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- 学校建築研究 - 「都心部における小学校小規模化への対応に見る学校遍在性の効果」 早稲田大学創造理工学部建築学科 4 年 古谷誠章研究室 齊藤彰吾 [email protected] 090-5810-4006 □語句の定義 小規模学校・・・小学校における学校適正規模 (12 学級~24 学級 ) よりも学級数が少ない状態の学校 ( 学級数が 11 学級以下 ) 余裕教室・・・将来とも恒久的に余裕となると見込まれる教室。現在は使われていないが将来の学級数の増加、変動を理由に特定用途に改造せず保有し ている教室は一時的余裕教室として区別。 へき地・・・中山間地域や離島など 序論 第一節 研究背景 第一項 研究背景概要 第二項 統廃合の進む現状とその背景 第三項 小規模学校の必要性と地域性 第二節 先行事例 第三節 研究目的 第四節 仮説 第五説 論文構成 第六節 学校年表 本論 第一章 第一節 研究概要 第二節 研究対象選定 第一項 選定方法 第二項 研究対象 第三節 研究方法 第一項 学校アンケート調査 第二項 行政アンケート調査 第三項 ヒアリング調査 第四項 平面記録調査 第四節 考察方法 第二章 アンケート調査結果 第一節 アンケート調査 ( 学校 ) 44 件 第一項 アンケート概要 第二項 アンケート回答 第三項 学校データシート 44 件 第二節 アンケート調査 ( 行政 ) 第一項 アンケート概要 第二項 アンケート回答 第三項 各区データシート 23 区 第三章 ヒアリング結果 第一節 ヒアリング概要 第二節 ヒアリング結果 第一項 港区麻布小学校  第二項 杉並区永福南小学校  第三項 新宿区花園小学校 第四項 墨田区中和小学校 第五項 都立大塚ろう学校 第四章 学校平面記録 第一節 平面図 第二節 アクソメ記録 第五章 分析・考察・結論 第一節 考察概要 第二節 行政視点での考察「小規模学校の残る都心部特有の要因」 第一項 分析/考察 1 ・都市インフラと学区の問題 ・都心部特有の児童増加 第三節 使用者視点での考察「小規模化対応と空間メリット」 第一項 分析/考察 2 ・余裕教室を拡張することでのメリット ・余裕教室を分化することでのメリット ・単学級初動でのメリット 第四節 使用者視点での考察「小規模学校への学外機能の複合と課題」 第一項 分析/考察 3 ・行政の不認知と空間性 第五節 地域住民視点での考察「小規模学校の地域的メリット」 第一項 考察 4 ・地域への展開要因 ・小規模性を生かした地域への展開 第六節 行政 - 使用者 - 地域住民の横断的考察 第七節 補足資料 第六節 補足資料 結論 第一節 小規模学校の都心部における遍在性の効果 第二節 学校の経年的変化への展望 参考文献 謝辞

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近年の少子高齢化が急速に進む現代社会において、教育の場では児童の減少が顕著に見受けられるが、本来学校には、地域活動のコミュニティの核としての役割や、有事における身近な防災拠点として活用される役割など様々考えられる。本調査では、東京都23 区の単学級以下の小規模学校を対象として、小規模学校を地域に存置していく上での、維持運営課題とその対応手法を明らかにし、体系化することを目的とする。

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Page 1: - 学校建築研究-「都心部における小学校小規模化への対応に見る学校遍在性の効果」

- 学校建築研究 -「都心部における小学校小規模化への対応に見る学校遍在性の効果」

早稲田大学創造理工学部建築学科 4年古谷誠章研究室 齊藤彰吾

[email protected] 090-5810-4006

□語句の定義小規模学校・・・小学校における学校適正規模 (12 学級~24学級 ) よりも学級数が少ない状態の学校 ( 学級数が 11学級以下 )

余裕教室・・・将来とも恒久的に余裕となると見込まれる教室。現在は使われていないが将来の学級数の増加、変動を理由に特定用途に改造せず保有し

ている教室は一時的余裕教室として区別。

へき地・・・中山間地域や離島など

序論

第一節 研究背景

 第一項 研究背景概要

 第二項 統廃合の進む現状とその背景

 第三項 小規模学校の必要性と地域性

第二節 先行事例

第三節 研究目的

第四節 仮説

第五説 論文構成

第六節 学校年表

本論

第一章

第一節 研究概要

第二節 研究対象選定

 第一項 選定方法

 第二項 研究対象

第三節 研究方法

 第一項 学校アンケート調査

 第二項 行政アンケート調査

 第三項 ヒアリング調査

 第四項 平面記録調査

第四節 考察方法

第二章 アンケート調査結果

第一節 アンケート調査 ( 学校 ) 44 件

 第一項 アンケート概要

 第二項 アンケート回答

 第三項 学校データシート 44件

第二節 アンケート調査 ( 行政 )

 第一項 アンケート概要

 第二項 アンケート回答

 第三項 各区データシート 23区

第三章 ヒアリング結果

第一節 ヒアリング概要

第二節 ヒアリング結果

 第一項 港区麻布小学校 

 第二項 杉並区永福南小学校 

 第三項 新宿区花園小学校

 第四項 墨田区中和小学校

 第五項 都立大塚ろう学校

第四章 学校平面記録

 第一節 平面図

 第二節 アクソメ記録

第五章 分析・考察・結論

第一節 考察概要

第二節 行政視点での考察「小規模学校の残る都心部特有の要因」

 第一項 分析/考察 1 ・都市インフラと学区の問題

            ・都心部特有の児童増加

第三節 使用者視点での考察「小規模化対応と空間メリット」

 第一項 分析/考察 2  ・余裕教室を拡張することでのメリット

            ・余裕教室を分化することでのメリット

            ・単学級初動でのメリット

第四節 使用者視点での考察「小規模学校への学外機能の複合と課題」

 第一項 分析/考察 3 ・行政の不認知と空間性

第五節 地域住民視点での考察「小規模学校の地域的メリット」

 第一項 考察 4 ・地域への展開要因

         ・小規模性を生かした地域への展開

第六節 行政 - 使用者 - 地域住民の横断的考察

第七節 補足資料

第六節 補足資料

結論

第一節 小規模学校の都心部における遍在性の効果

第二節 学校の経年的変化への展望

参考文献

謝辞

Page 2: - 学校建築研究-「都心部における小学校小規模化への対応に見る学校遍在性の効果」

本論文について

 近年の少子高齢化が急速に進む現代社会において、教育の場では児童の減少が顕著に見受けら

れる。そこで、維持運営費などコスト面の合理化や、学校の小規模化による教育環境の整備により、

へき地を中心にしばしば統廃合が行われている。

 しかし、最近は都心部においても、同様の理由と、学区の弾性化による児童の偏りを理由に、

統廃合が進んでいる。

 

 本来学校には、地域活動のコミュニティの核としての役割や、有事における身近な防災拠点と

して活用される役割など様々考えられる。実際、昨年の東日本大震災において、多くの避難者が

一時的に近くの学校へ避難し、生活していたことなど、重要な役割を担っている。

 これらをふまえ、今後、小規模化した学校に対して、コスト面などを理由に安易に統廃合する

ことに疑問が感じられる。そこで、小規模学校として存置していく際の障害や運営実態は、さら

に追求されるべき課題と言えるだろう。

 本調査では、東京都 23 区の単学級以下の小規模学校を対象として、小規模学校を地域に存置し

ていく上での、維持運営課題とその対応手法を明らかにし、体系化することを目的とする。また、

竣工時に通常規模を想定して計画された学校空間が、小規模化したことで生まれる新たな学校空

間の有用性を模索する。

この研究は、今後の小学校の小規模化した際の学校存置の一助となり、さらに、既存の画一的な

学校空間へ新しい可能性を与えるものと考える。

序論

結論

展望

第一章 研究方法

第五章 分析/考察

第二章 第三章 第四章 データ集成

[ 研究目的 ] 小規模学校として存置している学校の児童数の減少に伴う小規模化への学校の建築的対応手法を体系化するとともに、それぞれの手法での効果から小規模学校の有用性を示す これによって、小規模学校存置の一助となり、また学校建築を新築していく際の新しい可能性を示すものと考える。

[ 仮説 ]都心部においては、小学校を小規模のまま残していくほうが、小学校自体の空間的にも、学校の立地する地域的にも、有用なのではないか

対象 : 東京 2 3区内小規模学校 (単学級以下 )94 件

調査対象

東京 23区 小規模学校 261件 → 単学級以下 94件

アンケート調査 ( 学校、行政 ) 結果 対象:学校 45件 行政 23件

調査対象 94件に事前にアポイントの結果 70件に郵送もしくは fax、メールに

よりアンケートを依頼

94件のうち結果 45件からの回答を得た

ヒアリング調査結果 対象:5件

事前のアンケート調査より、”余裕教室 ” “ クラスサイズ ” “ 地域資源活用 ”

“ 地域の学校への参画 ” の 4つ特徴より調査可能な 4件と小規模学校の特

殊な事例として、聾学校を 1件の計 5件を対象とする

分析/考察 対象:アンケート 45件 +23 件 事例:5件

結論/展望

今後、さらなる統廃合の議論が予測され、学校の遍在性の非常に高い場所として東

京 23 区を対象とする

そのなかでも特に、現在東京の学校において最小とされる学級数である単学級を取

り上げることで、小規模学校に関しての発見的な要素の抽出を目的とする

S 区 H 小学校 S区 E小学校 S区 T小学校 S区 O小学校M区 A小学校

施設特性 立地特性

・余裕教室の建築的手法

実地調査校選定

[ 三つの視点 ] ここでは小規模学校を、学校に関わる [ 行政 ][ 使用者 ][ 地域住民 ] の大きく三つの視点から考察/評価していく。□行政:教育委員会/都市システム□使用者:児童/教職員□地域住民:周辺住民/周辺施設

行政

使用者

地域住民

小規模学校

*視点概要

行政視点分析/考察 1 都心部超高密度と小規模学校の残るプロセス

□アンケート調査 ( 学校 44件/行政 17件 )□ヒアリング結果 5件□事例平面、アクソメ記録 5件

使用者視点分析/考察 2 建築的手法とメリット

児童・教職員視点分析/考察 3 行政認識と学校空間の課題

横断的視点分析/考察 4 分析/考察 5 小規模学校の都市/地域の補完性

*東京 23区公立小学校ボロノイ図

 ( 色 : 学校規模 )

Ⅰ:都市インフラと学区の問題

 ここでは東京の超高密度であるがゆえの小規模学校の残

る要因が明らかになった。ここで言う高密度とは鉄路など

のインフラ機能と行政区の線引きを指す。これら都市イン

フラが通学の妨げになることと、行政区の線引きが細分し

ていることで、統合可能校が周辺にないといった状況が引

き起こされる。特に行政区の線引きの淵には小規模学校が

集中する傾向にあり、行政区の線引きが都心部において小

規模学校の残る要因に深く関わっていることがわかる。

 ただしかし、このように通学の問題によって統合されな

い状況は、逆に小規模学校に児童が増加しにくい状況をさ

す。

Ⅱ:周辺校の大規模化

 ここでは東京の学区の自由化に伴う、小規模学校の残る

要因が明らかになった。学区の自由化により、区内では児

童の偏りが起こる。これによって区内では小規模学校が斑

状に発生する場合がある。この場合周辺校が定員超過になっ

た場合に児童の流入があるため、小規模学校が受け皿とし

て残される。このような小規模学校の残る要因の場合、今

後児童増加の見込みが予想されるため、学校内部での改修

やその冗長性の性質に影響が生じることが予想される。

S 区 H小学校

S区 T小学校

S区 E小学校

S区 O小学校

M区 A小学校

学校

空間維持型

空間拡大型

空間縮小型

可動

不可動

単学級

複数学級

設計段階 現在の対応手法

M区 A小学校

*小規模学校の建築的操作による分類

01

02

04

03

05

単学級初動によるメリット

余裕教室を拡張することでのメリット

余裕教室を分化することでのメリット

Ⅰ 中規模空間の獲得Ⅱ 半OS空間の獲得Ⅲ 分化による学校機能数の向上Ⅳ 小規模空間での活動Ⅴ 小規模初動による他機能の向上

1. 余裕教室を拡張することでのメリット

 ・中規模空間の獲得

 ・半OS空間

2. 余裕教室を分化することでのメリット

 ・分化による学校機能数の向上

 ・小規模空間での活動

3. 単学級初動によるメリット

 ・小規模初動による他機能の向上

児童数増加

1F

2F

3F

4F

3-1

1-1

2-1

4-1

5-16-1

*単学級での対応 *複数学級での対応

Ⅰ 空間的な余剰を共有

Ⅱ 時間的な余剰を共有

都心部小規模学校の二種類の余剰

 小規模学校は上記のように、遍在する学校の冗長性として、その内部の建築的手法を取捨選択をしな

がら、対応している。またその二つの余剰である、空間的余剰と時間的余剰を地域と共有することで、

学校での教育的メリットにも繋がっている一方、時間的余剰の共有により、都心部においての校庭、公

園などの不足を補完している。

*研究背景フロー

考察:小規模学校が都心部においての遍在する学校の

冗長性を担っている

ただ逆に周辺校の状況が学校内の空間の性質に影響を

与えうることがわかる

児童数変化なし

特別活動(ランチルーム) CR 生活室

理科室 図工室

特別活動(多目・学童)

特別活動(多目・学童)CR

WC WC 準備 準備 WC WC

特別活動(多目・学童)

行政の資料庫fig.2

余裕教室への学校外機能の複合化に関して、そ

の行政の認知不足により、学校の空間性に影響

が及んでいる。

→行政を含めた小規模学校維持管理のノウハウ

の体系化の必要性

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

家具等のレイアウトまで

教室の学校内での配置まで

活用の内容まで

一律の方針なし

基本的に学校に任せる

その他

fig.7 行政の学校の余裕教室に関する方針内容

・学校内の余裕教室を改修などで、地域との活動の場として活用

している

・極端な小規模化により、時間的に余剰となる校庭などを都心部

において校庭を持てない保育園などに貸し出すことで、地域側

のメリット、もしくは地域の不足を補完している

以上の考察の小規模学校の特性を得た。

Ⅰ:既存小規模デメリットの補完

Ⅱ:学校内での新しいメリットの発見

Ⅲ:都市、地域のデメリットの補完

 小規模学校はその小規模でのデメリットを余剰の活用で補うなか

で、逆に新しいメリットにも転じている。

 さらに都心小規模学校はその余剰を地域で共有することで、新たに

地域の広域オープンスペースの補完という役割も担う。

今後の都心部小規模学校の存置、維持管理の一助となり、また学校の

新たな都心部地域性の示唆を与えるものと考える