輸血用血液製剤添付文書集 - Japanese Red Cross …輸血用血液製剤添付文書集 〈2020年1月現在〉 2020.01 ※お問い合わせは、最寄りの赤十字血液センター
脱水と輸液 - asakadai-hp.jp · PDF file2015/6/23 1 脱水と輸液 萩原卓思...
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脱水と輸液萩原卓思
今回の内容
1、体液生理
2、体液量の評価
3、輸液製剤の種類と使い分け
4、輸液療法
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1、体液生理
体液の分布
体重の約60%が水分(体液)で、約半分が筋肉内に存在する
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体液量調整
・抗利尿ホルモン(ADH)・口渇
・RAA系・NP系・交感神経系
2つの調節系は互いに独立して機能する
体液量調節系
2、体液量の評価
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脱水( hypovolemia)
脱水の種類と治療
Dehydration(細胞内脱水)
Volume depletion(細胞外液の減少)
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体液量の評価 検査所見
□静的指標
・平均血圧
・中心静脈圧
・左室拡張末期容積
・生体電気インピーダンス
□動的指標
・下大静脈径
・収縮期血圧変動
・脈圧変動
・一回心拍出量変動
・passive leg test
動的指標は「volume負荷した時にみられる心拍出
量の変化」を推測するもので、輸液療法が有効か見極める、より実践的な指標
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体液量評価時の注意
・体液量を1つの指標で評価することは困難であるため、複数の指標を使用して総合的に判断する必要がある
・輸液による容量負荷に応じて、経時的に変化を追い、再度評価することが重要
3、輸液製剤の種類と使い分け
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輸液製剤の種類
①食塩水、砂糖水で浸透圧をあわせる
→生理食塩水(0.9%NaCl)、5%ブドウ糖
②細胞外液の改良
生理食塩水
リンゲル液
乳酸リンゲル液
酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液
Ca,Kの添加
緩衝剤の添加
より生理的な緩衝剤
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③1号液~4号液の作成
生食を5%ブドウ糖で割ったもの
生理食塩水154mEq/L 5%ブドウ糖
混合
1/2生食77mEq/L
1号液
1/4生食38mEq/L3号液
1/3生食51mEq/L2号液
1/5生食31mEq/L4号液
細胞外液の使い分け
□使い分けるときに考慮する項目
・Na濃度
・酸塩基平衡
・K濃度
・Ca濃度
例
下痢→○酸リンゲル液
高カルシウム血症→生理食塩水
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1号液~4号液の使い分け
・1号液→4号液になるほどNa濃度が下がる
・1号液は細胞外液よりもNa濃度が低く、Kを含まないため、心不全や腎不全の人でも使いやすい
・3号液は1日分の水、電解質を補充するためのもの
・1日分の必要な水分は30~40ml/kg、Naは70~100mEq、Kは20~40mEq
4、輸液療法
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輸液療法の種類
①初期輸液:
有効循環血漿量を確保し、循環動態を安定させる
②補充輸液(狭義):
不足した体液・電解質を補充し、体液バランスを正常化する
③維持輸液:
現在の体液バランスをそのまま維持する
補充療法(広義)
輸液療法フローチャート
体液バランスの崩れ
循環動態不安定
初期輸液
循環動態安定
補充輸液+維持輸液
体液バランス正常 維持輸液
なし
あり
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初期輸液療法□ステップ1
脱水をvolume depletionとdehydrationに分けて考える
ICFECF
ECF ICF
ICFECFECF:細胞外液ICF:細胞内液■:体液喪失分
volume depletion
dehydration
□ステップ2
脱水の程度は?体液欠乏量を推測する
重症度 軽症 中等症 重症
体重減少 3% 6% 9%
血圧 正常 低下 高度低下
脈拍数 正常 増加 高度増加
尿量 減少 乏尿 無尿
脱水の重症度と臨床所見
○血漿欠乏量を推定するための概算式血漿欠乏量(L)=体重×0.2×(測定Hct/通常Hct-1)
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□ステップ3
輸液製剤の処方
・補充輸液+維持輸液を意識して輸液療法を実践する
・維持輸液の基本は3号液
・低張な3号液を漫然と投与し続けると医原性の低ナトリウム血症を引き起こすことがある
・1日分の必要な水分は30~40ml/kg、Naは70~100mEq、Kは30~40mEq
症例
特に既往がない35歳男性。3日前にユッケを食べた後から急性胃腸炎を発症し、嘔吐と下痢が続いた。自宅で様子を見ていたが、来院当日は全身倦怠感が強く、起立時のふらつきを認めたため救急外来を受診した。来院時、嘔吐や下痢は治まっていたが、吐気の症状は残り、経口摂取不良のため、輸液療法目的で入院とした。来院時、体温は36.2℃、血圧100/50mmHg(軽度の血圧低下)、脈拍数102/分(脈拍数軽度上昇)であった。来院時の体重は60Kg(普段の体重は64Kg)、血液検査でHct値は58%(通常の値は47%)、血清Na値は138mEq/Lであった。病歴聴取により尿量が普段より少なくなっていることが判明している
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□ステップ1
目の前の患者の脱水はvolume depletionとdehydrationのどちらか?
・急性腸炎による嘔吐、下痢の症状が前面に出ている
・起立時のふらつき→起立性低血圧
・高ナトリウム血症はない
volume depletion
□ステップ2
脱水の程度は?体液欠乏量を推測する
・血圧低下、脈拍数増加、尿量減少を認める
・6%の体重減少
・重症度は中等症
・血漿欠乏量=64×0.2×(58/47-1)=2.9L
約3Lの血漿欠乏量と推測できる
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□ステップ3
補充輸液+維持輸液を意識して輸液療法を実践する
○補充輸液
下痢や嘔吐に伴うvolume depletion
→生理食塩水など細胞外製剤が適当
○維持輸液
64×30~40=1920~2560mL(約2L)
低ナトリウム血症はない
→3号液が適当
補充輸液と維持輸液を総合的に考えると・・・
・輸液製剤のNa濃度は細胞外液と3号液の間で、1/2生理食塩水が適当・ 1/2生理食塩水はカリウムを含まないため、カリウム製剤の混注が必要・Kは30~40mEqの補充が必要
○輸液の処方例KN1A500mL1本にアスパラカリウム10mEq1筒を混注した輸液製剤を4本/日(約80mL/時)