小児科中耳炎調査グループ 土田晋也
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小児科中耳炎調査グループ 土田晋也
日本外来小児科学会 09/8/29 大宮
呼吸器感染症患児の鼓膜所見ー 8 ヶ月間の多施設共同調査ー
任せなさい~
背景本邦における小児中耳炎は永らく耳鼻科医に任せっきり
背景
しかし~中耳炎は小児科医にとっても見逃してはいけない疾患
中耳炎診療に必要な機器や器具をそろえ診察時には必ず鼓膜所見をとる小児科医も増えてきた
小児急性中耳炎診療ガイドラインが示された外来小児科 8:57-84、 2005、日小耳鼻 27:71-107、 2006
小児科
耳鼻
科
調査目的
開業小児科を受診した呼吸器感染症患児における ①鼓膜有所見率、②急性中耳炎発症因子 を調べ、開業小児科でみつかる中耳炎の特徴を明らかにする
他人の「ふんどし」に頼ることなく
対象と方法①
対象症例:今年 1月以降に小児科単科の診療所 10施設を受診した呼吸器感染症患者。今回は昨年 11月のパイロット調査も加えた 8ヶ月間の集計結果を中間報告する
呼吸器感染症:発熱( 37.5℃以上)、咳、鼻汁、咽頭痛、耳痛の 5症状のうち 1つ以上認める場合。但し、熱があっても胃腸炎や皮膚疾患など、上気道カタル症状を伴わない場合は対象外とした
調査日とサンプリング方法:毎月第 4週の任意の 1日に受診した呼吸器感染症患者 20名サンプリング( 1日で 20名に達しない場合は途中で終了して構わない)
対象と方法②
鼓膜観察方法(耳鏡) :マクロビュー診断型拡大耳鏡(ウェルチ・アレン社)、鼓膜内視鏡(ペンタックス社)、あるいは硬性鼓膜鏡(カールストルツエンドスコピージャパン社)を用い、耳垢はできるだけ取り除いた状態で鼓膜観察した
急性中耳炎の定義 :鼓膜穿孔由来の耳漏がみられる場合か、あるいは中耳貯留液を認め、かつ、中耳急性炎症に伴う鼓膜所見(強い鼓膜膨隆・発赤、または水疱・膿疱)が 1つ以上認められる場合
急性中耳炎の定義: Nelson textbook of Pediatrics 18th ed. p .2636 改編
2項目以上 鼓膜所見色: 白、黄、琥珀、青混濁(瘢痕でない)可動性低下や膨隆
鼓膜背面水泡、液面
中耳貯留液を示す鼓膜所見 膿性耳漏
中耳貯留液
滲出性中耳炎 急性中耳炎
1項目以上耳痛、または耳痛徴候明らかな鼓膜の発赤強い鼓膜腫脹、または水泡形成
中耳の急性炎症に伴う症状または鼓膜所見
Or
Yes Yes
Yes
YesNo
(日小耳鼻 27:71-107、 2006)
共同調査参加施設青木才一志 あおき小児科 奈良県草刈 章 くさかり小児科 埼玉県
小林 謙 こばやし小児科 兵庫県
土田晋也 つちだ小児科 福井県
中村英夫 中村小児科医院 石川県
西村 龍夫 にしむら小児科 大阪府
平岡 政弘 愛育小児科 徳島県
深澤 満 ふかざわ小児科 福岡県
福本 由紀子 ふくもと小児科 福井県
松井祐治 松井小児科 大分県
矢嶋 茂裕 矢嶋小児科小児循環器クリニック 岐阜県
吉田 均 よしだ小児科クリニック 石川県
渡辺 正博 すずかこどもクリニック 三重県
調査項目
結果
対象者数0 100 200 300 400
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
総数 1616 名
観察できた鼓膜数
0 100 200 300 400
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
総数 1616 名
2
10
0 100 200 300 400
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
総数 1616 名→ 1598 名( 98.9 %)
対象者数
年令
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
0 100 200 300 400
年齢 3.2±3.0 才(1ヶ月~15 歳)0 ~ 1 才で4割
男女比
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
0 100 200 300 400
男:女= 864 :734
鼓膜有所見率
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
0 100 200 300 400
30%
34%
20%
22%
20%
12%
12%
7%
鼓膜有所見率 30%2 才未満がピーク:罹患率 + 受診者数が多い + 遷延するので多く感じる
急性中耳炎率
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
0 100 200 300 400
急性中耳炎率 6%2 才未満がピーク:罹患率 + 受診者数が多い + 遷延するので多く感じる
9%
7%
5%
8%
2%
4%
3%
9%
まとめ1 鼓膜有所見率は30% ( 1 才は34
%)急性中耳炎罹患率は6%( 1 才は9
%)
鼓膜有所見者の耳痛率
全年令
感度 = 15 %特異性= 99 %オッズ比= 17.3 尤度比= 14.8
0 200 400 600 800 1000 1200
1235
296
所見なし
2 才未満
感度 = 6 %特異性= 99 %オッズ比= 13.3 尤度比= 12.5
0 100 200 300 400
401
0 1
181
(403)
(193)有所見
急性中耳炎患児の耳痛率
全年令
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
1480
1
急性中耳炎
2 才未満
0 100 200 300 400 500
543
1
39
感度 = 24 %特異性= 99 %オッズ比= 83.5尤度比= 64.1
感度 = 48 %特異性= 99 %オッズ比= 73.3 尤度比= 38.3
非急性中耳炎
51
鼓膜有所見者と急性中耳炎患児の啼泣・不機嫌率
0 100 200 300 400 500
45 500
35急性中耳炎
非急性中耳炎
感度 = 31 %特異性= 92 %オッズ比= 5.1尤度比= 3.8
0 100 200 300 400
34 369
27 166
所見なし
有所見
感度 = 14 %特異性= 92 %オッズ比= 1.8 尤度比= 1.7
2 才未満
まとめ2 2 才未満の呼吸器感染症患児:耳痛は鼓膜有所見者・急性中耳炎患児においてきわめて特異的な症状であるが、その感度に問題がある鼓膜有所見 6 %、急性中耳炎 24 %
啼泣・不機嫌も特異的な症状であるが、その感度に問題がある鼓膜有所見 14 %、急性中耳炎 31 %
急性中耳炎 年令
歳 :0
歳 :1
歳 :2
歳 :3
歳 :4
歳 :5
歳 :6
歳 :7~
0 100 200 300 400
9%
7%
5%
8%
2%
4%
3%
9%※
急性中耳炎 発熱
2 才未満全年令
35 36 37 38 39 40 41 42 4334 35 36 37 38 39 40 41 42 43
急性中耳炎
非急性中耳炎
37.8℃
37.4℃
37.6℃
37.4℃
発熱=発症後の最高体温
P>0.05 P>0.05
急性中耳炎 男:女
2 才未満
急性中耳炎
非急性中耳炎
0 100 200 300 400 500
291 254
29 22
性別
全年令
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
806 693
性別 感度 = 57 %特異性= 47 %オッズ比= 1.15058 尤度比= 1.06496
感度 = 59 %特異性= 46 %オッズ比= 1.21630 尤度比= 1.08958
P>0.05 P>0.05
全年令 2 才未満
急性中耳炎 鼻水
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
907 591
76
鼻水
0 100 200 300 400 500
383 162
43
鼻水
急性中耳炎
非急性中耳炎
感度 = 84 %特異性= 30 %オッズ比= 2.27350尤度比= 1.19976
感度 = 77 %特異性= 39 %オッズ比= 2.15311 尤度比= 1.26789
P=0.001 P=0.03
急性中耳炎 集団生活全年令 2 才未満
0 100 200 300 400 500
162 383
22 29
感度 = 67 %特異性= 35 %オッズ比= 1.08566尤度比= 1.02855
感度 = 43 %特異性= 70 %オッズ比= 1.79353尤度比= 1.45122
急性中耳炎
非急性中耳炎
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
969 526
66
P=0.047P=0.709
中耳貯留液 調査月2 才未満
0 50 100 150 200 250
19 181
26 169
26 168
47 141
45 149
38 145
34 155
54 201
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
6 39
15 61
12 56
29 64
27 49
26 51
15 50
31 65
1月2月3月4月5月6月7月11月
全年令
p=0.0002 p=0.02
まとめ3 急性中耳炎の危険因子
年令 → 2 才未満(+)発症後の最高体温 →( -)性差 → ( -)鼻水 →全年令(+)、 2 才未満( ±)調査月 → ( -) 、 中耳貯留液ならば(+)
結語
開業小児科を受診した呼吸器感染症患児における ①鼓膜有所見率は30%②急性中耳炎罹患率は6%③ 危険因子は 2 才未満、鼻水
開業小児科医は耳痛の有無、高熱の有無にかかわらず鼓膜所見をとるべきである
まだ共同調査は続きます・・・今後の展開
1年をとおして共同調査を続ける予定 ①鼓膜有所見・急性中耳炎罹患率の季節性変化②危険因子の季節性変化③ 危険因子の多変量解析
開業小児科でみる中耳炎と特徴を明らかにした後は、重症度判定と治療について調査検討する