○ 前回授業の補足説明
description
Transcript of ○ 前回授業の補足説明
1
○ 前回授業の補足説明
• 分散投資のメリットは分かったが、デメリットは?
• 米国株式市場の市場リスク(分散不能リスク)は 20 %程度であるが、日本の株式市場の市場リスクは?
• 市場リスク(分散不能リスク)を削減する方法
2
なぜ、投資対象株式銘柄数を増やしても、リスクはゼロに近づかないのか?この例(米国)ではなぜ、 20% 程度以下に下がらないのか?
3
(2)市場価格変動リスクとデリバティブ
• 市場価格変動リスク(マーケットリスク):– 市場価格(金利、為替、株価)の変動により手持
ちの資産や負債の価値が変化するリスク• デリバティブ:先物、スワップ、オプション– 通常の金融取引:– デリバティブ:リスクを専門的に扱う金融商品、
• ○ 先物取引:– 現物(直物)取引:売買契約の成立後直ちに商品
の受け渡しが行なわれる取引– 先物取引:
4
– 先物取引の例:3ヶ月後に1ドル= 100 円で、1億ドル受渡しする契約• 3ヶ月後の直物ドル相場がいくらであれ、それと
は無関係に1ドル= 100 円で受渡しを行う• ⇒
• e.g. 3ヶ月後に原油輸入代金1億ドルを支払う必要のある日本の石油会社:選択肢
A) 3ヶ月後に直物で購入 B) 現時点で先物で購入
1ドルが何円になるか不確実で、リスクがある
1ドル= 100 円で確定しており、リスクがない
or
5
ケース A
3 ヶ月後の直物ドルレート1 ドル=○○円
ケース B
○ ドルの買コスト(支払うべき円代金)
100 円
3 ヶ月後の直物ドルレート
買コスト
6
・ 3 ヶ月後の直物ドルレートの予想分布と為替変動リスク
100 円 3 ヶ月先の直物ドルレート
10595
確率
分布の広がり分布の広がりが大きいほど、リスクは大きい
通常は、確率分布の標準偏差で測る(ボラティリティ)
石油会社はこうした為替変動リスクに直面している( 3 ヶ月後の時点でドルを調達するケース)
7
・先物ドル購入によるリスク・ヘッジ
100 円 3 ヶ月後のドル調達レート
確率
確実に(確率 100 %で)、100 円でドルを調達可能。不確実性・リスクは存在しない。
石油会社は、現在の時点で為替変動リスクに直面していない。
8
○ リスクヘッジと投機
e.g. 日本の石油会社
石油会社原油輸入代金の支払い
ドル支払い
ガソリン・灯油等の製品販売代金受取り
円の受取り
・製品販売代金の受取りと原料購入代金の支払いの通貨が異なるので、為替変動リスクに晒されている。
9
• ⇒ 直面している為替変動リスクを避ける(リスク・ヘッジ)ために、先物為替(先物ドル購入)を利用する。
– 石油会社の例:
3 ヶ月後の 1 億ドルの支払い義務(ドル資金流出)
先物ドル購入( 3 ヶ月後に1 億ドルを受け取る権利:ドル資金流入)
+
=為替変動リスク・ゼロ
10
• 注意:
• であり、その取引自体の固有の性質ではない。• cf. 為替リスクに直面していない企業 A 社による先
物ドル購入:それはリスク・ヘッジではなく、逆にリスクを付け加えているだけ( )。
・投機:現物投機と先物投機 少ない元手で大きな投機ができ
る
11
• リスクヘッジにより将来を確定させるということは、相場変動による利益獲得の機会も放棄することを意味する。– 結果的にはリスクヘッジ(ドル先物買い)をしな
かった方が得をする( 100 円以下へのドル安のケース)こともありえる(結果論)。
– ヘッジを行わずに、リスク・エクスポージャーをそのままにしている状態=リスクを負担して、相場変動による利益を狙っている状態(投機の状態)
• 石油会社の選択肢:リスク・ヘッジ or リスクを負担し
て利益を狙う
12
○ デリバティブ取引の動機• ①– 直面している価格変動リスク(リスク・エクスポー
ジャー)をデリバティブ取引によって除去する• ②– リスクを負担して価格変動により利益を得
ようとすること• ③– 2つ以上のマーケットで、割安資産を買い、
割高資産を売ってリスクなしで利益を得ること• e.g. 現物を買って、先物を売る
13
○ 金融機関のリスク仲介業務
• ( cf. 金融仲介業務)– 他のデリバティブ取引でも同様の仲介を行なう
• 先物ドルの買値・売値の価格差(鞘)が銀行の利益
輸入業者
(
石油会社
)
輸出業者
(
自動車会社
)
銀行
ドル先物買い売り
ドル先物
売り 買い
1ドル= 98
1ドル= 100 円
14
・外国為替市場(直物・先物)の概念図
インターバンク市場
銀行 A 銀行 B
顧客: a b c d e f
対顧客市場
自動車会社
インターバンク・レート:1ドル= 99 円
対顧客レート買値: 98 円売値: 100 円
石油会社
・銀行 A の対顧客先物取引で買いが売りを上回れば、 A はインターバンク市場で先物売りを行って、リスクを調整する。
15
○ 先物レートの決定メカニズム先物レート、直物レートは、直接的にはそれぞれ先物市場、直物市場の需給によって決定される。しかし、両者には密接な関係がある。
現在の為替レート:直物 1 ドル= e 円、先物( 1 年先) 1 ドル= f 円日米の金利:日本 rj 、米国 ru で表すと
(f - e) / e = rj - ru : 金利平価式(金利裁定式)直先スプレッド 日米金利差 という関係が成立。
・先物レート f は米国の金利が高い(日本の金利が安い) 分だけ、直物レート e に比べてドル安(円高)となる。
・日本 rj =1%、米国 ru =3%、直物 1 ドル= e 円= 101 円 とすると 先物 1 ドル= f 円= 99 円 となる。
参考文献:古川顕『現代の金融』第 3 章 東洋経済新報社
16
○ オプションを使ったリスクヘッジ
行使価格
満期日・満期日のみに権利行使可能:ヨーロピアン・オプション・満期日までいつでも権利行使可能:アメリカン・オプション
・オプション:
17
• e.g. ドルのコールオプション– 満期日3ヶ月後、行使価格:1ドル= 100
円– オプション料:2円/ドル
• ○ オプション購入による損益:1ドル当り– 契約時点でのオプション料2円の支払い– オプション自体の損益
オプションの売手 買手
権利
18
・3ヶ月後の直物ドルレート:1ドル= S 円
・ S > 100 円の時 、100 円支払い、1ドル受取り、ドルを直物市場で売却。
・ S < 100 円の時
0
-2
100
損益
S
・オプション自体の損益は、どうなるか?
オプション料
19
0
コールオプションの買手の損益(オプション料込み)
S
20
• e.g. 前の事例の石油会社が、ドルのコールオプションを1億ドル分購入– 2億円のオプション料支払い
3ヶ月後:・ S>100 円の時権利行使、 100 億円支払い、1億ドル受取り・ S < 100 円の時
権利放棄、直物市場から1億ドル購入、 S 億円支払い
ドルの買コスト
Sc.f. 先物ドル買い(ケース B )
21
• ドル高のリスクをヘッジ• かつ、– c.f. 先物ドル買い(ケース B )では、この利得は得ら
れない• 但し、
22
○ コールオプションの売手の損益損益
S
2
100
102
買手の損益と横軸を対称軸として上下対称
23
・オプション料(プレミアム)の決定要因• e.g. ドルのコールオプション– 現在のドルの直物レート:1ドル= 99.8 円– 満期日3ヶ月後、権利行使価格:1ドル= 100 円– オプション料:2円/ドル
• オプション料は直接にはオプションの需給(売りと買い)のバランスによって決定される。
• その背後でオプション料の決定に関与する要因• 権利行使価格↑ ⇒ • 現在のドルレート↑ ⇒ • ドルレートのボラティリティ(変動性)↑ ⇒ • 満期までの期間 ↑ ⇒