および投資差額については税効果を考慮しない。 なお,連結貸借対照表上の繰延税金資産と繰延税金負債は相殺せず,また,短期・長期を区別しなくて よい。 2 P社,S社およびA社の期中および期末における会計処理は,未達取引を除き正確である。 (資料) 1 P社によるS社株式取得状況とS社の資本状況は,次のとおりである。 2006年3月31日現在において,S社の保有する土地に 20,000千円の評価益が生じている。のれんは, 発生の翌年度から10年間にわたって毎期均等額を償却する。 2 P社貸借対照表中のA社株式は,2006年3月31日に取得したA社の株式の30%に相当する株式の取得 原価である。この結果,A社は,P社の関連会社となったため,A社株式については持分法を適用する。 P社によるA社株式取得時におけるA社の財産状況は次のとおりである。 資   産 200,000千円 負   債 90,000千円 資 本 金 80,000千円 利益剰余金 30,000千円 のれんは,発生の翌年度から10年間にわたって毎期均等額を償却する。 3 P社とS社の間の取引 ① P社のS社に対する商品の販売は,すべて掛によって行われている。期中におけるP社によるS社 への売上高は 89,000千円,S社におけるP社からの仕入高は 88,500千円である。期末現在のP社にお けるS社売掛金残高は,10,000千円である。なお,P社はS社に対し,毎期,原価の25%増しの価額 で商品を販売している。S社における期首商品棚卸高中に含まれるP社商品は 3,750千円,S社にお ける期末商品棚卸高中に含まれるP社商品は4,500千円(未達を除く)である。 ② P社,S社ともに,毎期,売掛金期末残高の2%の貸倒引当金(税法基準に則っている)を差額補充 法によって計上している。P社におけるS社に対する売掛金の期首残高は 7,500千円であった。 1 2 1 P社によるS社株式取得状況 S社の資本状況 取 得 日 取得割合 取得原価 資 本 金 資本剰余金 利益剰余金 2003.3.31 10% 10,100千円 50,000千円 10,000千円 25,000千円 2006.3.31 60% 84,900千円 50,000千円 10,000千円 40,000千円 答案用紙は 7 ページ/ 解説は 110 ページ

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商 業 簿 記 【第117回】 標準時間55分

問題(25点) 下記の資料にもとづき,次の問に答えなさい。

問1  2006年度(自2006年4月1日至2007年3月31日)の連結貸借対照表と連結損益計算書を完成しなさい。

(   )の中には金額を, の中には連結財務諸表上生じる科目名を記入すること。

問2  連結貸借対照表上の利益剰余金の金額の計算過程を示しなさい。(   )の中に金額を入れるだけで

よい。

(解答上の注意)

 1  連結上生じる修正については,税効果を考慮することとし,40%の実効税率を適用する。ただし,投

資消去差額および投資差額については税効果を考慮しない。

    なお,連結貸借対照表上の繰延税金資産と繰延税金負債は相殺せず,また,短期・長期を区別しなくて

よい。

 2 P社,S社およびA社の期中および期末における会計処理は,未達取引を除き正確である。

(資料)

 1 P社によるS社株式取得状況とS社の資本状況は,次のとおりである。

     2006年3月31日現在において,S社の保有する土地に 20,000千円の評価益が生じている。のれんは,

発生の翌年度から10年間にわたって毎期均等額を償却する。

 2  P社貸借対照表中のA社株式は,2006年3月31日に取得したA社の株式の30%に相当する株式の取得

原価である。この結果,A社は,P社の関連会社となったため,A社株式については持分法を適用する。

P社によるA社株式取得時におけるA社の財産状況は次のとおりである。

    資   産 200,000千円 負   債 90,000千円

    資 本 金 80,000千円 利益剰余金 30,000千円

   のれんは,発生の翌年度から10年間にわたって毎期均等額を償却する。

 3 P社とS社の間の取引

  ①  P社のS社に対する商品の販売は,すべて掛によって行われている。期中におけるP社によるS社

への売上高は 89,000千円,S社におけるP社からの仕入高は 88,500千円である。期末現在のP社にお

けるS社売掛金残高は,10,000千円である。なお,P社はS社に対し,毎期,原価の25%増しの価額

で商品を販売している。S社における期首商品棚卸高中に含まれるP社商品は 3,750千円,S社にお

ける期末商品棚卸高中に含まれるP社商品は4,500千円(未達を除く)である。

  ②  P社,S社ともに,毎期,売掛金期末残高の2%の貸倒引当金(税法基準に則っている)を差額補充

法によって計上している。P社におけるS社に対する売掛金の期首残高は 7,500千円であった。

1

2

1

P社によるS社株式取得状況 S社の資本状況 取 得 日 取得割合 取得原価 資 本 金 資本剰余金 利益剰余金 2003.3.31 10% 10,100千円 50,000千円 10,000千円 25,000千円 2006.3.31 60% 84,900千円 50,000千円 10,000千円 40,000千円

答案用紙は 7 ページ/ 解説は 110 ページ

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第1部 商業簿記・会計学 問題編

工業簿記

原価計算

商業簿記

会計学

2

3

  ③  当期首においてP社はS社から土地(S社における取得原価 5,000千円)を 6,000千円で購入している。

なお,当該土地に関しては,前期末現在,評価益は生じていない。またS社損益計算書における諸収

益の中にはこの土地の売却に伴って生じた固定資産売却益 1,000千円が含まれている。未実現利益の

消去に関しては,全額消去・持分比率負担方式による。

  ④ S社が期中に利益剰余金から支払った配当金は,P社分も含めて 5,000千円である。

 4 P社とA社の間の取引                                

  ①  期末時点でP社はA社より,簿価 5,000千円(A社での取得原価 8,000千円)の備品を 7,000千円で取

得した。未実現損益の消去に関しては,投資勘定で行うこと。

  ② 期中にP社がA社より受け取った配当金は,2,400千円である。

  ③ A社の当期純利益は,10,000千円であった。

 5 P社が期中に利益剰余金から支払った配当金は,12,000千円であった。

ヒント123

P社貸借対照表は答案用紙に記載がある。アップストリームの税効果は,修正仕訳→税効果→少数株主持分への按分の順に処理する。税効果の処理は未実現利益を付けた側が行うため,繰延税金資産・負債は関連会社に帰属するが,関連会社の財務諸表は合算しないため投資勘定で修正する。

12

子会社と関連会社に関する資料を明確に分けてから解く。土地の評価替えと段階取得にかかる損益,投資と資本の相殺消去は,支配を獲得した日に行う。

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商業簿記・会計学 答案用紙

工業簿記

原価計算

商業簿記

会計学

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( )( )( )( )( )( )( )( )( )( )

( )

( )( )

( )

( )

( )( )( )

科     目個別財務諸表

連結財務諸表P 社 S 社

(単位:千円)

(       )

(       )

(       )

(       )

千円

千円

問2

問1

(   )( )( )( )( )( )( )( )( )

( )

( )

( )

( )

( )

貸借対照表現 金 預 金売 掛 金商 品繰 延 税 金 資 産土 地備 品

S 社 株 式A 社 株 式そ の 他 資 産買 掛 金繰 延 税 金 負 債そ の 他 負 債貸 倒 引 当 金資 本 金資 本 剰 余 金利 益 剰 余 金

合 計損益計算書売 上 高売 上 原 価諸 費 用諸 収 益

法 人 税 等法 人 税 等 調 整 額

当 期 純 利 益合 計

200,00050,00012,00011,000100,00020,000

95,00036,000284,000

808,000

240,00040,000

16,900

22,200319,100

40,0006,000

391,0001,000

150,00080,000140,000

808,000

300,000

17,000

2,100

319,100

90,00015,0008,00010,00030,00015,000

-  - 

200,000

368,000

108,00018,000

4,840

6,700137,540

20,0005,000

241,000300

50,00010,00041,700

368,000

130,000

7,000

540

137,540

利益剰余金当期末残高

利益剰余金当期首残高

利益剰余金増加高

利益剰余金減少高

商業簿記/ 117 回 - 問題は本文 14 頁,解答・解説は本文 110 頁

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《解  答》

290,00055,00019,50021,800

149,00035,00018,585- 

35,940484,000

1,108,825

259,25057,950

2,065

21,740

1,83020,725

363,560

133,490

20,725

12,000

142,215

★★

★★★★★

★★★★★★

★★

*9*10

*11*12*13*14*15

*16

*19

*21

*22

*1*2*3*4*5*6*7*8

*17*18

*20

*23

*24

*25

*26

*14

50,50019,080

632,0001,100

150,00080,000

142,21533,930

1,108,825

341,000

17,100

2,340

3,120

363,560

※のれん償却でも可。

( )( )( )( )( )( )( )( )( )( )

( )

( )( )

( )

( )

( )( )( )

科     目個別財務諸表

連結財務諸表P 社 S 社

(単位:千円)

(       )

(       )

(       )

(       )

千円

千円

問2

問1

(   )( )( )( )( )( )( )( )( )

( )

( )

( )

( )

( )

貸借対照表現 金 預 金売 掛 金商 品繰 延 税 金 資 産土 地備 品の れ んS 社 株 式A 社 株 式そ の 他 資 産買 掛 金繰 延 税 金 負 債そ の 他 負 債貸 倒 引 当 金資 本 金資 本 剰 余 金利 益 剰 余 金少 数 株 主 持 分合 計

損益計算書売 上 高売 上 原 価諸 費 用諸 収 益の れ ん 償 却 額持分法による投資利益法 人 税 等法 人 税 等 調 整 額少 数 株 主 利 益当 期 純 利 益合 計

200,00050,00012,00011,000100,00020,000

95,00036,000284,000

808,000

240,00040,000

16,900

22,200319,100

40,0006,000

391,0001,000

150,00080,000140,000

808,000

300,000

17,000

2,100

319,100

90,00015,0008,00010,00030,00015,000

-  -  

200,000

368,000

108,00018,000

4,840

6,700137,540

20,0005,000

241,000300

50,00010,00041,700

368,000

130,000

7,000

540

137,540

利益剰余金当期末残高

利益剰余金当期首残高

利益剰余金増加高

利益剰余金減少高

【第117回】 商 業 簿 記

★1点×25=25点

予想採点基準

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第1部 商業簿記・会計学 解答・解説編

工業簿記

原価計算

商業簿記

会計学

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《解  説》 重要度…A難易度…B連 結 会 計

1.下書き

・投資消去差額,投資差額をのれんという表現に改めた。・全面時価評価法を採用している旨の指示を削除した。改題のポイント

・利益剰余金前期末残高を利益剰余金当期首残高という表記に改めた。平成23年度改題

 資本金当期首残高 150,000 資本剰余金当期首残高 80,000 利益剰余金当期首残高 133,490 当 期 純 利 益 20,725 少数株主持分当期首残高 ❷33,600 少数株主持分当期変動額 330  418,145

買  掛  金 合 60,000+❻500-�10,000 = 50,500 繰延税金負債 合 11,000+❶8,000+�60  +�20 = 19,080 そ の 他 負 債 合 632,000 貸 倒 引 当 金 合 1,300-�150-�50 = 1,100 資  本  金 合 200,000-❷50,000 =150,000 資 本 剰 余 金 合 90,000-❷10,000 = 80,000 利 益 剰 余 金 142,215 少数株主持分 33,930

*1*2*3

*4*5*6*7

*8

*9

*10

*11*12*13*14*15

合→親子会社のF/S科目の合計

 現 金 預 金 合 290,000 売  掛  金 合 65,000-�10,000 = 55,000 商     品 合 20,000+❻500-❽1,000 = 19,500 繰延税金資産 合 21,000+❾400+�400 = 21,800  土     地 合 130,000+❶20,000-�1,000 =149,000 備     品 合 35,000 の  れ  ん ❷20,650-❹2,065 = 18,585 S 社 株 式 合 95,000-❷95,000 = 0 A 社 株 式 合 36,000+�3,000-�300  -�2,400-�600+�240 = 35,940 そ の 他 資 産 合 484,000

連 結 貸 借 対 照 表

 資本金当期末残高 150,000 資本剰余金当期末残高 80,000 剰余金の配当 12,000 利益剰余金当期末残高 142,215 少数株主持分当期末残高 33,930

418,145

連結株主資本等変動計算書

*24*26

 売 上 原 価 合 348,000-❼89,000+❽1,000   -�750 =259,250 諸  費  用 合 58,000-�50 = 57,950 のれん償却額 ❹2,065 法 人 税 等 合 21,740 少数株主利益 ❸2,010-�180 = 1,830  当 期 純 利 益 20,725

連 結 損 益 計 算 書

売  上  高 合 430,000-❼89,000 =341,000 諸  収  益 合 24,000-❺3,500-�1,000  -�2,400 = 17,100 持分法による投資利益 �3,000-�300-�600  +�240 = 2,340 法人税等調整額 合 2,640+❾400-�300  -�20+�400 = 3,120

*17*18*20

*23*25

*16

*19

*21

*22

 利益剰余金当期首残高 合 169,800※-❷35,950-�750  +�300+�150-�60 =133,490 剰余金の配当 合 17,000-❺5,000 = 12,000 少数株主持分当期変動額 ❸2,010-❺1,500-�180 = 330

※利益剰余金当期首残高

 129,800千円+40,000千円=169,800千円

   P社  S社資料1より

利益剰余金(P社)

剰余金の配当 12,000千円

期 首(差額) 129,800千円

当期純利益

22,200千円

(P/Lより)期 末 140,000千円

1 113回 標準 2 126回 実力

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112112

3.子会社の連結(計算過程) ⑴ 開始仕訳

  ①S社土地の評価替

   支配獲得時に一括して子会社の資産の時価と簿価の差

額の全額について評価替えを行う。なお,税効果会計を

適用しているため,繰延税金負債分を差し引き,評価差

額を計上する。

   評価差額:20,000千円×(1-40%)=12,000千円

  ②S社株式の連結上の取得原価

連結上の取得原価:84,900千円× 70% =99,050千円60%段階取得に係る差損益:99,050千円-(10,100千円+84,900千円)

        =4,050千円(差益)

(S 社 株 式)4,050 (段階取得に係る差益)4,050

   のれん:99,050千円-(50,000千円+10,000千円

       +40,000千円+12,000千円)×70%

       =20,650千円

  ③投資と資本の相殺

   少数株主持分:(50,000千円+10,000千円+40,000千円

          +12,000千円)×30%=33,600千円

  ④利益剰余金当期首残高:

   増加額 4,050千円(差益)

   減少額 40,000千円

   ※以下の仕訳をまとめたものが開始仕訳となる。

(S 社 株 式) 4,050(利益剰余金当期首残高) 4,050

(資本金当期首残高)50,000(S 社 株 式)99,050

(資本剰余金当期首残高)10,000(少数株主持分当期首残高)33,600

(利益剰余金当期首残高)40,000

(評 価 差 額)12,000

(の れ ん)20,650

❶(土     地)20,000(繰延税金負債) 8,000

(評 価 差 額)12,000

❷(資本金当期首残高)50,000(S 社 株 式)95,000

(資本剰余金当期首残高)10,000(少数株主持分当期首残高)33,600

(利益剰余金当期首残高)35,950

(評 価 差 額)12,000

(の  れ  ん)20,650

2.子会社の連結(タイムテーブル)

(S社)20063/31

20073/31

取得割合  70%  70%資 本 金 50,000 50,000資本剰余金 10,000 10,000利益剰余金 40,000 41,700評 価 差 額 12,000 12,000合  計 112,000 113,700

少数株主持分 33,600 ×30% 34,110S 社 株 式 99,050 99,050P 社 持 分 78,400 ×70% 79,590の れ ん 20,650 18,585

△2,065△2,065

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第1部 商業簿記・会計学 解答・解説編

工業簿記

原価計算

商業簿記

会計学

 ⑵ S社当期純利益の少数株主持分への振替え

  当期純利益の30%を少数株主持分に振り替える。

   6,700千円×30%=2,010千円

 ⑶ のれんの償却

   20,650千円÷10年=2,065千円

 ⑷ S社配当金

  親会社に対する配当金は親会社の受取配当金と相殺し,

少数株主に対する配当金は少数株主持分を減少させる。 

⑸ 商品取引の相殺消去と未実現利益の消去

  本問では,親会社であるP社が子会社であるS社に商品を

販売している(ダウン・ストリーム)ため,全額消去・親会

社負担方式により処理する。

 この場合,①連結修正仕訳,②税効果会計の適用,とい

う順序で処理を行う。

①未達取引の処理

   未達分500千円につきS社の仕入の処理を行う。

(仕     入) 500 (買   掛   金) 500

(商     品) 500 (仕     入) 500

②内部取引の相殺

 P社からS社への商品販売は,連結上は単なる商品の

移動であると考え,P社の売上高とS社の仕入高(売上原

価)を相殺消去する。

③未実現利益の消去

(ⅰ)期末分

 期末の棚卸資産に含まれる未実現利益を全額消去し,

未実現利益の消去による純利益の減少額に,税効果を適

用した上で,全額親会社が負担する。このさい,未達分

を含めることに注意すること。

(4,500千円+500千円)×0.251.25=1,000千円

1,000千円 × 40% = 400千円

❸(少数株主損益) 2,010(少数株主持分当期変動額) 2,010

❹(のれん償却額) 2,065(の  れ  ん) 2,065

❺(諸  収  益) 3,500(剰余金の配当) 5,000

  受取配当金

(少数株主持分当期変動額) 1,500

❻(商     品) 500(買  掛  金) 500

❼(売  上  高)89,000(売 上 原 価)89,000

❽(売 上 原 価) 1,000(商     品) 1,000

❾(繰延税金資産) 400(法人税等調整額) 400

期末商品 未達商品利益率

未実現利益

一時差異 実効税率 繰延税金資産

500千円の差↓

未達分

89,000千円88,500千円

P社 売上(対S社)

500千円未達

S社 仕入(対P社)

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(ⅱ)期首分

 期首の棚卸資産に含まれる未実現利益は当期にはす

べて実現したと考える。この金額を売上原価から控除

し,全額親会社が負担する。

3,750千円×0.251.25=750千円

750千円 × 40% = 300千円

 ④債権債務の消去

 内部取引の相殺消去にともない,内部取引から生じる

債権債務を相殺消去する。このさい,売掛金10,000千円

には未達分が含まれていることに注意すること。

⑤貸倒引当金の修正

 債権債務の消去にともない,貸倒引当金の修正を行う。

 この処理により,負債(貸倒引当金)の会計上の簿価が

税務上の簿価より低くなるので,将来加算一時差異が発

生する。

(ⅰ)期首(前期)分

  7,500千円×2% × 40% = 60千円

(ⅱ)期末分

 期末分と期首分の連結会社間の貸倒引当金の差額を

修正する。

  (10,000千円×2%)-150千円=50千円

  50千円 × 40% = 20千円

 期首分の修正

(貸 倒 引 当 金) 150 (利益剰余金当期首残高) 150

 期首分の実現(決済されたと考える)

(貸倒引当金繰入) 150 (貸 倒 引 当 金) 150

 期末分の修正

(貸 倒 引 当 金) 200 (貸倒引当金繰入) 200

�(利益剰余金当期首残高) 750(売 上 原 価) 750

�(法人税等調整額) 300(利益剰余金当期首残高) 300

�(買  掛  金)10,000(売  掛  金)10,000

�(貸 倒 引 当 金) 150(利益剰余金当期首残高) 150

�(利益剰余金当期首残高) 60(繰延税金負債) 60

�(貸 倒 引 当 金) 50(諸  費  用) 50

貸倒引当金繰入

�(法人税等調整額) 20(繰延税金負債) 20

期末分 期首分

修正額 実効税率 繰延税金負債

一時差異 実効税率 繰延税金負債

修正額

50 50

期首商品利益率

未実現利益

一時差異 実効税率 法人税等調整額

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第1部 商業簿記・会計学 解答・解説編

工業簿記

原価計算

商業簿記

会計学

⑹ 土地取引にかかる未実現利益の消去

 S社の固定資産売却益とP社の土地を相殺消去する。な

お,アップ・ストリームのため,未実現利益の消去は持分比

率に応じて負担する。

 この処理により,資産の会計上の簿価が税務上の簿価より

低くなるため,将来減算一時差異が発生する。

 また,税効果適用後の子会社の損益変動額を少数株主に負

担させる。

4.持分法(タイムテーブル)

(A社)20063/31

20073/31

取 得 割 合  30%  30%資 本 金 80,000 80,000利益剰余金 30,000 32,000※

合  計 110,000 112,000A 社 株 式 36,000 ×30% 36,000P 社 持 分 33,000 33,600の れ ん  3,000 △300  2,700

※ 30,000千円+10,000千円-2,400千円÷30%=32,000千円

               配当金総額

5.持分法(計算過程) ⑴ 当期純利益の按分

 10,000千円×30%=3,000千円

 ⑵ のれんの償却

①のれん

 36,000千円-(80,000千円+30,000千円)×30%

 =3,000千円

②当期償却額

 3,000千円÷10年=300千円

 ⑶ A社剰余金の配当

 投資会社が関連会社から配当金を受け取った場合,関連会

社の純資産が減少するため,投資勘定も減額させる。

�(諸  収  益) 1,000(土     地) 1,000

 固定資産売却益

�(繰延税金資産) 400(法人税等調整額) 400

�(少数株主持分当期変動額) 180(少数株主損益) 180

�(A 社 株 式) 3,000(持分法による投資損益) 3,000

 

�(持分法による投資損益) 300(A 社 株 式) 300

�(諸  収  益) 2,400(A 社 株 式) 2,400 受取配当金

資本金 利益剰余金取得原価 取得率

取得率 按分額当期純利益

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 ⑷ 未実現利益の消去

 ①未実現利益の消去

  未実現利益のうち,投資会社持分について問題文の指示

 より投資勘定を減額させる。

  (7,000千円-5,000千円)×30%=600千円

 ②税効果会計

  未実現利益の消去にかかる一時差異は利益を付けた関

連会社に帰属するが,関連会社の財務諸表は合算しないた

め,税効果の仕訳も繰延税金資産勘定でははなく,投資勘

定で行う。

  600千円×40%=240千円 

  なお,仮に未実現利益の消去を投資勘定で行わない場合

の処理は以下のようになる。

(持分法による投資損益) 600 (備     品) 600

(A 社 株 式) 240 (持分法による投資損益) 240

�(持分法による投資損益) 600(A 社 株 式) 600

�(A 社 株 式) 240(持分法による投資損益) 240

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