慶應義塾大学 清水聰研究会 無形財班

北直紀 　岡本和隆　 藤居淳 　吉川陽未

訪日旅行活性化におけるコミットメントの重要性

Executive Summary

Keio Voyager

2

目標と方向性

目的と方向性

Keio Voyager

4

不況を打破する！

旅行産業経済波及効果が高い

訪日旅行市場成長が見込める

21323

30745

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

40000（億） 付加価値効果

2005年2010年

32.5

46.7

0

10

20

30

40

50（万） 雇用効果

2005年2010年

訪日外国人増加による経済波及効果（ 2010 年度予想）

日本は世界で第 28 位（アジアで第 6 位）日本は世界で第 28 位（アジアで第 6 位）

2007 年度各国訪問者数（千人）

資料：日本政府観光局（ JNTO ） HP参照

資料： JNTO 訪日外客消費動向調査2007 年

現状分析

現状分析

Keio Voyager

6

2008 年度　訪日外国人国別内訳 JNTO 『日本の国際観光統計 2008 』

・アジア等、重点地域への取り組み　　　　日本政府観光局（ JNTO ）による　　　 Yokoso! Japan キャンペーン

・アジアからの容易なアクセス性→ 　日本の地理的優位性

　

・海外長距離旅行の抑制

・アジア等、重点地域への取り組み　　　　日本政府観光局（ JNTO ）による　　　 Yokoso! Japan キャンペーン

・アジアからの容易なアクセス性→ 　日本の地理的優位性

　

・海外長距離旅行の抑制韓国・台湾・中国が68.8% を占める

韓国・台湾・中国が68.8% を占める

アジア市場に着目

2008 年度　訪日外国人国別内訳資料： JNTO 『日本の国際観光統計 2008 』

現状分析

Keio Voyager

7

経済成長率 　訪日率　　

　韓国 2.0% 　　 5.0%

　台湾 0.06% 　　 6.1%

　香港 0.4% 　　 7.9%

　中国 9.0% 　　 0.07%

※訪日率＝総人口のうち、ある一年間に日本に訪れる人口の割合

中国以外の市場は飽和状態中国以外の市場は飽和状態中国は景気好調中国は景気好調

アジア（韓国・香港・台湾・中国）の現状

資料： 日本貿易振興機構

参考：日本貿易振興機構 日経ビジネス2008/09/29 号

現状分析

Keio Voyager

8

中国市場に着目

団体旅行しか認められていなかった団体旅行しか認められていなかった

これまでの中国は

個人向けビザが解禁に※2010 年には更なるビザの緩和予定

個人向けビザが解禁に※2010 年には更なるビザの緩和予定

2009 年 7 月から

更なる市場拡大の余地ニーズの多様化

更なる市場拡大の余地ニーズの多様化

今後は

現状分析

Keio Voyager

9

中国国内におけるネット利用者の推移 利用用途と商品購買の関係性

・　約 4 割 が口コミツールを利用・　 78% が商品購入にあたって口コミサイトを利用・　約 4 割 が口コミツールを利用・　 78% が商品購入にあたって口コミサイトを利用

既に３億人に達する利用者数既に３億人に達する利用者数

旅行商品の購入に対して、口コミマーケティングが有効旅行商品の購入に対して、口コミマーケティングが有効

資料：中国国民インターネット利用者数推移 China Internet Network In Information Center

資料：中国国民インターネット利用者数推移 China Internet Network In Information Center

現状分析

Keio Voyager

10

訪日中国人の現状

問題点 ：訪日中国人は満足しているのに、リピートしていない

問題点 ：訪日中国人は満足しているのに、リピートしていない

資料：訪日旅行後の国別満足度（ 2008 年）資料： JNTO 、『観光白書２００８』

仮説設定

仮説設定 1

Oliver (1980) の再購買研究

現状分析より

先行研究レビュー

Keio Voyager

12

満足⇒リピート満足⇒リピート

しかし、中国人は満足しているがリピートはしていないしかし、中国人は満足しているがリピートはしていない

満足⇒リピート満足⇒リピートX

仮説設定 1

コミットメントの重要性

Keio Voyager

13

どれだけ満足をしたかより、質の良い満足をすることが重要

満足をしていても、コミットメントを伴わなければリピートしない

満足をしていても、コミットメントを伴わなければリピートしない

仮説 1

コミットメント

コミットメント

仮説設定 2

インターネット利用者数の急激な増加 20代ネットユーザーのうち、 78% が商品購買で口コミ情報を活用

口コミマーケティングへのアプローチ

Keio Voyager

14

インターネットの拡充で、重要度が増している

インターネットの拡充で、重要度が増している

商品の購買後に口コミなどを利用して 何らかの情報発信を行う人々

商品の購買後に口コミなどを利用して 何らかの情報発信を行う人々

インフルエンサー

インフルエンサー

仮説設定 2

AIDEESモデル

Keio Voyager

15

顧客は心酔することで、インフルエンサーとなる（片平）コミットメントはインフルエンサーに正の影響を与え

る

顧客は心酔することで、インフルエンサーとなる（片平）コミットメントはインフルエンサーに正の影響を与え

る

心酔 = 　購買者の心に刻印される愛着心や充実感

コミットメント

心酔 = 　購買者の心に刻印される愛着心や充実感

コミットメント

＝

仮説設定 2

AISASモデル

Keio Voyager

16

認知・関心をした上で、積極的な情報探索を行った消費者は、

将来的にインフルエンサーになりやすい（清水）

認知・関心をした上で、積極的な情報探索を行った消費者は、

将来的にインフルエンサーになりやすい（清水）

27.0%27.0%

73.0%73.0%

16.8%16.8%

10.2%10.2%

12.8%12.8%

60.2%60.2%

4.8%4.8%

5.8%5.8%

0.5%0.5%

2.4%2.4%

0.3%0.3%

1.8%1.8%

0.2%0.2%

2.5%2.5%

10.6%10.6%

6.2%6.2%

2.9%2.9%

7.3%7.3%

2.1%2.1%

10.7%10.7%

2.7%2.7%

到達未到達

全顧客100%

57.5%57.5%

認知・関心 情報探索 購買行動 情報共有

出典：「コミュニケーション型生活者」を探せ！DNP メディアバリュー研究チーム + 清水聰著

仮説設定 2

旅行財への適用

Keio Voyager

17

旅行前の認知・関心に加え、情報探索をすることで

コミットメントが形成される

旅行前の認知・関心に加え、情報探索をすることで

コミットメントが形成される

仮説 2

・　 AIDEES 　：　コミットメント → インフルエンサー・　 AISAS 　　：　認知・関心＋情報探索　→ インフルエンサー

・　コミットメント の形成要因は何か？

仮説設定

仮説の概要

Keio Voyager

18

満足をしていても、コミットメントを伴わなければリピートしない

満足をしていても、コミットメントを伴わなければリピートしない

仮説 1

旅行前に認知・関心および積極的な情報探索をすることでコミットメントが形成される

旅行前に認知・関心および積極的な情報探索をすることでコミットメントが形成される

仮説 2

データ分析

データ分析

【対象】　外国人 204名（うち中国人 124名）

【形態】　英語・中国・日本語による選択回答（紙面・ WEB ）

【期間】 10 月下旬～ 11 月上旬

【内容】- 1.デモグラフィック要因（ 3項目）

- 2. 海外旅行について（ 25項目）- 海外旅行の概要について（ 6項目）

- リピートについて（ 2項目）

- 満足度について（ 1項目）

- コミットメントについて（ 5項目）

- 認知・関心・情報探索について（ 6項目）

- インフルエンサーについて（ 5項目）

アンケート調査の概要

Keio Voyager

20

データ分析

仮説 1 の検証

Keio Voyager

21

満足していても、コミットメントを伴わなければリピートしない

満足していても、コミットメントを伴わなければリピートしない

仮説 1

検証検証リピート意図リピート意図 リピート回数リピート回数

コミットメントコミットメント 満足度満足度

共分散構造分析を用いて4項目（コミットメント・満足度・リピート意図・リピート回数）の間の関係性をモデル化した

GFI =.994AGFI =.991RMSEA =.030

0.086(***) 0.151

(***)

数値：関係性の強さ( 数値 ) ：有意水準

立証立証

データ分析

AISASモデル・ AIDEESモデルに沿って、四段階で、回答者の人数を追って見ていく

①認知・関心、②情報探索、③コミットメント（心酔）、④情報共有

仮説 2 の検証

Keio Voyager

22

旅行前に認知・関心および積極的な情報探索をすることで

コミットメントが形成される

旅行前に認知・関心および積極的な情報探索をすることで

コミットメントが形成される

仮説 2

検証検証

データ分析

Keio Voyager

23

63.0%63.0%

37.0%37.0%

36.5%36.5%

26.5%26.5%

1.6%1.6%

35.4%35.4%

13.8%13.8%

6.3%6.3%20.1%20.1%

15.4%15.4%

14.8%14.8%

11.7%11.7%

0.5%0.5%

1.1%1.1%

11.6%11.6%

23.8%23.8%

到達未到達

全顧客100%

3.7%3.7%11.7%11.7%

6.9%6.9%7.9%7.9%

2.1%2.1%9.6%9.6%

0.5%0.5%0%0%

0%0%1.1%1.1%

7.4%7.4%4.2%4.2%

1.6%1.6%22.2%22.2%

認知・関心　　　　　　情報探索　　　　　　　コミットメント 情報共有

データ分析

仮説 2 の検証

Keio Voyager

24

旅行前に認知・関心および積極的な情報探索をすることで、

コミットメントは形成される

旅行前に認知・関心および積極的な情報探索をすることで、

コミットメントは形成される

仮説 2

立証立証

データ分析

【期間】 2009 年 11 月 23 日

【場所 】 成田空港第二ターミナル

【対象】 訪日旅行から帰国直前の中国人 52 人

【調査項目】- 今回の訪日旅行の満足度（ 1項目）

- リピートについて（ 2項目）

- 認知・関心・情報探索（ 6項目）

- コミットメントについて（ 5項目）

- インフルエンサーについて（ 3項目）

【分析方法】 それぞれの項目を集約した得点ごとに2変量の相関分析を行う

再検証調査の概要

Keio Voyager

25

データ分析

再検証の結果

Keio Voyager

26

認知　→ コミットメントコミットメント　→ インフルエンサーコミットメント　→ リピート意図

認知　→ コミットメントコミットメント　→ インフルエンサーコミットメント　→ リピート意図

関心　→ コミットメント情報探索　→ コミットメントコミットメント　→ リピート回数

関心　→ コミットメント情報探索　→ コミットメントコミットメント　→ リピート回数

一部立証一部立証

正の相関あり正の相関あり 正の相関なし正の相関なし

データ分析

まとめ

Keio Voyager

27

認知・関心情報探索コミットメントコミットメントリピート

インフルエンサーリピートインフルエンサー

旅行前の認知・関心・情報探索を促すことが重要である

旅行前の認知・関心・情報探索を促すことが重要である

実務への応用

•金銭的余裕・十分な余暇•インターネット利用者が多い•反日感情が薄い

実務への応用

29Keio Voyager

ターゲットの設定

実務への応用

1. 本研究で得られた成果

新提案の概略

Keio Voyager

30

リピーター インフルエンサー

認知・関心

コミットメント

情報探索

　新提案①　認知・関心の向上

1

2

ネット広告

旅行会社 HP の充実

　新提案②　主体的な情報探索の喚起

口コミサイト3

2. 実務への応用策

中国人に人気が高いスポットである　　温泉・都市の景観・日本食などを見せる

中国人に人気が高いスポットである　　温泉・都市の景観・日本食などを見せる

ティーザー広告により閲覧者に情報探索をさせるティーザー広告により閲覧者に情報探索をさせる

口コミサイトで情報探索してもらう

実務への応用

31Keio Voyager

自ら情報探索がしたくなるような日本の魅力を強調する動画や広告を作成する自ら情報探索がしたくなるような日本の魅力を強調する動画や広告を作成する

1 日本の魅力を強調したティーザー広告日本の魅力を強調したティーザー広告ネット広告

Keio Voyager

32

実務への応用

しかし、日本の魅力はこれだけではない！！

1 ネット広告 日本の魅力を強調したティーザー広告日本の魅力を強調したティーザー広告

この冬、最高の思い出があなたを待っている！

この冬、最高の思い出があなたを待っている！

詳細はこちらから嘴 .com

実務への応用

2 旅行会社 HP の充実

33

サイト閲覧者が旅行設計できるコンテンツサイト閲覧者が旅行設計できるコンテンツ

観光地の選択

　

旅行設計

観光地についての情報を積極的に調べるようになるKeio Voyager

ルート見積もり交通機関周辺情報ツアー情報

　　　　　　　　　　　　　　　　　

　案内

観光地を選択するだけで閲覧者が自分の旅行を設計できる

観光地を選択するだけで閲覧者が自分の旅行を設計できる

1.エリアで絞る

3. スポットで絞る

旅行設定コンテンツの例

2. 日数・予算を決める

4. 買い物かごに入れる

実務への応用

34

2 旅行会社 HP の充実

　　　　　　　　嘴 .com

詳細はこちら

Keio Voyager

サイト閲覧者が旅行設計できるコンテンツサイト閲覧者が旅行設計できるコンテンツ

旅行設定コンテンツの例　浅草・東京タワー検索結果

［旅行日程表］

　　 東京駅→東京タワー（展望５０分） →英丸進（食事４０分）・浅草観音と仲見世（自由散策５０分） →隅田川下り（浅草～日の出桟橋４０分） →東京駅　　　　　 　　　費用： 7,890円（ 623 人民元）

［旅行日程表］

　　 東京駅→東京タワー（展望５０分） →英丸進（食事４０分）・浅草観音と仲見世（自由散策５０分） →隅田川下り（浅草～日の出桟橋４０分） →東京駅　　　　　 　　　費用： 7,890円（ 623 人民元）

・お勧めルート

　浅草（銀座線　１３：３０）→渋谷（１４：００）　 <２３０円 >

渋谷（山手線品川方面１７：４０）→東京（１８：００） <１９０円 >

個人旅行

実務への応用

2 旅行会社 HP の充実

ツアー紹介

Keio Voyager

35

実務への応用

・口コミ情報の高い信憑性・負の口コミを軽減可能・旅行商品を多面的に比較できる

・口コミ情報の高い信憑性・負の口コミを軽減可能・旅行商品を多面的に比較できる

・　認知されるのに時間がかかる・　新規設立や維持のコスト

・　認知されるのに時間がかかる・　新規設立や維持のコスト

デメリット

メリット

・　旅行会社 HP にリンクをのせ、認知拡大を狙う・　コストは広告費で賄う・　 JNTO主導の管理体制の構築

・　旅行会社 HP にリンクをのせ、認知拡大を狙う・　コストは広告費で賄う・　 JNTO主導の管理体制の構築

対応策

口コミサイト3

Keio Voyager

36

旅行前に閲覧

認知・関心

嘴 .com

旅行後に投稿

インフルエンサー

中立的な会員制口コミサイト（既存企業・ベンチャー企業）

中立的な会員制口コミサイト（既存企業・ベンチャー企業）

実務への応用

1. 本研究で得られた成果

新提案の概略

Keio Voyager

37

リピーター インフルエンサー

認知・関心

コミットメント

情報探索

　新提案①　認知・関心の向上

1

2

ネット広告

旅行会社 HP の充実

　新提案②　主体的な情報探索の喚起

口コミサイト3

2. 実務への応用策

提案の実現可能性の検証

実務への応用

　　　　　　中間所得層 と 80后　　　　　　中間所得層 と 80后Selective

（ターゲッティング）

Selective（ターゲッティン

グ）

　　　　　　　　中間所得層は 2 億 6000 万・ 80后は 2 億人　　　　　　　　中間所得層は 2 億 6000 万・ 80后は 2 億人Sufficient（十分性）

Sufficient（十分性）

　　　　　　　　　　　　インターネット利用者の増加　→　口コミマーケティング

　　　　　　　　　　　　インターネット利用者の増加　→　口コミマーケティング

Synchronized（適合性）

Synchronized（適合性）

　　　　　　　持続する経済発展・中間所得層の増加　　　　　　　持続する経済発展・中間所得層の増加Sustainable（持続可能性）Sustainable

（持続可能性）

Keio Voyager

38

4S Check4S Check

4S を満たしており、妥当な提案である4S を満たしており、妥当な提案である

まとめ

まとめ

訪日旅行活性化による不況の打破

Keio Voyager

40

インフルエンサー

リピート

コミットメント

認知・関心

旅行情報探索

参考資料

•清水聰著 [1999] 『新しい消費者行動』•清水聰著 [2006] 『戦略的消費者行動』•DNP メディアバリュー研究チーム / 清水 聰著 [2007] 『「コミュニケーション型生活者」を探せ ! 』•JNTO （国際観光振興機構）著 [2008] 『国際観光白書 2008 』•JNTO （国際観光振興機構）著 [2009] 『日本の国際観光統計 2008 』•JNTO （国際観光振興機構）著 [2009] 『 JNTO 訪日外客訪問地調査 2007-2008 』•JNTO （国際観光振興機構）著 [2008] 『 JNTO 訪日外客実態調査 2006-2007〈満足度調査編〉』•Philip L. Pearce著 [2005] 『 TOURIST BEHAVIOUR 』•大方優子著 [2006] 『 An overview of the destination choice models in tourism 』（論文）•Philip Kotler著 [2003] 『 Marketing for Hospitality and Tourism 』•Bonita M. Kolb著 [2007] 『 TOURISM MARKETING FOR CITIES AND TOWNS 』•松浦良高著 [2008] 『新・中国若者マーケット ~ターゲットは 80后 ~ 』•長谷政弘編著 [1996] 『観光マーケティング―理論と実際』•堀貞一朗著 [2002] 『メイド・イン・ジャパンからウェルカム・ツー・ジャパンへ』•平田真幸著 [2006] 『国際観光マーケティングの理論と実践』•日本経済新聞社 産業地域研究所著 [2008] 『高まるアジア・豪州のニッポン観光熱』

•日本政府観光局ホームページ http://www.jnto.go.jp/jpn/•社団法人日本旅行業協会ホームページ http://www.jata-net.or.jp/•サーチナ総合研究所ホームページ http://jp.searchina.com.cn/•ツーリズム・マーケティング研究所ホームページ http://www.tourism.jp/•やまとごころ ホームページ http://news.yamatogokoro.jp/story/222/.jp•中国互联网络信息中心 (CNNIC)ホームページ http://www.cnnic.cn/index.htm

Keio Voyager

41

ご清聴ありがとうございました